労働時間規制の適用されない人たち
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労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定が適用されない
監督又は管理の地位にある者
(管理監督者)とは

一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり、名称にとらわれず実態に即して判断すべきものである。(昭22.9.13発基第17号、昭63.3.14基発第30号・婦発第47号)。
具体的な判断に当たっては次の考え方によることとされている。

具体的には

労働時間、休憩、休日の規定が適用されない労働基準法第41条の管理監督者の範囲に関する通達
(昭22.9.13発基第17号、昭63.3.14基発第30号・婦発第47号)

(1)原則  法に規定する労働時間、休憩、休日等の労働条件は、最低基準を定めたものであるから、この規制の枠を超えて労働させる場合には、法所定の割増賃金を支払うべきことは、すべての労働者に共通する基本原則であり企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと。
(2)適用除外の趣旨  これらの職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること。従って、その範囲はその限りに限定しなげればならないものであること。
(3)実態に基づく判断  一般に、企業においては、職務の内容と権限等に応じた地位(以下「職位」という。)と、経験、能力等に基づく格付(以下「資格」という。)とによって人事管理が行われている場合があるが、管理監督者の範囲を決めるに当っては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること。
(4)待遇に対する留意  管理監督者であるかの判定に当っては、上記のほか、賃金の待遇面についても無視し得ないものであること。この場合、定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
(5)スタッフ職の取扱  法制定当時には、あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者については、同法第41条第2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること。


管理監督者に適用されない規定は、第4章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定である。
逆に、
管理監督者にも適用されるのは、(深夜業及び休暇関係)の規定である。

以下は、適用除外とならない規定
@ 年少者及び妊産婦の深夜業禁止に関する第61条、第66条第3項
A 割増賃金に関する第37条中深夜業に対する部分(深夜労働に対する割増賃金)
B 年次有給休暇に関する第39条の規定





都市銀行等
(都市銀行13行、長期信用銀行3行、信託銀行7行)
における管理監督者の具体的範囲

(昭52.2.28基発第104号の2)


1.取締役等役員を兼務する者
2.支店長、事務所長等事業場の長
3.本部の部長等で経営者に直属する組織の長
4.本部の課又はこれに準ずる組織の長

5.大規模の支店又は事務所の部、課等の組織の長で1〜4の者と銀行内において同格以上に位置づけられている者

6.1〜4と銀行内において同格以上に位置づけられている者であって、1〜3の者及び5のうち1〜3の者と同格以上の位置づげをされている者を補佐し、かつその職務を全部若しくは相当部分を代行若しくは代決する権限を有するもの(次長、副部長等)

7.1〜4と銀行内において同格以上に位置づけられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の務を担当するもの(スタッフ)


(注)
(1)4の本部の課は、部長−次長−課長という一般的な組織における課をいい、課という名称が用いられていてもこの基準の適用にあたって適切でない場合には、実態に即して判定するものとする。

(2)課制をとっていない場合等、この基準の適用する職位がないときは、各職位の権限、責任、資格等により判定するものとする。」(昭52・2・28基発第104号号の2)。

 
 
 

都市銀行以外の金融機関
(昭52.2.28基発第105号)

 金融機関における資格、職位の名称は企業によってさまざまであるが、取締役、理事等役員を兼務する者のほか、おおむね、次に掲げる職位にある者は、一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えないものと考えられること。


(1)出先機関を統轄する中央機構(以下「本部」という。)の組織の長については次に掲げる者

@経営者に直属する部等の組織の長(部長等)
A相当数の出先機関を統轄するため権限分配を必要として設けられた課又はこれに準ず各組織の長(課長等)

B@−Aと同格以上に位置づけられている者であって、@の者を補佐して、通常当該組織の業務を総括し、かつ、@の者が事故ある場合には、その職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者(副部長、部次長等)
従って、Aの者の下位に属する、例えば副課長、課長補佐、課長代理等の職位は除外されるものであること。


(2)支店、事務所等出先機関における組織の長については、次に掲げる者

C支店、事務所等出先機関の長(支店長、事務所長等)。ただし、法の適用単位と認められないような小規模出先機関の長は除外される。

D大規模の支店又は事務所における部、課等の組織の長で、上記@ACの者と企業内において同格以上に位置づけられている者(本店営業部又は母店等における部長、課長等)
従って、Cの者を補佐する者でD以外の者(次長、支店長代理等)は原則として除外されるものであること。ただしCの者に直属し、下位にある役付者(支店長代理、Dに該当しない支店課長等)を指揮監督して、通常支店等の業務を総括し、かつ、その者が事故ある場合にはその職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有する者であって、@ACと同格以上に位置づけられているものは含めることができること(副支店長、支店次長等)。

