中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告
平成12年12月7日
中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会(以下「目安全協」という。)は、平成11年4月の中央最低賃金審議会総会において現行目安制度の見直しについて付託を受け、その後、16回にわたり主として<1>ランク振分け等ランク区分の見直し、<2>表示単位期間のあり方、<3>表示方法のあり方、<4>参考資料のあり方、<5>経済情勢等を踏まえた目安の決定のあり方の5つの課題について、近年における経済社会情勢等の変化を踏まえつつ、鋭意検討を行ってきた。
このうち、<1>のランク振分け等ランク区分の見直し及び<5>の経済情勢等を踏まえた目安決定のあり方の2つの課題については、平成12年度の目安審議が開始される前に一応の整理を行うべきとの考えの下、先行して検討を進めた結果、平成12年3月24日に中間報告(目安制度のあり方に関する全員協議会の検討状況の中間的な取りまとめについて)として取りまとめ、同日、中央最低賃金審議会総会において了承されたところである。
今般、残された3つの検討課題についても目安全協報告として、下記のとおり取りまとめたので報告する。
記
1 基本的考え方
目安制度については、「今後の最低賃金制のあり方について(昭和52年12月15日中央最低賃金審議会答申)」に基づき昭和53年度に発足して以来、おおむね20年にわたり継続して適切に運用されてきたところであり、その間、同制度は経済社会情勢等の変化に対応しつつ必要な見直しを行うことにより、地方最低賃金審議会が地域別最低賃金額を改定する際の重要な参考資料である目安を提示する制度として定着してきたものである。
こうしたことから、目安制度については、今後とも経済社会情勢等の変化に対応した適切な見直しを図りつつ、基本的には同制度を維持していくことが適当である。
2 表示単位期間について
(1) 地域別最低賃金額の表示単位期間については、「最低賃金額の決定の前提となる基本的事項に関する考え方について(昭和56年7月29日中央最低賃金審議会答申)」において、「表示単位としては、賃金支払形態、所定労働時間などの異なる労働者についての最低賃金適用上の公平の点から、将来の方向としては時間額のみの表示が望ましいが、当面は、現行の日額、時間額併用方式を継続する。」とされたが、「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告(平成7年4月28日中央最低賃金審議会了承)」においては、「当面、現行どおり日額・時間額併用方式を維持することとする。」とされたところである。
(2) しかしながら、昭和56年から約20年を経過した今日、就業形態の多様化は更に進展しており、パートタイム労働者の比率は、昭和56年の10.2%から平成11年には21.8%と倍加するなど、賃金支払形態が時間給である者は増加し、また、一日の所定労働時間の異なる労働者が増え、そのばらつきは増加傾向にある。
さらに、実際に最低賃金の影響を受ける労働者の就業実態をみると、主に賃金支払形態が時間給のパートタイム労働者が多くなっている状況にある。
したがって、このような経済社会情勢の変化の方向性を見据え、最低賃金適用上の公平の観点及び実情を踏まえれば、表示単位については、現行の日額・時間額併用方式から時間額単独方式へ一本化することが適当である。
(3) 他方、表示単位期間を時間額単独方式とする場合、各都道府県において定められている最低賃金額の日額と時間額との関係をどのように考えるかという課題があり、この他現在のランク別に金額で示す表示方法が適当かどうか等の論点も考えられるところである。
このため、表示単位期間については時間額単独方式への移行を基本としつつ、その実施に際しては、整理すべき具体的な課題について十分な検討を行い、結論を得ておく必要がある。特に、日額と時間額との関係については、都道府県によっては時間額表示の金額で日額に換算した場合、従来定められていた日額単位の最低賃金額を上回る場合もあり得ることから、移行に際して十分な議論が必要である。
今後は移行に当たっての条件整備を図っていくために、具体的な検討事項につき可能な限り早急に検討を開始し、早期に結論を得るべく努力すべきである。
表示単位期間については、当該検討における結論が得られ、条件整備が図られた段階で、日額・時間額併用方式から時間額単独方式に移行するものとする。
(4) なお、表示単位期間を時間額単独方式に切り替えるまでの間については、現行の日額・時間額併用方式を維持することとする。
3 表示方法について
目安の表示方法については、これまでの慣行(目安は額で示すが、その算定においては各ランク同率の引上げ率となるようにしてきたこと)が定着してきていることを踏まえ、ランク制度の意義を損なわないようにするため、当面は現行の各ランクごとの引上げ額による表示を引き続き用いることとする。
4 参考資料のあり方について
これまでも中央及び地方最低賃金審議会の審議に当たっては、最低賃金法第3条に規定されている最低賃金の決定に当たって考慮すべきこととされている、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払能力に係る各種統計資料を収集・整備してきたところである。今後とも審議における公労使三者の合意を重視する観点から、例えば賃金構造基本統計調査により影響率を集計するなど、最低賃金の水準や影響について様々な観点からの検討及び評価を行うための参考資料の一層の整備・充実を図ることが適当である。
|