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[資料番号] 00121
[題  名] 雇用保険三事業の各種給付金の見直しについて
[区  分] その他

[内  容]

雇用保険三事業に係る各種給付金の見直しについて


【資料のワンポイント解説】

1.
中央職業安定審議会雇用対策基本問題小委員会報告(平成12年12月5日報告)。この小委員会報告は、同日開催された中央職業安定審議会で審議され、そのままの内容で労働大臣に対する建議がなされた。

2.小委員会報告は、今後の「雇用対策の推進に当たっての基本的考え方」を整理しているが、中でも、中心的な検討課題であった「雇用保険三事業に係る各種給付金の見直し」について、整理合理化の観点から一定の方向性を打ち出しているのが注目点。






雇用保険三事業に係る各種給付金の見直しについて


 雇用保険三事業に係る各種給付金については、対策分野ごとに次のとおり見直す必要がある。


1 円滑な労働移動の支援

○離職を余儀なくされる者についての在職中からの計画的な労働移動支援(教育訓練等)を助成する。

 ・原則として雇入れ助成(賃金助成)は行わない。
 ・個々の事業主のみならず、事業主団体による労働移動支援も助成の対象にする。
 ・実費(教育訓練費用等)の一部を助成する。


2 安定した雇用の維持・確保の支援

○急激な事業活動の縮小を余儀なくされた場合の一時的な雇用調整を助成する。

 ・休業等については、休業手当相当額の一定割合(原則1/2)を助成する。また、教育訓練を行う場合には、付加的助成も行う。
 ・出向については、1年以内の出向に限って助成する。

○各種施策の目的に沿って、効果が十分に発揮できる雇用の確保支援を助成する。

○施策目的に応じて効果が上がっているかの検証(期限の設定とそれに応じた不断の見直し)を徹底する。

○再就職支援が必要とされる者については、一定の雇用失業情勢の下で、対象者ごとに支援が行える措置を講じるとともに、雇入れ助成も行う。


3 良好な雇用機会の創出の支援

○産業政策の動向を踏まえた(新規・成長分野を中心とした)雇用機会創出支援とともに、地域の動向を踏まえた雇用機会創出支援を助成する。

 ・雇入れ助成(賃金助成)については、新規・成長分野を中心とした雇用機会創出支援と地域の動向を踏まえた雇用機会創出支援との助成内容の調和を図る。
 ・雇用機会創出支援の対象労働者は、原則として年齢を問わないこととし、雇用失業情勢が特定の年齢層に厳しい時に、配慮する。


4 労働力需給調整機能の強化

○障害者、60歳以上の高齢者等就職困難者のうち、官・民の需給調整機関(職業紹介事業者)の紹介・指導を受けたものを雇用する事業主に対して雇入れ助成を行う。


5 その他

○雇入れ助成(賃金助成)について

 ・事業主の費用負担を軽減する期間を原則6ヶ月とする。
 ・良好な雇用機会を確保する観点からの要件(失業給付の特定受給資格者を一定数以上発生させた場合の不支給等)を付する。
 ・助成率は、原則1/4(中小企業等には配慮)とする。

○手続について

 ・給付金の申請手続の電子化を積極的に進める等により、申請手続の大幅な簡素化を図ることが必要。
 ・雇入れ助成(賃金助成)については、確定保険料額から機械的に助成額を算定する方式を採用し、事務手続の大幅な簡素化を図るとともに、良好な雇用機会を確保する観点からの要件をチェックするための仕組みを設ける。











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経済・産業構造の転換に対応した雇用政策の推進について(報告)


平成12年12月5日中央職業安定審議会雇用対策基本問題小委員会報告
(同日、中央職業安定審議会が労働大臣に建議)



第1 検討の背景

1 経済・産業構造の変化に伴う雇用の動向

(1) 我が国においては、IT革命の進展、経済のグローバル化、経済構造改革の実施などにより、経済・産業構造が大きく転換する時期を迎えている。

(2) 今後、産業構造の変化やITをはじめとする技術革新が進む中で、定型的な業務を中心に縮小する職業がある一方、企業が労働者に求める職業能力が高度化、専門化していくなど職業構造が変化していくことが見込まれる。また、産業立地条件の変化や市場競争の激化に伴う企業間格差の増大などにより、労働力需給のミスマッチが一層拡大することが懸念されている。他方、いわゆる終身雇用慣行が緩やかに変化し、年功序列型賃金体系等企業の人事管理システムの変化が見られるとともに、若年層を中心に一社に長期継続的に雇用されることにこだわらない傾向も見いだされる。こうした労働市場の変化により、自発的な労働移動を通じた産業・職業構造変化への労働供給面の対応がなされていくことが期待されるが、変化の大きさや速度、それを取り巻く経済環境によっては、離職を余儀なくされる労働者が増大するおそれがある。

