28 三六協定
28-01 時間外・休日労働に関する協定届のことを、36協定と呼ぶのはなぜか
- 労働基準法は労働時間・休日について、1日8時間、1週40時間及び週1回の休日の原則を定め、これに対して同法第36条は「労使協定をし、行政官庁に届け出た場合においては、・・・・その協定に定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働することができる。」として、残業や休日労働を行う場合の手続を定めている。
- この労使協定のことを、法律の規定条項をとって「36協定」と呼ぶことがある。
28-02 どのような場合に36協定の締結、届出が必要となるか
- 労基法が労働時間の定め置いている条文は、次の6箇条である。
・第32条(労働時間の原則)
・第32条の2(1ヵ月単位の変形労働時間制)
・第32条の3(フレックスタイム制)
・第32条の4(1年単位の変形労働時間制)
・第32条の5(1週間単位の非定型的変形労働時間制)
・第40条(労働時間の特例)
- 労基法が休日の定めをしている条文は、次の1箇条である。
・第35条(休日)
- 36協定は、これらの労働時間又は休日の原則(すなわち、法定労働時間又は法定休日)を超えて、労働者に労働させる場合に締結、届出が必要となる。
例えば、
- 「週休2日制をとり毎労働日の労働時間を7時間と定めている事業場において、1日の労働時間を1時間延長する場合には、1日8時間、1週40時間以内であるから、本条の協定を締結する必要はない。」
- 「1ヵ月単位の変形労働時間制を採用し、就業規則その他これに準ずるものにおいて、甲の日の労働時間を10時間、乙の日を6時間、丙の日を4時間と定め、しかも当該週の労働時間が36時間である場合、乙の日の延長時間が2時間以内である場合や、丙の日の時間延長が4時間以内であるときは、1日8時間以内かつ、週40時間以内であるので、協定は必要ない。ただし、1ヵ月の労働時間が法定労働時間の総枠を超える場合はこの限りでない。」
- 「(協定が必要なのは法定の)週1回の休日をさし、事業場によってこの基準を上回って与えることにしている国民の祝日、会社創立記念日等は含まれない。したがって、これらの休日に出勤させるときは、それによって1週間の労働時間が40時間を超えることとなる場合等を除き、本条の協定は要しない。」
- 「週休2日制を採用している事業場が週2日の休日のうち1日のみ出勤させる場合にも、1週間の労働時間が40時間以内となるのであれば、本場の協定を締結する必要はない。」
(以上、労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)
28-03 36協定は、「事業場」単位で締結する
- 労基法の適用単位である「事業場」は、「主として場所的観念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として1個の事業として、場所的に分散しているものは原則として別個の事業。」として取扱われる。
なお、「出張所、支所等で規模が著しく小さく、組織的関連ないし事務処理能力等を勘案して一の事業という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業として取り扱うこと。例えば、新聞社の通信部の如きはこれに該当すること。」(平11.3.31基発第168号)とされている。判断は、当該出張所等の規模、業務内容、所長等の職制配置の有無等を基礎にケースバイケースで行うこととなるが、あわせて、時間外労働等の発生とその必要性の判定が、出張所内において可能な状況にあるか等の要素も考慮されることとなろう。ケースバイケース的判断は、所轄労基署の考え方も無視できないので、事前確認をする方がいいでしょう。
- 36協定は、この「事業場」単位で締結することとなるので、数事業場を擁する企業にあっても協定は、それぞれの事業場毎に締結し、それぞれを所轄する労働基準監督署長へ届出しなければならない(問28-04-02 36協定の本社一括届の要件を満たす場合を除く)。 。
28-04 全国展開の企業では、社長と労組本部の長との協定でよいか
- 36協定の締結単位は「事業場」ごとであるが、協定の締結当事者はこれとは別個の問題であるから、条件を満たせば設問のような協定締結も可能である。
- 条件とは、主として労働者代表の要件である。
・例えば、労働組合が組織されている場合、当該労働組合が労基法の適用単位である全「事業場」において労働者の過半数を組織している場合は、可。
・一部の「事業場」で過半数を組織していない場合は、当該事業場では不可。
この場合は、労働者の過半数を代表するものを選任して36協定を締結しなければならない。
- 企業及び労働組合は協定の締結当事者を、それぞれの下部組織に委任することができる。
