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[資料番号] 00013
[題  名] ゆとり休暇推進要綱(平成7年7月中央労働基準審議会了承)
[区  分] 労働時間

[内  容]

ゆとり休暇推進要綱


(平成7年7月中央労働基準審議会了承)

第1 趣 旨

 労働時間の短縮は、我が国の経済的地位にふさわしい豊かな国民生活を実現し、ゆとりあるライフスタイルの定着を促進するために必要不可欠な課題である。平成4年に政府が策定した「生活大国5か年計画」においては、労働時間短縮のための施策の一つとして、「年次有給休暇の取得促進のため、連続休暇を取得する慣行など計画的付与制度の活用等により、その完全取得を目指すとともに、多様な休暇制度の普及に努める」こととされており、労働省においてもこれまで平成2年に策定した「連続休暇取得促進要綱」に基づき、年次有給休暇の完全取得のための取組を進めてきたところである。
 しかしながら、休暇を取り巻く状況をみると、三大連休の定着等の進展がみられるものの、年次有給休暇の取得の状況については、依然として不十分である。また、経済情勢の変化等に伴い、創造的で生産性の高い働き方と充実した自由時間をバランスよく組み合わせためりはりのある勤労者生活の実現が望まれている。
 このため、本要綱においては、前記「連続休暇取得促進要綱」を見直し、まず、休暇のもつ意義について明らかにし、その休暇の意義を十分に実現するために、これからの休暇の重点目標を定めるものとする。そして、その重点目標に沿った休暇を「ゆとり休暇」と位置づけ、この「ゆとり休暇」の推進について労使が自主的に取り組むべき事項を指針として示すとともに、これに関連して労働省の講ずる施策を定めるものとする。


第2 休暇の意義

 豊かさを実感でき個人が尊重される社会の構築と創造的・能率的な働き方の実現のために休暇の果たすべき役割が大きくなっておっ、休暇のもつ次のような意義を重視する必要がある。

 第1に、休暇中の活動について選択肢を広げ、企業外での個人の自由な活動を活性化することにより、多様な個性が発揮ざれ、かつバランスのとれた生活を実現することができる。
 第2に、休暇中の自由な活動がもたらす経験や視野の広さ、人的ネットワークの拡大は多様で独創的な人材の育成に寄与することから、休暇の質を向上させることにより仕事の質の向上を図ることができる。
 第3に、自分の職業生涯設計に合わせた自己啓発、健康づくり、会社外での人間関係の形成、生きがいづくりのために休暇を役立てていくことにより、労働者自らが主体的に「人生80年時代」を前提とした生涯設計をたてることができる。


第3 これからの休暇の重点目標

1 まとまった日数の連続した休暇の確保

 休暇の過ごし方を充実させるには、まずある程度まとまった日数の連続した休暇を確保する必要があり、長期の連続休暇を中心として、年次有給休暇の完全取得を目指す。また、平均20日程度となるよう付与日数の引上げを図り、その際、若年者や中途採用者にもある程度の日数の休暇を確保しつつ全体の量的水準を向上させる。

2 個人の希望を生かした休暇の音及

 休暇の集中のデメリットや好きな時期に休暇を取りたいという勤労者の二一ズを考慮して、一人一人が希望する時期に休暇を取得できるということを重視しながら休暇の普及・拡大を進める。

3 ライフスタイル、ワークスタイルに合わせた目的別休暇の普及

 年次有給休暇を中心とした各年の休暇のほかに、個人のライフスタイル、ワークスタイルに合わせた以下のような多様な目的のための休暇の普及を図る。
(1)職業生涯のある時期における教育訓練やリフレッシュなどを目的としたまとまった休暇
(2)ボランティア活動等社会活動のための休暇


第4 労使が自主的に取り組むべき事項に関する指針

 労使は、第3で掲げたこれからの休暇の重点目標を実現した「ゆとり休暇」を推進するため、次の措置を講ずるように努めるものとする。

1 休暇の意義についての積極的な認識

 休暇を勤勉さの対極とみるような考え方を改め、休暇の積極的活用は労使双方にとって有効であることから、休暇の積極的、創造的な意義についての認識が浸透するよう、労使が協力することが必要である。このため、企業のトップによる社内への呼びかけ、管理監督者による休暇取得の率先垂範、労働組合による企業、組合員への働きかけ等が行われることが必要である。特に使用者自らが責任をもって年次有給休暇の取得を促進する必要がある。

2 「年次有給休暇取得システム」の確立

 職場の上司や同僚に気兼ねすることなく年次有給休暇を取得するため、また、連続した休暇を取得するためには、職場で休暇の取得計画を作成することがもっとも効果的である。特に、今後、休暇に対する二ーズの多様化に対応しつつ年休の完全取得を実現するためには、各人の休暇取得予定を明示する方法によって休暇取得を進めていくことが適切であるとともに、この方式を実効あるものとするためには、年休の完全取得を前提とした業務体制の整備を図る必要があるほか、取得計画の実施状況のチェックも重要である。
 このため、以下の点を組み込んだ「年次有給休暇取得システム」を各企業において構築する。