(3) 以上のような要因により、労働移動が円滑に進まず、失業率が高止りすることが懸念される状況にある。

2 雇用保険三事業についての見直し

(1) 雇用保険制度については、雇用保険法等の一部を改正する法律(平成12年法律第59号)により、今後ともその安定的運営を確保しつつ雇用に係るセーフティネットとして他の諸施策との有機的連携の下にその役割を果たしていくようにするための改正が行われたが、雇用保険三事業については、上記法律の国会審議に際し衆・参の委員会の附帯決議で整理合理化が求められた。これを受けて、本年9月1日に当審議会専門調査委員雇用安定等事業部会の報告「雇用保険三事業に係る各種給付金の整理合理化の方向について」が出された。

(2) 当小委員会は、同報告を受けた当審議会本審より、雇用保険三事業に係る各種給付金の在り方は雇用対策の在り方と密接に関わる問題であることから、政策面からの具体化について検討し報告するよう求められた。これを受けて、経済・産業構造の転換に対応した雇用政策全般の在り方について検討した上で、給付金の見直しについて検討することとした。


第2 雇用政策の推進に当たっての基本的考え方

1 雇用対策の評価及び課題

 雇用対策は、戦後の失業者対策などの事後的施策から雇用安定対策などの積極的な失業予防対策、さらに雇用創出対策へと拡大し、労働市場におけるルールの整備と労働力需給調整機能の強化が図られ、職業能力開発もより重視されるようになってきた。現在実施されている雇用対策は多岐にわたるが、ここでは、(1)労働力需給調整対策、(2)雇用機会創出対策、(3)安定した雇用の維持・確保対策、(4)地域雇用対策、(5)業種雇用安定対策、労働移動支援対策の5つに分類し、それぞれについて、評価・課題を整理することとした。なお、中央職業能力開発審議会で取り扱われる分野及び障害者対策等については、別途の検討が必要であり、ここでは対象から除外した。


(1) 労働力需給調整対策

 主要な対策として、公共職業安定機関による労働力の需給調整や民間の労働力需給調整システムの整備、就職困難者の就職の促進を実施しているが、

イ 公共職業安定機関と民間の労働力需給調整機関がそれぞれの特性を活かしつつ労働力需給調整機能を発揮しており、今後は、よりその機能を高めるために官民の機関の連携を強化することが必要である。

ロ 労働力需給のミスマッチが生じている中で、求職者のニーズを踏まえつつ積極的な適格紹介を推進する観点に立った労働力需給調整機能の強化が必要である。


(2) 雇用機会創出対策

 主要な対策として、中小企業における雇用機会の創出等支援、介護分野における雇用機会の創出等支援、新規・成長分野における雇用機会の創出支援、地方公共団体における臨時応急の雇用・就業機会の創出を図る事業、雇用情勢が著しく悪化した場合における雇用機会の創出を実施しているが、

イ 新規事業展開等による雇用機会の創出に対する期待は大きく、また、創業時の支援として人材の確保が求められていることから、良好な雇用機会の創出を支援する施策については、引き続き推進していくべきである。

ロ ただし、雇用失業情勢の推移を見ながら、対策が効果的かつ必要かという観点からの見直しも必要である。


(3) 安定した雇用の維持・確保対策

 主要な対策として、景気変動等による一時的な雇用調整に対する支援や高度な人材の確保等を通じて雇用管理改善に取り組む中小企業に対する支援を実施しているが、

イ 安定した雇用の維持・確保は、企業が事業活動を行う場合の大前提であり、景気変動等に対応した安定した雇用の維持・確保対策は引き続き重要な課題である。

ロ 経済・産業構造が転換する中で、労働者が安心して働き続けられる社会を構築するためには、企業内での雇用の安定のみならず、企業間移動があった場合の職業生活の安定を図る観点から必要な施策を展開することが求められている。


