公共工事の先導で建設業の時短!(建設省)
 ネックの地方公共団体の発注条件が改善されるか

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 建設省の本気を感じさせる通達である。
 しかし、問題は地方公共団体への浸透の如何がポイントとなりそう。現在、地方公共団体の公共工事発注条件は、本要綱が改善するとしている問題点−−−工期の設定と積算、工事の平準化、予期せざる事態に対する契約変更(運用)の硬直性−−−のどれ一つとっても種々の問題がある。要するに、地方公共団体は数が多すぎて統制がとれていないのである。
 要綱が指摘するように、「建設省、公団、地方公共団体等すべての公共工事の発注者が、その役割に関する共通の認識を持って」今後に対応ができるか、という点にポイントはあるのだが、、、。





          「建設産業における労働時間短縮推進要綱」



                             平成9年3月25日
                             建   設   省

1.趣旨

  労働時間の短縮については、建設産業においても、高齢化・少子化が進行し、生産年
 齢人口が長期的に減少してゆくことが予想される中で、「技術と技能に優れた人材が生
 涯を託すに足る」産業として意欲に満ちた若年者を確保し、21世紀に向けて「良いも
 のを安く」供給できる企業の体質強化を図る上で、重要な課題である.特に、平成9年
 度からは、労働基準法に基づき、建設業においても全ての事業場で週所定労働時間40
 時間制に移行することとされており、その円滑な移行のための総合的な取組が求められ
 ている。
  建設産業は、住宅・社会資本整備という重責を担う一方で、個別受注によるため業務
 量が大きく変動すること、屋外中心の作業となることから天候の影響を大きく受けるこ
 となど労働時間の短縮には大きな制約を有している。このため、週40時間労働制への
 円滑な移行のためには、建設現場での効率的な作業などを通じた生産性の向上等の取組
 が必要である。
  こうした中で、建設業界における労働時間短縮への取組をさらに充実させるため、平
 成9年2月20日、総合工事業者と専門工事業者との協議の場である建設生産システム
 合理化推進協議会において、「週所定労働時間40時間制移行に向けての建設業界が取
 り組むべき行動計画」が策定され、週40時間労働制への円滑な移行に努めることとさ
 れたところである。
  建設省としても、平成4年4月6日に策定された「建設産業における労働時間短縮推
 進要綱」等に基づき、従来から、労働時間短縮のための諸般の施策の推進を行ってきた
 ところであるが、住宅・社会資本整備の円滑な推進及ひ建設産業の健全な発展という観
 点からこのような業界の動きを積極的に支援し、週40時間労働制への円滑な移行と建
 設産業における労働時間短縮の推進のために建設省として講ずべき支援措置を明らかに
 するため、本要綱を策定するものである。




2.建設省として講ずべき措置


(1)週40時間労働制に対応した工期と積算の実施

   週40時間労働制の実施に当たっては、これに対応した工期の設定と積算の実施が
  不可欠である。建設省直轄工事においては、平成4年度より既に、4週8休制を見込
  んだ工期を設定することとしてきたところである。
   今後は、建設現場における労働時間の短縮が円滑に進められるよう、週40時間労
  働制に対応した工期の設定と積算を実施する。
   工事の発注に際しては、工事の施工に当たって制約となる諸条件を明示するととも
  に、可能な場合、余裕期間を見込んだ工期設定の活用を図る。また、悪天候による不
  稼働日の増加等、予期せざる事態が発生した結果、工期の遵守が困難となった場合に
  は適切な契約変更を行う。

(2)建設現場における生産性の向上のための取組

   週40時間労働制への円滑な移行のためには、建設現場での効率的な作業の実現を
  通じての生産性を向上させることが特に重要である。
   このため、総合工事業者と専門工事業者とが、変形労働時間制等の建設現場におけ
  る労働時間の設定、工程、工事手順、施工方法等について互いに協力して調整しつつ
  効率的な施工を行うための打ち合わせの体制の整備、機会の確保を促進する。
   また、官民共同による新技術・新工法の開発、民間が独自に開発した新技術・新工
  法の積極的な採用、工作物のプレキャスト化等の技術の開発・活用を推進するととも
  に、標準設計化、工事関係書類の簡素化等のソフト面の業務の合理化を図る。
   さらに、悪天候等自然的条件に左右されず、計画的な施工が可能となる全天候型施
  工法の開発等を推進する。

