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今後の職業能力開発の在り方
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労働省「今後の職業能力開発の在り方研究会」報告(2000.7.12)
【資料のワンポイント解説】
1.報告書は、「今後の職業能力開発の在り方を、個々人のキャリア形成と密接に関連づけ、個別の労働者が適切なキャリア形成を行えるように、また、自己啓発についても、これを個別キャリア形成の中に明確に位置づける。」
「そのためには、職業能力評価システムの確立が欠かせない。」と指摘する。
2.併せて、労働者が自らの能力を「知る」、また周囲は労働者にその客観的能力を「知らせる」、そういった仕組みの整備を行う必要性があると指摘。
報告書の中の表現に、「個別的なキャリア形成を適切に行うためには、まず、労働者がどのような能力を有しているかを自分自身で知ることが前提となる。
このためには、労働者自身が経験してきた職務や教育訓練・自己啓発等によりどのような能力を身につけてきたかを、キャリアの節目ごとに、いわば棚おろしをすることが必要である。」という箇所があるが、今後の職業能力開発の在り方に係る基本スタンスを示しているとも言えようか。
3.行政、企業においてもさることながら、労働者(ビジネスマン)にこそ一読の意義あり。
今後の職業能力開発の在り方研究会報告−2000.7.12− I はじめに 我が国は、現在、IT化等の技術革新の進展や経済のグローバル化が進み、厳しい雇用情勢が続く中で労働力需給のミスマッチが大きな問題となっており、第9次雇用対策基本計画(平成11年8月13日 閣議決定)においてもこうしたミスマッチに対応するため職業能力開発を推進していくことが重要であるとされている。 他方、職業能力開発の状況を見ると、企業側の求める人材像が多様化する一方、労働者側についても、今後、そのキャリアが長期にわたり急激な変化にさらされる状況にある。 このため、本研究会としては、以下のように、こうした労働力需給の構造的な問題を踏まえ、今後の職業能力開発の在り方を展望しつつ、そのあるべき方向について提言を行うこととした。 II 経済・社会情勢の変化と職業能力開発政策上の課題 1 経済社会の変化と労働市場への影響 (1) 企業側の状況 IT等の技術革新や経済のグローバル化の進展は、需要構造、産業構造の大きな変化をもたらし、企業の在り方を大きく変えつつある。 すなわち、こうした変化は、産業内の企業間競争激化、企業間格差をもたらすだけでなく、産業の融合、既存産業の衰退、新規分野の創出等を生じさせている。 このため、企業の在り方自体も大きく変わってきており、一定の需要を前堤とした業界秩序のもとにおけるシェア争いや系列化中心の動きから、新規分野への進出や他産業との連携等産業を超えての急激な需要構造の変化への対応を余儀なくされている。 こうした環境変化に対応するため、近年、企業の多くは、組織・人事戦略についても、従来の一定の需要構造を前提とした指揮命令系統の明確なタテ系列の職務編成から、プロジェクト方式の採用等柔軟でフラットな職務編成を採用する傾向が強くなっている。 また、需要の急激な変化や高度化に対応する必要から、企業は、専門能力の外部調達や効率化を図るためにアウトソーシングを進めており、業務の必要に応じて内部労働力と組み合わせを行う方向がみられる。 さらに、内部労働力についても、中核的労働力としての長期雇用者についてスリム化を図りつつ、多様な雇用形態を組み合わせるところが多くなっている。例えば、専門職層の充実を目指し、目に見える形での業績を期待する傾向が強まっている一方、パート労働者や派遣労働者の活用も目立っている。 このように、企業をとりまく急激な環境変化は、外部労働の活用を進めるとともに、内部労働市場の在り方を大きく変えつつある。 (2) 労働者側の状況 他方、労働力供給側の問題として、高齢化社会に突入し、今後、職業生活の長期化が見込まれる。特に、その間、技術革新等を通じ急激な環境変化にさらされることが予想される。例えば、IT技術の進展そのものが、仕事の内容及びその遂行方法・手段に大きな変化をもたらし、それによって、今までの能力開発の在り方に限界が生じてきている。 また、近年、就業意識の多様化が進み、上記の組織のフラット化、複線化と相まって、就業形態やキャリアの多様化が顕著となっている。 