育児・介護休業法のポイント解説

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平成14年4月1日施行・育児介護休業法の概要
ポイント解説


ポイント
解  説
法・規則
育児休業ができるのは  1歳に満たない子を養育する男女労働者です。
 (子であれば実子・養子を問わない)
法2@
法6(1)
期間を定めて雇用される者
(育児・介護共通)
 原則非適用。ただし、期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態となっている場合には対象となる。この判断に当たって、以下の指針が示されている。
 なお、パートタイマー・契約社員等の名称の如何は関係しない。期間の定めのない雇用契約(実質も含む。)で働いているなら対象となる。

 指針
(1) 有期労働契約の雇止めの可否が争われた裁判例における判断の過程においては、主に次に掲げる項目に着目して、契約関係の実態が評価されていること。
 イ.業務内容の恒常性・臨時性、業務内容についての正社員との同一性の有無等労働者の従事する業務の客観的内容
 ロ.地位の基幹性・臨時性等労働者の契約上の地位の性格
 ハ.継続雇用を期待させる事業主の言動等当事者の主観的態様
 ニ.更新の有無・回数、更新の手続の厳格性の程度等更新の手続・実態
 ホ.同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等他の労働者の更新状況

(2) 有期労働契約の雇止めの可否が争われた裁判例においては、(1)に掲げる項目に関し、次のイ及びロの実態がある場合には、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているものであると認められていることが多いこと。
 イ (1)イに関し、業務内容が恒常的であること、及び(1)ニに関し、契約が更新されていること。
 ロ イに加え、少なくとも次に掲げる実態のいずれかがみられること。
  (イ) (1)ハに関し、継続雇用を期待させる事業主の言動が認められること。
  (ロ) (1)ニに関し、更新の手続が形式的であること。
  (ハ) (1)ホに関し、同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例がほとんどないこと。

(3) 有期労働契約の雇止めの可否が争われた裁判例においては、(1)イに関し、業務内容が正社員と同一であると認められること、又は、(1)ロに関し、労働者の地位の基幹性が認められることは、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているものであると認められる方向に働いているものと考えられること。

法2@
指針
就業規則の規定
(育児・介護共通)
 育児・介護休業制度は、就業規則に規定することを要する。 労基法89
申し出の法律効果
(育児・介護共通)
 労働者の書面に基づく育児・介護休業の申し出は、法律的に労働者の労務提供義務を消滅させる効果が生じる。申し出に関して法律上の要件を満たしている限り、事業主の承認行為を要しない。
 事業主が法律上の申出期間1か月前のところを3か月前とするなど(育児休業の場合)法律より厳しい要件を加えることはできない。(その部分は法律的に無効となる。)
法解釈
法6(1)本文
労使協定で育児休業の対象外とできる労働者 法6(1)但し書
継続して雇用された期間が1年に満たない労働者

 労使協定で除外をしない限り、対象となることに注意!

法6(1)@
配偶者が子を養育することができる場合  配偶者が次のいずれにも該当するような場合、同人が子を養育することができる環境にあることから、育児休業をすることができません。
(1)職業に就いていないこと(1週間の労働契約日数が2日未満を含む。)
(2)ケガ、病気などで子の養育が困難でない
(3)産前産後でない
(4)子と同居している
 労使協定で除外をしない限り、対象となることに注意!
法6(1)A
規則6
法律が認めた合理的な理由がある場合 (1)申し出の日の翌日から1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
(2)1週間の契約労働日数が2日以下の労働者
(3)内縁の妻又は夫が、「子を養育することができる場合」
 労使協定で除外をしない限り、対象となることに注意!
法6(1)B
規則7
育児休業ができる期間  子が出生した日から満1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間が育児休業のできる期間です。
 実際には、女性は労基法で産後休業8週間が認められているのでその終了後に、子が出生した日から育児休業するのは男性の場合ということになる。

