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[資料番号] 00110
[題  名] 労働者のメンタルヘルス対策に関する検討会報告書
[区  分] 健康管理

[内  容]

労働の場における

心の健康づくり対策


労働者のメンタルヘルス対策に関する検討会報告書
(平成12年6月)

mokuji



はじめに

T 心の健康づくり対策の背景と意義
1 労働者の心の健康の現状
2 心の健康づくり対策の意義と目的
(1)健康の保持増進活動
(2)労働生活の質の向上と事業場の活力の向上
(3)リスクマネジメント
3 心の健康づくり対策の特性
(1)心の健康問題の特殊性
(2)個人のプライバシーへの配慮
(3)人事労務管理との関係
(4)家庭、個人生活等の職場以外の問題
4 事業場としての対策の重要性

U 心の健康づくり対策の体系
1 心の健康づくりの主要な対策
2 心の健康づくり計画
3 心の健康づくりに有用な知識等

V 4つの対策
1 セルフケア
(1)ストレスへの気づき
(2)ストレスへの対処
(3)自発的な相談
(4)セルフケアを推進するための環境整備
2 ラインによるケア
(1)職場環境等の改善
(2)労働者に対する相談対応
(3)ラインによるケアを推進するための環境整備
3 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
(1)事業場内産業保健スタッフ等の機能
(2)事業場内産業保健スタッフ等の役割
(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケアを推進するための環境整備
4 事業場外資源によるケア
(1)サービス提供を行っている事業場外資源とその役割
(2)事業場外資源とのネットワークの形成
(3)事業場外資源とのネットワーク形成のための環境整備

おわりに






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はじめに


 健康は、人が生活の質を維持したり、高めていく上で欠かすことのできない資源であり、一人ひとりが守るべきものである。労働者にとっても、この原則はあてはまるが、労働の場には、労働者個人の力だけでは除去することのできない因子が存在する。そのため、労働安全衛生法は、労働者の健康を守るための措置義務を事業者に課してきた。
平成8年1月の中央労働基準審議会建議「労働者の健康確保対策の充実強化について」においては、「メンタルヘルスに関する理解の促進とメンタルヘルスに関する相談体制の整備を図る必要がある」と指摘され、平成10年度を初年度とする第9次の労働災害防止計画においては、ストレスマネジメントの普及を図ることとなっている。
 このようなことから、労働者の心の健康づくり対策をどのように進めてゆくべきか、どのような対応が必要になるのか等、その方向性について総合的に検討を行うため本検討会が開催された。
本報告書は、平成7年度から5か年計画で労働省が実施してきた「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」の結果を踏まえながら、事業場での対策の実施状況を検討し、心の健康づくりのために望まれる、事業場における心の健康づくり対策の基本的な進め方、心の健康づくり対策についての事業場で実施すべき事項、心の健康づくり対策について行政及び関係団体が支援すべき事項等を整理したものである。
これらの実施事項は、ひとつのシステムとして機能すべきものであるが、事業者に対しては、各事業場の実態に応じて、実施可能な部分から取り組むことを、行政に対しては、その実現のための援助、啓発活動の推進、特に必要な人材の養成に対する支援を要望するものである。



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T 心の健康づくり対策の背景と意義


1 労働者の心の健康の現状

 労働者健康状況調査 )によると、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は年々増加しており、平成9年調査では約63%の労働者が仕事のストレスにさらされていると自覚している。
 今後、経済・産業構造が大きく転換すると見込まれ、労働者の就職意識の変化や働き方の多様化などの変化もみられるところである。情報通信技術が進歩し、テレワークやSOHO*)などの就業形態が生まれ、わが国の労働態様や職場環境等は急激に変化している。このような中で労働者の心の健康問題及びストレスは今後さらに増大し、かつ多様化すると予想される。仕事のストレスは精神障害やいわゆる心身症とされる様々な身体疾患など労働者の健康に影響を与えることが知られている。さらには労働災害や交通事故等につながる可能性も指摘されている。このような現状から、すべての労働者が健康に、かつ生きがい・働きがいをもって生活するために、労働者の心の健康を保持増進する対策の推進が強く求められている。
我が国の20歳から64歳の精神障害による受療率は1.7%に達している )。また、傷病欠勤の原因又は誘因として何らかのストレスがあったとする労働者の頻度は45.6%に達し )、労働省が実施した「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」では、1カ月以上の疾病休業の理由の15%程度が精神障害となっている。さらに、警察庁が行っている自殺者の職業別統計をみると、管理職及び被雇用者の自殺者数は、平成9年の約6,200名から平成10年には約8,700名と急増している )。
 このような中、労働者の自殺に関する損害賠償請求訴訟が社会的注目を集め、また、精神障害や自殺に関する労働者災害補償保険給付の請求が増加する等、この問題に関する社会的関心はきわめて高くなっている。心の健康問題が労働者、その家族、事業者及び社会全体に与えている影響は今日きわめて大きい。



