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資料
職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について
建議
2002.12.26
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I 基本的な考え方 | ||
II 職業安定法関係 | ||
1 職業紹介事業の許可・届出制関係 | 許可制は、事業所単位から事業主単位に変更。商工会議所、農協等及び地方公共団体の無料職業紹介事業に道。 | |
2 有料職業紹介事業の手数料関係 | 求職者手数料の年収要件(1,200万円以上)の引き下げ | |
3 その他(職業紹介関係 | 兼業禁止規制の廃止など。 | |
4 労働者の募集関係 | 委託募集について、無報酬のものについては許可制から届出制に緩和。不合理な理由による年齢制限を行うことのないよう指導を徹底。 | |
III 労働者派遣法関係 | ||
1 派遣期間関係 | ・現行の1年の期間制限は見直し、個別事業場ごとに3年まで受入れ可能に。(1年〜3年の期間については、派遣先の都合に合わせ、派遣先が決定する。) ・「26業務」の3年の期間制限の廃止。営業や販売の26業務への追加は見送り(困難)。 |
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2 派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用の促進 | ・派遣期間の制限に違反する場合に、派遣元事業主は、派遣先と派遣労働者に派遣停止を通知.。この場合、引き続き就業させようとする派遣先は、当該派遣労働者に雇用契約の申込みをしなければならない。
・ 「26業務」について長期間(3年超)、同一派遣労働者を受け入れている派遣先が、同一業務に労働者を雇い入れるときは、当該派遣労働者に雇用契約の申込みをしなければならない。 |
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3 派遣対象業務の拡大 | ・「物の製造」の業務を派遣対象に。但し、一定期間、1年間の期間制限 ・社会福祉施設等における業務を派遣対象に。 |
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4 許可・届出制等関係 | 一般労働者派遣事業の許可制、特定労働者派遣事業の届出制は、事業所単位から事業主単位に変更 | |
5 紹介予定派遣関係 | (イ) 紹介予定派遣については、派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等を可能とする。 (ロ) 派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示を可能とする。 (ハ) 派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定を可能とする。 |
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6 派遣元事業主・派遣先の講ずべき措置関係 | 安全衛生管理体制の強化など | |
7 指導監督体制の整備 | 都道府県労働局での指導監督業務の集中実施 |
平成14年12月26日労審発第99号
厚生労働大臣 坂口 力 殿
労働政策審議会 会長 西川 俊作
職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について
本審議会は、標記について検討を行った結果、下記のとおりの結論に達したので、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、建議する。
記
別紙「記」のとおり。
※これに先だち、職業安定分科会民間労働力需給制度部会部会長から職業安定分科会会長あてに、さらに、同職業安定分科会会長から労働政策審議会長あてに、本「報告」がなされ、これを受けての厚生労働大臣への建議である。
〔参照〕
職業安定分科会委員名簿
民間労働力需給制度部会委員名簿
別紙「記」
職業紹介事業制度、労働者派遣事業制度等の改正について(報告)
I 基本的な考え方
現在、我が国は、経済のグローバル化、少子高齢化、情報通信技術革命(IT革命)等の構造的な環境変化に対応して、経済社会の構造改革を進めなければならない状況にある。職業紹介事業や労働者派遣事業等の分野においても、このような状況を踏まえ、我が国全体の労働力需給調整の強化を図るべく、必要な制度的手当てについて検討が求められている。
