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○中山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省高等教育局長遠藤純一郎君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、労働基準局長松崎朗君及び経済産業省大臣官房審議官桑田始君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。
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○中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水島広子君。
○水島委員 民主党の水島広子でございます。
本日は、この労働基準法改正に関しまして、主に有期雇用の部分についての質問をさせていただきたいと思っておりますので、大臣、どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず初めに、有期雇用というものに関しての大臣の全体的な認識をお伺いしたいと思います。
坂口大臣は、五月六日の本会議におきまして、有期契約労働者の多くが契約の更新を繰り返すことにより一定期間継続して雇用されている現状等を踏まえ、上限の延長を行おうとするものであり、これにより、有期労働契約により働く労働者においては、三年の契約締結が可能となることにより労働者の雇用の選択肢が拡大し、雇用の安定が図られ、長期的視点からの能力やキャリア形成が可能となるといったメリットがあると、そのメリットについて答弁をされているわけでございます。
では、坂口大臣は、上限を延長することについてのデメリットはどのようなものであると考えられているでしょうか。
○坂口国務大臣 おはようございます。
有期労働契約期間の上限延長に伴うデメリットについてお話がございましたが、現在いろいろ懸念をされておりますことは、一つは、期間の定めのない労働者にかえて有期契約労働者を雇用したり、有期労働契約が事実上の若年定年として利用される可能性があるのではないかというのが一つ。それからもう一つは、一年を超えるようなより長期の有期労働契約を締結した場合には、契約期間の途中でさまざまな事情の変化が起こる可能性が高いにもかかわらず、そのような場合にも中途解約ができずに、不当に労働者が拘束されるおそれがあるのではないか。この二つのことが懸念として示されているというふうに思っております。
過去のいろいろの裁判例等を見ましても、この辺につきましてはさまざまな角度からの最高裁あるいは高等裁判所等からの判決も出ておるところでございまして、かなりこの辺も整理をされてきているというふうに思っている次第でございます。
○水島委員 判例においてはかなり整理されてきているという御認識であるわけですが、今大臣が懸念される点として挙げられた点については、まさに私も同感でございます。本日、ぜひこの質疑の中で、その点について、大臣がその懸念をどのような形できちんと措置されているかということを明らかにしていっていただきたいと思っております。
そもそも、大臣はこの有期雇用というものに関しては望ましい雇用形態と考えていらっしゃるでしょうか、それとも、あくまでも例外的な雇用形態というふうに考えておられるでしょうか。
○坂口国務大臣 どのような雇用形態によって労働契約を締結するかということは、これは労使双方が労働条件などのさまざまな要件を考えて選択をし、締結をするものでありますから、雇用形態がどれがいいということを一概に言うことはなかなか難しいというふうに思います。
しかし、最近の状況を見ますと、みずからの専門的能力を生かして働きたいという労働者の意識の高まりというのも、今までに比較をいたしますと大きくなってきているというふうに思います。また、労働者の転職希望率というのも、これもまた高まっておりまして、終身雇用や年功賃金に関する意識変化というものがあることも御承知のとおりでございます。
このような状況の中で、転職を繰り返す中でキャリアアップを図りたい、そういう方もございますし、あるいはまた、自分の専門的知識を生かして働きたい労働者にとって、有期労働契約がメリットの人もおみえになる。
ただし、そうはいいますものの、そういう労働者ばかりではありませんから、有期労働ということによってマイナスになる可能性の方も私は率直に言ってあるというふうに思いますから、そういう皆さん方に対してマイナス面をより少なくしていくという努力が必要ではないかというふうに思っております。
○水島委員 確認をいたしますけれども、つまり、有期雇用という形で働きたいということを進んで希望する方には、当然、有期雇用という制度があるべきであるけれども、有期雇用という形を望まない人にとっては、やはりこの有期雇用が実質的に働き続ける唯一の手段となることはできるだけ防いでいかなければいけないというような御認識ということでよろしいでしょうか。
○坂口国務大臣 常用雇用というのが決してなくなるわけではございません、これからも続くものというふうに思っておりますし、経済の動向によりましては、企業の側も常用雇用というものをもっと重視する可能性もございます。したがいまして、常用雇用を希望される方はやはりその道をできるだけ選ばれる、そういう選択が十分にできるような体制というのをつくっていかなければいけないというふうに思っている次第でございます。
○水島委員 そういう御認識であれば、安心して質問を続けさせていただきたいと思います。
今回、この法改正をするに当たりまして、有期雇用の緩和に関するニーズがあったということを言われております。これはどういう調査結果に基づいておっしゃっているのでしょうか。もちろん、規制改革委員会ですとか総合規制改革会議等の議論で経済界には有期労働契約の期間延長の要望があるということは私も承知しておりますが、労働者側からも積極的に要望があったのでしょうか。
○松崎政府参考人 今回の見直しを検討するに当たりましては、御指摘のように、ニーズ調査といいますか、いろいろ調査をいたしました。これは、こういった制度ができました後、平成十一年にも行いましたし、また直前の十三年にも行ったわけでございますので、その関係部分について御紹介させていただきたいと思っております。
まず、御本人、働いている方の調査でございますけれども、まず平成十三年の調査結果によりますと、これは労働者御本人の調査でございますけれども、正社員でない理由と、有期を選んだ理由、そういった質問に対しましては、あなたの希望、都合といいますか、本人の希望、都合というのが四十何%ということで、断トツに多いという。その理由としましては、期間終了後にやめられるとか、また個人的な事情で正社員として働けないといった事情から、自分の都合でというのが断トツに多くなっております。
またそういった中で、では、具体的にもっと契約期間について長い方が望ましいかどうかということについても伺っているわけでございますけれども、これについては、もっと長い契約期間が望ましいという方が、これは三八%ということで、これはもっと短い方がいいというのは二%以下でございますし、大体今のが現状に合っているというのが多いわけでございますけれども、やはり長い方がいいという方も多いわけでございます。その理由としましては、生活が安定するからといった理由を挙げておられます。
また、実態を調べたところ、契約の更新、そういったものを繰り返すことによりまして、実際には一年以上働いている方が多いわけでございますけれども、平均を見てみますと、これは十一年の調査でございますけれども、平均大体六・一回更新をして、平均の勤続年数、継続の勤続年数は平均四・六年という実態になっております。
さらに、同調査でございますけれども、雇用形態自体につきましては、やはり契約を更新したいという希望を持っておられる労働者の方が六六%ということで、正社員として雇用してもらいたいという方は一割弱という状況でございます。
こういったように、労使とも、この有期契約の部分につきまして、契約延長というものについてそれぞれ一定のニーズがあるというふうに考えているところでございます。
○水島委員 これは大臣にお伺いしたいんですけれども、私もそれらの調査、実は拝見いたしました。そして非常に乱暴な議論だなと思いました。今働いている人たち、特に私生活でいろいろなことを抱えながら働いている人たちにとっては、契約で働くのであれば、ある程度働きやすい時間帯に働けるし、それ以上、転勤をさせられたりとか私生活への侵害がないというふうに感じられているわけです。
一方、いろいろなアンケートの選択肢を見ますと、正社員に登用されたいとか、そういう選択肢があります。登用という言葉、やはり今よりも非常に条件の厳しいところに、責任の重いところに任用されるというふうな印象を私自身も持ちます。つまり、それらの結果から言えることは、今の労働条件であれば働き続けたい、ただ、今よりもいろいろな犠牲を強いられるような形では働きたくない、そのような意思のあらわれを読み取ることができるのではないかと思うんですけれども、こういう調査をされるときに、どうして今と同じような労働条件で正社員として働ける場があれば正社員になりたいという選択肢を入れられないんでしょうか。そういうアンケートが必要だと思いますけれども、大臣はいかが思われますでしょうか。
○鴨下副大臣 先生おっしゃるように、例えば、正社員に登用してもらいたいんだけれども、さまざまな条件が過重になるというようなことでちゅうちょする、こういうような御趣旨なんだろうと思いますが、各企業における人事労務管理上、必ずしも、正社員であれば例えば転勤等が伴うとか、こういうような取り扱いになっているわけではないんですね。ただ、いろいろな意識の中には、ある程度会社との距離感の問題がそれぞれの個人によって違うんだろうというふうに思いますけれども。
回答者が、正社員となることで転勤等があるから、だから考慮して正社員になることをある意味で遠慮するとか、ちゅうちょするとかというようなことで割合が低くなっているというようなことは必ずしも言えないんじゃないかなというふうな理解はしているわけでありますけれども、正社員に登用してもらいたいという割合について、これはいろいろな条件があるので、また調査をしても同じようなことがまた問題として出てくるんではないかというふうに今の段階では考えております。
○水島委員 今副大臣は、必ずしもそう言えないんじゃないかとおっしゃったんですけれども、その根拠をきちんと示すとすれば、先ほど申し上げたように、今の労働条件で正社員として働ける場があるんだったら正社員として働きたいかというようなことを聞いて初めてこのデータとのずれが言えるんじゃないかと思いますので、ちょっと学者としての鴨下副大臣らしからぬ御答弁だったのではないかなと思いますが、改めてもう一言、この次こういうのを調べるときには必ずそれを聞いていただくというのはいかがですか。
○鴨下副大臣 例えばキャリアアップを図りたいとか、自分の専門的な知識を生かしたいとか、さまざまなそれぞれのニーズは労働者側にもあるんだろうと思いますし、先ほど申し上げたように、距離感みたいなのが、会社にどっぷりつかるのは嫌だけれども、自分の仕事としてはきちんと守りたい、こういうようなこともあるんだろうと思いますので、もし今後調査をするとすれば、先生の御趣旨も踏まえて、そういうことが推察できるような形での調査をしたいというふうに思います。
○水島委員 ぜひお願いいたします。ここで距離感がどうだろうかとか、転勤がどうだろうかとか、いろいろこの部屋の中で幾ら議論しておりましても全部推測でございまして、それぞれが聞きかじった知識をもとにここで推測をしていても、どんどんここの委員会室が一般社会から離れていってしまうというようなことにもなりかねませんから、ぜひきちんと、この次に調査をされるときは、もちろん副大臣御主張の、距離感を持って働きたいんだというような、そんなのも選択肢に加えていただいてよろしいんじゃないかと思います。ぜひ私が申しましたような選択肢もきちんと入れて、今度はそこからいろいろなことが言えるような調査をしていただきたいと、心よりお願いを申し上げます。
さて、ここに二〇〇一年五月十一日の朝日新聞の記事がございます。この記事によりますと、小泉首相が、二、三年の期限つき雇用ができたり社員を解雇しやすくすれば、企業はもっと人を雇うことができると発言をされております。
まず、この記事に書かれている内容、これは事実でしょうか。
○松崎政府参考人 総理大臣から御指摘のような指示があったかどうかについては、定かではないということでございます。
○水島委員 定かではないと。ここに、総理大臣がこういう発言をした、厚生労働省に指示をしたと見出しに書いてございます。定かではないというのは、指示はなかったということなんでしょうか。
○松崎政府参考人 私は直接どなたからも聞いておりません。この記事だけしか知りません。
○水島委員 直接聞いていないといっても、私は、お役所の中、どういう指揮系統になっているかよく知りませんけれども、そういう責任のある立場にいらっしゃる方が聞いていないということは、つまり指示はなかったということでよろしいんでしょうか。
○松崎政府参考人 いずれにしましても、その後、総合規制改革会議等でいろいろ御議論がございまして、例えば労働問題につきましても、御案内のように、有期労働契約の今御議論になっております拡大の問題、それから裁量労働制の問題、そしてさらに解雇の基準やルールの明確化、そういったものについても指摘されております。
そういったことを踏まえまして、具体的に私ども、公労使の労働政策審議会がございますので、そこで十三年の九月から、共通認識ができたわけでございます。そして検討が必要な時期に来ているという共通認識のもとで検討を開始したということでございます。
○水島委員 質問していないことに答えられないで、質問したことにぜひ答えていただきたいんですが。総理大臣の指示はあったのかなかったのか、本当にイエスかノーかでお答えいただきたいんですが。
○松崎政府参考人 私は知りません。
○水島委員 知りませんということは、なかったということなんでしょうか。厚生労働省に指示したといって書かれていて、指示はあったんでしょうかと聞いたら、知りませんと。これは、指示がなかったというのか、あるいは職務怠慢というのか、どちらかしかないんですけれども、どちらなんでしょうか。
○松崎政府参考人 事実、これは細かいことですけれども、私、在任中ではございませんし、直接どなたからも聞いていないということでございます。
○水島委員 厚生労働省では、在任中になかったということは、申し送りも引き継ぎもないというふうに理解してよろしいのか。ちょっとこれは大臣に伺いたいのですけれども、厚生労働省というのはそういう役所なのでしょうか。
○坂口国務大臣 大事なことは引き続き行っているというふうに思いますが。
二〇〇一年の五月十一日といいますと、総理が就任された直後ですね、四月の二十五日か六日になったのですから。そのころにそういうお話をされたことは、私はないと思います。もう少し後半になりましてからこの議論というのは出てきたというふうに私は記憶をいたしております。ちょうど五月十一日というのは、例のハンセン病のときで、ごった返しているときでございましたから、そんな話はなかったと私は思っております。
○水島委員 これは私、かなり大きい記事だと思うんです。記事のサイズもこんなに大きいのですけれども。「二、三年期限の雇用制度を 小泉首相 厚労省に指示 「終身」制見直しへ」とぱっと出ると、これはかなり社会的に影響の大きい記事だと思うんですが、これが全く事実無根なのだとしたら、こういうことはありませんとはっきりおっしゃるべきだし、朝日新聞社にも抗議されるべきではないかと思うんですけれども、そういうことはされたのでしょうか。
○松崎政府参考人 具体的な抗議はしておりませんけれども。確かに、こういった記事について一々そうやって抗議はしておらないということでございます。
○水島委員 抗議はされていない、でも指示については知らないと。そんなことでは、正しい情報を公開していこうという責任感のある姿勢が全く見られないと思うんです。
坂口大臣は、厚生労働省のことに関して全く事実無根のことを記事に書かれた場合に、それを抗議したり訂正したりということは全くされない御方針なのでしょうか。
○坂口国務大臣 それをやり出したら毎日やっていなきゃならぬですね、正直なところ。
この問題は、何か次官におっしゃったということなんですか、その内容を見てみますと。それで私が何か指示をしたように書いてありますけれども、その時点で、私は、厚生労働省にそういう総理がおっしゃったことを指示したということはございません。したがいまして、私の部分は確実に違います。
総理が次官にそういうふうなことをおっしゃったという記事が出ているのですけれども、そういうことは、次官からは私は聞いておりません。
○水島委員 確かに、この記事の中には、「坂口厚労相は「三年の雇用契約を一般に広げるかどうか検討すべきだ」と判断した。」とか、「首相の意向も受けて、」とか、大臣が主語になっているような記述もあるわけでございます。
やはりこれを記事として読んだ一般の労働者というのは、これは大変な時代の変革が起こるというふうに感じるわけでございますけれども、そういう労働者の気持ちというものをきちんと酌み取って、これは不安を与える記事だ、事実と反すると思ったときには、きちんとこういうことはないというふうにこれから訂正していただくとお約束いただけますでしょうか、大臣。
○坂口国務大臣 マスコミの皆さんがお書きくださいますことの中には、確実にそういう決定したこともございますし、それから、多分こうなるのではないかという、憶測と申しますか、憶測と言うとしかられますけれども、そういう思いで書いておみえになる記事もあるわけであります。
毎日、新聞を見ますと、厚生労働省のことで知らないことが幾つも出てきて、びっくりすることが私はあるわけでありまして、きょうの新聞等でも国民年金の問題なんかで一面トップに出ておる記事がございまして、あれ、いつこんなのが決まったのかなと、正直言って、私は思ったわけでございます。それも一々違うといって反論していましたらこちらも疲れますから、それは鷹揚にこちらも済ますことは済まさざるを得ないということでございます。
しかし、余りにも違い過ぎる、これは我々が捨ておくことができないということについては、抗議を申し込むということにいたしております。
○水島委員 大臣が最終的にこのような事実はなかったというふうにはっきりとお認めになりましたので、この件についてはそれで結構ではございますけれども、そこに至るまでの局長の答弁、私ちょっと問題だと思うことが幾つかございましたので、その点につきましては、ぜひ大臣から局長の方によくお伝えいただきたいと思っております。
ただ、このような記事が載ったということは事実であって、大臣もいつの時点でか読まれたでありましょう。これを、この発言をどう感じられたか。今、そんなことは身に覚えがない、どうしてこんな記事がというふうに思われたというようなところは伺ったわけですが、実際問題といたしまして、厚生労働省、この分野に関しての一番の専門である厚生労働省が把握している範囲の中で、そのような、二、三年の期限つき雇用ができたり社員を解雇しやすくすれば企業はもっと人を雇うことができるというようなことを裏づけるようなデータは、何か厚生労働省はお持ちなんでしょうか。
○松崎政府参考人 具体的にそういったことを示すデータは、私ども把握しておりません。
○水島委員 ということは、少なくとも、こうやって期限つき雇用にしたり社員を解雇しやすくしたりすると企業がもっと人を雇うことができて雇用が促進されるということを、厚生労働省として言うつもりはないというふうに理解してよろしいでしょうか、大臣。
○坂口国務大臣 そのように理解をしていただいて結構でございます。
○水島委員 ありがとうございます。
では、そのような議論の上に立った法改正ではないというふうに理解をしながら、また質問を続けさせていただきたいのですけれども。何かこの記事一枚のことで随分時間を使ってしまいまして、私が聞きたいと思っていること、こんなにたくさんございますので、非常に難しくなってまいりましたが、ぜひ慎重審議で、審議時間をたくさんとっていただければと思いながら、それでも残りの時間でできるだけ聞いてまいりたいと思っております。
さて、アメリカという国は解雇規制がない国と理解をしておりまして、そのような国におきましては、有期雇用契約というのは、少なくともその期間の雇用が確保されるというふうに、プラスにとらえることもできるのではないかと思っておりますけれども、一方、ヨーロッパでは解雇規制が存在しておりますから、そのような国では、逆に、有期雇用契約というのは、一定期間がたつと終わってしまう不安定な働き方というふうに、マイナスの側面をとらえることができると思います。
そのような考えに基づいて、ヨーロッパでは、有期労働者を不安定労働者ととらえて、その弊害を抑えるための措置をとっていると私は理解をしております。EU指令では更新の制限を規定しておりまして、有期労働の更新に客観的理由を求めるか、有期雇用の最長継続期間を定めるか、最大更新回数を定めるかを加盟国にゆだねております。これは、衆議院調査室が作成をしました各国の有期労働契約に関する規制の一覧を見ましても、それぞれの国で規制を実際にされているわけでございます。条件や規制が相対的に少ないと言われているイギリスであっても、契約更新による期間の上限を四年と定めているわけでございます。
日本はどうかということを考えてみますと、現時点では解雇規制は法律上は定められてはおりませんけれども、判例上は実際には解雇は制限をされておりますし、今回の法改正によりましてそれが法律上位置づけられる、そのように理解をしているわけでございます。
そうやって考えますと、アメリカというよりはヨーロッパ型に近いと私は考えているわけでございますけれども、そうすると、とにかく解雇規制というものがある国であって、その中での有期雇用の位置づけということを考えてみますと、今回のこの法改正、また今の日本で繰り返し契約を更新していることに関してのヨーロッパのようなきちんとした規制がないということ、その上に、さらに今回法改正をするということは、明らかに国際的な流れに逆行しているのではないかと思いますけれども、大臣はどうお考えになりますでしょうか。
○坂口国務大臣 日本の解雇権濫用法理、どちらかといえばそれは御指摘のように、大陸型と申しますか、ヨーロッパ型と申しますか、そうした考え方の方に近いというふうに私も率直にそう思っております。
今回のこの有期労働契約の問題につきまして、法律上の制限がなくて、どのような場合であっても労使の合意によって有期労働契約を締結することが可能になる、こういうことに今回なるわけでございます。これは、労使の立場というものを尊重する、そして働く皆さん方の御意見も十分に聞いてこれはやっていくということを前提にしているわけでございまして、さまざまな場面で限定なく有期労働契約が活用をされている、そうした中で有期契約の労働者の多くが契約の更新を繰り返しながら一定期間継続して雇用されている、こういうことが現在日本の中で行われていることも事実でございます。
有期労働契約を締結できる場合を限定することでありますとか、有期労働契約の更新についてヨーロッパ型のような規制を行うことは、雇用管理の根幹にかかわる問題でありますので、今そういうことをするということはなかなか難しいというふうに思っておりますが。しかし、まだ日本の有期雇用というのは緒についたばかりでございますので、これからの経緯というものもよく見て、労使のどちらかにその結果が大きく偏ってくるというふうなことになれば、それは見直しを行っていくということは重要な課題であるというふうに思っている次第でございます。
○水島委員 ぜひその見直しに向けて常に前向きな姿勢をきちんととっていただきたいと思います。日本だけが国際的な労働条件の流れに逆行してしまうといたしますと、これは本当に不公正な労働と見られることにもなります。かつて働きバチと言われた日本の長時間労働が貿易不均衡の原因と批判されたこともございましたけれども、今回また日本がそのようなことになるのではないか、それを私、大変危惧をしておりますので、そのような幅広い観点からもぜひ積極的な御検討をいただきたいと思っております。現実には、契約を反復更新されるということが現状としてもう本当に根づいてしまっているということは、私も国会の中で指摘をしたことがありますし、以前から言われていることでございますので、その点についてきちんと議論を進めていただかなければいけないと思います。
さて、今回の改正では、専門職の特例につきまして、当該専門的知識等を必要とする業務に新たにつく者に限るというのが現行法なんですけれども、「新たに」というものが削除されておりますが、その理由は何でしょうか。
○松崎政府参考人 現行の制度でございますけれども、これは現在、上限の特例は三年というふうになっておりますけれども、この要件としまして、高度の専門的知識等を有する労働者が不足しておる事業場において新たに業務につく者のみに対象を限定するという条件がついてございまして、もう一つは、三年契約で更新を認めておらないという制度になっております。
しかしながら、今御指摘になりましたような、高度な専門的な知識等を有する、いわゆる専門的な労働者でございますけれども、こういった方については現在のこの三年の制度、これが施行以来四年を経過しているわけでございますけれども、こういった方について御本人の意思に反して拘束を強いられるといったような、もともと労働契約の期間の上限を定めております労働基準法上の法益といいますか保護法益、そういったものに問題がある状況があるということは、現在のところまで、裁判所、または私どもの個別労使紛争とか現場の労働基準監督機関、そういったところへの相談等、そういったことについても聞いておらないということでございます。
むしろ、一年契約に切りかえ、要するに、今は三年で更新を認められませんので、延ばそうとすると三年プラス一年、三年、一年、一年というふうになっているわけでございますけれども、そういった制度の制約の中で三年を超えて雇用を継続している者もある。これも、調査によりますと、大体三分の一が三年を超えているという状況でございまして、こういった状況を踏まえますと、対象労働者が不足している事業場において新たに業務につく者だけを対象とするという限定が、実際にはこういった方々、まさに日本の産業がこれから専門的分野といいますか、こういった方をベースにして発展していこうという中で、こういった方の能力の発揮というものの阻害要因になっているのではないかといったことを考えたわけでございます。
こういった観点から、今回、この五年にという点と、今御質問になりましたように、対象労働者が不足している事業場において新たに業務につく場合に限定するというところの要件を外そうというものでございます。
○水島委員 ちょっと契約期間の間の拘束問題については後でお尋ねしたいと思っているんですけれども、私がここで問題としたいのは、結局、今回のこの「新たに」というものがなくなったことによって、現状は、専門職等は、三年で最初契約をしたら次は一年、一年、一年ということになるわけですけれども、今度改正をされると、まず原則が三年、三年、三年、そして専門職になりますと五年、五年、五年といけると。一回更新しただけで十年となるような、そのようなことで、これは私はかなりの大改正だなと思っております。
ところが、労働政策審議会に諮問された法律案要綱におきましては、新たにつく者に限るということが削除されるということが明確に読み取れないような記述になっておりまして、現に、審議委員にも聞きましたところ、法案が出て初めて確認したというふうに言っております。このような重要な事項について審議会で十分検討されていないということは非常に大きな問題だと思っておりますし、その点については、大臣、いかがなんでしょうか。
○松崎政府参考人 現在の専門職についての要件でございますけれども、先ほど申し上げましたように、不足している事業場において新たにということで一つの要件として規定してございます。したがいまして、審議会における議論等におきましても、それ全体を一つとして説明をし、議論をしていただいたというふうに考えております。
○水島委員 法律案要綱に書かれていないということの御説明ではないし、審議委員もそれが読み取れていないということなんですけれども、どうしてそれをきちんと要綱の中に書かれなかったんでしょうか。これは大臣からきちんとお答えいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 一般的に言いまして、審議会でいろいろ御議論をいただいて結論を出していただく、それを法案にいたしますときに、その審議会で御議論いただいたとおりに法案をつくるかといえば、それはそうではなくて、重要な参考にさせていただいて、そしてそのことをできるだけ尊重はいたしますけれども、必ずしもそのとおりになることではない、これが通例でございますから。
私も、この立法過程におきましてどういう経過があったかということまで詳しく存じませんけれども、審議会で御議論をいただいたことはいただいたこと、そしてそれに対して省としてどうしても加えていかなければならないこと、そうしたこともございますから、それは、審議会の中でなかったからといって、あるのはおかしいということにもならないというふうに私は、これはもう一般論でございますけれども、そう思っております。
○水島委員 現状が、三年の次が一年ですから、単純にその枠に頭をとらわれて考えると、今度三年を五年にすると言われれば、五年の次は一年かなと、一番短い場合はそういうふうに思いますし、原則が今度三年に上がりますから、その場合には、五年の次は、もし変わるとしても三年かなと、そのように思うのが普通の頭だと思うんですけれども、そのような、次はいずれにしても一年か三年だろうと思いながら、この上限を三年から五年に上げるということを考えるのと、五年に決めるとそれから永遠にずっと五年になるんだという前提において五年に上げていいかどうかを決めるのとでは、これは私は議論の前提に全く大きな違いがあると思いますけれども、これは大臣にとってはそんなに大きな違いではないんでしょうか。
また、そうやって審議会で出たことがすべて法律にならないというのは、それはそれでそうなんでしょうけれども、ただ、その三年を五年にすることがいいことか悪いことかというのを議論しているような場におきまして、五年になるとその後もずっと五年になりますよという部分を隠しておいて、五年のところだけコンセンサスを得ようというのは、ちょっとひきょうなやり方なのではないかという気がするんですけれども、いかがでしょうか。
○松崎政府参考人 審議会における審議経過をちょっと補足させていただきますと、審議会におきます昨年の建議、また、私ども、その建議をもとにして提出、審議いただきました法律案要綱につきましても、三年を五年にするというのではなくて、常に、議論の過程じゅう、これこれこういう専門的な知識、技術、経験を持っている者、それから満六十歳以上の労働者、こういった人については五年とするということで、従来ありました要件を外して議論いただき、そういった格好で議論いただいております。
したがいまして、ほかの要件はそのままで三年を五年にするという議論ではなくて、全体でもって議論をしていただいておるということでございます。
○水島委員 そんなことをおっしゃるんだったら、ほかの要件を外すというところも、見せないで議論してもいいわけじゃないですか。どうしてそこの部分だけは明らかにして、こちらは明らかにしないで議論をするんでしょうか。何か答弁されていることが本当によくわからないので、大臣お願いします。
○松崎政府参考人 今申し上げましたように、建議を検討したような経緯から、現在の専門職、高齢者の雇用の有期契約の期間については従来上限があったけれども、これは全体的にもっと活用しやすくすべきである、そういったことが特に高齢者、専門職の能力発揮につながるということで、こういった二つの種類の範疇の方については、五年にするという要件だけで議論をしていただいております。
そういったことで、説明をして議論をしていただきましたし、またその中で、では延長、延長といいますか、更新の場合はどうなるかということにつきましても、従来は先ほど申し上げましたように三、一、一というものが、新しいものでいえば五、五、五になるというふうなこともきちんと説明しております。
