18 割増賃金
18-01 割増賃金の支払義務がある時間外労働・休日労働は?
- 割増賃金の支払義務が生じるのは、次の労働時間、休日の原則を超える労働をさせた場合及び深夜時間帯に労働させた場合である。
・1日8時間、週40時間という労働時間制の一般原則とその変形制(労基法第32条〜第32条の5)
・労基法第40条の労働時間の特例
・毎週少なくとも1回の休日(又は4週4日の休日)
・深夜(午後10時〜翌午前5時まで)時間帯の労働
- 割増賃金率は、時間外労働が2割5分以上・休日労働が3割5分以上とされている。
また、深夜(午後10時〜翌午前5時まで)時間帯の労働には、さらに2割5分以上の割増賃金の支払いが必要。
- したがって、時間外が深夜に及んだ場合には、5割以上(時間外2割5分+深夜2割5分)の、また、休日労働が深夜に及んだ場合には、6割以上(休日労働3割5分+深夜2割5分)の率で計算した割増賃金の支払いが必要となる。
18-02 週休2日制を採用している場合に、週1回の法定休日はどのように特定するか
- 休日労働の割増賃金は、週1回(又は4週4日)の法定休日に労働させた場合について支払い義務がある。
週休2日制を採用している場合などの割増賃金の計算は、
(1)全所定休日に一律に3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払う
(2)所定休日の内、週1回(又は4週4日)の休日について3割5分以上の割増賃金を支払い、その他の休日は3割5分未満の割増賃金を支払う。
のいずれかの方法によることとなる。
- 後者(2)の場合、週2回の休日の内いずれが法定休日であるかは、あらかじめ就業規則等で特定しておかない限り不明である。
- 特定の方法は以下による。
「休日のうち、最後の1回又は4日について3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを、就業規則その他これに準じるもので定めることは上記休日を明確にしているものである。」(H6.1.4基発第1号)
最も、実務上は、当該月に、「3割5分以上の率で計算して支払われた日数と確保された日数の合計日数が、週1回(又は4週4日)以上である場合には法第37条第1項違反として取り扱わない。」(H6.1.4基発第1号)とされている。
18-03 割増賃金の計算における労働時間の端数処理
- 労働時間は、それがたとえ1分であれ労働時間としてカウントすることを要する。
これが原則であるが、次の方法に従った端数処理は「これを、違反として取り扱わない」(S63.3.14基発第150号)とされている。
- (1)1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
(2)1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
(3)1か月おける時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、(2)と同様に処理すること。
- 『1日を単位に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。』は違法であるから注意する。
18-04 割増賃金の計算基礎となる1ヶ月の所定労働時間数の算出式は?
- 割増賃金は、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の」2割5分以上5割以下の範囲内で命令で定めるとされている。この「通常の労働時間又は労働日」とは事業場の所定労働時間又は所定労働日の意味。なお、関連した行政解釈としては、「通常の労働日とは、所定の実労働日をいうものである」(S26.8.6基収第2859号)とするものがある。
- 月における所定労働時間数は、1年間における1月平均所定労働時間数から求める(施行規則第19条)
この場合の算出式は((365−年間所定休日日数)÷12)×1日の所定労働時間数
例えば、1日7.5時間制で年間の合計休日が105日の事業場の場合、次のように計算する。
((365−105)/12)×7.5=162.49999
なお、端数は切り捨て処理を要する。この場合、162時間又は162.4時間とする。
18-05 労使合意の上で割増賃金を支払わない申し合わせをしても無効である
- 「法第37条は強行規定であり、たとえ労使合意の上で割増賃金を支払わない申し合わせをしても、法第37条に抵触するから無効である。」(S24.1.10基収第68号)
18-06 法定労働時間より条件がよい労働時間制度の元での割増賃金の取扱い
- 例えば1日7.5時間週37.5時間の労働時間制を採用している企業の場合、企業の所定労働時間を超え法定労働時間までの取扱いをどうするかという問題がある。
