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[資料番号] 00129
[題  名] 労働政策審議会労働条件分科会−今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告案)(2002.12.3)
[区  分] 労働基準

[内  容]

厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会 H14.12.3
今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)







法規則改正は基本的には6点

裁量労働制
「対象事業場の制限」撤廃!制定時の喧噪たる議論は何だったのか。


解雇無効判決後の金銭決着ルールの是非に議論





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【資料のワンポイント解説】

少し長くなるが、報告(案)の要点を述べた上で、二点(企画業務型裁量労働制の対象事業場の制限を廃止するとしている点と解雇の金銭決着の問題)について、若干コメントする。

1 本資料は、平成14年12月3日、労働政策審議会労働条件分科会で配布された資料「今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)」の全文。労基法改正案の骨格となるものである。なお、報告書の性格は「これまで分科会で検討を行った結果を報告書にした。この報告を受けて厚生労働省において次期通常国会に労働基準法の改正をはじめ所要の措置を講ずることが望まれる。」とされている。

2 報告案の要点は、以下のとおり。

(1)就業規則及び労働契約の締結に際し交付する書面の中に、「解雇の事由」を明記。
(2)有期労働契約について
  @有期労働契約の期間の上限について、原則を1年から3年に延長、専門的な知識等を有する労働者及び高齢者(60歳以上)は5年にする。
A「有期労働契約の締結及び更新・雇止めこ関する指針」の根拠規定を設ける。
(3)解雇ルールについて
  @使用者は、法令により解雇が制限されている場合を除き労働者を解雇できるが、「使用者が正当な理由がなく行った解雇は、権利の濫用として、無効とする」規定を置く。
A解雇を予告された労働者は、解雇の予告日から退職日までの間においても、解雇の理由を記した文書の交付を請求できる。
B裁判所が解雇無効を判断したとき、当事者の申立てに基づき、一定の要件の下で、当該労働契約を終了させ労働者に一定の額の金銭の支払を命ずることができることとする。
(4)企画業務型裁量労働制について
  @労使委員会の決議(全員の合意→4/5の多数決に=協定代替決議も同様)、労働者代表委員の信任手続の廃止、労使委員会の設置届の廃止、健康福祉確保措置の実施状況報告の簡素化、決議の有効期間の1年限度の撤廃。
A企画業務型裁量労働制について、対象事業場を「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」(=注:本社)に限定しないこととする。
(5)専門業務型裁量労働制について
  @健康福祉確保措置及び苦情処理措置の導入
(6)時間外労働の限度基準における「特別の事情」を臨時的なものに限るようにする。
   
法改正を伴う部分は、基本的に以上である。



3 コメント

この中で、十分な議論がされておらず改正による弊害が懸念されるのが、
上記(4)Aの企画業務型裁量労働制に係る対象事業場(現状では「本社」に限定)をの限定解除である。


 これについて、H14.10.1の分科会で事務局(厚生労働省労働基準局)は、『対象事業場の範囲等についてということですが、この問題意識としては、企画型というのは基本的に本社に限るという形で事業場を限定しておりますが、現在、分社化も進み、支店への権限の移譲等が進んでいるわけです。そういう中で、基本的に本社だけに限るということが必要なのかどうか。これについては、対象業務で限定をしているわけで、対象業務の方でしっかり把握、限定をしている限り、事業場の限定までは必要ないのではないかという問題意識を持っているわけです。』と説明している。

 しかし、これは企画業務型裁量労働制の制定時の経緯からして、おかしい。
 制定時、この対象事業場の範囲を巡って相当の議論があって、結果、「対象事業場」と「対象業務」の両面から縛りをかけることによって制度をスタートさせようとの合意があったはずである。

  周知のように、現在、企画業務型裁量労働制は次の4要件を満たす場合にその導入を認めている。
  (1)事業の運営上重要な決定が行われる事業場であること。
  (2)事業場に、労使委員会が設置されていること。
  (3)労使委員会がその全員の合意により、対象業務、対象労働者等8項目の決議をしていること。
  (4)労使委員会の設置及び前記(3)の決議を所轄労基署長に届け出ていること。

