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は じ め に
I 今 般 の 司 法 制 度 改 革 の 基 本 理 念 と 方 向
第1 21世紀の我が国社会の姿
第2 21世紀の我が国社会において司法に期待される役割
1. 司法の役割
2. 法曹の役割
3. 国民の役割
第3 21世紀の司法制度の姿
1. 司法制度改革の三つの柱
2. 21世紀の司法制度の姿
(1) 国民の期待に応える司法制度の構築(制度的基盤の整備)
(2) 司法制度を支える法曹の在り方(人的基盤の拡充)
(3) 国民的基盤の確立(国民の司法参加)
3. 21世紀の司法制度の実現に向けて
II 国 民 の 期 待 に 応 え る 司 法 制 度
第1 民事司法制度の改革
1. 民事裁判の充実・迅速化
(1) 計画審理の推進
(2) 証拠収集手続の拡充
(3) 人的基盤の拡充
2. 専門的知見を要する事件への対応強化
(1) 専門委員制度の導入
(2) 鑑定制度の改善
(3) 法曹の専門性強化
3. 知的財産権関係事件への総合的な対応強化
(1) 総合的な対応強化の必要性
(2) 総合的な対応強化の具体的方策
4. 労働関係事件への総合的な対応強化
5. 家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実
(1) 人事訴訟等の家庭裁判所への一本化
(2) 調停委員、司法委員、参与員への多様な人材の確保等
(3) 簡易裁判所の管轄拡大、少額訴訟手続の上限の大幅引上げ
6. 民事執行制度の強化−権利実現の実効性確保−
7. 裁判所へのアクセスの拡充
(1) 利用者の費用負担の軽減
ア 提訴手数料
イ 弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い
ウ 訴訟費用額確定手続
エ 訴訟費用保険
(2) 民事法律扶助の拡充
(3) 裁判所の利便性の向上
ア 司法の利用相談窓口・情報提供
イ 裁判所等への情報通信技術(IT)の導入
ウ 夜間・休日サービス
エ 裁判所の配置
(4) 被害救済の実効化
ア 損害賠償額の認定
イ 少額多数被害への対応
8. 裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化
(1) ADRの拡充・活性化の意義
(2) ADRに関する関係機関等の連携強化
(3) ADRに関する共通的な制度基盤の整備
9. 司法の行政に対するチェック機能の強化
(1) 行政訴訟制度の見直しの必要性
(2) 司法及び行政の役割を見据えた総合的多角的な検討
第2 刑事司法制度の改革
1. 刑事裁判の充実・迅速化
(1) 新たな準備手続の創設
(2) 連日的開廷の確保等
(3) 直接主義・口頭主義の実質化(公判の活性化)
(4) 裁判所の訴訟指揮の実効性の確保
(5) 弁護体制等の整備
(6) その他(捜査・公判手続の合理化、効率化ないし重点化のために考えられる方策)
2. 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備
(1) 公的費用による被疑者・被告人の弁護制度(公的弁護制度)
ア 導入の意義、必要性
イ 導入のための具体的制度の在り方
(2) 少年審判手続における公費による少年の付添人制度(公的付添人制度)
3. 公訴提起の在り方
4. 新たな時代における捜査・公判手続の在り方
(1) 新たな時代に対応しうる捜査・公判手続の在り方
ア 刑事免責制度等の新たな捜査手法の導入
イ 国際捜査・司法共助制度の拡充強化
(2) 被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題
ア 被疑者・被告人の身柄拘束に関して指摘されている問題点への対応
イ 被疑者の取調べの適正さを確保するための措置について
5. 犯罪者の改善更生、被害者等の保護
第3 国際化への対応
1. 民事司法の国際化
2. 刑事司法の国際化
3. 法整備支援の推進
4. 弁護士(法曹)の国際化
III 司 法 制 度 を 支 え る 法 曹 の 在 り 方
第1 法曹人口の拡大
1. 法曹人口の大幅な増加
2. 裁判所、検察庁等の人的体制の充実
第2 法曹養成制度の改革
1. 新たな法曹養成制度の整備
2. 法科大学院
(1) 目的、理念
(2) 法科大学院制度の要点
(3) 公平性、開放性、多様性の確保
(4) 設立手続及び第三者評価(適格認定)
(5) 法学部教育の将来像
(6) 関係者の責務
3. 司法試験
(1) 基本的性格
(2) 試験の方式及び内容
(3) 受験資格
(4) 移行措置
4. 司法修習
(1) 修習の内容
(2) 給費制の在り方
(3) 司法研修所
5. 継続教育
6. 新たな法曹養成制度の円滑な実施に向けて
第3 弁護士制度の改革
1. 弁護士の社会的責任(公益性)の実践
2. 弁護士の活動領域の拡大
3. 弁護士へのアクセス拡充
(1) 法律相談活動等の充実
(2) 弁護士報酬の透明化・合理化
(3) 弁護士情報の公開
4. 弁護士の執務態勢の強化・専門性の強化
5. 弁護士の国際化/外国法事務弁護士等との提携・協働