(1)個人別年次有給休暇取得計画表の作成
 イ 休暇年度の初めに、各人の年次有給休暇の年間取得予定を明らかにした「個人別年次有給休暇取得計画表」を作成する。
 ロ この計画表の作成に当たっては、各人の年次有給休暇の取得希望時期をあらかじめ聴取し、取得時期を調整する。その際には、労働者が職場において同僚との調整を十分行った上で年休を取得できるよう、労働基準法第39条第5項に規定されている労使協定による年次有給休暇の計画的付与制度を活用することが有効である。
 ハ 計画表の作成に当たって、付与されている年次有給休暇のうち何日分を計画に組み込むかについては労使で調整する必要があるが、最低限、前年から繰り越されている日数についてはすべて計画に組み込む。加えて、新規に付与される日数についても、取得促進に資するよう可能な限り計画に組み込む。

(2)年次有給休暇の完全取得を前提とした業務体制の整備
(1)の方法により年次有給休暇を取得するには、それによって業務の支障が生しないよう、業務体制を整備することが必要である。このため、代行者への権限委譲、休暇取得を織り込んだ業務計画の設定、休暇取得者の業務をカバーできるような労働者の多能化、労働能率の向上等の取組を行う。

(3)労使による取得状況のチェックとフォローアップ
 イ 年次有給休暇の取得計画を実効あるものとするためには、各部門の長が年次有給休暇の取得状況を休暇管理簿等によって常時把握するとともに、その取得状況を給与明細へ記入すること等によりそれぞれの労働者へ通知する。
 ロ できる限り、労使一体となった委員会を設置して、年次有給休暇取得計画表の実行状況をチェックするとともに、取得の進まない労働者又はその各部門の長への働きかけ及び業務計画、要員計画が年次有給休暇の取得に無理がないかのチェック等を行い、強力に取得促進を進める。

3 その他の休暇取得促進策

 2のシステムによる完全取得促進のほか、各企業の実態や従業員の二一ズに応じて下記のような措置を講ずる。

(1)休暇の一斉又はグルーブ別取得
 個人別の年休の取得時期設定が困難な企業では、一斉年休又はグループ別年休の導入等により休暇の取得促進を図る。

(2)年次有給休暇の取得期間の見直し
 比較的休暇の取りやすい時期が年次有給休暇の取得期間の終了近くにあれば、病気等に備えて残しておいた年次有給休暇を集中的に取得できるようになると考えられるため、年次有給休暇の取得期間について見直しを行う。(例:夏季に取得しやすい場合には取得期間の開始を10月とする。)

(3)アニパーサリー休暇制度の導入
 職場への気兼ねなく、休みやすい休暇の設定方法として、アニバーサリー休暇制度(誕生日等の記念日及びその前後の日に休暇を取得する制度)等を導入する。また、各都道府県等において定めている記念日においては、小・中学校等が休みになるところがあり、可能な場合にはそれに併せて休暇を与える。

(4)未消化年休の活用等による病気休暇制度の導入
 やむを得ず取り残した年次有給休暇については、ただ失効させるのではなく、それを積み立てて、病気休暇等に利用できるようにする。

(5)半日単位での年次有給休暇取得の検討
 半日単位での年次有給休暇の利用について、業務上不都合のない職場では、連続休暇取得及ぴ一日単位の取得の阻害とならない範囲で、年次有給休暇取得促進の観点からその導入を検討する。

(6)下請企業、パートタイム労働者、派遣労働者等に対する配慮
 イ 下請企業、特に下請中小企業においても休暇の取得が進められるよう、親企業は、下請企業が一斉休暇を実施する場合には適切な納期を設定する等配慮する。
 ロ 年次有給休暇について比例付与がなされるパートタイム労働者については、比例付与される年次有給休暇が完全に取得されるよう、計画表の作成等一般労働者と同様の措置を講ずる。
 ハ 派遣労働者については、派遣元事業主が年次有給休暇を与える義務があるので、その取得促進を図るとともに、派遣先事業主も適切な配慮をする。
 二 また、6箇月未満の短期雇用者への有給休暇の付与についても、できる限り配慮する。

4 多様な休暇制度の普及・拡大

 各企業が労働者の二一ズに配慮した休暇制度を導入することが望ましいが、特に、以下の各制度については、その必要性が高まっていることから、その導入・拡大を進める。

(1)職業生涯の長期化・職務の高度化に対応したりフレッシュ、自己啓発のための各種休暇制度(リフレッシュ休暇、教育訓練休暇等)
(2)ボランティア活動等社会活動のための休暇制度(ボランティア休暇等)


第5 「ゆとり休暇」を実現するための労働省の施策

1 休暇の意義・あり方についての意識改革の推進
 この「ゆとり休暇推進要綱」について、説明会の開催や広報活動によりその周知徹底を図り、休暇の意義及ぴそのあり方についての意識改革の推進を図る。

2 ゆとり休暇の取得促進のための援助
 ゆとり休暇の取得促進を図るため、ゆとり休暇推進フェアを開催すること等により休暇の取得促進、休暇制度導入のためのノウハウや好事例の提供を行うなど、積極的に援助を行う。その際、休暇の取得状況が低い業種や中小企業には、特に配慮する。

3 充実した休暇を過ごすための環境の整備
 充実した休暇を過ごすためには、施設・設備などのハードや情報などのソフトなど休暇を過ごすための環境の整備を進めることが重要てあり、このため、安価・簡素な滞在型余暇施設等の整備、公的施設についての総合的な情報提供、余暇活動の情報提供等を進める。