福利厚生制度−情報2

■HOMEPAGE

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■福利厚生制度







 資料
(日本経済新聞1999.7.28朝刊記事第1面)

確定拠出年金 概要固まる
・受給開始60−70歳
・勤続3年で移管可能
・掛け金
・運用益 非課税


(中見出し)

 政府・自民党は二十七日、掛け金の運用実績に応じて将来の年金額が変わる「確定拠出型年金」の具体案を固めた。
 新制度は主婦や公務員を含めた六十五歳末満の基礎年金加入者が対象となり、年金の受け取り開始年齢は六十歳から七十歳までとする。掛け金と運用益は非課税にするとともに、受給時も年金で受け取る場合は公的年金等控除を適用するなど、税制上の優遇措置を広く設ける。政府・自民党は新制度を個人が老後に備えるための新たな選択肢と位置付け、公的年金や厚生年金基金など既存の企業年金を自助努力で補完できるようにする。来年の通常国会に確定拠出型年金法(仮称)など関連法案を提出、二〇〇〇年秋の導入を目指す。

(記事本文)

 この案は六月の自民党原案をもとに厚生、大蔵、通産、労働の四省が具体的な仕組みをまとめ、二十七日の自民党私的年金等小委員会(津島雄二委員長)で了承を得た。四省は八月中に必要な税制改正要望をまとめ、年末の二〇〇〇年度税制改正を経て政府・与党としての最終案を固める。
 今回の案では、年金の受け取り開始年齢は六十歳から七十歳までの間で加入者が自由に決めることができる。受給方法は年金または一時金の形になる。サラリーマンなどが退職時に年金を受け取れるようにするとともに、七十歳までの受給開始を明記することで、年金としての位置付けを明確にする。
 制度としては、従業員のために企業が掛け金を拠出する「企業拠出型」と、確定拠出型年金を持たない企業に勤めるサラリーマンや自営業者が個人で入る「個人拠出型」の二形態を認める。企業拠出型については、勤続年数が三年以上の従業員は転職しても企業の拠出分を含めた年金資産を転職先に移し替えることができると明記した。雇用の流動化に配慮し、年金資産の移動を容易にするのが狙いだ。
 「個人拠出型」については、企業が従業員の老後の備えを厚くするため、個人の拠出金に上乗せして企業も掛け金を拠出できるようにする。企業の上乗せ掛け金は、拠出した時点で従業員に属する。
 税制では、掛け金の拠出時と運用益は非課税にするとともに、受給時の課税も年金で受け取る場合は公的年金等控除、一時金で受け取る場合は退職所得課税を適用する。企業と個人の拠出限度額は、八月の税制改正要望時までに詰める。
 掛け金の運用は原則、企業拠出分、個人拠出分ともに加入者本人が自分のリスクで運用先の金融機関に指示する。ただ従業員の了解を得ていることを条件に、企業が複数の従業員の掛け金について、まとめて金融機関に指示することも認める。
 厚生年金基金、適格退職年金といった既存の企業年金の資産を確定拠出型年金に移すことも認める方向で検討する。厚年基金など既存の企業年金は、あらかじめ年金額が決まっているが、予定していた運用益が得られず企業の穴埋め負担が重くなっている。確定拠出型年金は、企業に追加の拠出負担が及ばないため、経済界は既存年金からの年金資産の移管を認めるよう要望している。


(定拠出型年金案のポイント)

▽加入対象者
 専業主婦や公務員を合めた65歳末満の基礎年金加入者が加入できる
▽掛け金
 企業拠出型と個人拠出型の2本立て。 イ従業員は企業糊肘」型に、企業は個人拠出型に掛け金を上乗せできる
▽転職先への移管
 企業拠出型では勤続年数3年以上なら転職先への移管を認める
▽運用商品
 預貯金、公社債、投資信託、保険などから3つ以上の選択肢を提示。個別株・自社株での運用も認める
▽受 給
 年金または一時金として60−70歳の間に受け取りを始める
▽税制優遇
 掛け金や運用益は非課税とし、給付時に課税するのが基本。給付時に税制控除も利用できる
▽既存制度からの移行
 厚生年金基金など既存の企業年金の資産を個人に分配し、 確定拠出型へ移行することも認める方向