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2 心の健康づくり対策の意義と目的

(1)健康の保持増進活動

 労働安全衛生法上、事業者は労働者の健康の保持増進を図るために必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなくてはならないとされている。心の健康づくり対策は、健康の保持増進を図る上で重要な活動である。

(2)労働生活の質の向上と事業場の活力の向上

 労働者の充実感、創造的な活動や労働の質の向上には心の健康が不可欠である。心の健康づくり対策は、労働者の労働生活の質を向上させ、ひいては事業場の生産性及び活力の向上にも寄与する。

(3)リスクマネジメント

 心の健康問題により、作業効率の低下、長期休業の発生等が起きた場合における労働力損失は大きい。重要な業務の遂行を任されている労働者が心の健康障害に陥って、作業能率の著しい低下や長期休業を生じることは、企業活動そのもののリスクとなる。心の健康に問題があると、労働の場における事故にもつながる。心の健康づくり対策は、企業の生産性向上及び安全確保におけるリスクマネジメントとしても推進する意義がある。
さらに、心の健康づくり対策は、業務上の精神障害やそれによる自殺の未然防止にもつながることからも、その推進が望まれる。



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3 心の健康づくり対策の特性

(1)心の健康問題の特殊性

 心の健康は、客観的な測定方法が十分確立していないため、その評価が容易でない。また、心の健康問題の発生の過程には大きな個人差があり、そのプロセスの把握が難しい。心の健康問題は周囲の人々によって理解されにくい問題でもあり、また、心の健康を理解し、対処できる専門家はまだ多くない。さらに、心の健康はすべての労働者にかかわることであるにもかかわらず、心の健康問題が、その人の人格を否定する形で評価される傾向が強いことも問題となる。

(2)個人のプライバシーへの配慮

 心の健康づくり対策を進めるに当たっては、労働者のプライバシーの保護及び労働者の意思の尊重に留意することが重要である。心の健康に関する情報の収集及び利用に当たっての、個人のプライバシー等への配慮は、労働者が安心して心の健康づくり対策に参加できること、ひいては事業場の心の健康づくり対策がより効果的に推進されるための条件である。

(3)人事労務管理との関係

 労働者の心の健康は、体の健康の場合にくらべ、職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理と密接に関係する要因によって、より大きな影響を受ける。心の健康づくり対策においては、人事労務管理と連携しなければ、対策が適切に進まない場合が多い。

(4)家庭、個人生活等の職場以外の問題

 心の健康問題は、職場の問題のみならず家庭・個人生活等の職場外の問題の影響を受けている場合も多い。また、性格上の要因等も心の健康問題に影響を与え、これらは複雑に関係し、相互に影響し合う場合が多い。



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4 事業場としての対策の重要性

 心の健康問題は、事業場としての対応のみですべての問題が解決できるわけではないが、労働の場における組織的かつ計画的な対策は、労働者が健康問題を自らの力で解決していくうえで大きな役割を果たす。また、前述したように、心の健康づくり対策は、事業場の活性化の上からも事業場の生産性及び活力の向上にも寄与する。
なお、事業場として心の健康対策を推進するに当たっては、事業者が、自ら心の健康づくり対策を積極的に実施することを表明することが、対策の効果的な推進につながるものである。




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U 心の健康づくり対策の体系


1 心の健康づくりの主要な対策

心の健康づくり対策においては、主要な対策を以下の4つに分類することができる(図)。

@ 「セルフケア」は、労働者自らが心の健康づくり対策のために行う活動である。事業者は労働者がセルフケアを円滑に行うことができるように支援する。
A 「ラインによるケア」は、管理監督者が労働者の心の健康づくり対策のために行う活動である。これには、労働者の心の健康づくり対策のための職場環境等の改善及び労働者の心の健康への日常的な配慮及び相談が含まれる。
B 「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」は、事業場内産業保健スタッフ(産業医、衛生管理者又は衛生推進者及び事業場内の保健婦・士)及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ(「心理相談担当者、産業カウンセラー、臨床心理士、精神科医、心療内科医等」をいう。以下同じ。)、人事労務管理スタッフ等が労働者の心の健康づくり対策のために行う活動である。事業場内産業保健スタッフ等は、事業場の心の健康づくり計画の策定と実施に参加し、セルフケア及びラインによるケアを支援し、日常的な健康管理活動を通じた心の健康づくり対策を実施する。
C 「事業場外資源によるケア」は、事業者の依頼により、産業保健推進センター等の事業場外のさまざまな機関及び専門家(以下「事業場外資源」という。)が行う、心の健康づくり対策を支援するための活動である。これには、教育研修、情報提供、助言、相談並びに医療及び福祉サービスの提供が含まれる。事業者は、これらの事業場外資源とのネットワークを形成し、心の健康づくり対策を実施する。




