執行役員制度


 執行役員制度は、ソニーが97年6月に導入して話題になった。
 当時、38名いた取締役のうち、代表権を持つ副社長以上7名が取締役(+社外取締役3名)として残り、専務以下は「執行役員」に選任された。(7名の社内取締役は全員、執行役員を兼務。)

 取締役会の役割を、「グループ全体の経営方針の決定と監督」機能に限定し、その役割に専念する一方、個々の業務執行は、当該分野の責任者たる「執行役員」が担うとする制度。
 執行役員は、取締役会によって選任され各分野(財務、経理、事業カンパニー部門、研究所等)の業務執行を分担して行い、商法上の取締役の身分はないが、担当業務分野の業務執行権限を持ち、その範囲で責任を負う。所期の目的どおり機能するなら、現場、実務レベルでの意思決定を迅速に行うことができるという。
 基本的には、取締役会の活性化策の一つ。取締役を議論のできる人数にしぼり、グループを含めた社業全般の方針決定と監督機能を強化することがねらいとしてある。
 執行役員制度の成否は、業務執行権限の委譲度合いによって左右されるともいわれる。

・わが国の取締役は、社員出世競争の到達点として獲得する地位(処遇上のポスト)の色彩が非常に色濃いのが実情である。(その結果、取締役選任数も膨れがちになりやすい。)一方で、取締役の実際の仕事は、個々の担当分野の業務執行が中心であるケースが多い。
・取締役会も、その上に常務会・経営会議等があって、運営が形骸化しているとの指摘が強い。
 執行役員制を導入するに当たり、従来の常務会メンバーを単純に取締役とし、その他の取締役を執行役員に衣替えした企業も見られる。(形を整えるだけならこの処方でOKだろうが、、、。それでは、取締役を対象としたリストラでしかない。)

執行役員の法的位置づけ
 執行役員は、商法上の明確な位置づけはない。

契約関係
 執行役員は会社とどういう契約関係に立つのか、実は、判然としないところがあるが、
 執行役員は、担当分野の業務執行に責任を持つ立場にあるが、企業の代表取締役との関係では権限委譲の程度如何に関わらず、その指揮命令を受け入れるべき関係(指揮命令関係)にあると考えられるほか、取締役のように、代表取締役の業務遂行を監督、抑制する役割は法律上も与えられていない。さらに、執行役員はほとんどが社内から選任されるものと思われる。
 これらを考慮する場合、会社と執行役員との関係は、労働契約関係にあると判断するのが相当と思われる。
 ただ、労働契約関係の有無は、あくまで、実態の総合判断によるものであるから、カンパニー制の代表者たる執行役員が、専ら対内的な業務執行を超えて、対外的に会社を代表する業務執行権を付与されている場合などは、実態判断が必要と思われる。

 以上の関係について、一部に「委任契約」あるいは、商法の「支配人」の関係にあるとする説もあるが、その点については疑問なしとしない。
(委任の関係はあるとしても、前記労働契約を否定する要素とならないだろう。また、執行役員は限定された分野の統括責任を負うのが本旨であるから、営業全般について代表権を有する「支配人」の概念とは、通常、相容れないと思われる。)


ソニーの場合
『執行役員は、期間の定めのない雇用契約。従って定年制の適用あり。また、執行役員になるに当たって社員退職金の精算が行われることはない。執行役員(任期1年)でなくなった場合も雇用契約は継続する。処遇は、現状では取締役とほぼ同等』といわれている。