平成11年に、有料職業紹介事業の取扱職業や労働者派遣事業の対象業務の原則自由化等を内容とする職業安定法及び労働者派遣法の改正が行われて以来、職業紹介事業所数及び労働者派遣事業所数は大きく増加するなど、民間による労働力需給調整システムは大きな進展を見せてきている。また、働き方としての派遣労働は、労働者自身のライフスタイルに合わせた働き方を可能にするものとして一定の評価も定着しつつある。
近年の厳しい雇用失業情勢の中で、労働力需給のミスマッチの解消に向け、国はもとより、民間を中心とした多様な労働力需給調整機関が、それぞれの特性をいかし、より積極的に労働市場における役割を果たしていくことが求められている。また、経済・産業構造の転換や国際化の進展等に伴い、企業は、競争の中で日々変動する業務量に対応するため、労働力需要に迅速かつ的確に対応していかなければならない。さらに、個人の就業意識の多様化が進む中、仕事と生活のバランスのとれたライフスタイルを選択する傾向が若年層を中心に見られ、このような働き方に対応していく必要性が高まっている。また、派遣労働は雇用が不安定である等を指摘する声もある。
こうした実状を背景として、職業紹介事業、労働者派遣事業等に係る制度をより社会のニーズに応えられるものとしていくことが、現在求められている。
今回の見直しに当たっては、以上のような視点を踏まえ、厳しい雇用失業情勢の中、民間を中心とした多様な労働力需給調整機関が、労働力需給の迅速、円滑、的確な結合を図るために、労働市場においてより積極的な役割を果たすことが可能となるよう、労働者や求職者の保護の視点を持ちつつ、派遣労働者の雇用の安定及び適正な労働者派遣の確保、派遣元・派遣先責任等の在り方、常用雇用との調和にも配慮しながら検討を行った。その結果、具体的には以下の措置を講ずることが適当と考えられる。
労働者代表委員からは、(1)労働者派遣法の見直しに当たっては、適切なワークルールを確立するため、派遣労働者の保護と雇用安定化の措置の抜本強化として、時代の要請である均等待遇や派遣先雇用責任の強化が重要な課題であること、(2)また、これらの観点からは、本報告には問題がある点や慎重に検討すべき事項があることから、必要な対応・手当なしに全体として「以下の措置を講ずることが適当」であるとは認められないとの意見があった。
雇用主代表委員からは、規制緩和という時代の流れを背景として、事業規制は原則撤廃すべきであり、とりわけ、許可制、派遣対象業務、派遣期間等の諸規制については、制度の円滑な運用を可能とするよう、早急に見直すべきであるとの意見があった。
II 職業安定法関係
(1) 具体的な規制制度の見直しの視点として、「許可制から届出制への移行」について検討したところ、職業紹介事業については、有料、無料のいずれについても、不適格な業者の参入を排除することにより、事業運営の適格性を確保し、求職者の利益を保護する観点から、原則として許可制を維持することが必要であるが、現下の厳しい雇用失業情勢にかんがみ、民間を中心とした多様な労働力需給調整機関が、労働市場において、より積極的かつ円滑にその役割を果たすことが可能となるよう、以下の見直しを行うこととするのが適当である。
(@) 商工会議所、農協等特別の法律に基づいて設立された団体が、その構成員のために行う無料職業紹介事業については、当該団体の適正性が他の制度により確保されており、かつ、無料職業紹介事業の対象者が限定されていることにかんがみると、事業運営の適格性に問題が少ないと考えられることから、届出により機動的に行うことができるようにする。
(A) 現行の無料職業紹介事業の許可基準のうち、適正な事業運営の要件として定められている「申請者の存立目的、形態、規約等から必要かつ適当であると認められる範囲の職業紹介を行うものであること」という要件の「必要かつ適当である」という部分については、裁量行政の余地を縮小させる観点から必要な改正を行うものとする。
(B) 現在地方公共団体が行うことができないとされている無料職業紹介事業については、国と地方の二重行政となることのないよう配慮しながら、地域性の強い施策を展開する上で必要な職業紹介事業を行うことができるようにする。
(C) 職業紹介事業者が、その事業運営を機動的に実施できるよう、有料、無料のいずれについても、職業紹介事業の許可の単位を、事業所単位から事業主単位とし、事業所の設置については、届出制とする。
(2) なお、学校等が届出により行う無料職業紹介事業の対象者については、現在、学生若しくは生徒又は学校を卒業した者に限定されているが、業務の実状にかんがみ、委託訓練修了者等、学校を卒業した者に準ずる者を対象に追加することが適当である。
