他人の加害行為による災害と労災認定
■HOMEPAGE
■640/480
業務に関連して、あるいは業務にまつわる私怨等によって 1 同僚労働者間、監督者と労働者との間の暴力沙汰等の加害行為 2 外部の第3者から暴行 によって災害に遭うことがある。 いずれの場合でも、他人の故意に起因する点で、一般には業務起因性は認められないが 『災害の原因が業務にあって、業務と災害との間に相当因果関係が認められる場合には たとえ、他人の故意が競合していてもその災害は業務起因性がある』とされる。 そのためには、 1 加害行為が明らかに業務に起因していることが要求される。 より具体的には、 (災害発生の経緯、被災者の従事していた業務の内容・性質が他人の反発や怨みを 買いやすいものかどうか、職務の性質から他人の攻撃目標になるものであるかど うか) 2 一見業務に起因しているように見えても、実際には加害者の私怨や加害者との私的 関係に起因している場合もある。この場合、時間的・場所的関連性が重視される。 ○対人関係に起因する災害は、もとをたどれば、業務上の原因があった場合でも、時 間的経過とともに私怨に転化する場合が多いと考えられている。 ○勤務中の加害行為は、業務との関連が強いと推定されるが、勤務時間外の生活の場 での加害行為は、私怨によるととらえられるケースが多い。 3 なお、「けんか」であるが、これは発端が業務に関連があった場合でも双方が暴力 行為に踏み込んだ段階から、私怨の扱いとされる。 職務上の限度を超えて、相手を挑発したようなケースでは、手を出していなくても業 務との関連性が否定される。(正当防衛は「けんか」とは見ない) 実例(紹介) 【業務上とされた例】 1 職務上なすべき当然の注意をしたところ、反抗的態度から口論となり、手にした角 材で殴られ負傷した【業務上認定】 2 警備員が暴漢におそわれて死亡したもので、個人的怨恨関係はなかった【業務上認 定】 3 無札入場を制止した改札係が乗客に刃物で顔面を斬りつけたれた。 【駅の改札は場所的条件として口論の起こりやすい、紛争による災害の発生する蓋 然性が高い職場環境にある。紛争は業務に関して生じており、業務上認定】 【業務外とされた例】 1 付属寄宿舎の寮長が寮生から暴行を受けた例 【生活の場において生じた災害であり、寄宿舎の設備、施設の欠陥等によるもので はないから業務上とは認められない】 2 無賃乗車を注意した車掌が2日後、ダンスパーティ会場で「恥をかかされたと」暴 行を受けた例 【相当の時間が経過し、被災場所も被災者の業務との関連がないところで発生して おり、相当因果関係を認めるに足りない】 3 工事打ち合わせに赴く途中、人違いにより過激派におそわれ負傷した事件 【勤務する会社は過激派から襲撃されるような性格はなく、会社又は業務に内在す る危険が現実化して発生したものではなく、人違いという個人的理由による第三 者の暴力行為であり、業務外】 4 勤務中の農協女子職員がかねてより恋慕の情をもっていた客に刺殺された事件 【災害が業務上のものといいうるためには、職務行為が災害を誘発したということ が必要であるがこの関係が認められない。本件は加害者が金品奪取を目的とした ものでもないから、業務外】 5 不特定多数の殺害を目的として仕掛けられた青酸入りコーラを飲んだため死亡した 事件(業務終了後、寮へ向かう途中、公衆電話ボックス内にあった瓶入りコーラを 同僚から貰いうけ、寮で飲んだ。) 【本件は、不特定多数を対象とし無差別に他人を殺害しようとする目的と認められ (いわば)不慮の厄災というべきもので、被災者はもとより同社の従業員のみを 対象としてこれを殺害する目的でもなかった/業務外】