○水島委員 説明をされたということですから、それがその法律案要綱で読み取れるものになっていないということで、どのような形で説明をされたのかということを、私はそれをきちんと資料としていただきたいと思います。これは、出席していた審議会審議委員が、法案が出て初めて確認したと言っているわけですから、それは十分な資料が提供されていなかったのではないかというふうにも思いますので、このことをやっているともう時間がなくなりますから、それはぜひ、どういう形で説明をされたか、今のような答弁をなさるのであれば、きちんと御説明をいただきたいと思います。
次に参ります。もう残りの時間が少なくなってまいりましたから、また急いで質問を続けてまいりますけれども。
今局長がおっしゃっていたように、現行法では、専門職の場合に、これを不足事業場に新たにつく等の条件を規定しておりまして、つまり、人員が不足しているところであればこういう人と契約することができるという枠組みになっているものを、今回の改正では、この不足事業場がすべて外されているわけでございます。これは今局長もおっしゃったとおりです。
ということは、不足しているか否かを問わないとすると、正社員の代替に活用されるおそれがより強くなるのではないかと思いますけれども、これはなぜあえて外されたんでしょうか。
○松崎政府参考人 専門職の方に限らず、事業場の中で本当に二十年三十年働いていただくいわゆる正社員の方と、五年にしろ三年にしろ、そういった期間を定めて働いていく方、これをどういうふうに組み合わせて企業経営等をしていくかといったことは専らその企業の中で考えることでありまして、何でもかんでも契約労働者にすれば事足りるというものではないと思っています。したがいまして、こういった上限が延びることによりましても、これによって直ちに常用といいますか正社員が期間雇用の労働者にかわるといったことにはつながらないというふうに考えています。
○水島委員 そう答弁されると思いましたけれども、現行の通知、基発四五を見ますと、高度の専門的知識を持つ労働者を解雇し、移籍出向等させた事業場は、高度専門的知識を有する労働者が不足している事業場とは認められないということが規定をされております。つまり、既に正社員として専門的知識を持つ人がいる場合に、その人を解雇してしまった事業場では、三年の有期契約の専門職の人を雇うことができないというふうに現状ではなっているわけでございます。これは正しい理解だと思います。
現行制度にももちろんいろいろな問題はあるわけですけれども、少なくとも、正社員の代替を避けようとして、不足事業場等の制限があったということは評価していいと思います。ただしかし、今改正でその規制がなくなるとなれば、先ほど局長は何の根拠もなく、直ちに正社員との代替が進まないとおっしゃったわけですが、やはりそのおそれはある。あるから、前のときには、不足事業場という規定が入っていたんだと思いますけれども、これが正社員との代替にならないように、新たにどのような措置をとられているのか。これは大臣にはっきりとお答えをいただきたいと思います。
○鴨下副大臣 副大臣でお許しいただきたいと思います。
前回もお答えいたしましたけれども、常用代替にならないように、こういうような話でありますけれども、企業が常用労働者と有期契約労働者の構成をどういうふうに考えていくかというのは、まさしく企業の、ある意味で人材戦略だとか事業戦略の一環というふうに考えられる部分もあると思います。
それからもう一つは、例えば人員構成だとか配置、それからキャリア形成のあり方などは、ある意味で、逆に言いますと、特に常用代替をすることが必ずしも企業にとってもメリットになるかというようなことになれば、そうではないというふうにも理解できるわけであります。
そういうようなことも踏まえまして、法制度上、高度な専門的な知識等を有する者に係る有期労働契約の期間の上限については、特例として五年と定めることにより、現在よりも長期の雇用が可能となるというふうなことに関しまして、個々の企業において、高度の専門的な知識等を必要とする業務に関して、常用労働者から有期契約労働者への代替が直ちに進んでいく、こういうようなことではないんではなかろうか、こういうふうに今は考えているところであります。
○水島委員 つまり、それは企業の良心に任せるということを答弁されたのかなと思いますけれども、きちんと法的な措置をすべきではないんでしょうか。
○鴨下副大臣 繰り返しになりますけれども、企業の良心というよりは、むしろ企業の戦略そのものにもかかわるんだろうと思いますが、常用代替が必ずしも企業にとってもメリットにならないというようなこともあるんだろう、こういうふうな理解でございます。
○水島委員 つまり、今回のこの法改正は、企業の活動をよりやりやすくする、企業戦略をより有効なものにしていくための改正であって、本来の労働基準法の、働く側に立った場合に理不尽なあり方をなくしていこうとするような精神、今の御答弁の中になかったように思うんですけれども、その措置、そこに歯どめをかけていくのが、ある意味で私は政府の役割ではないかと思っております。前のときには不足事業場というのを入れているということは、やはりそこに何らかの責任を感じられてやられていたんだと思いますけれども、今回それをあえて外しているというのが一体どういうことなんだろうかというのが、大変疑問に思います。
また、建議によりますと、「有期労働契約の期間の上限を延長することに伴い、合理的理由なく、企業において期間の定めのない労働者について有期労働契約に変更することのないようにすること」とありますけれども、この点については、法文上、具体化されているんでしょうか。
○鴨下副大臣 有期労働契約の期間の上限延長に関しては、先生が今おっしゃっていたように、これは昨年末の労働政策審議会の建議におきまして、公労使三者一致して、「有期労働契約の期間の上限を延長することに伴い、合理的理由なく、企業において期間の定めのない労働者について有期労働契約に変更することのないようにすることが望まれる。」こういうふうなことでございますけれども、厚生労働省の中でもこの指摘は非常に重要だというふうに受けとめておりまして、これは法改正内容の周知とあわせまして、先生御指摘のことも踏まえてこの考え方を周知徹底してまいりたい、こういうふうに考えているところであります。
○水島委員 周知徹底してまいりたいというのは、いろいろなことは周知徹底されているかもしれないけれども、なかなかそれがうまくいかないのが、いろいろな利害関係の中でうまくいかないのが実社会であって、だから、きちんと守らなければいけないことを守るために、法律をつくったりいろいろなことをしていくんだと私は理解をしておりますけれども。
そもそも、最初に、大臣が、この有期雇用に関する期間の上限延長のデメリットについてというので、はっきりと今のような懸念をおっしゃっていたわけでございます。そういうことをわかっていながら、それに関しては周知徹底していきましょうというようなことしかできないというのは、ちょっと、法改正をするに当たって出してきている法案として非常に不十分なんじゃないかな、本当にそのように思います。(発言する者あり)今、委員会室から無責任だという声が飛びましたけれども、私も同じような感想を持っております。
さて、この点についてこれからきちんと審議の中でもっと詰めさせていただきたいと思っておりますけれども、きょうは本当に残り時間がわずかになってまいりましたので、もう一つ、最初に大臣が問題点として提起されました、不当に拘束されるのではないかという方の点について質問をさせていただきます。
今、厚生労働省労働基準局が編著しております「解釈通覧労働基準法」によりますと、現行法では原則一年の契約というふうになっておりますけれども、契約期間は一年を超えるものの例えば三年であるが契約期間中は労働者の側からいつでも解約できる旨の特約がある場合については、労基法第十四条の趣旨からして労働者側の解約の自由が保障されている限り法違反とはならないとあるわけでございます。
労基法の第十四条というのは、労働者の人身拘束ないし労働強制の弊害を排除することを目的とする規定でございまして、その限度として現行法では一年が定められているものの、労働者がいつでも自由に解約できると特約があるのなら三年でも違法ではないということを言っているわけでございまして、ここからも労働者の解約の自由の保障がいかに重要かということが示されていると思います。
そして、今回、この有期の契約期間が原則三年、例外五年と大幅に延長されますと、高度な技術者や教育訓練に相応の費用を要する労働者が五年間足どめされるということになるわけです。五年というのは大変長い年月でございまして、当然、諸般の事情で退職したくても、この場合、民法六百二十八条が適用されることになるのではないかと思いますけれども、やむを得ざる事由がない場合には契約違反となるおそれがあるのではないかと思います。
そのような問題意識に立ちまして、例えば仮に、これは本当によくあるケースだと思いますけれども、五年の有期契約で研究機関で働いていたけれども、三年目に外国の研究機関から招聘されたというようなケースを考えてみますと、その研究者は損害賠償を支払わないと移ることができないということになるのでしょうか。これは本当によくある話だと思いますが、いかがでしょうか。
○松崎政府参考人 今御指摘のように、五年契約で労働を始めて、途中で労働者の側からほかの会社に移るといったことだと思いますけれども、そういった場合には、これは契約違反というか、債務不履行ということにまずなります。
ただ、具体的には、個々の契約内容でございますとか事例、そういったものを当たらないと、これは民事裁判所で判断されることになるわけでございますけれども、一概には言えないとは思いますけれども、ただ、債務不履行になりますので、それによります損害というものが具体的に算定された、要するに、企業の中で高い賃金を払い、五年間というものを約束して契約金とかを払い、契約して働いている場合に、途中で企業秘密を持っていってしまって、自分のところがこれだけ損害をこうむったといったような具体的な、契約債務不履行によります損害というものが確定されれば、それは当然御指摘のような損害賠償の対象になる、責任を負うという場合もあろうかと思います。
○水島委員 今のは本当によくあるケースですから。関係している人たちは今回の法改正について多分全く知らないと思いますけれども。
今、それで、債務不履行で損害賠償を払わなければならない事態も起こってくるということでありますが、一方で、一九九七年に制定された大学の教員等の任期に関する法律によりますと、私立大学の教員には、一年を超えたら任期中であってもその意思により退職できる権利が与えられているわけでございます。
私も研究していた立場として、研究機関も私立大学もみんな普通に移動していくようなところであるわけですけれども、研究機関に勤めると、途中で移るときに債務不履行となってしまうかもしれない、一方、私立大学の教員となるのであれば、一年を超えたらいつでも自由に外国のどこかに移ることができる。これはどうなんでしょうか、整合性といたしまして。
○松崎政府参考人 御指摘の大学の教員等の任期に関する法律ということで、これは平成九年の法律だと思っております。この法律の趣旨というものは別にして、とにかく一年を超える期間の労働契約の締結を認めようという、いわゆる任期制の法律でございます。
この任期に関しましては、法律の中におきまして、一年を超えた場合には本人の意思によって退職することを妨げるものであってはならないというふうに規定したわけでございますけれども、これは、労働契約の期間につきまして、現行の労働基準法の十四条に一年という規定がございます、この労働基準法に反しないように確認的に規定したものというふうに私ども承知しております。
○水島委員 そのこととの整合性を質問しているんですけれども。
○松崎政府参考人 したがいまして、私立学校の教員につきましては、こういうことで今後もいくということだと思います。
○水島委員 こういうことでというのはどういうことでしょうか。現状のままということでしょうか、それとも、労働基準法に反しないようにということになれば、今一年と言っているのもこれは三年に延びるとか五年になるとか、そういうことというのがこういうことなんでしょうか。
○松崎政府参考人 これは、私立学校の教員についての特別の法律でございまして、これにつきまして、今度の労働基準法を原則三年ということにする場合におきましても、協議の結果、私立学校の教員についての特例の扱いについては、今後も政府としては継続する、現行の規定のままいくという方針だと聞いております。
○水島委員 つまり、研究機関で働く場合と私立学校で働く場合とは全くその拘束度に違いがあるという特例がここからできるということになるんだと思いますけれども、そのような重要な答弁を今いただきましたので、またこれについては後日審議を十分にさせていただきたいと思いますが、今は御答弁として受けとめさせていただきたいと思います。
また、実際に債務不履行で損害賠償請求というような、そのような判例としてはないようですけれども、判例がないから問題がないというわけではないと思います。
また、実際に、労働相談などでは、君の募集、採用には金がかかっているんだから、その分返すか働けというような、そうやっておどされたというような相談事例があるというふうにも聞いておりますし、かつては准看護婦のお礼奉公ですとか、また新聞配達店等での足どめが問題になっていたというのは記憶にも新しいところでございます。どうやら最近はエステティシャンの世界で足どめ問題があるというふうにも聞いておりますけれども、厚生労働省といたしまして、こうした足どめ問題について調査されたことはございますか。
○松崎政府参考人 これに限らず、労働基準法の違反の問題につきましては、その都度対応しているということで、この問題につきましてだけ特別に集計したといったものはございません。
○水島委員 つまり調査されていないという御答弁だと思いますけれども、やはり、こうやって一定期間人を拘束するのを長くするというような法改正をされるに当たっては、当然、現状でその拘束期間に何が起こっているかということ、これは大臣が最初の問題意識の二つのうちの一つとして、不当に拘束というようなことをおっしゃっているわけですから、そのことを、現状がどうなっているかを調べて初めてその期間の延長ということを議論できるのではないかと思います。ここでも何だかまた大きな穴を見つけてしまったような気がいたしますので、これはまた今後、ぜひ審議の中できちんと尽くしていかせていただきたいと思っております。
そして、このような事例を考えてまいりますと、私は、本来は、労基法に、いつでも雇用契約を解除できる旨の規定が必要なのではないかと思います。少なくとも、労基法十四条の趣旨が、長期の拘束を排除するというそもそもの立法の趣旨が変更されていないというのであれば、一年を超える雇用契約については労働者の意思により契約を解除できるというような規定が必要ではないかと思いますけれども、これは大臣はいかが思われますでしょうか。これは大臣です。
○坂口国務大臣 この有期雇用契約につきましてもいろいろの御議論があることは十分承知をいたしております。これから有期雇用ということがどこまで定着をするのか定かではありませんけれども、その中で、やはり企業側と、そして働く労働者の側が対等でいけるということが、これはこの労働基準法の大前提でございますから、その大前提の中でこの問題も決着がつくように私は努力をしていきたいというふうに思っております。
○水島委員 本日、いろいろ御答弁いただきましたけれども、事前に通告していた質問の半分ぐらいしか質問することができませんで、いかにこの領域、問題が多いかということを改めて認識したところでございます。大臣も、この有期雇用に関しましては、今、きちんと議論をしていい制度にしていかなければというようなことを最後に御答弁くださいましたので、これは均等待遇の問題なども含めましてまだまだ議論してまいりたいことがたくさんございます。またぜひ次に質問に立たせていただきたいと希望をしておりますので、また引き続き審議の中で、本当に有期雇用労働者の権利が最大限守られるような、そんな制度の構築に向けて引き続き御尽力をいただけますようにお願いを申し上げまして、本日の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○中山委員長 次に、加藤公一君。
○加藤委員 おはようございます。加藤公一でございます。
水島議員に引き続きまして、きょうはどういうわけですか、午前中、私ども民主党の質問バッター三人とも理科系出身でございまして、御答弁をいただく大臣、副大臣も理科系出身でございます。きょうは科学的な議論をぜひお願い申し上げたいと思います。(発言する者あり)会場から、文科系は非科学的かというやじが飛んでいますが、決してそういうことではございません。あえて申し上げればそういうことでございます。
今回、労働基準法の改正に当たりまして、これまでも長々指摘をされてきましたけれども、一向に解決をしていない問題がありまして、大臣もかなり御関心をお持ちのことと思いますが、いわゆる不払い残業、サービス残業の問題でございます。この議論を避けて通ることはできないだろうと思いますし、また、今回、裁量労働制の適用範囲の拡大という改正点もございまして、悪用いたしますと、不払い残業を合法化するということにもなりかねませんので、本日はその点に集中的に議論をさせていただきたい、質問させていただきたいと思います。
そもそも、働く皆さんがすべてみずからの意思で自分の働き方を選択できるということであるならば、それは、できるだけ多くの選択肢があり、また仕組みが整っているということは決して間違った判断ではないと思うわけですが、しかし、実際には、現場におきまして、働く職場におきまして、この裁量労働制の問題なども含めて、制度の趣旨を踏みにじるようなケースというのが見られるわけでありまして、現状、大前提として、現行の労働基準法で決まっているルールというものがどの程度守られているのか、この点もしっかりと確認をしていかなければならないというふうに思ってございます。
そこで、冒頭お伺いをいたしますが、この不払い残業問題を解決、改善をするためにこれまで厚生労働省としてはどのような取り組みをしてこられたのか、まずここから伺いたいと思います。
○松崎政府参考人 この賃金の不払い残業といいますのは、もう御案内のとおり、労働基準法に違反するものでございます。これは刑罰法規をもって担保される重要なものでございまして、これを解消することは、私ども労働基準行政の重要な課題であると考えておりまして、毎年度の重点政策の中にも挙げて進めておるところでございます。
具体的には、最近のことを申し上げますと、平成十三年四月でございますけれども、労働時間の把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準というものを策定いたしました。要するに、労働時間の管理、そういったものは使用者の責任として使用者がみずからきちんとやらなければならない、労働者本人に任せっきりではいけないということを再確認したものでございまして、中には、自己申告制をとる場合にもきちんとその趣旨を言い、事業主、使用者の方でできる限りそれを再チェックするといったようなことも盛り込まれております。そういったものを策定しまして、具体的な事業場におきます監督指導でございますとか、またいろいろな企業を集めての集団指導、そういったものを含めまして、いろいろな機会を通じまして、まずはこの基準の周知徹底というものを図ってきております。
具体的には、十三年、今申し上げましたこの基準を出しました以降でございますけれども、十三年の四月から九月末まで半年でございますけれども、全国で集団指導というものを約四千回、三十万事業場に行ったという具体的なものがございます。
またさらに、その終わった後でございますけれども、十月から十一月、この二カ月にわたりまして、この通達の周知状況につきまして、一斉監督、そういったものを実施いたしまして、これは個別の事業場でございますので余り多くはできませんけれども、二千六百の事業場につきまして一斉監督というものを行っております。
こういったものを含めまして、平成十三年の四月から十四年の九月まで一年半でございますけれども、この監督指導の状況ということで、これは新聞発表させていただきましたけれども、その監督の結果どういうふうな是正をさせたかといったことを御報告させていただいております。その中身は、百万円以上支払った企業が約六百ちょっと、また割り増し賃金を受け取った労働者が七万一千人、また割り増し賃金の合計額は約八十一億円ということで発表させていただいております。
また、その後、四つ目としましては、平成十四年、昨年の十一月に、やはり賃金不払い残業の解消を重点に監督指導というものを行っております。その概要だけ申し上げますと、是正指導を行った事業場の割合は約一八%ということで、二割弱の企業にやはり何らかの違反事項があって是正させたという状況になっております。
こういうふうに順次やっておりまして、今後におきましても、冒頭申し上げましたように、あってはならないものという考えのもとに適正な労働時間管理に向けてやっておりますので、こういったものを通じまして、いきなりには無理かもしれませんけれども、順次、企業におきましても改善が図られていくものというふうに考えております。
○加藤委員 これまでの取り組みは、今御説明をいただいたとおりかと思いますが、果たしてこれで十分なのかどうかという問題、それから、大臣は先日、記者会見の場でも、この不払い残業問題解決に向けて取り組んでいくということを表明していらっしゃいますので、今後さらにどういう取り組みをされるおつもりか、大臣の言葉で御説明をいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 今まで監督署を中心にいたしましてやってまいりましたことは、局長が答弁したとおりでございますが、限られた監督署の能力の中で全体の企業を見ていくということはなかなか、不可能に近いことでございます。しかし、その中で、これは非常に悪質だと思われるようなところを中心にしながら見ているというふうに思いますが、そうした中での結果を見ましても、かなりの企業においていわゆるサービス残業、我々は賃金不払い残業と言った方がいいというふうに思っておりますが、そうしたことが行われている。これは、日本の企業が今後世界的に伸びていきますためにも、世界に誇る日本の経済界をつくっていきますためにも、これだけはやはりなくさないといけない、どうしてもここは乗り切らなければならないことだというふうに思っているところでございます。
そうはいいますものの、役所だけの能力で全体を見ることができるかといえば、それはそういうわけにもいかないわけでございますから、とりわけ大きい企業におきましては、このことをやはり労使でよく認識していただいて、そして労使の間でちゃんと決めるべきことは決めて、そしてやっていただきたいというふうに思っている次第でございます。
そうした意味で、今回、賃金不払残業総合対策要綱というものをつくりまして、その中で、賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針というのを策定するということを中心にしました、さまざまな問題を手がけていこうというふうに思っております。
この賃金不払残業解消対策指針の中身でございますが、具体的な項目を五つばかり挙げますと、一つは、労使に求められる役割。
二番目に、労働時間適正把握基準の遵守。これは、適正に把握をしていくためにどういうふうにするかという、この遵守。
それから、職場風土の改革。まあ、何となく、サービス残業をしていることが社会のために尽くしていること、企業のために尽くしていることというような風土があることも事実でありまして、なかなか言い出しにくいというようなこともございますから、少なくとも賃金に関しましては、愛社精神というのはいいけれども、ここだけはちゃんとやろうということでございます。
それから四番目に、適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備。このシステムをどう整備していくかということ。
それから五番目に、労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備。責任体制をそれぞれの企業の中でちゃんとしてもらおう、こういうことでございます。
こうしたことをまず各企業にお願いして、そして今後適正化を図っていただくことにし、そしてそうしたことを監督署としても指導していくというふうにしてはどうかというふうに思っている次第でございます。
○加藤委員 大臣の記者会見の御発言からこの指針にまで行ったということで、今後もさらに取り組んでいただきたいと思いますし、この指針の中を見ますと、一部、賃金不払い残業が人事考課に影響を及ぼさないようにというようなことが書いてあるかと思いますが、要は、ただ働きすると社内で評価されるような風土があってはならぬわけでありまして、どうも日本的な経営の中でその方が、頑張ったんだから評価しようじゃないかというような風土があったりしまして、ここはぜひ徹底的になくしていただきたいなと思うところであります。
少し振り返りまして、じゃ、この問題をどうやってさらに解決するか。指針は指針で承りましたけれども、さらにどうやって解決をするかというのを、実は、さっき申し上げたように、少し科学的に議論させていただきたいと思っていまして、まず、実態として不払い残業がどの程度あるのか、世の中に。それは、事業場の数あるいは時間数の問題、いろいろあると思いますが、厚生労働省として、その実態をどのように把握していらっしゃるのか。もしも正確なデータがないということであれば、何がしかの理論的な推計値がお出しいただけるのか。その点、御説明をいただきたいと思います。
○松崎政府参考人 賃金不払い残業の実態でございますけれども、これはもともと、我々が監督に行ったときにも、なかなかわかりにくいというのがございます。そういったことが多いために、なかなか実態の把握というものを、科学的にといいますか数字的に把握するのは非常に困難でございます。
それで、唯一ございますのは、先ほど申し上げたように、過去の監督を行った場合の結果でありますとか、そういうものの数字しかないわけでございますけれども、例えば、パーセンテージで言いますと、一斉監督を行った場合に、約一八%の事業場で何らかの超勤問題についての違反、これは軽微なものもございます、こういうものがあったという数字があるわけで、これは、これにセンサスの事業場の数を掛けたところで、正確といいますか、実態をあらわしているかどうかということにつきましては、余り当てにならないといいますか、自信がないというのが正直なところでございます。
○加藤委員 確かに、局長が自信がないと言うように、まあどの程度正確かというのは、もちろん根拠のない数字になりかねないわけですから、正確には言えないかもしれませんが。
私も実態としてどのくらいあるんだろうかというのを自分なりに計算できないかと思って調べてみたんですが、例えば、今回の法案のために調査局の方でつくっていただいた資料の中にも、資料の出どころは厚生労働省資料というふうになっているのがありまして、産業別定期監督等実施事業場数というデータが入っているんですね。
これを見ますと、例えば平成十三年で、業種別に監督実施事業場数がどれぐらいあって、その中で三十七条違反の事業場がどれぐらいあったかという数字が出ているんですけれども、もちろん、全体で見ますと、全事業場のうちの約一二%が三十七条違反になっていた、こういうことになりますし、あるいは、業種を区切ると、例えば接客娯楽業だと三割を超えているとか、商業で四分の一とか、金融、広告で二二%程度とか、こういう数字がここから出てくるわけですね。
これを、さっき局長がおっしゃったように全事業場の数に掛け算をすれば、それで推計値が、確実なものが出るというわけじゃないのはよくわかります。ただ、この比率を見れば、日本の中で大変多くの企業あるいは大変多くの事業場で不払い残業が実際に行われているということは、もうほぼ明らかにわかるわけですし、もう一点言えば、これはちょっと、私も統計にそんなに詳しくないものですから、ぜひ厚生労働省の方で検討いただきたいと思うのは、厚生労働省で調査をしていらっしゃる、企業サイドに調査を入れているものと、それから、総務省の方では労働力調査が行われていると思いますけれども、あれはたしか個人の方に調査をしているはずでありまして、企業サイドから出た情報と個人の方からとった情報のそごがあれば、その分が、労働時間の差異が不払い残業の分に当たるという推測もある程度はできるんじゃないかと思っていまして、これは統計に詳しい皆さんに一度検証していただきたいと思うんです。
私が言っていることが間違っているんなら、いや、それはできないという話なのか、あるいは、大体これぐらいの精度ではわかりますという話なのか、検討いただきたいと思うんですが、いずれにしても、非常に多くの事業場でこの不払い残業が実際に行われているだろうということは、ほぼ間違いないと思いますし、また、これをより正確につかまないと、なかなか次の議論に進まないんじゃないかと思うんですね。
そこで、これは、質問というよりは大臣に少しお考えを伺いたいんですが、こうした正確な情報といいますか実態を把握する努力を、今後、厚生労働省としてしていただけませんでしょうか。
○坂口国務大臣 今までも厚生労働省として労働者の時間把握というのに努めているところでございますし、先ほどお話がありましたように、企業に聞きます場合と、それから総務省のように家庭においてどれだけ働いたかという時間を聞くのと、やはり結果は違うんですね、かなり。私も前に調べたことがございますけれども、違う。
それは、家庭において聞きますときには、一つの企業の中で働いた時間というものだけではなくて、ほかの分野で働いた時間というのも中に入れている人もあるということのようでございます。本当は、そこをちゃんと読んでいただいて、ちゃんとしていただければいいんですけれども、そういうこともあり得る。
それで、企業の場合には、どうしても少な目に評価が出る傾向があるといったようなことがございまして、私も、これはどちらが本当でどちらがどうなのかとかつて聞いたことがありました。そうしましたら、私が聞いたその人は、二つ足して二で割ってくれ、こういう話でございましたけれども、決して科学的な話ではございませんので、ぜひもう少し、本当のところはどれぐらいあるのかということの把握はちゃんとしていかなければいけないし、そこをちゃんとしておかないと、これからどれだけ減ったのかということの掌握もまたできないことになりますから、そこは我々も努力をしたいというふうに思う次第でございます。
○加藤委員 ぜひ正確な把握と、あと、時系列での変化というのを追っかけていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。
時間の関係がありますので、少しはしょって質問をさせていただきたいと思います。
この不払い残業問題で、仮に今後この不払い残業の改善、解決というのが進んだと仮定をいたしまして、つまりこの不払い残業が仮になくせたとすると、そのことによって雇用情勢にどういう影響が及ぶというふうに考えていらっしゃるか。これは、実はなくしたときにこれだけのメリットがありますよということを先に把握をしておきたいという意味で御質問をさせていただきますが、仮に不払い残業がゼロになったときに雇用情勢にどのような効果があるか、大臣からお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 これもなかなか難しい御質問だというふうに思いますが、サービス残業をなくすれば、その分だけまた新しい人の雇用に結びつくのではないかという、単純にそういうふうに考えることもあるわけでございますが、しかし、企業の経営はそう単純でもないというふうに思っております。
新規の雇用の拡大にどの程度つながるかにつきましては、これは業務の効率性あるいはまた新たに人材を採用する場合のコストの問題等がございまして、そうしたことが影響するだろうというふうに思っております。その場合に企業がより効率化を図る方向に向かうのか、それとも残業をなくしてその分新たに人をふやすということに向かうのかは、なかなか一口には言えないというふうに思います。
我々の方もいろいろの検討をしてもらっているわけであります。例えば、これはサービス残業ではありません、残業をなくするということと新しい人を一人雇うということと、企業にとってどちらがプラスかマイナスか、あるいは違いとしてはどれだけあるのかというようなこともいろいろ検討を今してもらっているわけでございますが、中間的な報告として見ると、残業をなくして新しい人を雇うというのと、残業をしてその残業者により多くを払うということとを比較すると、例えばパートの人を雇うということであれば、それは新しく雇った方が企業の出し分は少なくて済むというデータが出ておりまして、私は、もう少し具体的にその辺のところをきちっと見てもらいたいというふうにお願いをしているところでございます。