 今回、この4要件の一つ()を十分な理由・審議もなく外そうというのであるから、事は重大である。
 前記の事務局説明は、何ら、対象事業場の縛りをはずす理由になっていない「=分社化も進み(現行法の適用余地もある)、支店への権限の移譲(各企業各様である)等が進んでいるわけです。」 (これは、背景説明としても弱いばかりか、問題の本質からずれているように思われる。)
 それより何より、この対象事業場の限定解除に関しては、当分科会においてほとんど議論がされていない。(と思われる。)

 )単に4要件の一つという以上に対象事業場の縛りは重要。実は、労使委員会の決議で定める「対象業務」は、法的制限として弱いばかりか、そもそも対象業務の範囲は指針において”対象業務となり得る業務の例”、”対象業務となり得ない業務の例”などのように例示で示さなければならないほど微妙な問題であり、ここにおいて実質的な縛りは掛けにくいのである。

 前記4@は手続に係る問題であるが、4Aは制度の基本に関わる論点となるべきものである。はたして、労働側委員には問題の本質が理解されているのだろうか。
 H14.10.1の分科会審議で、労働側委員から、『対象事業場の範囲とか対象労働者の措置についてと、これは手続き論だけに終わってしまっている感じなのですが、その辺の論点としては今のところ考えてないのでしょうか。』と質問がされ、これに対して、事務局から、『先ほど申し上げましたように対象事業場ということで、今の制度は本社というのを原則に考えていますが、実行されて実際にあった場合に本社だけということでいいのか。要するに、それが現在の支店への権限の移譲ということもありますし、それも踏まえて対象事業場というものを、もう一度見直す必要はないかという問題意識を持っています。』と答えている。
その結果として今回の「報告(案)」が出ているのである。
 H14.10.1以降の分科会でどの程度議論されたのか議事録が公開されていないので不明だが、もし、今回の報告案が出てから議論しようと考えているとしたら、おめでたい話だ。
 労働側委員には、制定時の議論をしっかり整理して、十分な議論を尽くすよう期待したい。

 (繰り返すが、労働側委員(というより連合)には問題の本質が理解されているのだろうか。企画業務型裁量労働制は、対象事業場の制限をなくす(=その一点)で、制定時と姿を全く変えたものになってしまう。「それでよい」というなら、それでよいだろう。問題の所在が理解できず、十分な議論もなされず、このような重大な改正が成立するようではならない。委員にもエースを投入して真剣な対応を進めるべきだ。)




解雇ルールについて
論点は、前記3Bの解雇無効判決後の金銭支払い決着の制度化である。
解雇が日常茶飯に起こる中小企業の労働者にはいい知らせだろう。(中小企業に働く労働者の多くは、解雇を争ってまで復帰したい会社ではないのだが、金銭支払いの途があるなら解雇を争いたいと考えるだろう。中小企業の解雇は(大企業と比べて)、理屈の通らない解雇も多く、勝訴の可能性も相対的に高い。解雇無効訴訟が増えるかも知れないが、、、)
しかし、大企業の労働者には困った話だろう。大企業にとって、金銭支払いが経済的にダメージにならない一方で、労働者は解雇無効=職場復帰を望んでいるケースが少なくない。
報告(案)では、「当事者の申立により」となっているが、経営者からの申立には一定の制限を設ける必要があるかも知れない。

 

2002.12.6記

 






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今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)


 今後の労働条件に係る制度の在り方については、労働政策審議会労働条件分科会において平年13年9月19日以後 回にわたり検討を行い、本年7月23日には、それまでの意見について整理して「今後の労働条件に係る制度の在り方に関する議論の整理について」を取りまとめ、その後、さらに関係者の意見の調整を図るべく精力的に議論を深めてきたところである。
 我が国の経済社会を取り巻く状況をみると、少子高齢化が進み労働力人口が減少する一方、経済のグローバル化、情報化等の進展による産業構造や企業活動の変化、労働市場の変化が進んでいる。このような中で、我が国の経済社会の活力を維持・向上させていくためには、労働者の就業意識の変化に対応しつつその主体性を尊重し、個人が持てる力を発揮できる社会を実現していくことが必要である。
 労働契約や労働条件に係る制度について、労働基準法が制定以来労働条件の確保・向上に重要な役割を果たしてきたが、労働条件や解雇をめぐる紛争が多数生じていることを考えると、労働基準法も、経済社会や労使の要請に応えて変えていくことが必要となっている。
 すなわち、@労働者の能力や個性を活かすことができる多様な雇用形態や働き方が選択肢として準備され、労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大すること、A働き方に応じた適正な労働条件が確保され、紛争解決にも資するよう労働契約など働き方に係るルールを整備すること、Bこれらの制度の整備、運用に際しては、労使によるチェック機能が十分に活かされるようにすること等を基本的な視点として、労働契約の成立、展開から終了に至る制度、労働時間に係る制度等各制度の在り方の見直しを行うことが必要である。
 このような考え方に基づき当分科会おいて検討を行った結果は、下記のとおりであるので報告する。
 この報告を受けて、厚生労働省において、次期通常国会における労働基準法の改正をはじめ所要の措置を講ずることが望まれる。