6. 弁護士会の在り方
(1) 弁護士会運営の透明化等
(2) 弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備
7. 隣接法律専門職種の活用等
8. 企業法務等の位置付け
第4 検察官制度の改革
1. 検察官に求められる資質・能力の向上等
2. 検察庁運営への国民参加
第5 裁判官制度の改革
1. 給源の多様化、多元化
(1) 判事補制度の改革等
ア 判事補の判事への任命等
イ 特例判事補制度の解消
(2) 弁護士任官の推進等
(3) 裁判所調査官制度の拡充
2. 裁判官の任命手続の見直し
3. 裁判官の人事制度の見直し(透明性・客観性の確保)
4. 裁判所運営への国民参加
5. 最高裁判所裁判官の選任等の在り方について
第6 法曹等の相互交流の在り方
IV 国 民 的 基 盤 の 確 立
第1 国民的基盤の確立(国民の司法参加)
1. 刑事訴訟手続への新たな参加制度の導入
(1) 基本的構造
ア 裁判官と裁判員との役割分担の在り方
イ 裁判体の構成・評決の方法
(2) 裁判員の選任方法・裁判員の義務等
ア 裁判員の選任方法
イ 裁判員の義務等
(3) 対象となる刑事事件
(4) 公判手続・上訴等
ア 公判手続
イ 判決書
ウ 上訴
2. その他の分野における参加制度の拡充
(1) 民事司法制度
(2) 刑事司法制度
(3) 裁判官制度
(4) その他
第2 国民的基盤の確立のための条件整備
1. 分かりやすい司法の実現
2. 司法教育の充実
3. 司法に関する情報公開の推進
V 今 般 の 司 法 制 度 改 革 の 推 進
第1 司法制度改革の推進体制の整備
第2 今般の司法制度改革の実現に向けた内閣及び関係行政機関の取組等
第3 財政上の措置
お わ り に
4. 労働関係事件への総合的な対応強化
〇 労働関係訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標とし、民事裁判の充実・迅速化に関する方策、法曹の専門性を強化するための方策等を実施すべきである。
〇 労働関係事件に関し、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停を導入すべきである。
〇 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について、早急に検討を開始すべきである。
近年、社会経済情勢の変化に伴い、企業組織の再編や企業の人事労務管理の個別化の進展等を背景として、個別労使関係事件を中心に、労働関係訴訟事件は急増している(地方裁判所通常第一審新受事件数は平成元年の640件から平成11年の1802件に増加)が、これを大幅に上回る件数の相談が、労政事務所、労働基準監督署等の行政機関に持ち込まれている。
労働関係事件については、雇用・労使関係の制度や慣行等について、各職場、企業、あるいは各種産業の実情に基づき判断することが求められ、これを適正・迅速に処理するためには、科学・技術的専門的知見とは異なる意味で、そのような制度や慣行等についての専門的知見が必要となる。また、労働関係事件は、労働者の生活の基盤に直接の影響を及ぼすものであり、一般の事件に比し、特に迅速な解決が望まれる。ヨーロッパ諸国では、このような点をも踏まえ、労働関係事件についていわゆる労働参審制を含む特別の紛争解決手続を採用しており、実際に相当の機能を果たしている。
我が国においてもこのような労働関係事件の専門性、事件動向等を踏まえ、訴訟手続に限らず、簡易・迅速・柔軟な解決が可能なADRも含め、労働関係事件の適正・迅速な処理のための方策を総合的に検討する必要がある。
まず、労働関係訴訟事件(人証調べを行った事件に限る。)の審理期間をおおむね半減することを目標として、既に述べた、法曹の専門性強化、計画審理の推進、証拠収集手続の拡充等を図るべきである。
ADRについては、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停(制度設計に当たっては、(i)申立人の住所地での申立てを可能とすること、(ii)訴訟手続との連携を強化すること、(iii)調停の成立を促進するための仕組みを設けること等について、他の紛争解決手段との関係をも考慮し、検討すべきである。)を導入すべきである(なお、新たな個別労使関係事件の処理システムの設置を内容とする「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律案」が第151回国会<平成13年>に提出されているが、これと併せて、労働調停制度を導入し、多様な解決ルートを整備することは意義のあることである。)。
以上のような諸方策を円滑に実施に移すことに加え、労働関係紛争の予防、事件の適正・迅速な解決を実現していくためには、関係機関(関係省庁、裁判所を含む。)の協力・連携が不可欠であり、今後、これを一層強化することが望まれる。