28-04-02 36協定の本社一括届は、どういう場合に認められますか
- 36協定は、一定要件を備える場合において、本社一括届出が可能です。
- 本社一括届の要件は、36協定届の様式(様式第9号」の記載欄のうち、事業の「種類、名称、所在地、労働者数」の4点以外はすべて同一の36協定であることです。
本社一括届を行う場合は、本社分に加え、必要事業場分の36協定を作成し、さらに「届出事業一覧表(事業場の名称、住所(電話番号)、管轄労働基準監督署名を記載=様式は任意)」を添えて、本社を管轄する労働基準監督署長に届出します。
- なお、本社一括届は、労働者代表が同一であることとする要件から、事業場の労働者の過半数が組織されている労働組合においてのみ可能です。(一般事業場が広く利用できるものではありません。)
(平15.2.15基発第0215002号)
28-05 「労働者の過半数を代表する者」には、パート、嘱託、時間外労働が規制されているため残業命令の対象にならない者も含めるか
- 行政解釈は「労基法第36条の協定は、当該事業場において、(対象労働者の意思を問うものではなく)事業上に使用されている労働者の過半数の意思を問うためのものである。」(S46・1・18基収第6206号)として、管理監督者、秘書などの機密の事務取扱い者、残業が禁止されている年少者、病欠、休職期間中の者なども在籍している限り労働者に含め、その過半数を代表する者の意味であるとしている。
- これに対して学説の中には、管理監督者は除外すべきであるとする有力な反対意見もあるが、36協定はそれを締結して、所轄労働基準監督署長に届出なければ効力が発生しないものであり、実務上は、窓口受理のことを考えれば、前記行政解釈に従って処理す必要があろう。
28-06 一事業場に労働組合が二つある場合の協定締結は?
- 「そのいずれかの労働組合が当該事業場の労働者の過半数を占めているときは、当該労働組合と協定すれば足り、他の組合と協定する必要はない。」(S23・4・5基発第535号)
いずれの労働組合も、当該事業場の労働者の過半数を組織していない場合は、そのいずれにも協定締結当事者たる資格はない。
この場合は、「労働者の過半数を代表する者」を選任し協定当事者とする。
- なお、複数の労働組合の労働者を合せれば過半数に達する場合に、複数の労働組合代表が一つの協定書に連署すれば(複数の労働組合の意思が36協定の締結に関して統一されたと評価できるから)過半数要件を満たすが、それぞれが使用者と別個に、同一内容の協定を締結しても労基法第36条の要件を満たすものとはならない。
28-07 協定当事者が妥当でないため、締結した36協定が無効となる例
- 次のケースは締結された36協定自体が、無効となる。
・労働者を代表するものを使用者が一方的に指名している場合
・親睦会の代表者が自動的に労働者代表となっている場合
・一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合
・一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出することとしている場合
- なお、労働者代表の選出にあたっては次の条件が満たされている必要がある。
○候補者の適否について判断する機会が、事業場の労働者に与えられていること。
○事業場の過半数の労働者が、その候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていること。
(その方法は労働者の投票、挙手、その他の民主的手続によること。)
28-08 36協定の内容(必要な協定項目)
- 36協定は労基法施行規則第16条によって、協定すべき事項が定められている。次の○を付した事項である。
○時間外又は休日の労働をさせる必要のある具体的事由
・時間外・休日労働は臨時的の場合に限定されるとする法の趣旨から、できるだけ具体的であることが望ましい。(S23・9・13基発第17号)
○業務の種類
○労働者の数
・対象労働者の数を業務の種類別に記入する。締結後の通常予想される範囲での労働者数の増減は、協定の効力に影響を与えない。
○1日及び1日を超える一定の期間について延長できる時間又は労働させることのできる休日
・1日についてのみ、又は一定期間についてのみの協定は要件を満たさないので、双方を協定しなければならない。但し、1日協定及びフレックスタイム制の協定はこの限りでない。
・一定期間は「週又は月を単位とする期間及び年を単位とする期間」(指針第3条及び別表)
この場合の「週」は1週間、2週間、4週間。「月」は1箇月、2箇月、3箇月。「年」は1年間をその期間としている。
・なお、一定期間に関する協定は「起算日」を定めることを要す。
・「労働させることができる休日」に関する協定事項は、通常、一定期間に労働させることのできる休日の日数(回数)を協定すれば足りる。(例:「法定休日の内、月2回まで」「所定休日の内、月3回まで」等。)
