O−157感染症にかかわる解雇、休業補償の取扱(通達)
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<目次> ■O−157保菌者、患者に対する解雇、休業補償の取扱(通達) ■伝染病予防法の就業制限業務の内容 ■新聞報道にみるO−157の相談と就業制限問題 ■O−157保菌者、患者に対する解雇、休業補償の取扱(通達) 目次に戻ります 平成8年8月6日、O−157が伝染病予防法の伝染病に指定された。 これに伴い、労働省は8月9日、O−157感染症にかかわる解雇・休業補償等への対 応について通達した。 特に、取扱について新解釈はないが、新聞では企業の保菌者に対する出勤停止、自宅待 機等の過剰反応も報じられており、法的取り扱いについての問い合わせも増加している といわれる。 通達のポイントを紹介する。 通達のポイント(平成8年8月9日基発第511号) 目次に戻ります 1 り患労働者に係る解雇 ○O−157にり患していることのみを理由とする解雇は(一般的に)解雇権の濫 用に当た(り、無効。) ○また、労働基準法第20条第1項但し書きの「労働者の責めに帰すべき事由」に は該当しない。 2 り患労働者を休業させる場合の取り扱いについて(休業手当の支給について) 一般的には、 ○(伝染病予防法に基づく)就業制限業務に従事するり患労働者を休業させること は、法令の順守行為であるから「使用者の責めに帰すべき事由」に該当しない。 ○り患労働者を就業制限業務以外の業務に従事させることを十分検討する等、休業 の回避について使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた 場合は、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当。 ○伝染病予防法に基づく就業制限業務及び厚生省通知に基づく行政指導における対 象労働者、休業の期間・業務の範囲を超えて労働者を休業させることは、「使用 者の責めに帰すべき事由」に該当。 3 年次有給休暇の算定基礎となる全労働日の取扱について ○(法令の順守たる要件を備えた)休業をさせる場合、当該休業は、労使のいずれ の責めにも帰すべからざる事由によるものであるから、当該休業の日は全労働日 に含まれないものとして取り扱う。 4 労災補償の基本的な考え方について ○労働者が事業場に附属する食堂等における食事又は事業主の提供に係る食事を感 染源としてO−157による食中毒にり患した場合には、業務上の疾病として取 り扱う。 5 なお、O−157にかかる就業制限については、当面、伝染病予防法に基づく措置 によることとし、労働安全衛生法第68条に基づく就業禁止の措置を講ずることは 要しないものであること。 ■伝染病予防法の就業制限業務の内容 目次に戻ります 伝染病予防法第8条の2(業務従事の禁止)は、 「伝染病患者(保菌者を含む)ハ業態上病毒伝播ノ虞アル業務ニ従事スルコトヲ得ズ」 その業務の範囲は命令で定めるとし、その内容は以下のとおりである。 「・・・ソノ他直ニ飲食ニ供シ得ヘ物の製造、販売、調製又ハ取扱ニ直接従事スル業務」 (施行規則第31条第1項第1号) 厚生省保健医療局長の施行通達(平成8年8月6日健医発第940号)は、施行上の留 意事項の一つに「就業制限に当っての留意事項」として以下のとおり通達している。 1 ・・就業制限は、・・直接食品に接触する業務で、かつ、他に感染させる可能性が 高いものに限定するものとし、適用範囲がいたずらに拡大しないよう留意すること。 2 従って、同じ職場内であっても、直接食品に接触する業務以外の業務に従事するこ とは差し支えないこと。 3 保菌者で・・・・陰性が確認された者については、就業制限の必要はないこと。 なお、患者の場合24時間以上の間隔をおいて実施した2回の検便が陰性になった とき、保菌者の場合、直近の検便1回が陰性であれば就業制限は解除される。 ■新聞報道にみるO−157の相談と就業制限問題 目次に戻ります 8月6日朝日新聞朝刊 日本フードサービス協会のアンケートの内容を紹介し、つぎのような過剰反応をする事 業場が多いと、それを戒める報道。 ○従業員に感染者が出た場合は出社禁止(自宅待機、休職措置) ○体調を崩した場合は自宅休養 ○家族に感染者が出た場合、当該従業員は出勤停止 ○家族に疑わしい人がいれば、本人は休んでもらう ○従業員の家族が通う幼稚園や小中学校で感染者が出た場合には、家族が感染していな くても調理業務からはずし、自宅待機とする ○従業員に感染者が出た場合は、調理業務に従事させない(これは厚生省通達に沿った 対応だが、むしろ少数) 8月6日読売新聞朝刊 ○家族に感染者がいるパート従業員ら4人を自宅待機させた市内のスーパー 8月16日日本経済新聞朝刊は「職場のいじめ深刻化」を報じている。 ○飲食店関係に勤める堺市のある男性は、子供がO−157に感染したことを理由に、 会社から「辞めてくれ」と言われ、同市対策本部の「医療相談ホットライン」に、「 本当に辞めないといけないのか」と相談。 ○また、同市のパート勤務の女性は子供が感染し、勤務先から「落ち着くまで休んでく れ」と言われた。「休むと収入が途絶えてしまう。いったい、どうしたらいいのか」 と頭を抱えている。 ○会社を休んだだけで、検便してこい、と言われた。 ★医療相談ホットラインでの相談は計55件中、労働問題は16件。 ★大阪府と大阪労働基準局の「O−157労働相談窓口」には、開設初日で20件の相 談。 ★労働省のまとめでは、8日までに全国の労働基準監督署に寄せられた相談は159件、 大半が大阪府以外という。