(3)@−Cと企業内において同格以上に位置づけられている者であって、経営上の重要な事項に関する企画、立案、調査等の業務を担当する者(いわゆるスタッフ職)



(注)
(1)Aの本部の課長等は、権限分配された職務を実質的に所掌する者であって、その地位にふさわしい処遇をうけているものでなげれぱならない。従って、単なる人事処遇上の実質を伴わない課長等は除外するものである。

(2)支店次長等支店長の直近下位の職制管理者については、その職位にあるからといって、支店長等の職務の全部又は相当部分を代行又は代決する権限を有するものとして取扱うものではなく、その代行、代決の権限が明らかなものに限られる。従って、本来なら次長制を必要としないような規模の支店等に名目上の次長を置いたり、形式的に複数の次長を置く等、実質を伴わない補佐役は含まれないものである。」(昭52.2.28基発第105号)。






 管理監督者の範囲をめぐる 判 例


   
銀行本店の調査役は、管理監督者にあらず

静岡地裁判決昭50年(ワ)第234・308号、静岡銀行事件、昭53・3・28
、「第41条第2号の管理監督者とは、経営方針の決定に参画し或いは労務管理上の指揮権限を有する等、その実態からみて経営者と一体的な立場にあり、出勤退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者と解するのが相当である。」とし、

 「毎朝出勤すると出勤簿に押印し、30分超過の遅刻・早退3回で欠勤1日、30分以内の遅刻・早退5回で1日の欠勤扱いをうけ、欠勤・遅刻、早退をするには、事前或いは事後に書面をもって上司に届出なければならず、正当な事由のない遅刻・早退については、人事考課に反映され場合によっては懲戒処分の対象ともされる等、通常の就業時間に拘束されて出退勤の自由がなく、自らの労働時間を自分の意のままに行いうる状態など全く存しないこと……部下の人事及びその考課の仕事には関与しておらず、銀行の機密事項に関与した機会は一度もなく、担保管理業務の具体的な内容について上司(部長、調査役、次長)の手足となって部下を指導・育成してきたに過ぎず、経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事には全く携わっていないこと

従業員40人の工場の課長は、管理監督者にあらず
大阪地裁判決昭56年(ワ)第6733号サンド事件、昭57・7・12
 従業員40人の工場の課長について、決定権限を有する工場長代理を補佐するが、自ら重要事項を決定することはなく、また、給与面でも、役職手当は支給されるが従来の時間外手当よりも少なく、また、タイムカードを打刻し、時間外勤務には工場長代理の許可を要する場合には、管理監督者にあたらない

ファミリーレストランの店長
大阪地裁判決昭60年(ワ)第2243号レストラン・ビュッフェ事件昭61・7・30
 ファミリーレストランの店長について、コック等の従業員6〜7名を統制し、ウエイターの採用にも一部関与し、材料の仕入れ、売上金の管理等をまかせられ、店長手当月額2〜3万円を受けていたとしても、営業時間である午前11時から午後10時までは完全に拘束されて出退勤の自由はなく、仕事の内容はコック、ウエイター、レジ係、掃除等の全般に及んでおり、ウエイターの労働条件も最終的には会社で決定しているので、管理監督者にあたらない


以上は、労働省労働基準局編「労働基準法コンメンタール」に基づき、公式見解を紹介(少々編集)したものです。
オリジナリティを出した編集は避けております。(労務安全情報センター)




 管理監督者の範囲をめぐる 判 例 (追加)


   
アート・ディレクターとして採用された外国人労働者が管理監督者に該当しないとされた例
東京地裁昭和57年(ワ)11684号ケー・アンド・エル事件昭和59.5.29

 原告はコピー部長の指揮監督を受けて、広告の視覚に訴える部面の製作に従事していたもので、その製作の過程において技術者を指揮監督することはあったものの、労務管理方針の決定に参画し、或いは労務管理上の指揮権限を有し、経営者と一体的な立場にあったとはいえないこと、また、原告の職務の内容は勤務時間について厳格な規制を加えるのには必ずしもふさわしくないが、出退勤については、タイムカードが使用され、遅刻や休日出勤についてタイムカード上明確にされており、上司からも遅刻について注意をされたことがあるなど、原告に対し勤務時間についての管理が行われていたと認められること、原告の賃金については、原告が従前得ていた収入を参考として決定されたもので、監督若しくは管理の地位にあることに対する特別な給与が支払われていたとは認められないこと、更に、雇用契約の締結に際し、休日に勤務した場合には代替の休日が与えられることが約されたこと、以上の事実を総合してみると、原告は、監督若しくは管理の地位にある者であったと認めることはできないといわなければならない。
  