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2 心の健康づくり計画

これらの4つのケアは、それぞれ密接に連携されつつ、継続的かつ計画的に取り組まれることが望まれる。このため、衛生委員会等において適宜審議し、それぞれの事業場の実状と必要性に応じて、事業場における「心の健康づくり計画」を策定することが有効である。また、この計画の中で、事業者自らが、事業場における心の健康づくり対策を積極的に実施することを表明することが効果的である。
心の健康づくり計画で定める事項は次のとおりである。

@ 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
A 事業場における問題点の把握及び4つのケアの実施に関すること
B 心の健康づくり対策を行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
C プライバシーの配慮に関すること
D その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること




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3 心の健康づくりに有用な知識等

心の健康づくり対策を実施するために、事業者、労働者、管理監督者、産業保健スタッフ等及び事業場外資源は、それぞれの役割に応じて、心の健康に関する知識及び技術について理解を深める必要がある。
これには、

@ ストレス及び心の健康づくりに関する基礎知識
A 心の健康の重要性及び心の健康問題に対する正しい態度
B 事業場の心の健康づくり対策におけるそれぞれの役割
C 心の健康づくり対策の方法
D 事業場内の関係者及び事業場外資源との連携の方法
E 労働者のプライバシーへの配慮等
F 事業者の安全配慮義務

等がある。




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V 4つの対策


1 セルフケア

 心の健康づくりは、まず、労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減あるいはこれに対処するセルフケアを積極的に実施することから始まる。労働者の心の健康には家庭など仕事外の要因も大きな影響を与えるが、セルフケアの推進はこの面からの対策にも有効である。

(1)ストレスへの気づき

 ストレスへの気づきとは、労働者が、心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について適切に認識できるようになることである。労働者が自分のストレスに気づくことが、セルフケアのはじまりである。

(2)ストレスへの対処

 ストレスへの対処とは、積極的に自らのストレスを予防又は軽減することである。労働者がストレスを予防、軽減する方法を身につけ、また、ストレスに対処する能力を向上させることで、心の健康づくり対策が可能になる。

(3)自発的な相談
 
 ストレスへの気づきや対処を進めるためには、身近な者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等あるいは事業場外資源に、労働者が自ら心の健康問題について相談することが有効である。

(4)セルフケアを推進するための環境整備

 労働者のセルフケアを支援する対策を既に実施している事業場もみられるが、一般には、労働者に対して、心の健康についての気づきやストレスに対処するための教育研修あるいは相談の機会が十分提供されているとは言いがたい状況にある。労働者のセルフケアを支援するための対策の、より一層の推進が求められる。

イ セルフケアに必要な知識

 労働者がセルフケアを円滑に実施するためには、以下のような知識、技術及び情報が労働者に提供される必要がある。

@ ストレス及び心の健康づくりに関する基礎知識
A セルフケアの重要性及び心の健康問題に対する正しい態度
B ストレスへの気づき方
C ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法
D 自発的な相談の有用性
E 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
F 心の健康づくり対策に関する事業場の方針

 これらは労働者がセルフケアを自ら実行するのに必要なものである。専門的な内容である必要はないが、セルフケアの実行が可能な程度に詳細かつ具体的である必要がある。


ロ セルフケアの支援と情報提供体制

 事業者は、労働者に自分のストレスや心の健康状態を知るための機会及びセルフケアのための教育研修の機会を提供するとともに、相談体制の整備が求められる。また、ストレスに関する調査票等の活用や、事業場内外の相談の受け皿について労働者に情報提供をすることも有効であり、イントラネットによる相談先に関する情報提供やセルフチェックも考えられる。さらに、社内報などを使った家庭向けの広報及び情報提供を行うことも有効である。
 相談体制の整備及び情報提供に当たっては、事業者は、労働者のプライバシーに配慮するとともに、プライバシーへ配慮する方針を労働者に対して明確にする必要がある。


ハ 事業場外資源の役割


 労働者、事業場内産業保健スタッフ等及び事業者に対して、それぞれの立場からセルフケアに関する教育研修を提供する役割が、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター、労働者健康保持増進サービス機関、メンタルヘルスサービス機関(事業場に対するコンサルテーション、労働者に対する相談サービス等を提供する民間の機関)等に求められる。
セルフケアに関する教育研修についての講師養成及び教育研修プログラムの提供等の役割が、中央労働災害防止協会及び産業保健推進センターに求められる。
 セルフケアに関する教育研修の機会の提供、自発的な相談の受け皿となる事業場外資源についての情報提供及び広報を行う役割を、小規模事業場の労働者及び事業者に対しては地域産業保健センターが、50人以上の事業場の産業医その他労働者の健康管理等を行う医師(以下「産業医等」という。)に対しては産業保健推進センターが担うことが求められる。



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2 ラインによるケア

 職場の管理監督者は、職場環境等の改善、労働者に対する相談、心の健康問題を持つ労働者への対応において中心的な役割を果たす。従来の対策では、心の健康づくり対策における職場環境等の重要性が必ずしも十分に認識されていなかった。また、管理監督者の活動を支援するための教育研修も一部の事業場にとどまっていた。今後は、ラインによる心の健康づくり対策としての職場環境等の改善と個々の労働者への対応という両面の推進が求められる。

