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[資料番号] 00139
[題  名] 男女間の賃金格差解消のためのガイドライン H15.4.22
[区  分] その他

[内  容]


男女間の賃金格差解消のための賃金管理及び雇用管理改善方策に係るガイドライン



【資料のワンポイント解説】

1.厚生労働省の「男女間の賃金格差問題に関する研究会」が、昨年11月に報告をとりまとめた。同報告において、《男女間賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策に係るガイドラインを作成し、労使に提示、周知して、その普及を図ることが必要》」とされていたものを受けて、厚生労働省が作成し22日公表したガイドライン。

2.男女賃金格差の現状は、男性を100とした時に女性は66.5。
 ガイドラインの視点は、「男女間賃金格差は人材の配置、昇進、教育訓練、評価等の結果として現れる問題である」との認識を基本に、対策はこれらを踏まえた包括的なものであることが必要だとする。ガイドラインでは、
賃金管理の改善において、@公正・透明な賃金制度、A人事評価制度の整備、B生活手当の見直しの必要性のほか、雇用管理面での、ポジティブ・アクション、女性への業務の与え方・配置の改善、コース別雇用管理制度の運用の改善、ファミリー・フレンドリーな職場形成の促進などを取り上げている。

3.この種の「ガイドライン」方式による取組は、浸透・成果に限界があるとの指摘もなされている。しかし、この問題は、改めて、労使ともども真剣に考えみてはどうだろう。





男女間の賃金格差解消のための賃金管理及び雇用管理改善方策に係るガイドライン (H15.4.22)

第1 趣旨

 男女雇用機会均等法が施行されてから15年以上が、育児休業法(現在は育児・介護休業法)が施行されてから10年以上が経過した。その間、職場における女性の進出は着実に進展している。しかしながら、女性の平均賃金を男性のそれと比較すると、依然として大きな格差が存在する。我が国の一般労働者の所定内給与に関する男女間賃金格差を長期的に見ると、縮小する傾向にあるが、2002年度において、男性を100とした時に女性は66.5であり、国際的にみて格差は大きいのが現状である。

 男女間賃金格差の水準は男性と比較した女性の能力発揮の程度を総合的に示すものといえ、労使は、女性の能力発揮を促進する観点から、男女間賃金格差を女性の能力発揮度合いを示すバロメーターの1つとして捉え、格差解消に努めていくことが適切である。

 この場合、男女間賃金格差は人材の配置、昇進、教育訓練、評価等の結果として現れる問題であるため、包括的アプローチによる施策を展開する必要がある。

 このため、このガイドラインは、一般労働者の男女間の賃金格差解消のためるこ労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策を包括的に示している。




第2 労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策に係る事項


1 男女間賃金格差の実態把握とフォローアップ等

 企業において男女間賃金格差についての実態把握と要因分析を行うことが大切であり、それを踏まえて労使の間で男女間賃金格差の解消に向けた対応策の議論を行うべきである。この場合、女性労働者の参加等により女性の意見が議論に反映できるようにするのが効果的である。

 また、男女間賃金格差の実態について、定期的にフォローアップすることにより、必要に応じて対応策を最新の状況に応じたものとすることが求められる。

 なお、女性の意見の反映のためには、企業及び労働組合において、組織の幹部に女性を積極的に登用することが望まれる。



2 賃金管理における改善方策


(1) 公正・透明な賃金制度の整備

 個々の労働者の賃金決定で曖昧である賃金制度は男女賃金差別の温床となる。

  どの企業も公正かつ明確で透明な賃金制度の整備を進める必要があり、特に、賃金決定基準を明確化し、賃金表を整備することが求められる。

 また、労働者から男女間の賃金格差について説明を求められたり、不満が寄せられた場合には、十分な資料を示しつつ誠意をもった説明が必要である
 


(2) 公正・透明な人事評価制度の整備と運用

 どのような賃金制度であれ、個人別の賃金決定において人事評価は非常に重要である。不透明で曖昧な人事評価制度は賃金、昇進・昇格における男女差別の温床となり、その結果として男女間賃金格差が増幅されることになる。

 男女間賃金格差の解消を図るためには、公正・透明な人事評価制度の整備を進めることが重要である。人事評価制度の整備にあたっては、評価基準を明確で客観的なものにするとともに、公正かつ透明性の高い運用を確保するための評価者訓練や評価結果のフィードバック等が必要である。



