29-11 新通達(H20.9.9付け基発第0909001号)の判断基準は、マック判決等の判例の考え方から見ると非常に緩やかな取扱いに思えるのですが、当面、多店舗展開の小売業、飲食業の店舗はこれを守っていけば大丈夫でしょうか? 戻る
■ 誤解があるようです。H20.9.9付け基発第0909001号は、企業の順守基準(あるいは適正化基準)として示されたものではありません。
新通達は、管理監督者の範囲については、あくまで基本通達(S22.9.13基発第17号、S63.3.14基発第150号)に基づいて総合判断を行っていくことに変わりはないのであるが、チェーン展開の小売業、飲食業の店舗における店長等の管理監督者性を判断する場合において、店舗等の実態からみて、いくつかの管理監督者性を否定する典型的な(重要な)要素と云えるものがあるから、参考として示すので、総合判断を行うに当たって、考慮されたい、といった趣旨のものです。
■ したがって、企業がこれを守って行けば大丈夫というライン引きを行った訳ではないことに、注意を払うべきです。
新通達の前文が、「これらの否定要素が認められない場合であっても、直ちに管理監督者性が肯定されることになるものではない」としているのは、極めて重要なコメントです。
■ 率直に申しますと、この通達を順守することだけでは、問題は解決しないと思われます。
新通達では、裁判における最大の争点である「経営者と一体的な立場にあるような者」という観点からの否定・肯定要素には全く触れていません(基本通達17号・150号通達で触れており、新通達はそれを補強するものでしかないという趣旨からでしょう)。
この意味からも、新通達は、基本通達と併せ読みを行なうことが大切です。本通達の対象である多店舗展開の企業においては、改めて新通達の性格を正しく理解し、少なくとも新通達が問題視している要素は、排除するとともに、自社における管理監督者の適正取扱いラインを、裁判の判決動向に留意しながら見直していくことが重要だと思われます。 [労務安全情報センター]