特に、不当労働行為に対する労働委員会の救済命令に対し、使用者が取消しの訴えを提起する場合に生じうるいわゆる「事実上の5審制」の解消など、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方については、労働委員会の在り方を含め、早急に検討を開始すべきである。また、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度(ヨーロッパ諸国で採用されている労働参審制を含む。)の導入の当否、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否についても、ADRとの関係整理等も含め、早急に検討を開始すべきである。
(参考) 司法制度改革推進本部労働検討会における労働関係紛争のあり方についての論点項目(2002.11.25議事概要)等
労働検討会(第10回平成14年11月25日(月))議事概要
(司法制度改革推進本部事務局)
※速報のため、事後修正の可能性あり
議事 労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)中の「1 労働関係紛争処理の在り方について」の部分を中心に、次のような議論がなされた。(□:座長、○:委員)
(1) 論点項目についての検討
ア 労働関係紛争の動向等、労働関係紛争処理制度の全体像(1の(2)、(3))について
○ 諸外国では労働裁判所がほとんどの紛争を取り扱っているという指摘があったが、英国では必ずしもそうではない。相談を受け付ける行政機関やあっせん、調停等を実施するACASがあり、大きな機能を果たしている。
○ 我が国の行政機関においても、個別労働関係の民事紛争を労働局や労働委員会が取り扱うようになり、ADRは整備されてきている。労働紛争は、行政機関のADRを解体して全て裁判所が取り扱うべきということではなく、行政ADRの強化も必要であるし、扇の要としての裁判制度の強化も必要である。
○ 全ての労働紛争を裁判所が担当すべきかという問題提起の意味であり、労働紛争には多様な紛争があり、多様な紛争処理機関があることが望ましいことは十分理解している。その中で、裁判所の判定機能、ルールメイキング機能を十分発揮できるようにすることが必要である。
○ 裁判所の機能としては、ルールメイキング機能も重要だが、個々の紛争を迅速・適正に解決することも重要である。そのためには、仮処分と本案訴訟の二重構造の弊害、労使関係に関する専門的知見の導入について議論することが必要である。
○ 例えば、整理解雇の事案では、通常、弁護士のところに相談に来るまでにADRを経るなどして数か月かかる。その後、裁判で争う場合には、まずは仮処分を申請し、ある程度解決の方向性の目処を付けて、本案訴訟に臨むこととなる。ある事件では、仮処分は6〜8か月程度で処理され、解雇は有効とされたが、その後第一審で3年程度の審理の後、本案判決では解雇は無効とされた。
この事例からうかがわれるところは、本案訴訟はせめて1年以内に処理してほしいということと、仮処分は書面審理が中心で結論が不安定になりがちであるから仮処分と本案訴訟の二重構造の改善が必要だということである。
○ 現在の民事訴訟の構造を前提とすれば、仮処分と本案訴訟で判断が異なり得るのは仕方ないことである。両手続で主張や提出される証拠が異なれば、判断が全く同じになるとは限らない。両手続を一本化することについてはメリット、デメリットをよく勘案すべきである。
判決まで長期間かかることについては反省が必要であるが、当事者や代理人の訴訟活動にも問題があるのではないか。代理人の都合で次回期日の設定に1か月以上間があくこともあり、代理人に短縮の努力が求められる。将来的に法曹人口が増加することも改善の要因となるが、裁判所のみならず、当事者側でも改善に向けて努力する必要がある。
○ 解雇事件で本案訴訟の手続をすぐに利用することができない点に問題がある。ドイツのように、解雇事件について優先的に審理を行い、審理期間のタイムターゲットを定めて計画審理を行うようにする等の特則を設けることにより、本案訴訟が適正、迅速に処理される使いやすい手続とする必要があるのではないか。
○ 紛争の事前の自主的な解決システムの整備が重要だが、具体的にどのようにして企業内に定着させていくべきか。
○ 個人的な考えとしては、会社内に苦情処理機関を設置して労使で適正に運営していくことが望ましいが、労働組合の組織率の低下や中小企業ではそれだけの余裕がないことを考えると、困難であろう。法制度として、社内での苦情処理手続を前置するシステムを入れる必要があるのではないか。その上で、社内手続を経なかった場合には、裁判での利益衡量に際して一定の考慮をするようにしてはどうか。
○ 大企業では苦情処理機関は設けられているが、ほとんど利用されていない。それは、そうした苦情処理機関に紛争が持ち込まれる前に、労使間のコミュニケーション、信頼関係をベースとして、先輩や同僚が考えて答えを出していくからである。そこで得られる解決策が極めて妥当なものだと考えている。
経営者や管理者が企業内での紛争解決に意識を持って取り組むことが重要であり、苦情処理機関を法制度化しても解決にはならない。
○ 中小企業では、労使関係の現場の常識を無視するような企業があることを考えると、苦情処理機関を法制化してもどうなるものでもないのではないか。
