01 労働契約
- 嘱託外務員に対する労基法の適用
- 交通事故で刑事訴追された従業員を休職させてもよいか
- 労働契約を反復更新しているパートの再契約拒否は可能か
- 自動更新規定による三年間の労働契約は許されるか
- 外国人経営の企業に対する労基法の適用と有期事業終了に伴う解雇
- 01-02 病気休職者の復職可否の判断は会社の裁量で行ってよいか
期間中に、客観的に休職事由が消滅(就労可能)したときは当然に復職が認められるのが休職制度であって、会社に裁量の余地はない。会社は、診断書を提出した医師等の意見を聞き、復職可能かどうかを客観的に判定する。(裁量ではなく確認行為が求められることになる。)
- 01-01 職安に提出した「求人票」記載の労働条件には、どこまで拘束されるか。
会社が職安に対してする求人の申込は、いわば求人広告のようなもの(申込の誘引)と理解すべし。
これに対して求職者が職安を通じて応募するのが契約の申込ととされる。(求職者の応募があってはじめて、労働契約の内容交渉が始まる。)
従って、職安に提出された「求人票」の内容がそのまま労働契約の内容になるとは限らないので、注意する。
但し、「職安の紹介により成立した労働契約の内容は、当事者間において求人票記載の労働条件を明確に変更し、これと異なる合意をする等特段の事情のない限り、求人票記載の労働条件のとおり定められたものと解すべきである」(千代田工業事件、昭58・10・19大阪地裁決定)とするのが一般的。
求人票に「賃金の見込額」が記載されることがあるが、これは、「将来入社時までに確定されることが予定された目標としての額」であり、尊重すべきであるが、やむを得ない事情があれば異なる賃金額を決定しても差し支えない(八洲測量事件、昭58・12・19東京高裁判決)。
- 01-03 「公民権の行使」「公の職務」にあたるのはどんな場合か
使用者は、労働者からの公民権の行使・公の職務に要する時間の請求を拒むことができない。拒んだ時点で直ちに違反が成立し、拒否によって生じる当該権利の侵害の有無を問わない。
「公民権の行使」
法令に根拠のある選挙権及び被選挙権(被選挙権は立候補届と法定期間の選挙運動のみ。選挙運動の応援を含まない)、最高裁判事の国民審査、特別法の住民投票、改憲の国民投票、住民の直接請求権行使、住民監査請求権を含む。
訴訟権の行使は行政事件訴訟法にいう民衆訴訟を含み、一般の民事訴訟を含まない。また、公職選挙法の選挙又は当選にかかる訴訟や選挙人名簿に関する訴を含む。
「公の職務」
議員、労働委員会の委員、陪審員等、検察審査員等、訴訟法上の証人としての出廷、労働委員会の証人、選挙立会人等を含む。法令に基づく公の職務であっても単純な労務の提供が主目的の職務を含まない(予備自衛官の訓練召集、非常勤消防団員の召集など。)
なお、公職への就任について使用者の承認を要するとすることは、無効。(十和田観光電鉄事件、昭38・6・21最高裁判決)公の職務への就任が長期にわたる場合、休職や解雇ができないものではないとするのが通説。ただし、懲戒解雇の概念は成立する余地がない。(前記最高裁判決)
賃金保障に関しては労使の決定に委ねられる。ただし、選挙権の行使については、S42の閣議了解により民間を含め賃金カットを行わないよう指導がなされる。
- 自社の従業員を休日に「アルバイト」として使用した場合も、本来の労働契約と一体に考えられる
- 市議会議員就任を理由とする解雇又は休職処分は可能か
- 01-04 海外勤務と海外出張では、労働基準法は適用に違いがあるか
労基法は日本国内の事業に限って適用。
海外支店・営業所等に勤務するいわゆる「海外勤務者」には労基法の適用はなく、現地の労働法規の適用をうけることとなる。
ただし、出張者は、国内の所属事業の指揮をうけて出張業務をこなしているものと考えられ、国内法(労基法)が適用される。出張者に行わせた現地での違反行為は、行為者の処罰ができない(刑法総則)から国内の指揮者の管理責任のみが問われる。
ただし、民事契約上の効力に関しては、労働契約の契約地が日本国内である場合が通常であるから、海外勤務者・出張者のいかんを問わず使用者責任は生じるので、注意を要する。(法例第8条)
- 「法人格否認の法理」はどんな場合に適用されるか