28-09 「一定の期間について延長できる時間」の「起算日」を定めていない場合、どのように扱われるか
- 「労使慣行等から別意に解されない限り、協定の有効期間の初日を起算日とするものと解され、一定期間は起算日から有効期間の末日までを順次当該期間ごとに区切られる期間である。」(S57・8・30基発第569号)とする解釈例規がある。
- なお、「起算日」は必要記載事項であり、記入のない協定書は窓口で受理されないから注意する。
28-10 36協定に法定の協定項目以外の「約款」を付することは可能か
- 法定の協定項目について協定されている限り、労使が特別の「約款」を付することは自由。
- 実は、法令様式第9号の「時間外労働・休日労働に関する協定届」には、労働者代表の(記名)押印欄が用意されていない。これは、別途、任意の(但し、法定の項目は含む必要がある)「協定書」の締結を予定し、法令様式を単なる届出書として利用する場合のことを想定しているものである。
(従って、法令様式をそのまま協定書として使用する場合は、労働者代表の記名・押印を忘れないようにしなければ、監督書で受理されないから注意する。)
- 関連する解釈例規に、「施行規則第16条の要件を具備したものであれば、行政官庁はその協定を受理すべきであって、協定届を受理することと付された約款が有効であるか無効であるかは別個の問題である。」とするものがある。
なお、36協定の「約款」の内容が時間外労働をさせる場合の手続に関するものである場合は、その手続に違反して時間外労働をさせることはできない。
28-11 時間外の協定ガイドライン(目安時間)は1ヵ月45時間、年間360時間
- 36協定については「一定期間についての延長時間」を協定することが必要だが、これに関しては限度基準告示(平成10年労働省告示第154号)が示されている。 なお、この場合の一定期間については、「1日を超え3箇月以内の期間及び1年間」とされている。(告示第2条)
- 当該告示の限度時間は、次のとおり。(告示第3条及び別表1)
○一定期間について週又は月を単位とする場合
・1週間 15時間
・2週間 27時間
・4週間 45時間
・1箇月 45時間
・2箇月 81時間
・3箇月 120時間
○1年間 360時間
- なお、次の事業や業務には適用されない。
・工作物の建設等の事業
・自動車の運転業務
・新技術、新商品等の研究開発の業務
・季節的要因等により事業活動、業務量の変動が著しい事業や業務/公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務/であって労働省労働基準局長が指定するもの
H2・2・15現在の指定されているものは、次のとおり。
鹿児島県、沖縄県の砂糖製造業(砂糖精製業を除く)
造船業における船舶の改造、修繕の業務
郵政事業の年末・年始における業務
電気事業における発電用原子炉、附属設備の定期検査とそれに伴う工事の業務
ガス事業におけるガス製造設備の工事の業務
28-12 「特別条項」付き36協定とは何か
- 平10.12.28労働省告示第154号「限度基準告示」は、第3条但し書において、延長限度時間の例外的取扱いを認めている。これが「特別条項付き三六協定」と呼ばれるものですが、制度の趣旨は、通常の時間外労働は限度時間の枠内に収まるが、臨時的に限度時間を超えて行う特別の事情が生ずることへの対応をとるためとされています。
- 特別条項付き三六協定の締結にあたっては、次の点に留意します。
<特別条項の例>
「一定期間のついての延長時間は1ヵ月45時間とする。ただし、納期が集中し生産が間に合わないときは、労使の協議を経て、1ヵ月60時間までこれを延長することができる。この場合、延長時間をさらに延長する回数は、6回までとする。」
- 特別条項は四つの条件(原則の延長時間/特別の事情=臨時的なものに限る(1年の半分を超えないことが見込まれるものを指す)/労使協議の手続/特別延長時間とその限度回数(この回数は特定の労働者についての特別条項付き協定の適用が1年のうち半分を超えないこと))を記載する。
前記特別条項の例はシンプルであるが、これらの条件を満たしている(「特別な事情」は、より具体的なものとし、それが臨時的なものであることの分かるように記すことが望ましい。)
特別延長の限度回数は、一定期間の期間によって異なり、一定期間が1週間では26回、2週間では13回、1ヶ月では6回、3ヶ月では2回が限度となります。なお、限度回数のない特別条項付き三六協定は、労働基準法第36条第4項の指導助言の対象となります。
なお、法第33条の「災害その他避けることのできない事由」は、当該条項の趣旨に沿って運用すべきであり、特別条項付き三六協定の対象とすることはできません。