また、苦情処理制度は一応あっても、成果主義等の人事政策のために企業の土壌が荒廃し、労使間の信頼関係が薄れてきている。また、雇用形態の多様化や派遣労働者の増加に伴い、組合に加入する者が急激に減少しているとともに、正社員の中の非組合員の比率も増大している。そのために、社内の紛争処理手続に乗らない労働者が増えてきている。
最近は、内部告発者の権利が議論されるなど、紛争を外部に持ち出すことに対する意識も変わってきており、企業における紛争の取扱についての社会の受け止め方の共通項を、ある程度時間をかけてもレベルアップしていくことが重要ではないか。
○ アメリカでは、オープン・ドア・ポリシーの下、社内の紛争処理手続を制度化し、ルールを明確化している。そのような制度が活用されている理由としては、あめの部分(紛争を内部的に解決することで生産性の向上に寄与し得ること等)とむちの部分(訴訟になった場合には弁護士費用や懲罰的損害賠償により大きなコストがかかること等)があると考えられる。また、社内での紛争処理を実施することで企業の責任が免除されるといった実体法上の手当てがされている例もあり、このことも影響しているのではないか。
○ 人間関係調整型の紛争解決は従来のように長期雇用を前提とした時代には機能したが、有期雇用など雇用期間が短くなってくると人間関係だけではすまなくなる。明確なルールを確立することが必要と考えている。
○ 雇用社会に法のルールを定着させることが重要であり、そのためには紛争処理制度全体の制度設計をして、紛争解決のルールが労使関係の現場にフィードバックされるようにする好循環を作っていく必要がある。参審制を導入して労使が自ら裁判に関与することにより、法のルールを社会に還元していくことが必要である。
○ 紛争の自主的な解決には、雇用の流動化等に伴い十分機能しなくなる面があるのではないか。また、自主的な解決というのは本当に公正な解決なのか。むしろ紛争を外部に持ち出す方が健全だとも言えるのではないか。自主的な紛争解決の重要性をあまり強調しすぎるべきではないようにも考えられる。
○ これまでは経済成長の下、企業も労働組合に助けられてきた部分がある。しかし、職場の価値判断基準が揺らいできている。企業社会と一般社会とをつなげる道筋を付けておくことが重要である。
○ 従来の労使関係は氏素性の同じ人々の間の関係であったが、雇用形態が多様化し、企業内に氏素性の異なる人が同居するようになってきた。多様な価値観が現れて摩擦も起きている。企業内のルールを社会のルールに合致させていくことが必要である。
□ 労働紛争の自主解決が難しくなりつつあり、紛争が外部へ出ていく傾向が強まり、行政のADR等に流れている。そうした中で、裁判の充実、強化も必要ということであろう。
イ 労働関係紛争処理における特殊性・専門性(1の(4))について
○ 労使関係の経験に基づいて養われる勘のようなものとはどのようなものか。
□ 労働委員会の公益委員としては労使委員から団体交渉の状況等を聴くことが非常に有益であった。労働関係に独特の専門的なセンスがあるのではないか。
○ 説明するのは難しいが、ある主張の当否については、法律の素養があって、社会生活の経験者であれば、ある程度の判断はできるが、それだけでは紛争の解決にならない判断の幅があるのではないか。例えば、組合に対する便宜供与の在り方、組合専従者の職場復帰の在り方、事前協議制等には判断の幅があり得、そこに勘が働く余地があるのではないか。
○ 例えば、労働委員会で労働者側委員は労働側の立場で関与するのだが、和解において、一般企業の常識に照らして労働者側の要求が過大であれば、それを説得するといったことがある。同業種の企業の間でも、いろいろと実情が異なり、また、時代の変化によっても労使関係の在り方が異なっていく中で、当該企業の事情について大方の察しがつくというのが一種の勘ではないか。
○ ある労働委員会の公益委員の話では、労使委員の話を聞いて目から鱗が落ちる思いがしたことがあるという。労使委員の様々な体験に裏打ちされた意見を聴くことで事件に対する洞察力が高まるということであった。イギリスの雇用審判所において聴いたところでも、労使の審判官の経験を基にして、よい判断ができるとのことであった。
労働関係に関する感覚とは、異なる様々な事案を経験していく中で帰納的に得られる経験則であろう。これがあって初めて一定の事実の評価を行えるようになるのだろう。我々は裁判官に理解してもらうために、制度や経緯について詳細で膨大な資料を出して主張立証することが必要であるが、こうした点は法曹だけでは十分に判断できないのではないか。
○ 専門的な経験則を当事者から主張立証するのが民事訴訟での原則である。労使双方が正当性を基礎付ける事実を主張することが必要である。それを踏まえて裁判所が判断するのである。このように事実認定の部分は、当事者の主張立証によるべきである。その資料がたとえ膨大になろうとも、ルールメイキングが必要な重要な事件では、ある程度時間をかける必要があるのではないか。事実認定に専門家を関与させると、ブラックボックスができるおそれがあるのではないか。
解雇事件等の優先的な審理については一つの考え方ではあるが、単に法令に規定するだけではなく、当事者が期日を入れられるようにする具体的な工夫等、具体的な対応策を考える必要がある。
