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[資料番号] 00147
[題  名] 労働基準法改正国会審議-衆議院厚生労働委員会 会議録第19号(H15.5.30)
[区  分] 労働基準

[内  容]

衆議院厚生労働委員会 第19号 
平成15年5月30日(金曜日)

 

 

 

中山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案及びこれに対する鍵田節哉君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省民事局長房村精一君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、労働基準局長松崎朗君及び雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――

 

中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城島正光君。
城島委員 おはようございます。きょうも労働基準法の、私の方からは特に解雇ルールに関する質問を続けて、先週に引き続きという意味ですけれども、させていただきたいと思います。
 まずは解雇権濫用法理という部分から質問をさせていただきたいと思います。
 この間、我々、前回も申し上げましたけれども、民主党全体としてでありますけれども、判例、学説等含めて専門家の皆さんあるいは、当然でありますけれども、厚生労働省あるいは法務省といったような、それぞれの皆さんから話を承ってまいりました。そういう中で、いわゆる解雇権濫用法理というものは何かということについて、我々の理解は今から申し上げるような理解に至っているということでございます。
 すなわち、どういうことかといいますと、我が国では民法六百二十七条の第一項を根拠に使用者に解雇の自由があると解するのが通例でありますけれども、特別法であるこの労働基準法は、これを修正していこうということであると思います。ただし、解雇権の行使に当たっての対応、例えば使用者は少なくとも三十日前に予告をしなければならないといったようなことでありますけれども、こうしたことについて言及をしているわけでありますが、解雇の自由、その行使そのものについての規制をする明文的な条文はないということであります。
 そこで、これまで判例は法解釈によって解雇権の行使そのものに制限を加えてきたということだと思います。すなわち、解雇は自由にできるというものではなくて、おのずから限定がある。では、どのような場合にこの解雇権の行使ができるのかという、その行使ができる要件を明確にしたのが解雇権濫用法理であるというふうにとらえているわけであります。
 特に、有名な昭和五十年の日本食塩製造事件最高裁判決で、客観的に不合理な理由があれば権利濫用とせずに、客観的に合理的な理由がなければ権利濫用としたことによって、労働者だけに客観的に不合理な理由の主張立証というものを求めるのではなくて、使用者に客観的に合理的な理由の主張立証を促す判例法理上の根拠がここでできたのではないかというふうにとらえております。
 現行の解雇権濫用法理におけるいわゆる証明責任というものは、民法一条三項の権利濫用の禁止という形式的解釈からしますと、権利の濫用を主張する側が立証しなければならず、そういう面で労働者側が負っているというふうに我々も理解をしております。
 しかし、実質的なという表現が審議会の中でも使われておりますが、実質的な証明責任については使用者が負わざるを得ない。なぜならば、客観的に合理的な理由の存否については会社側が主張立証しないと裁判所は判断できないからであるということだと思います。
 そこで、最高裁は、民法一条三項の権利濫用の禁止という一般的な規定を用いて民事訴訟法の釈明権を行使する方法を編み出し、この規定に基づいて、裁判官は、訴訟当事者、すなわち使用者と労働者双方でありますが、訴訟当事者に主張立証を促している。ただし、釈明権を行使するか否かはあくまでも裁判官の職権であり判断であるということではないかと思っております。この結果として、形式的な証明責任と実質的な証明責任というのは、そういう面では分離をするということになるんだろうと思います。
 すなわち、使用者側が、客観的に合理的な理由、社会通念上相当な理由について主張立証に成功しなければ、使用者側が敗訴する、これこそが解雇権濫用法理だというふうに理解をしているわけであります。同時に、解雇権濫用法理というのは、したがって、実質的な証明責任は使用者側にあって、この実質的証明責任を使用者が負っていることを明らかにしなければ解雇権濫用法理を条文化したことにならないというのが、実は我々の理解であるところであります。
 繰り返しますけれども、前回も御紹介しましたけれども、最高裁が、説明として解雇権の濫用という形をとっておりますが、解雇には正当な事由が必要であるという説を裏返したようなものであり、実際の運用上は正当事由必要説と大差はないと見られるというふうに、最高裁判所の判例解説民事編の、昭和五十年度、百七十五ページにこういうふうに語っていられるわけでありますが、この実質的な証明責任を使用者側に負わせているということであるがゆえにこういう表現になっているんだろうというふうに思っております。
 という理解の中で、従前、最高裁が形成した解雇ルールというのは、前回も申し上げましたけれども、大きく分けて二種類あるんだろうというふうにこれもとらえているわけであります。一つは、今我々の理解を申し上げましたけれども、この解雇権濫用法理であり、もう一つが就業規則の解雇条項による解雇規制であるということだと思います。
 御承知のとおり、日本は解雇についての法整備がおくれているわけでありまして、解雇に関するルールというものは判例で確立をされてきたわけでありますが、裁判実務においては、まず、仮に解雇自由、仮にですけれども、解雇自由という立場をとるにしても、これを制約する原理として権利の濫用、これが一つ。もう一つが、使用者には労働協約、就業規則による解雇権の制限というのがあるんだろうというふうに思います。
 つまり、まず就業規則所定の解雇事由に該当する具体的な事実が存在することを証明しなければ、まずこの段階で使用者側は敗訴するということだと思います。これは解雇ルールのいわゆる基本中の基本であるというふうにとらえております。すなわち、就業規則に掲げる解雇事由を、前回も申し上げましたけれども、原則として、限定列挙というふうに解することによって、使用者に解雇の理由とその正当性などの証明責任を負わせている、これがいわゆる解雇に関する入り口規制というふうに私はとらえているわけであります。
 しかし、前々回の厚生労働省の答弁でわかったことがあるわけであります。すなわち、政府は、第十八条の二を掲げた結果、就業規則についても、もはや判例としても学説としても極めてまれな例示列挙説に依拠せざるを得なくなって、現行の裁判実務において確立しております、就業規則の中の解雇条項による解雇規制を無視する結果にならざるを得なくなったんではないかというふうに思います。しかも、政府の考える解雇のルールというのは、前々回の厚生労働省の答弁によれば、解雇権濫用法理のみであるということではないかと思います。