- 特別延長の手続きは、最多労働者が原則の延長時間を超える前に実施する必要があります。事後手続きは認められていません。なお、手続きの内容は記録に残すことを要しますが、労基署への届出は必要ありません。
28-13 36協定の締結がされていない場合の残業命令は違法となり、労働者はこれに従う義務はない
- 36協定の締結がされていない場合の残業命令は違法となり、労働者はこれに従う義務はない。また、協定の有効期間が満了し失効した後も、同様。
- 東京地裁の決定に「三六協定の締結、届出がない以上、使用者は第33条に該当する場合以外は、適法に時間外労働又は休日労働を命じ得ないのであるから、労働者としてはこのような違法な時間外労働又は休日労働の命令に従わなくとも責任を追求されない」(S25・10・10宝製鋼所事件)としたものがある。
- ただし、労働組合の「時間外労働協定拒否闘争」の場合はそれが、争議行為となるか否かで取扱いが若干、異なる。
それが争議行為であるか否かの判断は微妙な問題であるが、基本的には、「更新拒否が時間外、休日労働ないしその条件が労働者の福祉に照らし労働者にとって受け入れられないとの労働組合の判断にもとづく限り、その結果として事業場の業務の正常な運営を阻害することになっても、その協定更新の拒否をもって争議行為とする予知はない。これに反し、労使間に時間外、休日労働以外の事項に関する主張の不一致が存在する場合において、使用者の更新申入れを利用し、(当該不一致の)主張を貫徹するのに有利であるか否かの判断に基づき、その目的を達するがためにのみ更新拒否を行う場合は、争議行為に該当する。なお、その立証は協定更新拒否を争議行為と主張する者(使用者)がその責めに任ずべきである。」(S32・9・9内閣法制局法制意見要旨)
そして、争議行為にあたるのは「特定の事業場において、時間外又は休日の労働が行われるのが常態であり、またそういうことが行われることによってのみ当該事業場における業務の運営が、経常、普通の状態にあると客観的に判断し得るような事情の存するとき」としている。(前同)
- なお、協定更新拒否が争議行為であるか否かは、36協定の未締結状態での時間外労働又は休日労働が認められることとは関係がない。36協定が締結届出されていない以上、時間外労働や休日労働を適法に行い得ないことには変わりない。
また、労働組合が争議行為として時間外労働拒否をすること自体は正当な争議行為として労組法上の免責をうけるものである。
28-14 協定の有効期間の定めについて
- 36協定には、それが労働協約である場合を除いて、有効期間の定めを要する。(施行規則第16条第2項)現在は、有効期間の長さについて制限条項は置かれていない。
なお、労働協約による場合は必ずしも有効期間の定めは必要ない(労組法第15条の適用を受ける)。
しかし、現在労基署の窓口が「36協定の有効期間は最長でも1年間とすることが望ましい」とする指導方針をとっているので、協定は、基本的に1年以内の有効期間で締結すべきであろう。
- 参考(経緯)
昭和27年の施行規則改正までは、有効期限は3ヵ月まで。昭和27年改正から昭和29年改正の間は、労働協約による場合は1年、その他の場合は3ヵ月まで。昭和29年改正から有効期間の制限規定は廃止されたもの。
28-15 36協定届は適法残業のための手続(使用者の刑事免責)であり、労働者に残業を命じ得る根拠は労働契約にある
- 36協定は、時間外・休日労働を適法に行うための手続であり、これによって、使用者は労働者に時間外労働又は休日労働をさせても労基法第32条等の違反とはならない。
すなわち、36協定の締結、届出によって使用者は刑事上の免責を得ることとなる。
- 「協定の効力も本条の規定からは右の刑事免責的効力に限られることとなり、時間外又は休日労働命令に服すべき労働者の民事上の義務は、本協定から直接生ずるものではない。」(労働省労働基準局編著「労働基準法」上巻)
「時間外、休日労働を使用者が命じ得べき根拠、言い換えれば使用者の行う時間外又は休日労働に服すべき労働者の義務が発生する根拠は、具体的には個々の労働契約に基づくものであるから、このような契約が存しない場合は、本条の協定が成立しても使用者は時間外又は休日労働を命ずることができず、労働者はこれに従うべき義務を負わないことになる。」(同)
28-16 時間外労働は拒否できないのですか。(使用者が労働者に時間外労働や休日労働を命ずることができる場合の根拠はなにか)
- 就業規則に「業務の必要により時間外労働を命ずることがある。」等の使用者が労働者に対して時間外労働を命じ得る根拠となる規定があり、かつ、労働基準法第36条に基づく「時間外労働に関する協定」の締結、届出が行われている場合においては、「原則として、労働者には時間外労働の義務が生じ、相当の理由なくこれを拒否することは業務命令違反になる」というのが、多数説の見解だと思われます。
