労災保険の特別加入制度

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<目次>
■労災の任意保険。特約条件のもとで補償される
■海外派遣者............(海外では日本の労災保険は適用されない。海外転勤等の場合、国内で特別加入の手続を予めとっておけば補償を受けられる)
■中小事業主............(事業主には労災保険の適用がない。中小事業主の特別加入制度が設けられている)
■自営業者(一人親方等).(自営業者も労働者でないから労災保険の適用はない。自営業者の特別加入制度が設けられている)
■特定作業従事者........(農業関係特定作業従事者、国・地方公共団体の実施する訓練従事者、家内労働者、労働組合一人専従役員の特別加入制度が設けられている)











■労災の任意保険。特約条件のもとで補償される 目次に戻ります

労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、障害又は死亡に対して保険給付を行う制度です。
しかし、労働者以外の方のうち、その業務の実情・災害の発生状況などから見て労働者に準
じて保護することが適当であると認められる一定の者に対して、特別に任意加入を認めてい
るのが、労災特別加入制度です。

従って、加入条件や被災した場合の補償は、予め特約した内容で行われます。
労働者の場合とすべて同じ補償がなされる訳ではありませんから、注意が必要です。条件等
について予め十分確認しておくことが大切です。







■海外派遣者 目次に戻ります

特別加入を行うことができる海外派遣者の範囲

 海外派遣者として特別加入を行うことができる者の範囲は次のとおり。
1 国際協力事業団等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除きます。)
 を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する者
  国内における所属先又は雇用関係の有無を問わず、団体と役務提供契約を結んだ専門家
 や技術者等で、その役務提供契約に基づいて開発途上地域で行われる事業に団体から派遣
 される者が該当します。
2 日本国内で行われる事業(有期事業を除きます。)から派遣されて海外支店、工場、現
 場、現地法人、海外の提携先企業等海外で行われる事業に従事する労働者
  ただし、派遣者の身分とか、派遣元事業との関連又は派遣の目的等によって加入の制限
 が行われる場合があります。
  たとえば、現地法人の代表者として派遣されたような場合は、その事業に使用される労
 働者とは認められないので、特別加入の対象者とはなりません。ただし、海外支店の支店
 長とか工事現場における責任者等であっても、一般的に労働者的性格を有すると認められ
 る者は、特別加入の対象者として取り扱われることがあります。

海外派遣と海外出張の区分

 国内の事業場で就労していた者が海外で業務に従事するケースにはさまざまなものがあり
ますが、大きく区分すると「海外出張」の場合と「海外派遣」の場合が考えられます。労災
保険の給付を受けられるか受けられないかという点では、「海外出張」である場合は、当該
海外出張者に関して何ら特別の手続を要することなく、その者が所属する事業場の労災保険
により給付を受けられますが、一方「海外派遣」である場合は、当該海外派遣者に関して特
別加入の手続を行っていなければ、労災保険による給付が受けられないこととなります。
この場合の「海外出張者」とは、単に労働の提供の場が海外にあるにすぎず、国内の事業場
に所属し、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務する者であり、「海外派遣者」とは、海
外の事業場に所属して、当該事業場の使用者の指揮に従って勤務することになる者と定義さ
れ、これらは勤務の実態によって判断されることとなります。
 なお、海外出張のケースと海外派遣のケースを一般的に例示すると次表のようなものとな
ります。


  海外出張               海外派遣

1 商談                 1 海外関連会社(現地法人、合弁会社、提
2 技術・仕様等の打合わせ          先企業等)へ出向する場合
3 市場調査・会議・視察・見学      2 海外支店、営業所等へ転勤する場合
4 アフターサービス           3 海外で行う据付工事・建設工事(有期事
5 現他での突発なトラブル対処        業)に従事する場合
6 技術習得                 (統括責任者、工事監督者、一般作業員
等のため海外へ赴く場合             等として派遣される者)



特別加入の手続その他

◎特別加入申請書(様式34号の11)を提出し承認を受ける。
◎海外派遣に関する報告書の提出
◎必要に応じ「特別加入変更届」の提出と承認。
◎補償の給付基礎日額は、最高20,000円(年収換算約730万円)まで。
◎給付を受けるには、「派遣先事業主の証明書、在外公館の証明書、新聞記事」等を添付。