 こういうことがなぜ起こったかということを考えてみますと、法案作成過程において、就業規則と解雇条項案との関係について、これも前回指摘をさせていただきましたけれども、全く論議をしなかったからではないかというふうに思います。
 法務省の法案作成は、法律上想定されるあらゆる論点を抽出し、少なくともこの論点を一つ一つ、最低二巡程度検討した上で法案要綱作成に至っている、これは前回のこの委員会で、そのとおりというふうに法務省は述べているわけでありまして、この点からも、今回の労基法改正案の作成に当たっては、作成の過程において、私どもは致命的な欠陥があるというふうに思っているわけであります。
 こうした法案作成の結果、十八条の二のこの項目ができることによって、就業規則所定の解雇事由によって解雇権が制約をされるということとしてきたこれまでの判例が覆され、裁判実務が決定的に変更されるおそれが明らかとなったということだと思います。
 坂口大臣はこういうふうにおっしゃいました。積み重ねの中で、今までの裁判とは全く違う結果になるというようなことが、もし仮に、あなたのおっしゃるように、本当に含まれているのなら検討を要するというふうに思うんですが、もう少し検証しないとちょっと理解できにくい、少し検証させていただきますと御答弁をいただきました。
 坂口大臣に御質問させていただきますが、我々は修正案を前回の委員会で提出をさせていただきました。この修正案を提出して、就業規則で定める解雇の事由に該当する事実がなければ、労働者を解雇することができないものとすることをその修正案の中の一項目として掲げているわけであります。
 今まで述べさせていただいたように、これまでの裁判で確立されてきたものを、それこそ足しも引きもしないという厚労省の表現どおりでありますけれども、率直に表現するというか、法文化するとすれば、この我々が出した修正案どおりになるんではないかというふうに思うわけでありますけれども、この前回提出をさせていただいた我々の修正案につきまして、大臣の御検討の結果も含めて、大臣の御見解を承りたいというふうに思います。
坂口国務大臣 私は城島議員ほど、この法律的な問題、詳しくありませんから、なかなか太刀打ちできないわけでございますが、民主党から先般出していただきましたものを拝見をしておりまして、目指しております方向性は私は一緒だと思っております。ただし、表現の仕方に少し違いがあるというふうに思います。この表現の違いが大きな結果を引き起こすのか、それとも、多少の違いはあるけれども方向性は変わらないということに間違いがないのか、そこのところだというふうに思っているわけでございます。
 私の認識といたしましては、表現の仕方に違いはありましたけれども、目指しております方向性は同じだというふうに今のところ理解をしているところでございます。その辺のところで、これからどうしていくかということを議論をしていただくんだろうというふうに思っております。
 それから、具体的な問題をいろいろ先ほどからお話しをいただきましたが、すべて私わかっているわけではございません。しかし、一番最初に実質的な説明とそれから形式的な説明のお話がございましたけれども、裁判を起こすということになれば、それは最初裁判を起こしました方が、なぜ起こしたかということの理由説明というのは、それは当然しなければならないんだろうというふうに思っております。しかし、労働者とそして雇用側とではその持っております情報量というのに大きな差があるわけでありますから、裁判の中で実質的にこうだという説明をしなければならないのは、やはりそれは企業側がやはりより多く説明をしなければならないだろうというふうに思っている次第でございまして、だから、そこの前半のおっしゃったところは私もそのとおりではないかというふうに聞いたところでございます。
城島委員 目指すべき、目指しているというんでしょうか、その方向に違いはない、しかも、結果として、若干の表現の違いはあるけれどもというふうに大臣おっしゃいましたけれども、その表現の違いが、結果においても大きな違いがないというか、ほとんど同じだという方向になっていくだろうというようなことなんだろうというふうに思いますが、少なくともその辺の検証は、本当に方向性の違いがないというところに表現の違いがあってもいくのかどうかということについて、きょうももう少し検証させていただきたいというふうに思います。
 それで、政府の答弁の中で、今も申し上げましたけれども、いわゆる包括的な話ですけれども、実質的な証明責任は使用者と述べていた審議会における厚生労働省と公益委員の説明と異なるということも、我々としては、前回の政府答弁で明らかになったんじゃないか、そこが一つ大きな、もう一つ前回の中で、私との論議の中で埋め切れていないところだというふうに思うわけであります。
 すなわち、公益委員の説明に対して、この前、政府答弁、特に局長の答弁は、「どういう証拠等の提出によって果たすかということが主張立証活動ですから、これを実質的な主張立証責任というのであれば、そういう意味で使ったということで、この両先生の認識は正しい」と表現をされました。いわゆる、公益委員のお二人の審議会での発言、これを紹介をいたしまして、これに対して厚生労働省は正しいと認識しているのかという質問をしたわけでありますが、それに対して、今申し上げたような答弁を松崎局長はされたわけであります。
 ここで主張立証活動という表現をとられました。主張立証活動というのと主張立証責任、これの意味がこの文脈の中でどう異なるのか、正直言ってわからないわけであります。
 そこで、証明責任というものは、それこそ専門的な物の本によりますと、こう書いてありますね。これは参考資料の四ページ目だと思います。参考資料の四ページに、横線を引っ張らさせていただきました。ここには、証明責任とは、「事実の存否が不明な場合がある。その場合、裁判所は立証責任のある当事者に不利益な結論を下すことになる。例えば、請求原因事実の存否が不明な場合は、原告の敗訴となる。」
 八ページをおあけいただきたいと思います。八ページの最初のところにありますね、「しかし、」の次ですけれども、「争いのある法律効果の発生に必要な要件事実の存否が、当事者の立証によっても最終的に確定されない場合には、裁判所はこれを放置しておくことができず、また、結論としての裁判をしないわけにもゆかない。そこで、この事実の存否が確定されない場合に、裁判所が、不利益な法律判断をすることになる当事者の不利益負担の問題が生ずるのであって、これが、立証責任の問題である。」というのが、これは「証明責任の研究」という本の中の文章であります。
 それから、十ページをおあけいただきます。十ページにも、「証明責任とは、」ということで、こういう表現になっております。「証明責任とは、裁判の基礎となる法条の要件事実の存否が、口頭弁論の終結時に至っても確定されない場合に作用するように、あらかじめ法条に定められている当事者の不利益負担をいう。」、こういうふうに証明責任というのを引っ張り出しまして、大体わかりやすい表現はこの辺にあるんじゃないかと思って出したんですけれども。
 そこで、質問をさせていただきますが、主張立証活動というのは、どうも裁判官が訴訟当事者に主張立証を促す行為ではないか、主張立証責任とは、裁判の過程において証明されるべき事項について、裁判官の心証形成が、前回私はこういう表現を使わせていただきましたけれども、グレーと言いましたけれども、その裁判官の心証形成がグレーの場合、敗訴の危険性の負担を負うことというふうに我々は実は認識をしているわけでありますが、厚生労働省が使う主張立証活動、前回松崎局長がおっしゃいましたが、これは一体具体的に何を指すんでしょうか。