(1)職場環境等の改善

イ 職場環境等の重要性

 職場環境等を改善することは、事業場の心の健康づくり対策に大きく寄与する。心の健康に影響を与える職場環境等には、職場環境(作業環境、作業方法、心身の疲労回復のための施設、職場生活で必要となる施設等)のみならず、労働時間、労働の量と質、職場の人間関係、職場の組織及び人事労務管理体制、職場の文化や風土等が含まれる。職場環境等の改善には管理監督者の果たす役割が大きい。

ロ 職場環境等の評価と問題点の把握

 職場環境等を評価しその問題点を把握することによって、その改善方法を見いだすことができる。管理監督者が日常の職場管理、労働者からの意見聴取等を通じて職場環境等の問題点に気づくことで、日常的な職場環境等の改善を行うことができる。また事業場内産業保健スタッフ等が実施するストレスに関する調査票等を用いた職場環境等の評価結果を活用して、職場環境等の改善の必要性及び具体的問題点を把握することも有効である。

ハ 職場環境等の改善

 職場環境等は、職場の作業環境の見直し、勤務形態及び作業方法の見直し、管理監督者の人間関係調整能力の向上、職場組織の見直し等の様々な観点から改善することができる。たとえば、作業レイアウトの改善、勤務スケジュールの改善、過大な負荷の軽減、休憩時間の確保、上司や同僚からの支援を得やすくするための配慮、福利厚生制度の改善等が、労働者の心の健康づくり対策に有効である。
 管理監督者は把握した問題点に応じ、職場環境等の改善を計画し、実行する。その際、対策の効果を評価し、効果が不十分な場合には計画を見直す等、「計画−実施−評価−改善」のサイクルを通じて、対策がより効果的なものになるように継続的に努力することが有効である。管理監督者は、労働者の意見を踏まえ、事業場内産業保健スタッフ等及び事業場外資源の助言及び協力を求めることで、効果的に職場環境等を改善できる。
 また管理監督者が、その権限内で心の健康づくり対策に配慮した就業管理を行うことも重要である。管理監督者が、労働者の労働の状況を日常的に把握し、個々の労働者に過度な長時間労働、過重な疲労、心理的負荷、責任等が生じないようにする等、労働者の能力、適性及び職務内容に合わせた配慮を行う必要がある。

(2)労働者に対する相談対応

 管理監督者が、心の健康問題を持つ労働者に気づいて、話を聞き、情報を提供し、必要であれば助言を行ったり、事業場内産業保健スタッフ等に相談を依頼したり、事業場外資源への相談や受診を促すことも、心の健康問題の早期発見及び早期対処の上で有効である。
 強度の心理的負荷を伴う出来事を経験した労働者、長時間労働などにより過労状態にある労働者等に対して管理監督者がこうした相談対応を行うことも重要である。

(3)ラインによるケアを推進するための環境整備

イ 管理監督者への教育研修

 管理監督者が、前述のような職場環境等の改善、労働者に対する相談等を行うためには、管理監督者に対する教育研修が実施される必要がある。
 管理監督者が教育研修で学ぶべき内容として、

@ ストレス及び心の健康づくりに関する基礎知識
A ラインの役割及び心の健康問題に対する正しい態度
B 職場環境等の評価及び改善の方法
C 労働者からの相談の方法(話の聴き方、情報提供及び助言の方法など)
D 心の健康問題を持つ復職者への支援の方法
E 事業場内産業保健スタッフ等及び事業場外資源との連携の方法
F セルフケアの方法
G 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
H 心の健康づくり対策に関する事業場の方針
I 労働者のプライバシーへの配慮等
J 事業者の安全配慮義務

等があげられる。
 これらは管理監督者が労働者のセルフケアを支援し、ラインによるケアを実行するために必要なものである。

ロ 事業者の役割

 ラインによるケアを実施するためには、事業者が管理監督者に対して事業場における心の健康づくり対策の方針を明示し、その職場において実施すべき事項を指示し、また実施に当たって管理監督者の活動を理解し支援する必要がある。また、ラインによるケアが実質的に推進されるように組織とシステムを整備し、管理監督者に対して教育研修の機会を提供することが求められる。

ハ 事業場内産業保健スタッフ等の役割

 ラインによるケアが円滑に推進されるために、事業場内産業保健スタッフ等が管理監督者に対する情報提供、必要な教育研修の実施、職場環境等の評価の実施と改善の支援、相談への対応等を行うことが求められる。

ニ 事業場外資源の役割

 事業場に対して、それぞれの役割に応じて、管理監督者向けの教育研修、支援等を提供することが、産業保健推進センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター、中央労働災害防止協会、労働者健康保持増進サービス機関、メンタルヘルスサービス機関等に求められる。
管理監督者向けの教育研修のための講師の派遣、講師の養成、教育研修プログラムの提供等の役割が、中央労働災害防止協会及び産業保健推進センターに求められる。
 ラインによるケアに関する情報提供及び広報を行う役割を、小規模事業場の労働者及び事業者に対しては地域産業保健センターが、50人以上の事業場の産業医等に対しては産業保健推進センターが担うことが求められる。