- これについて、つぎの解釈例規がある。
「法定労働時間を超えない限り、本条に定める割増賃金を支払わなくてもよいが、その時間については原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければならない。ただし、労働協約、就業規則等によって、その1時間に対し別に定められた賃金がある場合にはその別に定められた賃金額で差し支えない。」(S23・11・4基発第1592号)
- 計算が複雑になることを厭わなければ、上記の例で1日8時間までの30分については、通常の賃金を、法定労働時間である8時間を超える部分について2割5分以上の割増賃金を支払えば足りる。
- なお、解釈例規ただし書以降の取扱いは、労働契約の法理からは違法ではないという意味であって、通常業務の延長としての時間外労働に適用することは事実上困難であろう。
18-07 法第41条の管理監督者は、時間外労働の割増賃金の対象とならない
18-08 行政官庁の許可を得て行う監視断続勤務でも、深夜の割増賃金は必要である
- 監視断続労働の許可を得ている場合においても、深夜業の規定の適用除外はされないから、使用者は深夜割増賃金を支払わなければならない。(S23.10.14基発第1506号)
- 関連する解釈例規には、監視断続労働の勤務者について「一定の所定労働時間が定められている場合、その所定労働時間を超えて労働したときに、超過労働に対して幾何の賃金を支払うかは当事者の定めるところによる。」(S23.11.25基収第3052号)としたものがある。
18-09 1ヵ月単位の変形労働時間制を採用しているが、どこからが時間外労働となるか
- 1ヵ月単位の変形労働時間制の時間外労働となる時間はつぎのとおりである。
○1日8時間を超え、かつ就業規則で定めた時間を超えた時間
○1日8時間を超えていないが、1週40時間を超え、かつ就業規則で定めた時間を超えた時間
○1日8時間、1週40時間を超えていないが、法定労働時間の総枠(31日の月は177.1時間、30日の月は171.4時間)を超えた時間
- 逆にいえば、1日8時間、1週40時間を超えておらず、かつ法定労働時間の総枠内の時間が、法定内労働時間である。
- なお、1ヵ月単位の変形労働時間制で、変形期間が週単位でない場合の1週間は『暦週』でみることとし、変形期間をまたがる週についてはそれぞれ分けて、40×(端日数÷7)でみるのが原則。ただし、事業場で週の起算日を変形期間の開始日からとらえると定めている場合は、変形期間の最後の端日数については40×(端日数÷7)でみることも差し支えない。(労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)
18-10 休日の振替えの際に注意を要する、週の法定労働時間超過による時間外労働
- 同一週内での休日に振替えでは問題とならないが、他の週に休日の振替えを行うと、振替え先の週で法定労働時間をこえる場合がある。
この場合は、時間外労働の取扱いを要するから注意する。
「休日振替の結果、就業規則で1日8時間又は1週40時間を超える所定労働時間が設定されていない日又は週に、1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることになる場合には、その超える時間は時間外労働となる。」(S63・3・14基発第150号)
- これは次の場合にも当てはまる。
完全週休2日制のもとで、ある週の休日を他の週に振替える場合、「例えば、1日の休日を他の週に振替えた場合には、当該週2日の休日があった週に、8時間×6日=48時間労働させることになり、あらかじめ特定されていない週に週40時間を超えて労働させることになるので、8時間分は時間外労働となる。」(S63・3・14基発第150号)
18-11 休憩時間中に窓口事務や来客当番をさせると、時間外労働の取扱いが必要
- 「休憩時間中に窓口事務、来客当番等に従事させた場合には、その時間は労働時間となるから、その時間と他の労働時間を通算し、1日8時間又は週の法定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払義務が生ずる。」(S23・4・7基収第1196号)
なお、このケースでは、休憩時間を別途与えなければ労基法第34条に違反する。
18-12 使用者が黙認している残業時間
- 「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」(S22.12.26基収第2983号)
18-13 平日の時間外労働が引き続き、翌日の法定休日に及んだ場合の割増賃金は?