松崎政府参考人 今委員御説明のように、主張立証責任については、法律上もいろいろ割とはっきりしておりますけれども、確かに、主張立証活動という言葉は、余り耳なれないといいますか、余り熟した言葉ではないかもしれませんが、私どもの理解としましては、前回、御説明が不十分だったかもしれませんけれども、例えば解雇権の濫用という問題に当たりましては、解雇権の濫用という、そういった評価を得るための評価の根拠となる具体的な事実、または、使用者の側からいえば、そうじゃない、例えば解雇権の濫用という評価を妨げる具体的な事実、そういったものについて、主張立証責任があるということを前提にしまして、今言いました具体的な事実について主張立証するという意味で使っておるわけでございまして、したがいまして、今御質問を聞いておりますと、先生がおっしゃった、その場面場面における、今ので言いますと、使用者について言えば、解雇権の濫用という評価を妨げる具体的な事実についての実質的な証明責任ということと同じでございます。
城島委員 ということは、基本的には、前回お使いになった言葉は、いわゆる主張立証責任とほぼ同じ意味合いだということですね、それは、今おっしゃったことは。
松崎政府参考人 法律全体の、民訴法レベルの話になるとまたいろいろあるかもしれませんけれども、先生がおっしゃった、その場面の具体的な事実の証明についての責任、実質的な証明責任ということでは一緒だと思います。
城島委員 そうすると、そういう意味でお使いになったとして、裁判官がほとんど同義語だという認識をして、主張立証活動を促して、裁判官の心証がいわゆるグレーだったときにどうなるかということを私は前回お伺いしたわけでありますが、これは言うまでもなく、「裁判の基礎となる法条の要件事実の存否が、口頭弁論の終結時に至っても確定されない場合」、この上の方に、先ほど十ページに挙げておきました証明責任のところの表現を使わせていただきましたけれども、このことに実は当たるわけでありまして、そういう意味で私は使ったわけでありますが、この問いに対して政府は、使用者側が勝つというふうに答弁を繰り返されたわけであります。
 これは、今申し上げた前提で私はグレーという表現を使ったわけでありますけども、そうした観点からいうと、それでもなおかつ使用者が勝つということになりますと、我々の理解からすると、これは、先ほどずっと説明を申し上げましたこの解雇権濫用法理の運用からするとやはり全く逆ではないかというふうに思うわけでありまして、権利の濫用というものと解雇権濫用法理というものをこれは取り違えられているんじゃないかというふうに理解をせざるを得ないわけであります。
 それで、もう一度、先ほどの、前回ちょっと確認をさせていただいた公益委員の発言に戻れば、主張立証活動というものと主張立証責任というものは、言葉としてですけれども、やはり基本的には違うんではないかと思います。先ほどは同義語的に使ったという、結論的にはそういうことでありますけれども。この表現からすると、主張立証責任というのは、その主張の立証に失敗したら敗訴する危険性を負うという意味での主張立証責任というふうに我々はとらえているわけであります。しかも、この公益委員の審議会における発言もそういう意味での主張立証責任というふうな観点での発言だったと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。
松崎政府参考人 この主張立証責任に関しまして、私どもが理解している解雇権濫用法理についてちょっと御説明させていただきますけれども、これは冒頭、委員に御説明いたしましたように、我が国で解雇権というものについて六百二十七条一項しかないときに、解雇というものについて、やはり非常に労働者にとって重大な事態だということで、これを何とか救おうということで民法の一条三項というものを使いまして、ほかにありませんから、一般的にはこれを使いまして労働者を救済してきたというものが積み重なって、おっしゃった昭和五十年の最高裁判例の中にそこの規範的部分が基礎になったというふうに考えています。
 そうすると、その規範的部分というのは、権利の濫用とは何かということについて、例の、書いてありますように、客観的に合理的な理由がなく、かつ社会的相当性があると認められない場合はというふうに書いたんですけれども、これは、これでもなお、そういうふうに解雇の問題についての権利の濫用というものをそういう意味だというふうに書いたわけですけれども、これは、今申し上げたように、これでも抽象的です。
 したがいまして、私ども言葉として、ないと使っています。したがって、それを立証するのは非常に難しい。物事がないということの証明というのは、これは難しいわけでございます。ですから、刑事裁判でも、犯行現場にいなかったという証明はほとんどできません。逆に、別のところにいたということでやるわけですね。そういうことで、この解雇権の濫用法理に当たりましては、ないということの証明は困難ですから、逆に、そうじゃない、あるということを証明させる、証明する義務のある者にさせるということ。
 それから、大臣も申し上げましたように、非常に、情報とかデータ、そういったものはほとんどすべて使用者が持っている、こういったことから、おっしゃった具体的な主張立証責任といいますか、具体的にどういうふうに割り振るかというときに、実際には使用者側に圧倒的に多くの事実の主張立証責任をその場面場面で負わせているということでございます。
 したがいまして、前回のときに私がお答え申し上げましたのは、そういった前提をなしに、いきなりグレーの場合どうなのかと聞いてしまいましたので、先生の質問の真意といいますか、そういったものを取り違えて、民訴法レベルの話で答えてしまったということでございます。
 今先生から質問があったような、そういった、使用者が具体的に、今の御質問でいいますと、権利の濫用には当たらないということの主張立証責任を負う場合、負うといいますか、労働者が権利の濫用だと言います、そのときは、今申し上げました、理由がないことの証明なんかできませんから、私は普通に働いていたということを言えば、まずそこからスタートします。そこで、使用者がそうじゃないということを証明せないかぬということで、そこで先生の言われる使用者の具体的な挙証立証責任というものが生まれるわけで、それがグレーの場合には、使用者はそれを証明できないわけですから、労働者が主張した権利の濫用があるということを覆せないということになりますから、そういった場面においては使用者が敗訴するということになります。
城島委員 わかりました。その意味においては変わりないと思いますが、ただ、そのことが、この十八条の二の法文の中でそういうことがきちっと言い切れるのかどうかというところでありますけれども、これもまだ、前回からちょっと平行線のところがあるんです。
 すなわち、最終的な、今おっしゃったようなところをきちっと補強するという意味でだと思いますけれども、審議会の中でもそうですけれども、本会議の答弁でも、そこは立法者意思でと、ある面で立法者意思でそこを、わかりやすく言うと補強していくというような説明がされているわけであります。
