有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告(平成12年9月)
■HOMEPAGE
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*1 平成9年12月11日「労働時間法制及び労働契約等法制の整備について(建議)」 *2 衆議院労働委員会「労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成10年9月3日)及び参議院労働・社会政策委員会「労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成10年9月24日) |
*3 「有期契約労働者に関するアンケート調査」 労働省の委託に基づいて株式会社三和総合研究所が平成11年10〜11月に実施。 調査手法及び調査結果については、報告書参考資料1を参照されたい。 同調査では、有期契約労働者を雇用形態別に次のように分類している。 パートタイマー…調査事業所でパートタイマーとしている者のうち有期労働契約の者 短時間パートタイマー(正規社員より勤務時間の短いパートタイマー)と長時間パートタイマー(正規社員と勤務時間が同じまたはそれ以上のパートタイマー)に分けて集計した箇所がある。 臨時雇……………臨時的・季節的な業務量増加に対応するため、臨時的に雇用している者で、正社員と1日の所定労働時間及び1週の所定 労働時間が同一の者(期間工、季節工等) 契約社員…………専門的又は特定の職種に従事させることを目的に、期間を定めた契約に基づき雇用している者(嘱託等を含む) その他有期………有期労働契約の者で、パートタイマー、臨時雇、契約社員のいずれにも該当しない者(アルバイト等) なお、正規社員は「雇用している労働者のうち、特に雇用期間を定めていない者」と定義した。 *4 労働力調査における定義は次のとおりである。 雇用者:会社、団体、官公庁又は自営業主や個人家庭に雇われて給料、賃金を得ている者及び会社、団体の役員 臨時雇:雇用者のうち1か月以上1年以内の期間を定めて雇われている者 日雇:雇用者のうち日々又は1か月未満の契約で雇われている者 *5 平均年収は、パートタイマー145.8万円(短時間パートタイマー124.7万円、長時間パートタイマー215.1万円)、臨時雇238.5万円、契約社員334.4万円、その他有期163.0万円。 *6 各雇用形態の有期契約労働者を雇用している事業所についてみると、「現状維持」はパートタイマー57.0%、臨時雇61.2%、契約社員59.0%、その他有期32.1%、「一層積極的に活用していきたい」はパートタイマー30.2%、臨時雇14.9%、契約社員21.5%、その他有期17.5%、「今後は活用を縮小していく方向で検討している」はパートタイマー6.2%、臨時雇13.8%、契約社員9.3%、その他有期8.5%となっている。 *7 パートタイマー55.9%、臨時雇49.3%、契約社員76.8%、その他有期27.6%。 *8 パートタイマー37.1%、臨時雇38.4%、契約社員7.5%、その他有期31.3%。 *9 パートタイマー69.5%(短時間パートタイマー74.0%、長時間パートタイマー55.3%)、臨時雇53.3%、契約社員64.6%、その他有期54.7%。 |
*10 パートタイマー2.8%、臨時雇11.9%、契約社員1.6%、その他有期6.1%。 *11 パートタイマー49.5%、臨時雇53.4%、契約社員59.2%、その他有期37.8%。 *12 パートタイマー40.1%、臨時雇23.5%、契約社員32.2%、その他有期17.1%。 *13 パートタイマー4.3%、臨時雇4.5%、契約社員4.0%、その他有期5.3%。 *14 パートタイマー2.5%、臨時雇13.1%、契約社員1.9%、その他有期4.9%。 *15 パートタイマー54.3%、臨時雇49.6%、契約社員58.4%、その他有期28.0%。 *16 パートタイマー34.2%、臨時雇22.0%、契約社員29.9%、その他有期19.5%。 *17 パートタイマー15.4%、臨時雇18.3%、契約社員9.1%、その他有期21.5%。 *18 パートタイマー5.1年、臨時雇4.9年、契約社員5.2年。その他有期3.3年。 *19 労働者調査で以前の有期労働契約をやめた理由をみると、「自分からやめた」72.1%、「会社が更新してくれなかったため」13.3%、「はじめから更新回数が決まっており、当該回数に達したため」11.7%となっている。 *20 調査方法上の制約(労働者調査の調査票を事業所調査実施事業所の有期契約労働者に配布)により、このような設問となっている(サンプル数は265)。 *21 「労働者の勤務成績・勤務態度」は、パートタイマー67.3%、臨時雇68.9%、契約社員63.4%、その他有期59.2%。「本人の意思」は、パートタイマー61.5%、臨時雇52.1%、契約社員60.6%、その他有期57.7%。「期間満了時の景気に対応した仕事量」は、パートタイマー55.2%、臨時雇63.0%、契約社員37.4%、その他有期48.6%。 *22 雇用の上限年齢を設定している割合は、パートタイマー25.7%、臨時雇24.7%、契約社員29.6%、その他有期19.0%。雇用の上限年齢を設定している事業所において、上限年齢が60〜64歳である割合は、パートタイマー56.7%、臨時雇42.6%、契約社員37.3%、その他有期25.9%であり、上限年齢が65〜69歳である割合は、パートタイマー26.3%、臨時雇40.7%、契約社員49.3%、その他有期44.4%。 *23 パートタイマー10.2%、臨時雇6.7%、契約社員9.1%、その他有期7.3%。 *24 「労働者の勤務成績・態度の不良」パートタイマー57.6%、臨時雇49.3%、契約社員56.5%、その他有期32.9%。 「景気要因などによる業務量の減少」パートタイマー51.5%、臨時雇53.0%、契約社員41.0%、その他有期30.5%。 「労働者の傷病などによる勤続不能」パートタイマー37.5%、臨時雇36.6%、契約社員41.7%、その他有期19.1%。 「プロジェクトの終了など従事していた業務の終了・中止」パートタイマー8.4%、臨時雇14.9%、契約社員12.9%、その他有期6.5%。 *25 過去に雇止めの経験がある労働者の定義については、*19の本文を参照されたい。(サンプル数は157)。 *26 更新1〜2回45.9%、3〜5回57.5%、6〜9回63.2%、10回以上73.3% *27 勤続1年未満28.6%、1〜3年未満52.7%、3〜5年未満56.1%、5〜10年未満62.9%、10年以上77.8%。 *28 パートタイマー85.6%、臨時雇77.6%、契約社員88.4%、その他有期78.9%。 *29 パートタイマー87.2%、臨時雇82.2%、契約社員88.2%、その他有期76.8%。 *30 「あらかじめ、契約を更新しない旨を書面で伝える」パートタイマー20.1%、臨時雇19.0%、契約社員22.2%、その他有期19.0%。 「あらかじめ、契約を更新しない旨を口頭で伝える」パートタイマー51.2%、臨時雇49.8%、契約社員48.9%、その他有期54.0%。 *31 契約しない旨を伝える事業所において「30日以上前に伝えている」 パートタイマー94.3%、臨時雇91.8%、契約社員94.8%、その他有期90.2%。 |
*32 38件の裁判例の概要及び分析の詳細は、報告書参考資料2及び3(裁判例の分析、雇止めに係る裁判例集)を参照されたい。 *33 4タイプに分類し、分析を行った裁判例は、38件中、特殊なケースである4件(私法上の労働契約関係ではないとされたもの2件、期間の定めが試用期間であるとされたもの1件、黙示の更新により期間の定めのない契約として継続しているとされたもの1件)を除いた34件である。 *34 例えば、亜細亜大学事件(昭63.11.25東京地裁判決巻末裁判例集No.6)は、継続雇用を期待させる使用者の言動がなかったこと、専任教員と非常勤講師との職務内容、責任、雇用条件の相違等の契約関係の実態を認定した上で、「以上のような諸事情を考慮すると、原・被告間の雇用契約は、20回更新されて21年間にわたったものの、それが期間の定めのないものに転化したとは認められないし、また、期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係が継続すると期待することに合理性があるとも認められない」と判示している。 *35 例えば、有期労働契約の雇止めに関するリーディングケースとなっている東芝柳町工場事件(昭49.7.22最高裁第一小法廷判決巻末裁判例集 No.1)は、「実質において、当事者双方とも、期間は一応2ヶ月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、本件各労働契約は期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければなら(ない)」と判示している。 *36 例えば、日立メディコ事件(昭61.12.4最高裁第一小法廷判決巻末裁判例集No.2)は、「本件労働契約が期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできないというべきである。」としつつ、「柏工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても5回にわたり契約が更新されているのである」と判示している。 *37 例えば、福岡大和倉庫事件(平2.12.12福岡地裁判決巻末裁判例集No.13)は、「期間の定めのない雇用契約であると解することはできないものの、その期間の定めは一応のものであって、単に期間が満了したという理由だけで雇止めになるものではなく、双方に特段の支障がない限り雇用契約が更新されることを前提として協議され、確定されてきたものである」と判示している。 *38 前出東芝柳町工場事件最高裁判決は、「あたかも期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる意思のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示に当たる。そうである以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきである。」とした原判決を肯認している。 *39 例えば、龍神タクシー事件(平3.1.16大阪高裁判決巻末裁判例集No.14)は「その雇用期間についての実質は期間の定めのない雇用契約に類 似するものであって、申請人において、右契約期間満了後も被申請人が申請人の雇用を継続するものと期待することに合理性を肯認することができるものというべきであり…(略)…従前の取扱いを変更して契約の更新を拒絶することが相当と認められるような特段の事情が存しない限り、被申請人において、期間満了を理由として本件雇用契約の更新を拒絶することは、信義則に照らし許されないものと解するのが相当である」としている。 *40 更新拒絶権の濫用という枠組は必ずしも理論的に確立してはいないと考えられるが、例えば、ダイフク事件(平7.3.24名古屋地裁判決巻末裁判例集No.23)は、「本件労働契約は、…(略)…実質的には期間の定めのない雇用契約と異ならない状態で存続していたものというべきである。それ故、被告から、解雇の意思表示がなされた場合はもとより、単に更新拒絶(の意思表示)がなされた場合においても、少なくとも解雇に関する法理が準用され、解雇において解雇事由及び解雇権の濫用の有無が検討されるのと同様に、更新拒絶における正当事由及び更新拒絶権の濫用の有無が検討されなければならないというべきである。」としている。 *41 例えば前出の日立メディコ事件(巻末裁判例集No.2)がある。4-3参照。 *42 例えば、芙蓉ビジネスサービス事件(平8.3.29長野地裁松本支部決定巻末裁判例集No.26)では、期間を明定した定期社員雇用契約書に労働者本人が更新の度ごとに署名押印して雇用契約を締結するという手続が実践されていた事案について、就業規則の規定や反復更新の事実、他の社員の更新状況等から、「特段の事情のない限り、契約期間満了後も継続して定期社員として雇用することが予定されており、雇止めをするについては、解雇に関する法理が類推され、正当な事由が認められる場合に雇止めが有効になると解すべきである」として、純粋有期契約タイプとは判断していない。 *43 使用者が有期契約は形式的なものであると断言し、期間満了後の雇用については双方に支障がない限り更新を前提に組合と協議する旨の協定が成立していた事案(前出の福岡大和倉庫事件巻末裁判例集No.13)、臨時運転手について、従来、自己都合退職者を除き例外なく契約が更新されてきており、更新手続も形式的であるとともに、本雇運転手の欠員には臨時雇運転手で希望者の中から適宜の者を登用して補充しており、制度導入後、直接本雇運転手として雇用された者はいなかった事案(龍神タクシー事件平3.1.16大阪高裁判決巻末裁判例集No.14)や、パートについて、過去契約が更新されなかった例はなく、特段の事情変更がなければ当然に更新されるのが通例の扱いであった事案(協栄テックス事件平10.4.24盛岡地裁判決巻末裁判例集No.33)がある。 *44 昭61.12.4最高裁第一小法廷判決、巻末裁判例集No.2 *45 平11.3.31東京高裁判決、巻末裁判例集No.37 *46 平2.2.20大阪地裁決定、巻末裁判例集No.8 |