18-20 割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくてよい手当には、どのようなものがあるか

■ 労基法第37条第4項は「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他命令で定める賃金は算入しない。」と規定し、これを受け規則第21条が「別居手当、子女教育手当、臨時に支払われる賃金、1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」を列挙している。

■ この6種類の法定除外賃金は、制限的に列挙されているものであるから、これらの手当に該当しない「通常の労働時間又は労働日の賃金」はすべて算入しなければならない。

■ 家族手当
家族手当は「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」と定義されている。したがって、「(この定義に当てはまるものは)物価手当、生活手当その他名称の如何を問わず家族手当として取扱う。
(例えば)臨時特別手当及び僻地手当のうち扶養家族数を基礎として算出した部分は、これを家族手当とみなし割増賃金の基礎から除くものとする。 臨時特別手当及び僻地手当の中で、独身者に対して支払われている部分及び扶養家族のあるものにして本人に対して支給されている部分は家族手当ではないから、かかる手当は割増賃金の基礎に算入する。」(S22.12.26 基発第572号)
「扶養家族ある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当ては家族手当とはみなさない。かかる手当は割増賃金の基礎に入れるべきである。」(S22.11.5基発第231号)

■ 通勤手当
通勤手当は「労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算出される手当」と解される。
距離や通勤の実際費用にもとづかない一律支給は、通勤手当とみなされないことがある。

■ 別居手当・子女教育手当
労働と直接的な関係が薄く個人的な事情に基づいて支給される賃金であるため、割増賃金の基礎から除外したもの。

■ 臨時に支払われる賃金
「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。」(S22.9.13基発第17号)とされる。
具体的には、私傷病手当、加療見舞金、退職金等がこれに該当する。

■ 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
  ・賞与
  ・1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
  ・1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
  ・1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
  毎月払いを回避する目的で、これらの名称をつけていると認められる場合は除外賃金とならない。

■ 以上が割増賃金の基礎に算入を要しない手当等の概要であるが、これらは「制限列挙」とされていることから解釈上それほどの疑義が生じることはない。
むしろ、割増賃金の基礎に算入すべきか否かに関する疑義の多くは「通常の労働時間又は労働日の賃金」に対して支払われているものか否かを巡って生じるケースが多い。これらについては、代表的な例を別項目で解説することとしたい。[労務安全情報センター]