 そこで、大臣は、そういうことも含めて、法案の作成過程でどのような議論が行われたか行われなかったかということは、私ももう一度見直しますけれども、その行われた行われなかったということよりも、先ほど申しましたように、今までの解雇ルールというものをプラスもマイナスもしない、そのままずっとそれは継続するようにするという大前提の上での法律でありますから、それと本当に違っているというようなことがあれば、そこは私たちも十分に検討しなければならないというふうに思いますというふうに答弁をされているわけであります。
 大臣に、その立法者意思を聞く前に、この点について質問させていただきますけれども、この解雇権濫用法理のポイントは、今も大体この前の局長答弁の真意が私にも少しわかりましたけれども、いわゆる解雇権濫用法理のポイントは、労働者の解雇について客観的に合理的な理由があることについて実質的に使用者に主張立証を求め、弁論終結の時点で裁判官が客観的に合理的な理由がある、社会的相当性があるという心証を形成できなければ使用者が敗訴することであるわけでありますが、十八条の二は形式的にも実質的にも労働者に主張立証を求める条文になっているんじゃないかという我々の懸念があるわけであります。
 そうした観点からしても、先ほど御説明いただきましたけれども、我々の修正案の方がよりはっきりと、これは条文上も、使用者側に証明責任を求める条文になっているということも含めて、いいのではないかというふうに思っておりますが、この辺についてはいかがでしょうか。
松崎政府参考人 先生おっしゃるように、解雇権濫用法理のもとで解雇に関します裁判実務というのは、そういった取り扱いがなされておるわけでございます。
 これは、先ほど申し上げましたように、最高裁判例、五十年の判例のいわば規範的部分といいますか、客観的に云々というところでございますけれども、こういったものをきちんと運用する、では何をもってそういった要件を認定していくのかということが裁判実務に必要になるわけでございますけれども、どういった事実でもって認定していくのかということになりますと、先ほど申し上げましたように、ないことの証明というのは難しいわけですから、逆に、あるということの証明、あることの証明があれば、では、ないということではないというふうに判断する。
 また、繰り返しになりますけれども、労働者の側の方がほとんど資料を持っていないという状況から、最高裁判例で確立しております要件、こういったものをきちんと適用していくというためには、必然的に、委員もおっしゃいましたように、具体的な事実についてより多くの立証責任というものを使用者に負わせている、要するに具体的に使用者に実質的な主張立証責任を負わせているという結果になっているわけでございます。
 したがいまして、この十八条の二についても、文章は「解雇することができる。」という文章はついておりますけれども、私どものつもりといたしましては、今の例に挙げました五十年の最高裁判例のその部分、これをできるだけ忠実に書いたということでございますので、こういった規定が新設されましても、それを運用するためには、今申し上げましたように、当然、ないことの証明は難しいという事実は変わりません、一緒でございますので、現行の制度のもとにおける事態と全く変わらないわけでございますから、使用者に実質的な主張立証責任を負わせるということについては変わりはないというふうに考えております。
城島委員 先ほど指摘したように、そのことをさらにきちっとある面で補うものとして、補強するものとして、審議会の中でも、そして本会議の質問の中でも、立法者意思ということで補強するんだという趣旨で立法者意思ということが使われているわけでありますけれども、特にこの改正案第十八条の二について、立法者意思により、今の裁判の取り扱いを変えるものでないことを明確にするというふうに説明をされているわけでありますが、何を立法者意思として争うというふうに考えられているんですか。
松崎政府参考人 まず、立法者意思といいますか、私ども、提案者でございますので、立案者意思ということになろうかと思いますけれども、私ども厚生労働省としましては、今回新設します十八条の二という規定、これは、今申し上げましたように、解雇権濫用法理、これをはっきりその要件というものを明示いたしました五十年の最高裁判決、そういったものを明文化する、確認的に明文化するということが第一点でございます。
 そういったことから、先ほどの繰り返しになりますけれども、この解雇権濫用法理から、解釈上といいますか、先ほど申し上げた要件に当たるかどうかということを具体的な事実について判断しようとする場合には、使用者の側により多くの具体的な事実の証明というものを求めないとそれは明らかにならないということは、解釈論上といいますか、必然的に出てくるわけでございますので、裁判実務の具体的な分配といいますか、今申し上げた具体的な事実についての使用者の主張立証責任といったもの、そういったものは全く変わっておらないということになるわけでございますので、今申し上げた最高裁判例、そこの要件というところをきちんと書くことによって当然それは担保されていくといいますか、それをきちんと運用するためには当然そういった扱いになるというふうに考えております。
城島委員 これも前回ちょっと御指摘をさせていただきましたけれども、行政法の場合ですと、行政に対する国会の優位性というのがありますので、それを背景に、立法者意思というんでしょうか、立案者意思というふうにもおっしゃいましたけれども、その意思で行政を拘束するということは可能なんでありますけれども、刑事、民事の法律の場合、全くこれと異なりまして、刑事、民事の法律の運用をつかさどる裁判官は、当然でありますが、憲法七十六条によって憲法と法律のみに拘束されるということであります。
 したがって、裁判官は立法者意思に拘束されず、立法者意思は条文解釈をする際の判断材料の一つにすぎないというふうに考えられるのではないかという私の質問に対し、法務大臣は、「憲法第七十六条第三項によれば、裁判官は憲法及び法律にのみ拘束されるものであるとされておりますが、裁判官が法律の条文を解釈するに当たり、立法者意思はその重要な参考資料になる」と答弁されたわけであります。すなわち、やはり基本的にはあくまでも参考資料であり、縛られるということではないということの答弁があったわけであります。
 また、国会での質疑やあるいは国会決議等の立法者意思で条文を補充しなければならないような前例はあるかという質問をさせていただきましたところ、こういう答えでありました。「一般的に申し上げれば、法律は多かれ少なかれ解釈の余地があるものでございますが、裁判で特定の規定の解釈について争いが生じた場合において、裁判所が法制定時の立法者意思を考慮してその解釈をした例は少なくないものと承知して」いると答えられました。つまり、通常は補充などしないが、争いが生じた特別な場合においては考慮することがある、こういう回答でありました。必ず考慮するとは限らないというふうに私どもは読めるわけでありますが。
 そこで、もう一度厚生労働省にお尋ねします。我々は、条文上、実質的な証明責任を使用者に負わせておくことが解雇権濫用法理を、何度も繰り返しますが、足しも引きもしないことだ、そういう条文であるというふうに考えるわけであります。したがって、立法者意思というものである程度補強せざるを得ないということについて非常に危惧の念を持つわけでありますが、この点、もう一度、どういうふうにとらえているのか確認をさせていただきたいと思います。