○加藤委員 これこそ実際にどれほどの雇用効果があるかというのを正確に把握するのは難しいとは思うんですが、一つのシミュレーションとして、もう四年も前になりますけれども、社会経済生産性本部の方で出されたデータ、大臣御存じのとおりだと思いますが、サービス残業をゼロにすると九十万人の雇用創出効果がある、こういうのがあります。
九十万人そのまま本当に雇用がふえるかどうかは別にして、本当にゼロにできれば、少なくとも数十万単位で雇用創出効果を期待はできるのではないかと思いますし、現下の厳しい雇用情勢ですから、お金をかけずにやれる手としては非常に有効なんじゃないかというふうに思いますので、その点も踏まえてお取り組みをいただきたいと思います。
そして、そのためにいろいろな方法があると思うんです。さっきの指針も出していただきましたし、また監督官の方にもっと頑張っていただくとか、いろいろな方法はあると思うんですが、労働基準法の三十七条に違反をしたときの罰則が、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」というふうになってございますが、いきなりこの問題で刑務所というのはなかなか考えにくいと思います。
そうすると、では罰金が三十万円以下というのが妥当なのか、こういう問題があります。個人的には、これはもっと大幅に引き上げていいんじゃないかと思っていますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
○鴨下副大臣 先生がおっしゃるように罰則を強化するというようなことが、果たしていいのか悪いのかという議論はあるんだろうと思いますが、三十七条違反に関する、使用者については、これは六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金というようなことでありますけれども、一番重いのが強制労働等で懲役十年以下もしくは三百万以下の罰金、こういうようなことから考えますと、各条ごとの内容からバランスを見ますと、それなりに内容に応じたものになっているのではないかなというふうに思うわけであります。そういうことを踏まえますと、今の段階でこれを引き上げて罰則を強化するのが果たしていいのかどうかという意味では、極めて今の段階では消極的であります。
ただ、先生がおっしゃるように、いわゆる賃金不払い残業については、これはまさしく労働基準法の違反でありますから、これについては先ほどから大臣がお話しになっていますように、さまざまな方法を講じて、結果的にこういうような事態ができるだけ減るようにというようなことでやっていくという意味では極めて重要なことだろうというふうには思っております。
○加藤委員 今は引き上げるお考えはないということでしたけれども、企業は経済合理性に従って活動する。私もそちらにおりましたから、よくわかりますが、そのときに、万が一監督官に指摘をされて罰金を払ったとしても、三十万円かと、こう経営者が考えるというケースだって、それはなくはないと思います。すべて日本じゅうの経営者が善良な人ばかりとは言い切れませんから、そういうケースだってなくはない。
そう考えると、その不払い残業で働いている方々がこうむっている損失と比較をすると、やはり余りにも軽過ぎるんじゃないかというふうに私は思いますので、今後引き続き、ぜひこれは、この点こそ改正をする方向で検討していただきたいと問題提起をしておきたいと思います。
きょうは、別の観点からもこの不払い残業問題、議論をさせていただきたいと思いまして、経済産業省の方にもお見えいただいておりますが、そもそもこの不払い残業が行われているということが、では実際、企業にとって本当にプラスなのかどうなのかと。
つまり、企業の生産性の問題であるとか、あるいは国民全体の消費活動の問題とか、経済全体にわたってこれがプラスなのかマイナスなのかということを少し考えなければいけないというふうに思っておりまして、これを放置しておくというふうに経済産業省として考えられるのか、それとも、影響があるから何がしかの手を打っていこうというふうにお考えでいらっしゃるのか、その点をまず伺いたいと思います。
○桑田政府参考人 お答え申し上げます。
先生から御質問ございましたけれども、私どもは、そもそも労働時間の短縮というのは、これは政府の目標でもございます。年間総実労働時間千八百時間達成、定着に向けて努力しているというのがまず第一点でございます。したがいまして、労働時間の短縮というのが働いている方にゆとりをもたらしたり、また結果として消費活動の活性化ということに寄与するものと考えております。
また、労働時間の短縮を行いました際には、高齢者の方とか女性の方とかがある意味で働きやすい環境づくりに資するのではないか、これが今後少子高齢化が進むということを考えますと、高齢者や女性の方の就業促進という観点で、中長期的には企業の活性化にも資するものではないかというふうに考えてございます。
したがいまして、私どもは、年間総実労働時間千八百時間達成、定着に向けての、労働時間の短縮に向けまして、企業側の取り組み等々に向けて努力してまいりたいというふうに思っております。
なお、御質問がいろいろとございましたけれども、特にサービス残業というのは、先ほどから御答弁がございましたけれども、これは労働基準法に照らしまして違反のことでございます。したがいまして、今後とも厚生労働省の関係機関におきましてこれは適切に対処されるものだと思っておりますし、私どもとしても厚生労働省ともども、御協力させていただきたいというふうに思っております。
以上でございます。
○加藤委員 実は、経済産業省の方で出されているのは、サービス残業と直接関係はないんですけれども、休暇制度について研究をされた報告書が出ておりまして、もう御案内のとおりですが、これは、いわゆる年次有給休暇の消化率を仮に一〇〇%にしたらどういう効果があるかという研究でありまして、十二兆円の経済波及効果と百五十万人の雇用創出というのを出していらっしゃるわけですね。
それは年次有給休暇も一〇〇%消化した方がいいとは思いますが、その前段階として、今、お金ももらえずにこき使われているという状態があるわけでありまして、これをぜひ厚生労働省と一緒に解決していただけば、この方が経済効果も雇用創出効果も大きいんではないかというふうに私は実は思ってございまして、この点を、経済産業省としての御見解を伺いたいと思います。
○桑田政府参考人 お答え申し上げます。
今先生から御指摘のございました調査研究委員会の報告は、昨年の六月に、経済産業省と国土交通省並びに財団法人の自由時間デザイン協会の研究会で報告をされたものでございます。
これによりますと、御承知のように、現在年次有給休暇付与日数、平均で十八日でございますけれども、実際の取得日数は九日ということでございます。これは完全に取得をされた前提のもとでございますけれども、余暇時間それから旅行等々が拡大するという場合には十一・八兆円の経済効果があるんではないかという試算がされております。
ただ、この前提といたしましては、御承知のように、日本の休暇には、休暇が細切れで連続性がないとか、それから業種とか企業規模によっても取得日数については大きく格差がございます。また、休暇につきましては、ファミリー世代の場合には、家族全員で休暇をとるという点では、御承知のように、盆とか暮れとかゴールデンウイークに集中をしているという状況でございます。こういうことを解決しない限りはなかなかこれの達成ということは難しいとは思っております。
それで、最後に、有給休暇の完全取得に向けて努力するとともに、他方で、先ほどの残業の問題でございますけれども、残業は、その日のうちの時間が短くなるということでございますので、休暇とはちょっと観点が違うかと思います。したがいまして、確かに余暇時間が拡大するという意味では、一定の消費活動に何らかの寄与がされるんではないかということは期待はできるというふうに考えております。
以上でございます。
○加藤委員 不払い残業の問題の解決というのは二通りで、その分を残業しなくなるということであれば、今おっしゃったように、余暇時間が一日当たり少しふえるということになるでしょうし、逆に、それだけ残業させられているんだったら、きちんと賃金が払われるということになれば、今度個人の所得がふえるわけですから、これは両面、どちらの方向で解決をするにしても、経済効果はある程度は期待できるんだろうと思います。それこそ今の段階で、科学的な数字はわかりませんけれども、期待できるんだろうと思います。
では、最後に一つだけ伺います。
こうした不払い残業の問題を看過したままで今回の裁量労働制の適用範囲の拡大というようなことが進みますと、これまで指摘をしてきましたとおり、労働者側のこの制度に対するメリットというのが失われてしまって、まさに不払い残業の合法化を後押しするようなことになりかねない、そこを非常に懸念しております。
そうさせないための方策というものが必要だと思うんですが、これは、せっかく来ていただいておりますので、経済産業省そして坂口大臣、お二方からお話を承りたいと思います。どうやって解決方策を打つかということをお願いします。
○桑田政府参考人 お答え申し上げます。
日本経済の現在の状況でございますけれども、九〇年代以降、サービス経済化とかIT化に伴いまして、組織の形態とか就業形態の多様化とか柔軟化というのが国際的にも大変進展をしてきてございます。特に、サテライトオフィスでございますとかアウトソーシングといったようなものが進んでおりまして、ある意味では時間や場所にとらわれない就業形態が拡大傾向にございます。こういう流れを受けまして、今回裁量労働制の対象となる労働者、派遣労働者といった多様な就業形態で働いている方がふえているというふうに認識しております。
こうした動きに加えまして、私ども見ておりまして、個人の価値観の多様化とか就業意識の変化が進展をする中で、就業形態を柔軟に選択できる環境というのは、社会にとっても個人にとっても重要だというふうに考えてございます。
今回の法案は、そういう意味の環境整備におきまして、裁量労働制に関しましては、導入に当たっての労使の十分な話し合いを必要とするといった制度の基本的な枠組みは維持をされて、その上で一部の要件と手続を緩和するものと承知をしております。
先ほどから先生からサービス残業につきまして御指摘ございますけれども、これは賃金未払いという違法のものでございます。これは違法のものでございますので、労働基準関係法令に照らして問題がある場合には、厚生労働省の関係機関に適切に対処していただきたいということでございます。
○坂口国務大臣 経済産業省からも最後にお話がありましたけれども、労使委員会というのをつくって、そこで労働時間というものの適切な設定を設ける、これがやはり基本になっております。したがいまして、そこをしっかりできるかどうかということにかかってくるだろうというふうに私は思っておりますので、そうしたことも含めて私たちはきちっと指導をしていかなければならないし、そして、今回出しました指針の中でもそうしたことも徹底をしていきたいというふうに思っております。
○加藤委員 終わります。ありがとうございました。
○中山委員長 次に、山井和則君。
○山井委員 三十分間質問をさせていただきます。
労働基準法改正の中の有期雇用について質問をしたいわけですが、冒頭、お時間をいただきまして、・・・・・・(中略)
それでは、もう木村副大臣は結構ですから、有期雇用の質問に移らせていただきます。この問題は引き続きさせていただきます。
坂口大臣、先ほど水島議員の質問の中で、有期雇用、一般職が一年から三年、専門職が三年から五年に延ばすという中でデメリットはどうかということに対して、坂口大臣は二番目の大きなデメリットとして、不当拘束、やはり途中でやめられないということを御答弁されました。まさに私もそれが最も大きな問題だと思っております。
そういう問題が起こらないようにするために、その解消策として今回の法案でどういう歯どめをかけていられるわけですか、大臣。三年雇われたけれども一年たったらいい仕事が見つかったとか、労働条件が余りにも思ったより悪過ぎるとか、あるいは、上司からセクハラされてやっぱりこれはやめたいと思ったときに、先ほどの答弁だったら損害賠償請求される危険性もあるということなので、これは人身拘束で大きな問題だと思うんですが、そういうことにならないように、大臣もデメリットだと認めておられるわけですが、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 私は、そういうデメリットは、現在挙げられているということを申し上げたわけで、私自身がそれをデメリットだというふうに思っているということを申し上げたわけではありません。ただ、そういう心配が生じることもそれはあるんだろうというふうに私は思います。
しかし、そういう契約を結びましても、やむを得ない理由がありますとき、あるいはまた、契約が不履行である、今おっしゃったようにセクハラが起こるとかなんとかというような、そういう理由のあるときには、それは現在でも既にできるようになっているわけであります。だから、そういうことが起こった場合には、当然それはそうでしょう。それは正当な理由ということになるというふうに私は思います。
ただ、問題は、三年間なら三年間というお約束で、そして契約を結んで入られたけれども、例えばですよ、例えば隣に新しい同じような企業ができて、そこへかわるんだというようなことになれば、それは経営者の側としては決して快い思いをするわけではありませんから、法律でどうこうというような話にもなりかねないわけでございますけれども、しかし、普通の場合、常識的に考えて正当な理由のある場合、そしてまた、どうしてもそうならざるを得ないようなこと、あるいは契約したこととはそれは全然違うというようなことが起こってまいりましたときには、現在でもそれはやめることができるということになっているわけでございます。
○山井委員 やむを得ない理由がなくやめた場合は損害賠償の危険性があるということなんですけれども、今おっしゃった、正当な理由があれば大丈夫だというような趣旨の答弁だったんですけれども、そうしたら、例えばもっといい会社からどうしても来てくれと引っ張られたとか、その会社が三年後にちょうどあくかどうかもわからないわけですから、そういうのはある意味で正当な理由だと思うんですが、そういうケース、あるいは労働条件が思っていたより悪かったとか、働いてみたら思っていた職種ではなかったとか、そういうふうなことでも正当な理由として、坂口大臣、今答弁を下さいましたけれども、かわることができるんですか。
○坂口国務大臣 例えば、初めに約束をした賃金が支払われないというようなことになれば、これは契約違反でありますから、それは理由になると思いますし。それからまた、例えば御家庭の状況によってどうしても仕事が続けられないということだってあり得るというふうに思いますが、そうしたことが起こったときでありますとか、さまざまな理由があるというふうに思いますが、そこは労使で常識的にお考えをいただいて、それはまあやむを得ないなというときには、それは現在もやめることができるようになっているということを私は申し上げているわけであります。
○山井委員 実際には、損害賠償請求されるかもしれないということで、泣き寝入りをされているケースが多い、それがまだ一年だから顕在化していないんではないかというふうに思います。
鴨下副大臣、このような問題に関して、有期雇用の方は具体的にどのような仕事をされているのか、また有期雇用の今までのトラブルはどのような相談があったのか、そのことについて答弁をお願いします。
○鴨下副大臣 平成十一年度の有期契約労働者に関するアンケート調査によりますと、事業所調査では雇いどめに伴うトラブルがあったという事業所は約一割程度あるというようなことでありますが、そのトラブルの原因は、理由に納得してもらえなかった、更新への期待について認識の違いがあった、こういうようなことが多くなっております。また、これは労働者側の調査の中では、過去に例えば雇いどめの経験を持つ労働者の五六・七%は雇いどめに不満だった、これが五六・七%でありますが、特に不満を感じなかったというのが三八・九%というようなことであります。
また、これは労働基準監督署の監督において認められた労働基準法第十四条、契約期間についてでありますが、の違反の件数はそれぞれ、平成十一年が十件、それから平成十二年が八件、平成十三年が十一件となっておりまして、有期契約労働者が契約期間中に退職したことに伴って使用者から損害賠償請求をされたような具体的事案については、厚生労働省としては、現在のところは把握はしていないというのが現状であります。
○山井委員 実際そういう問題が、一年から三年になってくると途中でやめられない、これは職業選択の自由、転職の自由というものを侵す重要な問題だと私は思っております。例えば、エステティシャンの方が資格を取るための教育訓練をさせたのだから簡単にやめられたら困る、その分賠償しろというような問題。あるいは、新聞配達員も、最近なかなか集まらないので、募集の経費をかけているんだからやめるなというような問題。また、准看護師さんに関しては、今までもお礼奉公のような問題もあったわけなんですね。こういうふうなことを、今回の有期雇用の延長で選択の幅が広がると言いながら、実際には選択の幅が狭まっているというふうに私は思います。
それで実際、坂口大臣、公明党さんの政策を見ましても、二〇〇二年の十一月に発表された公明党さんの全国大会での政策の中で、卒業後三年以内に離職する若年者が極めて多く、大卒約三割、不安定就業若年者を生み出している現状を改善するために、各学校が卒業後一年から三年程度の就労状況を把握し、ハローワークの専門職員等と連携の上、就労相談や職業紹介等を継続する体制を整備しますということが公明党の政策にも入っているわけなんですね。
こういうふうに、大卒の方も三年以内に三割がやめておられる。そういうふうなケースを考えると、これは三年の有期雇用ということで、一年目以降やめたいのにやめられないということが非常に大きな問題になってくると思います。憲法二十二条第一項には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」ということが書いてありますが、やはり、やめる自由を保障すべきではないですか。これは憲法違反にもつながりかねないんではないでしょうか。坂口大臣、お願いします。
○坂口国務大臣 どのような働き方を選ぶかは、その人の自由であります。常用雇用を目指す人もおりましょうし、あるいは有期雇用を目指す人もおりましょうし、あるいはまた有期雇用ではなくてパートのような働き方を目指す人もおりましょうし、それはその人が今後自分はどういうふうにしたいか、そういう将来に対する希望あるいはまた将来に対する予測、そうしたものを中心にして決定をしているんだろうというふうに私は思います。
したがいまして、三年契約という上限があったとしましても、その人が契約で雇われますときに、いや、私は、いろいろなことがあって、考えていることもあるので、一年ならば一年の契約にしてくださいということだってこれはできるわけであります。何も三年と決まったわけではないわけでありますから、そうした契約にすればいいというふうに思いますし、その人がどういうお考えで職を持とうとしておみえになるかということによってこれは違ってくる。ですから、勤める皆さん方も、勤めます以上はそのことを自分がやらなきゃならないという責任を持ってお勤めになるわけでありますし、そしてそのためには覚悟を決めて働かれるわけだというふうに思います。
ただ、何が起こるかわからないというのが人生でございますから、そうはいいましても、三年働こうと思っていたけれども途中でどうしてもやめなきゃならないということだって、それは私も起こり得るというふうに思います。そのときにお話し合いをして、そういうことが起こったのならそれはやむを得ないなというふうに経営者側も理解してもらえるようなことならば、それはそれで認めるということになっているということを申し上げているわけであります。
○山井委員 まさに坂口大臣も今、三年と思っていたけれども一年過ぎたらやはり移ろうかという思いを持たれる方もいるということはお認めになりました。まさにそこ、個々に経営者側との話でということですが、やはり労働者の立場は弱いわけですから、契約違反、訴訟しますよということを言われたら、なかなかやめるわけにはいかない。そういう意味で、やはりこれは個々の話じゃなくて、きっちり制度としてそういう柔軟な、まさに転職の自由を認める、まさに労働者の選択の幅を広げる改正にすべきだと思うんです。
きょう、資料を配らせていただきました。これはジュリストの「労基法改正と企業の人事」というもので、その中で当時の旭硝子の人事部長の平田さんと富士通の人事課長の三宅さんが次のようなことをおっしゃっているわけですね。まず、富士通の人事課長の三宅さんは、今の、まさに坂口大臣がおっしゃった問題に対して、「拘束を心配するのであれば、逆に「一年を超える場合については、解約を認める条項を必ず入れること」としておけばいい」と。これは経営側の方がおっしゃっているわけですね。その次のページ、三ページ、逆に旭硝子の人事部長の平田さんも「本当は五年なら五年保障してあげて、一年以降はどうぞと」、どうぞというのは自由にやめられますということなんですけれども、「どうぞというふうにしてあげたほうが、よっぽどお互いのニーズに合っていることになります。」ということを経営側の方もおっしゃっているわけですね。
坂口大臣、こう考えたら、やはり柔軟にここは、三年契約だけれども一年目以降は自由にやめられる、そういう柔軟な形にした方がいいんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○坂口国務大臣 それは働く人にとりましてもメリット、デメリットのあることだというふうに私は思いますね。だから、一年なら一年でそれはやめてもいいよということになれば、逆に経営者の側からも一年たてば一年でもうやめさせてもいいよということになりかねないと私は思います。したがって、そこはある程度きちんとしておいた方が、私は、働く人のためにもいいのではないかというふうに思います。三年働けるというふうに思っていたのに、突然もうあなたいいよというふうに言われても困るわけでありますから。
私は、山井先生の御意見というのは、尊敬する山井先生でございますからできるだけ尊重したいとは思いますけれども、それはメリット、デメリットのある話でございます。ここに書いてある、経営者の皆さんですから、経営的感覚の中でおっしゃっているということもよく理解をしていただかないといけない。両方ある。ですから、必ずしもそうした方がいいとは私は思いませんけれども、山井先生もそこはよくひとつお考えをいただきたいと思います。
○山井委員 私は、三年じゃなくて一年と言っているのではなくて、私の提案というのは、三年は雇用を保証する、しかしやめる理由は一年からオーケーという話で、実際、次の四ページを見てください。こういう片務的と言われる、片方だけ自由にするという形があり得るわけですね。
実際、この四ページ目の資料にありますように、二〇〇一年の十月二十三日の労働政策審議会の労働条件分科会でも、大阪大学の大竹先生が、「使用者側のほうだけ三年は解雇しないけれども、契約期間は三年であって、三年経ったら更新はしないかもしれないというタイプの契約。労働者のほうは、いつ辞めてもいいし、あるいは最低限一年は有期雇用と同じような形で扱ってもいいかもしれませんが、このように片方だけバインドするタイプの契約を法制化するということはどうだろうか、というのが私の提案です。」というふうに、規制緩和論者の法学者の方もおっしゃっておられるわけです。
また、次のページの五ページでも、同じ委員会で十月三十日、諏訪康雄法政大学の教授が、「期間を長めにしていくというときには、こうした片務的有期雇用の可能性をも選択肢の中に入れてみたらどうだろうか」と。
ですから大臣、必ずしも三年、三年ということではなくて、雇う側は三年保証する、しかし労働者にとっては、不当拘束をなくすために、一年以降は自由にやめられるという可能性を、まさに分科会の中でも、規制緩和論者の、法学者の、労働法の学者の先生方が提案されていられるわけです。これだと、労働者にとっていい、かつ、先ほど言いましたように、雇用者にとってもいいというふうに思うんですが、私の尊敬する坂口大臣、どうかよろしくお願いいたします。
○坂口国務大臣 学者先生もいろいろなことを言いますから、それはいろいろ意見はあるんだろうというふうに思いますが、常識的に考えまして、雇う方、雇われる方、やはりそれぞれの立場があるわけであります。
雇う側からいたしますと、三年という契約で雇って、そして何とか頑張ってもらいたいと思っているのに、半年でもうやめますと言ってやめられるということになると、また一からやり直さなきゃならないというようなこともあるし、また、働く側からいえば、三年という立場で契約はしたけれども、やむにやまれぬ事情が生じるということだってそれはあり得るというふうに思うわけです。だから、やむを得ない事情のときには、双方、それは認めましょうよということではないかと思うんです。
賃金を、例えば月収三十万なら三十万で契約をしたら、隣に三十五万のところが出てきたからといって、すぐやめますよというようなことでもぐあいが悪いということではないかと私は思うんですね。ですから、そこは双方が、片方はいつやめてもいい、片方はやめさせたらいかぬというような調子にうまくいくかなというのを、私は、一遍それは整理して考えないといけないのではないか。逆の場合のことを言われる可能性も、起こってくる可能性がある。そこは法律的によく整理をして考えないといけないのではないかという気がいたします。私、法律の専門家ではございませんから、そこは一遍よく整理をしないといけないというふうに思います。
○山井委員 まさにそこなんですが、労働法の学者の方々も分科会でこういう御意見を複数おっしゃっておられる。おまけに、先ほど水島議員の話にもありましたように、七ページ、八ページを見てください。実際既に労働基準法の枠内で、大学教員等の任期に関する法律の中で、八ページ目、具体的にいいますと、私立の大学教員の任期、坂口大臣、ちょっと見ていただければありがたいんですけれども。八ページの五項、下線が引いてあるところでございます。右上に八ページと書いてありますが、そこを見ていただくと、私立大学の教員の任期というところが、「第一項の規定により定められた任期は、教員が当該任期中(当該任期が始まる日から一年以内の期間を除く。)にその意思により退職することを妨げるものであってはならない。」ということで、裏返すと、今申しましたように、複数年契約するけれども、ただ、一年目以降は自由に退職できる、これは有期雇用という部分と、かつ職業選択の自由、不当拘束を防ぐという部分を両方ミックスした、労働者の選択を縮小させない法律、この部分というのが今現にあるわけですね。これは先ほどの局長の答弁でも、これは今回の法改正の後もこのままでオーケーですという答弁までいただいているわけです。
ということは、坂口大臣、今回の法改正の趣旨は労働者の選択の幅の拡大なわけですから、三年と思って勤めたけれども、一年目以降やめられなくてトラブルが続出した、これは結果的には不当拘束の現代版、お礼奉公を一般的に拡大する、大変な悪い法改正ではないかということが、私は問題になってくると思うんです。一年だったから今まで我慢していたけれども、三年になると、それが深刻な問題になってくると思います。
このような私立大学に実際あるようなことを、やはり拡大して、一年目以降は退職が自由にできる、そういう形に考えていく、これについて坂口大臣、前向きな御答弁をお願いします。ぜひとも御検討いただきたいと思います。
○坂口国務大臣 三年というのは、上限を設けておるわけでありまして、何も全部三年にしろとか五年にしろということを言っているわけでは決してございません。
私立の学校のこういう項目がありますことを、先ほども水島議員にお示しをいただいたところでございますが、確かにこういう項目がございますし、これからもこれが生き続けるということだそうでございますから、こういう生き方もそれはあるんでしょう。
いわゆる学問の世界におみえになる皆さん方の問題と一般の人たちの問題を同じに考えてもいいのか、それともそこは若干違うのか、そうしたことも少し検討しなきゃならないというふうに思いますから、私もここで、私立の問題にできているから、まあそれじゃみんなそうしましょうともなかなか言いがたい。少しこれは検討を要することだと思っております。
○山井委員 もう最後、一つだけなんですが、先ほど申し上げましたように、大卒の方も、三年以内に三割の人がやめています。だから、本当は常用雇用にしてほしいと。ところがもう、例えば量販店なんかでも、契約社員しか雇わないというようなところも出てくるわけですね。それで、泣く泣く、三年雇用しかないからといって入った。ところが、やはり二年目ぐらいに、いい会社が見つかったとか、いろいろな状況で、やはり移りたいというケースがこれから続出してくると思います。
それを、この法改正をしてしまうと、恐らく坂口大臣は、これは職業選択の自由を拡大する、労働者にとっていい改正だと信じてこの法案を出していられると思うんですけれども、しかし実際には、そういう職業選択の幅を小さくして、不当拘束になってしまう、そういう法案であったということになってはならないと思いますので、ぜひともこの片務的な、一年以上の部分に関しては、自由に転職ができる、退職ができるということを前向きに検討していただきたいと思います。最後にそれだけ答弁を求めて終わります。坂口大臣、よろしくお願いします。
○坂口国務大臣 山井議員の御主張はよくわかりました。我々、こういう法律を出させていただいているわけでありますから、この法律をぜひお願いしたいというのが現在の私の立場でございますけれども、今後、こうしたことを進めていく上で、それを進めていく中で、うまくいかない部分もそれは出てくるかもしれません。そうしたことについては、常時やはり見直していくということは大事でございますから、よく理解をし、頭の中に十分に入れておきたいと思います。
○山井委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
○中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
○中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
この際、内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案に対し、鍵田節哉君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。城島正光君。
―――――――――――――
労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
―――――――――――――
○城島委員 労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。
労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案につき、民主党・無所属クラブを代表して、その趣旨を御説明申し上げます。
私どもの委員会質疑で明らかになったとおり、政府は、今回の改正におきまして、現行の解雇権濫用法理を足しも引きもせず条文にするとおっしゃりながら、その内容は、今まで積み重ねられてきた解雇権濫用法理の運用を根底から覆す内容となっております。すなわち、現在の裁判実務では、労働者の解雇につき、客観的に合理的な理由があることについて、実質的に使用者に主張立証を求め、弁論終結の時点で、裁判官が、客観的に合理的な理由がある、社会的相当性があるという心証を形成できなければ使用者が敗訴する、これこそが解雇権濫用法理の運用の現実であります。この実質的証明責任を使用者が負っていることを明らかにしなければ、解雇権濫用法理を条文化したとはなりません。
また、解雇が原則自由であることを明記する今回の政府案が成立すれば、就業規則所定の解雇事由によって解雇権が制約されるとしてきたこれまでの判例が覆され、裁判実務が決定的に変更されることが予想されます。さらに、退職の自由が認められない有期労働契約期間の上限延長は、労働者の職業選択の自由、転職の自由、キャリア開発を阻害しかねません。このような視点から労働基準法改正案を見た場合、私どもは抜本的な修正が不可欠であると考えました。
以下、その概要を御説明いたします。
第一に、有期労働契約につきまして、期間の定めのある労働契約の契約期間の上限の延長に係る改正を行わないものとすることとしております。