- 平日の時間外労働が引き続き、翌日の法定休日に及んだ場合の割増賃金は、午前0時までは2割5分以上、午前0時からは休日労働の割増賃金率を適用し3割5分以上を支払わなければならない。(労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)
- その他、引き続きの労働として考えられるケースにはつぎのものがある。
(1)通常に日に、時間外労働が引き続き、翌日の所定労働時間に及んだ場合には、「翌日の所定労働時間の始期までの超過時間に対して、割増賃金を支払えば法第37条の違反にはならない。」(S26・2・26基収第3406号)
(2)法定休日労働が引き続き、翌日の平日に及んだ場合には、平日の午前0時以降については3割5分以上の割増賃金の支払は要しない。当該平日の労働時間が通算して法定労働時間を超えるとき、2割5分以上の割増賃金の支払が必要となる。
- なお、以上には深夜労働に対する割増賃金の説明は省いているので注意のこと。
18-14 休日の夕方7時に出社して翌日通常勤務の終了まで働いた。割増賃金の取扱いは?
- この場合は、以下のように計算する。
(1)午後7時〜午後10時までの3時間は、3.5割の割増賃金(休日割増3.5割)
(2)午後10時〜午前0時までの2時間は、6割の割増賃金(休日割増3.5割+深夜割増2.5割)
(3)午前0時〜午前5時までの5時間は、2.5割の割増賃金(深夜割増2.5割)
(4)午前5時〜翌日始業時刻(午前8時)までの4時間は、通常の賃金(割増なし)
(5)午前8時〜正午までの4時間は、通常の賃金(割増なし)
(6)午後1時〜午後5時までの4時間は、2.5割の割増賃金(時間外割増2.5割)
- 休憩時間は上記時間から除いて計算すること。
- 通常日の勤務時間を午前8時から午後5時まで(休憩正午より1時間)とした場合の例。なお、3交替制勤務には特例が認められている。(S63.3.14基発第150号)
18-15 8時間3交替制勤務、旅館ホテル業、自動車運転者に認められている休日労働の特例について
- 8時間3交替制勤務の休日労働の取扱特例
3交替連続操業を行う事業場の休日の取扱いに関しては、「継続24時間の休息を与えればよいとされており、その休息期間中に暦日による継続24時間がある場合には、その暦日を法定休日として取り扱う」(S63.3.14基発第150号)こととなる。この場合、継続24時間が確保されなくなることになった労働を行った部分が、3割5分以上の割増賃金を支払うべき休日労働として取り扱われる。
- 旅館・ホテルにおける休日労働の取扱特例
旅館業のフロント、調理、仲番及び客室係に限定した当分の間の特例として、正午〜翌日の正午までの継続24時間を含む27時間以上の休息時間が確保されている場合について、これを休日として認めているが、この場合、「正午〜翌日の正午までの継続24時間の休息時間中に労働した部分が3割5分以上の割増賃金の支払いを要する休日労働時間となる。」(H6.5.31基発第331号)とされる。
- 自動車運転者の休日労働の取扱特例
自動車運転者について、通常勤務の場合は連続した労働義務のない32時間を、隔日勤務の場合は連続した労働義務のない44時間を、休日として取り扱うとされている(H1.3.1基発第93号)が、この場合に32時間又は44時間のうちに暦日24時間が含まれる場合は当該暦日24時間を休日として、その日の労働が3割5分以上の割増賃金を支払うべき休日労働となる。
暦日24時間が含まれない場合の取扱いは、継続24時間が確保されなくなった限りにおいて当該部分が3割5分以上の割増賃金を支払うべき休日労働として取り扱われる。
18-16 一昼夜交替勤務に従事する場合の割増賃金の取扱いは?
- 一昼夜交替勤務(午前8時から翌日の午前8時までの勤務で、翌日は非番となる勤務)に就く者への割増賃金は、深夜(午後10時〜翌午前5時)割増の2.5割が必要だが、時間外労働には該当しないから、時間外の割増賃金は要しない。
- なお、鉄道事業における一昼夜交替勤務に設定されている仮眠(睡眠)時間は、休憩時間とみなし、割増賃金の支払いを要しない(S23.4.5基発第537号)とする解釈例規がある。
- また「守衛等の24時間勤務者については、就業規則等により深夜の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合は、別に深夜の割増賃金を支払う必要はない。」(S23.10.14基発第1506号)とするものがある。
18-17 出来高払制労働者の時間外割増賃金の計算方法?