さらに、就労意識の変化に加え、高齢化の影響や企業の変化、新陳代謝のスピード化により長期雇用システムが変化したこともあり、労働移動が増加することが見込まれる。 このため、企業内外を問わず、長期の職業生活において、個別の労働者が、それぞれの希望・適性・能力に応じてどのようにキャリア形成を行うかが能力開発面での大きな課題となってきている。 2 労働市場の変化に対応した職業能力開発の在り方 1で述べたように、内部労働市場の変化として、<1> 職務編成がタテ系列から、柔軟でフラットなものに変化しつつあること、<2> 長期的観点からの人材育成、貢献の収支バランスの考え方から、変化に対応するため短期的な即戦力活用、成果主義の傾向が強くなっていること、<3> キャリア形成の在り方が企業内においても多様化し、個別化の様相が強くなるとともに、能力開発の目標が不明確となっていることが挙げられる。また、<4> 外部労働市場との関係においても、アウトソーシングを通じた市場の拡大や労働移動の増加により、職業能力の市場価値が問われるようになりつつある。 (職務編成の変化への対応) このうち、<1> に関して、柔軟でフラットな職務編成を中心とする企業の組織・人事戦略の変更は、労働者の職業能力やその向上の在り方を変えつつあり、企業内の一定した職務配分のもと、比較的明確な職務内容を前提としてOJTを中心とした習熟化を目的としたものから、専門的能力を高めることに加え、経営戦略に従い、新たな課題に対応できる能力や、自ら問題を発見し、課題を形成した上で、これを解決する能力の向上も求められるようになっている。 さらにフラットで柔軟な職務編成が進む中で労働者に能力の発揮を期待するためには、企業にとっても、労働者の職務の希望・適性・能力を考慮しつつ、ポストとの組み合わせを考えることが重要である。企業のニーズ、ポストに期待される役割を明確にした上、個別労働者のキャリア希望とのすり合わせ、コンサルティング等が求められることとなろう。 また、企業内労働市場においても、変化に対応できる幅広い能力の養成や能力の市場価値を高めることが必要となってきており、激しい環境変化が持続する中で企業が生き残っていくためには、エンプロイアビリティ(就業能力)の高い人材、すなわち市場価値のある人材を確保・養成し、かつ、企業内につなぎ止め、処遇することができるかどうかがますます重要となろう。 労働者のエンプロイアビリティや市場価値を高めるためには、企業の行う能力開発だけでは限界があり、労働者自ら職業能力を高めることを奨励・支援していくことが必要となろう。特に、まとまった時間を自己啓発にあてられるような、長期教育訓練休暇制度等の仕組みが重要となってこよう。 (能力主義、成果主義の傾向への対応) <2> については、管理職層を中心に年俸制導入の動きがみられるほか、年功序列制の変化に伴い、成果と報酬を直接的に結びつける傾向が強まっている。特に、能力評価については、目標管理制度とセットでアウトプット評価のシステムを導入する動きがみられる。 こうした能力主義的な人事管理制度等を有効に機能させていく前提として、職務の内容や期待される役割を明確化するとともに、職務と労働者の希望・適性・能力とのマッチングを適切に行うことがポイントとなってこよう。 また、企業として組織を持続するためには、短期的な観点からの能力主義だけではなく、少なくとも長期雇用者については、適正なアウトプット評価を基に適切な人事配置を進めるとともに、節目節目ごとにキャリア・コンサルティングを行い、適切な能力開発や自己啓発を進めていくことが必要となろう。 (キャリア形成の個別化への対応) <3> については、職業生活が長期化する中で、企業内外を問わず、大きな環境変化に巻き込まれることが予想され、労働者にとって節目ごとに、自らの職業キャリアを振り返り、その希望・適性・能力を再確認し、今後の職業人生を再設計していくことが必要となっている。しかも、職業キャリアの在り方は、これまでのように一律の昇進を目指したものではなく、極めて多様となるものと考えられる。 このため、今後の企業内外における職業能力開発や自己啓発の目標は、個別労働者の職業キャリア形成の在り方によって決められることとなろう。