第二に、解雇に関して、使用者は、この法律または他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合以外の場合であっても、労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することができないものとすることとしております。
第三に、就業規則で定める解雇事由によらない解雇の制限につきまして、使用者は、就業規則で定める解雇の事由に該当する事実がなければ、労働者を解雇することができないものとすることとしております。
以上であります。
何とぞ、趣旨御理解いただき、委員各位の賛同を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
○中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
―――――――――――――
○中山委員長 質疑を続行いたします。大島敦君。
○大島(敦)委員 民主党の大島敦でございます。
きょうは、裁量労働制について質問をさせていただきます。
裁量労働制というのは、専門型の裁量労働制はわかりやすいんですけれども、企画業務型の裁量労働制の具体的イメージについてまず固めていきたいと思います。
それでは、政府参考人に、この裁量労働制について概略を御説明していただければ幸いでございます。裁量労働制、専門型と企画業務型について、簡単な特色とそのねらいについて御説明していただければ幸いでございます。
○松崎政府参考人 ただいま御質問のように、裁量労働制については二種類ございまして、いわゆる専門型と企画型と二つございます。
共通しておりますのは、裁量労働制と申しておりますように、業務の性質上、業務遂行の手段でありますとか方法、特に時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務、そういったものについて、労働時間の管理を労働者本人に任せようというものでございます。
そこで、まず専門型でございますけれども、これは専門業務型と申しておりますように、特別な専門的な業務として確立しているものを前提として、みなし労働時間、今申し上げましたように、実際の労働時間管理、そういったものを労働者本人に任せて、実際に、例えば、きょうは四時間、あしたは十時間といったようないろいろな働き方をすることによりまして、トータルとして何時間働いたかということをみなそうというものでございます。
企画業務型でございますけれども、これはこの名前のように、現行制度で申しますと、企業の本社等、そういった場所におきまして、事業運営上重要な決定が行われる事業場、これは本社等になるわけでございますけれども、そこで事業運営についての企画立案、調査、分析、そういった業務を行いますいわゆるホワイトカラーの方を対象として、今申し上げましたように、労働時間管理、そういったものを御本人に任せて、みなし労働時間を適用しようというものでございます。
そういったことで、専門型につきましては、今申し上げましたように、ある程度、前提といたしまして、業務というものが確立されておりますので、基本的には労使協定によって例えばみなし労働時間を決めるといった仕組みになっております。
また、企画型につきましては、会社によって実態も若干違うということもあります。そういったことで、単なる労使協定ではなくて、事業運営からいろいろな労働者の状況、そういった全体の事業場におきます状況というものを一番よく知っておるはずの労使、これが同数の委員となりまして、労使委員会というものを設置いたしまして、そこでいろいろな物事を決めて、決めたことを監督署に届け出るなりして、先ほどの専門型における労使協定と同じように、どういう業務であるとか、また対象となる方の範囲であるとか、またみなし労働時間の時間数であるとか、そういったものを決めていく、こういった制度でございます。
○大島(敦)委員 そうしますと、専門業務型の裁量労働制の対象となる労働者の方の、要はキャラクターなんですけれども、専門性が求められるわけですから、それは具体的に絞られている方だと思います。その点について例示的に、どんな方が対象となっているのか、挙げていただければ幸いです。
○松崎政府参考人 今の御質問の専門型でございますけれども、これはいろいろ、現在、基準法以下の省令、規則それから告示等で決めてございます。
例えば、新商品、新技術の研究開発、それから、いわゆるSEといいますか、情報処理システムの分析、設計業務、それから記事の取材、編集、デザイナー、プロデューサー、ディレクター、そういったところから始まりまして、例えばゲームソフトの創作の業務でありますとか、そういった現在はやっているといいますか、流行の職務から、また公認会計士、弁護士それから建築士、不動産鑑定士といったような、いわゆる士といいますか、こういった資格を持っていろいろと仕事をする方、こういった方が対象になっております。
○大島(敦)委員 そうしますと、専門型の裁量労働制の適用となる労働者の方というのは、これは専門的な知識を持っていらっしゃる方でございまして、会社と当人との関係においては、例えばA社で働いているSEの方は、ほかのB社、C社であっても働ける可能性が高い方、労働移動が可能な方が対象になっているかと思います。しかしながら、企画業務型の裁量労働の対象となっている方は、例えばA社でしたらA社の人事部とかA社の経営企画部にいらっしゃって、その汎用性がない方と理解しております。
そうしますと、専門型においては、労働側あるいは使用者側の力関係が、イコールではないんですけれども比較的労働者側の力関係は強い。企画業務型については、専門業務型に比べてさほど低くないのかなと私は思うんですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
○松崎政府参考人 裁量労働制につきましては、御質問のように、使用者に対して交渉能力があるからといった観点で設けられたものではなくて、冒頭申し上げましたように、やはりこういった業務の性質上、一人一人、本人が時間の配分とか時間管理、業務の遂行方法、そういったものを決めて、自分の裁量でもって働いた方が、今その人が行うべき職務がより効率的、効果的に遂行できるといった趣旨からしたものでございますので、具体的に交渉能力の強さといいますものは、個人差といいますか、具体的に差もあるんじゃないかと思っております。一般的にどうこうというのはちょっと言えないんじゃないかという気がしております。
○大島(敦)委員 今、松崎局長の方から、業務について時間管理ができ、あるいは自分の仕事の配分もできる自立した労働者あるいは従業員像という御説明がございました。
それでは、企画業務型についてなんですけれども、その企画業務型の裁量労働制の対象となる従業員の方、労働者の方のどのような方が対象となるのか、その点についてお聞かせください。
○松崎政府参考人 条文としましては先ほど申し上げましたような格好で決めているわけでございますけれども、それが具体的に企業の中でどういった業務が対象になるかということについて、またもうちょっと詳しい、大臣が定めます告示の中で具体的に挙げております。
対象業務につきましては、例えばということで挙げておりますのは、経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態、経営環境等について調査、分析を行い、経営に関する計画を策定する業務でありますとか、また、人事、労務を担当する部署における業務のうち、現行の人事制度の問題点やそのあり方などについて調査、分析を行い、新たな人事制度を策定する業務、こういった例を挙げております。
したがいまして、そういった部署におりましても、いろいろ、コピーとか会議の日のセットであるとか連絡とか、そういったようないわゆる従来型の事務的な仕事というのはこれに入らないという格好になっております。
○大島(敦)委員 そうしますと、今松崎局長がおっしゃられたことというのは、中堅とか中小とか、比較的規模の小さな会社にそのような従業員の方がいることは少ないのかなと。上場企業の本社、中枢のところで働いている部員の方、学卒の部員の方が、今おっしゃられた企画業務型の裁量労働制の対象となるのかなと理解するんですけれども、いかがでしょうか。
○松崎政府参考人 企画裁量型で対象としております、一言で言いますと経営戦略をつくることに携わっている方ということになるかもしれませんけれども、そういった方が中小企業にはいなくて大企業にしかいないというのは、企業によっていろいろ実態も違うんでしょうから、一概には言えないと思いますけれども、実際に多くのスタッフといいますか、グループをつくって仕事を、中小企業ではなかなか人数の点からいっても、本当は一人ぐらいいるのかもしれませんけれども、人数的にいえば、大企業ではグループをつくって、そういう部門でやっているというところのスタッフの方が結構いるという実態かもしれません。
○大島(敦)委員 そうしますと、現行の企画業務型の裁量労働制の対象となっている、要は管理監督者ではなく学卒の部員の方の人数で、その中で、かつ、今局長がおっしゃられた対象となる仕事をしていらっしゃる方は各社何百人もいるとは思えないんですけれども、その点について、私としては、自分のいた会社を見ても、大体人と顔が思い浮かんで、そんなに多くの方はいらっしゃらないと思うので、その点についてはどうお考えでしょうか。
○松崎政府参考人 これも、私自身が本当に民間企業の実態を完全に知っているかというと、ちょっと心もとない面があるわけでございますけれども、やはり若い人についても、将来会社を背負っていく人間として若いうちから働いてもらう、責任を持ってやってもらうというところから、従来に比べれば、もっと若いうちから責任を持ってこういった仕事に参画させていくというのがふえつつあるのではないかと思っております。
そういったことで、一概にこれだけの人数しかいないはずではないかというのは、なかなかちょっと数とかパーセンテージ、そういったもので言うことは適当ではないというふうに考えています。
○大島(敦)委員 この点の認識というのが私は大切だと思っていまして、今回の企画業務型の裁量労働制について幾つかの改正点がございまして、今までですと、先ほども申されました、本社の中枢機能に当たるところ、役員がいる、いないというのが要件になっていた、その部分が外れるかと聞いております。ですから、今、企画業務型の業務の内容についてしっかりとした政府側の認識を伺いませんと、なかなかそこまで拡大はできないのかなと。
会社の中で例えば経営企画部にいたとして、経営企画部の管理職になるまでの方で、その会社の命運を左右するような企画立案、調査、分析をやっていらっしゃる方はそんなに多くないと思うんですよ。その数というのが、拡大解釈して、皆さんに認められるのか、ある程度限定しなければいけないのか、その点についてお聞かせください。
○松崎政府参考人 これはやはりまず趣旨から申し上げまして、先ほど言いました、いわゆる経営戦略の作成に携わるような方ということで、おのずと限定されると思っておりますし、また現実におきましても、昨年、十四年十二月末現在でございますけれども、導入しております事業場の数で百八十ちょっと、企画型の裁量労働制の対象となっております方が六千七百人ということで、全体的に見ればまだまだ非常に一部の方という状況で、これが実態をあらわしているのかなというふうに私どもは考えております。
○大島(敦)委員 そうしますと、ちょっと戻って、企画業務型の裁量労働について、例えば先週、先々週、当委員会で議論させていただいている派遣労働法については、マーケットのニーズがあって、後から法律ができたかと思うんです。今回の企画業務型の裁量労働というのは、ニーズがあってできた制度であるのか、企画業務型を導入したときに、産業界あるいは労働界からの入れてくれよという、その要求のレベルというのはどの程度だったんでしょうか。
○松崎政府参考人 これは企画業務型裁量労働制でございますけれども、裁量労働制を導入するに当たりましてのいろいろなニーズでございますけれども、それは、実態からしまして確かに最近ふえてきております。特に、労働時間短縮、これを進める上で、自分の業務といいますか、もうつき合い残業がなくなるようにということもあるわけでございまして、労働時間短縮を進める上で、自分で管理をして何とか進めたいということで、従来、例えばフレックスタイム制なんかもやってきましたけれども、なかなか定着しないという面がございました。
そういったことで、業務を限定して、こういうふうに自己管理させることによって、やはりめり張りのついた労働時間、実際に働く労働時間というものになって、トータルとすれば労働時間短縮も進むといった趣旨もあって、全体の中で、労働条件向上と、それから、先ほど申し上げましたように、いろいろな働き方、一人一人が労働時間についても多様な働き方ができるようにという、そういった多様性を認めていくといった観点からこういったものが議論され、また公労使におきましてもそういった点から議論した結果、こういった裁量労働制というものが設けられた、導入されたというふうに認識しております。
○大島(敦)委員 今局長の答弁ですと、多様な働き方、その多様な働き方を認めるために、各労働者に目標を与えて、自分で時間管理をして、自分のモチベーションを高めた方がよく働けるし、ストレスのない働き方ができるというような御答弁をいただきました。
そうしますと、今、会社の中では、フレックスタイムというのが導入されている会社が多いと思います。例えば、二十代。この皆さんがおつくりになっている指針みたいなものを読みますと、入社してすぐの方はだめだ、三年から四年たった方について適用しろと言われておりまして、そのような方というのは裁量労働制を適用する必要があるのか、それともフレックスでも適用可能かなとは思うんですが、その点についてはどうでしょうか。
○松崎政府参考人 確かに、従来からフレックスタイム制度というのがございまして、特に、労働時間短縮といったものを進める上で効果があるんじゃないかということで、私どもも大分普及に努めた時期がございました。
しかしながら、結局のところフレックスタイム制といいますのは、労働のスタートと終わりといいますか、始業、終業の時刻を自由に決めるということで、オフィスにいる中でどうやって働くか、どの時間働くかといったことについては使用者から基本的に具体的な指示命令を受けるというものがフレックスタイム制でございます。さらに、コアタイムとかいったものもございまして、全体的に、自分での自己管理というものは完結していないというところでやはりなかなかうまくいかなかった面もあるんではないかと思っておりまして、実態としましても、私は今手元に資料がございませんけれども、余りこのフレックスタイム制というのが定着はしておらないという現状がございます。
○大島(敦)委員 今局長がおっしゃられた、フレックスタイム制がそれほど導入されていない点とか、あるいはフレックスタイム制についても、その導入に当たって、今までが定時管理をしていた会社、例えば、新入社員で入ってきて、ずっとそれが九時―五時の定時に始まる、その職場になじんでいて、自己管理できる方がフレックスタイムに移行していくと、フレックスタイムも自己管理できますから機能する。しかしながら、今の新卒社員がそのままフレックスに入ると、自分が学生時代それほど時間管理できていなかったとすれば、フレックスタイムの方がうまくなじまない、そういう実態もあることもよくわかっております。
しかしながら、フレックスタイム制というのは、今、例えば学卒の二十代後半の部員の方にこの企画業務型の裁量労働制を適用したのとフレックスタイムで適用したのとそんなに大きな差はないと思うんですけれども、もう一回御答弁をお願いします。
○松崎政府参考人 やはり場面場面において違うのかもしれませんで、裁量労働制でありましても、これは自分でやるわけですから、自分で割と毎日毎日きちょうめんにやった方がいいという格好で、フレックスタイム制そのもののように働こうとする方もやはりおられましょう。
そういったことで、一人一人によって、そのフレックスタイム制でもほぼ目的が達成される方もおられるかもしれませんけれども、トータルとしますと、やはりねらいは、労働時間管理、業務遂行方法、そういったものは自分で管理をしてやっていくというところが決定的な違いということですので、制度としてフレックスタイムで何とか対応できるというものではないというふうに考えています。
○大島(敦)委員 企画業務型の対象者の具体的なイメージというのが、わくんですけれども、企画業務型を適用するメリットがどこにあるのかなということをずっと考えてきていまして、それは、会社によって風土が違ったり、あるいは管理監督者、役職につく年限というのが違っているかと思うんです。早い会社ですと、学卒で入ってきて大体八年から十年ぐらいで管理職、いわば非組合員になる。遅い会社ですと二十年ぐらい、十五年から二十年かかるという会社もございます。
ですから、そこでの仕事の中身でも、二十代後半から三十代の後半までのそれを一括して企画業務型の裁量労働制で運用するといった場合に、自分が今言ったような二十代の方にはこのような働き方、二十代の方に例えば企画業務型の裁量労働制を認めるのはちょっと酷なのかな、それが、三十五とか、ある程度管理職の一歩手前になって企画業務型の裁量労働を認めるのは、それほど違和感がないのかな、そのような感覚を持つんです。
なぜかというと、要は、早い会社は十年たつとそのまま役職になってしまうから、それは、管理監督者として役職手当がついて働くようになるから、仕事自体が恐らく企画業務型の裁量労働制に近い働き方にそのままなる。
だから、そこの部分について、企画業務型の裁量労働制をどうしても導入したいという企業側のニーズというのは強くあるんでしょうか。
○松崎政府参考人 まず、いわゆる管理監督者との関係でございますけれども、基本的に、管理監督者といいますか、いわゆる俗に言う管理職のように、業務の遂行全体について、あるセクションの遂行について責任を持って部下をあれするというんじゃなくて、自分の持ち分について裁量労働制という仕組みを使って働くというので、いわゆる管理職に非常に近いとか一歩前といったものとはやはり概念的にはちょっと違うんじゃないかというふうに思っております。
それからまた、若い方についてもいろいろな働き方の中でやっていくことが会社はどういうメリットがあるかということでございますけれども、それは、実際にきちんと労使委員会というものが設立されまして、実態に合った格好でこれを運営されているのであれば、俗に言う残業手当がもうかるといったこともないわけでして、コスト面ではなかなか企業にとっての直接のメリットはございませんけれども、やはりこういった働き方によってトータルとして仕事の成果、そういったものについてメリットがあるというふうなことを考えて導入しているんだというふうに考えています。
○大島(敦)委員 今の局長の答弁の中で、指揮命令系統という話がございました。企画業務型の裁量労働制を適用している労働者というのは、管理監督者とは違って、そこには、適用されている従業員あるいは労働者が、ほかの人に対して指揮命令をしなくて、自分の業務分担においての裁量労働が認められているから認めるんだよというお話であったと思います。
しかしながら、今の日本の人事制度においては、役職が皆さん管理監督の権限を持っているわけじゃなくて、今、主任部員制度等を導入しておりますから、そうすると、管理監督、指揮命令という役職を持っているラインの長の役職もいるし、あるいは、ラインから外れて、自分で専門業務を持っていわば企画立案に従事していらっしゃる管理監督者もいるものですから、そこのところはちょっと違うのかなとは思うんです。
そうすると、企画業務型にした場合に、今でもラインのマネジャーなんですけれども、従業員に対して、自分の部下に対して仕事を与える場合、人によって差がありますから、すごく早く仕事を終わらせてすぐ帰るやつもいるし、結構時間が遅くなってなかなか成果が上がらない人もいるかと思うんです。そこには個人差があると思うんですね。恐らくその成果物に対してどういう評価をするかということだと思うんですけれども、サービス残業と企画業務型の裁量労働制についてどのように考えればいいのか、そこの点についてお聞かせいただければ幸いなんですけれども。
○松崎政府参考人 サービス残業、いわゆる賃金不払い残業でございますけれども、これはまさに、きちんと残業したにもかかわらず賃金が払われておらないというものでございます。したがいまして、これは違法ということで、あってはならないわけでございます。
この問題と、いわゆる企画裁量型を導入すればサービス残業隠しになるのか、あるいはサービス残業がいい意味で解消されるのかといった問題。そういった問題もなかなか理論的にはいきませんけれども、ただ、一つ言えることは、サービス残業と特に言いますと、ちょっと言い方が悪いかもしれませんけれども、自分は人より余計かかるので、ほかの人は定時に帰るけれども、自分はちょっと時間がかかるので、二時間残業をして同じ分量ぐらいのことをする、だけれども、やはり悪いと思って目をつぶっているというのがあるかもしれませんけれども。
そういったことにつきましては、やはり企画裁量型になってくればめり張りをつけて働けるということで、集中度とかそういったものも配分できるということ、そして全体としての能率も上がるということで、少なくとも解消の方向には向かうのじゃないかというふうに考えておりますけれども、直接この企画型の裁量労働制といわゆるサービス残業について、これは、どうなればどうなるといったようなものでは考えにくいのかなというふうに私は考えます。
○大島(敦)委員 今までですと、企画業務型の裁量労働制の適用の事業所というのが本社組織あるいは役員のいるところに限定されておりました。したがいまして、企画業務型の性格というのを厳格に守ってきていただいたのかな、特に労働基準監督署の方でも厳格な要件を適用しながら拡大解釈が行われないようにしてきたのかなとは思っているんです。
そこについて、労働基準局ですか、あるいは監督署の方で厳格に解釈してきたというのは、一つの意味というのかな、おそれがあってそのようにしていたのかなと私は思うんです。それを拡大解釈すると、今おっしゃられた企画業務型の、これからちょっと伺うのですけれども、対象業務の要件の拡大について、支社とか支店とか、役員がいないということ、あるいは対象業務が離れていく等、ますます広がっていくのかなと思うんです。
例えば、その対象業務について具体的に伺いたいのですけれども、本社にいて工場があって、その工場をどこに立地するか、中国に立地するのか台湾に立地するのか、あるいはタイであるとか、その辺の立地の条件について決めることというのは企画裁量に当たると思うんですけれども、それが、工場のラインをいかに生産性を上げていくかの仕事というのがあるわけですよ。そのような仕事というのは企画業務に当たるのか当たらないのかというところを伺えれば幸いなんですけれども。
○松崎政府参考人 まずは、企画裁量型の要件でございますけれども、これは何回も申し上げていますように、事業の運営に関する事項について企画立案、調査、分析ということでございます。したがいまして、端的な例は、おっしゃいましたように、本社でまさにどういう戦略、企業戦略、中国へ進出するのか、国内でやるのか、タイへ行くのかといったことがあろうかと思います。
これは、従来この制度を設けましたときには、そういった業務というものはやはり本社部門、少なくとも役員が常駐しているようなブランチの部分しかないだろうということで、実際の必要性ということから、そういったような本社等に限定してきたわけでございますけれども、やはりこれだけ権限移譲、地方分権じゃございませんけれども、権限移譲なり事業本部制のようなこと、それから独立採算制のようなこと、こういったことで、どんどん企業内で各支店でありますとか工場とかいったものが競争し合うような格好で活性化していこうという中で、今度はそういった役員のいない支店の中でも、例えば工場でも、ちょっと細かい例かもしれませんけれども、その工場で一体どんな製品をやっていくのか、市場調査、全国の調査かエリアの調査かは別にしまして、市場調査でありますとかニーズでありますとか、そういったものを把握、それから、部品の調達の簡便さとかコスト計算、そういったものをシミュレーションをつくったりして、この工場としてどういったものをどういう格好でつくっていくかといったことについては、多分これに当たっていくのだろう。
ただ、具体的に今やっているラインをさらに能率をアップして、QC活動じゃありませんけれども、そういったものをしていくというのは事業の運営に関する事項というものには通常当たらないのではないかというふうに思われます。
○大島(敦)委員 今の局長の答弁を思い浮かべながら仕事を特定していくと、ほとんどの部員の仕事がそれに当たるはずなんです。
今の原価計算なんというのは、これは企画業務でも何でもなくて、原価計算を淡々とやる、そこにはもちろん企画的な仕事もありますけれども。あるいは、例えば事業部の事業部門長としてマーケティングをして新しい商品開発をするとか、事業部としての工場立地について検討するとか、これは企画業務型の裁量労働には当たると私は思うんですけれども。ただ、そこの下の企画業務に当たらない仕事というのが極めて多いわけなんです。
例えば、企画業務型の仕事に当たるか当たらないかで、今のがメーカー、製造業だとすれば、金融業とかがありますよね、銀行、生命保険会社そして損保の業界がございます。そこにおいての商品の企画というのは本社サイドで全部やっているわけですよ。銀行の支店なり、あるいは保険会社、生命保険でも損害保険でもいいですね、支社の支社長の下というのは、それはもう売り圧力だけであって、そこにはそんなにクオリティーの高い企画業務というのはないかなと私は思うんですけれども、その点について、金融業、サービス業においての、特に販売というところに絞って企画業務型について特定をすればどのような仕事があるのかなというところをお聞かせください。
○松崎政府参考人 先ほどの工場の例は、若干個人的にも見たことがあるので言えたのですけれども、サービス業、金融のところは実体験がありませんので、なかなかイメージがわかないところがございます。
ただ、しかしながら、おっしゃいますように、単なる原価計算だけではそれはだめなわけで、やはり全体の商品戦略とか、どういうものをつくってどういう規模でやっていくのかといった新しい戦略、そういったものをやる中で一緒に全体の企画を左右するような意味での原価計算なら入るのかなというふうに考えて申し上げたわけでございまして、趣旨はそういうことでございますので、具体的にこれを実施するに当たりましては、やはり実態というものを外れてはいけませんので、これをきちんと把握して、また関係審議会におきましても御議論がいただけるのじゃないかというふうに思っております。
現在のところ直ちに、私の頭の中にイメージがぱっとあって、これがまさにそうだというのはお答えできませんけれども、今後いろいろ具体的な事例というものを見ながら検討していくということにしたいと思っています。
○大島(敦)委員 その企画立案、調査、分析なんですけれども、そこにはノルマという言葉がないわけなんです。会社というのは利潤追求を目的としていますから、やはりノルマというのがあるわけですよ。企画立案、調査、分析の今おっしゃられた仕事というのは、ノルマからは離れている仕事だと理解するわけです。
営業を任されている、そこでどれだけの売り上げを上げなくちゃいけないかとか、あるいは工場の生産性をどこまで上げるとか、そういうコミットメントをして、それに対して到達をするということ、そのことについては、企画業務型の裁量労働の対象となっている従業員の方は、そのようなノルマ制、ノルマ制という言い方があるかどうかわかりませんけれども、そういうところから離れていて、ラインのいわば知恵袋として活動する、そういう考え方でよろしいでしょうか。
○松崎政府参考人 申しわけありませんが、ちょっとイメージが違うのかなという気がしております。
というのは、確かに販売でありますとか生産でありますとか工場のラインのような、そういったノルマはないわけですけれども、先ほどの例でいいますと、工場なら工場、特定の工場で戦略を考える場合に、担当一人で考えるわけじゃなくて、やはりチームで考えていくんだと思います。そういうチームの中で全体のことを議論したりしながら、その方向性を見きわめながら、自分の持ち分でどれだけ正確な分析を行い正確な調査をできるかといった、量じゃなくて質の意味でのノルマというのは、心理的なノルマというのはかなりあるのではないかと思っております。したがって、ノルマはないというんじゃなくて、ノルマの種類は違うかもしれませんけれども、やはりそういった非常に重責を負っているという気持ちはあると思います。
○大島(敦)委員 今の質問というのは、今回の改正の中で「事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、」というその文言が削除されるわけなんです。ということは、これは事業運営上重要な決定が行われる事業場、本社でなくてもいいよということになるわけです。
そうすると、今まで導入していた会社というのは私もよくわからないんですけれども、百八十二事業場が導入されていて、六千七百七十四人の適用労働者がいらっしゃるということなんですけれども、その百八十二の導入事業場というのは、これは内訳は伺っていないんですけれども、恐らく製造業が多いのかなと私は理解するんです。
これからは、この本社という規定が抜けると、多く本社機能以外に持っているところというのは、それはサービス業なわけですよ、金融業が非常に多いわけですよ。そこに企画業務型の裁量労働制が導入されるとすれば、各支社に一人か二人ずつ企画業務型の裁量労働の対象になる方が出てくるのかなと思うわけなんです。
そうしますと、確かに仕事に対するクオリティー、それに対してはもちろんハードルは高いと思います。それは皆さん勝手にいろいろと企画立案してもらって、そのパフォーマンスについて評価するということだから。ただし、会社の仕事の中だと、支社だとどれだけ売り上げろという仕事があるわけですよ、営業マンに対する売り上げの販売量というのがあるわけですよ。そこについての仕事も含むのか含まないのかな。
それは、金融機関の支店に配属になった若手の、三十歳前後の方が支店長から言われるわけですよ。あなた、今回の年度計画をつくって、どこの顧客をターゲットにして、どういうような販売戦略で売っていったら我が支社が本社が出している一〇%の売り上げ増に到達できるかなんという。そういう仕事をもらった、それについてシナリオを書く。シナリオを書くまでだったら構わないと思うけれども、シナリオを書いて、フォローする仕事まで入るのかどうか、そこについてお聞かせください。
○松崎政府参考人 これは、現行でも同じでございますけれども、企画立案、調査、分析の業務ということですから、実際に売るとか、現業という言い方は悪いんですけれども、そういったものは想定しておらなくて、今おっしゃったような例でいいますと、中身によってはだめな場合もあるかもしれませんけれども、戦略をつくって、試行ぐらいまでは入るかもしれませんけれども、実際に業務としてやるところまでは、それは予定してはおらないというのは現行と同じでございます。
○大島(敦)委員 ちょっと議論は後戻りになるんですけれども、ちょっと確認させてください。今回の、先ほど述べた事業運営上重要な決定が行われる事業場というこの文言が削除されると、対象業務としてどのような業務がまた想定されるのか、そこをちょっと教えてください。
○松崎政府参考人 告示でいろいろ例示をしておるわけでございますけれども、これは実際に今度の改正によりましていわゆる本社等というところが抜けるといった場合でございますけれども、事業全体といいますか、企業全体というところは変わるかもしれませんけれども、基本的な考え方というのは業務としては変わらないというふうに考えています。
○大島(敦)委員 そうしますと、対象業務として、これは皆さんが書かれている「改正労働基準法」という小冊子なんですけれども、その中で「対象業務」として「以下の四つの事項すべてを満たすことが必要」だという記載がございまして、一つとして「事業の運営に関する事項についての業務であること」、これはつまり「企業全体の運営に影響を及ぼすもの」という記載がございます。二番目として「企画、立案、調査および分析の業務であること」、これは「企画、立案、調査および分析を相互に関連づけ組み合わせて行うもの」。三つ目として「業務の性質上業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること」、これは「業務の性質上客観的に労働者の裁量にゆだねる必要性があるもの」。最後に「業務遂行の手段、時間配分を具体的に指示しない業務であること」、「作業をいつ、どのように行うかにつき、広範な裁量が労働者に認められるもの」。