(1) 求職者からの手数料徴収については、現在、年収1,200万円以上の科学技術者・経営管理者から例外として徴収可能となっているが、求職者の実状等を踏まえ、年収に係る要件を引き下げるとともに、経営管理者、科学技術者の範囲について、より労働市場のニーズを踏まえたものとすることが適当である。
(2) 求人者からの手数料徴収については、現在、手数料表を厚生労働大臣に届け出ることとされ、厚生労働省令で定める上限額に満たない手数料を徴収する場合は届出が不要とされているところであるが、有料職業紹介事業者の業務の実状にかんがみ、現行どおり上限額に満たない場合は届け出ることなく手数料を徴収することができるようにすることが適当である。
(1) 求人・求職申込みの受理原則に関し、職業紹介事業者が取り扱う職種の範囲等の限定については、これを機動的に行いやすくするため、現行の申出に基づき厚生労働大臣が定める制度から届出制とすることが適当である。
(2) 有料職業紹介事業者の保証金制度については、利用実績がないこと等を考慮し、廃止することが適当である。
(3) 兼業禁止規制については、兼業禁止に係るILO勧告(第42号。1933年採択。)が、その後の状況の変化等にかんがみ撤回されたこと等を考慮して、これを廃止することとし、許可基準について必要な見直しを行うことが適当である。
(4) 職業紹介責任者については、業務を統括する者であることを明確にした上で、選任要件を見直すことが適当である。また、職業紹介責任者の変更手続の簡素化、職業紹介責任者講習の見直し(講習の有効期間の5年への延長、再講習について講習時間数の短縮)を図ることが適当である。
(1) 具体的な規制制度の見直しの視点として、「許可制から届出制への移行」について検討したところ、委託募集を行う事業主及び募集の委託を受ける者等については、いわゆる手配師による中間搾取等の弊害を排除し、労働者保護を図る観点から、その適格性を事前にチェックする必要があり、原則として許可制を維持することが必要であるが、無報酬で行う委託募集については、こうした弊害が少ないと考えられ、これを届出制で行うことができるようにすることが適当である。
(2) 厚生労働大臣による募集の制限、募集に応じた労働者からの報酬受領の禁止等の募集に係る規制については、適正な労働者の募集を担保するため、原則として維持すべきであるが、労働者の募集を行おうとする者が、通勤可能な地域から労働者を募集するよう努める旨を規定した募集地域の原則については、情報化の進展や交通事情が大きく変化した今日においては、法律上の努力義務規定として維持する意義が薄くなっていることを考慮し、これを撤廃することが適当である。
(3) 現下の厳しい雇用失業情勢の中、募集・採用において事業主が不合理な理由による年齢制限を行うことのないよう、雇用対策法及び告示(「労働者の募集及び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えることについて事業主が適切に対処するための指針」)に基づく指導の徹底を図ることが適当である。
(1) 派遣期間については、原則1年に制限されていることにより、結果的に派遣労働者の雇用が不安定となる面があること、また、派遣先にとっても、その処理すべき業務によっては期間が短く適切な対応ができない場合があることが指摘されている。
一方、平成11年の労働者派遣法改正の際の基本的な考え方である労働者派遣事業制度の「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」としての位置付け、及び、これに基づく派遣期間の一定の限定は、いわゆる長期雇用慣行の我が国における位置付けを踏まえると、今回の見直しにおいては、引き続き維持することが適当と考える。しかしながら、常用雇用との調和を図りつつ、派遣労働者や派遣先のニーズに的確に応える観点から、現行の一律1年という制限については見直すこととし、3年までの期間で臨時的・一時的と判断できる期間については、派遣を受け入れることができることとするのが適当である。
この場合、臨時的・一時的と判断できる期間は、派遣先の事業の状況等によって異なるものとみられることから、1年を超えても臨時的・一時的と考えられる期間であると判断できるかどうかは、個別事業所ごとに、派遣先の事業主が判断することとし、派遣先の事業主が当該事業所の労働者の過半数代表の意見を聴いた上で判断することが適当である。なお、この意見聴取の手続は、派遣先の事業主が自ら臨時的・一時的と考えられる期間を判断するに当たり、あくまでも現場の実情等を的確に把握するために、労働者の過半数代表の意見を聴くという性格を有するものである。
