Labour Standards Inspector 労働基準監督官
■英国の工場監督官レイナード.ホーナー
■労働基準監督官
■労働基準監督官の権限行使状況
■ちょっとお遊び!日本の労働基準監督年報/ページ数調べ
■HOMEPAGE
■640/480
英国の工場監督官レイナード.ホーナー ■あのカールマルクスが、資本論(第1巻)のなかで、つぎのようなことを述べている。 「レイナード.ホーナーは、1833年の工場調査委員の一人であり、また1859年ま で工場監督官、実は工場監察官であるがイギリスの労働者階級のために不滅の功績をたて た。彼は、怒れる工場主を相手とするほか、工場における「人手」の労働時間を数えるよ りも、下院における工場主の「票数」を数える方が、はるかに重要事だった大臣たちを相 手としても、終生にわたる闘争をなしたのである。」 ■レイナード.ホーナーの所述から 「どの階級かの人々が、一日12時間も苦しい労働をせねばならないということは確かに 大変痛ましいことである。食事時間と仕事場の往復時間を加えれば、これは24時間のう ちの14時間となる。...健康のことは別としても、労働者階級の時間を13歳の幼児 から、自由な産業ではさらにもっと幼児からさえも、間断なく吸収しつくすことが道徳的 見地からみて非常に有害であり、恐るべき悪弊であることは何びとも躊躇なく認めるであ ろう。... 公共の道徳のために、有為な住民の育成のために、また人民大衆に合理的な生活の享楽を 与えるために、あらゆる事業部門において各労働日の一部分が、休息と余暇のために保留 されることこそ、要望されなければならない。」 ■なお、資本論(向坂訳、岩波文庫版)では、ページ数にして272頁にわたってイギリス の工場監督官の活躍を「工場監督官報告書」から引用している。なんと、文庫1冊に当た る量である。 ■マルクスは、1850年のイギリスの工場法についてふれ、「..この法律の特別の番人 が任命されている。内務大臣に直属する工場監督官がそれであって、その報告は、半年毎 に議会によって公表される。」と述べている。 ■怒れる工場主や大臣たちとの闘争 このページの先頭に戻ります ■1833年から10年間、工場法には「リレー制度」という悪名高い 労働時間制度があった。 「人員はしばしば、12ないし15の部類に分かたれ、さらにこれら の部類自体も、たえずその構成部分を取り替えた。 工場日の15時間の間に、労働者をときには30分、ときには1時間、 引き寄せては突き放し、また改めて工場に引き入れ、工場から突きだ した。 10時間の労働が完了されるまで、..ちりじりばらばらの時間ずつ、 舞台におけると同じように...15時間まで工場に拘束された。」 ■1844年工場法の主要目的は、不法なリレー制度の廃止であった。 工場主は反撃を開始した。 リレー制度は、ながらく、工場主と監督官の闘争の焦点であった。 ■少し、資本論から引用してみよう。 ■工場主は「リレー制度の下で反則を発見することは、いくらか困難で あるかも知れない。しかし、それが何だというのか?工場監督官と副 監督官との僅かばかりの手数を省くために、この国の大きな工場利益 が副次的なこととして取り扱われてよいのか?」と。 ■こんな誤魔化しは、もちろん何の役にも立たなかった。工場監督官た ちは法廷に訴えた。 ■しかし、やがて工場主の陳情は、砂煙のように内務大臣サー.ジョウ ージ.グレーの上に降りかかったので、かれも1848年8月5日の 回章では「少年及び婦人を10時間以上労働させるためにリレー制度 が明瞭に濫用されている場合でなければ、法律の字句にたいする違背 の故をもって一々告発しないこと」と監督官に訓令するに至った。 【スコットランドの監督官は屈服した】 ■これに反してイングランドの工場監督官は、大臣は法律停止の独裁権 を有するものではないと、公言して..続行した。 ■しかし...いくら法廷に召喚しても州治安判事が無罪を宣告すれば、 何になろうか? ■これらの法廷では、工場主諸氏が自分自身を裁判したのである。... 4人の判事が列席し、うち3人は紡績業者で首席にはリレー制度を監 督官から拒否されたことのある工場主が座っていた。無罪! ■監督官ハウェルは叫んでいる。 「この種の法廷茶番は切に矯正手段を要する。...何としても有給 判事(当時の判事は、諸州の有力者からなる一種の無給治安判事であ る)が切望される!」と。 ■レイナード.ホーナーはこう報告している。 「私は、7つの異なる裁判所管区における10回の告発によってこの 法律を励行しようとした試みて、ただ、1回しか治安判事の支持を得 なかった後には、法律違反のかどでこれ以上告発しても無益であると 考える。この法律の労働時間の斉一を実現するために制定された部分 は..ランカシャではもはや存在しない。 ときには、同じ児童および少年が紡績室から織物室へ、ときには、1 5時間の間に一工場から他工場に移された。 「職工たちをカルタのように無限に多様に混ぜ合わせるために、また、 毎日..同一の完全に同じ組の職工が同じ時間に一緒に働くことがな いよう変更するために、交替という言葉を濫用する」制度を、いかに して取り締まるのか!」と。 ■2年にわたる資本の叛逆は、イギリスの4つの最高法廷の一つである 財務裁判所の判決によって、ついに勝利が宣せられた。 1950年2月8日...工場主たちは1844年の法律の趣旨に反 する行動はしたが、しかしこの法律自体が、この法律を無意味ならし める若干の語句を含んでいる。と判決したのである。... これまで、なお少年や婦人に対してリレー制度を遠慮していた一群の 工場主もいまや両手を出してこれに飛びついた。 ■しかし、直ちに激変があらわれた。労働者..彼らがカンカシャおよ びヨークシャにおいて公然と威嚇的な集会を開いて抗議した。 工場監督官たちは、階級敵対が信じられないくらい緊迫している、と 厳しく政府に警告した。 そして、1850年8月5日、追加工場法によって、工場主と労働者 の間に一つの妥協が成立し、リレー制度は一挙に終末があたえられた。 労働者は、労働開始および終了の時間を、斉一化するという利益のた めに、10時間法の恩恵を放棄した。 ■イギリス工場監督官報告書 このページの先頭に戻ります ■半年毎に、議会によって公表されていた。 ■工場主や少年、婦人、労働者の供述にもとづく引用が豊富で、監督官の主張が 明確に述べられているのが特徴である。 ■日本では、制度化されなかった。 ILO(国際労働機関)から義務づけられた「労働基準監督年報」が年1回発 行されているが、統計数字が主体でマルクスが引用したイギリス工場監督官報 告書とは、性格を異にするものである。 ■「誰もマルクスたりえないが、(監督官が)自分の仕事を報告書にすることは 誰にもできる」との声もあるようだが、はたして...。
ちょっと、お遊び! このページの先頭に戻ります
日本の労働基準監督年報−−ページ数調べ
「労働基準法制定後第○○回の労働基準監督年報をここに公にする
本年報は○○年の労働基準行政の活動状況を収録したものである。」
−−−大げさな巻頭のことばがむなしく聞こえる−−
これが労働基準行政の活動状況と思ってよいのか? 初期の監督年報の息吹をよみがえらせよ!