 申出回数は1回で休業は連続した一まとまりの期間です。
 (例外:特別の事情のある場合、1回を超えて申出ができる規定があります。(規則9,10))
法2
証明書類の提出
(育児・介護共通)
 事業主は、育児休業の場合に「子の出生等を証明する書類」、介護休業の場合に「対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類」の提出を求めることができます。 規則5(2)
規則22(2)
希望どおり育児休業をするには1か月前の日までに申し出  申し出が遅れた場合、事業主は、申出日から起算して1か月先(申出日の応答日)の日まで開始日を延ばす措置をとることができる。事業主は繰り延べ措置をとる場合は、原則として申出日の翌日から3日以内に書面で通知します。
法6(3)
規則11
早期出産、配偶者の死亡・病気・負傷等の「特別の事情」がある場合  育児休業の開始日を繰り上げ変更することができます。
 この場合、変更開始日の1週間前の日までに申し出が必要です。1週間前の申し出に遅れた場合は、事業主は、上記と同様の繰り延べ措置をとることができます。
法6(3)
規則9
規則13
育児休業の当然終了  次の場合は、育児休業期間は労働者の意思にかかわらず終了します。
(1)子を養育しないこととなったとき(事業主への通知義務があります)
  (子の死亡、子が養子の場合離縁や養子縁組の取消、子が他人の養子になったこと等による同居の解消、労働者のケガ・病気等により子が1歳に達するまでの間、子を養育できない状態となったとき)
(2)子が1歳に達したとき
(3)育休中の労働者について産前産後休業、介護休業又は新たな育児休業が始まったとき

法9(2)
規則19
規則20
育児休業申出の撤回と再申出  育児休業の開始日の前日までであれば、育児休業の申し出を撤回することができます。
 ただし、再申出は、特別な事情がない限りできません。この特別な事情とは次の場合をいいます。
 (1)配偶者の死亡 (2)配偶者がケガ、病気等により子の養育が困難となったとき (3)離婚等により配偶者が子と同居しないこととなったとき
法8(1)(2)(3)
規則18
介護休業ができるのは  要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です 法2A
要介護状態にあるとは、どのような場合か  ケガ・病気又は身体、精神上の傷害により2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を言います。 法2B
常時介護を必要とする状態とは  次のいずれかに該当する場合です。
1.日常生活動作事項(表1)のうち、全部介助が1項目以上及び一部介助が2項目以上あり、かつその状態が継続すると認められること。
2.問題行動(表2)のうち、いずれか1項目以上が重度又は中度に該当し、かつ、その状態が継続するすると認められること。

表1(日常生活動作)
  1 自分で可 2 一部介助 3 全部介助
イ 歩行  杖等を使用し、かつ、時間がかかっても自分で歩ける  付添いが手や肩を貸せば歩ける  歩行不可能
ロ 排泄 ・自分で昼夜とも便所でできる
・自分で昼は便所、夜は簡易便器を使ってできる
・介助があれば簡易便器でできる
・夜間はおむつを使用している
・常時おむつを使用している
ハ 食事  スプーン等を使用すれば自分で食事ができる  スプーン等を使用し、一部介助すれば食事ができる  臥床のままで食べさせなければ食事ができない
ニ 入浴  自分で入浴でき、洗える ・自分で入浴できるが、洗うときだけ介助を要する
・浴槽の出入りに介助を要する
・自分でできないので全て介助しなければならない
・特殊浴槽を使っている
・清拭を行っている
ホ 着脱衣  自分で着脱できる  手を貸せば、着脱できる  自分でできないので全て介助しなければならない


表2(問題行動)
  重度 中度 軽度
イ 攻撃的行為  人に暴力をふるう  乱暴なふるまいを行う  攻撃的な言動を吐く
ロ 自傷行為  自殺を図る  自分の体を傷つける  自分の衣服を裂く、破く
ハ 火の扱い  火を常にもてあそぶ  火の不始末が時々ある  火の不始末をすることがある
ニ 徘徊  屋外をあてもなく歩きまわる  家中をあてもなく歩きまわる  ときどき部屋内でうろうろする
ホ 不穏興奮  いつも興奮している  しばしば興奮し騒ぎたてる  ときには興奮し騒ぎたてる
ヘ 不潔行為  糞尿をもてあそぶ  場所をかまわず放尿、排便をする  衣服等を汚す
ト 失禁  常に失禁する  時々失禁する  誘導すれば自分でトイレに行く