(3)工事の平準化の実施

   労働時間の短縮に伴い、週休日が増加すれば、現場で多くを占める日給制、日給月
  給制賃金による労働者の収入の減少を招きかねないことが、週40時間労働制移行へ
  の大きな障壁の1つとなっていた。こうした課題に対応し、安定した賃金・雇用形態
  の導入を促進し、週40時間労働制を実現するためには、工事の平準化を進めること
  により、工事量の変動を緩和することが有劾と考えられる。
   このため、計画的発注に努めるとともに、ゼロ国債等の国庫債務負担行為の積極的
  な活用を推進するほか、都道府県及び市町村に対して、ゼロ県債等のより一層の活用
  を要請してゆく。

(4)「公共工事週休2日・現場閉所モデル工事」の実施

   建設業における労働時間短縮に対しては、公共工事がその先導的役割を果たすこと
  が重要であるとの認識から、建設省直轄工事において平成2年度より「公共工事週休
  2日制モデル工事」を実施していたが、今後の週休2日制導入をさらに円滑なものと
  するため、平成9年度以降は、「公共工事週休2日・現場閉所モデル工事」の積極的
  な実施を図るものとする。このモデル工事では、特記仕様書に4週8休での休日と現
  場閉所を明記するとともに、現場閉所の円滑な移行に向けた工事現場の実態、問題点
  の把握とこれに対する改善策のとりまとめを行うこととする。

(5)他の公共工事発注者への要請等

   公共工事が労働時間短縮の先導的役割を果たしてゆくためには、建設省、公団、地
  方公共団体等すべての公共工事の発注者が、その役割に関する共通の認識を持ち、そ
  れぞれの立場で労働時間短縮に関する施策を講ずる必要がある。このため、週40時
  間労働制の導入に対応した工期の設定、積算等の労働時間短縮に向けた取組の実施を
  強く要請し、適切な情報の提供及び助言を行う。特に、地方公共団体に対して、地方
  技術管理協議会等各地域における技術管理業務等に関する各種連絡会議、地方公共工
  事契約業務連絡協議会等の場を活用し、これらの取組の趣旨の周知樹底に努める。

(6)労働基準法の制度の内容の周知撤底のためのキャンペーンの実施

   週40時間労働制を定めた労働基準法の下においても、完全週休2日制の導入に加
  え、1日の労働時間を縮減する方法や1年単位の変形労働時間制を活用する方法など
  が可能である。
   屋外生産、個別受注等の特性を有する建設業においては、週40時間労働制の円滑
  な導入とその定着を図るため、建設業界におけるこうした制度への十分な理解とその
  活用が不可欠であり、また、公共及び民間の発注者の理解を深めることも必要である。
   このため、建設生産シスデム合理化推進協議会の行動計画の趣旨を踏まえ、建設業
  界等に対し、建設産業における労働時間短縮の必要性と制度の具体的な内容の周知徹
  底を図る。また、設計者も含めた建設工事の発注者の理解と協力を得るため、建設省
  が関係省庁との連携の下、建設産業人材確保・育成推進協議会と共同して、設計者・
  発注者に対する要請活動を含めたキャンペーンを全国的に展開する。

(7)建設産業構造改善戦略プログラムの推進

   建設産業の労働時間の短縮は、建設産業の構造改善と密接不可分であることから、
  平成7年6月に策定された建設産業構造改善戦略プログラムに基づき、経営基盤の強
  化のための支援事業の推進、工程管理等の合理化、税制等を活用した建設産業におけ
  る機械化・工場生産化の推進、建設産業における情報ネットワーク化の推進等の支援
  施策を推進する。

(8)進捗状況の評価

   労働時間短縮の進捗状況を評価するため、平成9年秋に労働時間短縮に関する実態
  調査を実施する。