- 賃金が出来高払制その他の請負制によって定められている者の時間外割増の計算は、「その賃金算定期間において・・賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、延長した時間数を乗じた金額の12割5分を支払うべきであるか、又は2割5分で差し支えないか。」との照会に対して、「見解後段のとおり。」(H6.3.31基発第181号)とするものがある。
- なお、休日労働も同様に、13割5分ではなく、3割5分である。
18-18 深夜業が禁止されている女子又は年少者に深夜業をさせた場合の割増賃金の取扱い
- 違法な深夜労働を命じた場合においても、使用者には、深夜割増賃金の支払い義務がある。
- これを支払わない場合は、女子の深夜業禁止規定(第64条の3第1項違反)又は、年少者の深夜業禁止規定(第61条第1項違反)のほか、労基法第37条違反の二罪が成立することとなる。
(罰則は、いずれも6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金。)
18-19 割増賃金の基礎となる賃金に算入しなくてよい手当には、どのようなものがあるか
- 労基法第37条第4項は「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他命令で定める賃金は算入しない。」と規定し、これを受け規則第21条が「別居手当、子女教育手当、臨時に支払われる賃金、1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」を列挙している。
- この6種類の法定除外賃金は、制限的に列挙されているものであるから、これらの手当に該当しない「通常の労働時間又は労働日の賃金」はすべて算入しなければならない。
- 家族手当
家族手当は「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」と定義されている。したがって、「(この定義に当てはまるものは)物価手当、生活手当その他名称の如何を問わず家族手当として取扱う。
(例えば)臨時特別手当及び僻地手当のうち扶養家族数を基礎として算出した部分は、これを家族手当とみなし割増賃金の基礎から除くものとする。
臨時特別手当及び僻地手当の中で、独身者に対して支払われている部分及び扶養家族のあるものにして本人に対して支給されている部分は家族手当ではないから、かかる手当は割増賃金の基礎に算入する。」(S22.12.26
基発第572号)
「扶養家族ある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当ては家族手当とはみなさない。かかる手当は割増賃金の基礎に入れるべきである。」(S22.11.5基発第231号)
- 通勤手当
通勤手当は「労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算出される手当」と解される。
距離や通勤の実際費用にもとづかない一律支給は、通勤手当とみなされないことがある。
- 別居手当・子女教育手当
労働と直接的な関係が薄く個人的な事情に基づいて支給される賃金であるため、割増賃金の基礎から除外したもの。
- 臨時に支払われる賃金
「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。」(S22.9.13基発第17号)とされる。
具体的には、私傷病手当、加療見舞金、退職金等がこれに該当する。
- 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
・賞与
・1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
・1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
・1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
毎月払いを回避する目的で、これらの名称をつけていると認められる場合は除外賃金とならない。
- 以上が割増賃金の基礎に算入を要しない手当等の概要であるが、これらは「制限列挙」とされていることから解釈上それほどの疑義が生じることはない。
むしろ、割増賃金の基礎に算入すべきか否かに関する疑義の多くは「通常の労働時間又は労働日の賃金」に対して支払われているものか否かを巡って生じるケースが多い。これらについては、代表的な例を別項目で解説することとしたい。
18-20 (割増賃金の基礎となる賃金)生産奨励手当は、
- 一定の生産目標を突破した場合に支給する生産奨励手当、増産手当は、割増賃金の計算基礎に算入すべきものである。
- 時間外労働を含めて生産目標を突破した場合に支払われる手当についての計算方法は、「施行規則第19条第6項によるべきであるから、所定時間の内外の生産量を量定する必要はない。」(S23.7.31基収第2114号)