(4) 地域雇用対策

 主要な対策として、地域雇用開発のための措置や失業の予防、再就職の促進等のための措置、全国に比して厳しい雇用失業情勢にある地域等に対する特別の措置を実施しているが、

イ 各地域の選択と責任による主体的な取組を基本としつつ、国と地方公共団体がそれぞれの役割分担を踏まえ施策を展開できる枠組に再編することが必要である。

ロ また、地域における魅力ある雇用機会の創出等に対する支援を行うとともに、労働力需給のミスマッチの解消が図られるような環境整備を行うことが必要である。その際、我が国の産業の基盤となっている「ものづくり対策」の重要性に十分留意すべきである。


(5) 業種雇用安定対策、労働移動支援対策

 主要な対策として、特定不況業種等関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法(以下「業種法」という。)に基づく失業の予防等のための措置及び離職者の再就職の促進等のための措置を実施しているが、

イ 今後業種を問わず労働移動の増加が見込まれる中で、職業生活の安定を図るためには、業種の枠組みを超えて、真に支援の必要な事業主や労働者に対して対策を講ずることが必要であり、それに合わせて業種法の見直しも必要である。

ロ 特に、事業転換等を図っていく場合の教育訓練や失業なき労働移動を支援するための対策が、業種にとらわれず展開されることの重要性が増している。



2 今後の雇用政策の推進に当たっての基本的考え方

(1) 経済・産業構造の転換や雇用に関する労働者の意識の変化に伴い、労働移動の増加や労働力需給のミスマッチの拡大が見込まれる中で、中長期的に雇用の安定を図りながら労働者一人一人が主体的にその持てる能力を十分発揮し、安心して働き続けられる社会を創っていく必要がある。そのためには、景気変動等に対応した企業内での雇用の維持・確保とともに企業間移動を通じて雇用機会の確保を図り、労働者一人一人がその有する能力を高めて、安定した職業生活を送ることができるようにすることが重要である。

(2) このため、今後の雇用政策については、事業主及び労働者の双方が雇用及び職業生活の安定を図るために果たすべき役割や今後の雇用政策の方向についての認識を今まで以上に深めるとともに、円滑な労働移動の実現のための対策、安定した雇用の維持・確保のための対策、良好な雇用機会の創出のための対策、労働者の主体的なキャリア形成の促進のための対策を重点に充実・強化を図り、併せて、これらの対策の基盤となる労働力需給調整機能の強化を図ることが重要である。
 また、これらの対策の効果をより発揮させるための助成措置についても内容を見直す必要があるが、これについて、経済・産業構造の変化に対応するとともに、雇用失業情勢の動向を踏まえた上で、機動的な対応を図れるようにすることが必要である。



第3 具体的な雇用対策の方向

第2のような基本的考え方に立って、具体的な雇用対策の方向を示すと次のとおりである。


1 雇用及び職業生活の安定に関する基本的理念及び関係者の責務の明確化

 雇用及び職業生活の安定を図るためには、労働者の有する能力を高め、その能力に応じた雇用機会が確保されることにより、職業生活の全期間を通じて職業の安定が図られることを基本的考え方とし、これを前提として、労働者は自らの職業能力の向上に努め、事業主はその雇用する労働者の失業の予防、離職を余儀なくされる場合の労働移動の支援、能力の開発及び向上等に努めるべきことを明確化する必要がある。

2 雇用対策の方向及び支援策の在り方

主要な雇用対策の方向と支援策の在り方を示すと次のとおりである。


(1) 円滑な労働移動の実現のための対策

イ 離職を余儀なくされる者に対する事業主による計画的な労働移動支援を定着させ、円滑な労働移動を実現させることが必要である。その際、労働移動支援については、これが安易な解雇を促進することのないよう配慮を尽くすとともに、趣旨に沿った適切な運用が図られるようにすることが必要である。
 なお、業種の枠組みを超えて対策を講ずることとすることを踏まえ、業種法は期限どおり廃止することが適当である。

ロ また、円滑な労働移動を実現するためには、能力本位のマッチングのための環境整備が不可欠であることから、求人年齢制限の緩和に向けた取組の促進が図られるようにすることが必要である。

