残業割増賃金の計算方法
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mokuji

割増賃金の率
割増賃金の一般計算式

月給者又は日給・時給者に対する月決め手当がある場合の計算式
計算式の分子となる残業手当(休日、深夜労働も同じ。)の計算基礎となる賃金はなにか
計算式の分母となる1か月平均所定労働時間数の出し方

(具体例)

各種賃金形態別の割増単価(1時間当たり賃金)の出し方
□時間給の割増単価の出し方
□日額賃金の割増単価の出し方
□月決め賃金の割増単価の出し方
□請負給の割増単価の出し方
□年俸制賃金の割増単価の出し方

参考
労基法施行規則第19条(割増賃金の基礎となる賃金の計算)









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割増賃金の率

現在、時間外・休日、深夜労働に対する割増賃金率は、割増賃金令(平成11年1月29日政令第16号)及び労基法施行規則第20条によって、つぎのように定められています。

原則

時間外労働
(法定8時間を超える労働)
2割5分以上
深夜労働
(午後10時〜午前5時)
2割5分以上
休日労働
(法定4週4日の休日の労働)
3割5分以上

重複パターン

時間外労働と深夜労働の重複 5割以上
休日労働と深夜労働の重複 6割以上
休日労働と時間外労働の重複 3割5分以上





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割増賃金の計算式


時間外、休日労働の割増賃金の計算は、次式によります。
【   】は、割増賃金の計算基礎となるべき賃金の1時間当たり単価ですが、この正しい算出が計算に当たってポイントとなります。
基本給の1時間単価 諸手当の1時間単価 法定除外手当の1時間単価 × 時間外又は休日労働時間数 × 1.25
(時間外労働の場合)
1.35
(休日労働の場合)



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ポイント解説
 
 
月給者又は日給・時給者に対する月決め手当がある場合の計算式

 わが国では、賃金形態の如何に関わらず(月給者はもちろんですが、日給者、時給者の場合でも)、月を単位とする手当が支給されていますから、この場合の計算に必要となる1年を平均した1か月平均所定労働時間数を割り出す方法(算出方法)をマスターしておくことが重要です。

 月決め賃金(手当を含む。)の場合の残業手当の計算式は、次によります。
 例:時間外労働(残業)の場合(休日労働の場合は、休日労働時間数と1.35の割増率で計算します。)

    残業手当の計算基礎賃金(賃金総額−法定除外手当)
   ------------------------------------------------ × その月の残業時間数 × 1.25
    (年を平均した)1か月平均所定労働時間数


 この計算式のポイントは、つぎの2点です。
 (1)分子となる残業手当の計算基礎となる賃金はなにか(より実務的には、除外できる賃金はなにか)
 (2)分母となる1年間を平均して算出する1か月平均所定労働時間数の出し方

 






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(1)計算式の分子となる残業手当(休日、深夜労働も同じ。)の計算基礎となる賃金はなにか

残業手当の計算基礎賃金
通常の労働時間または労働日の賃金
→但し、右の賃金は割増賃金の計算基礎から除外することが可能

除外される賃金

@→ 家族手当 (労基法37条2項)  
A→ 通勤手当 (労基法37条2項)  
B→ 別居手当 (施行規則21条1号)  
C→ 子女教育手当 (施行規則21条2号)  
D→ 住宅手当 (施行規則21条3号) 除外対象となる住宅手当の範囲は、H11.3.31基発第170号通達で定められている。
E→ 臨時に支払われた賃金 (施行規則21条4号) 結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など。
F→ 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 (施行規則21条5号) 賞与、1か月を超える期間ごとに支払われる精勤手当、勤続手当、奨励加給など。




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(2)計算式の分母となる1か月平均所定労働時間数の出し方

 基本給が月額で定められている場合及び、月決めの手当についての1時間当たり単価の算出は、月額を1か月における所定労働時間で除す(施行規則第19条)ことになりますが、月の所定労働日数は異なるのが通例ですから、1年間を平均して1か月の所定労働時間数を算出することが必要です。
 1年間は原則暦年です。但し、就業規則に定めがあれば4月〜3月等の1年間とすることもできます。