そうしますと、一番最初に私が述べた、事業の運営に関する事項についての業務であること、企業全体の運営に影響を及ぼすものであること、ここは、今の局長の答弁でありますと、変わらないという理解でよろしいでしょうか。
○松崎政府参考人 そこは先ほど申し上げたように、現在では本社等が基本になっておりますので、まさに本社を含む企業全体、支店、営業所等を含んだ企業全体の運営に影響を及ぼすということで書いておりますけれども、今度は、先ほどの文献ではございませんけれども、権限移譲等で一定の権限の中で各支店を競争させるといったような場合には、企業全体というよりも、当該権限を与えられておる支店、工場、さらに傘下の工場、営業所等があればそれも含まれるかもしれませんけれども、そういった、企業全体ではなくて、権限を与えられておって、そこで独自の経営戦略とかそういったものを作成することができる事業単位といいますか、これが複数か一つかは別ですけれども、それは対象になってきますので、企業全体というところは修正していくことになると考えています。
○大島(敦)委員 今の局長の答弁というのは、今回の企画業務型の裁量労働の対象労働者が広範囲になるということになるわけなんです。これまでは、本社の企画部門とか経理とか人事とか、比較的企画業務型が多いと直観的に認識できるところが多かったんですけれども、今の答弁ですと、企業全体の運営に影響を及ぼすものという規定がなくなる、そして事業の運営に関する事項についての業務であることということもなくなってしまって、四つの要件が三つになると私は理解するんですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
○松崎政府参考人 端的に言いますと、三つの要件になるのではなくて、要件は四つだと思います。要するに企業全体というところに影響があるということで、そこを修正するということで、その部分の運営に大きな影響を及ぼすということですから、基本的には四要件ということで、同じだと考えています。
○大島(敦)委員 はい。そうしますと、企業全体の運営に影響を及ぼすというところがなくなったというお話です。
そうすると、人によってはさまざまな解釈ができるかと思うんです。それは、事業部の部門長のところで事業部の計画を立てる人、あるいはその事業部から離れて地方の工場の運営とか支社の販売のポジションにいらっしゃる方、どこで切るかという問題なんですよ、その業務の範疇を。それは企画も、今のお話ですと、事業の運営に関する事項についての業務であることというのは、これはもう当然なことですよね。そうすると、そこのところが非常に広がるなと自分は思うんです。
今までだと、企画業務型というのは非常に限られた方だったんだけれども、これからはごく当たり前に、各銀行の支店とか生命保険会社あるいは損害保険会社あるいは商社さんのそういう支店にこのような企画業務型の方たちがふえるという、そういうようなことが予定されるんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
○松崎政府参考人 まさにそういった各事業場におきまして、その事業場単位で、本当に独自の経営戦略というものが立てられるという権限があり、そして実際にそういったスタッフを置き、行っているのであれば、今よりはふえるんじゃないかと思っております。
ただし、実際には、この企画裁量型の導入につきましては、基本的な枠組み、労使委員会を設けることから始まりまして、最終的には本人同意をきちんととるというところ、こういった基本的なスキームは変えておりませんので、やはり基本的には、一番その実態を知っている労使委員会、そこでよく議論をして考えていただきたいというところで担保できるんじゃないかというふうに思っております。
○大島(敦)委員 今の局長の答弁が議事録に残ると、これはほとんどどの事業場においても企画業務型を採用していいという時代が始まるなと自分は思いましたし、非常に踏み込んだ、本当にその発言でよろしいかどうかなというところを、私は違うと思うんですけれどもね。今の局長の発言ですと、どこでも構わないというようにとれるわけです。どの事業場でも構わない、企画業務的な仕事であればどこの事業場でも構わないと。それで本当にいいのかどうかということを、もう一回答弁お願いします。
○松崎政府参考人 基本的にどの事業場であっても、細かい企画分析型の業務であればすべて入るというのではありませんで、やはりそういったものを、その当該事業場なり当該事業場を含むグループの中できちんとした権限を持って、そのグループなりエリアの中での事業運営全体、そういった、企業全体ではないかもしれませんけれども、そのエリアの中での事業運営全体についてトータルとして相互に関連し合いながらやっていく業務ということは今と変わっておりませんので、外したことによる無限定な拡大にはつながらないというふうに考えています。
○大島(敦)委員 これは、たまたま皆さんの方でまとめていただいた「裁量労働制に関する調査結果の概要(ヒアリングを含む)」ということで、これは、目を通していますと、企画業務型について、法令上の対象業務以外に裁量労働制になじむ業務の有無というのがありまして、法令上の対象業務以外に裁量労働制になじむものがあるのかどうかなという問いをしているのに対して、企画業務型について、これはそんなに多くないんです。回答者数が、人事担当が二十四人、過半数代表者が十八人ですから、そんなに多くないんですけれども、法令上の対象業務以外になじむ業務は特にないとする者が多数であったということで、要は法令上の、今の法令で決まっていること以外に、なじむ業務というのは余りないですよというアンケート調査があるんですけれども、そうしますと、本当にここまで拡大する必要があるのかどうかというところをもう一度お聞かせください。
○松崎政府参考人 確かに、現行の制度を前提としまして、さらなることがあるのかといった場合の答えかと思いますけれども、やはり実態を見てまいりますと、先ほど申し上げましたように、分権じゃありませんけれども、各事業場単位、ある程度のエリアごとの事業場、そういったところに権限を移譲しまして、そこでもって、まるで分社化したような格好で、それぞれ同じようなサービス、商品というものを自分でそれぞれ考えさせて競争させていくといったものもだんだんふえていくという状況だとは理解しておりますので、そういったことの中でこういったものも使えれば、それは本人のいろいろな、先ほどから申し上げております、働き方、そういったものに対応できるんじゃないかというふうに考えて、弊害というものを最大限抑えながら拡大していこうということで御提案したところでございます。
○大島(敦)委員 先ほどの局長の回答の中で、労使委員会があるから、それはしっかりと守って運用できますよという御答弁がございました。労使委員会、今までのように本社に限定されれば、母数は結構多いわけですよ。本社が十人、二十人ということはございませんから、しっかりとした母数の中で労使委員会が設置され、労使の打ち合わせの中で業務なり対象労働者が決まっていくと思うんです。
しかしながら、これから、先ほどの本社組織以外でも構わないということになりますと、それほど多くない支社が出てくるわけですよね。銀行にしても、あるいは金融機関の支社で、何百人もいるところはございませんから、大体五十人ぐらい、多くても百人いるのかなというところだと思うんです。それは管理職が入っていますから、対象となる方は非常に少ない集団になるわけです。そこにおいての支社長なり支店長なりの権限というのは非常に高い、多くの権限を持っていますから、そのような職場においても労使委員会はしっかり機能するとお考えなんでしょうか。
○松崎政府参考人 基本的には、労使委員会の、特に労側の話かと思いますけれども、これはやはり、自分自身というよりも、事業場全体の労働者のことを代弁するといいますか、そういう立場ということでございますので、そういった立場というものを自覚してその委員会というものに参画していただくということによって目的が達成されるというふうに考えています。
○大島(敦)委員 労使の関係は、製造業においては、戦後、伝統的な、長い会社であれば、労使の信頼関係を積み重ねてきたところが多いかと思うんです。そのような事業場においては、労使がしっかりと話し合われて、そのもとに今回の労使委員会というのが設置をされるということ、これはよく理解できるんです。その中で、労使が決めること、そしてその労使委員会が決めることの役割分担を明確に、それはできるかと思うんです。
しかしながら、今私が提示しているサービス業において、しっかりとした労使関係があるかどうかわからないんですけれども、規模が非常に小さくなった事業場において、そのような労使委員会が機能するとは思えないんです。それを機能させるためには、何か手だてが必要かなと思うんですけれども、それについて御検討するつもりというのはございますでしょうか。
○松崎政府参考人 これは現行制度でも一緒かと思いますけれども、やはりまずは制度の趣旨というものを、いわゆる経営者団体、労働組合等を通じましてもう一回周知徹底を図るということだと思います。やはり基本的には、先ほど、午前中の御議論の中でも賃金不払い残業の話がございましたけれども、すべてを行政がやるのは限界がございます。やはり企業の中で、労使の役割、特に労働者の代表なり労働組合の役割というのがますます高くなっている現状にあろうと思っています。
そういったところからぜひ勉強していただいて、そういった自覚を持って、この労使委員会、特に苦情処理でありますとか健康・福祉確保措置、そういったものを労使委員会でチェックする仕組みになっておるわけでございますので、非常に役割は重要でございますので、そういったところをチェックすることを通じまして、やはりきちんとした労使の協議というものを担保していただきたいということを一層、お願いといいますか、周知をしていきたいというふうに思っています。
○大島(敦)委員 ちょうど三年目ですよね、この企画業務型の裁量労働が入ってから。まだ制度としてなじんでいないのかなと思うんです。三年目でここまで対象者を拡大させるのが本当に今の時期正しい決定なのかなということが非常に疑問なんです。あと二年ぐらい待って、ある程度景気がよくなったタイミングでこの企画業務型をもう一回見直した方がよりいい方向にいくのかなと私は思うんです。
ですから、今、現行のままでまだ三年間しかたっていなくて、ようやく導入事業所が百八十二、六千七百七十四人の方が対象になってきた。制度として、まだようやく始められた段階なわけですよ。そこにおいて、三十八条の四の「事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、」というこの規定、この規定を入れたということは、前回、企画業務型の裁量労働を入れるときに非常にこだわりがあって入れた文言なわけですよ。ここを今回三年目で取り外すことの合理性についてちょっとお聞かせください。
○松崎政府参考人 確かに、前回というか、もとの改正のときにそういった修正が入ったというふうに伺っておりますけれども、やはり、実際私どもの運用上のことを申し上げますと、これが施行されました直後は、表面だけ見て、本来企画型の裁量労働制として認められないものを導入しようとして、私どもの監督官がチェックをして修正させた、やめさせたという例がぽろぽろあったというふうには聞いています。資料としてはなかなか、話としてだけでございまして、別に監督ではございませんので、そういった件数としては把握はしておりませんけれども、そういう話も聞いております。
したがいまして、ある程度現在の制度としては定着をしてここまで来たんじゃないかというふうに思っておりますけれども、やはり先ほど先生が御質問の中で引用されていました、数は少ないですけれども、人事担当者それから労働者、労働組合からのヒアリング調査でございますけれども、特に、中身というよりも、中身ももちろんでございますけれども、それよりも、多くの場合に手続が非常に煩雑で二重三重になっているんじゃないかという点、例えば、労働組合の信任、代表なのにもう一回信任投票をやらないかぬとか、労使委員会を設置したらその設置だけについて監督署へ届け出にゃいかぬといったところ、そういった手続が非常に煩雑であるといったものもございましたので、先ほど申し上げましたように、基本的な枠組み、大事なところはきちんと確保して、本当に省略できるといったところ、また若干緩められるといったところを、労働政策審議会の御意見をいただいて、こういった改正をしようということで現在お願いしているところでございます。
○大島(敦)委員 それは、今導入されている会社の担当者の方にふぐあいがないかと伺えば、大体ふぐあいは私でも言いますよね、もっと簡単にしてくれとか。ただ、それは簡単にするしないではなくて、簡単にしなかった理由があるわけでございまして、先ほど冒頭に述べた、事業場をある程度制限するということも、一つの政策的な判断があったはずなんです。
私は、これが労働基準監督署の皆さんにとっても仕事が膨大にふえるかなと思うんです。各地方都市のいろいろな支社で裁量労働が導入されて、本当にそれが企画業務型に当たるのか、当たらないのではないのかという問い合わせが非常にふえたり、一々そこに行ってその仕事が企画業務型に当たるか当たらないかとか、制度設計として余りうまくないなという感じが私はするんです。もうちょっとこなれた段階で制度設計した方が、私は、私たちの国として余計なコストを払わなくても済んだのかなという気持ちがいたしております。
もう時間でございますので、最後に坂口厚生労働大臣の方から、企画業務型、これは非常に理解しづらいんです。働いた経験がないと、企画業務型の仕事がどんな仕事かとか、あるいは金融機関でどういうような業務が行われているとか、そのイメージがわかないんですよ、裁量労働、特に企画業務型については。ですから、大臣もあるいは副大臣も非常にイメージがわきにくいと思うんです、どんな人が働くか、働いているかということについて。
自分はこう理解しまして、まずは、会社によっては十年間で役職になる人、二十年間かかる人いますから、その十年間の部分というのは、僕はフレックスを導入すべきかなと。ある程度、三十代になってきて、自分で判断できて、それも将来幹部社員として期待されている人であったら、企画業務型もなじむのではないのかなとは思っているんです。
ただ、その業務を今回拡大することは非常なリスクがあるんです、各営業の、販売を担当している営業部隊にとって、そこにいる部員、部員と言ったらあれかな、幹部候補生にとっては。確かに、幹部候補生だから、おまえ、ちゃんとサービス残業して朝から晩まで働けなんという無理なことを言う上司もいないことはないものですから、そこのところはある程度私たちのところで守ってあげないとなかなか守れないところがあるかと思いますので、その業務の拡大について、大臣として、ある程度制限した方がいいのか、局長がおっしゃるように文言どおりとらえた方がいいのか、そこのところを最後に伺わせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
○坂口国務大臣 一時間ずっと大島議員と局長の二人のビッグショーを聞いておりまして、もう我々は入り込む余地がなかったわけでございますが、いろいろやりとりを聞いていて感じますのは、やはり企画業務型の裁量労働制の範囲、ここに入る人の基準を一体どう決めるかということに尽きるんだろうというふうに思っておりまして、一つ、各企業によってばらばらで、それぞれ勝手にできるということではなくて、やはりここに入る人はこういう人ですよということがどの企業であっても大体わかるようにしてあげないと、これはいけないのであろうというふうに思いました。
したがいまして、この範囲につきましては、よく検討させていただいて、そして明確な基準を一つ出させていただくということにぜひしたいというふうに思った次第でございます。
○大島(敦)委員 それでは、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○中山委員長 次に、武山百合子君。
○武山委員 自由党の武山百合子でございます。・・・・・・(中略)
法案の中身に入ります。
まず、労基法の改正なわけですけれども、先週に引き続いて今週も、まず解雇に係る規定の整備について聞きたいと思います。
今回の解雇に関する条文について、労働者側や法曹界からもいろいろ問題が提起されております。この委員会においても、最も大きな論点となっているところはもちろん解雇のところでございますけれども、このたび、まず「解雇することができる。」という規定の必要性、それからこの規定が創設された場合、この主張立証責任の所在といった点、これをもうずっと議論してきておると思うんですよね。
このほかに、この論点以外でこの条文に関する問題意識ということで、先週いろいろ私も質問してまいりましたけれども、まず一点目では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」といった解雇が無効となる場合の要件が非常にあいまいである。解雇が無効となる場合の要件ですね。まず、国民が、どのような場合に解雇が有効となるのかということが、この条文を読んだ限りでは理解できないわけですね。これが一点まずあります。非常にわかりにくい。国民が、どのような場合に解雇が有効となるのか、この条文ではどういうふうにでもとれる。
それから二点目は、なぜ最高裁の判例で確立している解雇権濫用法理をそのまま法律に規定するのかという点があると思うんですね。
一点目は、解雇が有効となる、この条文を読んだ限りではどうにでもとれる。二点目は、なぜ最高裁の判例で確立しているのをそのまま法律に規定するのか。これが非常にわかりにくい。この二点について、やはり国民のための法律なわけですから、国民にわかりやすくぜひ説明していただきたいと思います。
○鴨下副大臣 今先生がおっしゃっているような部分というのは、本当に国民から見ると、ここで議論していることそのものがなかなか理解しづらいということがあるんだろうと思います。
そういう意味で、いろいろと御審議そして御質問いただいているわけでありますけれども、特に今回の改正における解雇に関する規定の新設についてですけれども、これは解雇に関して基本的なルールを明確にすることを目的として、先生が御指摘の、最高裁の判決で確立しているものの、これまで労使当事者間に十分に周知されていなかったいわば解雇権濫用法理を法律上明確にしよう、こういうようなことであるわけであります。
そして、その規定をするに当たりましては、これは労働基準法において解雇に関する基本的なルール全体が明確になることが適当と考えたわけでありまして、民法の六百二十七条の第一項に規定しているいわゆる解雇権と、その解雇権の行使が権利濫用となる場合とを一体として規定しようというようなことであります。
ただ、その際、解雇権の濫用とされる場合については、この解雇権濫用法理を確立した最高裁の判決において、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することのできない場合には、権利の濫用として無効になる、こういうようなことが判示されているということを踏まえて、当該規定において、「その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」こういうふうに規定したわけであります。
さらに、先生の御質問で、今回の解雇にかかわる規定は、解雇権濫用法理を確立した最高裁の判決を踏まえたことは、そういうふうな御指摘であります。なぜ最高裁のその判決を踏まえるのかというような話でありますけれども、これは、それぞれそれこそ大変な議論が専門家の間で行われているんだろうと思いますが、先ほど申し上げましたように、民法の六百二十七条の第一項にあります「当事者カ雇傭ノ期間ヲ定メサリシトキハ各当事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得」と書いてあることと、一つは民法の第一条の第三項の「権利ノ濫用ハ之ヲ許サス」、この二つの条項をいわば基本としている、こういうようなことでございます。
○武山委員 結局、国民にとってまた難しくて、今聞いていてもほとんどよくわからないんですよね、何を言っているのか。
というようなくらいに、司法の専門の最高裁の判例を、そのまま中身を法律として規定しているからわからないわけですよね。それはもう司法の方で決めたことであって、やはり立法府というのは、もっとわかりやすく国民に提示するのが立法府だと思うんですよ。立法府で決めたことでにっちもさっちもいかないときに、双方が納得いかないということで訴えるという訴訟に入るんだと思うんですよね。ですから、その前の国会でこういう法律をつくる、我々国民の代表がつくり合う、この過程がまさにそのものなのに、政府の方は、司法で決まったから、だからそのまま規定するんだということになっちゃっているわけですよ。そこが一番の責任の欠如だと思うんですよ。
それで、例えば、ではこういう場合どういうんでしょうか。先ほど解雇ルールということで言っておりましたけれども、営業があるところに譲渡されて解雇される、こういうときはどうなるんですか、例えばの話が。今の話でどうなるんでしょう。
○鴨下副大臣 営業が譲渡されて、それについて解雇をされたというようなことで、いわばある種の整理解雇のようなことなんだろうというふうに思いますが、それに関しましても、これはそれぞれ個別のことだろうというふうに思いますので、例えば当事者間で判断ができるものもあるでしょうし、あるいは裁判等で争わなければいけない、こういうようなことなんだろうと思いまして、ここで一概に普遍的な、こういうようなことでというようなことはなかなか申し上げられないところだろうというふうに思います。
○武山委員 そこが国会の努力不足だと思うんですよ。
やはり国会でできるというのは、そこで説明できるということだと思うんですよね。では、これも司法に持ち込まないと説明できないのかということになっちゃいますでしょう、鴨下先生と私の話し合いが。では、司法に持ち込みますかということになっちゃうんだと思うんですよね。
例えば、この営業譲渡による解雇、それから今すごく企業再編、リストラというものがどんどん解雇につながっていっていますよね。こういうものに対しては何にも今回の法律の中では言われていないわけですよね。これは恐らく新しい事態だと思うんですよ、このこと自体が。法律を見る場合に、こういういわゆる解雇ルールというものがあると言われていますけれども、この解雇ルールは提示されているんだ、解雇ルール四要件というのがありますね、四つの要件。でも、その四つの要件では全然、例えば営業譲渡による解雇、それから今たくさん頻発している企業の再編によるリストラ、こういうものに対する解雇については何にも言われていないわけですよ。ですから、これは新しい事態だと思うんですよね、例えばこの例は。今回の法律では裁けないと思うんですよ、この解雇に対しては。
私は、では裁けますか、これは解雇できるんですか、無効なんですかというふうな今質問なんです。でも、答えられないと思うんですよね。要件があいまいだからなんですよ。そういうあいまいでいいのか。司法に全部ゆだねちゃっていいのか。一つ非常にわかりにくい。前からと足して引いてもほとんど変わらないという解雇権の濫用法理なわけですよね。足して引いてもほとんど変わらない、それだったら、では何だったのかということをやはり言いたいわけですよ。
それで、整理解雇の四要件ということでありますけれども、結局これも、人員削減の必要性、解雇回避の努力、解雇対象者の選定が客観的、合理的か、労使協議など手続の妥当性、こういうものはありますけれども、一つ一つ全部労使の紛争の調停にゆだねる、あるいは裁判で、訴訟で決着するというふうになっていますよね。結局、難しくて解決できない。こういうのではだめじゃないですかということを言っているわけなんです。立法府で決まる国民のための法律なのに、難しいから、専門分野だからといって全部そちらに、司法に投げてしまうというのじゃどうなんでしょうかということを言いたいわけなんです。
ですから、ではなぜこういうふうにして法律にそのままうたうんですかと聞いているわけなんです。国民はちっともわからないじゃないですか。そこをやはりわかりやすくするのも法律の一つじゃないでしょうかという質問なんです。
○坂口国務大臣 法律は原理原則を書くものでございますから、それはそういう性格のものだというふうに思っております。
先ほどからお話ございますように、今まで法律として確かに民法の中にはあったわけでございますけれども、解雇に対する裁判が幾つか行われて、そしていわゆる解雇に対する四要件というものが一応普遍化されて、そしてそのことを中心にして多くのことが今まで解決をされてきた、これは事実でございますし、なぜつくらなかったのかということはあるだろうと思いますけれども、今まではそういう経過の中で来た。私は、労働基準法の中にその解雇の問題が入っていないのがおかしいと思った次第でございます。
私はそういう立場から、民法の中にはありますけれども、この労働基準法の立場から、今まで多くの裁判で、あるいはまた最高裁で決定をされましたその立場というものを明確にするということが法律として大事ではないかと。それは同じことではないかというふうに言われますけれども、裁判というのは一つ一つの事柄に対して下された判決でありますから、より普遍性を持たせるという意味では、法律としてつくっておくべきであるというふうに思った次第であります。
それで、この法律が十八条の二としてそこにでき上がったわけでございますが、この労働基準法の第一条は、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」こう書かれてありまして、そしてまた「労働条件の決定」として第二条におきましては、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」こう書かれているわけであります。この労働基準法の中に解雇の問題を書き込むことが大きな意味があるというので、私はそう言ったところでございます。
確かに、その書き方が逆ではないかとか、上下しておるではないかというようなお話はございますけれども、しかし、すべての問題は、この一条、二条に書かれております範囲の中で考えるべきものであり、私は、そういう意味で正しく理解されるべきものだというふうに思っている次第でございます。
○武山委員 そうしますと、正しく理解してほしいという意味だけのことなんでしょうか。今までの書いてある条文と余り変わらない、書くか書かないかだけの差だというふうにとれるんですよね。それで、書いたことによって理解してもらいたい、そういう理解の度合いなんでしょうか。
専門家に言わせると、今までとほとんど変わりない、ただ書いてあるか、言葉があるかないかの違いだと。足しても引いてもほとんど変わらないということなんですけれども、今、坂口厚生労働大臣がおっしゃったように、書いたことによって理解してもらいたい、そういうことだけなんでしょうか。
○鴨下副大臣 先生の問題意識は私もよく理解をするわけでありまして、例えば最高裁の判決、これは日本食塩製造事件の昭和五十年の判決をもとに、ある意味で解雇権濫用法理というものが社会通念上多くの方々に理解されてきた、こういうようなことなわけでありまして、先生がおっしゃるように、裁判の判決は判決、ここは立法府であり、私たちは政府でありますけれども、そういうそれぞれの立場で議論をして、ここでさまざまな解雇に関すること、そして労働基準法に関することを審議し、決定すべき、こういうようなことについてはまことにそのとおりだろうというふうに思います。
ただ、今まで多くの方々が、そして多くの学者の皆さんが、この昭和五十年の最高裁の判決を受けて、ある意味で解雇権の濫用法理についてはおおむねコンセンサスがある、こういうようなことでありますので、これを受けて今回の改正をさせていただこう、こういうようなことでありまして、それは今大臣が申し上げましたように、法律に、特に基準法に解雇についてのルールが書かれていないということもあり、さらに判決を法理として今までやってきた、こういうようなことを踏まえて、多くの国民の皆さんに、法律に書くことによってより深く理解をしていただきたい、こういうような趣旨もあるわけで、今回の改正に至っているわけであります。
○武山委員 そういうお話を聞いておりますと、やはり司法の方が、司法、立法、行政と独立しているわけですよね。国民の代表として立法府がある。立法府は常に一番の優位性を持っているわけですよ、国民の代表が決めているわけですから。その上に、優位性にあって司法があるというふうにとれますよ、今のお話を聞いていますと。立法府で決められないから、司法の方で判断してもらったものを基準に決めるというふうに。それは立法府の責任逃れだと思うんですよね。
それで、立法府としては、野党として、皆さん、もちろん与党の方も、こういういい案があるじゃないかといろいろやっても、それは政府の方としては違う、それは受け入れられない、政府の方はこういう考え方だからといって、常に押し切ってしまっているわけですよね。ですから、そこに、前に向かっていく蓄積がなくなってしまうわけですよ。
それで、今やっと最低のことをここに明記するんだというわけですよね。でも、国民が、立法府がこうだということを、この解雇ルールをきちっと、こういうときはこういう場合に解雇できる、こういうときはこういう場合に解雇できるという例題を示すことによって、その例題によって、みんな、ああ、こういう場合がそうかという基準ができるわけなんです。その例題の中身を、結局、問題が起きるからといって司法にゆだねてしまうというところに問題があるわけですよね。司法は司法で独立しているわけですよ、専門的な方々が司法を行っているわけですから。ですから、立法府とは全然違うわけなんですね。
それでまず、このように労働者に、勤労者に大変な影響を解雇というものは与えるわけですよね。ですから、私は、もっと具体的に規定した方がいいんじゃないかということを言っているわけなんです。あいまいにして、どうにでもとれて、判断のしにくい解雇ルールなわけですよね。
それで、今、新しい事態が次から次に起こっているわけです。一時的、臨時的だったものが、もうかなりの人が、派遣の仕事はまるで主流のように今なっているわけですよね。新しい時代に対応できない、やっと最後に追いついていっているような今労基法じゃないかと思うんですよね。ですから、もっと勤労者が理解しやすいものにこの中身をやはり書くべきじゃないか、規定をもっとわかりやすくすべきじゃないか。
わかりにくい文章で、常にいわゆる最高裁の判例の法理によってというふうに言われるわけですよね。それは、最高裁の判例を常に手本にして判断しなければいけないということじゃないですか。国民は、最高裁とは違った、別なもっとわかりやすくて、それで判断できるものを望んでいるんですよ。どうにでもとれる、難しい判断をしなければいけない、ではその判断は必ず弁護士にも頼まなければいけないということになってしまうわけなんです。ですから、もっとわかりやすい、もっと解雇権濫用法理をきちっと法律にやはり明記する。
それで、解雇が有効であるのか無効であるのかというのをこれでは裁判所に任せるということになってしまうと思うんですよね。すべて司法にゆだねてしまう、それだったら今回の新たな立法措置というのはあってもなくてもいいんじゃないのというふうに思っている人が多いわけなんですよ。
それで、労働省にもといた方も、意見の一つとして聞いたんですけれども、ほとんど変わりがないじゃないか、変わりがあるのは、ただ言葉として明記すると。先ほどそういうふうに、言葉として今まで書けなかったことを明記すると。中身はほとんど変わっていないんじゃないか、明記して、そういうことだということを解雇という言葉を入れることによって周知徹底するんだ、それだけだったら、この改正というものは何なのかなと思うんですよね。
ですから、副大臣は今どんなことを考えていますでしょうか。
○鴨下副大臣 解雇権濫用法理そのものが、現状においてはほとんど、それこそ労使当事者においてもなかなか御承知いただいていないというような部分もあります。ですから、特に一般の国民の皆様にとっては、なかなかそのあたりのところが理解できていないというようなことを踏まえて、こうして国会の中で御議論をいただいているわけであります。