ハ なお、労働側の委員から、円滑な労働移動の実現に当たっては、長期的に雇用の安定を図る観点から労働者の採用から解雇に至るまでの解雇手続を含めた社会的ルールの整備やパートタイム労働者、派遣労働者等にみられる短期雇用を反復継続する労働者の労働条件の確立など早急に労働政策として対処すべき問題もあるという指摘があった。


(2)安定した雇用の維持・確保のための対策

イ 経済状況が悪化した場合の再就職の支援が必要とされる者についての機動的な雇入れ支援や雇用管理の改善による魅力ある職場づくりの支援等を行うことにより、安定した雇用の維持・確保を図ることが重要である。

ロ 雇用調整助成金について、個々の事業主が急激な事業活動の縮小を余儀なくされた場合に一定の業種に属するか否かを問わず支援が受けられるようにするとともに、産業政策の観点から特に業種に着目した支援が講じられる場合には配慮することが必要である。


(3) 良好な雇用機会の創出のための対策

イ 新規事業展開等による雇用機会の創出

 (イ)新規事業展開等による雇用機会の創出を支援するための施策については、支援内容を見直すほか、廃止・見直し期限の設定も考慮することにより、その時々の経済情勢、産業政策の動向等諸般の事情を的確に反映できるようなものにすることが必要である。

 (ロ)経済状況が著しく悪化した場合に臨時応急の雇用創出を図るため、セーフティネットとしての暫定的な事業等が引き続き実施できるような仕組み等について十分に配慮することが必要である。

ロ 地域における雇用機会の創出等

 (イ)現行の地域類型等の設定の在り方について、より簡素なものにするとともに、国と地方公共団体がそれぞれの役割分担を踏まえた施策(国は職業紹介等、各種助成措置及び政策融資を実施)を展開できる枠組に再編することが必要である。

 (ロ)全国どこにおいても、国が地方公共団体と共に地方の産業振興策等と連携した雇用対策に係る事業展開ができる枠組を創設することが必要である。

 (ハ)急激に雇用情勢が悪化する場合には、セーフティネットの維持・達成の観点から、国が引き続き適切に雇用対策を展開できるようにすることが必要である。


(4) 労働者の主体的なキャリア形成の促進のための対策

 中央職業能力開発審議会での議論を踏まえつつ、労働者の自発性を重視した能力開発を推進する観点から個々の労働者の主体的なキャリア形成を支援する体制を整備するとともに、併せて、職業能力評価システムを整備する必要がある。


(5) 労働力需給調整機能の強化のための対策

イ 特に在職中から実施する措置

 (イ)在職者も含めた求職者の求職活動を容易にするため、官民連携した雇用情報提供機能の強化等が必要である。
 (ロ)離職を余儀なくされる者に対する事業主の計画的な求職活動等への支援の促進や公共職業安定所による職業訓練のあっせんなど離職後のみならず在職中からの積極的な支援を行う必要がある。

ロ 求人と求職の多様化に対応したマッチング機能の強化のためのその他の措置

(イ)求職者の求職活動を容易にするため、公共職業安定所における求人自己検索システムの整備が必要である。

(ロ)職場適応訓練、求職者の能力や適性を踏まえたカウンセリングの充実・強化、雇用情報等を活用した的確な指導強化による積極的な適格紹介の実施や就職困難者の雇入れ支援が必要である。

(ハ)キャリア・コンサルティングの考え方、仕組みを活用した職業紹介システムの確立が必要である。

ハ 能力本位のマッチングの推進

 能力本位のマッチングを推進するため、求人・求職のニーズを的確に把握した上で、公共職業安定機関と職業能力開発機関との連携による離職者に対する訓練も含めた職業能力開発の支援が必要である。



3 雇用保険三事業の給付金の見直し

 雇用保険三事業の給付金の見直しについては、2の雇用対策の方向及び支援策の在り方を踏まえ、業種の枠組みを超えて個々の事業主、労働者に着目するとともに、効果的効率的な支援を行う観点から支援内容の重点化及び簡素合理化を図ることが必要であり、具体的には別紙のとおり見直すことが適当である。



4 その他

 上記雇用対策の見直しについては、早期に実施することが必要である。なお、実施に当たっては、所要の経過措置を講ずる必要があることに留意すべきである。