労働者代表委員から、1年を超えても臨時的・一時的と考えられる期間の判断に当たっては、意見聴取では不十分であり、労働者派遣を受け入れる場合を含め労使協議が必要であること、現在の経済・雇用状況を踏まえれば、常用代替防止の措置を併せて講ずべきとの意見があった。
雇用主代表委員から、上記の意見聴取の手続は、円滑な事業運営を妨げかねないことから、適切でないとの意見があった。
また、雇用主代表委員から、派遣期間の上限については、派遣労働者が希望する場合には、当事者の合意に基づく延長を認めるべきとの意見があった。
(2) 現行の1年の派遣期間の制限の対象外となっているいわゆる26業務のうち、専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務については、現在、合理的な理由なく、同一の派遣労働者について就業の場所及び従事する業務が同一の労働者派遣を、継続して3年を超えて行うことのないよう取り扱われているところであるが、派遣労働者の雇用の安定等を考慮し、2(2)に掲げる直接雇用の促進に係る措置の整備と併せ、この取扱いを廃止することが適当である。
また、営業や販売等の業務については、必要とされる知識、技術又は経験等の専門性のレベルは業務により様々であり、営業や販売を広く一般的に専門性の高い業務としていわゆる26業務と同様に取り扱うことは困難であると考えられる。このため、今後、これらの業務をいわゆる26業務に追加するかどうかを検討していくに当たっては、専門性などについて具体的に検討することが適当である。
労働者代表委員から、いわゆる26業務についての専門性の定義、根拠について整理をすべきとの意見があった。
(3) なお、短期間の雇用契約を反復更新することにより、派遣労働者の雇用が不安定になる面もあることから、(1)及び(2)の趣旨を踏まえると、派遣先及び派遣元事業主は、労働者派遣契約及び雇用契約の締結に当たり、派遣労働者の雇用の安定を確保するよう配慮することが望ましいと考えられる。
労働者代表委員から、上記趣旨が確保されるよう、より実効性のある措置を検討すべきとの意見があった。
(4) 現在、産前産後休業、育児休業及びこれらに先行又は後続する休業の期間を通算して2年を超えない期間内に終了することが予定されているものに限り、派遣期間の制限の対象外となっているが、介護休業及びこれに後続する休業も含め、これらの休業を取得する労働者の行う業務に労働者の派遣を行う場合は、常用雇用の代替のおそれが少ないことから、「通算して2年」等という制限を撤廃することが適当である。
(5) 月初や土日のみに必要となる業務等就業日数が限られている業務に対する労働者派遣については、当該業務に常用雇用労働者が配置されている可能性が少なく、常用雇用の代替のおそれが少ないと考えられることから、派遣期間の制限の対象外とすることが適当である。
(6) いわゆる26業務と現行の派遣期間が1年に制限されている業務とを併せて行う労働者派遣の場合(いわゆる「複合業務」)については、現在、1年の派遣期間の制限の適用があるものと取り扱っているところであるが、いわゆる26業務の実施に伴い付随的に行う場合であって、かつ、その割合が低い場合(例えば1割)には、26業務の遂行を円滑に行うことができるよう、派遣期間の制限の対象外とすることが適当である。
(7) 派遣労働者が派遣先における派遣就業に係る期間の制限を認識できるようにすることは派遣労働者のために望ましく、また、派遣期間の制限の規定を遵守させるためにも有用であると考えられることから、派遣元事業主は、派遣労働者に対して、派遣期間の制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないこととすることが適当である。
(1) 派遣先が1の(1)の派遣期間の制限に違反する場合には、派遣労働者の保護を図るため、派遣元事業主は当該派遣先及び派遣労働者に対し派遣停止を通知することとし、派遣停止の通知を受けたにもかかわらず当該派遣労働者をなお就業させる派遣先は、当該派遣労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならないこととすることが適当である。
(2) 派遣労働者の中には、派遣先に直接雇用されることを希望する者も一定程度おり、そうした派遣労働者に対し派遣先による直接雇用の機会をより多く確保することが必要である。具体的には、3年を超えて同一業務に同一派遣労働者を受け入れている派遣先が、当該業務と同じ業務に従事させるため労働者を雇い入れようとするときは、当該派遣労働者に対し雇用契約の申込みをしなければならないこととすることが適当である。
(3) 現行の派遣先による派遣労働者の雇入れ努力義務が発生する規定については、所要の整備を行うことが適当である。