また、職業能力評価についても、将来のキャリア形成を考える前提であると同時に、足らざる能力を向上させるための目標・基準としての意味を持っており、今後、職業能力開発や職業能力評価を推進していくための施策は、労働者の個別キャリア形成の在り方を軸として展開していく必要があろう。 (労働移動の増加への対応) また、<4> について、労働移動の増加が見込まれる中で、労働者自身、能力を向上させ、自らの市場価値を高めることが今後ますます重要となろう。また、企業の求める職業能力も、こうした労働移動の増加により、企業内の狭いものから、企業を超えた市場で通用する能力との関連性を次第に強めていくこととなろう。 しかしながら、職業能力の市場価値のポイント、基準とはどのようなものかについて具体的なものは確立していない。また、労働者の就業能力は様々であり、能力の市場価値を高めるための訓練目標は、個別的にならざるを得ない。 したがって、市場で価値ある職業能力について、極力どのようなものかを明らかにするとともに、こうした基準を踏まえ、個別のコンサルティングを行いつつ、キャリア形成支援や多様な職業能力開発を受けられるシステムを整備することが求められよう。 なお、労働力の需要構造の変化に伴い派遣労働者やパートタイム労働者等長期雇用を原則としない者が増加しているが、これらの者についても、キャリア形成に留意しつつ、自己啓発の支援を行っていく必要があろう。 3 職業能力開発政策上の課題 これまでの職業能力開発の在り方については、OJTを中心として、職務上の能力の向上に主眼が置かれてきたが、経済社会や労働市場の在り方が大きく変化している中で、労働者に必要とされる能力はより幅広くなっており、創造性の発揮等も求められるようになってきている。 また、企業においても、労働者個々人のキャリア形成の在り方やその希望・適性・能力を十分踏まえた上で、適切な人事配置等を行うようになってきている。 こうしたことから、職業能力開発施策においても、労働者個々人のキャリア形成を基本に置きつつ、その希望・適性・能力を踏まえながら、能力開発や自己啓発に係る支援を行うことが必要とされている。 以上により、職業能力開発政策上の課題を整理すると、以下のようになる。 (1) 個別的なキャリア形成の必要性 (2) 個別のキャリア形成に対応した職業能力評価の必要性 (3) 個別のキャリア形成に対応した職業能力開発の必要性 特に必要とされる以下の職業能力の開発・育成が今後重要 ・ エンプロイアビリティの向上 ・ 高度な職業能力の育成 ・ 問題発見解決能力の涵養 (4) 自己啓発支援の必要性 III 今後の職業能力開発政策の基本的方向性 IIに掲げた経済社会の変化等を前提とすると、今後の職業能力開発政策は以下の方向で進めることが必要である。 <1> 職業能力開発の在り方は個々人のキャリア形成の在り方と密接に関連していることから、職業能力開発施策の柱として、「職業生涯にわたるキャリア形成」を位置づけ、個別の労働者が適切なキャリア形成を行えるよう支援を行うこと。 また、職業能力開発、職業能力評価及び自己啓発は個別的なキャリア形成を促進するものとして位置づけることが適当である。 <2> キャリア形成の前提として、これまでのキャリアをベースにした職業能力評価システムを設けること。 <3> 企業内外におけるエンプロイアビリティを向上させるため、専門的なコンサルティングを行った上で、これを高めるための施策を推進するとに、自己啓発を促進するための環境整備を図ること。 <4> 職業能力開発施策の目標として、従来の職種ごとの職業能力の開発及び向上に加え、職業能力の高度化や問題発見解決能力の涵養を図ることを目標として施策を推進すること。 <5> 自己啓発を、事業主による職業能力開発や職業能力評価と並ぶ施策の重要な手段に位置づけ、支援を行うこと。 なお、以上のような施策の展開に併せ、今後は政策推進にかかるコストとそれによって得られた成果との関係を評価する手法についても検討していく必要がある。 IV 今後推進すべき職業能力開発施策 以上述べてきた職業能力開発政策上の課題及び今後の方向性を踏まえると、本研究会としては、今後、以下に掲げるような施策を推進していくことが適当であると考える。 1 個別的なキャリア形成を支援するための体制の整備 今後、個人がキャリア形成を適切に行うことができるよう、以下の体制を整備していくことが必要である。 (1) 労働者が能力を「知る」仕組みの整備 個別的なキャリア形成を適切に行うためには、まず、労働者がどのような能力を有しているかを自分自身で知ることが前提となる。 