運動競技会・宴会・接待ゴルフと労災の取扱い
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運動競技会・宴会・ゴルフ等における負傷等の業務上外の取扱原則 まえがき 昨年は、日本代表チームの合宿に向かうヱスビー食品のマラソン選手の交通事故死を業務上(労働 保険審査会)、数日前には東京労働基準局審査官が休日のゴルフ接待を業務上と判定するなどのニ ュースも伝わった。もちろん、具体的事案は、その事案が持つ具体的事実に則して判断されるもの であり一般論で語るのは適切でない場合が多い。 しかし、労災保険はその性格上、事業主の全額負担で運用されている訳であるから、無原則に認定 枠を広げて良しとするのが、必ずしもベストの判断ではない。 運動競技会・宴会・懇親会・慰安旅行・接待ゴルフ等における負傷等の業務上外の取扱については 、意外に基本原則が関係者に認識されていないように思われる。 この問題の取扱い原則を少し整理してみた。 なお、本稿は、基本通達、解釈例規、審査会事例、労働省の過去の判断事例等を元に構成したもの ですが、文責は全て当労務安全情報センターにあります。(H9.3) <目次> T 運動競技会 (1)事業を代表して出場する対外的な運動競技会(営業政策上効果がある) (2)同一企業に属する各事業場相互の運動競技会(労務管理上効果がある) (3)事業場内の運動競技会(労務管理上効果がある) (4)運動競技会の出場のための準備練習中の災害 U 宴会、懇親会、慰安旅行等の各種の催しの取扱いについて V 接待ゴルフについて T 運動競技会 【原則的取扱い】 ○一般的には、業務起因性がないものとして取り扱われる。 ○業務との関連が認められるためには、運動競技会出場が事業主の特別の業務命令によるものであ ることが必要である。 目次に戻ります 【基準通達の内容】 (1)事業を代表して出場する対外的な運動競技会(営業政策上効果がある) ●出場することが、事業の運営に社会通念上必要と認められること。(定期的開催(予定を含む )の競技会) ●出場が、事業主の積極的特命によってなされたこと。 ・出張命令が出され、かつ、旅費、日当が支払われていること。 ・当日が通常の出勤として扱われていること。 (運用) ★営業政策上効果があるといえるには、抽象的一般的な意味ではなく社会通念上の客観的な必要が 認められるものでなければならない。 ★企業を代表するものでなく国を代表するものは業務外。 ★企業外の団体の主催については、次の事項に留意する。 ・事業場がその団体の構成員として、年会費等を支払っていること。 ・当該団体からの出場要請が事業主あてになされており、かつ、事業主が選抜して出場させるも のであること。 なお、外部団体の出場要請が事業主にきた場合で、事業主が出場を配慮する、黙認するといった ケースがあるが、これは事業主の積極的特命とは評価されない。 ★宣伝効果があることが明白でなければならない。例えば、会社のゼッケンを着けての出場、会社 のユニフォームの着用など。 ★事業を代表する場合、出張命令は、特別稟議の形式をとっていることが多い。 ★「当日が通常の出勤として扱われていること」に関しては、積極的な要素が必要である。すなわ ち、(大目にみる、黙認する、出勤扱いにする)など温情的な措置でないことが重要。 ★町内会の催しへの付き合いは業務外。 ★国民体育大会のように個人の資格で参加する競技会も通達の条件を満たさない。 目次に戻ります (2)同一企業に属する各事業場相互の運動競技会(労務管理上効果がある) ●出場することが、事業の運営に社会通念上必要と認められること。 (企業主の主催の元に定期的に実施されるもの) ●出場が、事業主の積極的特命によってなされたこと。 ・企業主の業務命令として各支店、営業所等の長に示達されていること。 ・これに基づく事業主の積極的命令により出場していること。 (・出張命令が出され、かつ、旅費、日当が支払われていること。・当日が通常の出勤として 扱われていること。) 目次に戻ります (3)事業場内の運動競技会(労務管理上効果がある) ●出場することが、事業の運営に社会通念上必要と認められること。 ●出場が事業主により強制されていること。 強制とは、 ・労働者の全員参加により、定期的に行われているもの ・当日が通常の出勤と扱われ、出場しないものは欠勤扱いしていること。 (2,3の運用) ★企業外の団体(健康保険組合や労働組合など)が主催する場合は、条件を満たさない。 ★従業員の親睦団体である真道会と健保組合の共催の総合体育大会は、業務外(32.11.2基収6787) ★会社労務担当係と労働組合の親睦野球を業務外とした事例(34.1.31昭32労218) ★事業場(企業)相互の親善試合は、該当しない。 目次に戻ります (4)運動競技会の出場のための準備練習中の災害は、事業主の積極的特命により通常の就業時間 中に行われた場合に限り、業務上。 目次に戻ります U 宴会、懇親会、慰安旅行等の各種の催しの取扱いについて ●この種の催しの世話役等が自己の職務の一環として参加する場合(営業課員、庶務課員など)は 一般に業務遂行性(参加している間の個々の行為全てが業務行為となる訳ではない、恣意的行為 、常軌を逸した振舞は業務起因性なし)が認められるが、それ以外の労働者の場合には、特別な 事情がないかぎり業務外。 ●二次会は、事業に付随した本来業務と解することが出来ず、あらかじめ予定された設宴と認めが たい。(33.5.31S32労122) ●本社専務の出張をうけて開催された懇親のための宴会は、業務の連絡等の話題があったとしても 、業務外。 目次に戻ります ◎接待ゴルフについて 原則として、接待飲食と同様に取り扱うものである。 ・営業員の接待で、今後の受注が有利となるといった抽象的な意義付けで行なわれるものは業務 外。当然ながら、きずなを強める、顔つなぎなどの目的は業務外。 ・事業主は当該ゴルフが仕事であるとするなら、そのことをの証明が出来なければならない。説 明できないものは業務とならない。 ・休日の接待ゴルフ(例え業務の話題が出るとしても)は、原則として業務外。 ・時間内の接待ゴルフは、現に進行中の商談に係り、それに関わる地位、立場の者が会社の特命 により出る場合は業務上。