専門店の時短対応策
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640/480 労働時間総合
(社団法人日本専門店協会&労働省による「専門店の魅力ある職場環境づくりを目指して--時短を契機に経営確信--」(平成8年12月)より専門店の時短対応策の部分を 紹介する。 我が国では、専門店を含む小売業の就業労働者のウエイトが高い。ここで紹介する時短対応策は、広く、小売業一般にも共通する対応策でもある。) 1.勤務時間・休日制度の工夫 2.休日取得のスケジュール化と時間管理体制の強化 3.仕事の流れ、進め方、役割分担の見直し 4 意識改革、能力開発とマネジメント力の向上 5.本部による店舗サポート機能の再構築(小規模店舗対策として) 6 物流、情報の流れ、本部機能の再構築 7.事業展開、組織改革、営業政策の見直し 時短をコストアップにつなげないための 出発点は「仕事の流れ、時間の使い方」の現状分析 各社が直面している問題点 ■営業時間延長、小規模店舗対策という業界の構造的な問題への対応 ■専門店の営業活動にとって不可欠な接客サービスの維持と時短の両立 ■専門店の経営を支える人材基盤の充実、メネジメント力の強化 戻る 専門店の時短対応策 1.勤務時間・休日制度の工夫 時短を進める際、勤務時間・休日制度の工夫としては、業務の繁閑変動に対応して、○ 月ごとの休日数を変更する、○1日の勤務(実働)時間を変更したり、シフト勤務を導 入する、○効果的に連続休暇を導入して休日取得率を高めるなどがあります。その際、 変形労働時間制(l年単位または1カ月単位)をうまく活用すれば、効率的な勤務体制 をつくることが可能になります。 (1)変形労働時間制を活用した休日設定、1日の勤務時間の弾力化 ○1日の所定勤務時間は変えずに、特定の繁忙月(7、]2月など)の休日数を少 なくし、その他の月に多く設定する。 ○業務の繁閑変動に合せて、季節や曜日によって1日の勤務時間を変更する。 (2)変形労働時間制とシフト勤務の併用による勤務体制の工夫 ○早番、遅番、中番などシフトの多様化や、通し勤務とシフト勤務を組み合わせる などして、営業時間や繁忙時間に合わせた勤務体制をつくる。 (3)店舗や部門の特徴に合わせた休日設定の工夫 ○店舗、部門の事情に応じて、休日の設定の仕方を変える。 (4)フレックスタイム制、みなし労働時間制の導入 ○特定の職場・職種(企画開発部門、バイヤー、外商担当など)を対象に、「フレ ックスタイム制」や「みなし労働時間制」を導入する。 (5)連続休暇制度の導入・拡大 ○季節単位または上半期と下半期に分けて連続休暇を導入するなど、連続休暇の時 期の設定や取得方法を工夫する。 ○店長、管理職など、普段の休日取得が進みにくい、特定の階層を対象とした連続 休暇を実施する。 戻る 2.休日取得のスケジュール化と時間管理体制の強化 休日取得のスケジュール化の工夫は、一斉に休める日(休業日または閉店日)が少なく、 交替て勤務せざるを得ない専門店では、特に重視しだい方策てず。ここで大切なことは、 第1に、全社的な会議や行事の日程を早めに設定するなど、店舗でのスケジユール作成 を容易にするための環境整備、第2に、勤務スケジュールを作成する際の方法、ツール、 ノウハウなどを用意しておくことです。 また、勤務時間、休日の制度が整備されても、それが効果的に運用されるためには、残 業・休日出勤の削減、代休取得促進の取り組みを通じて、時間管理のルールを定め、時 短への意識づけを図ることが必要になります。 (1)休日取得のスケジュール化とそのための工夫 ○「出勤計画表」、「休日スケジュール表」、「スケジユール作成マニュアル」を 用意して従業員の勤務計画を調整するなど、休日取得のスケジュールをつくるた めの手順を整備する。 ○全社的な行事の日程(店長、バイヤーの会議など)を早めに決めるなど、店舗で 勤務スケジュールを作りやすくするための体制整備を図る。 (2)残業・休日出勤の削減、代休の取得促進など時間管理のレベルアップ ○ノー残業デイの実施や、月単位での合計残業時間の削減など、全社的な勤務時間 の適正管理を行う。 ○残業せざるを得ないときは、事前の申講を義務づけるなど、所定外勤務のルール を定める。 ○休日出勤するときは、必ず振替休日をとる日程を決めて申請するというルールを 定め、振替休日の取得を徹底させる。 戻る 3.仕事の流れ、進め方、役割分担の見直し これらの取り組みは、仕事の内容や方法、進め方を見直して、作業の流れと人の動き方 を効果的に組み立てていくものであり、マネジメシト力の向上や本部機能の拡充ととも に、まさに業務改善の基本となるものです。人の動き、商品の流れ、情報の流れが交錯 ずる売場においては、それらをいかに整理して、合理的に組み立てるかがきわめて大切 なポイントになります。 また、役割分担の見直しのところでは、仕事を進める際の人の配置や役割分担を効果的 に組み合わせる工夫や、コミュニケーションを円滑にする工夫を記しています。 (1)仕事の内容、方法、進め方の見直し ○事務作業や会議・ミーティングの削減、統合、廃止など、作業内容の必要性を検 討し、見直しを図る。 ○接客マニュアル、作業マニュアルの作成・活用など、作業の標準化・マニュアル 化を進める。 ○1日の作業手順の見直し、週間・月間の作業計画の見直しなど、作業時間帯、作 業スケジュールの変更と効率化を進める。 ○出勤計画、要員計画の作成と合わせて、店舗業務の計画的な遂行を図る。 ○手持ち時間を有効活用して、顧客への電話、DM作成、商品知識の向上などを図 る。 ○人の動き、商品の動きを考慮して店舗レイアウトの改善を図り、作業効率を上げ る。 (2)役割分担の見直し ○担当者が不在で業務が止まることのないように、交替要員を置いて休める体制づ くりをする。 ○異なる部門間または店舗の中で、役割分担の見直しや相互に応援する体制づくり をして、業務の繁閑変動に対応しやすい組織をつくる。 ○正社員とパート・アルバイトとの役割分担を明確化して、無駄のない仕事の進め 方をする。 ○店舗の従業員が共通に固定客を覚えて、来店時に対応できるようにする。 ○掲示板の活用、連絡ノートの作成などにより、店内のコミュニケーションに関す る工夫、改善を図る。 戻る 4 意識改革、能力開発とマネジメント力の向上 専門店の経営体質強化の基本として、店舗の営業力、顧客対応力を高めることが大切で すが、その際に、○店長、管理職の指導力、マネジメント力の向上と、○従業員の接客 販売能力、商品知識の向上を図ることが不可欠てす。また、時短を進めながら業務を円 滑に進めるには、それを担当する従業員のスキルアップが求められます。ここでみる多 能化や代行者育成の取り組みのように、時短を人材育成につなげていくという視点が、 非常に重要てす。 さらに、パート・アルバイトを活用する前提として、仕事の見直しや業務の標準化・マ ニュアル化、教育制度の充実、勤務条件、処遇の改善などが行われている点が注目され ます。 (l)店長、管理職の時間意識の改革、マネジメント能力の向上 ○店長、管理職に勤務時間管理と時間の効率的な活用、時短の意義などを浸透させ 、時間意識の改革を図っていく。 ○集合研修の実施、人事考課項目の改定などを通して、店長、管理職の指揮・管理 能力の向上を図る。 ○店長教育に「方針管理」、「目標による管理」を取り入れて、経験や勘に頼るの でなく、業務のプロセスを合理的に管理することを浸透させる。 (2)社員、パ一トの教育による能力アツプ ○階層別・職種別教育体系の整備や販売・接客のスペシャリストの養成講座の実施 、資格取得の奨励などにより、実務能力、専門知識を高める。 ○ジョブローテーションで仕事・経験の幅を広げたり、プロジェクト・チームヘの 参加など能力開発の機会を充実させる。 ○テキストやマニュアルの活用、販売員手帳や顧客ファイルの携帯など、売場での OJTや自己啓発を効果的に行うための仕組みを工夫する。 (3)多能化、代行者の育成 ○店舗内の基本的な仕事は全員がこなせるように多能化教育を進め、機動的な要員 配置ができるようにする。 ○「店長代行」を任命し、店長が休みの日はその人が責任をもつことにより、下部 への権限委譲を通じて代行者の育成を図り、店長も休める体制づくりを進める。 (4)パ一ト・アルバイトの活用など雇用形態の多様化 ○パート・アルバイト活用のための条件整備を進める(管理職に対するパート活用 の教育、作業の標準化とマニユアルづくり、独自の教育・研修制度、処遇制度、 評価制度などの整備) ○準社員制度、年俸制の接客販売のスペシャリスト、短時間正社員など、さまざま な活用形態を工夫する。 戻る 5.本部による店舗サポート機能の再構築(小規模店舗対策として) 専門店では、要員管理などの画で、小規模店舗問題への対応が大きな課題になっていま す。これについては、急な欠勤や欠員が出たときや、繁忙時への対応として、店舗間応 援、ブロック機能の充実、本部からの応援体制などの確立とともに、要員の見直しをし て全社的な生産性を考慮した対策をとることが求められます。 ○小規模店舗の要員を見直したり、パート・アルバイトの補充をする。 ○ブロック単位で応援要員を置いたり、ブロック内の店舗間で相互に応援できる体制を つくる。 ○必要に応じて本部のスタッフやバイヤーが店舗へ応援に行く体制をつくる。 ○本部でパート・アルバイトを募集・契約して、人が足りない店舗へ派遣する。 戻る 6 物流、情報の流れ、本部機能の再構築 専門店は、小規模店舗を広域に展開しているため、これまでみてきた個店の取り組みだ けでは時短の推進に限界があります。そこで、会社全体の効率を上げるためには、店舗 を支えている、物流、情報の流れや本部の機能を整理し直すことがもう一つの取り組み の柱になりまず。事例では、店舗レベルでの取り組みと並行して、本部機能の再構築や システムづくりが行われている点が注目されます。 (1)物流機能、センター機能の見直しによる店舗のパックアップ ○物流センターや商品センターの設置による配送の効率化、納品時間の短縮や定時 化、納品方式の見直しなど、物流機能の充実により店舗作業の計画化や省力化を 促進させる。 ○サービスセンターや加工センターの設置により、納品サービス、修理、加工など の業務を集中化して、店舗作業の省力化を図る。 ○指示書、報告書などの書類の見直し、統一、削減をはじめ、本部・店舗間の情報 の流れ(指示の出し方、報告の仕方、情報伝達形式など)を見直し、改善する。 (2)情報機器の活用 ○情報機器の活用による業務の効率化、省力化(FAX、POS、コンピュータな どの導入・活用で、連絡・報告、レジ、伝票処理、棚卸し、商品管理、補充発注 、顧客管理などの作業を改善する) ○POSなど情報機器の活用により、勤怠管理、勤務時間管理や曜日・時間帯別の 要員管理レベルを向上させる。 戻る 7.事業展開、組織改革、営業政策の見直し これらは時短と無関係に見えるかもしれませんが、企業の経営体質強化や高付加価値化 という点で、重要な取り組みです。特に、営業形態の見直しは、小規模店舗問題への抜 本的な対策としても注目されます。また、近年の不況の下では、店舗の営業力強化をい かに図るかが緊要な課題となっていることが推察されます。 (1)高付加価値化の推進 ○接客サービスの充実、パフオーマンス性の向上などを通じた客単価の向上 ○商品開発力の強化による売上、利益率の向上 (2)営業形態の見直し ○出店政策の見直し(店舗規模の大型化、特定の地域への集中出店、SC出店時の 営業条件の見直し) ○販売方式の見直し(接客重視の商品とセルフ販売の商品とを区分し、業務効率を 引き上げる) ○営業時間、営業日数の見直し (3)店舗の営業力強化、組織改革 ○店舗でのバイイングの強化や独白の販促企画の実施により、店舗の営業力を強化 する。 ○組織の簡素化・フラット化、外商部門の分離など、営業組織の見直しを進める。