 
対象家族の範囲  介護休業の対象家族の範囲は以下のとおりです
(1)配偶者(事実婚を含む。)
(2)父母及び子
(3)同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫
(4)配偶者の父母

法2(4)
規則2

労使協定で介護休業の対象外とすることができる労働者 法12(2)
継続して雇用された期間が1年に満たない労働者  労使協定で除外をしない限り、対象となることに注意!
法12(2)
法律が認めた合理的な理由がある場合 (1)申し出の日の翌日から3か月以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
(2)1週間の契約労働日数が2日以下の労働者
 労使協定で除外をしない限り、対象となることに注意!
法12(2)
規則23
介護休業ができる期間  連続3か月の期間を限度に、原則として労働者が申し出た期間です。

 申出回数は1回で休業は連続した一まとまりの期間です。
 (例外:特別の事情のある場合、1回を超えて申出ができる規定があります。)
法15
勤務時間の短縮等の措置を講じていた労働者の介護休業の申し出と介護休業期間  介護休業の期間は、原則、開始日の翌日から起算して3月目の応答日までですが、申出に係る対象家族のために既に、勤務時間の短縮等の措置が講じられていた場合は、当該措置の初日の翌日が起算日になります。(注意!)


法15(1)A
規則30
希望どおり介護休業をするには2週間前の日までに申し出  申し出が遅れた場合、事業主は、申出日から起算して2週間先(申出日の翌々週の応答日)の日まで開始日を延ばす措置をとることができる。
 事業主は繰り延べ措置をとる場合は、原則として申出日の翌日から3日以内に書面で通知します。
法12(3)
規則25
1回に限り事由を問わず介護休業の終了日を繰り下げることが可 (当初、3か月未満の介護休業の申し出がなされていた場合)

 介護休業の終了日の繰り下げは、終了予定日の2週間前までに書面で変更の申し出を行うことにより可能です。
法13
規則26
介護休業の当然終了  次の場合は、介護休業期間は労働者の意思にかかわらず終了します。
(1)申し出に係る対象家族を介護しないこととなったとき(事業主への通知義務があります。)
  (対象家族の死亡、離婚、婚姻の取消、離縁等による対象家族との親族関係の消滅、労働者のケガ・病気等により対象家族を介護できない状態となったとき)
(2)介護休業中の労働者について産前産後休業、育児休業又は新たな介護休業が始まったとき

法15(3)(4)
規則31
介護休業申出の撤回と再申出  介護休業の開始日の前日までであれば、介護休業の申し出を撤回することができます。
 再申出は、同じ対象家族について、1回に限りできます。(事業主は2回目以降の申出は拒むことができます。)
法14(2)
不利益取扱いの禁止
(育児・介護共通)
 解雇の禁止は従来から規定されていたが、H13.11.16施行の改正法で、事業主は、育児休業や介護休業の申し出や同休業をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととされた。
 法律上は、このような事業主の解雇その他不利益な取扱いの意思表示は、無効とされる。

何をもって解雇その他不利益な取扱いというのか?

指針(例示)
例えば、次に掲げるものが該当すること。

イ 解雇すること。

ロ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。

※勧奨退職や正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、これに該当します。

ハ 自宅待機を命ずること。

※事業主が、休業終了予定日を超えて休業することを労働者に強要することは、これに含まれる。

ニ 降格させること。

ホ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと

※休業期間中に賃金を支払わないこと、退職金や賞与の算定に当たり現に勤務した日数を考慮する場合に休業した期間分は日割りで算定対象期間から控除すること等専ら休業期間は働かなかったものとして取り扱うことは、不利益な取扱いには該当しないが、休業期間を超えて働かなかったものとして取り扱うことは、「不利益な算定」 に該当する。

へ 不利益な配置の変更を行うこと。

※配置の変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべきものであるが、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、これに該当する。