労働者代表委員から、上記の趣旨が確保されるよう、より実効性のある措置を検討すべきとの意見があった。
(1) 現行制度において労働者派遣事業の適用除外業務とされている業務のうち、港湾運送業務、建設業務及び警備業務については、他法において特別の措置が講じられていること等から、引き続き適用除外業務とすることが適当である。
雇用主代表委員から、港湾運送業務、建設業務及び警備業務の適用については、引き続き検討すべきとの意見があった。
(2) 現行制度において労働者派遣事業の適用除外業務とされている医業等のうち、(1)病院、診療所、介護老人保健施設における業務、及び、(2)往診、訪問看護に関する業務については、派遣先が派遣労働者を特定できないこと等を考慮し、引き続き、適用除外業務とするが、社会福祉施設等における業務については、適用対象業務とすることが適当である。
(3) 経済・産業構造の転換や国際化が進展する中、相手先企業からの発注に迅速に対応するため、日々変動する業務量に応じ、労働力需要に迅速かつ的確に対応することへのニーズは製造業を中心により一層高まっている。
こうしたニーズを踏まえると、当分の間、適用除外業務となっている「物の製造」の業務については、製造業における臨時的・一時的な労働力需給を迅速に調整し、円滑な事業運営が可能となるよう、適用対象業務とすることが適当である。
なお、「物の製造」の業務に従事する労働者の就業の実情等を考慮すると、一定期間、「物の製造」の業務については、派遣期間を1年に制限することが適当である。
労働者代表委員から、(1)「物の製造」の業務の解禁を認めるに当たっては、労働者派遣法の実効を確保するために偽装請負に適正に対処する必要があることやものづくり施策を進める必要があること、(2)「物の製造」の業務及び医業等の解禁は慎重に検討すべきとの意見があった。
また、雇用主代表委員から、(1)「物の製造」の業務を解禁するに当たって派遣期間を1年に制限するべきではないが、仮に制限するとしても可及的速やかに他の業務と同様にすべき、(2)医業等は、社会福祉施設等における業務に限定せず解禁すべきとの意見があった。
(1) 具体的な規制制度の見直しの視点として、「許可制から届出制への移行」について検討したところ、一般労働者派遣事業については、労働者派遣事業の適正な運営の確保を図り、派遣労働者の就業条件を確保するため、派遣元事業主に一定の能力を担保する必要性があることから、引き続き許可制を維持することが必要であるが、許可制の下で、機動的な事業所の設置を可能とするなどの観点から、許可の単位については事業所単位から事業主単位とし、事業所の設置については、届出制とすることが適当である。
なお、「物の製造」の業務に労働者派遣を行う事業所については、当該事業所の把握等のため、当分の間、「物の製造」の業務に労働者派遣を行う旨、届け出るものとすることが適当である。
(2) 特定労働者派遣事業については、現在、事業所ごとの届出制となっているところであるが、複数の事業所で事業を行う場合には、事業者の負担を軽減する観点から、その手続を簡素化し、本社から一括して届け出ることを可能とすることが適当である。
なお、「物の製造」の業務に労働者派遣を行う事業所については、一般労働者派遣事業と同様に、当該事業所の把握等のため、当分の間、「物の製造」の業務に労働者派遣を行う旨、届け出るものとすることが適当である。
(3) 派遣先から派遣元事業主への通知及び派遣元事業主から派遣先への通知で、現在、書面によることとされているものについては、事業者の負担を軽減し、迅速な事業運営を可能とする観点から、ファックスや電子媒体による通知も可能とすることが適当である。
(1) 現在、紹介予定派遣については、職業紹介は派遣就業終了後にするものとされているが、派遣労働者の派遣先による直接雇用を実現させる制度としてより円滑に機能させるため、派遣就業終了前に職業紹介することを可能とすることが適当である。
具体的には、現在、(@)派遣就業開始前の面接、履歴書の送付、(A)派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示、(B)派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定ができないこととされているが、これは紹介予定派遣の円滑な運用を妨げている阻害要因として指摘されている。このため、次の(イ)から(ハ)までの措置を講じ、紹介予定派遣による派遣労働者の円滑な直接雇用を図ることが適当である。この場合、紹介予定派遣の期間を一定期間に制限することや派遣労働者の特定に当たっての差別禁止等について指針等で必要な措置を講ずることが適当である。また、紹介予定派遣を円滑に行うため、紹介予定派遣を行う際は、労働者派遣契約等でその旨を明らかにするとともに、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳にその実施状況等を記載することが適当である。