松崎政府参考人 まず、今回の第十八条の二の新設でございますけれども、この条文については、先ほど申し上げましたように、現在まで三十年にわたりまして定着してきております解雇権濫用法理のリーディングケースでございます五十年の判例の規範的な要件、それをそのまま忠実に規定しようとしてこういう条文になっているわけでございます。
 したがいまして、その条文を運用しようという場合、先ほど申し上げましたように、いろいろな現状がございます。そういったことから、今申し上げました、客観的に合理的な理由がなく社会的に相当であると認められない場合、そういったものを具体的な事案に当てはめようとする場合には、今申し上げましたように、具体的な資料を持っておる、あるということでしか証明できないという点、また、具体的な資料、情報というものを使用者が持っているという点から、こういった事態は変わりませんから、当然使用者がより多くの責任を負っているという取り扱いがなされておるわけでございまして、その状況は変わらないということで、この五十年の判例の条項といいますか判例での規定、そういったものを忠実に記することによって、これはその運用に当たってはこれしか道はないというふうにいくということで、まず当然だというふうに考えておるわけでございます。
 立法意思ということにつきましては、こういった意味で私どもは、立案、立案者意思といいますか、提案させていただいたわけでございますけれども、今おっしゃるような疑問というのがあり得るということであれば、まさに立法機関でございます国会の中における議論、そういった中で、そうではないということを明らかにしていくことも一つの補強ということになるのじゃないかというふうに思っております。
城島委員 時間が来てしまいましたので、最後に、やはりそういう懸念があるわけなので、この十八条の二のいわゆる本文というんでしょうか、「使用者は、」「解雇することができる。」という本文になっていますね。これは、そういった観点からもそうですし、さらには民法の六百二十七条ということからきているわけでありますけれども、労働基準法は、再三にわたって大臣が、労働基準法というのは何かということをここでも答弁されております。民法そのものの規定を確認的に入れたという答弁をされていますが、民法そのものの場合は、御承知のように、いわゆる平等の市民としての契約関係の中に成り立っているわけであります。
 この労働基準法九条の定義を見ても、これは使用者と労働者の位置関係というものが圧倒的に従属関係にあるということを前提とした法律であるわけであります。そこに、基本的な性格の違う民法の六百二十七条を、確認的とはいえ、どんと載っけてくるということは、先ほどから我々が懸念している問題をますます増長させる文章にならざるを得ないというふうに思うわけであります。
 この本文、使用者はこの法律または他の法律によって規制されている場合を除いて解雇することができるという、この本文だけは極めて異様な、あるいは文脈のつくり方からしてもこの基準法のつくり方とは全く異質である。いろいろな点からいってもこれは全く論外であると言わざるを得ないというふうに思うわけでありますが、その点についての御見解をぜひ承って、終わりにしたいと思います。
松崎政府参考人 確かに御指摘のように、基準法の体系の中では、そこだけ取り出すと、使用者が何々することができるという条文は異質かもしれません。ただ、私どもの立案者の意思としては、大事なのはただし書き、後段でありまして、後段を出すために、基準法の中に、解雇ルールというもの、全体を記した方がよりわかりやすいだろうというところで、もちろん現在新しく付与するわけではありません、解雇権があるということを確認的に規定し、ただし、大事なところをすぐ続けて後ろに書いたということで、他意はないわけでございますけれども、そういった誤解があるということであれば、そこのところはまたいろいろ法施行後におきまして、PR、指導、そういったものにおいて対応していきたいというふうに考えています。
城島委員 ここも極めて重要なところであります。こういう条文が載るとすれば基準法全体に対して異様な文脈になる、文章になる。ここにおいても性格的にも全く違った形になりかねない、極めて重要な危険性をはらんでいるという指摘をさせていただき、法務省の民事局長には、お越しいただいたにもかかわらず質問せずに大変失礼したことをおわび申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 

中山委員長 次に、五島正規君。
五島委員 今の城島議員と基準局長とのやりとりと非常に関連する問題でございますが、今回は修正案の提出者である城島さんにも答弁席にお座りいただいて、政府と修正案、両者に対して質問していきたいと思います。今もこの場において議論になりました解雇ルールの問題について、まずもう一度、内容的には繰り返しになりますが、整理をして質問したいと思います。
 今回の改定案では、最近、厚生労働省は、いわゆる権利濫用法理に基づき労働者の解雇には規制がかかる、これが変わらないから足しも引きもしないという主張をしておられるように思われます。しかし、政府自身が、この問題につきましては、例えばさまざまな場で、とりわけ労働政策審議会の労働条件分科会という、この法案を審議してこられた最も重要な審議会の場において、現在の裁判の実務において、解雇濫用に係る立証責任は、解雇権濫用であると労働者が主張するならば、それに対して使用者が解雇権濫用にならないことを立証する必要があることとされている、この点は、通常の権利にかかわる立証責任が権利濫用を主張する側が負うという原則と異なった取り扱いがなされている、このように審議会の中でもおっしゃっている。足しも引きもしないというのであれば、この裁判実務がこの法律の中においてどう生かされているのかという御答弁が必要でございます。
 この点につきましては、先週の金曜日、城島議員の質問、最終的に裁判の中において両者の主張があり、そしてその立証がグレーに終わった場合、裁判官としては使用側と労働側とどちらの立場に立って判断することになるのか、従来の厚生労働省も、審議会でおっしゃったような立場に立てば、これは解雇はだめという原則に立ってまいりました。これに対して基準局長は、その場合は使用者に有利に、雇用主に有利に判断することになるとお答えになりました。
 まさに、足しも引きもしないというのは、厚労省が言っているように、いわゆる権利濫用法理という文言の中で、そうした概念の中で、裁判実務の中においてそれが修正されてきている、それが最高裁判例で定着している、その実態を踏まえたものでなければ、この文言は権利濫用法理に基づいているから足しも引きもしないなどということにはならないというふうに私は考えます。