○ 確かに労働事件は広い意味では民事事件ではあるが、一般の民事事件とは異なる感覚で見てほしい。立証に必要な資料は使用者側に偏在しており、立証責任の分配の問題も考える必要がある。
○ 労働事件に係る専門性を否定はしないが、特殊であることをあまりに強調する必要はない。また、証拠の偏在の問題は別途に考えるべき要素であろう。
○ 裁判の期日の日程の点については、弁護士としても反省して努力する必要がある。また、本人訴訟の場合、主張立証を全て当事者が行うべきであると言い切っていいかには疑問がある。
見出すべき労使の均衡点の在り方は、経済等の情勢の変動に伴い、数か月単位で変化していく。日常、労働関係の現場で体験している者から意見を聴く必要があるのではないか。
○ 具体的な事実関係は当事者が主張しなければならないが、規範的要件を判断する基準は経験則である。その点で法曹が提出できる部分には限界があるから、その判断基準には雇用社会の知見を導入すべきである。
事実認定についてブラックボックスができることはあり得ない。また、当事者に経験則についての立証責任を負わせることは適当ではない。
雇用関係は家庭と同様に社会の基礎的な単位であり、諸外国においても特別な訴訟手続が設けられているのは必然的な流れである。諸外国の制度の中からよい部分を我が国に移植すればよい。
○ 訴訟では、当事者の主張立証を踏まえて判決がされるのが原則である。実務上、微に入り細に入り主張立証がされているところである。
本人訴訟と代理人がつく場合を区別する必要はないが、法的な素養に違いがあるので、本人訴訟の場合にはある程度時間かけて事情を聴いて、それを裁判所でまとめることとしており、多少時間がかかるかも知れないが、本人訴訟にも十分に対応している。
ところで、一定の事実認定を前提とした上で、多様な要素をどう考慮して、どう総合判断をしていくかは悩ましいことがあるが、仮に労使を裁判に関与させるとして労使の判断は一致するものか。一致するとすれば、それは簡単な事件についてではないか。
○ フランスやイギリスでもほとんど一致していると聴いており、我が国でも一致するのではないか。
○ 集団的紛争では労使の一致は難しいかも知れないが、個別的紛争ではイギリスでも大体一致しているとのことである。
○ 価値観の対立にかかわる事件や新しい秩序形成に関するものでは労使の対立はあるだろう。しかし、ドイツにおいても、上級審は別として第一審では大体判断は一致している。
○ 労働事件においても、「通常はこういう風に進むが、この事件ではこの点が通常の流れとは異なる」といった点に注意すべきであるというような経験則があるのか。
□ 事件の内容は企業ごとに異なるので、個別の企業を超えた専門性はあるのか、また、企業のことは当事者や代理人が主張立証する必要があるのではないかといった論点が指摘されてきたところである。
ドイツの労働裁判所では、業界ごとに部を構成している。我が国ではそこまでは困難だが、業界を通じた専門性というものがあるのか。
○ 業種、企業規模、地域性、オーナー企業であるか否か等で区分すれば、大体分かるのではないか。均衡点をどこに落とすかについては、実際の体験のあるエキスパートを活用する必要があるのではないか。
○ 先に挙げた事件例で、本案訴訟で解雇が無効とされたのは、裁判所が労働者の生の声を聴いた上で判断したことが影響したのではないか。事件の本質を裁判所に理解してもらうために微細に立証することも必要なことがあるが、時間がかかるので、専門性を導入することで迅速に解決することができるようになるのではないか。
○ 経験則や総合的判断について、具体的にどのような場面で専門家を活用したらよいと考えているのか。法的判断の過程に導入するのか、事実認定に専門的な知見を補充する目的か。
○ 労使関係の慣行等が変化するのはそれなりの理由があってのことである。例えば、経営トップが変わり、その考え方によって職場に摩擦が生じていることもある。企業は権力機構であり、そうした事情があるのかどうかを見る必要もある。
○ どの場面に専門家を導入すべきかはさらに整理が必要であるが、事実のとらえ方、認識の仕方の部分であろうと考えている。また、労働の現場における法の支配を強化し、裁判所の機能を迅速化、強化するために、判断の過程に参加することも必要だろう。事件をどのように解決したらよいのかの振り分けの段階に参加することも望まれる。
○ フランスでは、労使の裁判官の意見がほぼ一致しているようである。判断機能の強化のために、参審制の導入が考えられる。
○ 諸外国の労働裁判で労使の意見が一致することが多いのは、何世紀にもわたる伝統があり、共通の基盤ができあがっているからではないか。こうした基盤の形成が十分でないと考えられる我が国で導入しても、労使の意見がすぐに一致するかは疑問に思われる。
□ その点については、話し合い解決を重んじるという日本的な基盤はあるのではないか。
○ ドイツの場合と比較して、我が国の裁判所に求められている社会的な意味が異なっているのではないか。我が国ではこれまで労使の対立構造の厳しい事件が主に裁判で争われてきたということはあると思う。しかし、今後個別的な紛争が増えてくると、そうした状況は変わっていくのではないか。さしあたり、我が国の第一審はドイツの労働裁判所の第二審に相当するようなイメージだったのではないか。