 平成13年(365日)の場合
 (365−年間総休日日数)÷12×1日の所定労働時間数

 例:
年間休日105日、1日の所定労働時間7時間のケースを当てはめると、
 (365−105)÷12×7=151.6時間が1か月の平均所定労働時間数となります。










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具体例
 以下、各種賃金形態別の割増単価の出し方について、具体例(計算例付き)を掲載しておきますので、参考にしてください。

各種賃金形態別の割増単価(1時間当たり賃金)の出し方

 


(1)時間給
時間給の割増単価の出し方
 時間給はもともと1時間単価が定まっていますからこの金額に時間外等の時間数と割増率を乗じます。
 もっとも、時間給に加えて月決め手当(精勤手当など)が支給されているとき、その手当部分の1時間当たり単価は、(3)の月給制などの欄で説明する方法で算定します。
計算例1 時間給の例  時給1,000円の労働者がある日の午前8時から深夜の11時まで通しで14時間労働した場合 a(基本賃金)1000円×8時間=8000円
b(時間外割増賃金)1000円×1.25×6時間=7500円
c(深夜割増賃金)1000円×0.25×1時間=250円
a+b+c=15,750円以上の支払いが必要です。
計算例2 時間給の例  時給1,000円、通勤手当が月額12,000円、精勤手当が月額8,000円の労働者が、ある月に110時間働いた。
 ところが、その月の特定の1日だけ、午前8時から深夜の11時まで通しで14時間労働したが、この場合の賃金支給総額はどのように計算するか
a(基本賃金)1000円×110時間=110,000円
b(通勤手当)12,000円
c(精勤手当) 8,000円
d(基本賃金の時間外割増賃金)1000円×1.25×6時間=7500円
e(基本賃金の深夜割増賃金)1000円×0.25×1時間=250円
に加えて、
 通勤手当及び精勤手当のように月額で定まった手当部分の計算が必要です。具体的には、通勤手当は除外賃金ですから割増賃金の計算基礎に入らないのですが、精勤手当8,000円は(3)の月給制などの欄で説明する方法で算定します。
この例に当てはめると、
f(精勤手当の時間外割増賃金)8000÷151.6×1.25×6時間=396円
g(精勤手当の深夜割増賃金)8000÷151.6×0.25×1時間=66円

従って、この方の賃金支給総額は
a+b+c+d+e+f+g=138,212円となります。
(2)日給
日額賃金の割増単価の出し方
 日給で賃金を決めている場合は、その日額を1日の所定労働時間数で除すれば1時間単価がでます。但し、毎日が同じ所定労働時間ならこれでよいのですが、下の例(計算例3)のように、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数でその日額を除して1時間単価を算出します。
 また、日給に加えて月決め手当(精勤手当など)が支給されているとき、その手当部分の1時間当たり単価は、(3)の月給制などの欄で説明する方法で算定します。
 
計算例3 日給の例  月〜金が7時間、土が4時間の所定(きまり)で働く日給10,000円の労働者がある月に法定内15時間、法定10時間の計25時間の時間外労働をした場合 a(10000円÷(39時間÷6))×1.00×15時間=23,077円
b(10000円÷(39時間÷6))×1.25×10時間=19,231円
a+b=42,308円以上の支払いが必要です。
(3)月給制など
月決め賃金の割増単価の出し方
 (再掲)
 基本給が月額で定められている場合及び、月決めの手当についての1時間当たり単価の算出は、月額を1か月における所定労働時間で除す(施行規則第19条)ことになりますが、月の所定労働日数は異なるのが通例ですから、1年間を平均して1か月の所定労働時間数を算出することが必要です。1年間は原則暦年です。但し、就業規則に定めがあれば4月〜3月等の1年間とすることもできます。

