29-10 厚生労働省から平成20年9月にチェーン(多店舗)展開の形態をとる小売業、飲食業の店舗における管理監督者の範囲の取扱いについて、新取扱い通達が出されたと聞きましたが、どういうものですか?  戻る

■ それは、H20.9.9付け基発第0909001号通達です。小売業、飲食業等においていわゆるチェーン店の形態により店舗展開している小規模店舗の店長等の管理監督者性について、判断要素を整理したとするものです。
この通達では、「7つの判断要素を示し、それらに該当する場合は管理監督者を否定する重要な要素になる(他に肯定する有力な要素があれば別、その意味ではあくまで基本通達に則り総合的に判断することになる)。」として“管理監督者性を否定する要素”という観点から判断基準を整理しています※1。(なお、7つの要素以外にも管理監督者性を否定する補強要素として4つの要素が示されています。)
 ※1 なお、7つの要素の一つに該当するからといって直ちに管理監督者性が否定されるという意味ではありません。他に、管理監督者性を肯定する要素があるなら、それも含めて総統的に判断してゆくというところに、通達の本旨があるようです。

したがって、新取扱通達の7+4の要素に該当しない場合の対応を見誤らないようにしなければなりません。新取扱通達が、その前文で触れているように、「これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではない」ことに留意することが大切です。

■ H20.9.9付け基発第0909001号通達は、次の7つの判断要素を店長等の管理監督者性を否定する重要な要素としています。(●については、補強要素とされています。)

1 職務内容、責任と権限についての判断要素
(1) [採用]アルバイト・パート等の採用について責任と権限がない
(2) [解雇]アルバイト・パート等の解雇について職務内容に含まれず、実質的にも関与しない
(3) [人事考課]部下の人事考課について職務内容に含まれず、実質的にも関与しない
(4) [労働時間の管理]勤務割表の作成、所定時間外労働の命令にについて責任と権限がない

2 勤務態様についての判断要素
(5) [遅刻、早退等に関する取扱い]遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる
次の要素は、管理監督者性を否定する補強要素となる。
● [労働時間に関する裁量]長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量がほとんどない
● [部下の勤務態様との相違]労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占める

3 賃金等の待遇についての判断要素
(6) [時間単価]時間単価換算した場合にアルバイト・パート等の賃金額に満たない
(7) [時間単価]時間単価換算した場合に最低賃金額に満たない
次の要素は、管理監督者性を否定する補強要素となる。
● [基本給、役職手当等の優遇措置]役職手当等の優遇措置が割増賃金が支払われないことを考慮すると十分でなく労働者の保護に欠ける
● [支払われた賃金の総額]]年間の賃金総額が一般労働者と比べ同程度以下である [労務安全情報センター]