 この点について、どのようにお考えなのか。大臣も先ほどのお話の中で法律の専門家でないとおっしゃいました、私も法律の専門家ではありません。しかし、この間のやりとりの中で、今回出される法案というものは、先ほど大臣がおっしゃったように、同じ方向に向いているのではなくて、権利濫用法理という文言一つにしがみついて、その中身を正反対の方向に向けるものではないかというふうに思うわけですが、その点について大臣はどうお考えになるのか。引き続き、この点について、できるだけ簡潔に、修正案の提出者はどうお考えになるのか、お伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 先ほど城島議員も、民法の中に書かれていることをこちらに持ってきても、それは異質なものではないかというようなお話があったように思います。
 私は、いつかも御答弁を申し上げましたように、同じ文言であったとしても、労働基準法という法律の中に位置づけるということに大きな意味がある。それは、労働基準法のおっしゃる目的というものはもう明確になっているわけでありますから、その中に置かれるということに非常に大きな意味があるというふうに感じている一人でございます。
 したがいまして、今具体的なお話がございましたが、これも先ほど城島議員にお答えを申し上げましたとおりでございまして、裁判が起こりましたら、それに対して、起こした側が、こういう理由で起こしたということは、それは御説明にならないといけないだろうというふうに思います。しかし、その後、いや、そうではないんだという反論と申しますか意見というのは、それは起こした側ではなくして起こされた側の方が情報を多く持っているわけでありますから、その証明責任というのは当然使用者側にあるというふうに思います。
 では、そこで、いろいろと証明をされる、それでその結果がグレーになる、そのときにどうなるかということでございますが、グレーもいろいろでございましょうから、右から左、端までありますから、それはなかなかグレーなときにどうかというのは言いがたいですけれども、概略的に束ねて言うならば、そこで実証が十分できないということになれば、それは使用者側の敗訴ということになるのではないか、私は素人でございますけれどもそう考えております。
城島委員 答弁させていただきます。
 政府は、今回の改正におきまして、御指摘のように、現行の解雇権濫用法理を足しも引きもせず条文にする、こういうふうにしながら、内容は、今まで積み重ねてきました解雇権濫用法理の運用を根底から覆すものになっているというふうにとらえております。
 現在の裁判実務では、労働者の解雇について、客観的に合理的な理由があることについて実質的に使用者に主張立証を求め、弁論終結の時点で、裁判官が客観的に合理的な理由がある、社会的相当性があるという心証を形成できなければ、使用者が敗訴する、これこそが解雇権濫用法理の運用の現実であるというふうに思っております。
 この点、委員もお触れになりました労働政策審議会の分科会において、厚生労働省は、現在の裁判実務においては、解雇権濫用に係る立証責任は、解雇権濫用であることを労働者が主張すれば、それに対し、使用者が解雇権濫用に当たらないことを立証する必要があることとされている、この点は、通常の権利の濫用に係る立証責任が権利濫用を主張する側が負うという原則と異なった取り扱いがなされていると説明しているわけであります。
 この説明と、当委員会における基準局長の答弁の違いには、私も先ほど申し上げましたように、ただ唖然とするばかりであったということをつけ加えさせていただきます。
五島委員 ありがとうございます。
 大臣は先ほどもおっしゃっていましたが、今の労働基準法の理念といいますか目的は、解雇の問題についてはそうあるべきだとおっしゃっている内容と、修正案との間には極めて大きな共通性があると私は考えます。ところが、大臣のおっしゃっている内容とお出しになっている法案との間に余りにも乖離が大きいというところが問題なんだろうというふうに思います。
 次に、これは修正案の提出者に対してお伺いします。
 民主党の出しました修正案、これは、いわゆる民法に基づく権利の濫用法理というものではなくて、そうではなく、解雇に対する正当事由の必要、正当事由説に立脚するものであり、これまでの判例からいうと根本的に逸脱するんだというふうな声が、労働者のサイドからも私の耳にも入ってまいります。これはまたどういうことなのか、この点についてどういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
城島委員 お答えさせていただきます。
 先ほども申し上げましたけれども、民主党案は、現行の解雇権濫用法理の実際の運用をそれこそ足しもせず引きもせず条文化したものであるというふうに思っております。すなわち、労働者の解雇について、客観的に合理的な理由がある、社会的相当性がある、このことについて使用者側に主張立証を求める内容であるからであります。
 そこで、正当事由説との関係についてでありますけれども、そもそも判例の解雇権濫用法理は、解雇に関する明文の規定がない法制度のもとで、実質的に使用者に解雇の正当事由の立証を求めるという結論を導くために編み出された法理論であるわけであります。したがって、解雇権濫用法理は、説明として解雇権の濫用という形をとっておりますが、正当事由説の裏返しのようなものであり、実際の適用においては正当事由説と大差はないというふうに認識をしているわけであります。
 また、民法六百二十七条との関係でありますが、今回提案しております民主党案の十八条の二は、解雇自由の原則を定める一般規定としての民法六百二十七条に対し、その自由を制限する特別法という関係に立つものであるというふうにとらえております。
五島委員 よくわかりました。
 現状の最高裁判例その他から見ていくならば、解雇濫用法理を適用するのか、正当事由説を適用するのか、そういうふうな内容に分けて議論すべきものではなく、まさに足しも引きもしないという状況の中においてこの改正はなされなければならないということに民主党案は重点を置いているということについて、理解をいたします。この点につきましては、先ほど城島議員と厚労省とのやりとりもございますので、議場の先生方にもよく御理解いただいたと思いますので、続いて、まだ十分に取り上げられておりません就業規則問題について、ちょっと問題提起をさせていただきます。
 就業規則に解雇事由が記載されるということになります。この就業規則に違反した場合は無条件に解雇の理由として成り立つのかどうか。
 二番目に、就業規則は地方労働基準局に報告されますが、この就業規則の内容が、社会的な合理性といいますか常識を欠くような規則が書かれている場合、基準局はその内容をチェックすることができるのかどうか。
 三番目に、就業規則に解雇の事由が記載された場合、その就業規則に記載されている事由、それによらなければ解雇できないよということが当然裏表の関係において成り立つということは、今や学界においても異論のないところだと理解しています。しかるに、先般の厚生労働大臣、本会議の質疑におきまして、使用者の解雇権は就業規則にとらわれないものであるという趣旨の立場でのお話がございました。これでは就業規則において解雇事由を記載させる意味が全くないわけでございます。この点について政府はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。この三点についてお伺いします。