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3 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

 事業場内産業保健スタッフ等は、事業場の心の健康づくり対策への提言を行うとともに、その推進を担い、また労働者及び管理監督者へ支援する役割を持つ。多くの事業場において事業場内産業保健スタッフ等は心の健康づくり対策に重要な役割を果たしているが、これをさらに拡充し、計画された組織的な活動とすることが求められる。

(1)事業場内産業保健スタッフ等の機能

イ 職場の実態の把握

 職場巡視による観察、職場上司及び労働者からの聞き取り調査、ストレスに関する調査票による調査等により、職場内のストレス問題を把握することが重要である。また、物理的要因に関する評価に加えて、職場環境等に関するチェックリスト等によって作業方法、人間関係、職場組織等の側面から職場環境等を評価する。
 従来から行っている作業環境管理及び作業管理の推進に加え、事業場内産業保健スタッフ等が、心の健康に影響を与える可能性のある職場環境等について、定期的又は必要に応じて評価することが、職場環境等の改善の推進に有効である。
 さらに、労働省が実施した「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」で作成された「職業性ストレス簡易調査票」及び「仕事のストレス判定図」を用い、個人のプライバシー及び結果の活用方法に配慮した上で、職場の問題点の分析を行うことも有効である。

ロ 職場環境等の改善

 事業場内産業保健スタッフ等が、管理監督者に対して職場環境等の評価結果に基づく改善について助言し、管理監督者と協力しながらその改善を図ることが有効である。

ハ 相談及び紹介

 事業場内に、労働者の自発的相談に応じて、あるいは管理監督者との協力により心の健康問題を持つ労働者を把握して、労働者に対する心の健康相談に応ずる相談機能を持つことが有効である。
 また、「職業性ストレス簡易調査票」を、産業医等による十分な指導の下で活用することも、労働者本人の心の問題への気づきのために有用である。
 産業医は、心身両面にわたる健康保持増進対策(THP)において心理相談担当者が行う心理相談を通じて心の健康に対する労働者の気づきと対処を推進することができる。運動指導、保健指導等のTHPにおけるその他の指導において、積極的にストレスや心の健康問題を取り上げるようにすることも効果的である。
 事業場内での健康相談は、心の健康についての労働者のセルフケアに関する情報提供、助言・指導等の機会として活用できる。また、心の健康問題を持つ労働者に対して必要に応じて事業場外資源への相談を勧める場としても活用できる。労働者が心の健康問題を持つ家族のために困難を感じている場合には、医療機関、地域保健機関(精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター等)等の利用可能な事業場外資源についての情報提供及び紹介が有効である。
 なお、心の健康づくり対策と関連した情報を収集し利用する際には、個人のプライバシーの保護について、十分に配慮する必要がある。

ニ 治療、職場復帰及び職場適応の指導

 事業場内産業保健スタッフ等は、専門的な治療が必要となった労働者に適切な事業場外資源を紹介し、必要な治療を受けることを助言する。また心の健康問題を持つ労働者の職場復帰及び職場適応を、管理監督者及び事業場外資源と協力しながら指導及び支援する。

ホ ネットワークの形成・維持

 事業場内産業保健スタッフ等は、事業場と事業場外資源とのネットワークの形成・維持に中心的な役割を担う。必要な場合にネットワークがうまく機能するためには、日ごろから事業場外資源について情報が収集され、その連携方法について計画されていることが重要である。



(2)事業場内産業保健スタッフ等の役割

 事業場内産業保健スタッフ等はセルフケア及びラインによるケアを支援するとともに、対策が円滑に実施されているかどうかを確認し、必要な場合には改善について事業者等に提案を行う。

イ 産業医等

 産業医等は、職場環境等の維持管理、健康教育・健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置のうち、医学的専門知識を必要とするものを行う。この面から、職場環境等の評価、健康相談等に協力するほか、事業場の心の健康づくり計画に基づき、対策の実施状況を把握する。セルフケア及びラインによるケアを支援し、このために必要な教育研修の企画・実施、情報の収集及び提供、助言・指導等を行う。専門的な相談・治療が必要な事例については、事業場の窓口となって事業場外資源との連絡調整にあたる。就業上の配慮が必要な場合にはこれを事業者に提言する。

ロ 衛生管理者又は衛生推進者

 衛生管理者又は衛生推進者は、事業場の心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画・実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談機能の整備等を行う。またセルフケア及びラインによるケアを支援し、その実施状況を把握する。なお、小規模事業場における衛生推進者の活動に対しては、地域産業保健センターによる支援が重要である。

ハ 保健婦・士等

 衛生管理者以外の保健婦・士等は、産業医及び衛生管理者と協力しながらセルフケア及びラインによるケアを支援し、そのために必要な教育研修を企画・実施する。労働者及び管理監督者からの相談に対応する他、専門的な相談・治療が必要と考えられる事例については、産業医等の指示の下で、事業場の窓口となって事業場外資源との連絡調整を行う。