■中小事業主 目次に戻ります

特別加入を行うことができる中小事業主等の範囲

 中小事業主等の特別加入として、「中小事業主」及び「中小事業主が行う事業に従事する者
(労働者は除く)」(以下「中小事業主等」といいます。)が加入することができます。
1「中小事業主」とは、常時300人(金融業、保険業、不動産業、小売業又はサービス業に
 あっては50人、卸売業にあっては100人)以下の労働者を使用する事業の事業主(事業
 主が法人その他の団体であるときは、その代表者)をいいます。
2 「中小事業主が行う事業に従事する者」とは、労働者以外の者で当該事業に従事する者を
 いいます。すなわち、特別加入を行うことのできる事業主の家族従事者や中小事業主が法人
 その他の団体である場合における代表者以外の役員などが対象となります。

特別加入の要件及び手続

1 中小事業主等が特別加入を行うためには、次の要件を備えていることが必要です。
 イ 中小事業主等が行う事業について労災保険に係る保険関係が成立していること。
 ロ その事業に係る労働保険事務の処理を労働保険事務組合に委託していること。
2 一定の有害業務に従事している場合、加入時に健康診断が必要です。

業務災害と通勤災害の認定基準

業務上災害の補償は、つぎのような限定がありますので、注意が必要です。
次に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができません。
 イ 申請書別紙の「業務内容」欄に記載された所定労働時間内において、特別加入の申請に
  係る事業のためにする行為(その行為が事業主の立場において行われる事業主本来の業務
  を除きます。)及びこれに直接附帯する行為(生理的行為、反射的行為、準備・後始末行
  為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいいます。)を行う(以下「就業する」と
  いいます。)場合
 ロ 労働者の時間外労働に応じて就業する場合
   所定労働時間外における特別加入者の業務については、原則として業務遂行性は認めら
  れませんが、その事業場の労働者が時間外労働を行っている時間内に限って業務遂行性を
  認めています。
 ハ 就業時間(時間外労働を含みます。以下同じ。)に接続して行われる準備・後始末の業
  務を特別加入者のみで行う場合
 ニ 上記イ、ロ及びハの就業時間内における事業場施設の利用中及び事業場施設内での行動
  中の場合
 ホ 当該事業の運営に直接必要な業務(事業主の立場において行う本来の業務を除きます。)
  のために出張する場合
 へ 通勤途上であって次に掲げる場合
  (イ)事業主提供に係る労働者の通勤専用交通機関の利用中
  (ロ)突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上
 ト 当該事業の運営に直接必要な運動競技会、その他の行事について労働者(業務遂行性が
  認められる者)を伴って出席する場合

2 通勤災害については、一般労働者の場合と同様に取り扱われます。







■自営業者(一人親方等)目次に戻ります

特別加入を行うことができるー人親方等の範囲

1 労働者を使用しないで行うことを常態とする一人親方その他の自営業者及びその事業に
 従事する者(以下「一人親力等」といいます。)のうち、次の種類の事業を行う者が特別
 加入できます。
 イ 自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業を行う者(個人タクシー業(及び個
  人貨物運送業者がこれにあたります。)
 ロ 建設の事業を行う者(大工、左官、とびなどのいわゆるー人親方がこれにあたります。)
 ハ 漁船による水産動植物の採捕の事業を行う者(漁船に乗り組んでその事業を行う者に
  限ります。)
 ニ 林業の事業を行う者
 ホ 医薬品の配置販売の事業を行う者(薬事法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置
  販売業をいいます。)
 へ 再生利用の目的となる廃棄物等の収集、運搬、選別、解体等の事業を行う者
2 「一人親方その他の自営業者が行う事業に従事する者」とは、労働者以外の者でその事
 業に従事する者をいいます。すなわち、通常は家族従事者のことです。

特別加入の要件及び手続

1 一人親方等の団体に加入する必要があります。
2 一定の有害業務に従事している場合、加入時に健康診断が必要です。

業務災害と通勤災害の認定基準

業務上災害の補償は、つぎのような限定がありますので、注意が必要です。
次に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができません。
 イ 個人タクシー業者及び個人貨物運送業者
  (イ)免許を受けた事業の範囲内において事業用自動車を運転する作業(運転補助作業を
     含みます。)、貨物の積卸作業及びこれらに直接附帯する行為(生理的行為、反射
     的行為、準備・後始末行為、必要行為、合理的行為及び緊急業務行為をいいます。
     以下同じ。)を行う場合
  (ロ)突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上