ある目標を突破した場合、一律に月500円支給される生産手当は、規則第19条2項によって月によって定められたものとみなす。(S26.2.14基収第3995号)
18-21 (割増賃金の基礎となる賃金)坑内手当は、
- 「坑内係員が所定労働時間は坑内において勤務し引き続き、坑外において時間外労働をした場合、割増賃金算定基礎に坑内手当を算入するか。」という照会に、「設問の場合、坑内係員に支給される坑内手当は割増賃金算定の基礎に算入しない。」(S23.5.25基発第811号)としたものがある。
18-22 (割増賃金の基礎となる賃金)臨時に従事した仕事に対する特殊勤務手当は、
- 所定労働時間中に甲作業に従事し、時間外に乙作業に従事したような場合には、その時間外労働についての通常の労働時間又は労働日の賃金とは、乙作業について定められている賃金である。(労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)
- 「甲が休暇を取ったため常時その作業に従事していない乙に従事させた。従事者には日額の作業手当が支給されるが、この作業手当は乙にとっては予定された通常の労働に対する賃金ではないものと考えられので、割増賃金の基礎に算入しなくても差し支えないか。」と
する照会に対し、「算入して計算した割増賃金を支払わなければならない。」(S23.11.23基発1681号)としたものがある。
18-23 (割増賃金の基礎となる賃金)手術手当は、
- 「手術に従事した医師には、所定内においては実収手術料の1割5分が手術手当として、所定外においては実収入手術料の1割5分の手当とその手術手当の2割が加算支給されこれを割増賃金に代替えしている・・・」とする手術手当について、「設問の手術手当は、当該手術手当の与えられる勤務時間が法定の割増賃金を支払うべき時間に該当する場合にのみ割増賃金の基礎となる賃金であって、この場合は施行規則第19条第1項第6号により、結局実収入手術用の1割5分の2割5分以上でなければならない。なお、同号の総労働時間数は一賃金算定期間において手術手当の与えられる勤務時間の総時間数により計算せられたい。」(S26.8.6基収第3305号)とするものがある。
18-38 1年単位の変形労働時間制を採用しているが、どこからが時間外労働となるか
- 「1年単位の変形労働時間制は、主として休日増を図るため年間単位の休日管理を前提に変形期間を最長1年まで認めたものであり、突発的なものを除き恒常的な時間外労働はないことを前提としている。」(労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)とする制度であることに留意し、制度の趣旨を損わないようにしなければならない。
- 1年単位の変形労働時間制の時間外労働となる時間はつぎのとおりである。
<1>(労使協定で定めた所定労働時間が)8時間を超える時間とされている日についてはその所定労働時間を超えた時間、8時間以内とされている日については8時間を超えた時間
<2>(労使協定で定めた所定労働時間が)40時間を超える時間とされている日についてはその所定労働時間を超えた時間、40時間以内とされている週については40時間を超えた時間(但し、<1>で時間外労働となる時間を除く。)
<3>変形期間については次の式によって計算される変形期間における法定労働時間を総枠を超えて労働した時間(但し、<1><2>で時間外労働となる時間を除く。)
変形期間における法定労働時間の総枠=40×変形期間の週数×(変形期間の日数÷7日)
18-39 1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用した場合、どこからが時間外労働となるか
- 小売業、旅館、料理店、飲食店であって常時使用する労働者数が30人未満の事業場に限って認められている労働時間制度として「1週間単位の非定型的変形労働時間制度」がある。
この制度を採用するためには、労使協定を締結し所轄労働基準監督署長に届出の義務がある。
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用した場合、法律上の時間外労働となる時間はつぎのいずれかに該当する時間である。
<1>(事前通知により所定労働時間が)8時間を超える時間とされている日についてはその所定労働時間を超えた時間、8時間以内とされている日については8時間を超えた時間。
<2>1週間については、週40時間(9人以下の特定適用を受ける事業場は週46時間)を超えた時間。
18-40 主任、係長が、管理職として時間外手当の対象外になることはあり得ない
18-41 ベースアップを遡及適用するとした場合、割増賃金も遡及払いしなければならないか