○ 確かに我が国の裁判所は、先鋭的な対立のある少数の事件を中心に扱ってきたところがあり、裁判所を利用するニーズはあっても十分に利用できていなかった。その結果、裁判所と労使やADRとの間の循環が断ち切られてしまったのであり、その間の連携が必要である。
○ どのような類型の事件に、どのような段階で専門家を関与させるのか、また、そうした人材がどの程度いるのかをトータルに議論しないと、制度を作っても現実には動かないのではないか。十分に実務を考えて議論してほしい。
□ 労働調停における専門性の導入の在り方についてはどうか。
○ 規範的な判断を行うための勘は、調整型の手続で主に必要となるので、労働調停においては、このような専門性の導入が有用ではないか。
○ 労働調停をどのような仕組みとし、どのような事件がどのくらい申し立てられるのかによって、専門家の関与の仕方はいろいろあると考えられる。
○ 10〜15年後にどの程度定着していくかは予測できないが、短期的には取扱件数は余り増えないのではないかと思う。行政のADRがいろいろとある中で労働組合の関係者が相談しようとする場合、まずは労政事務所や労働局、労働委員会に持ち込まれることとなろう。他方、使用者側は、労働委員会等に信頼感が低いので、裁判所の労働調停を利用した方が安心だと思うかも知れない。
○ 労働調停の利用度は手続の中身にもよる。相手方の出頭を確保できるかどうかや、調停に代わる決定の在り方等をどうするかも重要である。
○ 解雇事件には判定的側面と利益調整的側面があり、現行の民事調停制度が労働事件にほとんど用いられていない中で、労働調停を解雇事件で使えるか否かが重要である。訴訟での和解のように背景に強制権限があるわけではない調停手続では、合意に達することができず、時間が無駄になってしまうおそれもある。
また、労働調停活用の可能性のある分野としては、配転を争う場合等、労働契約関係が維持されながら争われる事件が考えられる。
○ 従来の民事調停の延長で考えるのであれば、手続に時間的な制約がなく、出頭も十分に確保できず、使いにくい。何らかの訴訟との連携を図るとともに、仮処分で処理されている事件の一部を取り込んでいけるような仕組みが必要ではないか。
○ 民事調停はあくまで互譲の手続であり、解雇事件で使えないと困ると言っても、調停になじまない解雇事件はある。話し合いで解決するのがふさわしい事件について、それにふさわしい手続を整備する必要がある。
○ 本人が申立を行うことができるよう、間口を広くするため、簡易裁判所で調停を扱うという形は維持すべきである。
○ ADRが行政機関で整備されており、労働調停では裁判所で行う手続として一味違う特色を出す必要がある。
○ 使用者側としては、解雇事件でも話し合いによる合意解決がほとんどであるから、労働局や労働委員会よりも、裁判所の労働調停が十分に整備された方がよい。
○ 労働局における紛争調整は、事務職員が事前に作成した書類を基に、2時間程度の期日1回だけで処理する非常に簡易な手続が原則である。したがって、ある程度詳しく事情を聴いてほしい場合等には労働局では十分に対応できない。行政のADRでは法曹の関与は少ないので、法的な解決という点での信頼性はそれほどではなく、過大に評価する必要はないのではないか。
(資料)
労働関係事件への総合的な対応強化に係る検討すべき論点項目(中間的な整理)
1 労働関係紛争処理の在り方について
(1) 労働関係事件への総合的な対応強化の意義
・司法制度改革の理念との関係等
(2) 労働関係紛争の動向等
・今後の経済社会の在り方
・労働市場の実態の変化,今後の雇用社会の在り方
・労働関係紛争の変化(集団的紛争から個別的紛争への移行,今後の紛争件数の推移等)
・雇用社会における法の役割,労働関係の実体法との関係
(3) 労働関係紛争処理制度(ADRを含む)の全体像。
ア労働関係紛争処理に係る基本的な制度設計の在り方
・公的紛争処理制度の役割
・司法と行政の役割分担
イ紛争の種類とその解決の在り方等
・紛争の種類(個別的紛争・集団的紛争,権利紛争・利益紛争,簡易な紛争・複雑な紛争,少額事件,賃金支払請求事件・解雇事件・差別事件等,法令の解釈の余地の広い事件(合理性,正当性等が問題となる事件)・狭
い事件、大企業と中小企業、組合の支援の有無、多数当事者事件、その他)
・紛争の種類ごとの解決の手法・在り方
ウ紛争の予防,自主的解決の在り方
・企業内での方策
・労働組合内での方策等
エ労働関係紛争処理における裁判所の役割
・裁判所における労働関係紛争処理の現状
・我が国において期待される裁判所の役割
・裁判所における処理が期待される労働関係紛争の種類やその比重(裁判所の人的,物的資源の配分の在り方)
オ各紛争処理手続・機関の相互の関係
・各紛争処理機関における労働関係紛争処理の現状
・裁判所と各紛争処理機関の役割分担各(機関の機能・特徴や長所・短所)
・裁判所における手続相互の役割分担(各手続の機能・特徴や長所・短所)
カ各紛争処理機関間の連携等
