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[資料番号] 00134
[題  名] 許せぬサービス残業の横行−日本経済新聞1月23日社説から
[区  分] 労働基準

[内  容]



許せぬサービス残業の横行
日経新聞・社説から

 


【資料のワンポイント解説】



1 日本経済新聞が、横行するサービス残業に対して激しい糾弾調の社説を掲載した。
  要旨
  *労働基準法違反であり、長い目で見て働く人たちの健康や企業の生産性にも、様々な弊害が予想され見過せない問題である
  *経済団体など使用者側も是正に動くべきだ。「時間当たりの労働密度を上げるのはいいが、サービス残業は絶対にさせてはいけない。企業への信頼を失わせマイナスだ」
  *不公正にただ働きをさせるようなこそくなコスト削減策は認められない。


2 サービス残業の横行には様々な背景があるが、ここ数年において目に付くのは、リストラによる正社員削減の影響と、「皆がやるなら俺も」というどこまで行っても低次元な経営感覚の横行(はびこり)だ。
  (1) 最近のリストラには、仕事量が減少したためではなく、コストの削減だけが目的の正社員削減が目立つ。(処理すべき仕事量は減少していない。)
  (2) そもそも残業は、(派遣、パート等の)非正規従業員には馴染まない。
  、では、誰が処理するのか。当面リストラ対象から漏れた「正社員が」というパターンになっている。
  
  
3 話は多少それるが、最近はやりの「企業倫理の確立」。
  しかしながら思う。倫理は法治の上にあるやや崇高な理念だ。順法なくして倫理もあるまい。サービス残業(法令違反)を横行させている企業に、企業倫理の確立などあり得ようはずがない。
  留意すべきは、サービス残業問題が、多くの企業で人事部の手に負えない問題となりつつあることである。
  問題解決にはトップ自らが動く必要があると思われる。(・・・この問題では、(特に大企業の)トップがあまりにも実態を知らないことが多いようだし、仮に、知りうる立場にあっても、トップ自身の内心に、「・・そうは言っても」という感覚が払拭できないのだ、といった話を聞くことがある。)






資料

許せぬサービス残業の横行
(日本経済新聞2003年1月23日朝刊社説)

 

 割増賃金を払わずに時間外労働をさせるサービス残業が相変わらず横行している。実態が正確につかめないが、不況のため悪化している気配もある。労働基準法違反であり、長い目で見て働く人たちの健康や企業の生産性にも、様々な弊害が予想され見過せない問題である。

 昨年十二月に日本労働弁護団が全国で実施した雇用問題の電話相談にも、多くの相談が寄せられた。「深夜零時ごろまで連日働いているが、残業代は月五万円」(大手電機メーカー勤務三十歳代男性)。「朝十時から晩の九時、十時まで休憩無しで勤務して、残業代も払ってくれない」(ファミリーレストラン勤務二十五歳男性)。「残業代を払わない会社なんか辞めろ」と言ったが、息子は「不況でほかに行き場が無い」と我慢しているという親からの相談もあった。

 労基法は、一日八時間一週四十時間を超えて働かせるには、労働組合など従業員代表と協定し、労働基準監督署に届け出て、割増賃金を払わなければならないと規定している。
 当然順守すべきなのだが、サービス残業は様々な業種で半ば慣行化しているようだ。労働組合のある大手企業も例外ではなく、労働組合の連合が昨年実施した調査では、回答者の二人に一人がやっており時間数は月平均三十時間弱になる。

 厚生労働省は一昨年春から是正を労働監督行政の重点課題にしている。
 昨年九月までの一年六カ月間に是正を指導した企業は、六百十三社、対象人数は約七万一千人、支払われた割増賃金は総額八十一億円余りに上ったが、これは一部にすぎない。

 連合は「撲滅」を今春闘の一つの柱にしているが、容易ではなさそうだ。
 経済団体など使用者側も是正に動くべきだ。「時間当たりの労働密度を上げるのはいいが、サービス残業は絶対にさせてはいけない。企業への信頼を失わせマイナスだ」(安部修仁吉野家ディー・アンド・シー社長)と明言する経営者もいる。

 雇用形態が多様化しているので、柔軟な時間管理を認める裁量労働制を使いやすくして、規制を実態に合わせる施策も必要だろう。しかし不公正にただ働きをさせるようなこそくなコスト削減策は認められない。