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労働者の個人情報の保護に関する行動指針の解説
リンク 労働者の個人情報保護に関する行動指針
(平成12年12月20日労働省)
第1 総則 1.目的 この指針は、民間企業等が保有する労働者の個人情報の適正な処理に関し必要な事項を定めることにより、民間企業等が、業務の実態を踏まえつつ、労働者の個人情報の保護に関する規程を整備することを支援、促進し、もって労働者の個人情報について、円滑な処理に配慮しつつ、保護の一層の推進を図ることを目的とする。 |
2.用語の定義 この指針において、次の各項に掲げる用語の意義は、当該各項に定めるところによる。 (1) 労働者 民間企業等において現に使用される者で、賃金、給料等を支払われる者をいう。 (2) 労働者の個人情報(以下「個人情報」という。)労働者個人に関する情報であって、氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(その情報のみでは識別できないが、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別できるものを含む。)をいう。 (3) 個人情報の処理 個人情報の収集、保管その他すべての使用をいう。 (4) 同意 労働者が、個人情報の処理に関する情報を与えられた上で、自己に関する個人情報の処理について承諾する意思表示を行うことをいう。 |
<参考> 「労働者の個人情報保護に関する研究会報告書」(平成10年6月)用語の解説 (抜粋) (1) 個人情報 (略) 労働者の個人情報について類型化すると次のようになる。 <1> 基本情報(住所、電話番号、年齢、性別、出身地、人種、国籍など) <2> 賃金関係情報(年間給与額、月間給与額、賞与、賃金形態、諸手当など) <3> 資産・債務情報(家計、債権、債務、不動産評価額、賃金外収入など) <4> 家族・親族情報(家族構成、同・別居、扶養関係、家族の職業・学歴、家族の収入、家族の健康状態、結婚の有無、親族の状況など) <5> 思想・信条情報(支持政党、政治的見解、宗教、各種イデオロギー、思想的傾向など) <6> 身体・健康情報(健康状態、病歴、心身の障害、運動能力、身体測定記録、医療記録、メンタルヘルスなど) <7> 人事情報(人事考課、学歴、資格・免許、処分歴など) <8> 私生活情報(趣味・嗜好・特技、交際・交友関係、就業外活動、住宅事情など) <9> 労働組合関係情報(所属労働組合、労働組合活動歴など) |
3.責務 (1) 使用者及び労働者は、個人情報の保護及び処理の重要性を認識し、その理解の醸成を図るものとする。 (2) 使用者は、この指針を尊重し、個人情報の保護に努めるものとする。 (3) 労働者は、使用者がこの指針に従って実施する措置に協力するとともに、自らも個人情報の保護に努めるものとする。 |
4.対象となる個人情報の種類 この指針は、民間企業等において、その全部又は一部がコンピュータ等の自動的手段により処理されている個人情報及び手作業により処理されている個人情報であって、組織的に保有するファイリングシステムの全部又は一部をなすものを対象とする。 |
第2 個人情報の処理に関する原則 1.処理の一般原則 (1) 個人情報の処理は、労働者の雇用に直接関連する範囲内において、適法かつ公正に行われるものとする。 (2) 個人情報の処理は、原則として収集目的の範囲内において、具体的な業務に応じ権限を与えられた者のみが、業務の遂行上必要な限りにおいて行うものとする。 (3) 使用者を含め、個人情報の処理に従事する者は、業務上知り得た個人情報の内容をみだりに第三者に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない。その業務に係る職を退いた後も、同様とする。 (4) 使用者は、個人情報の保護の推進の観点から、その処理のあり方について定期的に評価・点検するものとする。 (5) 使用者は、労働者に対し、個人情報の処理を通じて、雇用上の不法又は不当な差別を行ってはならない。 (6) 使用者は、労働者に対し、個人情報の保護に関する権利の一方的な放棄を求めてはならない。 |