・裁判所,労働委員会,労働局,弁護士会等の連携の促進の要否等
(4) 労働関係紛争処理における特殊性・専門性
ア労働関係紛争の性質,特殊性
・特殊性の有無
・紛争の種類による相違点(個別的紛争・集団的紛争,その他)
・企業規模,業種等による相違点
イ労働関係紛争処理における専門性
・専門性の有無
・必要とされる専門性の内容,水準・程度(労働法・判例に関する知識,業界の状況・労使慣行等に関する知識・経験,紛争解決・調整の能力等)
・紛争の種類(個別的紛争・集団的紛争,その他)及び企業規模,業種等による相違点
ウ労働関係紛争処理における専門性の導入
@ 専門性の導入の必要性等
・導入の必要性の有無,導入の意義・目的
・導入のメリット及びデメリット
・各紛争処理機関における専門性の現状の評価
・各紛争処理機関に期待される専門性代理人等に期待される専門性 (法曹の専門性の強化)
・専門性の導入が必要な紛争の種類
・導入すべき専門性の内容,水準・程度,中立性・透明性
A 専門性の導入が必要な場面
・紛争の調整的解決の場(和解,調停等)への導入
・紛争の判定的解決の場(争点整理,判決等)への導入
B 専門性を有する人材の活用の必要性等
・専門性を有する人材の活用の必要性の有無(当事者・代理人からの主張・立証や裁判官による習得との関係)
・専門性を有する人材を活用するメリット及びデメリット
・専門性を有する人材を活用する場合における当該人材の性格(労使の代表者か,中立公平な第三者か)
・専門性を有する人材を活用する場合における当該人材の供給源(人数等,養成)
エ専門性の導入の形態
・労働調停制度(後掲2)
・雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度(後掲3)
・専門委員制度(※ 現在,法制審議会において検討中)
(5) 他の制度改善の検討の動きとの関係
ア民事訴訟手続の改正の動き(計画審理の推進,証拠収集手段の拡充,専門委員制度の導入,少額訴訟の訴額の上限額の引上げ)(※ 現在,法制審議会において検討中)
イ不当労働行為審査制度の在り方に関する検討の動き(審査手続の迅速化,司法審査との関係,その他)(※ 現在,厚生労働省において検討中)
(6) その他
・大都市圏と地方での相違点等
2 導入すべき労働調停の在り方について
(1) 労働調停に求められるもの(労働調停の機能・効果)
・現行の民事調停制度の現状と評価(労働関係事件での利用が進んでいない原因等)
・専門性(内容,水準・程度)
・簡易・迅速性(調停手続に要する期間・回数紛争処理全体に要する期間、訴訟における和解との関係)
・実効性(訴訟の判決との関係)
・対象となる紛争(個別的紛争か集団的紛争も含めるか,権利紛争か利益紛争か,通常の民事調停との選択の可否等)
(2) 管轄の在り方
・事物管轄(簡易裁判所とするか,地方裁判所とするか)
・土地管轄(申立人の住所地での申立てを認める必要性の有無等)
(3) 雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する調停委員(以下「専門家調停委員」という)の在り方。
ア専門家調停委員の性格,役割等
・期待される役割(当事者間の調整、専門性の導入、当事者の主張の補充)
・専門家調停委員に必要とされる専門的な知識経験,能力の内容,水準・程度(紛争の種類による相違点)
・専門家調停委員の性格(労使の代表者か,中立公平な第三者か)
・専門家調停委員の権限
・専門家調停委員に必要とされる倫理,義務
イ専門家調停委員の任免の在り方
・専門家調停委員の選任方法,選任資格,欠格事由,報酬等
ウ個別の事件に係る専門家調停委員の指定の在り方
・担当調停委員の指定の方法(当事者の意向の反映等),調停委員会の人数・構成,除斥・忌避制度の要否
エ専門家調停委員の供給源等
・専門家調停委員の供給源,養成
・専門家調停委員に対する研修
(4) 調停前置の要否
・調停前置のメリット及びデメリット
・調停前置とする場合における対象範囲(個別的紛争,集団的紛争,多数当事者事件,少額事件等)
(5) 訴訟手続との連携
ア調停手続の開始段階
・付調停の活用(付調停に適する事件の種類,付調停に当たっての事件の振分けの在り方,付調停についての具体的な要件・手続)
・訴訟手続の担当裁判官の調停手続への関与の当否
イ調停手続の終了段階
・調停不成立の場合の取扱い(調停手続で提出された資料の取扱い等)
(6) 調停手続の在り方
ア調停手続の進行
・当事者の説得,調停案の提示等,労働関係事件の特性に応じた効果的な手続の進め方
イ調停の成立を促進するための仕組み
・調停の成立を促進する仕組みの強力さの程度
・現行法上の各種制度(調停に代わる決定の活用等)
(7) その他
・一定の事件の優先的な取扱いの要否
・他の紛争処理制度との関係(連携の要否等)
3 雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否について
(1) 裁判への専門的な知識経験の導入
ア専門的な知識経験の導入の必要性等