ニ 心の健康づくり専門スタッフ

 事業場内に心の健康づくり専門スタッフがいる場合には、これらの専門スタッフはその他の事業場内産業保健スタッフ等と協力しながら、職場環境等の評価と改善、教育研修、相談等を通じて心の健康づくり対策を行う。

ホ 人事労務管理スタッフ

 人事労務管理スタッフは、事業場の心の健康づくり計画の推進に努める。また、管理監督者内だけでは解決できない人事労務管理上のシステムが心の健康に及ぼす影響を評価し、労働者の心の健康づくりに配慮する。また、そうした側面からも、労働時間等の労働条件の改善、公平な人事、適正配置等を行う。

ヘ 労働組合

 労働組合は、衛生委員会等において、心の健康づくり計画の策定、その実施、評価に参画する。また、組合員等を対象とする健康実態調査、相談活動及び教育研修、職場パトロール、産業別組合等を通した事業場外の相談先等の紹介等を自ら企画したり外部の活動に参加して行う例もあるなど、事業場の心の健康づくりのための環境の改善に寄与する。



(3)事業場内産業保健スタッフ等によるケアを推進するための環境整備

イ 事業場内産業保健スタッフ等に必要な知識

 事業場内産業保健スタッフ等に必要な知識及び技術には以下のものが含まれる。

@ ストレス及び心の健康づくりに関する基礎知識
A 事業場内産業保健スタッフ等の役割及び心の健康問題に対する正しい態度
B 職場環境等の評価及び改善の方法
C 労働者からの相談の方法(話の聴き方、情報提供及び助言の方法など)
D 職場復帰及び職場適応の指導の方法
E 事業場外資源との連携(ネットワークの形成)の方法
F 教育研修の方法
G 事業場外資源の紹介及び利用勧奨の方法
H 事業場の心の健康づくり計画及び体制づくりの方法
I セルフケアの方法
J ラインによるケアの方法
K 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
L 心の健康づくり対策に関する事業場の方針
M 労働者のプライバシーへの配慮等
N 事業者の安全配慮義務

 これらは事業場内産業保健スタッフ等が自ら心の健康づくり対策を実施し、また、セルフケア及びラインによるケアに対して助言・指導を行うために必要なものである。すべての事業場内産業保健スタッフ等が心の健康問題の専門家のような知識及び技術を有する必要はないが、その職務に応じた項目については専門的なものを含む一定以上の知識及び技術を修得する必要がある。その方法としては、たとえばTHPの心理相談専門研修、産業カウンセラー養成講座等の受講も考えられる。

ロ 事業者の役割

 事業者には、労働者が心の健康に関して産業医、保健婦・士等に健康相談を気軽に行えるように事業場内の体制を整備し、広報を行うことが求められる。
 事業者は、事業場内産業保健スタッフ等に対して必要な知識及び技術に関する教育研修を受ける機会を提供することが求められる。また、事業者は、事業場内産業保健スタッフ等が相談できる事業場外資源の確保について配慮する必要がある。心の健康問題を持つ労働者に対する就業上の配慮について、事業者は事業場内産業保健スタッフ等に意見を求めこれを尊重することが望ましい。

ハ 事業場外資源の役割

 産業保健推進センター、地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター、中央労働災害防止協会等の事業場外資源は、それぞれの役割に応じた事業場内産業保健スタッフ等に対する情報提供、助言、教育研修の場の提供等を行い、事業場内産業保健スタッフ等によるケアを支援する。
 労働衛生コンサルタント、労働者健康保持増進サービス機関、メンタルヘルスサービス機関等が職場環境等の評価及び改善のための情報提供、助言、直接サービス等を提供することにより、事業場内産業保健スタッフ等によるケアをより一層充実することができる。
 事業場外資源が行っている事業場内産業保健スタッフ等の育成及び生涯教育の中で心の健康づくりに関する教育研修が一層充実されることが求められる。特に事業場内産業保健スタッフ等の中心となる産業医の法令上の要件となっている、医師会(日本医師会及び都道府県医師会)、産業医科大学等が行っている研修の中で心の健康づくりに関する教育研修が一層充実されることが期待される。




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4 事業場外資源によるケア

 事業場の心の健康づくり対策を有効に機能させるためには、事業場外資源との連携が重要である。大規模な事業場では心の健康づくり専門スタッフを社内で確保し、事業場外資源との円滑な連携を実現できている場合も多い。中小規模以下の事業場においても、事業場と事業場外資源とのネットワークの形成を推進することによって心の健康づくり対策が可能となる。

(1)サービス提供を行っている事業場外資源とその役割

イ 地域産業保健センター

 地域産業保健センターは、産業医等の選任義務のない小規模事業場の労働者及び事業者に対する直接的支援として、心の健康に関する相談、心の健康づくり専門スタッフ等の紹介等の助言や情報提供、その他の事業場外資源とのネットワークの形成、維持等に関する支援を行う。