2.個人情報の収集 (1) 使用者は、個人情報を収集する場合には、本人から直接収集するものとする。ただし、次に掲げる場合にあってはこの限りでない。 (イ) 収集目的、収集先、収集項目等を事前に本人に通知した上で、その同意を得て行う場合 (ロ) 法令に定めがある場合 (ハ) 労働者の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があると認められる場合 (ニ) 業務の性質上本人から収集したのでは業務の適正な実施に支障を生じ、その目的を達成することが困難であると認められる場合 (ホ) (イ)から(ニ)にまでに掲げる場合のほか本人以外の者から収集することに相当の理由があると認められる場合 (2) 使用者は、収集目的の範囲を超えて収集された個人情報については、破棄又は削除若しくは本人に返却する場合を除き、その個人情報を処理してはならない。 (3) 使用者は、次に掲げる個人情報を収集してはならない。ただし、法令に定めがある場合及び特別な職業上の必要性があることその他業務の適正な実施に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合は、この限りでない。 (イ) 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項 (ロ) 思想、信条及び信仰 (4) 使用者は、法令若しくは労働協約に特段の定めがある場合又は法令若しくは労働協約に基づく義務を履行するために必要があると認められる場合を除き労働組合及び労働者の意思に反して、労働者の労働組合への加入又は労働組合活動に関する個人情報を収集してはならない。 (5) 使用者は、法令に定めがある場合及び就業規則等において、使用者を含め医療上の個人情報の処理に従事する者についてこの指針の第2の1の(3)の原則を明らかにした上で、次に掲げる目的の達成に必要な範囲内で収集する場合を除き、医療上の個人情報を収集してはならない。 (イ) 特別な職業上の必要性 (ロ) 労働安全衛生及び母性保護に関する措置 (ハ) (イ)及び(ロ)に掲げるほか労働者の利益になることが明らかであって、医療上の個人情報を収集することに相当の理由があると認められるもの (6) 労働者がこの指針に反する質問を受けた場合には、使用者は、労働者がその質問への回答を拒否したこと等を理由として、労働者に対し、解雇その他の不利益な扱いを行ってはならない。 |
3.個人情報の保管 (1) 個人情報の保管は、収集目的の範囲内において行うものとし、労働者にわかりやすく、かつ、差別をもたらすことがない方法により行うものとする。 (2) 使用者は、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報については、速やかに破棄又は削除するものとする。 (3) 医療上の個人情報は、原則として就業規則等においてこの指針の第2の1の(3)によることを義務づけられている者が他の個人情報とは別途に保管するものとする。 (4) 使用者は、保管する個人情報について、収集目的に応じ必要な範囲内において、正確かつ最新の状態であるよう点検・更新するものとする。 |
4.個人情報の利用及び提供 (1) 個人情報の利用及び提供は、収集目的の範囲内において行うものとする。ただし、次に掲げる場合にあってはこの限りでない。 (イ) 収集目的以外の利用又は提供の目的、提供の場合にあっては提供先等について、事前に本人に通知した上で、その同意を得て行う場合 (ロ) 法令に定めがある場合 (ハ) 労働者の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要があると認められる場合 (ニ) 公共の利益の保護のために必要があると認められる場合 (ホ) (イ)から(ニ)までに掲げる場合のほか労働者の利益になることが明らかであって、収集目的の範囲を超えて利用又は提供することに相当の理由があると認められる場合 (2) 使用者は、個人情報を第三者に提供する場合には、提供先に対して、提供目的の範囲内において処理すること等必要な制限を付し、その処理が適正に行われるよう配慮するものとする。 |
5.個人情報の処理の委託 使用者は、個人情報の処理を第三者に委託する場合には、個人情報の保護について十分な措置を講じている者を選定し、委託契約等において、委託目的の範囲内において処理すること等必要な制限を付し、その処理が適正に行われるよう配慮するものとする。 |