(イ) 紹介予定派遣については、派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等を可能とする。
(ロ) 派遣就業開始前及び派遣就業期間中の求人条件の明示を可能とする。
(ハ) 派遣就業期間中の求人・求職の意思等の確認及び採用内定を可能とする。
労働者代表委員から、紹介予定派遣については、基本的考え方として労働者の特定を禁止している「派遣労働」の例外としての位置付け、性、年齢等による差別禁止、競合面接(派遣先が複数人から派遣労働者の選定を行うこと)の禁止、派遣先における個人情報保護の措置を明確にすべきとの意見があった。
(2) (1)の(A)(派遣就業開始前の求人条件の明示は除く)及び(B)については、紹介予定派遣以外の派遣労働者の円滑な直接雇用を実現する上でも有益なものであることから、紹介予定派遣以外の労働者派遣においても可能であることを明らかにすることが適当である。
また、労働者の判断で行う派遣就業開始前及び派遣就業期間中の事業所訪問、履歴書の送付は可能である旨を指針等で明記することが適当である。
なお、(1)の(@)を紹介予定派遣以外の労働者派遣について認めることについては、引き続き、解禁のための条件整備等について、紹介予定派遣における(1)の(1)の派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等(派遣労働者を特定することを目的とする行為)の実施状況等を見ながら、慎重に検討していくことが適当である。
(1) 「物の製造」の業務への労働者派遣を可能とすることに伴い、安全衛生の徹底を図るため、派遣元責任者及び派遣先責任者の安全衛生に係る職務について所要の整理を行うことが適当である。具体的には、派遣元責任者及び派遣先責任者は、派遣労働者の安全及び衛生に関し、それぞれの事業所において必要な連絡調整を行うとともに、派遣元責任者は派遣先と、派遣先責任者は派遣元事業主と必要な連絡調整を行うこととし、派遣労働者の安全及び衛生が的確に確保されるよう措置することが適当である。
また、労働者派遣契約の内容として定めるべき事項である「安全及び衛生に関する事項」については、内容をより具体的に記載するようにしていくことが適当である。
(2) 「物の製造」の業務への労働者派遣を可能とすることに伴い、製造現場での就業の実情を考慮し、派遣労働者の適正な就業を確保するため、派遣労働者の雇用管理体制の一層の充実を図る必要があることから、「物の製造」の業務へ派遣された派遣労働者を担当する派遣元責任者と、それ以外の業務へ派遣された派遣労働者を担当する派遣元責任者とを区分して選任することが適当である。
また、同様に、派遣先における派遣労働者の就業管理体制の一層の充実を図る必要があることから、「物の製造」の業務に派遣された派遣労働者が一定数以上いる場合、当該派遣労働者を担当する派遣先責任者と、それ以外の業務に派遣された派遣労働者を担当する派遣先責任者とを区分して選任することが適当である。
(3) 派遣元事業主の負担を軽減する観点から、派遣元責任者の変更手続の簡素化、派遣元責任者講習の見直し(講習の有効期間の5年への延長、再講習について講習時間数の短縮)を図ることが適当である。
(4) 労働・社会保険の適用については、平成11年の改正により、派遣先が講ずべき措置に関する指針において、派遣労働者の労働・社会保険への加入を促進するため、派遣先が派遣労働者を受け入れる際に、その労働・社会保険への加入状況を了知し、未加入の者を受け入れないようにするなど、一定の適用促進のための仕組みが設けられているところであるが、これをさらに実効あらしめるための措置を検討することが適当である。
(5) 派遣労働者の福祉の増進を図るため、派遣元事業主は、業務を円滑に遂行する上で有用な物品の貸与や教育訓練の実施等をはじめとする派遣労働者の福利厚生等の措置について、派遣先において直接雇用されている労働者との均衡に配慮した取扱いが行われるよう努めなければならない旨、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針において明記することが適当である。
雇用主代表委員から、上記福利厚生等の措置の取扱いについては、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針で明記するまでもないとの意見があった。
