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[資料番号] 00120
[題  名] 仕事と家庭の両立支援対策の充実について(女性少年問題審議会建議・H12.12)
[区  分] その他

[内  容]

仕事と家庭の両立支援対策の充実について(建議)

【資料のワンポイント解説】

1.平成12年12月12日労働省、女性少年問題審議会が労働大臣に行った建議。次期通常国会への提出に向けて育児・介護休業法の改正が図れれる予定。

2.改正ポイントは次の4点。
(1)育児休業・介護休業の申出や取得を理由とする不利益取扱いの禁止
(2)子の養育、家族介護を行う男女労働者が、1年150時間、1か月24時間を超える時間外労働の免除を請求できる法的枠組みを創設
(3)子の養育をする労働者が、選択的することができる短時間勤務制度、フレックスタイム制などの勤務の措置の対象となる子の年齢を、現在の1歳から3歳に引き上げる
(4)小学校の始期に達するまでの子の看護休暇制度の導入について、努力義務規定を入れる


また、「期間を定めて雇用される者で契約が反復更新される等により実質上期間の定めなく雇用されていると判断される者が育児休業の対象となることは当然であり、その取扱いを具体化することが適当である。」としていることも注目される。








仕事と家庭の両立支援対策の充実について(建議)

 少子'高齢化・核家族化等が進行する中で、男女労働者が仕事と家庭を容易に両立させ、生涯を通じて充実した職業生活を送ることができるようにすることは、大きな課題である。
 このことは・結婚・出産後に働き続けることを希望する女性が増加してきていることや、近い将来労働力人口の減少に直面せざるを得なくなっていることを考慮すると、女性の能力発揮を促進するという観点からも重要であり、また、女性が育児'介護責任をより重く負っている現状にかんがみると、雇用の分野における実質的な男女の機会均等や男女共同参画社会の実現のためにも重要である。
 特に、急速な少子化の進展は、労働力人口の減少や現役世代の負担の増大などを通じ、将来の我が国の社会経済に広く深刻な影響を与えることが懸念されているが、その背景として固定的な性別役割分業を前提とした職場優先の組織風土、核家族化や都市化の進行等により、仕事と子育ての両立の負担感が増大していることが強く指摘されている。
 このような状況を併せ考えると、働きながら子どもを産み育てやすい雇用環境を整備し、仕事と子育ての両立の負担を軽減することは、労働者の福祉の増進を図る上でも、経済社会の活力を維持していく上でも、21世紀を迎える我が国にとって重要かつ喫緊の課題となっている。

 こうした中で、育児休業については、「育児休業等に関する法律」の制定により、30人を超える労働者を雇用する事業所の労働者に関しては平成4年4月から、それ以外の事業所の労働者に関しては平成7年4月からその規定が適用され、併せて、平成7年4月、育児休業期間中の経済的な支援を行う育児休業給付が創設され、平成13年1月からはその給付水準が25%から40%に引き上げられるなど順次育児休業の取得を促進するための制度改正が行われてきたところである。

 これらの取組によって、育児休業を取得した女性の割合は56.4%と半数を超えるに至った(平成11年度女性雇用管理基本調査)が、育児休業を利用しなかった者に育児休業制度の改善点を聞くと「育児休業の取得に対する職場の理解」、「元の仕事又は希望する仕事への復帰」や「職場復帰後の労働条件の改善」を挙げる者が多く(平成12年女性労働協会調査)、育児休業から復帰後の労働条件等への不安を解消し、育児休業を取得しやすく職場復帰をしやすい環境を整備することが強く求められている。


 また・育児休業取得者の割合が相当程度高まってきた結果、新たに、労働者が育児休業から復帰した後に働き続ける上で必要な子育てのための時間の確保等の課題が顕在化してきた。一方、時間外労働に関する女子保護規定の解消に伴い平成11年4月より実施されている、子の養育又は家族の介護を行う女性労働者に対する激変緩和措置が平成13年度末をもって終了することとなっている。もとより所定外労働の削減等により労働時間の短縮を推進することが必要であるが、長時間の時間外労働が多く行われている実態も見られる中で、同措置の終了により男女を問わず仕事と子育ての両立が困難となる事態が懸念される。さらに、労働者が子育てをしながら働き続けるためには、子どもが1歳に達した後においても、短時間勤務制度やフレックスタイム制等子育てに必要な時間を確保しやすい柔軟な働き方ができる仕組みが有効であり、その二一ズも高いが、これらの措置の実施率は低い状況にある。また、子どもが病気や怪我の際に休むことができない、あるいは休みにくいという問題を解決することも重要となってきている。さらに、子育てをしている労働者が遠隔地への転勤を命じられた場合には仕事と子育ての両立が困難となり、働き続けることができなくなるという問題への対応も求められている。