松崎政府参考人 まず第一点目の、就業規則に解雇事由が記されている場合、就業規則違反とおっしゃいましたけれども、就業規則の解雇事由に該当した場合、すぐ解雇になることはないかと、有効かということでございますけれども、就業規則に解雇事由というものが普通は書かれております。それで、何か労働者がやった行為が就業規則の解雇事由の条項に該当した場合というふうに理解してよろしいんであれば、それは、例えば欠勤を月のうち十回以上したら解雇といったような条項があり、確かに事実としてこの欠勤を十回以上したということがあれば、まずは解雇は有効ということでスタートいたします。
 しかしながら、それはスタートいたしますけれども、これは、今度新設されます十八条の二なり、現在でいえば解雇権濫用法理によりまして、その解雇が、具体的な事案について客観的に合理的な理由を欠き、特に後段の方かもしれませんけれども、社会通念上相当であると是認できない場合は、権利の濫用として無効であるということですから、それが軽微なものじゃないかと、それは確かに就業規則に違反している事実は確認できた、確かに該当する、しかしながら、俗に言えば解雇まではやり過ぎじゃないかといったような場合には、今申し上げたように、この権利の濫用法理によりまして無効になる場合が出てくるということだと思います。これは裁判上の話でございます。
 それから二つ目は、具体的に就業規則の届け出でございますけれども、これは、常時十人以上の事業場につきまして就業規則をつくらなければなりませんで、つくってそれを労働基準監督署に届け出なければならないというふうにされております。その場合に、まず届け出られました労働基準監督署におきましては、中身をチェックいたします。それは、労働基準法の中に、就業規則に必ず書かなければならない事項、労働時間関係、賃金関係、それから退職、今度は括弧して解雇に関する事項を含むとしようとしていますけれども、その三点は絶対に書かなければならないと。それからその他、相対的必要記載事項といいまして、退職金制度がある場合には退職金の話といったようなことがございます。そういったことで、まず絶対的必要記載事項が書かれておるか、それから相対的必要記載事項についても、その制度があるんならば書かれているかといったことをチェックいたします。
 それから、御質問のように、例えば解雇事由というところに限定して申し上げますと、その解雇事由の書き方、これが社会的合理性を欠いた場合どうするのかということでございますけれども、正直申し上げて、まず法律違反、労働基準法とかそれから男女雇用機会均等法とか、ですから、例えば結婚したら退職しなければならないといったような明らかに法律違反になるもの、こういったものは非常にわかりやすいので、我々もプロですから、それはチェックして直させます。ただ、法律には違反しておりませんけれども、民法九十条でしたか、いわば公序良俗のような社会的合理性を欠く内容、ちょっと例が悪いかもしれませんけれども、社内恋愛はだめだとか、社内結婚はだめだとか。社内恋愛というのはどこかの会社であったかもしれませんけれども、まあ少ないと思いますけれども、こういったものがあれば指導はできると思います。
 それから、いわゆる就業規則の制限列挙説と例示列挙説の話だと思いますけれども、これは五月六日の本会議におきまして大臣が答弁されました。これは、具体的な就業規則があった場合、そこに書かれております解雇事由が限定したものと解される場合、それが制限的にしか書いていない、要するに、使用者が就業規則をつくるわけですので、みずからの解雇できる場合を制限したというふうに解される場合には、この当該事由に該当しない何か労働者の行為とか事実があっても、それが就業規則に書かれております事由のどれにも該当しないという場合には、解雇は無効となるというふうにお答えしたんだと思われます。なので、就業規則にとらわれない、就業規則は関係ないといったものではないと思っております。それはございません。
 なお、これまでの実例でございますけれども、これは私どもも指導しておりますけれども、やはり今でも、退職に関する事項の中には解雇に関する事項を含むという解釈を行って、指導しております。先ほど申し上げましたように、やはりそういった絶対的必要記載事項というのは明確にする必要がございますので、先ほど申し上げたように、監督署に提出があった場合、欠けている場合、不明確な場合には、こう書けとは言いませんけれども、明確にしなさいという指導をいたします。そういったことから、現実の話といたしましては、かなりきちんと書くということで、結果的にいわゆる制限列挙説といいますか、就業規則に書かれている事項以外では解雇はしないというふうに解される、いわゆる制限列挙的に解される就業規則がほとんどだということでございます。
 ただ、もちろん私ども、どうしても例外というものがあるために、そこを言わざるを得ないわけでございますけれども、全部が全部ではございませんで、余りにも不備な就業規則、例えば、十人未満ではつくる必要もないし、届け出る必要もない、我々のチェックも原則ないわけです。そういったものも、一応就業規則をつくればその事業場の中では通用するということでございますから、そういう中で、不備なものがあって、解雇する場合はこれしかないというふうに読めないというものが全くあり得ないということはないということで、すべてがこの制限列挙で解されるとか、制限列挙せないかぬというまではいかないなというふうに考えて申し上げたわけでございます。
 したがいまして、今回の改正におきましても、現在でも指導はしておりますけれども、法律上解雇に関する事項を含むということがより明確になるわけでございます。したがいまして、労使の間におかれても、この解雇に関する事項というものが全く書かれていないということ、やはりこれはもう明白にわかりますし、もちろん、監督署に来ればわかるわけでございますけれども、労使レベルでももちろんわかりますし、また、そういうことによりまして、就業規則の作成段階で解雇事由というものが整理されるということになりまして、当事者間におきまして解雇についての事前予測性が高まると同時に、結果としてこれ以外には解雇はないんだよということがだんだんわかっていくというふうなものが定着していくんじゃないかというふうに考えています。
五島委員 長い割には、何か言っておられる内容が支離滅裂のようです。
 まず、先ほどおっしゃいましたように、就業規則について当然これは権利濫用という範囲でもって裁判所における争いになった場合、権利濫用法理というものでもって、社会的合理性のないものであればだめだというふうにおっしゃいました。
 そのときに、この権利濫用法理の適用というものが、原案であれば、これはこのまま、従来であれば労働者側に立証責任を負わせているわけですね。しかし、もし、就業規則によって解雇するということであれば、就業規則に基づいて、経営側が、使用者側が違反であった事実というものについて証明する必要がある。その辺が、このどちらかの書きぶりによって矛盾を来すということになると私は思うわけですが、この点について、また長い時間使われても困りますので、ひとつ修正案の提案者からお伺いしたいと思います。
 それからもう一つは、十人未満の事業所であっても就業規則をつくられるところは当然あるわけですが、これは義務化されていません。そういう十人未満のところの取り扱いをどうされるのか。それから、チェックをされるというけれども、就業規則そのものに対して、例えば基準監督署がアドバイスをすることは自由でしょうが、その内容が問題があるからといって、就業規則の変更命令といいますか、変更させていくという権限の行使というのは可能なのかどうか。後の十人未満の問題については後ほど基準局長の方からお答えください。