これは簡単なデータでありますけれども、解雇制限について経営者だとか労働者双方に尋ねましたところ、解雇を制限する法律があるので、それさえ守れば解雇ができるという回答が最も多く、経営者で七〇%、労働者で六六・七%、こういうことでありますし、解雇を制限する法律はないが、裁判所が解雇権に厳しい制限を加えているという回答が、経営者で七・一%、労働者で一三・八%、こういうようなこと、それから、何の制限もなしに自由に解雇することができるという回答も、経営者で二・五%、労働者で四・六%、こういうようなことでありまして、先生、今いろいろと御議論をいただいていることは、本当に解雇というのは多くの方々に、特に労働者の皆さんにとってみれば、人生のそのものの大きな影響のあることでありますので、こういうことをある意味できちんとした法律の中で原理原則をきちんと書く、こういうようなことによって多くの方々に知っていただく、こういうようなことであります。
ただ、申し上げましたように、原理原則を書くものでありますから、個別のそれぞれの事案につきましては、いろいろな理由がありまして、例えば使用者側にも言い分がある、労働者側にも言い分がある、こういうようなことをとことん議論し最終的に判断を下すというのは、やはり司法の場にゆだねなければいけない部分もある、こういうような言ってみれば役割分担をしている、こういうふうに考えているところであります。
○武山委員 それでは、まず仮に、どうしても法律では具体的に理解しやすい規定にすることができないと言っているわけですけれども、それではどのような場合に解雇が有効となるのか、行政が国民に対して積極的にやはり周知していくことが必要じゃないかと思いますよ、法律をつくる行政、政府の方が。どのような場合に解雇が有効となるのか、国民に対して積極的に周知していく。ただ労使の紛争にゆだねるのではなくて、どのような場合に解雇が有効となるのかということを行政が国民に対してやはり周知徹底させるべきじゃないかと思いますけれども、この案に対してはいかがでしょうか。
○鴨下副大臣 多少繰り返しになりますけれども、五十年の最高裁の判決で解雇権の濫用法理が確立されて以来、解雇権濫用法理によって解雇の有効、無効が判断されたさまざまな裁判例がこれまでたくさんあるわけであります。ですから、この法案の成立後においては、これらの裁判例を整理して、そしてこれまでいわゆる解雇権濫用法理によりどのような事例が解雇有効と判断されて、また解雇無効とされたのか、こういうようなことを、これは都道府県の労働局を初めとして関係行政機関においてできるだけ多くの方々に知っていただく、こういうような努力を私どもでしていきたいというふうに考えます。
〔委員長退席、野田(聖)委員長代理着席〕
○武山委員 まず、厚生労働省は、解雇権濫用の判例法理というものを、これは使用者に原則として自由な解雇権限を与えたという解釈をやはり招くおそれがあるんじゃないかと思うんですよね。例えば、日弁連でも、これを書くことによって解雇を促進するPR効果の方が大きくなると言われているわけなんですね。すなわち、解雇権濫用の判例法理をそのまま記述したものとして説明しておるわけですけれども、使用者にとっては、いわゆる解雇権限、これが得られた、そういうふうにして解釈をされる、それは結果的に解雇権を自分たちは持ったんだと解釈されると。しかし、危惧しているのは、まるで解雇を促進するPR効果の方が大きくなるんじゃないか。それに対してはどう説明できますでしょうか。
○鴨下副大臣 先ほど先生もおっしゃっていましたけれども、これでは最高裁の解雇権濫用法理を一歩も出ないじゃないか、どっちにも出ないじゃないかというお話がありましたけれども、まさしくそういう意味では、私どもの方の理解では、今回の基準法の改正は、今までの解雇権濫用法理について、大臣のおっしゃり方で言いますと、引きも足しもしない、こういうようなことであります。
そういう中で、使用者側は解雇権が自由に、自由な解雇権を付与したんじゃないか、こういうような誤解を招くんじゃないか、こういうようなことでありますけれども、この規定をするに当たりましては、これは労働基準法において解雇に関する基本的なルール全体が明確となることが適当と考えておりますし、民法六百二十七条の第一項に規定されている解雇権と、その解雇権の行使が権利の濫用となる場合とを一体として規定する、こういうようなことであります。これで解雇に関するルールが社会全体にある意味で中立的に認識され、解雇をめぐるトラブルの防止、解決につながるものだ、こういうふうに考えておりまして、一部の使用者側が、自由な解雇権を付与されたんだ、こういうような誤解を招くことのないようにというようなことでありますし、もちろんそういうことのないように私どもも努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
○武山委員 そうしますと、この解雇という規定を設けることによりまして、労働基準監督署の方の指導がこれによって変わるのでしょうか。例えば、解雇された労働者が違法に解雇されたと監督署に訴えてきた場合、この監督署はどのように対応することになるんでしょうか。指導が変わるのかどうかということです。
○鴨下副大臣 今回の改正で、監督署の指導、対応が変わるのか変わらないのか、そして変わるんだったらどう変わるか、こういうようなお話でありますけれども、今回の解雇に係る規定そのものは、解雇権濫用法理をそのまま書かせていただいている、こういうようなことでありまして、解雇の最終的な効力の判断は裁判所が行うこととなるというふうに思います。
ただ、都道府県労働局を初めとしまして関係行政機関においては、これは、判例の周知等によりまして、この規定の趣旨について使用者及び労働者の理解を促進する、こういうようなことと、解雇をめぐる紛争について解決を求められた場合は、引き続きこれは個別労働紛争解決の促進制度の適切な運用をして、結果的に簡易迅速に解決を図ってまいりたい、こういうようなことで、基本的には今までの監督が変わるというようなことではございません。
○武山委員 では、今までと指導が全く同じだ、変わらないというふうに理解してよろしいんですね。
それでは続いて、有期労働契約の方にちょっとお話を進めていきたいと思います。前回は解雇紛争の実態について聞きましたけれども、有期労働契約、その実態をお聞きしたいと思います。
今、有期契約の労働者というのは数でどのくらいいらっしゃるんでしょうか。
○鴨下副大臣 有期契約労働者数につきましては、これは総務省の労働力調査によりますと、常用雇用が平成十年以降減少を続けておりますけれども、一年以内の期間を定めて雇われている者を含む臨時雇い、日雇いは、平成七年以降一貫して増加を続けている、こういうようなデータがございます。平成十一年の六百四十一万人に対して、平成十四年には七百二十七万人になっておりまして、全雇用者五千三百三十一万人に占める割合は一三・六%、こういうふうなことでございます。
○武山委員 それでは、有期労働契約の契約更新ですね。どのような実態なのか、私もいろいろ聞いておりますけれども、厚生労働省の方で把握している実態をぜひお聞かせいただきたいと思います。
○鴨下副大臣 有期労働契約の契約更新につきましては、これは平成十一年の有期契約労働者に関するアンケート調査の結果でございますけれども、契約の更新回数の平均は六・一回であります。そして、通算勤務年数は平均で四・六年というふうになっております。
また、契約期間の満了に際して、契約の更新を希望する労働者の方々の割合は約六六%となっておりまして、多くの有期契約労働者が、同じ事業主に契約を反復更新されて、一定期間継続して雇用されている、こういうようなことが全体的な概観だというふうに考えております。
〔野田(聖)委員長代理退席、委員長着席〕
○武山委員 平均六・一回で、平均四・六年ということになりますと、例えばこれを計算しますとすごいですよね。三十年前後を四・六年で六回更新しているわけですよね。大体、学校を卒業して、それで三十年間に六回更新して仕事をしている人が平均だというような今解釈にとれるんですけれども、まず、この有期契約労働者の数が大変多いですよね。
それで、正社員と比較してどのような処遇がなされているのか、まずお聞きしたいと思います。
○鴨下副大臣 先ほどの先生のお話で、更新回数は平均で六・一回でありますけれども、トータルの通算で勤務した年数が平均で四・六年ということであります。それ掛けるということじゃありませんで、有期雇用で勤めた年数が四・六年が平均だ、こういうようなことでありますので、誤解のなきようにお願いいたします。
そして、有期契約労働者が正社員と比較してどのような処遇がなされているのかというようなことでありますけれども、有期契約労働者につきましては、これは企業の労働力の中枢を担う、こういうような位置づけの方々から、補助的に業務に従事する方まで、人事労務管理上はさまざまな位置づけになっているわけであります。ある意味では正社員よりも処遇の高い有期契約労働者も存在する、こういうようなことから、言ってみればさまざまな処遇がなされているというふうなことが言えるんだろうと思います。
例えば、これは厚生労働省の調査によりますと、有期契約労働者の賃金水準につきましては、正社員より低い労働者が、有期パートタイマーでは約九割、契約社員では約七割というふうになっております。また一方、高度な専門性を持つ有期契約労働者の場合には、賃金につきましては、正社員とほぼ同じまたはそれ以上とする事業所が合わせて半数近くを占めておりまして、また、教育訓練等につきましても、正社員と同じまたは正社員に比べ訓練機会が多いとする、こういうような事業所が合わせて約四割を占めている、こういうようなことでございます。
○武山委員 それでは、今の処遇の話なんですけれども、もう少し詳しく政府の方で持っておる情報を公開してほしいんですけれども、まず、いろいろなケース・バイ・ケースがあるということですけれども、大変処遇のいい方と、中くらいの方と、それから最低の方と、ちょっと三つ処遇を挙げていただきたい。どんな処遇をされているのか、ぜひ情報公開していただきたいと思います。
○鴨下副大臣 繰り返しになりますけれども、これはさまざまでありますので、先ほど申し上げましたように、高度な専門性を持つ方はどちらかというと正社員よりも厚遇されている場合もあるわけでありますし、それから、そうでないケースもあるというようなことで、一概にどういうケースがというのはなかなか申し上げられないので、もしまた後ほど必要があれば、整理して先生のところにお持ちをさせていただきたいと思います。
○武山委員 先週お持ちいただくという資料も実はまだ届いておらないんですけれども、余りそういうことをおっしゃられると、どこまで信用していいのかなという形なんですよね。必ず届けていただきたいと思います。まず、大変処遇がいい方、それから中くらいの方、そして非常に冷遇されている方の例題をぜひ資料で、数日中に必ず届けていただきたいと思います。
それから、有期契約労働者のうち、パートタイム労働者の占める割合をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○鴨下副大臣 今先生は、有期契約に占めるパートタイム労働者、こういうようなお話でしたけれども、手元にはパートタイム労働者のうち有期契約労働者の占める割合というのしかありませんので、それについてお答えをさせていただきます。
厚生労働省が行ったパートタイム労働者の総合実態調査によりますと、パートタイム労働者の中で、雇用契約期間が決められていた、こういうような方の割合は、平成七年には三六・八%、そして平成十三年には四四・三%、こういうふうになっております。
○武山委員 まず、有期契約労働者については、専門的能力を有して正社員よりも優遇されている者もいると聞いておりますけれども、一方で、パートタイム労働者の約四割が有期契約であると聞いております。多くの労働者は、正社員より低い処遇がなされているというのがどうも実態だというふうに私の方は聞いております。
今回の改正案では、労働者一人一人が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するということにあると聞いておりますけれども、この視点から見ますと、有期契約労働者について正社員との均等待遇を実現することが、本当に主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するということにつながるのじゃないかと思いますけれども、これに対してはいかがでしょうか。
○鴨下副大臣 正社員との均等待遇を実現することが、先生が今御指摘の、例えば労働者一人一人が主体的にさまざまな、特にライフスタイル、それからそれぞれの価値観に応じた選択ができる可能性を広げるのではないか、こういうような話でありました。
均等待遇につきましては、有期契約労働者は、企業の労働力の中枢を担うというような言ってみれば重要な位置を占める方から、補助的に業務を行っていただくというような人までさまざまな位置づけがあるということと、それから、正社員よりは処遇の高い専門的な有期契約労働者も存在する、こういうような現状から考えますと、いわゆる正社員との均等な待遇の確保を言ってみれば一律に図るというのはなかなか難しいのだろうというふうに思います。
ただ、この改正におきましては、これは有期労働契約の上限を延長する、こういうようなことをさせていただこうということでありますけれども、これによりまして、現在よりも長期の雇用も可能になりますから、労働者のある意味で主体的に多様な働き方というようなことでは、さまざまな選択肢と可能性が広がってくるものだろうと思いまして、そういう中で、その方々の働き方によってそれぞれ待遇が多少は変わってくるというようなことは仕方がないのだろうというふうに思います。
○武山委員 政府の方としては、正社員との均等待遇を実現するような方向では余り関与していかない、それはあくまでも企業がやることだというふうに受け取れますけれども、そういうことなのでしょうか。
○鴨下副大臣 それぞれ、企業もそうですし、労働者もそうですし、それから働き方もそうでありますけれども、さまざまな選択肢をそれぞれの方々が選択する、こういうようなことの、私たちは、ある意味でそういう土俵といいますか、環境を整えるのが行政の仕事なのだろうというふうに考えております。
○武山委員 そうしますと、有期契約労働者について土俵を整えるだけで、やるのはどうぞ自由に選択してくださいよ、内容も自由に大いに議論してやってくださいよというように、まるで他人事のように聞こえますけれども、今すぐというわけにはいかないですけれども、将来は、やはりいろいろな選択肢があって、それも均等で待遇ができるというような方向性が見えてくるということが大事だと思うんですね。
みんな、だれもが主体的に多様な働き方を選択できるという可能性を今回の法律改正によって拡大するということなわけですね。ですから、当然均等待遇も将来においては実現できるということも、青写真としては描けるのではないかと思いますけれども、政府の方は、そこは言い切らぬ、選択の自由だけをつくりますよ、規制緩和をしますよというふうに聞こえますけれども、そういうことなんだと思います。
冷たい、政府はそこは冷たく判断するというように聞こえますけれども、実態は、例えばこれからまるで、臨時的、一時的というのは、私は、本当に臨時的、一時的で、三カ月とか、例えば学校の先生の産休で来るだとか、ちょっと前はそういう感覚で臨時的、一時的ということで派遣が行われていたかと思いましたら、最近はもう本当に軒下が母屋みたいになって、何しろ臨時的、一時的の派遣がかなりの人を占めて、ましてや今回の法改正による有期契約労働者も大変多い。その中には、パート労働から、いわゆる一年の反復更新の人から、六カ月の反復更新の人から、多種多様な選択肢が広がっているということに対して、現実の雇用の急激な変化に対して、本当に法律の方がそれに対応できない状態だというふうに私は判断しておるのですけれども、例えばこの有期労働契約の期間中途に退職を申し出たとき、中途に退職を申し出たわけですから、使用者にとっては中途解約になりますね。そうしますと、損害賠償を請求されるという例もあるというふうに聞いているわけなんですね。当然そういうことも出てくると思うんですよ。
こういうような現状を見ますと、現在の一年を三年に延長する、労働者の退職の自由というものがこれによって結局長期間束縛される。仮に延長する場合、これは、すなわち働く者の退職の自由というものはどのように確保しておるのでしょうか。
○坂口国務大臣 先ほども議論のあったとおりでございまして、やむを得ざると申しますか、そういう理由があるとき、それから契約が履行されていないとき、そうしたときにはこれは当然のことながらそういうことも許されるようになっているわけであります。
したがって、有期雇用をしますときに、それは最初からその人の将来の設計があると思うんですね。例えば、一年なら一年で自分は次にこういうふうにしたいというようなことをお思いになっている方は一年の有期雇用で済まされるでしょうし、いや、自分はやはり三年ぐらいはしたいというふうに思われる方はそういうこともあるでしょう。しかし、その期間でありましても、やむを得ざる理由がありますときには、それはやはり理解のできることでありますから、それはそれで合意ができるということだというふうに理解をいたしております。
○武山委員 時間が来てしまいました。またこの続きは金曜日にしたいと思います。
○中山委員長 次に、小沢和秋君。
○小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。・・・・・(中略)
さて、労働基準法改正の質問に入ります。
今回の改正法案第十八条の二に、使用者は労働者を解雇することができるとの条文が盛り込まれたために、日本じゅうの労働組合だけでなく、日弁連のような法律家団体、多くの民主的な団体が、労働者の保護法制であるはずの労働基準法に解雇を公然と認める条文を入れることは絶対に許されないと、反対運動が大きく広がっております。私たち共産党だけでなく野党四党も、このような改悪は廃案にすべきだという点で一致していることは、前回からの本委員会の論議でも明らかになっております。
これに対し、大臣の答弁は、それはとんでもない誤解だ、最近の経済情勢の中で、解雇が激増し、紛争も多発しているので、この際、解雇についてのルールを明確にしたい、そのために最高裁などの判例として確立したものをそのまま条文化する、政府としてはそれに足しも引きもしないという趣旨だったと思います。
しかし、もしそれが本意であるなら、使用者は労働者を解雇することができるを本文とし、ただし書きで、解雇権の濫用に当たる場合は無効というような構成になるはずがないのではありませんか。基準局長は答弁で、民法六百二十七条との関係とか立法技術上の問題とかいろいろ言いましたが、本当に普通の国民がこの条文を解雇権の濫用を防ぐ規定だと受けとめると思いますか。素直に読めば、今後、企業は解雇を自由にやれるようになるとしか読めないんじゃないですか。大臣、いかがですか。
○坂口国務大臣 それは、その文章だけを取り出して、そしてほかに何にもなくて、その一行か二行かの文章を見れば、何々することができると先に書いてある、そうすると、そこが目立ちやすいということはあるだろう。私もそれはそう思う。
しかし、この労働基準法という法律の中にそれは入れた。よろしゅうございますか。それで、先ほども読みましたように、第一条、第二条のところには、ちゃんとこの法律の趣旨が書かれている、こういう趣旨でこの法律はでき上がっていますと。その中に入り込んだ十八条の二ですから、それは、この範囲の中で読むというのが正しい読み方だと私は思うわけです。
先ほども読みましたとおり、第二条におきましては、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」こう書いてあるわけです。この範囲の中で読むわけでありますから、ただあの一行か二行が裸でどこかにぽんとあるという話ではないわけでありますから、その読み方というのはちゃんと決まってくる。だから、私が裁判官なら、何々できるでそこだけ読んで、その下半分は読まぬというようなことはない、私はそう思っています。
○小沢(和)委員 大臣も、これだけ読んだらそういうふうな理解をする人は出るだろうと認められた。まさにそれが重大だと思うんです。
さらに、あなたは、労働基準法全体を読めば誤解は起こらないというように言われるけれども、労働基準法というのは、使用者に対して、労働者の権利や労働条件を保障するために、こうせねばならない、こういうことをしてはならないということをずらっと書いてあるわけですよ。そういう中で突如として、使用者が労働者を解雇することができる。これは、全体を理解する中で読めとあなたはおっしゃるけれども、まことに一つだけ異質なものがぽこっとそこへ入ってくるということになるんじゃありませんか。
さて、次の質問に入りますが、四野党が一致してこの点を重視するのは、解雇が自由にできるようになったら、今でもこれだけリストラが横行し、失業者が増加しているのに、さらにリストラが加速し、国民の圧倒的多数を占める労働者の生活がいよいよ苦しくなるからであります。
この問題で私が思い起こすのは、小泉首相が二年前の就任直後から本会議などで、解雇しやすくすれば企業は安心して人を雇うという発言を何回も行っていることであります。その小泉首相が、就任一週間後に厚生労働省に対し解雇法制をつくれと指示し、それが今回の法改正の出発点になったと最近の新聞にも報じられております。そういう目で見れば、企業が労働者を解雇できるという原則が本文になり、ただし書きで、例外として解雇権の濫用の場合は無効という構成になったのはよくわかります。
大臣、不況の中で、もっと企業が首を切りやすいようにしてやりたいという小泉首相のリストラ促進の意思が、この条文にこういう形で表現されているのではありませんか。
〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
○坂口国務大臣 けさもございましたが、五月の初めごろにそういうお話があったとは私は記憶をいたしておりません。もう少し、二〇〇一年の後半におきまして、経済財政諮問会議やあるいは規制改革会議等でいろいろの御議論があって、そして起こってきたというふうに私は記憶をいたしております。
小泉総理がそういうふうにおっしゃったかどうか、私、直接それは聞いていないわけでありまして、これがどこでどういうふうな形で言われたのか言われなかったのか、これもわかりません。しかし、その趣旨とするところは、これは、現在非常に雇用状況が悪い。雇用状況の悪い中を一時的にでも打開をしていかなきゃならない。地方交付金等を出して、それぞれの地域におきましても、半年とか一年というような形で雇用を行って、一時的にしのいでもらわなければならない。そういう時期でありますから、雇用という状況の周辺をもう少し緩和すれば、一時的にでも雇ってもらえるところが出てくるのではないか。そういうことをしてもらっているうちに常用雇用の場が生まれるのではないかという趣旨のことを、もしも言われたとすれば言われたのではないかというふうに私は理解をいたしております。
○小沢(和)委員 私は、小泉首相が内閣の最高責任者として解雇問題の法制化について指示をしたことは当然あるはずだと考え、当時の新聞記事を探してもらったところ、ちゃんと出てまいりました。これがそのコピーであります。一昨年五月十一日付朝日新聞朝刊であります。先ほども問題になった記事です。
ここにはこう書いてあります。「厚労省幹部らによると、小泉首相は今月」、つまり一昨年五月の「三日の同省の事務次官らとの協議で「終身雇用を前提としている制度を見直してほしい」と提起。さらに「二、三年の期限付きの雇用ができたり、社員の解雇をしやすくしたりすれば、企業はもっと人を雇うことができる」との考えを示した。」というふうに書いてあります。
先ほど大臣は、この記事のことで、五月十一日といえば、ハンセン問題で大騒ぎになっていた時期、ちょうど判決の日ですね、そんな議論ができる状況でなかったと、この報道自体を否定されたわけですが、この記事では、小泉首相が厚労省の事務次官と協議をしたのは五月三日と書かれております。まだハンセン判決まで一週間、だから、それで大騒ぎになるような状況じゃないわけです。首相として、就任直後、各省幹部から所掌事務についてブリーフィングを受けるというようなことは当然あったろうし、小泉首相は、この厚生労働問題、得意中の得意ですから、必ず注文をつけたろうと私は思うんです。そういうことはなかったんですか。
○坂口国務大臣 そのころは、ちょうど連休のときで、私は医療問題について泊まり込みで勉強会をやっていたときですね。ですから、そういうときにそういう話があったということは聞いておりません。また、その文章の中に、私が何か指示したごとく書いてありますけれども、したがって私は、その当時は医療制度改革でもう頭がいっぱいのときでございましたから、そういうことはなかったと思います。
ただ、年末になってまいりますと、この雇用の問題、大変になってまいりましたし、その年の後半、秋ごろからではなかったかというふうに思いますけれども、雇用に対しますさまざまな問題の検討を命じたことはあったというふうに思っております。
○小沢(和)委員 だから私は、大臣に首相が直接指示をしたのかとお尋ねしたんじゃないんですよ。五月三日の日に厚生労働省の事務次官と首相が会った、その席上で首相がいろいろ言ったといってここに報じられている。そういうことがあったかなかったかと聞いているわけです。
今改めてこれを読んでみますと、その後の展開はこの記事のとおりになっておるわけです。二、三年の期限つきの雇用というのが、派遣や有期の期間を三年に延ばすという形で今実現されようとしております。そして、解雇をしやすくという首相の指示が、使用者は労働者を解雇することができるというこの条文として盛り込まれたわけじゃないんでしょうか。
私は、前回の本委員会での自民党委員の発言も私の見方を裏づけるものだと思います。自民党委員は、総合規制改革会議の市場原理最優先の考え方は誤りで、日本的終身雇用を今後も守っていくべきだと批判をし、大臣は、私も守旧派と言われてもそういう考えでいくと応じられた。これは、首相を直接批判はしていないが、規制改革会議批判という形で首相を批判した発言として、私は大変興味深く聞きました。しかし、結果としては、やはり首相の意思に沿った条文ができ上がった、こういうふうに見るんですが、いかがですか。
○坂口国務大臣 いろいろストーリーをつくっていただくのがお上手でございまして、いつもいろいろのストーリーをつくっていただいて恐縮に思いますが、そんなにストーリーどおりに話は進んでいるわけではございません。
ただ、規制改革会議等でそういう御意見があったことは事実だと思います。それがいつごろからあったかというところまで覚えておりませんけれども、そういう御意見があったことも事実でございますから、そうしたことが総理発言というふうな形であるいは流れたのかもしれないというふうに今思いますけれども、それは、一つは有期雇用といったような形で、働き方の範囲を拡大していくということに選択肢としてなってきたとも受け取れるわけでありまして、それはこういう働き方もつくっていく。しかし、それを、働き方をつくる以上は、それはちゃんとそのことをしていかなきゃいけない。いろいろのことを考えながら、いろいろな考え方をして、多くの皆さんが働きやすいようにしていかなきゃならないということは、私もそれはそのとおりというふうに思います。
最近、いろいろな方にお会いをしていろいろのお話を伺っておりますが、働いておみえになります皆さん方の考え方というのは非常にいろいろでございまして、一つの働き場所を有期雇用のような形で求めながら、本当はもう少しボランティア活動をやりたい、時間のゆとりが持てるようにしたい、正規に働くと時間のゆとりがとれないといったようなことをおっしゃる方もございますし、それからまた別に、芸術でありますとか、いろいろのことを自分はやり遂げたい、だけれども日々の生活もしていかなければならないといったようなことで、パートでありますとか、あるいはまた派遣雇用でありますとか、そうした働き方をしながら、自分がやりたいと思うことを勉強なさっている方もある。さまざまな生き方の方があるなというふうに思っているわけでございまして、そうした皆さん方にもそれなりの働き方ができるようにしていくということは大事なことだというふうに私も思っている次第でございます。
○小沢(和)委員 そうすると、大臣のお話というのは、おまえの言うのはげすの勘ぐりだ、とにかく素直に、厚生労働省としては、解雇ルールに対する裁判の今の到達点を法律として盛り込みたい、こういうことだということですね。
○坂口国務大臣 そんな失礼なことも申し上げませんけれども、私の思っておりますことを御理解いただきましてありがとうございました。
○小沢(和)委員 今確認したとおり、裁判で確立している解雇ルールをそのまま法制化したいというのが真意であれば、企業や一般国民に、企業が労働者を自由に解雇できるようになるという誤解を流布させないためにも、本文を削除する抜本的な修正を行うべきだと思います。
野党四党は、この問題でこれまでに三回協議をし、我が党もその場に独自の修正案を提起いたしました。その後、民主党から、今民主党案として伝えられております案が示されております。それには、我が党が要求したうちの裁量労働制の部分を削除するという提案は入っておりませんが、大筋で賛成できるものであり、我が党としては、共同提案したいという考え方をその場で表明いたしました。残念ながら、そうはなりませんでしたが、我が党としては、民主党案どおりの修正をぜひ実現すべきだと考えております。
その修正案では、「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合以外の場合であつても、労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することができない。」となっております。
これはほぼただし書きの部分を本文にしたものであり、大臣が、足しもせず引きもせず、裁判の到達点を法律化したいというのであれば、何の無理もなく受け入れられる案ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○坂口国務大臣 民主党からお示しをいただいた案と私たちが考えておりますものと、私が考えているというか提案をさせていただいたものと、これは平たく、わかりやすく言えば一緒のことだと私は思っているわけであります。
したがって、私は先ほどから申しておりますように、それは先に書くか後に書くかという違いはありますけれども、あの労働基準法という法律の中の一部として読んでいただければ、今小沢議員がおっしゃったように、そういう今まで最高裁で示されましたその内容をちゃんと書き込んでいる、こういうことだというふうに思っています。
私、ある法律家の皆さんにも御相談をいたしまして、私も法律の書き方なんというのはよくわからないものですから、いろいろお聞きしたんですよ。そうしたら、わかりやすくその人が言ってくれましたのは、この食堂を利用することができる、ただし代金を払わなければ利用できない、こういうことだと。この食堂は利用できる、ただし代金を払わなければ利用できない。これは、代金を払わなかったらこれは利用できない、そういうことだ、そういうわかりやすい例を挙げてそのお話をしていただきましたので、ああ、なるほど、そういうことかと私も思ったわけでございます。
それはお笑い話でございますけれども、全体の中で読めば、私はちゃんと読めるというふうに思っている次第でございます。
○小沢(和)委員 先と後と、それをひっくり返しても同じだというような論法は、余りにもこれは大ざっぱ過ぎる話だと思うんです。それをひっくり返したら意味が全然違ってくるから、これだけ議論をしているわけです。
ただ、あなたは修正案と自分が考えていることとは一緒だというような趣旨のことを言われましたから、ぜひそれなら、これだけ世間が誤解しているわけですから、誤解がないようにこの修正案に同意をしていただきたい。
さて、せっかく解雇ルールを法制化するなら、判決を足しも引きもせずで法文化するのではなくて、第一線の監督官たちが多発する解雇紛争解決のためにもっと積極的に動ける条文にすべきだと思うんです。
この労働基準法は、もともと使用者に対し、労働者の権利、労働条件を保護する立場から多くの義務を課しております。その点からいえば、無効とするという宣言規定の条文では、実際に監督署や監督官が監督指導に動くためには不十分ではないでしょうか。この修正案のように、解雇してはならないという趣旨が明確になっていれば、合理的理由もなく社会通念上相当と認められない解雇は労働基準法違反だとして、強力な指導ができることになるのではないか。第一線の監督官のためにも、この修正案の方でいくべきじゃないでしょうか。