T 労働契約に係る制度の在り方


1 労働契約内容の明確化

 労働市場をめぐる環境が変化する中では、労働契約係るルールや労働契約の内容が明確となっており、労働者及び使用者が予見可能性を持って納得した上で行動できるようにすることが重要であるが、このような明確化は、労働契約の終了に際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決に資するものと考えられることから、次のとおり、労働契約内容の明確化を図ることが必要である。

@ 就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」について、「解雇の事由」が含まれることを明らかにすること。
  この場合に、各事業場において解雇の事由が就業規則に適切に記載されるよう、現在、事業場において就業規則を作成する際の参考とするために作成している「モデル就業規則」について見直しを行い、その普及に努めることが適当であること。

A 使用者が労働契約の締結に際し書面の交付により明示すべき労働条件として、「退職に関する事項」に「解雇の事由」が含まれることを明らかにすること。


2 労働契約の期間

(1)有期労働契約の期間の上限について

  雇用形態の多様化が進む中で、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにしていくため、有期契約労働者の多くが契約の更新を繰り返すことにより一定期間継続して雇用されている現状等を踏まえ、有期労働契約の期間の上限について、現行の原則である1年を3年に延長するとともに、公認会計士、医師等専門的な知識、技術又は経験であって高度なものを有する労働者を当該専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務に従事させる場合及び60歳以上の高齢者に係る場合については、5年にすることが必要である。

(2)有期労働契約の締結及び更新・雇止めに係るルールについて

  有期契約労働者について適正な労働条件を確保するとともに、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇用形態として活用されるようにしていくためには、有期労働契約の締結及び更新・雇止めに際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにする必要がある。
 このため、労働基準法において、有期労働契約の締結及び更新・雇止めこ関する基準を定めることができる根拠規定を設け、有期労働契約を締結する使用者に対して必要な助言及び指導を行うこととし、当該基準においては、一定期間以上雇用された有期契約労働者に対して更新しない旨を予告すること等を定めることとすることが必要である。

3 労働契約終了等のルール及び手続


(1)労働契約終了のルール及び手続の整備について

イ 労働契約の終了が労働者に与える影響の重大性を考慮するとともに、解雇に関するる紛争が増大している現状にかんがみると、労働契約終了のルール及び手続をあらかじめ明確にすることにより、労働契約の終了に際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決を図ることが必要である。

ロ このため、労働基準法において、判例において確立している解雇権濫用法理に即して、使用者は、労働基準法等の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇できるが、使用者が正当な理由がなく行った解雇は、権利の濫用として、無効とすることとすることを規定することが必要である。
 この場合に、判例上の解雇権濫用法理が使用者及び労働者にこれまで十分に周知されていなかった状況があることから、この規定を設けるに当たっては、これまでの代表的な判例等の内容を周知すること等により、この規定の趣旨について十分な周知を図るとともに、必要な相談・援助を行うこととすることが適当である。

ハ また、解雇をめぐるトラブルを未然に防止し、その迅速な解決を図る親点から、退職時証明に加えて、解雇を予告された労働者は、当該解雇の予告がなされた日から当該退職の日までの間においても、使用者に対して当該解雇の理由を記した文書の交付を請求できることとすることが必要である。

ニ なお、上記ハと同様の観点から、上記1の@で述べたとおり、就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」について、「解雇の事由」が含まれることを明らかにすることが必要である。


