確定拠出型企業年金/手本は米「401kプラン」だけじゃない
GO HOMEPAGE
GO 640/480
福利厚生制度の総目次へ







(日経新聞1999年2月21日サンデーニッケイ(スクープ)は、

手本は米「401kプラン」だけじゃない

(企業)年金改革論議の不思議


との見出しで、日本が確定拠出型企業年金の改革モデルとして、米「401kプラン」を世界標準とばかりに『米国追随を繰り返すわが国の姿は、滑稽ですらある』と、痛烈に皮肉っている!

 日経新聞の記事は、スウェーデン、チリなど他にも参考になる制度は存在する、というのが趣旨。(それがそのままわが国のモデルには、又ならないのだろうが、、。)少なくとも米401kプランを、そのまま、わが国に直輸入することについての危険性の指摘には、同意できるところである。アメリカ経済(特に、株式市場)の現状をバブルというかどうかは別として、ひとたび株の暴落があれば、米労働者のかなりの部分が、老後資産を吹き飛ばされてしまうことだけは、間違いないだろう。
 少なくとも、わが国の確定拠出型企業年金の改革の方向性から、「年金として老後所得を保障する」という視点を欠落させてはならないだろう。
 その場合には、次の諸点が運用技術の問題を含めて、充分に検討される必要があると思われる。
・最低保障額の担保措置、・株式運用比率の制限を通じた運用リスクの軽減措置、・運用先の特定(運用先の変更は可)、・中途解約についての一定の制限など『年金が持つ老後の所得保障の機能が維持できるための制度』に向けた細部検討の必要性。





以下、日経記事の本文から引用。見出しは当方で付けたものです。
米国では老後所得保障の機能を果たさず、英国では個人年金の不正販売があった!


運用に失敗して、ゼロになるケースもある…それが自己責任だ

(1)『401kプランの特徴は、掛け金の運用先を選択できる自由を、個人に与えていることだ。……米「401kプラン」は自己責任に基づいて運用するのが大原則。このため、運用に失敗すれば、退職時の受取額が、拠出金累計額を下回るリスクもあり、個人間格差が生じる。米国では現に、ゼロになるケースもあるぐらいという。』


米労働者の2割が在職中に年金個人勘定を引き出して使ってしまう!

(2)『401kのもう一つの特徴は、転職の際に積立金を会社から会社へ自由に異動できる携帯性にあるとされる。(…)ただ、その利点が裏目に出ているのも事実なのだ。米労働省の94年の調査はその問題点を浮き彫りにした。401k加入者全体のうち、二割が、個人勘定を維持していないという。在職中や転職時に積立金を一時金として引き出し、浪費しているケースが急増しているのである。』


英国ではリスクの高い個人年金の不正販売が問題化した


(3)『英国では80年代後半にリスクの高い個人年金の不正販売が問題化し、比較的穏健な確定拠出型の運用が広がっている。』
『個人の将来設計に合せて投資先の配分を変えていく「ライフサイクル型」プランである。若いうちは株式などが中心だが、退職年齢が近づくにつれ、債権などリスクの低いもので運用するよう、あらかじめ組み込まれている。』





確定拠出型年金を巡る各国の最近の主な動き

(日経新聞1999年2月21日サンデーニッケイ(スクープ)

米国  個人と企業が出し合う掛金がそれぞれ所得控除、損金算入され、運用収益が非課税となる確定拠出型企業年金「401kプラン」が急拡大。資産残高は1兆ドルを突破した模様で、確定給付型に迫る勢い。退職時に一括して一時金で受け取る方式が主流。
英国  基礎年金の上乗せ分として、民営の企業年金や個人年金への加入が増え、個人、企業とも確定拠出型を選択する傾向が強まっている。80年代広範にリスクの高い個人年金の不正販売が問題になったこともあり、ライフプランに応じた比較的穏健な確定拠出型の運用メニューが主流。
スウェーデン  2001年から、掛金の運用による個人間格差をなくす「観念的確定拠出型」の公的年金制度を取り入れる。拠出するのは掛金に見立てたポイントで、年金支給時にインフレ率などを考慮した指数を用いて現金に換算するため、積立期間中の運用リスクはない。転職してもポイントは継続して積み立てられる。
チリ  81年から公的年金制度の一部を強制貯蓄型とし、その運用を民間に移管した。南米・東欧諸国がチリをモデルに改革した。ただ、運用機関の資産獲得競争が激化し、かえって非効率になる傾向が見られるほか、最近の経済混乱で運用機関の破たんが相次ぐ問題が表面化した。