このためには、労働者自身が経験してきた職務や教育訓練・自己啓発等によりどのような能力を身につけてきたかを、キャリアの節目ごとに、いわば棚おろしをすることが必要である。 (2) 労働者に能力を「知らせる」仕組みの整備 棚おろしをするためには、企業が、労働者と話し合いながら、それぞれの経歴においてどのような仕事を遂行してきたか、また、これを通じてどのような能力を獲得してきたかを、明らかにしていくことが重要である。 このため、労働者が身につけている能力が客観的にわかるような「記述」がなされることが必要であるが、こうした「記述」は、ともすれば履歴書的・表面的なものとなってしまいがちなことから、これを専門的に行える体制の整備について検討すべきである。 具体的には、キャリアの節目ごとに労働者が自らキャリアを詳細に記述できるような仕組みや、企業側としてもこれに対する相談に応じられるよう、そのベースとなる情報の保持ができるような仕組みが必要となろう。 なお、労働者が離職する際には、今後のキャリア形成に資するよう、労働者自身がこうした「記述」や情報を持ち運びできるような仕組みを設けることも必要である。 (3) 労働者のキャリア形成を支援する仕組みの整備 <1> 企業内におけるキャリア形成支援 労働者のキャリア形成を推進するに当たっては、事業主が、職務・職階ごとに必要とする「人材像」を労働者に提示することが必要である。 次に、事業主には、労働者と十分な話し合いの上、労働者のキャリアを十分に把握し、それを的確に記述するとともに、その能力を正確に評価した上で、企業のニーズと労働者の希望・適性・能力を照合し、労働者のキャリア形成の具体的方向と職業能力開発の方針を確定すること(以下、「キャリア・コンサルティング」という。)が望まれる(図参照)。このことは、労働者の個別的なキャリア形成を推進するに当たって中核をなすものであり、企業・労働者の双方にメリットがあると考えられる。 また、企業としては、企業内における労働者のキャリア形成支援を担当する者を明確にし、かつ、当該職務に専門的な能力を有している者を配置することが望ましいと考えられる。 行政としても、企業においてこのようなシステムが整備されるように支援していくことが重要である。 <2> 企業外におけるキャリア形成支援 労働者が企業を超えてキャリア形成を行っていくに当たっては、キャリア・コンサルティングについて企業内の支援システムを利用できないこと及び現状ではこうした支援システムが不十分であることから、公的な支援体制を整備することが重要である。 <3> キャリア・コンサルティングを行う専門家の養成 企業内外を問わずキャリア・コンサルティングを行う者は、職業能力開発・職業能力評価等に限らず、人事労務管理全般について専門的な知識が必要であり、これらに係る専門家を養成していくことが必要である。 (4) 能力開発コースに係る情報提供、個人別の能力開発計画の作成 個別的なキャリア形成を促進するためには、公共・民間を含めた能力開発コースについて、企業・個別労働者に情報提供、紹介を行うとともに、必要に応じて個人ごとの能力開発計画を作成するような体制が、公的に構築される必要がある。 (5) 若年者(学卒未就職者等)のキャリア形成を支援する仕組みの整備 厳しい雇用情勢下で未就職卒業者が多いこと、若年者で職業意識の希薄さから自発的に離職する者が多いこと等から、これらの者のキャリア形成を支援する公的な仕組みを整備することも必要である。 また、学校教育の各段階において職場体験等啓発的な体験を行う機会を充実し、働くことの意義や職業についての知識が深められるよう、関係機関が十分に連携を図ることも重要である。 2 個人の適正なキャリア形成を支援するための職業能力評価制度の整備 これまでの職業能力評価システムとしては、国による技能検定のほか、技能審査認定制度、社内検定認定制度等があるが、これらの制度は、特定の技能・知識等を評価してきたものであった。 しかしながら、今後、労働者の個別的なキャリア形成を進めるためには、こうした特定の能力評価では不十分であり、これまでのキャリアをベースとして実践的な能力を評価するシステムや、さらには、労働者の市場価値ないしエンプロイアビリティを評価し、新たなキャリア形成につなげるシステムが必要である。 