(2)裁判における救済手段について

 解雇の効力が裁判で争われた場合において、裁判所が当該解雇を無効として、解雇された労働者の労働契約上の地位を確認した場合であっても、実際には原職復帰が円滑に行われないケースも多いことにかんがみ、裁判所が当該解雇は無効であると判断したときには、労使当事者の申立てに基づき、雇用関係を継続し難い事由がある等の一定の要件の下で、当該労働契約を終了させ、使用者に対し、労働者に一定の額の金銭の支払を命ずることができることとすることが必要である。
 この場合に、当該一定の金額については、労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額とすることを含めて、その定め方について、当分科会において時間的余裕をもって検討することができるよう、施行時期について配慮することが適当である。


(3) その他

 労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開を含め、労働契約に係る制度全般の在り方について、今後引き続き検討していくことが適当である。



U 労働時間に係る制度の在り方

1 裁量労働制の在り方

 労働時間を適切に管理する必要がある一方で、経済社会の変化に伴い、成果等が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加するなど、働き方が変化している状況にある。
 このような状況を踏まえ、企画業務型裁量労働制については、その導入、運用等に係る手続及び要件について必要な見直しを行うとともに、裁量労働制が働き過ぎにつながることのないよう、健康・福祉確保措置及び苦情処理措置が適切かつ確実に実施されるようにすることが必要である。


(1)企画業務型裁量労働制の導入、運用等の手続について

イ 企画業務型裁量労働制が、多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能するよう、その導入、運用等に係る手続については、制度の趣旨を損なわない範囲こおいて簡素化することが求められることから、次のとおり措置することが必要である。

 @ 労使委員会の決議を行うための委員の合意について、委員の5分の4以上の多数による決議で足りることとすること。
 A 労使委員会の委員のうち労働者代表委員について、労働者の過半数の信任を改めて得なければならない要件を廃止すること。
 B 労使委員会の設置について行政官庁に届け出なければならないことを廃止すること。
 C 健康・福祉確保措置の実施状況等の行政官庁への報告を簡素化すること。
 D 労使委員会の決議の有効期間に係る暫定措置(有効期間の限度を1年とするもの)を廃止すること。


ロ また、企画業務型裁量労働制については、対象業務を労使委員会で決議する仕組みとなっていることから、その対象事業場を現在対象となっている「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定しないこととすることが必要である。


ハ なお、時間外及び休日の労働等について、現在、労使協定に代えて労使委員会の委員全員による決議(協定代替決議)を行うことができることとされているが、この協定代替決議についても、委員の5分の4以上の多数による決議で足りることとすることが必要である。



(2) 健康・福祉確保措置等の充実

イ 専門業務型裁量労働制の適用を受けている労働者について、健康上の不安を感じている労働者が多い等の現状があることから、裁量労働制が働き過ぎにつながることのないよう、専門業務型裁量労働制についても、企画業務型裁量労働制と同様に、健康・福祉確保措置及び苦情処理措置の導入を要することとすることが必要である。

ロ また、裁量労働制に係る健康・福祉確保措置の具体的な内容の1つとして、働き過ぎにより健康を損なうことのないよう、必要に応じて、使用者に産業医等による助言・指導を受けさせることとすることを加えることが適当である。

(3) その他

  企画業務型載量労働制の在り方に関連し、労使委員会の在り方について、今後検討していくことが適当である。


2 適用除外について
 
 労働基準法第41条の適用除外の対象範囲については、上記1の裁量労働制の改正を行った場合の施行状況を把握するとともに、アメリカのホワイトカラー・イグゼンプション等についてさらに実態を調査した上で、今後検討することが適当である。



3 時間外労働の限度基準について

 時間外労働の限度基準(労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準)においては、労使協定の定めるところにより、限度時間を超えて労働時間を延長しなければなら特別の事情が生じたときに限り、限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができることとされているが、働き過ぎの防止の観点から、この「特別の事情」とは臨時的なものに限ることを明確にすることが必要である。



4 年次有給休暇の取得について

 年次有給休暇の取得が進まない実態の中、事業主が計画的に年次有給休暇を付与させることが、年次有給休暇の取得促進に有効であることから、計画的年休付与・取得の普及促進策を実施することが適当である。