卜 就業環境を害すること。

※業務に従事させない、専ら雑務に従事させる等の行為は、これに該当する。
法10
法16
指針
時間外労働の制限の制度  制度の概要

 詳細は、こちらのページを参照してください。
法17
法18
深夜業の制限の制度  制度の概要

 ※事業主は、深夜業の制限の制度をあらかじめ就業規則に規定する必要があります。(労基法89)
 ※労働者の請求は書面を提出して行う必要があります。
 ※事業主は、育児を行う労働者の場合は「子の出生等を証明する書類」の、家族介護を行う労働者の場合は「対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類」の、提出を求めることができます。
 ※事業主は、育児を行う労働者について、あらかじめ、労働者の深夜業の制限期間中の待遇(昼間勤務への転換の有無を含む。)について定め、周知するように配慮すること。
 ※事業主は、育児を行う労働者について、制度の弾力的運用(例えば、週の特定の曜日や深夜の特定の時間について深夜業の制限を受けられるようにするなど)に配慮すること。
 ※次の場合、深夜業の制限期間は労働者の意思にかかわらず終了します。
 育児を行う労働者について
 (1)子を養育しないこととなったとき(事業主への通知義務があります。)
   (子の死亡、子が養子の場合離縁や養子縁組の取消、子が他人の養子になったこと等による同居の解消、労働者のケガ・病気等により子が1歳に達するまでの間、子を養育できない状態となったとき)
 (2)子が小学校就学の始期に達したとき
 (3)深夜業の制限を受けていた労働者について産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まったとき


 家族介護を行う労働者
 (1)対象家族を介護しないこととなったとき(事業主への通知義務があります。)
   (対象家族の死亡、離婚、婚姻の解消、離縁等による対象家族との親族関係の消滅、労働者がケガ・病気等により対象家族を介護できない状態になったとき)
 (2)深夜業の制限を受けていた労働者について産前産後休業、育児休業又は介護休業が始まったとき
法19
法20
その他
勤務時間の短縮等の措置  制度の概要 法23
育児休業・介護休業に関連してあらかじめ定めるべき事項  事業主は、次の事項をあらかじめ定めて周知するよう努めなければならない。
(1)育児・介護休業中の待遇に関する事項
   育児・介護期間中についての賃金その他の経済的給付、教育訓練の実施等が含まれます。注:雇用保険から休業前賃金の40%相当額の休業給付が行われている。(雇用保険法61の4,5,7)
(2)育児・介護休業後の賃金、配置その他の労働条件に関する事項
   昇進、昇格及び年次有給休暇等に関することが含まれます。なお、年次有給休暇の出勤率の算定に当たっては、育児・介護休業をした期間は出勤したものとみなします。
(3)その他の事項
   イ 育児・介護休業が終了した後の労務提供の開始時期
   ロ 労働者が介護休業期間中に負担すべき社会保険料を事業主に支払う方法 注:社会保険(健康保険、厚生年金保険)については、育児休業を行う場合、申出をした日の属する月から休業が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間について被保険者負担分及び事業主負担分ともに保険料が免除されている(健康保険法71の3の2、厚生年金保険法81の2)が、介護休業を行うものについてはこの取扱いがされていない。

 これらの事項は労働者に文書を交付することによって行うことが必要です(規則33)
 一般的には、これらの事項も、就業規則(育児・介護休業に関する規則)に一括して定め周知することが望ましいとされています。(指針)
法21
その他
 その他「育児・介護休業法」は次のような事項についても規定しています。

 ※労働者の配置その他の雇用管理、育児・介護休業中の労働者の職業能力の開発、向上についての努力義務(法22)
 ※3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対する育児休業、勤務時間の短縮等の措置に準じて必要な措置を講ずるようにする努力義務(法24(1))
 ※家族介護を行う労働者について、介護休業、勤務時間の短縮等の措置に準じて必要とする期間、回数等に配慮するようにする努力義務(法24(2))

 ※子の看護のための休暇の措置(法25)=努力義務
 
 ※労働者の転勤に当たっての配慮義務(法26)

 ※妊娠、出産若しくは育児又は介護を理由として退職した者に対しての再雇用特別措置等の実施に努める。

 ※指針の制定(法28)

 ※その他(省略)
法22
法24
法25
法26
法27
法28

以上、文責は労務安全情報センターにあります。(H14.3.25記)