・導入の必要性の有無,導入の意義・目的(専門委員制度や司法委員制度による専門的な知識経験の導入との関係,我が国の労働関係紛争処理全体の中での訴訟の位置付け,民事訴訟事件全体の中での労働関係訴訟事件の位置付け,専門的な知識経験の導入に係る歴史的・社会的背景等)
・導入のメリット及びデメリット
・労働関係訴訟事件についての現状と評価
・導入が必要な事件の種類
・導入すべき専門的な知識経験の内容,水準・程度
イ専門的な知識経験の導入の方法
・当事者・代理人からの主張・立証,裁判官による習得による対応
・外部の人材(以下「専門家」という)の活用の必要性の有無。
・専門家が関与することのメリット及びデメリット
(2) 導入する場合において,専門家の関与の在り方等
ア関与の形態
・専門家が評決権を有する場合(いわゆる参審制度)
・専門家の意見が聴取される場合(いわゆる参与制度)
・専門委員制度(※ 現在,法制審議会において検討中)
イ関与する専門家の在り方等
@ 専門家の性格等
・専門家の性格(労使の代表者か,中立公平な第三者か)
・専門家に必要とされる専門的な知識経験、能力の内容、水準・程度(紛争の種類による相違点)
・専門家に必要とされる倫理,義務
A 専門家の供給源等
・専門家の供給源,養成
・専門家に対する研修
ウ具体的な制度の在り方
・憲法との関係
・専門家の役割,関与の場面(意見陳述,和解,争点整理,判決)
・専門家の関与する事件の範囲(個別的紛争か集団的紛争か,権利紛争的側面か利益紛争的側面か,通常の民事訴訟との選択の可否,当事者の意向の反映等)
・専門家の選任方法,選任資格,欠格事由等
・手続の利便性,迅速性の確保
(3) 導入する場合について,他の制度との関係
・労働調停制度(前掲2)との関係
・個別労働関係紛争処理制度との関係
・労働委員会制度との関係
(4) その他
4 労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について
(1) 労働関係事件の性質と訴訟手続の在り方
・労働関係訴訟事件の意義(対象となる紛争の明確化,民事訴訟事件全体の中での労働関係訴訟事件の位置付け)
・労働関係訴訟事件の処理に求められるもの
・労働関係訴訟事件における民事訴訟手続の現状と評価
・仮処分手続と本案手続の二重構造の当否
(2) 民事裁判の充実,迅速化(※ 現在,法制審議会において検討中)
・目標とされるべき審理期間(紛争の種類ごとの目標,訴訟上の各段階までに要する期間・時期等,適正手続とのバランス,和解との関係)
・審理の遅延の原因と対応策
・計画的な審理の在り方(審理計画の策定,民事訴訟法の特則の必要性の要否)
・事件の振分け(迅速に判決を目指す事件と和解的な解決を目指す事件の振分け及びその手続の在り方)
・証拠の偏在への対応
(3) 裁判へのアクセスの在り方
・定型訴状の活用等
・訴訟費用,弁護士報酬,訴訟代理の在り方等
(4) その他
・少額訴訟手続の活用(※ 現在,その訴額上限について法制審議会において検討中)
・仮処分手続の在り方(証拠調べの在り方)
・単純な事件を処理するための簡易な訴訟手続の要否
・一定の事件の優先的な取扱いの要否
5 労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について
(※ 現在,労働委員会の審査手続について厚生労働省において検討中)
(1) 労働委員会の救済命令に対する司法審査制度の現状と評価
ア労働委員会制度の意義・目的と司法審査制度の役割
・判定的機能と調整的機能の関係
・準司法的機能と政策形成機能の関係等
イ労働委員会制度の現状等
・労働委員会の審査手続等(証拠調べ,事実認定,認定事実の評価,判断の公正さ等)
・労働委員会制度に対する信頼性(救済命令の取消率等)
・労働委員会の体制(公益委員,労使委員,事務局,委員の非常勤制)
ウ「事実上の5審制」の問題状況
・「5審制」によって生じている不都合の内容・程度(審査の遅延等)
・労働委員会手続,訴訟手続における運用改善の取組の実情等
(2) 救済命令の司法審査段階における審級省略の当否
・司法審査段階における審級の利益についての考え方
・不当労働行為事件の処理の迅速化(労働委員会における迅速化の方策(事件の振分け,再審査制度の在り方等,裁判所における迅速化の方策等) )
・司法審査段階における審級省略のメリット及びデメリット
(3) 救済命令の司法審査において実質的証拠法則を導入することの当否
・実質的証拠法則の意義・内容(審級省略との関係,他の制度での実情等)
・実質的証拠法則のメリット及びデメリット
・実質的証拠法則を導入する場合における対象とすべき命令の範囲等(中央労働委員会の命令と地方労働委員会の命令についての同様の取扱いの可否等)
(4) 救済命令の司法審査において新主張・新証拠の提出制限を導入することの当否
・新主張・新証拠の提出制限の意義・内容
・新主張・新証拠の提出制限のメリット及びデメリット
(5) 司法審査上の特則を導入する場合の条件整備
・労働委員会の審査手続の充実,強化(争点整理,計画審理,宣誓,審問時の秩序維持,命令書における証拠の摘示等,訴訟手続と比較した審査手続及び事実認定の厳格性・適正性の確保)
・労働委員会の体制の充実,強化(事務局,公益委員等)
(6) その他
・緊急命令制度の在り方