総務局次長は、管理監督者に該当する
東京地裁判決昭62年(ワ)10128号日本プレジデントクラブ事件昭63.4.27
 原告に対して経理のみならず人事、庶務全般に及び事務を管掌することを委ねたこと、総務局次長として任用し、基本給、職能給のほか、役職手当3万円、職務手当5万円、家族手当2万円を支給していたこと、そして、被告の就業規則には、役職手当の受給者に対しては時間外労働手当を支給しない旨の規定があることから、管理監督者に該当する。

 (本件判決が)管理監督者か否かは、専ら就業規則の定めによると解せられるところ、就業規則によると原告に対しては時間外手当を支給しないことになっているのであるから、原告の割増賃金の請求はその根拠を欠くといわねばならない。 (としたのは、独自の見解というべきであろう。)
喫茶店責任者の管理監督者性
東京地裁判決平元年(ワ)第1980号三栄珈琲事件平3・2・26
 労基法41条2項の管理監督者に当たるか否かは、具体的勤務の実態に即して決定すべきであるが、

 原告は、
@パート従業員の採用権限、労務指揮権限を有し、売上金の権利を任されていたこと、材料の仕入、メニューの決定についてもその一部を決める権限を与えられていたこと、店の営業時間は原告が決定したものであること、責任手当として月額金1万円を支給されていたこと、が認められる。

Aしかし、原告の欠勤、早退、私用外出は必ず被告に連絡、パート従業員の労働条件の決定も被告が許容する範囲でのことであり、被告と一体的立場に立って行ったとまではいえず、営業時間も独自に決定できる予定は些少なものであったこと、被告は、店の営業成績が芳しくない場合は、原告の意思とは無関係にいつでもこれを閉店できる立場にあったこと、店は、原告とパート従業員の2名で行っており、原告自らが、パート従業員を補助者として、調理・レジ係・掃除等の役務に従事していたこと、が認められる。

 以上を考え併せれば、いまだ労基法41条2項の管理監督者に該当するとまではいえない。
 
タクシー営業センターの係長、係長補佐は、管理監督者にあらず
京都地裁判決昭63年(ワ)第957,2002号弥栄自動車事件平4・2・4
 管理監督者が、保護の対象から外されている実質的理由は、
@企業体の中で重要な位置を占め、自分自身の職務の遂行方法につき相当程度の裁量権を有していて勤務時間などについても厳格な規制を受けず
Aしかも、職務の重要性に応じてそれに見合う高額の給与を受けているはずであるから、敢えて労働基準法の保護の対象としなくても保護に欠けることはない
という点にある。

 本件における係長級職員は、そのいずれの実態も備えていないとして労働基準法にいう管理監督者にあたらない、とされた。
 
国民金融公庫の支店業務役は、管理監督者にあらず
東京地裁判決平5年(ワ)第10715号国民金融公庫事件平7・9・25
 支店業務役の地位は、本来の管理職の系列に属さない補佐的な役割を有するにとどまり、(原告の場合も、総務課長の権限の一部として検印業務等を行っていたものである)公庫の経営方針の決定や労務管理上の指揮権限につき経営者と一体的立場にあったとは認めるに足る事実は存在せず、管理監督者とは認められない
(平成5年3月以降は時間外手当の支給対象となったこと。)
主任は、管理監督者にあらず
大阪地裁判決平11年(ワ)第533号キャスコ事件平12・4・28
 主任は一般職位の上位にあるものであるが、室長、班長らの指揮監督下にあり、労務管理に関し経営者と一体的な立場にある者で、出退社について厳格な制限をうけない者とは、到底いえない。

 被告は、職能手当、職位手当には(定額の)時間外割増賃金の趣旨を含めて支給していると主張するが、職能手当は一般職位にある者にも支給される手当であり、職位手当はその役職の重要度とランク評価により支給されることになっている手当であって、(かつ、そのいずれも、)割増賃金部分と他の部分とが明確に区分されているとはいえないから、時間外割増賃金が支払われているということはできない。
 


このほか、管理監督者の範囲の判断に係る判例には、以下のものがある。

・日本アイティーアイ事件(1977.7.28東京地裁判決)「営業部主任は、管理監督者にあらず」
・徳州会事件(1987.3.31大阪地裁判決)「病院人事第二課長は、管理監督者に該当する」
・ほるぷ事件(1987.8.1東京地裁判決)「書籍の訪問販売会社の販売主任は、管理監督者にあらず」
・京都福田事件(1989.2.21大阪高裁判決)「本社業務課主任は、管理監督者にあらず」