(6) 各人の希望及び能力に応じた教育訓練の機会を付与することを通じ、派遣労働を派遣労働者にとってより良い雇用機会とするため、派遣労働者の教育訓練・能力開発について、派遣先は派遣元事業主が行う教育訓練や派遣労働者の自主的な能力開発等について協力すべき旨、派遣先が講ずべき措置に関する指針において明記することが適当である。
(7) 安全衛生等の措置を円滑に実施するため、派遣元事業主の責任である事項にあっても、例えば、雇入れ時の安全衛生教育について、派遣元事業主から派遣予定労働者の雇入時教育の実施の委託の申し入れがある場合には、派遣先はできるだけこれに応じるよう努めるものとすること等、派遣先が協力や配慮を行うことが適当又は望ましいと考えられる事項については、派遣先が講ずべき措置に関する指針において必要な措置を明記することが適当である。
(8) (1)から(7)に掲げるもののほか、派遣労働者の適正かつ円滑な派遣就業を確保するため、派遣先が派遣元事業主や派遣労働者に対し協力や配慮等を行うことが必要と考えられる事項等や派遣元事業主が取り組むべき事項等については、派遣先が講ずべき措置に関する指針や派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針において必要な措置を明記することが適当である。
また、本部会において問題提起のあった、派遣労働者に対する最低賃金の取扱いについては、今後、別の場で中長期的な視点から検討することが適当であると考える。
労働者代表委員から、派遣先の法定最低賃金をはじめ基本的雇用労働条件について、派遣先の通常の労働者の条件を下回ってはならないとする措置を検討すべきとの意見があった。
7 指導監督体制の整備等
「物の製造」の業務への労働者派遣を可能とすること等に伴い、労働者派遣事業を行う事業主、派遣先及び派遣労働者が増加することが予想される。特に、請負と労働者派遣の混在等が予想される製造現場においては、指導監督に万全を期す必要がある。このため、違法な労働者派遣の解消等のための指導監督業務の効率性、実効性を高める必要があることから、現在、職業安定行政において各公共職業安定所に分掌されている指導監督業務は、都道府県労働局において、専門的な職員の配置、相談員の活用等体制を充実・強化することにより対応することとし、併せて労働基準行政との連携のより一層の強化を図ることが適当である。また、労働者派遣事業適正運営協力員については、その設置の趣旨等を踏まえ、必要な運用の見直しを行うことが適当である。
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公益代表
大沢 真知子 日本女子大学人間社会学部教授
白井 晋太郎 (財)産業雇用安定センター理事長
白木 三秀 早稲田大学政治経済学部教授
○ 諏訪 康雄 法政大学社会学部教授
林 紀子 弁護士
樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
松本 斉 読売新聞社編集局次長
雇用主代表
内海 房子 NECソフト(株)執行役員
尾崎 睦 (株)上組代表取締役社長
紀陸 孝 日本経済団体連合会常務理事
田勢 修也 全国中小企業団体中央会専務理事
田沼 千秋 (株)グリーンハウス代表取締役
若狭 和治 敷島紡績(株)取締役
渡邊 邦幸 日産自動車(株)常務
労働者代表
池田 勇 全国建設労働組合総連合組織部長
市川 佳子 JAM社会政策局長
久保 直幸 ゼンセン同盟常任中央執行委員
石津 博士 NTT労働組合中央本部事務局長
堀 峰夫 日本私鉄労働組合総連合会中央副執行委員長
徳茂 万知子 全日本自治団体労働組合健康福祉局長
中村 善雄 日本労働組合総連合会雇用労働局長
注) ○=分科会長
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公益代表
岩田 三代 日本経済新聞社生活情報部長
鎌田 耕一 流通経済大学法学部教授
○ 樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
雇用主代表
田勢 修也 全国中小企業団体中央会専務理事
松井 博志 (社)日本経済団体連合会国際労働政策本部副本部長
※ 松永 良典 トヨタ自動車(株)人事部人事室長
山崎 登美子 ジュバンスコスム(株)代表取締役社長
(オブザーバー)
大原 博 (株)ビッグアビリティ代表取締役専務
労働者代表
池田 勇 全国建設労働組合総連合組織部長
磯部 行雄 日本労働組合総連合会雇用労働局次長
川畑 忠満 新産別運転者労働組合書記長
※ 相馬 末一 JAM参与
(オブザーバー)
中村 善雄 日本労働組合総連合会雇用労働局長
注) ○=部会長
※=専門委員