 口 建設業のー人親方等
  (イ)請負契約に直接必要な行為を行う場合(請負契約締結行為、契約前の見積り、下見
     等の行為を行う場合)
  (ロ)請負工事現場における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
  (ハ)請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
  (ニ)請負工事に係る機械及び製品を運搬する作業(手工具類(鋸、鉋、刷毛、こて等)
     程度のものを携行して通勤する場合を除きます。)及びこれに直接附帯する行為を
     行う場合
  (ホ)突発事故(台風、火災等)等による予定外の緊急の出勤途上

 ハ 漁船による自営漁業者
  (イ)水産動植物の採捕、これに直接必要な用船中の作業及びこれらに直接附帯する行為
     を行う場合
  (ロ)最終の発地から漁船まで、又は漁船から最初の着地までの間において行為を行う場
     合
  (ハ)突発事故による予定外の緊急の出勤途上

 二 林業のー人親方等                       目次に戻ります
  (イ)森林の中の作業地、木材の搬出のための作業路及びこれに接続する工場における作
     業並びにこれに直接附帯する行為を行う場合
  (ロ)作業のための準備・後始末、機械等の保管、作業の打合せ等を通常行っている場所
    (自宅を除きます。以下「集合解散場所」といいます。)における作業及びこれに直
     接附帯する行為を行う場合
  (ハ)集合解散場所と森林の中の作業地の間の移動及びこれに直接附帯する行為を行う場
     合
  (ニ)作業に使用する大型の機械等を運搬する作業及びこれに直接附帯する行為((イ)
     〜(ハ)に該当しないものに限ります。)を行う場合
  (ホ)台風、火災等の突発事故による緊急用務のために作業地又は集合解散場所に赴く行
     為を行う場合

 ホ 医薬品の配置販売業者
  (イ)住居を出た後の最初の用務先からその日の最後の用務先までの間において行う医薬
     品の配置販売業務(医薬品の仕入れを含みます。以下同じ。)及びこれに直接附帯
     する行為並びに医薬品の配置販売業務を行うために出張する場合(住居以外の施設
     における宿泊を伴う場合に限ります。)。なお、この場合の医薬品の配置販売業務
     は薬事法第32条及び同法施行規則第37条の規定により都道府県知事に届け出た
     配置販売に従事する区域及び期間内において行うものでなければなりません。

 へ 再生資源取扱業者
  (イ)再生資源を収集、運搬、選別、解体する等の作業及びこれに直接附帯する行為を行
     う場合
  (ロ)再生資源を収集、運搬するために行われるトラック等の貨物運搬用車両等を運転又
     は操作する作業及びこれらに直接附帯する行為を行う場合
  (ハ)台風、火災等の突発事故による緊急用務のために、再生資源の集積場所等に赴く行
     為を行う場合

2 通勤災害については、一般の労働者の場合と同様に取り扱われます。
  ただし、次に掲げるー人親方等については、住居と就業の場所の間の往復の状況等から、
  通勤災害が給付の対象となっていません。

  イ 個人タクシー業者及び個人貨物運送業者
  口 漁船による自営漁業者







■特定作業従事者 目次に戻ります

つぎの特定作業従事者が特別加入の対象になっていますが、加入条件等の詳細は最寄りの労働
基準監督署へ問い合わせてください。

■農業関係特定作業従事者
 特定農作業従事者
 指定農業機械作業従事者
■国・地方公共団体の実施する訓練従事者
 職場適応訓練従事者
 事業主団体等委託訓練従事者
■家内労働者及びその補助者
■労働組合一人専従役員

被災した場合の補償

業務上災害の補償は、予め補償範囲が特定(限定)されています。
特約に該当しない場合には、被災しても保険給付を受けることができませんので、注意が必要で
す。
詳細は最寄りの労働基準監督署へ問い合わせてください。
通勤災害は、一般の労働者の場合と同様です。
ただし、農業関係特定作業従事者と家内労働者等は通勤災害の給付がありません。