監督年報 |
ページ数 |
監督年報 |
ページ数 |
監督年報 |
ページ数 | 監督年報 |
ページ数 |
第 1回(s23) |
226 |
第21回(s43) |
185 |
第41回(s63) |
81 | 第61回(h20) | |
第 2回(s24) |
461 |
第22回(s44) |
55 |
第42回(h01) |
77 | 第62回(h21) | |
第 3回(s25) |
239 |
第23回(s45) |
52 |
第43回(h02) |
79 | 第63回(h22) | |
第 4回(s26) |
268 |
第24回(s46) |
184 |
第44回(h03) |
77 | 第64回(h23) |
91 |
第 5回(s27) |
310 |
第25回(s47) |
200 |
第45回(h04) |
77 | 第65回(h24) |
95 |
第 6回(s28) |
250 |
第26回(s48) |
73 |
第46回(h05) |
81 | 第66回(h25) |
93 |
第 7回(s29) |
252 |
第27回(s49) |
66 |
第47回(h06) |
81 | 第67回(h26) |
95 |
第 8回(s30) |
201 |
第28回(s50) |
73 |
第48回(h07) |
85 | 第68回(h27) | |
第 9回(s31) |
193 |
第29回(s51) |
71 |
第49回(h08) |
第68回(h28) |
- |
|
第10回(s32) |
231 |
第30回(s52) |
83 |
第50回(h09) |
第68回(h29) |
- |
|
第11回(s33) |
159 |
第31回(s53) |
75 |
第51回(h10) |
第68回(h30) |
- |
|
第12回(s34) |
167 |
第32回(s54) |
73 |
第52回(h11) |
- |
||
第13回(s35) |
167 |
第33回(s55) |
73 |
第53回(h12) |
- |
||
第14回(s36) |
161 |
第34回(s56) |
73 |
第54回(h13) |
- |
||
第15回(s37) |
172 |
第35回(s57) |
71 |
第55回(h14) |
- |
||
第16回(s38) |
152 |
第36回(s58) |
71 |
第56回(h15) |
- |
||
第17回(s39) |
235 |
第37回(s59) |
81 |
第57回(h16) |
- |
||
第18回(s40) |
177 |
第38回(s60) |
85 |
第58回(h17) |
- |
||
第19回(s41) |
169 |
第39回(s61) |
79 |
第59回(h18) |
- |
||
第20回(s42) |
155 |
第40回(s62) |
77 |
第60回(h19) |
- |
5、平成23年以降(23.24.25.26......)版は、厚労省からPDFでネット閲覧ができるようになりました。 労働基準監督年報[ネット版] 労働基準監督官 このページの先頭に戻ります ■労働基準法等(の労働保護法規)は、労働条件の最低基準を設定し、これを民 事上実現する(第13条) と同時に、罰則を設けて、これに違反する使用者を罰する(第13章)ことと して、その実行の確保を期している。 このような民事、刑事処罰の一方で、行政上の「監督制度」がある。 行政的監督は、罰則を背景としてその圧力によって積極的に違反行為の発生を 未然に防止し、また、終息させる働きをもたせたもの。 ■労働基準監督官は、このうち、行政監督権限と刑事処罰(司法警察権)を付与 された労働保護法規の執行官吏である。 監督組織は、国の直轄機関とされ、労働基準監督官は分限審議会の同意がなけ れば罷免できないなどの身分保障も図られている。 ■ILOの労働監督に関する条約は、第12条において労働監督官の権限をつぎ のように定めている。 ○監督を受ける事業場に昼夜いつでも、自由にかつ予告なしに立ち入ること。 ○監督を受けるべきであると認めるに足りる相当の理由があるいずれの場所に も昼間立ち入ること。 ○法規が厳格に順守されていることを確認するため必要と認める調査、検査又 は尋問を行うこと。 特に、 (a)法規の適用に関するいかなる事項についても、余人をまじえずに、又は 証人の立会の下に、使用者又は企業の職員を尋問すること。 (b)(c)(d)略.. 労働基準法第101条は、これらILO条約の趣旨を具体化したものとなって いる。 ■(参考) 最も歴史的に古い工場監督官制度は、イギリスの1933年設置。 その他の国では、フランス1874年、スイス1877年、ドイツ1878年、オーストリ ー1883年などがある。