ロ 産業保健推進センター

 産業保健推進センターは、地域産業保健センターの活動に対して専門的、技術的な支援を行うとともに、事業場内産業保健スタッフ等に対して心の健康づくり対策についてのサービスを提供する。また、精神保健福祉センター等の事業場外資源と連携して、事業場における心の健康づくりのための地域ネットワークを形成する。
 産業保健推進センターが提供するサービスは、事業場での心の健康づくり対策に関する事業場内産業保健スタッフ等への情報提供及び助言を行うコンサルテーションサービスであり、職場環境等の評価と改善の支援、教育研修の支援、事業場内の相談体制づくりの支援(事例の心理学的及び精神医学的な評価及び対応に関する助言、精神障害者の復職及び職場適応に関する助言を含む。)等である。こうしたサービスは、産業保健推進センターに配置された、事業場の心の健康づくり対策に精通した労働衛生コンサルタント、心理相談担当者、産業カウンセラー、臨床心理士、精神科医、心療内科医、保健婦・士等の専門スタッフによって提供される。

ハ 健康保険組合

 健康保険組合は、事業場が行う心の健康づくり事業に協力する。健康保険組合に所属する医師、保健婦・士、看護婦・士等が、教育研修、労働者のストレス評価の実施、心の健康相談等、積極的に、独自の心の健康管理事業を行っている例もある。

ニ 労災病院勤労者メンタルヘルスセンター

 労災病院勤労者メンタルヘルスセンターは、労働者に対して心の健康増進、心の健康問題の予防、早期発見、対処等のサービスを直接行うとともに、産業保健推進センターを介すること等により産業医等に対する専門的・技術的な支援を行っている。

ホ 中央労働災害防止協会

 中央労働災害防止協会は、事業場の管理監督者、産業保健スタッフ等に対して、情報提供、助言、教育研修の場の提供等を行っている。また、THPの普及促進のための事業を行うとともに、労働者健康保持増進サービス機関等に対して指導援助を行っている。

ヘ 労働者健康保持増進サービス機関等

 労働者健康保持増進サービス機関は、THPにおける心理相談、保健指導等の直接サービスを提供している。また、事業場内産業保健スタッフ等と連携しながら、労働者のストレス評価、職場環境等の評価、教育研修等のサービスを提供している。
また、事業場に対してコンサルテーション及び相談サービスを提供しているメンタルヘルスサービス機関もある。

ト 産業医学振興財団

 産業医学振興財団は、産業医を中心に事業場内産業保健スタッフ等に対して、メンタルヘルス、心の健康づくり等に関し、機関誌等による情報の提供、講習・研修の場の提供等を行っている。

チ 医師会(日本医師会及び都道府県医師会)及び産業医科大学

 医師会(日本医師会及び都道府県医師会)及び産業医科大学は、産業医の法定上の要件となっている研修を行っている。また産業医科大学は、心の健康づくりに精通した医師等の養成を行っている。

リ 労働衛生コンサルタント、産業カウンセラー、臨床心理士及び精神保健福祉士等

 労働衛生コンサルタントは、心の健康づくり計画及び組織づくり、職場環境等の改善及び健康管理について助言を行っている。事業場の心の健康づくり対策に経験のある事業場外の産業カウンセラー、臨床心理士等は、事業場に対して教育研修、カウンセリング等のサービスの他、情報提供、助言等のコンサルテーションサービス等を提供している例がある。また、精神保健福祉士は、社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行っている。

ヌ 精神科、心療内科等の医療機関

 精神科、心療内科等の医療機関は治療の拠点である。事業場内産業保健スタッフ等と連携して、教育研修、心の健康問題を持つ労働者に対する相談、復職指導等を行っている医療機関もある。

ル 地域保健機関
 
 地域保健機関との連携とその活用は重要である。精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター等がそれぞれの立場から心の電話、精神保健相談、アルコール相談、精神障害者の社会復帰等のサービスを提供している。産業保健推進センター、地域産業保健センターが精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター、事業場等と連絡会議等を通じて情報交換及び連携を行っている例もある。

ヲ 各種相談機関

 労働組合が実施する心の健康相談、NPO(非営利組織)が主催するいのちの電話等の相談窓口が活用されている例がある。



(2)事業場外資源とのネットワークの形成

イ 大規模及び中規模事業場

 大規模事業場では、事業場内に心の健康づくりの専門スタッフを確保し、心の健康づくり対策の推進を図ることが望ましい。また、事業場の規模にかかわらず、一定規模以上の企業に属する事業場においては、企業内に心の健康づくりの専門スタッフを確保し、所属事業場における心の健康づくり対策を推進することが望ましい。
 中規模事業場では、事業場内産業保健スタッフ等が窓口となり、事業場外資源から情報提供及び助言を受けながら、心の健康づくり対策を推進することが望ましい。また、必要に応じて労働者を速やかに事業場外の相談機関・医療機関に紹介するためのネットワークを日ごろから形成しておくことが望ましい。