(3)生活手当の見直し


 家族手当、住宅手当等の生活手当については、男女間賃金格差解消の観点からは、それが格差を生成するような支給要件で支払われている場合には廃止することが望ましい。

 労使双方、特に労働組合側に引き続き維持したいとの考えが根強いが、男女間賃金格差に影響しないよう、時間をかけてでも制度変更することが必要である。具体的には、男女間の賃金格差解消の観点からは、家族手当のうちの子どもに対する手当や佳宅手当を引き続き維持するとしても、配偶者に対する手当は廃止する等、両手当を出来るだけ縮小することが望ましい。

 この場合、生活手当の縮小・廃止に伴う影響を最小限に抑制するために、福利厚生施策面での対応や、賃金総額の引き下げにつながらないような措置を講ずる等により生活面への影響を緩和することが求められる。

 


3 雇用管理における改善方策



(1) ポジティブ・アクションの実践


 どの企業においても、女性が能力を最大限発揮できるようにするという姿勢で雇用管理を進めることが基本であり、影響力の大きい企業トップのイニシアティブはきわめて重要である。企業トップが先頭に立ってポジティブ・アクションを推進することが求められる。また、ポジティブ・アクソョンの実践においては、中間管理職の果たす役割が大きいことから、中間管理職の意識改革を図ることも大切である。
 
 ポジティブ・アクションにおいては、男女間賃金格差の生成に大きく影響している男女間の職階格差や勤続年数格差の縮小に取り組むべきであり、特に、職階格差縮小の観点からは、以下(2)(女性に対する業務の与え方や配置の改善)に取り組むことが、女性の勤続年数伸張の観点からは、以下(4)(ファミリー・フレンドリーな職場形成の促進)に取り組むことが求められる。


 
(2)女性に対する業務の与え方や女性の配置の改善

 業務の与え方については、これまで、難易度や重要度の低い業務、定型的な業務が主として女性に割り当てられたり、評価の低い職務に女性を多く配置することがよく見られてきたのが実態である。
 
 このようるこ偏った業務配分や配置を改善するためるこ、性にとらわれることなく個々の労働者の意欲や適性、職務遂行能力を基準とした配置を進めることや管理職研修に女性の能力発揮に配慮した業務の与え方に係る留意事項を含めることが求められる。また、労働者が希望職務や保有能力等を申告できる自己申告制度や、欠員ポストを補充する人材を広く社内で募集する社内公募制度、一定の条件を満たした社員が希望部署への異動を申告できる社内フリーエージェント制度の導入なども女性の配置改善に寄与するものである。
 
 さらに、ライセンス制度(職務に必要なスキルを明確にし、その職務につくためのスキルを持ったものに試験等でライセンスを与え、欠員が出た場合にはそのライセンス保持者の中から配置する制度)や、女性登用を念頭においた後継者計画(管理者が自分の後任候補者数名を所属部門長や人事部門に登録する際に、最低1名は女性とすることのルール化)等も有効と考えられる。



(3)コース別雇用管理制度及びその運用の改善


 コース別雇用管理制度について、男女間賃金格差の改善を図る観点から、コース区分決定方法など、制度そのものを点検することが大切である。
 
 特に検討が求められるのは、コース区分の決定を入社時に行うのではなく、採用後一定期間の職務経験後に労働者の意欲・能力・適性等に基づき決定すること、コース転換の円滑化のための措置の導入(一定の条件を満たす労働者の希望を実現するコース転換制度の導入、コース転換希望者に対する教育訓練の実施等)、転勤の有無によるコース設定がキャリア形成上真に必要であるかどうかの再検討である。
 
 なお、コース別雇用管理制度の内容について、労働者に対して十分な説明がなされることが望まれる。また、併せて、転勤があることが条件になっている総合職の男女労働者を含め、育児・介護休業法第26条により企業は転勤を命ずるに際し、育児や介護の状況に配慮すべき責務があることにも十分留意する必要がある。
 



(4) ファミリー・フレンドリーな職場形成の促進


 企業は育児・介護休業制度を利用しやすくするなどの職場環境の改善に努め、育児・介護を担うことの多い女性の仕事と育児等の両立の負担を軽減することが大切である。
 
 特に、成果主義賃金が広がりつつある中では、これまで以上に育児・介護等家族的責任を有する労働者に配慮した仕組みが求められる。具体的には、育児・介護休業取得期間中における復職に向けた企業情報の伝達や、スキルの陳腐化を防ぐための通信研修の提供、在宅勤務制度などが考えられる。
 
 また、依然として広くみられる恒常的残業を出来るだけ排除し、短時間勤務制度、フレックスタイム制などの活用を通じて柔軟な労働時間制度を採用するなど労働時間の面でも、家庭生活と職場生活が両立できるように努めることが必要である。