資料
(日本経済新聞1999.7.28朝刊記事第3面)




こうなる確定拠出型年金
掛け金額、労使で協議
サラリーマン 64歳以下、加入可能


(中見出し)

 厚生省など四省がまとめた確定拠出型年金(日本版401k)の制度が予定通り二〇〇〇年秋に導入されると、サラリーマンや自営業者など国民のほぼ全員が老後に備えて自分で年金を運用する機会を持つようになる。新制度は従来の企業年金とどう違うのか。実際に利用するにはどうしたらよいのか。制度への加入から運用、年金給付まで実際の活用方法を検証した。

(以下本文)

【異なる加入方法】

 確定拠出型年金には十代の若いサラリーマンから還暦を過ぎた自営業者まで、64歳までの国民(基礎)年金加入者ならばだれでも加入できる。加入方法はサラリーマンと自営業者、・事業主婦、学生などの間で異なる。
 まず、サラリーマンの場合、勤め先の会社が従業員のために掛け金を払う「企業拠出型」の年金制度を導入するかどうかについて、労使が協議して決める。導入することになれば、企業が毎月払う掛け金の額や年金の支給方法などに関しても労使が規約で決める仕組みだ。
 加入者本人が希望すれば、企業の掛け金だけでなく自分で掛け金を上乗せすることも可能。この場合は本人の給与から掛け金が天引きされる。会社が払う掛け金は損金処理、加入者本人が払う掛け金は所得控除がそれぞれ認められ、一定の限度額以内なら税金はかからない。この限度額は八月末に決まる予定だが、毎月六万八千円と国民年金基金の掛け金の限度額と同規模にする案が有力だ。
 勤めている会社に確定拠出型年金がないサラリーマンや、自営業者、学生、主婦などの場合は、国民年金基金連合会に申し込み、自分で掛け金を払う「個人拠型」に加入できる。この場合の加入条件は国民年金の保険料を納めていることで、滞納者は入れない。ただし、サラリーマンの専業主婦は保険料の納付義務がないので納めていなくても加入できる。


【運用は自分で指示】

 加入後はいよいよ運用だ。現在の給付額の決まった確定給付型企業年金は資産の運用を金融機関などに任せるが、確定拠出型年金では加入者本人が運用方法を指示するのが特徴。成功すれば将来の受取額を大きく増やせるが、失敗すれば元本を割り込む恐れもある。いずれの場合も自己責任となる。
 もっとも、運営を任された金融機関が加入者の数だけ異なる運用指示を受けるのは事実上不可能。このため金融機関は加入者に三つ以上の運用メニューを示し、加入者はこのなかから自分にあった運用方法を選ぶ。運用益も非課税になる税制上の優遇措置が適用される。
 運用対象は預貯金、公社債、投資信託、保険、株式などで、自分の勤め先の株式(自社株)にも投資できる。金融機関は加入者に示す三つ以上のメニューのなかに、最低一つは元本割れのりスクのない安全な金融商品を含める必要がある。
 また、リスクが大きい不動産への投資は認められない。
 加入者は少なくとも三カ月に一度は預け先の資産配分を変更できるようになっており、運用成績の悪いものから良いものへと投資対象を変えられる。
 運用を請け負う金融機関の役割は重要だ。加入者からの運用指示を実行したり運用結果を報告するほか、個々の運用商品のリスクや過去の運用利回りなどの投資情報を加入者に伝える義務がある。