また、職業能力評価システムは、同時に職業能力についての基準としての意味を持ち、能力開発や自己啓発の目標ともなり得る。特に、エンプロイアビリティについてのポイントや基準を実践的なものとして明確にしていくことが、今後の雇用対策として極めて重要な意味を持つと考えられる。 さらには、職業能力評価制度が、能力開発や自己啓発と同様、キャリア形成を進める上で重要な一環を成すことを考えると、一定の基準に基づく職業能力評価制度を受ける機会を確保するための方策についても検討すべきである。 (1) 職業キャリアをベースにした職業能力評価システムの開発・整備 キャリア形成や能力開発を進めるためには、これまでの職業キャリアの実績をベースに、ポテンシャルや希望・適性をみて、方向を決めることとなると考えられる。このため、キャリアをベースにした職業能力評価システムを開発・整備することが必要である。 (2) エンプロイアビリティ評価 職業能力評価システムは、同時に職業能力についての基準としての意味を持ち、能力開発や自己啓発の目標ともなりうるものである。特に、エンプロイアビリティについてのポイントや基準を実践的なものとして明確にしていくことが、今後の雇用対策として極めて重要な意味を持つものである。 また、民間団体等が実施している各種の職業能力評価制度の評価基準を明らかにし、その相互の位置づけを関連づけ、社会横断的な評価基準を整備していくことは、エンプロイアビリティの基準を明確にすることにも資するものである。 (3) 民間団体が実施する職業能力評価システムの整備 (1)及び(2)を補完するものとして、特定の技能・知識等に関しては、技能検定のほか、民間団体が実施する職業能力評価制度の位置づけを明確化するなど、企業外の職業能力評価システムを整備する必要がある。 3 エンプロイアビリティ向上のための能力開発施策の推進 企業内外の変化に対応して、労働者がその市場価値を高めていくため、エンプロイアビリティを向上させていくことが必要とされているが、エンプロイアビリティは個々の労働者によって異なるものである。 こうしたことから、まず、エンプロイアビリティの基準を極力明確化するとともに、その基準を前提にキャリア・コンサルティングを行い、労働者個々人のエンプロイアビリティを評価し、不足している職業能力については、能力開発や自己啓発により市場価値を高めていく仕組みを整備していく必要がある。 また、エンプロイアビリティを向上させるための教育訓練ニーズは多様なものであることから、公共職業能力開発施設・民間教育訓練機関における教育訓練コースの多様化・弾力化を進めるとともに、労働者が主体的にこれらのコースを選択できるようなシステムを拡充していく必要がある。 さらに、広い意味でのエンプロイアビリティの重要な部分を構成すると考えられる高度な専門能力や問題発見解決能力等については、特に近年重視される傾向にある。 こうした能力を獲得するための手法として、前者については、公共職業能力開発施設、民間教育訓練機関を問わず、かなりの教育訓練コースが開設され、そのノウハウも蓄積されている。一方、後者については、社会的に確立した手法は存在しない状況にあるが、一部民間教育訓練機関において、ケース・スタディ、ビジネス・ゲーム等各種の訓練技法を取り入れた教育訓練コースが設定等されている状況にある。 今後は、民間教育訓練機関のみならず公共職業能力開発施設においても、これらの技法を取り入れた教育訓練コースの設定やノウハウの蓄積等に努める必要がある。 4 自己啓発への支援の強化 エンプロイアビリティを向上させ、個別的なキャリア形成を進める上で、自己啓発は主要な能力開発手段となるが、自己啓発を適切に進めるためには、目的や内容・方法についての的確な情報が必要であり、このため、能力評価をベースとしたコンサルティングや必要な情報の提供が不可欠である。また、就業時間の配慮や教育訓練休暇制度の普及・支援を行うなどの環境整備も併せて行っていく必要がある。 今後の職業能力開発の在り方研究会参集者名簿 今野 浩一郎 学習院大学経済学部教授(座長) 江上 節子 産能大学経営学部経営情報学科助教授 大木 栄一 日本労働研究機構副主任研究員 唐津 一 東海大学開発技術研究所教授 黒澤 昌子 明治学院大学経済学部助教授 柴田 裕子 三和総合研究所主任研究員 角尾 貞夫 株シ導体エネルギー研究所顧問 本田 精治 潟fンソー人事部次席部員 脇坂 明 学習院大学経済学部教授 (50音順) |