平成13年(365日)の場合
(365−年間総休日日数)÷12×1日の所定労働時間数
例:年間休日105日、1日の所定労働時間7時間のケースを当てはめると、
(365−105)÷12×7=151.6時間が1か月の所定労働時間数となります。
すなわち、月額で定められた基本給、諸手当の総額を、151.6時間で除したものが、その人の割増賃金の1時間当たり単価となります。
計算例4 月給の例  基本給月額250,000円、職務手当20,000円、調整手当20,000円、精勤手当8,000円、家族手当12,000円、通勤手当15,000円の月額合計32万5000円の支給を受けた労働者が、平成13年5月に、1か月30時間の時間外労働を行った場合
この場合、時間外手当の計算基礎となる賃金月額は
325,000−(除外賃金の家族手当12000+通勤手当15000)=298,000円となりますから、次式により割増賃金を計算します。
298000円÷151.6時間×1.25×30時間=73,714円
(4)請負給
請負給の割増単価の出し方
 請負給は、時間対応賃金があらかじめきまっておらず、成果に対応した賃金が請負給として支払われます。この場合の割増単価の出し方は、「請負給の総額を稼ぎ出すのに要した総労働時間(時間外、休日労働時間数も含む。)」によって算定します。
計算例5 請負給の例  基本給100,000円、歩合給150,000円の労働者が月に192時間働いた。そのうち、20時間は時間外労働だった。この場合、労働者の受けとる賃金総額は、どのように計算するか a(基本給)100,000円
b(請負給)150,000円
c(割増賃金)(100,000円÷172時間×1.25+150,000円÷192×0.25)×20時間=18,442円
従って、支給すべき賃金総額は、a+b+c=268,422円となります。
(5)年俸制
年俸制賃金の割増単価の出し方
 賃金支払形態の如何によって、割増賃金の支払いの要不要がきまることはありません。年俸制賃金においても、時間外労働、休日労働、深夜労働に係る割増賃金の支払いは当然に必要ですから、注意が必要です。
 年俸制賃金は労働基準法上は、施行規則第19条にいう「月、週以外の一定の期間によって定められた賃金」に該当します。この場合の割増賃金の計算は次によります。
(1)年俸を12か月で除して月額賃金を出す
(2)(1)を1か月の所定労働時間で除した金額に割増率を乗じたものが、1時間当たりの割増単価となります。
 この際注意を要するのは、賞与の扱いです。
 年俸額を確定し、それを17で除して12を毎月支払、5を賞与して支払うケースの場合、毎月の支払部分だけが割増賃金の計算基礎賃金になるのではありません。賞与相当額の5を含めた全年俸額を計算基礎にしなければなりません。

 同じ年収になる場合でも、@確定年俸であらかじめ賞与相当額を確定する場合、と、A通常の月額給与で、賞与は査定(実態は労働者間にそれほどの差が設けられない場合でも)支給とする場合、を比較すると、使用者のコスト負担は、明らかに年俸制の方が重くなります。
計算例6 年俸制の例  1か月平均所定労働時間数が151.6時間の制度において、年俸500万円の労働者が、ある月に10時間の法定時間外労働を行った。時間外手当額は、どのように計算するか。 この場合の時間外手当額は、つぎのとおりです。

 (5,000,000円÷12月)÷151.6時間×1.25×10時間=34,356円




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参考

なお、労働基準法は、施行規則第19条で割増賃金の基礎となる賃金の計算方法を次のように規定しています。

労働基準法施行規則第19条
 法第37条第1項の規定のよる通常の賃金又は通常の労働日の賃金の計算額は、次の各号の金額に(時間外・休日・深夜労働の)時間数を乗じた金額とする。
@ 時間給  時間によって定められた賃金については、その金額
A 日給  日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数(日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日平均所定労働時間数)で除した金額
B 週給  週によって定められた賃金については、その金額を週における所定労働時間数(週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週平均所定労働時間数)で除した金額
C 月給  月によって定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月平均所定労働時間数)で除した金額
D 旬給等  月、週以外の一定の期間によって定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
E 請負給  出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金計算期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金計算期間における、総労働時間数で除した金額
F @〜Eの賃金の2以上よりなる場合  労働者の受ける賃金が前各号の2以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によってそれぞれ算定した金額の合計額
G 休日手当  休日手当その他前各号に含まれない賃金は、前項の計算においては、これを月によって定められた賃金をみなす。