【受給、毎月か一括】

 自分で運用し、蓄えた資産は六十歳になれば退職前でも受給できる。これより前に死亡した場合は家族が受け取れる。
 ただ、老後の所得を補うことが目的なので、七十歳までに受給を始める必要がある。受給しないまま七十歳を過ぎた場合、これまでの税制上の優遇措置を失うなど何らかの ”罰則”が今後設けられる可能性がある。
具体的な受給方法では、毎月一定額を年金として受け取るか、一時金で受け取るかを自分で選べる。四省案では、年金として受け取る場合は公的年金等控除の適用が受けられ、六十五歳以上の夫婦の場合で公的年金との合計受取額が年間約三百三十四万円以下なら非課税になる。
 現在の確定給付型の企業年金では、加入者全員の資産を企業がまとめて運用したうえで支払うので、長く勤めた人に比べて転職者の年金受給額は極端に少なくなりがちだ。
 これに対して、確定拠出型は加入時から個人の持ち分が明確になっているので転職しても不利にならない。企業拠出型制度で企業が拠出した掛け金についても、三年以上勤めれば加入者の受給権が認められ、転職時には自分の年金資産として転職先に持っていくことができる。
 四省案では、企業が現行の確定給付型の企業年金を確定拠出型年金に変更することを認める方針も打ち出された。企業が確定拠出型に移行する方法は幾つかある。最も簡単な方法では、確定給付型に加入している社員についてはそのままにして、新入社員から確定拠出型年金に加入するというやり方がある。このほかに、例えば二〇〇〇年度末までは確定給付型年金として企業が運営し、二〇〇一年度以降は確定拠出型に切り替える方法も考えられる。


資料
(日本経済新聞1999.7.28朝刊記事第5面)


確定拠出型年金案の要旨



 厚生、労働、大蔵、通産の四省が二十七日まとめた確定拠出型年金制度案の要旨は次の通り。(一面参照)

【加入対象者】

専業主婦など第三号被保険者を含め六十五歳末満の国民年金の全被保険者を対象とする。

【企業拠出型への加入・拠出】

○企業は労使合意に基づいて制度の内容を規定した確定拠出型年金規約を定め、主務大臣の承認を受ける。
○企業は規約に基づき掛け金を拠出、従業員も任意に決定した掛け金を拠出できる。従業員の掛け金は給与から天引きし、企業の掛け金とともに資産管理機関に払い込む。拠出には限度額を設け企業が管理する。
○新規採用者からの適用など特定の者を加入者とすることを認める。
○加入者が離転職した場合は申し出に基づき年金資産を転職先の制度に移管する。
○企業が拠出した掛け金も少なくとも三年以上勤務する者に対しては全額受益権を付与、移管を認める。


【個人拠出型への加入・拠出】

○企業が拠出しない従業員や自営業者などの加入の受け付け、掛け金のとりまとめは国民年金基金連合会が行う。
○従業員、自営業者は掛け金を任意に決定、拠出する。国民年金保険料を滞納している期間は拠出できない。
○拠出には限度額を設け、企の従業員は企業が、自営業者などは国民年金基金連答会が管理する。
○従業員が拠出する場合、企は従業員の拠出に上乗せ拠出ができる。

 
【資産管理機関】

@拠出された掛け金を会社や加入者の財産から明確に分離し、年金資産として保全できる
A運営管理機関が選定する運用商品について、当該商品を提供する金融機関と契約し、または自ら運用商品を用意することで対応できる−−などの要件を満たす必要がある。


【運営管理機関】

個別運用商品の選定や情報提供,加入者個人の運用指図のとりまとめ、持ち分の記録管理、給付事務などを適切に実施できる体制が整っているなど一定の適格要件を満たすものとして、主務大臣の登録を受けなけれはならない。企業や資産管理機関が運営管理機関を兼ねることも認める。

【公務員の取り扱い】

一個人の拠出は企業の従業員と同様に認められる。事業主の拠出の可否は関係省庁で引き続き検討する。

【運用】

○個々の従業員の意思に反して事業主が一括して運用指図することは認めない。
○運用商品は預貯金、公社債、投資信託、保険など。個別株、自社株も認めるが、動産、不動産は認めない。
○運用管理機関は元本確保商品最低一つを含む三つ以上の商品を選定し加入者に提示、少なくとも三カ月に一回以上は預け替えの機会を提供する。


【給付】

年金または一時金として支給する。六十−七十歳の間に受給を開始しなければならない。

【税制】

拠出・運用時非課税、給付時課税を基本とする。本人拠出は所得控除、企業拠出は損金算入とする。運用益は非課税。
給付時課税は年金は公的年金等控除、一時金は退職所得課税をそれぞれ適用する。


【法整備】

既存の企業年金関連法律とは別に確定拠出型年金法(仮称)を整備する。

【既存制度からの移行】

一定の条件の下で既存の企業年金などの年金資産を個人ごとに分配し、確定拠出型年金に移管することも認める方向で検討する。