- 労使の賃金交渉が長引き、妥結時点から遡及してベースアップを適用する例は多い。この場合、割増賃金も新ベースによって遡及払いしなければならないかであるが、ベースアップの確定によって旧賃金との差額を後日に一括して支払った場合「それは各月に支払われたものとして取扱う。」(S22・11・5基発第233号)もので、これを臨時に
支払われた賃金とは取扱わないのが通例。
- 一括払いの遡及賃金が各月に支払われたとみなされる以上、割増賃金も新ベースにより計算され旧賃金との差額を支払わなければならないこととなる。
割増賃金の規定は強行規定であるから、労使で割増賃金の部分のみ差額支給を行わないとする協定を締結しても無効。
なお、遡及額の支払は「遅くともそのその直後の賃金支払日に支給を要する。」(S23・4・22基収第1065号)が、個人配分額の計算等の確定に要する合理的な必要期間の直後の支払期に支払うことは差し支えない、と解する。
18-42 遅刻者の残業にも時間外割増を払わなければならないか
- 時間外割増賃金の支払義務は、法定の実労働時間を超える労働に対して課されている。
- 1日の法定労働時間が8時間である場合、始業時からの実労働時間をカウントして8時間を超える時点から、時間外労働として取扱う。遅刻時間や休憩時間は実労働時間ではないから、これより除く。
- 例えば、午前8時〜午後5時(休憩が昼に1時間)の勤務体制の場合、始業時刻に1時間遅刻した労働者の実労働時間が8時間を超えるのは、午後6時となるから、この時刻以降の労働に対して割増賃金を支払えば、法律上は足りる。
関連する解釈例規には、S29・12・1基収第6143号がある。
18-43 時間外に行う安全衛生教育や企業内教育には割増賃金は必要か
- 「労働安全衛生法第59条、60条の安全衛生教育は、事業者の責任において実施されなければならないものであり、所定労働時間内に行うのを原則とする。法定時間外に行われた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないものであること。」(S47・9・1基発第602号)とする解釈例規がある。
- 基本的には、法律上、使用者に実施義務のある教育に要する時間は労働時間であると解される。
- これに対して、法定外のもので事業者が任意に行う企業内教育(安全衛生教育に限らない。)については、参加が義務付けられているものは当然、時間外労働となるが、「参加することについて、就業規則等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にならない。」(S26・1・20基収第2875号)のが原則。
- しかし、実務上は「自主参加が建前であるが、実際問題として事実上の半強制」といったケースの取扱いが問題となるが、この点ではかなり線引に困難を伴うのが実情であろう。
「自主参加で、文字どおり不利益な取扱いはないが、雰囲気的なものもあって自主的に参加するような場合など」は、基本的には労働時間ではないと解すべきケースが多かろうが、次の要素がある場合は、これを労働時間と解するのが妥当であろう。
<形式上の自主参加性を否定すべき要素>
○指示・伝達など、業務の遂行に欠かせない内容を含む場合。
○指示・伝達ではないが、業務の遂行に直接必要な内容を含む場合(参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か。)
○組織維持上、不可欠にして、全員参加自体に意味があると認められるもの
○その他、業務上の必要にもとづき開催される教育
18-44 職場会議は事業運営の必要に基づくものであるから、時間外に行えば割増賃金が必要である
- 職場会議、打ち合せ会議等は、業務の運営上の必要から実施されるものであるから、所定労働時間内に行われるべきであるが、それが時間外に実施されることとなる場合は、当然、割増賃金の支払を要する。
18-45 時間外に行う従業員の健康診断は、時間外労働とする必要があるか
- 一般健康診断
「一般健康診断は一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、(受診時間は)当然に事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。」(S47・9・18基発第602
号)とされている。
- 特殊健康診断
「特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。」(S47・9・18基発第602号)とされている。
●三シフトにおける番付手当は、 ●夜間看護手当は、 ●家族手当額を基準とする手当は、 ●臨時特別手当は、 ●厚生費補助は、
●僻地手当は、 ●職務手当・役付手当は、 ●勤続手当は、 ●増産奨励金は、 ●家族補給手当は、 ●所得税補充手当は、
●通勤手当は、 ●乗務員の中休手当は、 ●寒冷地手当は、 ■「固定給+出来高給」の場合の割増賃金の計算方法