○松崎政府参考人 まず、御提案でございました、何とか何とかの場合は解雇できないという規定、確かに、労働基準法の中には、例えば十九条のように、業務上疾病で療養中の場合でございますとか女性の産前産後の場合には、使用者の解雇行為そのものを罰則つきで禁止しているとございます。確かにこれは、我々監督行政におきましても、監督官が監督権限に基づいてきちんとこの行為を規制しているということでございます。
ただし、これはもう御案内のように、この規定を見ていただきますと、業務上疾病という使用者の責任がある原因によって療養中という、これはいかにも全く明々白々でございます。それからまた、女性の場合の産前産後の期間というのも、これもそれから産後三十日間というように極めて具体的に書いてありまして、これはいわば規範的な要件ではございませんで、事実要件でございます。これは監督官であればだれが見てもこういった事実認定はできるというところでございまして、こういったように、労働基準法におきましては、最低限ぎりぎりのところで労働者保護を図るという観点から、監督権限を背景にしたこういった禁止規定というのを書いてあるわけでございます。
しかしながら、一般的な解雇につきましては、今まで民法の六百二十七条一項しかなかったわけでございますが、そこに昭和五十年のいわゆる日本食塩製造事件というものがリーディングケースになりました解雇権濫用法理というものが適用されまして、民法の一条三項を援用して、権利濫用法理というものを解雇に援用した格好で定着してきたわけでございます。
そこで言われておりますのは、客観的に合理的な理由があり、かつ当該解雇が社会通念上相当と是認されないときは、権利の濫用として無効であると書いていまして、まさに先ほどの労働基準法十九条の規定のように事実を書いておりませんで、要件事実じゃなくて、まさに規範要件を書いていまして、個々の具体的な事例をこれに該当するかどうか、特にこれは権利の濫用ということを言っておりますので、判例では権利の濫用を援用しておりますので、これは労働者側に法律上の立証責任があるという仕組みになっております。
こういったものについて定着している段階で、今おっしゃったようなこういった規範的要件というものを、現場の我々監督官がこういったものを解釈して、従来の基準法十九条と同じように監督権限というものを背景にしてやるということは、現実問題として、私ども監督行政の責任者としては、はっきり申し上げて自信がなく、責任は負えないということでございます。
これは長年にわたりまして、特にこの解雇権濫用法理につきましては、昭和五十年から三十年にわたりまして、先ほども御説明ございましたように、最高裁判例も含めて多くの下級審判決、そういったものが積み重ねられてきまして、労使の間に一応法規範として定着しているものでございますので、ここのところはやはり従来どおり、この難しい判断については、最終判断であります司法判断に直接お任せした方が、私どもは、社会常識といいますか、国民の社会常識に合った判断というものができるというふうに考えております。
○小沢(和)委員 今の答弁からいったら、せっかくこの法文はつくるけれども、なるたけだったら裁判か何かに行って、そっちの方で片づけてもらいたいと。それじゃ、この条文をつくる意味がないんですよ。だから、私は、これは局長に根本的にそこのところは考え直していただきたい。我々は、第一線の監督官が、そういう解雇権の濫用に当たるようなケースに遭遇した場合には、これを武器にして頑張ってもらいたいという気持ちでこれを提案しているんですから。
それから、解雇ルールの条文をどうするかに関連して、解雇権の濫用かどうかの立証責任が労使いずれの側にあるかについても、いろいろ議論が行われてまいりました。今私が要求したような修正を行えば、立証責任の問題はすべて使用者側にあることが明確になる。この問題も同時にすっきりと解決される。そういう意味でも、私はこういう条文にしていただきたいということを一言つけ加えておきたいと思います。
時間もありませんから、次に、この問題に関連して、就業規則に関する改正についてお尋ねをします。
今回の法改正では、第八十九条の三号、就業規則の退職に関する事項に「解雇の事由を含む。」との条文を加えることにしております。基準局長にお尋ねしたいんですが、この条文を加えることにより、就業規則にこういう場合は解雇するという定めを設けないと、この就業規則は法律上の要件を欠いているということで、監督署に届け出ても受理しないということになるんでしょうか。
○松崎政府参考人 まず、就業規則の記載事項として、解雇に関する事項を含むというふうに明示するという改正をお願いしているわけでございますけれども、これは、含むと言っておりますように、従来「退職に関する事項」となっておりました。
ただ、解釈運用上は、明示はしておりませんけれども、解雇に関する事項も含むということで運用をしてきております。それを労働基準法上、必要的記載事項として明確にしようというのが趣旨でございます。したがいまして、基本的な今までの扱い、窓口における扱いというのはがらっと変わるということではございません。
しかしながら、今申し上げましたように、就業規則に記載しなければならないいわゆる絶対的必要記載事項の一つにきちんと書かれるということになりますと、より明白になるわけでございますから、仮に解雇事由というものが全く書いていない就業規則が監督署の方へ届け出られてきた場合、それを受け取った監督署の窓口におきましては、これは記載事項で書かなくちゃいけませんよということで、まず補正を指示するといいますか指導するといったような指導を使用者に行うということになるわけでございます。
ただ、どうしてもこれでいいんだといった場合、そういった場合には、必要的記載事項でございますけれども、逆に、これはぎりぎり言った場合には、そこまで確認して、書かないということになれば、逆に解雇はないと解釈されるおそれがあるということを、そういう負担を使用者の方が負うというのであれば、最終的には、監督署においては受け付けざるを得ないというふうに考えています。
○小沢(和)委員 最終的には受け付けざるを得ないと言われましたけれども、そういう指導が窓口で行われるということになりますと、今回の法改正で、使用者は、こういう場合は解雇するという解雇の事由を就業規則に書かなければならないということになります。
もともと就業規則は、使用者が一方的に作成するものであります。一応、過半数、労働組合や代表者の意見を聞かなければなりませんが、合意までは必要ない。そうすると、この法改正を契機に、使用者は、労働者をできるだけ解雇しやすいように、勝手にたくさんの解雇事由を就業規則に書き込むことになりはしないでしょうか。
私は、かつて八幡製鉄、今の新日鉄で労働組合の専従執行員を五期務めたことがあります。当時は組合員が四万人もいたんですが、久しぶりに後輩たちに頼んで、その就業規則をもらって読んでみました。
これには、第六十五条に解雇の規定があります。甚だしく業務能率が悪いとき、心身の故障のため業務にたえないとき、業務計画を変更したとき、その他これに準ずる程度のやむを得ない事由があるときと、ちょっとはしょって読みましたけれども、四項目並べられております。このほかに定年の規定もある。
他社はどうかというのを、NTT、東芝、スズキ自動車なども見てみましたが、大体同じです。
これ以外にどういうような事由を書けというんでしょうか。
○松崎政府参考人 これは、就業規則の「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」というところでございますけれども、こういったことを必要的記載事項ということで書いてもらおうということは、今後、これが明確になりますことによりまして、各事業場において、全く解雇の事由が記されていないような就業規則、こういったものは現実に減少してくるだろう。そういうことによって、やはり当該事業場の労使、特に労働者にとりまして、どういうものが解雇事由に当たるかということがある程度明確になって、予見性といいますか、そういったものが高まり、お互い、何か解雇に関する問題があった場合には、その争いというものがそもそも前提として減り、また実際に起こった場合にも解決が早くなるのではないか、こういったことを期待しているところでございます。
したがいまして、解雇事由というものについて明確に書いていただきたいわけでございますけれども、それを具体的にどう書くかという問題、これはそれぞれ各業種によって違うというよりも、各企業、通常、事業場というより企業全体で一本の就業規則というのが各事業場に適用されるんでしょうけれども、そういった各企業のいろいろな考え方、特に、先生おっしゃいましたように、これは同意は要らないわけではございますけれども、従来からの安定的な労使関係というものを築いてき、さらにより一層安定的にしていこう、いろいろ企業再編とかを考える場合にも、やはり労使関係の安定というのが基礎であるということは認識があると思いますので、そういった労使関係の中で書いていくわけでございますので、そうむちゃくちゃなものといいますか、事実上の問題としてそう何か非常識なものはなく、やはりその事業場において必要なものが書かれていくんじゃないかというふうに考えています。
○小沢(和)委員 次にお尋ねしたいのは、解雇には、この解雇条項というものに書いてあるような理由だけでなく、企業内の秩序を維持するために行われる最も重い懲罰としての懲戒解雇もあります。
就業規則に解雇の事由を書けと言えば、企業は、当然この規定も含めて整備しようというふうに考えやしないでしょうか。
○松崎政府参考人 それは論理的な必然性はないかもしれませんけれども、解雇の事項というものをきちんと書かなければならないという意識があった場合には、懲戒解雇というものも一般にあり得るわけでございますので、懲罰処分というところも、もし懲戒解雇という規定がないとすれば、やはりそういったもの、最終的にそういったものを入れるかどうかはまた別の判断があるかもしれませんけれども、それは当然検討されるんじゃないかというふうに思います。
○小沢(和)委員 就業規則は、その会社内における労働者の行動を律し、労働者はこれに拘束される一種の法規範となっております。とりわけ懲戒解雇条項は、労働者に日常から精神的な威圧を与える効果を持っております。
先ほど私が見せてもらったという新日鉄のこの就業規則の懲戒解雇条項の中には、「会社に不利益を与えるような事実のわい曲を行ない、または虚偽の事実を陳述し、もしくは流布したとき。」という文言があります。私たちのように、正当な活動として企業の社会的責任を問うような発言をしてきた者は絶えず、会社の構外で就業時間外にやったことでも、この条項で首になるかもしれなかったわけであります。
また、NTTの懲戒条項には、「会社施設内において、許可なく演説、集会、貼紙、掲示、ビラの配布その他これに類する行為をしたとき」という文言もあります。これも、職場での労働組合活動締め出しに利用されかねない。
今回の改正で、これにさらに懲戒解雇の事由を追加しろというんでしょうか。
○松崎政府参考人 説明不足で申しわけございませんでした。
懲戒処分についても必要的記載事項でございますので、もともと就業規則の中に書かなければならないものでございますから、今回のこの改正によって追加されるというものではございません。
○小沢(和)委員 ここに、厚生労働省がつくった小規模事業場モデル就業規則があります。各委員のお手元に資料として配付しております。
これを見ると、解雇の項目は、新日鉄と全く同じ内容の四項目です。しかし、懲戒解雇の項目は、このモデル規則が八項目であるのに対し、新日鉄やNTTの就業規則は、ほぼ同じ内容の八項目に今私が指摘したような項目をいろいろ加えて、どちらも十七項目になっている。
今でも企業は、懲戒条項を思いつく限り並べているんじゃないでしょうか。むしろ、今必要なことは、こういう職場の労働者を威圧するようなあいまいな懲戒条項など削除するように指導することではないんでしょうか。
○松崎政府参考人 今御質問のように、私どもは、モデル就業規則というものをつくりまして、これは特に、就業規則のつくり方がわからない中小、特に零細企業を対象にしましてこういったものをつくりまして、作成というものを指導しているところでございます。
したがいまして、これはあくまでもモデルでございますので、この就業規則というものが、確かに、いろいろ業種別といいますか、そういったものになるべく合うようにつくっておりますけれども、それがどの企業にも合致するものではもちろんございません。
先ほど申し上げましたように、解雇理由でございますとか懲戒処分の理由でございますとかそういったものは、やはり企業、労使も含めての場合もあるかもしれませんけれども、企業の考え方、そういったものによってかなり差が出てまいるわけでございまして、千差万別でございますので、就業規則をつくるに当たりましても、確かにこういったモデル就業規則を参考にされながらやるのが一番手っ取り早いんですけれども、こういったものを参考にしながら、自分の企業の考え方、実態に合った格好でそれぞれ考えて、修正といいますか手直しをしてつくっていただくのが一番適当じゃないかというふうに考えておりますので、特にその書き方について、モデル就業規則をお示ししていますけれども、これが一番いいんだというところまでまだいっておりませんように、具体的な事項について特にこうせい、ああせいという指導は、中身についてはいたしておりません。
○小沢(和)委員 これは私の勝手な思い過ごしじゃないんです。さっきも言いましたように、私はかつて八幡製鉄で労働組合の執行員を務めたことがありますが、当時、しばしば労使の紛争の原因になったのが就業規則違反問題です。
例えば、労基法第三十四条で、休憩時間は自由に利用することが保障されているはずなのに、労働者が横になって休んでいると、守衛が、横臥睡眠、横になって寝ることですね、横臥睡眠は就業規則違反だなどと摘発したことがある。職場の労働者は、四十五度まで傾ける範囲なら横臥にならないだろうなどといって闘ったわけですが、本来、横になって眠ろうとどうしようと、休憩時間は自由のはずなんです。そんなくだらないことが就業規則違反だと問題になる。だから、私はこの問題を重視するわけです。
就業規則に解雇事由を明記させることは、これまでの裁判で、就業規則に列挙されているどの条項にも該当しないということで、労働者が解雇の無効をかち取ったことから、限定的な解雇事由の列挙が一種の解雇の歯どめになるということを期待しているのかもしれません。私もそういうケースはあり得るとは思うんですが、これはもろ刃の剣で、一つ誤れば労働者を簡単に解雇できる武器を使用者に与えることになりかねない。その点、局長、どうお思いですか。
○松崎政府参考人 就業規則の条項に違反したことによる解雇処分ということのお話かと思いますけれども、基本的に、最終的な解雇処分の効力については、先ほど来御議論ございますように、民事裁判において決着がつけられるということになるわけでございまして、そこで最終的には権利濫用法理という確立しております判例法理によって判断されるということになります。
したがいまして、その前段としまして、通常の場合は確かに、就業規則に書いてあることに該当するということを立証しないと、条項に書いてある場合には、どういう事実、労働者がどういうことをやって、どこに該当するのかということを立証しないとそれが証明できないわけでございますけれども、いずれにしましても、それは何でもかんでも就業規則に書いてあれば、ちょこっとでもひっかかっておれば解雇できるというものじゃなくて、繰り返しになりますけれども、最終的には権利濫用法理で救われる部分があるというふうに私は考えています。
○小沢(和)委員 そうすると、確認する意味でお尋ねしておきますが、就業規則に解雇の事由を書けということは、項目をいっぱい並べて、そこを充実しなさいよというような指導をするわけでは全然ない。とにかくそのことをはっきりさせなさいと。だから、極端に言うと、モデル就業規則に一般的な解雇が四項目、懲戒解雇の項目が八項目あるけれども、これが一項目と三項目であってもいい、そういうことですね。
○松崎政府参考人 今お示しのモデル就業規則の案につきましては、これは確かに、その他云々というのが、それぞれ四と八にございます。
これは、現実の企業に適用されております実際の就業規則にこういう例が多いので、一番多いというもので書いたわけでございますから、何もこれが全部こうじゃなくちゃいけないというものじゃございませんので、どれかが欠けておっても、就業規則としては、それはそれぞれその企業の考え方、労使の考え方を反映したものでございますので、それは監督署では受け付けるということでございます。
○小沢(和)委員 最後に、裁量労働制について幾つかお尋ねをいたします。
政府も裁量労働制は働き過ぎになりやすいと認めておられますが、本当に過労死する極限まで働かせるひどい制度だと思います。
仕事を与え、それで何時間働いても決議した時間だけ働いたものとみなす、あとは本人任せということになれば、毎晩徹夜してでも、それだけの仕事をやり上げなければ無能と言われ、成績評価を下げることになる。しかし、賃金は、幾ら夜遅くまで働いても、一日二時間の残業でできると決められていれば、その分しか支払われない。これほど人件費の切り下げ、とりわけ残業手当の節減になる制度はない。こうなれば、サービス残業という概念そのものがなくなってしまいます。
本来、こんな制度は認めてはならないものではないでしょうか。大臣、このどこかに新しい労働形態として評価できるものがあるんでしょうか。
○鴨下副大臣 企画業務型の裁量労働制についての御質問でありますけれども、労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を広げよう、こういうようなことがこの制度の最も重きを置いたところでありますけれども、この制度が言ってみればより有効に機能するように、同制度の導入、運用について、さまざまな要件そして手続を緩和していこう、こういうようなことでございます。
これの見直し後においても、導入に当たっては労使の十分な話し合いを必要とすることなど、制度の基本的な枠組みが維持される、こういうようなことから、これは、いろいろと制度を変えていくと、小沢先生がおっしゃっているようないろいろな懸念されることもあるというようなことも想定しつつ考えないといけないと思いますが、このたびの改正が直接的にサービス残業隠しにつながる、こういうようなことではないというふうに考えています。
ただ、労使委員会の決議によりますみなし労働時間の適切な運用も含めて、これからもこの制度が、ある意味で、労働者にとっても、そして使用者にとってもいい制度になるように運用をしてまいりたい、かように思っております。
○小沢(和)委員 これまで、企画型裁量労働の実態を調査したことはありますか。実際は平均何時間働き、それに対し何時間分の残業手当に見合う手当が支払われてきたか、お尋ねをします。
○松崎政府参考人 ただいまの御質問のすべてにはお答えできないかもしれませんけれども、私ども、平成十四年に裁量労働制に関する調査というのを行っております。そこで調査した結果でございますけれども、企画型におきましてみなし労働時間というものを労使委員会で決めますけれども、このみなし労働時間の決め方をどうやっているかというところにつきましては、所定労働時間としているというところが五八・七%の事業場、今までの実績としているところが三四・九%となっております。
また、この調査でございますけれども、企画型裁量制の適用労働者の十四年三月の、みなしでございますけれども、月間労働時間でございますけれども、これは百四十六・五時間となっております。
ちなみに、これを勤務日数で割り戻した場合、これは平均でございますから、なかなかぴたっと、どこまで正確かというのは、細かい点はちょっとあれでございますけれども、勤務日数で割り戻しますと七時間二十四分というような格好になっております。一方、大体同じような時期、平成十四年の企業平均の平均所定労働時間で見ますと七時間四十分ということで、数字の上では、企業平均の所定労働時間より企画型裁量制の適用労働者の一日当たりの労働時間が若干短くなっているという結果にはなっております。
○小沢(和)委員 私がお尋ねしたのは、みなしの労働時間に対して実際の労働時間がどれぐらいかということについて調査をしたことがあるかとお尋ねしているんです。
○松崎政府参考人 この裁量労働制といいますのは、専門型も企画型も一緒でございますけれども、時間の配分でありますとか実際の労働をどうやってやるかといったことについて、具体的な労働時間の管理につきましては、それぞれ本人に管理を任せるというものでございます。
したがいまして、そのために、実際にやった時間ではなくて、みなし労働時間というものを一番実情を知っております労使委員会で決めるということで、それをオーバーしても少なくても、それだけしたものとみなすという制度でございますので、使用者にも確かに健康確保措置を、実際にどういう措置をとるかということを前提として、会社にいる時間、そういったものについては管理しておけということは指導をしておりますけれども、実際に働いた時間、まさに先生おっしゃる実労働時間につきましては、使用者についても義務は課せられませんし、また、本人が確かに個人的につけている場合があるかもしれませんけれども、本人にもつける必然性というのはなかなかないということで、私どもも把握はしておりません。
○小沢(和)委員 最後に把握しておりませんと白状されたとおり、実際にこのみなし労働時間でその労働者がどれだけ働いているかということは、結局ほったらかしにされて、つかまれていないんですよ。だから、ここで労働強化が激しく行われることになるわけです。だから、実労働時間をきっちりこの企画型の労働者についてもつかむ必要がある。
きょうは時間が来ましたからここで終わりにして、あとは今後にいたしたいと思います。ありがとうございました。
○宮腰委員長代理 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
きょうももう私の回で最終でございますが、いつも私の回のときにこういうことばかりして恐縮なのですが、でも、せっかく傍聴に見えている方よりも、我慢強く待ってくださっている委員は別として、やはり成立していないのではないかと思います。
それで、私は最終回ですし、時間の後の皆さんの予定もあると思いますから続けてやりますが、だがしかし、やはり本当に恥ずかしいと思わなくちゃいけないし、私は、何でこんなていたらくかということは、実はこの法案の出され方、そして答弁のいいかげんさ、働くことに対する哲学、全く感じられない。よく恥ずかしくないものだと私は思いながらずっと聞いておりました。
特に今、小沢委員の御質疑に対して松崎基準局長の二つのお答え、一つは、司法判断イコール国民のコンセンサスに近い、そのまま法律にすればよい、そんなものだったら、武山委員も繰り返しおっしゃるように、立法府なんて要らないんです。
やはり働くということを、この社会の中で、特に混乱期、多様な働き方が現実に必要とされ、また望まれる。労使双方からかもしれません。そのときにあって、その働くということがきちんと社会の中で位置づけられ、守られ、より双方が発展していくためのいわば政治の先見性が問われているのが立法府だと思います。その意味で、私は何度聞いても松崎局長の答弁ははなから、申しわけないが、何のためにこの委員会をやっておるのだと思わざるを得ないのです。
では、なぜそういうことになるか、だれが一番責任なのかということにおいて、申しわけございませんが、質問予告していないのですが、でも坂口厚生労働大臣に伺いたいと思います。
実は、五月の六日、城島正光委員が代表質問において小泉首相にお尋ねになったことですが、例えば、一九七三年、フランスにおいては、ちょうどいわゆるオイルショックの時期で、雇用環境が非常に大変な折から、逆に解雇規制をルール化、法制化するような取り組みがなされた。あるいは、ついせんだって、韓国、一九九六年にやはり労働問題をめぐる大改正があり、引き続く九八年に解雇規制ルールを法制化した。
事態は、やはり労働環境も経済環境も変わる。その中でどのような向きに政治が行動するかにあると思いますが、坂口大臣が実はこのことについてはっきり言明された場面というのは、残念ながら、私も聞き漏らしたのかもしれませんが、ないのですが、大臣が一つだけ関連してお答えになったとすると、有期の労働者の契約期間中、きょう山井委員も御質疑でしたが、五年なら五年、三年なら三年で、逆に労働者の就職の自由、意思の自由を奪うことにならないかという御質疑が、これも城島委員から本会議であったときに、それについて社会的コンセンサスがまだでき上がっておらぬからという御答弁が一個あったのが、大臣がお考えになるこの労働法制全体に対してのスタンスかと思います。
前振りが長くてこれも申しわけないのですが、大臣、やはりこの現局面下で、非常に雇用も大変、経済も大変、そして大臣は、やがては経済もよくなろう、あるいはもっと働く側も働きたいような働き方に持っていけるだろうというお考えをお持ちなことは前提として、今この時点で、この国会が働くことということについて定めなければいけない一番の問題は何か、そしてその方向性は何かということについて、御答弁をお願いいたします。
○坂口国務大臣 現在の経済の置かれております立場、そして労働問題が置かれております立場、これは一つの大きな転換期に差しかかっているというふうに私は思いますね。
例えば、日本におきます労働力人口はあと一、二年で減少に転じてくる、そういう時期にかかっております。また、日本の経済におきましても、日本の経済はいわゆるグローバルな世界の中で新しい方向性を見出していかなければならない、そういう事態に直面をしている。あの右肩上がりの時代のあの経済の内容とは全く異なっている。そういう状況の中で、今労働者がその権限をどう守っていくか、私は大変大事な時期だというふうに思っております。
そうした意味で、労働者が安心して働けるようにするためには一体どうするのか。もちろん、先ほどから出ておりますように、裁判の中で最高裁の判決でも示されている。それは法律としてちゃんと今まであれば、その法律に基づいて裁判が行われたでありましょうけれども、残念ながら労働関係の法律の中にその法文は存在しなかった。そういう意味で大変残念なことだというふうに私は思っておりますが、それだけに、今この大事な時期でありますから、私は、この解雇ルールというものを明確にしておく必要があるのではないか、それはこの労働基準法の中に明確に書くことが大事ではないかというふうに思う次第でございます。
先ほど第一条、第二条も読ませていただきましたが、第一条、第二条の中に書かれておりますことは、労働基準法の掲げる精神をその中でうたっております。そのうたっております精神の中で、この解雇の問題をそこに入れるというところに意義があると私は思っているわけでありまして、そういう意味でこの十八条の二を読んでもらいたいということを先ほどから申し上げているところでございます。
○阿部委員 そのようなお考えに立ったとして、解雇規制ルールを明文化するのか、今回のように、ずっとできないという条文の体系で来た労働基準法をできるという形に変えていくのかは、実は非常に運命の分かれ道になるわけです。
そこで、これも大臣にお伺いしたいですが、今回、この基準法の改正に当たって、通常であれば労働基準法研究会等々での審議、論議、これは、私は全くそれを是とするものでもありませんが、少なくとも労働者側の方にとっての不利益とか、労働者側から見て法的観点の検討をする研究会、学者の会です。
さっき、学者はいろいろおっしゃるからとおっしゃいましたが、審議会と並行して、あるいは先立ってそういうところでの法的な研究というものもきちんとされて、しかるべく成案を見て提出されるべきだと私は思いますが、そこがどうあっても、これは規制改革会議がもうちょっと雇用環境の流動化というか使い勝手のよい労働者のあり方ということを求められて、そのことにそのまま乗っかる形で今回の、本来は労働者側のいろいろな健康や働き方を守るべき厚生労働省が、間を一個抜いてしまってそのままに法律化されているのではないか、そのことが逆にこうした審議過程にもあらわれているのではないかと思いますが、今回なぜ、労働基準法研究会等々の意見を聞く、ないしはそこでの問題点、指摘を受けて事が進められなかったのでしょうか。後ろから実務サイドがおっしゃるなら実務サイドが御答弁ください。
○松崎政府参考人 確かに労働基準法研究会というものがございまして、最近ここでも議論がございました例えば労働者派遣法でございますとかパート労働者の対策要綱でございますとか、いろいろな労働基準関係の法律については、労働基準法研究会という学者の先生だけの集まりで、いわば審議会にかける前に成案を詰めるということでやってまいりました。
しかしながら、やはりこれはオープンではないのではないか、ちゃんと労働政策に関しましては、当時は労働基準審議会、今は労働政策審議会の一つの分科会でございますけれども、ほかの審議会とは違いまして、労働関係につきましては、公労使ということで、公を代表する方、それから労働者全体を代表する方、使用者全体を代表する方、こういう公労使三者構成という審議会があるんだから、そういう学者だけで私的な研究をするのではなくて、もっとオープンに公労使入った場でもともと初めから研究すべきだという意見が非常に強うございました。
そういったことで、今回の場合は形式的な場としては労働政策審議会の労働条件分科会、こういった場を使わせていただきまして、かなり長期にわたって検討を行い、また私の経験におきましても、今回の分科会といいますか審議会ほど、特に学者の先生、弁護士の先生おられますけれども、公益委員がいろいろと発言をされ、いろいろ見解を述べられ、また労使の委員から質問をされ、それに答えられたといった例はなかったぐらい、真剣に法律的な観点からも議論をされたということで、きちんと法律的な観点からの検討は行ったというふうに考えております。
○阿部委員 今の御答弁ですが、やはり大きな矛盾があると思います。労働法研究会、労働基準法研究会でも結構です、今までほかの働き方については、派遣とかパートについてはきちんと相談してきた、この労基法についてだけは、その方たちに相談するよりも審議会方式で、そこに公益委員を多く入れたという御答弁でした。しかしながら、逆に言えば、この方たちを排除したことにもなってきます。
そして、いわゆる公労使一体になった審議会ということで、そこの部分が中心にやりたいという声が高かったという御意見ですが、これはどなたの声が高かったのでしょう。よりはっきり、だれの声が高かったんですか。厚生省の声ですか、使用者側の声ですか、労働者側の声ですか。
○松崎政府参考人 だれの声が大きかったといいますか、それは特に公益委員として、こういった審議会の場があるんだから、そういうところで我々だってそういう責任を果たせるということだと思います。そういった御意見に対しまして、労使も賛同してやったということでございますし、また基準法研究会も、派遣法でやりましたのはもう二十年近く前の話で、それ以来途絶えておりまして、また新たに再開ということは考えなかったということでございます。
○阿部委員 今の前半の答弁も答弁になっていません。だれが労政審、労働政策審議会を中心にやることがいいと発案されたのですか。この間の、全部そうですけれども、資料を出してください、何してくださいということでも、だれがというちゃんとした主語、働きかけにはだれから始まったかがあるんです。それが松崎さんの御答弁には全くないんです。ファジーで責任逃れで、その結果、ほとんど労働者の声が聞かれていない。そして、こっちの席はあき、向こうがいっぱい来る、こういう審議状況になるわけです。
もう一度伺いますが、労政審が中心になって事を進めるべきだ、労働基準法研究会についてはもう二十年も前だから、これは実は私がきのう部屋で伺った担当のお話と違いますが、労働基準法研究会でも、解雇ルールをどういうふうに明文化していくか、解雇規制ルールというやり方でやるのと、解雇ルール、今回のようにやるのと、論議があり、いろいろな意見があったと伺っております。二十年前しかやられていない、派遣法について二十年前にしかやられていないというのも本当のことでしょうか。もう一度御答弁お願いします。
○松崎政府参考人 ちょっと話がずれるかもしれませんけれども、労働契約、これは今回の解雇の問題も含めてでございますけれども、私がたしか労働基準局の監督課の課長補佐のときに派遣法の研究会があり、そこでは派遣法の原案をつくったわけでございますけれども、そのときに、やはり御指摘のように、労働基準法研究会で確かに検討いたしました。これは、派遣問題について、従来の使用従属関係という一本の関係、これを労働契約関係と指揮命令関係に分けるというところ、こういった非常に従来にない法律関係をつくるということで、かなり法制的な面があるということでお願いした記憶がございます。