 加えて、男女の固定的な性別役割分担意識や職場優先の組織風土から、育児休業の取得や子育てをしながら働き続けることに対して、事業主だけでなく上司、同僚も含めた職場の理解が不足していることも仕事と子育ての両立の負担感を重くしている。
 また、そのような意識や組織風土も反映し、育児休業取得者に占める男性の割合は2.4%と低い水準に止まっている(平成11年度女性雇用管理基本調査)。
 以上のような点を総合的に考慮すると、下記の基本的な考え方に従って仕事と家庭の両立支援対策の充実のために必要な法的整備を行うことが適当である。
 なお、これらの点に加え、仕事と子育ての両立を容易にしていくためには、職場だけではなく、社会全体で、安心して子育てができるような様々な環境整備を行うことが求められていることは言うまでもない。このため、多様な保育サービス需要に対応して、低年齢児を中心とする保育所受入枠の拡大や延長保育をはじめとする保育サ_ビスの充実を図り、また、子育ての孤立化や不安の解消のための支援を推進するとともに、乳幼児に対する保健サービスを休日に実施すること等により働きながら子育てを行う労働者の負担を軽減することが強く望まれる。
 さらに、仕事と家庭との両立支援を促進していくに当たっては、今後、男女労働者ともに様々な生活・家庭事情を有するようになると考えられることを踏まえ、こうした労働者が最大限に能力を発揮できる社会の実現に向け、男女労働者、企業及び社会全体で責任を分担していくことが必要である。

1 労働者が安心して育児休業や介護休業を取得できるようにするためには、育児休業や介護休業の申出や取得を理由とする不利益取扱いはあってはならないものであり、これを禁止することが適当である。
 この場合・不利益取扱いの判断に当たっての考え方を具体化することが適当である。


2 小学校就学の始期に達するまでの子の養育又は要介護状態にある家族の介護を行う一定範囲の男女労働者が、一定水準を超える時間外労働の免除を請求することができる法的枠組みを作る必要がある。
 この場合、その水準は、女子保護規定の解消に伴う激変緩和措置との連続性も考慮し、1年間について150時間、1箇月間について24時間とすることが適当である。また、その対象者の範囲については、深夜業の制限の制度との関係を考慮する必要がある。


3 短時間勤務制度、フレックスタイム制など就業しつつ子を養育することを容易にする措置については、労使にとって、仕事と子育ての調和を図る上で現実的かつ有効な制度であるので、現在1歳に達するまでの子を養育する労働者に関して選択的に講ずることが義務づけられているが、その基本的枠組みを維持しつつ、子の年齢を3歳に引き上げることが適当である。
 本項については、子の年齢は現行法の規定を維持し、これを上回る年齢の引上げは労使の自主的取組に委ねるべきであるとする意見、子の年齢を小学校就学の始期に引き上げるとともに、短時間勤務の制度を設けることを全事業主に義務づけるべきであるとする意見もある。


4 子どもの急な負傷や疾病の際に休暇を取得しやすくし、また年次有給休暇を使い切る不安を持たずに休暇を取得できるようにするためには、労働者が子の看護のために休暇を請求することができる法的枠組みを作ることが望ましいが、看護休暇制度の普及状況等を考慮すると、当面、事業主は小学校就学の始期に達するまでの子の看護休暇制度の導入に努めるべき旨の規定を設け、その導入促進を図ることが適当である。

 本項については、看護休暇という法的枠組みを作ることによって解決できる問題ではなく、意識啓発によって労使の認識を高め、その自主的取組を促すべきであるとする意見、労働者が子の看護のために休暇を請求できる法的枠組みを早急に作るべきであるとする意見もある。


5 子の養育や家族の介護を行っている労働者にとっては、住居の移転等を伴う就業場所の変更が、雇用の継続を困難にしたり、仕事と家庭の両立に関する負担を著しく大きくする場合もあるため、事業主は当該労働者に係る就業場所の変更については、仕事と育児又は介護との両立を困難にすることがないよう配慮をすることとすることが適当である。


6 固定的な性別役割分担意識の解消や職場優先の組織風土の是正を図るため、国民一般に広く働きかけることはもとより、事業主や職場における上司、同僚の理解を高めるための意識啓発を積極的に行う必要がある。その際、男性の育児休業の取得率が低い現状にかんがみ、男性の育児休業の取得が促進されるよう配慮することも重要である。また、各事業所における仕事と家庭の両立のための取組に係る実施体制を明確化することとし、これらの仕組みを法律の中に盛り込むことが適当である。


7 期間を定めて雇用される者については、育児休業の対象とすることは困難であると考えられるが、労働契約が反復更新される等により実質上期間の定めなく雇用されていると判断される者が育児休業の対象となることは当然であり、その取扱いを具体化することが適当である。

 本項については、期間を定めて雇用される者を育児・介護休業制度の対象とすべきであるとする意見もある。


8 介護休業制度については、平成11年4月から、また、介護保険制度も本年4月から施行されたばかりであり、その検討に当たっては介護休業制度の実施状況や公的介護サービスの状況等を勘案する必要があり、基本的には、今しばらくこれらの状況を見極めた上で検討すべきである。