ロ 小規模事業場

 50人未満の小規模事業場における心の健康づくり対策では、衛生推進者等が事業場内の窓口としての役割を持つことになるが、十分な人材が確保できない場合が多いことから、事業場外からの特別な支援が必要であると考えられる。
 地域産業保健センターが、産業保健推進センター、精神保健福祉センターその他の地域保健機関と連携して、小規模事業場の労働者、管理監督者等に対する教育研修の実施及び相談サービスの提供を行うことや、同業者組合等が共同事業として、小規模事業場向けのサービスを提供することが望ましい。小規模事業場が心の健康づくり対策を実施するための環境整備には行政の支援が期待される。小規模事業場においては事業者の理解が直接心の健康づくり対策の推進に結びつくことから、事業者への啓発及び情報提供が行われることが効果的である。



(3)事業場外資源とのネットワーク形成のための環境整備

イ ネットワーク形成の支援

 心の健康づくり対策の推進のためのネットワークを形成するために、事業者は事業場外資源を積極的に活用すべきである。
産業保健推進センターは、精神保健福祉センター、保健所等の地域保健機関を含めた関係機関の連絡会議を主催する等ネットワークの核となるよう努める必要がある。

ロ 家族及び医療機関、地域保健機関等との連携の重要性

 心の健康問題は、職場の問題のみならず、家庭、個人生活等の職場外の問題の影響を受けている場合も多い。このため、家族及び医療機関、地域保健機関等との連携を図ることが有効な場合もある。
 しかしながら、心の健康問題には、特に慎重な配慮が必要であることから、連携を図るにあたっては、プライバシーに配慮することはもちろん、個人の意思に反して情報の収集、保管及び使用が行われるようなことがあってはならない。

ハ 事業場外資源によるサービスの質と量の向上

 産業保健推進センター、労災病院勤労者メンタルへルスセンター及び中央労働災害防止協会は、それぞれの役割に応じて、労働者及び管理監督者向けの教育研修プログラムの提供、講師の養成、派遣等の支援を行う必要がある。また、これらの機関は、労働者の相談の受け皿となる事業場外資源に関する情報を提供する、事業場外資源の利用に関する教育研修の場を事業場に提供する等、事業場における相談体制づくりを支援する必要がある。
 産業保健推進センター及び労災病院勤労者メンタルヘルスセンターには、それぞれの役割に応じて、事業場に対してコンサルテーションサービスを提供するために必要な人材を確保することが望まれる。
 労働者健康保持増進サービス機関、精神科、心療内科等の医療機関等が、より質の高いコンサルテーションサービス及び直接サービスを提供することへのニーズは高い。労働者健康保持増進サービス機関は、労働者及び管理監督者の教育研修、労働者の心の健康問題への気づき等を支援するためのサービス等を事業場向けに提供できるようになることが期待される。




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おわりに


 行政は、心の健康づくり対策の推進のために、4つのケアの普及・啓発の広報活動を行うこと、特に事業者向けの啓発を行う必要がある。また、既に述べたように、小規模事業場の心の健康づくり対策に対して教育研修及びネットワーク形成のための支援を行うための措置を講じる必要がある。さらに、関係諸学会・団体と連携し、事業場外資源によるサービスの質と量の確保及び向上を支援するとともに、これらの諸資源のネットワーク化を進めることも期待される。
 また、行政は、労働者の心の健康に関する動向を継続的に把握するとともに、心の健康づくり対策の技術の開発とその効果評価に関する調査研究を推進することも重要である。
さらに、労働者の心の健康づくりは、生涯にわたる心の健康づくりの一環として進めることが有効であることから、その面からの関係者の連携も今後の課題として期待される。










図 心の健康づくりの基本的な考え方

 事業場における心の健康づくりの体制を整理すると、以下のように考えられる。
 心の健康づくり対策計画に基づき、各事業場の実態に応じて実施可能な部分から取り組むことが望まれる。

(図=省略)









○ 労働者のメンタルヘルス対策に関する検討会メンバー


 遠藤 俊子    日本電信電話株式会社首都圏健康管理センター総婦長

 川上 憲人    岐阜大学医学部助教授

 北村 尚人    三菱重工業株式会社勤労部健康管理センター主務

 栗原 壯一郎   アイシン健康保険組合常務理事

 河野 慶三    富士ゼロックス株式会社健康推進センター全社産業医

○櫻井 治彦    中央労働災害防止協会労働衛生検査センター所長

 高瀬 佳久    日本医師会常任理事

 中村 純     産業医科大学医学部教授

 中桐 孝郎    日本労働組合総連合会総合労働局雇用・労働対策局次長

 野田 悦子    住友金属工業株式会社総合技術研究所健康相談室保健婦

 廣  尚典    日本鋼管株式会社鶴見保健センター長

 山本 晴義    横浜労災病院心療内科部長

                               ○:座長
(五十音順)