諸外国の労働契約の締結に係る法規制
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労働契約の締結時の法規制
(欧米4カ国)

資料出所:労働省外国労働法制研究会(1991年)


no

項目

アメリカ

イギリス

ドイツ

フランス

 

1

成立過程についての規制

■募集の際,人種,肌の色,宗教,性,出生国,年齢を理由として差別することは,違法とされる。

■州によっては,疾病,障害,既婚の有無,前科等について尋ねることも禁止される。

■性や人種の差別に当たる求人広告及び性や人種を理由とする選別方法を違法とする。

■募集についての規制(中立性,事業所委員会の関与.労働条件の明確化)。

■質問権の制限。

■求人,求職者はANPE(Agencenationale pour I' emploi)に登録しなければならない。

■求人時に偽りの労働条件を掲げることの禁止。

 

2

労働契約の締結についての規制

■契約締結の自由。書面による必要はなく,様式は,原則自由。実際,口頭によるものが大部分である。

■人種,肌の色,宗教,性,出生国,年齢を理由とする採用拒否は,違法とされる。

■性や人種を理由とする採用拒否を違法とする。

■徒弟契約については書面によることが必要。

■契約締結の自由が原則であるが,男女差別の禁止,共同決定権に関する規制,年少者,重障害者,外国人に関する規制がある。

■様式は,原則として自由。書面によることも要しない。ただし,職業訓練契約等については,書面によることを要する。

■労働契約は諾成行為であり,書面による合意は必要ない(L121−l条)。

■一般労働者について,書面で契約が締結されることは少ない。協約が労働者への雇用通知書(Lettred’engagement)の送付を義務づけていることがある。守秘義務や競業避止義務のある管理職,技術労働者については,書面で契約が締結されるのが通常である。

■例外的に,次の場合には,法律により,書面により労働契約を締結することが必要とされている。
★徒弟契約(L117−12条,R117−10条以下)
★期間の定めのある契約(L122−3−1条,D121−3条)
★派遣労働者の労働契約(L124−4条)
★使用者集団による労働契約(L127−2条)
★パートタイマーの労働契約(L212−4−3条)
★間欠労働の労働契約(L212−4−9条)
★外国人労働者(入国前)の労働契約(L314−2条)
★家内労働者の労働契約(L721−7条)
★勤務医の労働契約(公衆衛生法典第462条)
★船員の労働契約

■書面で契約を締結する場合には、フランス語を使用しなければならない。外国人労働者については、母国語訳を添付する必要がある。

 

3

労働条件の明示

■法令上,明示義務を定めた規定はない(ただし,採用手続の段階で,口頭又は書面により示された労働条件が事実と相違した場合,契約違反の問題が生じる余地はある。なお,かかる事態の発生を阻止するため,使用者が労働者に手交する文書(就業規則を含む。)には,拘束カ否認条項(dlsclaimers)を挿入するよう使用者側弁護士は推奨している。)。

■労働契約締結後,13週間内に「雇用明細書」により,次の事項を明示する必要がある(雇用保護(統合)法1978年ss1−11条)。
★使用者及び労働者の名
★仕事の名称
★使用が開始される日
★報酬の算定方法
★通常の労働時間
★休暇及び手当
★年金
★傷病による休業の期間,手当等
★解雇予告期間
★懲戒規定
★苦情処理

■原則として,明示義務はない。ただし,事業所組織法第81条に,一部の労働条件について使用者の通知義務が定められている。

■以下の場合は,明示義務あり。
★工業労働者
★職業訓練契約
★派遣労働者
★家内労働者

■実態としては,契約書のフォームが普及している。

■書面により明示すべき事項については,一般的定めはない。ただし,書面による労働契約の締結が義務づけられている場合には,明示しなければならない事項が定められている場合がある。

 

4

労働契約の期間

■期間の制限はない。期間の定めのある契約は,解約が常に自由な期間の定めのない契約より,労働者側に有利とされている。

■期間の定めのある労働契約を締結することは,禁止されていない。

■期間の定めのある労働契約が更新されない場合には,不公正解雇及び剰員解雇に関する法規制との関係では、解躍として取り扱われる。

■労働契約は,原則として期間の定めない契約であるが、期間の定めのある契約も許される(民法第620条)。期間の定めについては,判例により客観的に正当な理由が必要である場合に限り認められる。

■期間の長さは,最大18カ月で例外的に2年とされる(就業促進法第1条)。

■高校教員,医師については,それぞれ5年の特別規制がある。

■短期間の契約が反復継続して更新される場合,判例により,期間満了による労働契約の終了(雇止め)が解雇とみなされる場合がある。

■労働契約は,原則として期間の定めのない契約であり,期間の定めのある契約は,法で認められた場合に限られる。

■例外的に期間の定めを置くことができるのは,次の場合である。
★徒弟契約(L115−2条)
★一般的作業について例外的に認められる契約(L122−1条)・労働者の一時的不在,労働契約の停止等・企業の活動の一時的増加・季節的性格の労働等、最長期間は1回のみの更新を含めて18ヶ月である。
★派遣労働契約(L124−1条以下)
★商業代理人、セールスマンの労働契約

 

5

試用期間

■法令上,試用期間の設定を制限禁止した規定はない。

■BNAの調査(1989年)によると,労働協約の86%が試用期間の定めを置き,その中の76%が,試用期間中の解雇・懲戒の自由(協約上の制限条項の適用除外)を定めている。

■確定的な試用期間が設定された場合には,その期間は雇用期間ではないので,試用期間中雇用義務を負うものではない。確定的試用期間が2年以上である場合には,試用期間満了時に使用者が常用被用者として雇用しなかった場合には,不公正解雇の申立てをすることがでさる。

■試用期間満了時に常用被用者として雇用するかどうかの権限は,使用者が有している。

■不公正解雇の申立てにおいては,試用者が常用ポストに適格であることを立証する必要がある。

■しかし、試用者の成績が一定水準に達しない場合には,その旨を警告しておかないと不公正解雇になる可能性がある。

■明示の特約のない限り,期間の定めのない労働契約の一部とみなされる。試用期間が終わると,労働契約が続いているとみなされる。

■長さは,6月月が標準である。

■試用期間が期間の定めのない契約の一部と解される場合,解雇は可能である。

■試用期間を設けることができることについては,「労働法典」上黙示的(期間の定めのない契約について,L122−4条),明示的(期間の定めのある契約について,L122−3−2条)に認められている。

■試用期間については,しばしば,協約による規制がある。

■試用期間の終了とともに,労働契約は,締結時から,本契約として取り扱われる。

 

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