それに絡んで、労働契約の問題について言えば、労働基準といいますか労働関係の法律の中で、労働契約法というのはもともとないじゃないか、こうやってだんだん労働契約というものが重要になってくる時代、働き方が多様化していく時代では、労働契約というものの重要性が増すんだから、例えば労働契約法といったものを検討すべきではないかといった議論もございました。そういったところで、一応そういった話もあったということで、私ども事務方としましては、いろいろそれ以降、研究会の場ではなくて、たまにはいろいろな先生に相談しながら、長期的に検討してきたという事実がございます。
また、今回の場合におきまして、話は戻りますけれども、だれがという話でございますけれども、確かに検討したのは十三年の九月でございます。
今申し上げましたように、過去十数年にわたりまして、労働契約法というのができれば何とかしたいということで、我々事務方は、いろいろな諸外国の例、そういったものも参考にしながら、また先生と個別に相談しながら、論文を読みながらということで温めてきましたけれども、やはり全体としてはなかなか整理がつかないというところがあって、成案には至っておらないわけでございますけれども、そういう経緯の中で、十三年の九月に、今度、午前中も申し上げたと思いますけれども、こういった状況の中で、基準法の改正といいますか、労働契約期間の関係、裁量型の問題、それから解雇ルールの問題、こういった問題について見直すべき時期が来ているんじゃないかという公労使三者の共通認識のもとに検討が開始されたという経緯がございます。
したがいまして、そのときに、なぜ、だれが審議会でやろうと言い出したかということでございますけれども、これは、従来の基準法研究会が残っており、その直前まで基準法研究会という方式を使っておったのであれば、選択の余地があったのかもしれませんけれども、そのときは現実問題としては、基準法研究会でやるか、それとも別に新しい研究会を新たに設けるかということになり、そういった中で、従来、審議会でもいろいろ関係者の方から御議論があったわけでございますから、その場を使おうということになったのだと思います。
また、あえてだれがということになれば、当時の労働基準局長かもしれませんけれども、それは現在においてその責任は私が引き継いでいるということを言わざるを得ません。
○阿部委員 そういう雑駁なことをなさるから、例えば労働基準法研究会でも、契約法としてこの解雇の問題は、逆に雇用の問題、雇用契約上で解雇の問題をどのように扱うのかは大変にいろいろな側面が、これは問題があるという指摘があったわけです。
それを受けて、問題があるという指摘を受けながら、何らその過程を検討せず、もう一つの、審議会というのはいろいろなところでありますから、審議会形式の中に投げ込んだ。そしてそこで、一方で規制改革会議でのこれからの望ましい労働者のあり方というのを、当然使用者側からの提案を受けた形でこの政策審議会にかける。
私は、例えば契約法上、法的にいろいろな問題が多様にあるといったら、その次にまず考えるものは、さっき言った働き方の哲学なんだと思うのです。そこが全く欠落してしまって、こっちにはニードがある、法体系はよく検証されない、その合間で、ぐちゃぐちゃにしたまま今回現状追認的な形を何とか玉虫色で法制化しようとするから、何だか禅問答のような、足しても引いても変わらないだけ、上下逆さにしても同じだとか、そんな論議をしているから、本当にこれが労働者のためになるのか。
私は、例えば有期とか派遣とかいう働き方が、本当に労働者側の選択でそのように選択されていくものである可能性があるとすれば育てればいいと思いますし、その意味で大臣の御認識と一緒ですが、このままでは本当の個人側の働く者の意思も保障されないし、健康問題にも問題が出てくるということで、野党そろって修正を求めているわけです。
今のような、これまでの審議、これまでの検討、これまでの考え方も全く不明瞭、そして哲学もない、なし崩しの中で法制化されていくこのことについて、もう一点松崎局長に、長く労働基準局におられましたから絶対に御存じなことと思いますので、お尋ねしたい点がございます。
いわゆるILOの百五十八号条約というものが一九八二年でしたかできておりますが、このことに関しまして、我が国の厚生労働省の国際課、本当は国際課にお答えいただくのがいいのかもしれませんが、どのような検討をされ、どのようなお考えがあり、そして、私は昨日、この検討資料を出してくれと言いましたが、資料がない、全くない、二十年間全くないと。しかし、そんなことはあり得ないと思うのです。これは非常に大きな労働の解雇のルールです。そのことをめぐって百五十八号条約があり、厚生労働省としても検討はされてきたと思うのです。なぜ全く資料がないのか、どんな検討がされたかもわからないのか、もし現場に詳しい松崎局長が御存じでしたら教えてください。
○松崎政府参考人 正直申し上げますと、余りこの件については詳しくないというのが正直でございます。
ただ、ILOの百五十八号条約は、先生御指摘のように、労働者を使用者の発意による雇用の終了から保護するということを目的にして、いろいろな雇用終了の場におきます手続とか、さらには、この場でもいろいろ議論になっております解雇問題が訴訟で争われる場合のいわゆる挙証責任の問題、そういったことについても規定してございます。
そういったことで、検討した経緯といいますか、確かに、きちんとといいますか、がりがりと批准へ向けて検討した記憶はございません。
と申しますのは、今申し上げましたように、これを一見して、百五十八号条約、これは仮訳でございますけれども、読むだけで既に何点か現行制度とは全く違っている。例えば、意思表示をしたときには、解雇する前に労働者に弁明の機会を与えなければいけないといった点。細かい点でございますけれども、差別的な条件の一つとして皮膚の色が入っているといったようなこと。それからさらに、先ほど言いました挙証責任が使用者側に負わされていること。一見明らかな部分がございます。
それで、我が国の場合、御承知のように、このILO条約というもの、こういったものについて、確かにこの条約は、採択の場合には政労使賛成してございます。これは、趣旨について賛成したわけで、こちらの方向へ向かった、こちらの方向といいますか、こういった趣旨について賛成で、中身についてできることは取り込んでいこうという趣旨だと思います。
したがいまして、今申し上げましたように、一見しても問題点がありますので、具体的な批准に向けたぎりぎりした検討というのは行っておらなかったはずでございますし、私の記憶でもぎりぎりとした検討は行っておらない。したがいまして、具体的な検討資料というものはないということになろうかと思っております。
○阿部委員 今の答弁は、総論賛成、各論反対、結局何もやっていないという答弁でありますが、こういう今グローバル化した、経済も働き方もいろいろな意味でグローバル化して、国際基準ということがやはり非常に重要だという時代になり、そして二十年間、今の松崎局長のおっしゃったような、何の文書も残さず、総論は公労使で合意したけれども、あと細かな点、皮膚の色とかなんとかがあるからと。そんなの印象ですよね。
逆に、厚生労働省という、昔は労働省といったのでしょうか、そうした省庁を挙げて、何ができて何ができなくて、現実の制約は何か、国際法にのっとれない我が国独自の制約があるならそれは何か、我が国に不適切であるならそれは何か、そういうことが検討されてしかるべきと思いますが、この二十年間の怠慢について、坂口厚生労働大臣にお考えを伺いたいと思います。
○松崎政府参考人 確かにこの百五十八号条約につきましては、政労使一致で採択に賛成しております。
と申しますのは、総論賛成ということよりも、趣旨としては賛成で、特に我が国の場合は、批准というものにつきましては、国内法と突き合わせ、まさにこれは法制局で法令審査するわけでございますけれども、国内制度との突き合わせを行いまして、本当に漏れがないということを、国内法を整備してから批准するということで現在まで来ております。
したがいまして、現行制度におきますと到底、先ほど皮膚の色も申し上げましたけれども、そこは私の感じでは解釈で何とかなろうかと思いますけれども、先ほどの挙証責任の点、そういったものについては致命的なものがあって、これについては、見ただけでこれは現行制度ではなかなかできないということで、検討はしていなかったということでございます。
○阿部委員 採択に賛成で、しかしながら、個々に点検すら印象においてしていない、何も公文書が残らない、そんな行政というのはありでしょうか。
例えば、今回厚生労働省が出された労働基準法の改正は、今いみじくも松崎局長がおっしゃったように、真っ逆さなわけです。例えば、この百五十八号はむしろ解雇規制ルールです。「当該労働者の能力若しくは」云々「運営上の必要に基づく妥当な理由がない限り、終了させてはならない。」と。「限り、終了させてはならない。」と、解雇規制ルールの明文化。それから、挙証責任についても、第九条にございますが、「終了の妥当な理由のあることを挙証する責任が使用者にあること。」となってございます。
私は、少なくとも、これが採用されるかされないか、不都合は何か、この採択をしたんであれば、それから国際化した時代に我が国も乗りおくれまいとするんであれば、やはりきちんとした検討、その検討もなくてなぜ真っ逆さの法律が出てくるのか、そこが厚生労働行政の怠慢ではないかと思うのですが、もう一度これは坂口大臣に御答弁をお願いいたします。
○坂口国務大臣 真っ逆さまというお話でございますけれども、内容は私はそんなに違っていると思いません。表現の仕方がどうかということであろうというふうに思いますけれども、私は、趣旨は十分に尊重しているというふうに思っております。
したがいまして、この法律をつくるにいたしましては、解雇ルールをつくるということを初めに言いましたときに、これは労働側もそれから経営者側も、両方とも反対だったんです。反対、もうそんなのはつくらなくてもいい、今のままでいいと、両方とも反対でございましたけれども、だんだん話をしておりますうちに、しかし、そうはいうものの、裁判の判決の結果だけで、そして労働基準法の中に何にもないというのも、言われてみればそれはそうかということで、だんだん皆さんも、それでは一遍検討しようじゃないかということになってきて、そして皆さんいろいろと審議会でも長時間かけて御議論をいただいたというふうに思っております。
書き方の問題は確かにあるんだろうというふうに思いますが、しかし、その言わんとするところ、そこは私は間違っていないというふうに思っておりますし、先ほどから何度か申し上げておりますように、この労働基準法という法律の中の位置づけ、その位置づけの中に書いた十八条の二ということでございますから、私は十八条の二をそんなゆがんだ読み方はできないというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 別に、私がゆがんでひねくれていて、それから坂口大臣が真っすぐで疑いがないわけでなく、一つの法律は、それが法律としてできたとき、私はやはり一番大事なのは立法趣旨なんだと思うんです。そこに込められた哲学なんだと思うんです。そのことが余りにも現状を足しもせず引きもせずというんであれば、現状でよいわけです。
そして、実は私も労働分野など全くの素人ですから、こういう法案がかかると一生懸命勉強するわけです。それで、この百五十八号についても、本文を見てふむふむと思った点があるので、ぜひ大臣も、もうお読みかもしれないけれども、御確認いただきたいんです。
一九八二年にこの条約ができたときの書きぶりの中に、「近年多くの国で経験された経済上の困難及び技術的変化に起因する重大な問題に留意した上、」要するに、今私たちが認識しているような経済上の困難あるいは技術革新に伴う働き方の変化、そのことを勘案した上で、解雇規制ルール、挙証責任は使用者側、そして、してはならないという法文をつくって、世界にこれを広めていこうという法律の体系があるわけです。
私は、そのあたりは、大臣の本当に純粋な意識される部分と、一たびこの法律がひとり歩きし出したときのさまざまな問題を懸念しますし、それ以上に、やはり本当に我が国で、特に若い人たちがこれから安心して働いていける法体系をつくるのが、現在の政治家の私たちの役割だと思っていますので、大臣にはもう一度、この百五十八号ができた社会状況、社会環境、そして今我が国が直面しているさまざまな困難状況の中での先見性をお示しいただきたいと思います。
まだまだこれから質疑の時間もたくさんあると思いますから、大臣にも、もしかしてお心が少し変わるかもしれないし、お時間の経過を見させていただいて、また別途、質問をさせていただこうと思います。
もう一つ、私は、この委員会審議が何だか法文解釈的で、押したり引いたりでつまらないなと正直なところ思う理由のもう一つが、勤労者の実態、労働者の実態ということを、何を聞いても、ほとんど厚生労働省側が把握していないという答弁が余りにも多いのです。先ほどの小沢委員の時間外労働の件でしたか、これも把握していない、あれも把握していない。私がお部屋に厚生労働省の係の方をお呼びして伺ったときも、本当に把握していないというのが多うございました。
そして、把握していないままに、例えば有期契約についても、三年から今度五年、あるいは一年を三年と、どんどこどんどこ延ばしていかれますが、そもそもでございます、この三年という雇用契約の労働実態把握はどのようになされているのか。
昨日、私が伺いましたところ、一応、雇用条件に関するものはアンケートをおとりになった、契約期間の上限が三年よりは五年がいいという方も多かった等々が示されましたが、労働時間はどうなっているか、給与はどうなっているか、有給休暇はどうなっているか、育児休暇の取得はどうなっているか、このことについてデータがあればいただきたいと申しましたが、いかがでしょうか。
○松崎政府参考人 今の有期労働契約が三年の方の労働実態についてだろうと思いますけれども、これは平成十三年に、厚生労働省におきましては、今申し上げた有期労働契約三年の対象労働者を含む有期契約労働者を対象にしまして、何点かの調査をしてございます。
調査項目としましては、労働時間、賃金支払い形態、それから従事している業務、業務上活用している資格、就業年数、契約の更新の有無、回数、それから有期契約労働者として就業している理由、契約期間が決定された理由、望んでいる契約期間の長さ、契約期間終了後の希望、法律上の上限が延長された場合の不都合の有無、こういった項目について調査はしております。
〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○阿部委員 有給休暇もしていらっしゃると今おっしゃったっけ。
○松崎政府参考人 これはまさに、有給休暇については、今申し上げましたように、項目には入っておりません。
○阿部委員 あと、育児休暇はどうでしょうか。
○松崎政府参考人 これは本来、有期労働契約が三年の方についての中心的な現状と、それから今後の希望みたいなものを聞いておりますので、そんなに項目をふやせられないということもありまして、それもしてはおりません。
○阿部委員 松崎局長は、今、内閣が、内閣委員会の方で少子化対策基本法というのを提案されているのを御存じでしょうか。
○松崎政府参考人 たしか、きょう内閣委員会で、議員立法ですか、議員提案の審議がされたということは知っております。
○阿部委員 いわゆる少子高齢化問題、今まではどちらかというと高齢化問題に軸足が多うございましたが、昨今は、国会の共通認識として、少子化問題をやはり何とかしていかなくちゃいけない。そのときに、私は、先回の質問でも、派遣労働、二十歳代、三十歳代の女性に多い派遣労働の方たちがどのように育児休業がとれるのか、そのこともお伺いいたしましたし、雇用均等局長が御答弁でございましたが、ことしの四月から調査をかけるというお話でした。
しかしながら、本当に女性たちが今のような労働形態の中で出産を選び取れるのか。このことは、我が国が本当に真剣に取り組まないと、例えば少子化対策基本法で不妊治療に厚生労働省が保険適用をするとか、そういうこと以上に、全体の女性たちの働く条件、働く環境、働く現実が把握されていなければ、私は、対策は対策としての意味をなさない、本質的に誤った方向にしか進まないという思いを強くしています。
そこで、松崎局長にお伺いいたしますが、有給休暇についても育児休業についても調べてはいない。それで、もともとこうした働き方の変化は、人が人らしく、ゆとりを持って、選べる、こういううたい文句で登場してきました。有給休暇もわからない、子供を産めるかどうかもわからない、そうした働き方、これを現状調査もせずになぜ三年から五年に延ばしていかれるのですか。
○松崎政府参考人 こういった今申し上げました項目の調査、こういったものによりまして、大体の現状とそれから方向性、特に働いている方の希望といったものが、具体的に自分の労働条件、そういったものを前提にしながらの御希望、そういったものがわかるということで、そういったものを参考にさせていただいているというところでございます。
○阿部委員 そういう考え方だから、我が国には過労死が後を絶たず、少子化していくんです。本当に働いている人たちの人間的な働き方というのは何かという原点に厚生労働省が立ち返らない限り、使い勝手のいい有期やパートや派遣でしかなくなります。
逆に、望んでそのような形態で、本当に権利として働けるというような可能性があるとしたら、まず厚生労働省が、現実にそういう形態で働いている方の実態がどうかというところの項目の中に絶対に、ゆとりであるところの有給休暇、そして女性たちが当たり前に産み育てる、もちろん男性もそれに参加するわけですが、そういう人間の営みの基本がきちんと調査されなければ、こんな法律、出すべきでないと思いますが、松崎局長、いかがですか。
○松崎政府参考人 私といたしましては、今回の改正といいますか、改正案をつくるに当たりまして、完璧とは言いませんけれども、必要かつ十分な調査をしたというふうに考えています。
○阿部委員 それが必要かつ十分な調査では大変に困りますし、やはり基本認識を何としてでも変えていただかないと、この国で働く人々は本当に、さっき言った過労死するか、子供を産むことすら選び取れなくなっています。
坂口大臣に御答弁をいただきたい。私は、少なくとも現状調査の項目の中に、労働者にとって働くことのゆとり、有給休暇、そして女性にとっては、やはり妊娠というのは、もちろん計画的に、三年有期が終わって、そして妊娠してまた三年、こういうふうに全くコントロール下にあるものでもございません。やはりその時々、産める条件、それは働き方のゆとり、あるいは、実は育児休業法にも期限の定めのある者の育児休業はもともと論外になっておりますが、育児休業法が定められたとき、有期はせいぜい一年まででした。しかしながら、法律の方が勝手に三年、五年と有期を延長していき、その間、女性たちには何らの法的な保障がなく、しかし、国は基本対策で産めやふやせと言いますが、やれっこない、できっこないことを女性たちは迫られるわけです。
やはりここは大臣に、基本的な認識、特に私は、具体的に申しますれば、有期で働く、三年で働く人たちの有給休暇問題と育児休業の実態調査をしていただきたいが、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 少子化対策、これは各分野でやらなきゃならないことだけは、総論は私もそのとおりというふうに思います。これは、ただ単に医療の問題とかそうした一部の問題だけではなくて、厚生労働省だけではなく、各省庁ともにこの少子化対策に対する取り組み方というのはやらなきゃならないというふうに思っています。
その中で、何をどうやるべきか。私も、いろいろの場面に直面をしながら、何を行ったらこれは解決ができるのかということを思うわけでございますが、一つは、現在の経済状況の置かれている立場というものがございます。これは、日本の国だけでどうしようと思っても、なかなかできないことでありまして、世界における日本の置かれている立場を考えましたときに、まことに厳しい経済状況ではございますけれども、その中で生き抜いていかなければならない、そういう側面があるわけでございます。しかし、その側面の中で、日本の国として何を考えていけば日本の少子化を予防することができるのかということだろうと思うんです。
先日もここで少し御紹介申し上げましたけれども、今私の方でまとめておりますデータ、これは、日本の都道府県の中で、いわゆる労働時間の長い県ほど少子化が進んでいる。逆に言えば、労働時間が短いほど子供の数は多い。これはもう物の見事な統計上の数字になっておりまして、非常に私も驚いたわけでございます。そういたしますと、これは労働時間をどう短くしていくかということが、とりもなおさずこの少子化対策として最も大事なことだというふうに言わざるを得ません。それは、女性だけではなくて男性も含めてだというふうに思います。
先ほども申し上げましたとおり、皆さん方のお話の中にも、やはりお金は多い方がいいけれども、金だけが人生ではない、それよりも生きがいのある仕事をしたい、そういうお考えでNPO等にお入りになって、そして少ない賃金の中で頑張っておみえになる皆さん方もおみえになる。やはりそうした中で、子供というものを産み育てていくというこの文化をどう日本として構築していくかということだろうというふうに思っております。ですから、全体としては、男性も女性も含めまして、労働時間というものをどう抑制していくかということだろうと思っています。
私は、そういう意味では、働き方は多様化させた方がいいというふうに思っています。しかし、現実問題としては、今、働く時間数が短い方向に進んでいないんですね。どちらかといえば、リストラが行われて、そして残った皆さん方の労働時間数というのはふえてきているという現実がある。だから、ここをどう乗り切るかというのがこれから最大の課題になっているというふうに思っております。
そうしたこともあって、いわゆるサービス残業の問題につきましても、これは基準法違反でもございますし、これはいけない、もう一歩前にどうして進めたらいいかというふうなことで議論をし、一歩前に進めることにしたわけでございますが、それだけではやはりこの達成はできない。もう少し、日本の国全体として、その中で何をどうしていくかということについて議論を深めていかないと、この問題は達成できないというふうに思っています。
これは、もちろん労働条件ということも大事でございますが、ただ単に労働条件だけの問題ではない。日本の全体の仕組みそのものも変えていかなければならない。そうした大きな問題に直面をしながら今進行しているというふうに総論としては自覚をしているところでございます。
○阿部委員 もちろん労働条件だけの問題ではなくて、子供を産み育てることを社会がどんな価値観を持って受けとめていくかという、これもその哲学だと思います。しかし、最低条件を整えないと、やはりそれもならない。その最低条件とは、働く働き方だと思います。
その意味で、先ほどの松崎局長の、私がお願いした有給休暇や例えば育児休業のとり方の問題、全く意識にも上らない、全く調査もない、全く必要性も感じない、そのような形で進められていくことは、本来の厚生労働行政にとって、あるいは日本の社会にとって、本当に弊害しか生まないと思います。
私は、何度も申しますが、あわせてまた、これ以降も質問させていただきますので、きょうは幾つか問題点の指摘にとどめさせていただこうと思いますが、今大臣のおっしゃったゆとりある働き方ということについても、具体的事例を挙げてお話をさせていただこうかと思います。いわゆる裁量労働の問題で、裁量労働が導入されてから、果たして勤労者にとって働く時間のゆとりはどう変わったかということでございます。
この点に関しまして、厚生労働省がお出しいただきました資料の中にも、裁量労働、今回、企画型の労働にも裁量労働を広げるということですが、そもそも、今大臣がおっしゃった労働時間の短縮という大きなゴールに向けて裁量労働を取り入れて以降、そのゴールは達成されたか逆さに向いたか、松崎局長に御答弁をお願いします。
○松崎政府参考人 従来から政府では、年間実労働時間千八百時間という目標を掲げまして、そこへ向けて労働時間短縮、これは、所定労働時間、残業だけじゃなくて、年次有給休暇、特別休暇も含めてでございますけれども、そういったものを含めて年間千八百実労働時間に向けて努力をしておりますけれども、現在のところ、そこまでは達成しておりません。
また、そういった中で、企画裁量型とかいろいろな、いろいろなといいますか、専門型の裁量型、そういったものが導入されましたけれども、これによる影響というのも、ふえたとも言えず、また減ったとも言えず、どっちにも、ニュートラルというふうに私はとらえております。
○阿部委員 それは余りにも恣意的な、自分たちがとった労働統計をちゃんと見るべきです、松崎さん。
専門業務型で、「ほとんど変わらない」が五九、「短くなった」と「やや短くなった」を合わせると一四・二、「長くなった」と「やや長くなった」を合わせると一九・九。この五%の差をあいまいにして、わからなくして、あえてデータとしてとらないというのは余りにも恣意的です。あなた方は何のために統計をとっているのか。やはり労働時間を千八百時間なら千八百時間に短縮していくために、この裁量労働の導入が果たして延ばしたか縮めたかくらい、もっと自分たちのとった統計を真剣に見てみるべきです。五%の差、五%であれ「長くなった」に多いということは、やはり十分認識されてしかるべきです。そういう認識で次々次々裁量労働を広げていくから、何度も申しますが、悲惨な事態が生じるわけです。
せんだっての委員会で山口委員がお取り上げになりまして、具体的に例示をされませんでしたが、いわゆる光文社事件というのがございます。これは、二十四歳のまだ若い編集者、専門業務型で働く二十四歳の若い労働者です。この方が過労死なさいました。
この方の労働時間、死亡直前一カ月で二百九十三時間五十二分、時間外労働百二十七時間。死亡前二カ月三百四十三時間五十六分。いいですか、二カ月というのは、一カ月間で三百四十三時間働いているんですよ。時間外労働百七十時間。死亡前三カ月二百三十九時間、時間外労働百二時間。死亡前四カ月三百十八時間、時間外労働百五十八時間。死亡前五カ月三百二十九時間、時間外労働百五十八時間であります。
そしてこれは、一昨年の十二月の労災の認定の見直しによって六カ月にさかのぼって、長時間労働だということで、やっとの思いで労災認定はされました。しかしながら、二十四歳のこの死んだ青年は帰ってきません。私たちの社会が本当に若い人たちを守るルールをつくっているのかどうか。
そして、この方のお母さんが裁判の中で述べられた意見陳述を読んでも、この御本人が望んでそのような裁量労働をしていたかというと、決してそうではありません。
この方は、男性ですが、女性週刊誌に就職されました。そして、新たな経験しない分野だけれども、どうやっても編集者になりたいからといって勤めたのだけれども、原稿の催促の電話、バイクで家に原稿が届いたり、あるいは催促に出向く、毎日帰宅は午前一時、二時、そして一年目が終わるころには三週間に一日の休みもない出張校正、息子は風邪以外に病気はしたこともなく、体力も人並み以上にあった、そんな息子がどうして、社会人になって一年四カ月、たった二十四歳で死ななければならなかったのでしょうというお母さんの意見陳述があります。
私は、少なくとも厚生労働省として、こういうさまざまな労働形態を取り入れていったならば、そのことが本当に大きなゴール、労働時間の短縮に向けて進んでいるのか否かの政策評価が一点、そしてもう一点、やはり労災問題があわせてこうした不幸な死を生まないように一つでも改善していかなきゃいけないと思いますが、この点について坂口大臣の御認識を伺います。
○坂口国務大臣 労災につきましては、今までのいわゆる短期の過剰労働というものが中心でありましたのを、短期ではなくて中期と申しますか、何カ月間かにわたりまして過剰労働が続く、そうしたものにつきましても過労死として認めるという方向にしなければならない。
実はこれは、私、前回に労働大臣をさせていただきましたときの宿題になっておりまして、そのときに言い残したことをずうっとそのまま旧労働省の中で検討を進めてきてくれておりまして、そして一昨年の十二月に、この過労死の問題、基準改正をさせていただきまして、中期的な労働に対しましても過労死として認めるということにさせていただいたところでございます。裁判中の皆さん方、その中でも幾人かこれに当てはまる方は裁判を取り下げさせていただいて、そして過労死を認めさせていただいた、こういう経緯があるわけでございます。
これからも、こうした物の考え方、やはり論理的にも整理をしながら進めていかなければならないというふうに思っておりますが、過労死の問題は、超過勤務になったときにどうするかの話でありまして、問題は、そういう超過勤務が続かないようにするためにどうしたらいいかということが一番大事なことでございますから、これからも一生懸命やりたいと思っております。
○阿部委員 今の大臣の御答弁を受けて、原局の松崎局長には、これから裁量労働がまた広がっていくような今回の法改正ですが、過労死防止に向けての歯どめ策は何か具体的にお考えであるのか、この点についてお願いいたします。
○松崎政府参考人 先生は過労死の問題を出され、また、今大臣からも過労死の認定基準というものを、もっと現状に合った格好で、過去にさかのぼって見ることによってこの認定を進めていくということでやっております。しかしながら、ここでとどまったのでは、いわば、死ぬまで働け、死んだら後は面倒を見てやるというふうになってしまいまして、これでは私ども、行政ではございません。
したがいまして、十四年の二月、昨年二月でございますけれども、過重労働による健康障害防止のための総合対策というものを策定しております。これは中身としましては、時間外労働の削減でありますとか、年休取得の促進でございますとか、特に健康管理の徹底といったものを掲げまして、そういった事項について具体的に事業者といいますか企業が講ずべき措置というものを決めまして、そこで指導をし、進めてもらっているところでございます。
この過重労働による健康障害防止対策でございますけれども、これは通常の労働者はもちろん対象でございますけれども、時間管理をみずから行うといいますか、裁量労働制の対象になっております企画型裁量制、専門型裁量制の方ももちろん対象になります。
したがいまして、そういった方についてもこういったことをきちんと進めるようにしなければならないということをさらに徹底することによりまして、従来にも増してこの健康障害防止対策というものは強力に進めていきたいというふうに考えています。
○阿部委員 私は、今のような対策はもちろん重要ですし、しかしながら、それが実相を把握していないと有効な対策にならないと思うのです。
そこで、今松崎局長の御答弁に、年休取得の促進という答弁がありましたね。でも、では有期雇用の人はどれだけ有給休暇をとっているのか、実態は調べる必要がありませんと。それでは、年休取得の促進というのは何を意味しているのか。自家撞着ですね。法律とか行政というのは美しくうたわれていればいいわけじゃなくて、実際を知って、生きている人間を本当に生かしていくためのものだと思いますが、今の局長の言った年休取得の促進ということと、有給休暇の実態調査がない、有期雇用でもいいです、裁量労働の方々の有給休暇でもいいです、そのことについての矛盾はお感じになりませんか。これで終わりますので最後に。
○松崎政府参考人 矛盾といいますか、全体についての統計はあるわけでございますけれども、なかなかそれのためだけの統計調査というのは行っておらないということでございます。
また、そういうことでございますけれども、今申し上げました、ちょっとお答えになっていないかもしれませんけれども、過重労働の健康障害防止対策、確かにこれは、健康障害を防止するためにいい、ためになるものをいろいろ挙げておりますけれども、我々の職場の実態を考えてみましても、確かに年休の取得というのはなかなか難しいなと。確かに、特に夏休みについて、計画取得ということで、一カ月以上前にカレンダーを配りまして強制的にやらせていますけれども、これでも難しいというので、これは書いても、特に労使協定による計画年休、こういったものが一つの意義ある格好になるかもしれませんけれども、こういうのを使わなくて、個人個人が今こういう状況の中で、私は来週休みますと言うのはなかなか難しいなというような感じがしております。
したがいまして、これは全部やってはおりますけれども、やはり時間外それから健康管理の徹底、そういったところを現在は私個人としては地方に対しても、重点といいますか、指示を与えてやっておるという状況でございます。
○阿部委員 時間が来ましたので、次回、引き続いてお願いします。
○中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後五時十分散会