6.特定の収集方法 (1) 使用者は、原則として、労働者に対し次に掲げる検査を行ってはならない。 (イ) うそ発見器その他類似の真偽判定機器を用いた検査 (ロ) HIV検査 (ハ) 遺伝子診断 (2) 使用者は、労働者に対し、性格検査その他類似の検査を行う場合には、事前にその目的、内容等を説明した上で、本人の明確な同意を得るものとする。 (3) 使用者は、労働者に対するアルコール検査及び薬物検査については、原則として、特別な職業上の必要性があって、本人の明確な同意を得て行う場合を除き、行ってはならない。 (4) 使用者は、職場において、労働者に関しビデオカメラ、コンピュータ等によりモニタリング(以下「ビデオ等によるモニタリング」という。)を行う場合には、労働者に対し、実施理由、実施時間帯、収集される情報内容等を事前に通知するとともに、個人情報の保護に関する権利を侵害しないよう配慮するものとする。ただし、次に掲げる場合にはこの限りでない。 (イ) 法令に定めがある場合 (ロ) 犯罪その他の重要な不正行為があるとするに足りる相当の理由があると認められる場合 (5) 職場において、労働者に対して常時ビデオ等によるモニタリングを行うことは、労働者の健康及び安全の確保又は業務上の財産の保全に必要な場合に限り認められるものとする。 (6) 使用者は、原則として、個人情報のコンピュータ等による自動処理又はビデオ等によるモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならない。 |
第3 自己情報の開示等に関する原則 1.自己情報の開示 (1) 使用者は、労働者に対して、その保管する個人情報に関し定期的に情報提供を行うものとする。 (2) 使用者は、労働者から、自己に関する個人情報について、開示の請求があった場合には、合理的な期間内にこれに応ずる(請求者に関する個人情報が存在しないときはその旨を知らせることを含む。)ものとする。ただし、法令に定めがある場合及び請求があった個人情報が、請求者の評価、選考等に関するものであって、これを開示することにより業務の適正な運営に支障が生ずるおそれがあると認められる場合等には、その全部又は一部に応じないことができるものとする。 (3) 使用者は、労働者からの自己に関する個人情報の開示の請求ができるだけ円滑に行われるよう、閲覧時間等について十分配慮するものとする。 |
2.自己情報の訂正等 (1) 使用者は、労働者から、自己に関する個人情報について事実に誤りがあることを理由として訂正、削除等(以下「訂正等」という。)の請求があった場合において、その内容が正当と認められるときは、合理的な期間内にこれに応ずるものとする。 (2) 使用者は、個人情報を訂正等する場合には、それまで不正確な又は不完全な個人情報を提供していた関係者に対し、加えた修正内容を可能な範囲で通知するものとする。ただし、労働者が通知は不要である旨同意した場合にはこの限りでない。 |
3.自己情報の利用停止等 使用者は、労働者から、自己に関する個人情報についてこの指針に反して処理されていることを理由として利用又は提供の停止、削除等の請求があった場合において、その内容が正当と認められるときは、合理的な期間内にこれに応ずるものとする。 |
第4 労働組合等の役割等に関する原則 1.労働組合等への通知等 使用者は、個人情報に関するコンピュータ等による自動処理システム又はビデオ等によるモニタリングの導入等を行う場合には、原則として労働組合等に対し事前に通知し、必要に応じ協議を行うものとする。 |
2.労働組合における個人情報の処理 労働組合は、個人情報の処理を行う場合にあっては、使用者が個人情報を処理する場合に準じて、その活動の目的の遂行に必要な範囲内で行うとともに、その適正な管理を行うものとする。 |
第5 適正な管理体制の整備に関する原則 1.個人情報の適正管理 使用者は、個人情報への不当なアクセス又はその情報の紛失、破壊、改ざん、漏えいの防止その他の個人情報の適正な管理のため、必要な措置を講ずるものとする。 |
2.管理責任者の選任等 (1) 使用者は、この指針の内容を理解し実践する能力のある者を選任し、個人情報の管理責任者としての業務を行わせるものとする。 (2) 管理責任者は、この指針の内容を理解し実践するとともに、個人情報の保護のあり方及びその実現に必要な手段に関する決定権限及び責任を有するものとする。 (3) 使用者又は管理責任者は、個人情報の処理に従事する者の範囲及びその権限を明確にした上で、その業務を行わせるものとする。 |
3.教育・研修の実施 使用者は、労働者に対しこの指針の理解及び遵守を周知徹底するとともに、管理責任者及び個人情報の処理に従事する者に対し、その責務の重要性を認識させ、具体的な個人情報の保護措置に習熟させるため、必要な教育及び研修を行うものとする。 |
4.苦情及び相談への対応 使用者は、労働者からの個人情報の処理又は開示等に関する苦情及び相談について、これらを受け付けるための窓口の明確化等を行い、適切かつ迅速に対応するものとする。 |