- 前記の状況において、使用者の時間外労働の業務命令は(一応)成立するものの、時間外労働の場合は、通常(法定内、所定内)の労働とは性格を異にすることから、労働者がこの業務命令に従わないからといって直ちに懲戒処分の対象となるものではなく、労働者の責任を問うには、「業務命令に従わないことが違法な場合でなければならない。」(我妻榮、民法講義「債権総論」)とされています。逆にいえば、労働者は、業務命令当日の時間外労働に従えないことについて相当の理由がある場合においては、これを断ることができると解されます。
- なお、前記における時間外労働を命じ得る根拠は、36協定(刑事罰の免罰効果を有する)ではなく、就業規則の規定であるとされています。
28-17 出向の場合、36協定は出向元、出向先のいずれで結ぶか
- 「一般には、実質的に指揮命令権を有し、労働時間に関する規定の履行義務を有すると認められる出向先において協定を締結することが必要である。」(S35・11・18基収第4901の2号)
- なお、関連したものでは、派遣業法にもとづく派遣労働者や出張の場合の取扱いが問題となるが、この場合、派遣労働者については派遣元。出張の場合は所属事業場。
28-18 有効期間中の36協定を、労働組合は一方的に破棄できるか
- 期間の定めのある契約は、一方的には破棄できない。
これに関連した解釈例規では「法第36条により時間外又は休日労働の協定を行っている事業場において、協定の有効期間内に労働者又は使用者より一方的に協定破棄の申入れをしても、他方においてこれに応じないときは協定の効力には影響ない。」としたものがある。
(なお、協定の中に破棄条項がある場合は、それが定める手続により解約は可能。)
- この原則的考えは妥当と思われるが、問題となるのは、使用者側に36協定の違反行為があった場合や締結時に想定できない事情変更があった場合の解約であろう。
これらについて、一切の協定解約を認めないとするのは妥当でないと解する。
最終的には個別事情の判断の問題となるが、その要件は厳格に解して差し支えないものを思われる。
36協定は、そもそも、事情変更等に対応できるように有効期間を短期に設定することが可能であるし、制度の趣旨からしてもそれが望ましいのであって、中途解約を広く認める理由に乏しいからである。
28-19 36協定に自動更新の定めがある場合の更新手続は?
- 労基法施行規則第17条は、36協定の更新手続を規定しているが、この取扱いに関して次の解釈例規がある。
「36協定の有効期間について自動更新の定めがなされている場合には、更新の届出は、当該協定の更新について労使双方から異議の申出がなかった事実を証明する書類を届け出ればよい」(S29・6・29基発第355号)
- 実務的には、「平成○年○月○日に締結し届出済の時間外、休日労働に関する協定は、同協定第○条に定めるところにより労使異議なく、これを自動更新したのでお届けする。(労使連署捺印)」
なお、有効期間が短期(1〜3ヵ月等)の場合の自動更新は別として、有効期間が1年間のような協定の繰返しの自動更新は制度の趣旨からみて望ましいことではない。
28-20 36協定は所轄労働基準監督署長への届出日以降にはじめて有効となる
- 労基法第36条の時間外、休日労働に関する協定届は「・・書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては・・労働させることができる。」の文言に見られるように、行政官庁への届出が効力発生の要件とされている。
- 同じ届出でも、就業規則等の場合とは「届出のもつ意味」が違うので注意する。
有効期間の始期を渡河して受理された協定書は、原則として、所轄の労働基準監督署の受理印日付から有効期間の終期までが当該協定の有効期間となる。
28-21 「健康上特に有害な業務」は1日2時間までの残業制限がある
- 労基法第36条には、次の「但し書き」が付されている。
「ただし、坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。」(労基法第36条但書)
- この規定が適用される有害業務の範囲は、施行規則第18条に定めがある。
- なお、1日2時間までの意味であるが「指定の有害業務を主たる内容とする業務(関連する作業を含めた一体の一連の業務)に従事した時間数が法定労働時間に2時間を加えた時間まで」と解される。
これは、休日労働の場合にも適用され、休日労働は、最長10時間までに制限される。
28-22 協定締結時に「労働者の過半数を代表する者」であれば、その後過半数割れとなっても協定は有効
- 労基法第36条の趣旨は、36協定の締結に当って、時間外・休日労働について労働者の団体意思を反映させることにあるから、「本条が協定当事者の要件として要求している労働者の過半数を代表するという要件は、協定の成立の要件であるにとどまり、協定の存続要件ではないと解される。」(労働省労働基準局「労働基準法」上巻)