城島委員 就業規則の問題でありますが、まず、我々は、九十条の二において、「使用者は、就業規則で定める解雇の事由に該当する事実がなければ、労働者を解雇することができない。」というふうに定めたわけであります。したがいまして、五島委員御指摘のとおり、これは当然、この就業規則に合致しているかどうかについての主張立証責任というのは使用者側にあるということはもう明々白々であります。
 さらにつけ加えますと、先ほど政府側に御質問ありましたけれども、我々もここは同じでありまして、だからといって、この就業規則に合致したら無条件に解雇になるかということになりますと、我々のところも、この案においてもそうではありませんで、十八条の二によって、「労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することができない。」というふうにしておりますので、したがって、就業規則に定める解雇の事由に該当したということで無条件に解雇されることには我が党案についてもならないということであります。
 さらに、十人未満の事業所における就業規則問題でありますが、今回新設をする九十条の二は、使用者が就業規則を作成し、その中に退職に関する事項を定めた場合に限り、就業規則による解雇の規制という効果が発生するというものにしたものであります。したがいまして、法律上、就業規則の作成義務を負っていない使用者が就業規則を作成せず、あるいは任意に作成した就業規則に退職に関する事項を定めていない場合は、この九十条の二の適用はありません。
松崎政府参考人 ちょっと、時間をとらずにお答えを簡単に申し上げますけれども、就業規則の問題、これは城島委員と同じでございまして、私どもは、就業規則にきちんと解雇事由が書いてある場合には二重にあると。もちろん初めの、就業規則のどれに該当するかということについては使用者に立証責任がある、それがクリアされても、二つ目のハードルとして権利濫用法理があるということを申し上げたわけで、一緒だと思っております。
 それで、十人未満の扱いでございますけれども、常時十名以上の労働者を使用するというところだけに法律を義務づけしております。したがって、常時そこまでいかない事業場につきましては作成の義務がないわけでございますので、それはどういうふうに事業場の中で適用されるか、効力を持つかということは別にしまして、就業規則をつくらなかったり、つくった就業規則に絶対的必要事項でございます退職に関する事項、解雇事由、そういったものが記載されていなくても労働基準法違反にはならないということになります。
 しかしながら、多い中小企業について、やはり就業規則というもの、これはやはり労使双方にとってきちんとしたルールでございますから、これを作成し定着させるということがまず第一歩だというふうに考えていまして、いわゆるモデル就業規則というものをつくっております。これは、大体業種別に六つぐらい、それから特にさらに小零細企業用とかといったような、もちろんそれをそのまま写せばいいというわけじゃございませんけれども、そういったモデル就業規則をつくりまして、いろいろな集団指導、それからいろいろな講習会、そういった場所におきまして、小規模事業場に対しまして就業規則をつくることのお手伝いというものをしておりますけれども、これもいろいろな時代の状況に合わせまして、また、こういった法改正があればこれに合った格好でまた修正をしながら、また啓発し、指導していきたいというふうに考えています。
五島委員 今の松崎局長の御答弁ですが、もう一度ちょっと整理をして質問いたしますが、就業規則がある場合に、就業規則に違反しているという事実については、事業主に証明責任があるとおっしゃいました。そして、その就業規則そのものが裁判になった場合、それの社会的合理性があるかどうかということでもって判決がなされるとおっしゃいました。そうなりますと、当然、就業規則違反という形でもって解雇された労働者の場合、それに対する就業規則に違反しているという証明責任を事業主が負い、そして、その就業規則の適用そのものが社会的合理性を欠いているかどうかということについては、当然、その継続線上で事業主が負うとすることが常識だと思うんですが、この法律を読むと、そこのところは労働者が負いなさいと、非常に木と竹を接いだような形になってしまうわけですが、その辺はどのようにお考えですか。
松崎政府参考人 これはちょっとややこしかったんですけれども、就業規則があって、そこに解雇の事由が書いてあるといった場合、それで、就業規則のどれかの条項に当たるということを理由にして解雇されたという場合だと思いますけれども、そういった場合、労働者の側としましては、そんな就業規則に当たるようなことはやっていないということを言って訴えるわけです。そういった場合に、当然、使用者の方は、どういう行為があってどの条項に該当するかということについて立証しなければならない。したがって、それが立証できなければ、それがグレーといいますか、あいまいといいますか、それが完璧に立証できなければ、それは権利濫用とかそこにいかずに、その時点で解雇は無効ということになります。
 ただ、そうじゃなくて、申し上げたのは、就業規則上の行為があって、解雇が一応形式的には有効だというふうに見られる場合であっても、解雇権濫用法理によって救われるラインやハードルがあると申し上げたわけでございまして、通常の場合は、労働者の側からいえば、就業規則に当たるようなことは何もやっていない、そんなことはやっていないという抗弁、これは、今言いましたように、使用者に立証責任を負わせるもとになるわけでございますけれども、そういったことを言い、さらに、もしそうだとしても、これは権利の濫用だといって主張するというのが予備的抗弁といっているようでございますけれども、それが通常の裁判のやり方のように聞いております。
五島委員 もう時間もないんですが、大事なところですから重ねてお伺いしますが、例えば就業規則の中で、企業の社会的評価を失墜させた場合とか、あるいは上司の指示に従わなかった場合というふうなことが仮に理由として漠然と書かれているとします。そして、交通違反でスピード違反やった、捕まった、そいつ気に入らぬ、解雇、こういう場合は、労働者は当然提訴してくるだろう。その場合に、事業主はその企業にある就業規則のどれによって解雇したかという事由を説明し、その正当性を主張する。裁判所は、そのことが社会的合理性があるかどうかによって解雇の有効性、無効性を議論する、こうなった場合に、あわせて就業規則の適用の問題、あるいは就業規則そのものの社会的合理性についても事業主が当然説明責任を負うことになるんだろうというふうに理解するわけですが、今回の法案でいきますと、なぜ解雇したか、いや、実は企業の社会的な信用を失墜させた行為ということに合致すると判断したからやりましたということだけを事業主が言い、そして、そのことは就業規則にも反していないし、それから解雇されるほどのことではないという説明は全部労働者の方がやりなさいというのが今回の法律ですね。
 そんな、一つの、一連の裁判の流れの中で、立証責任者が、このものはこっち、そしてこのものはこちら、そんなあほなことをやるわけですか、できるんですか。
松崎政府参考人 まず、就業規則に書かれてあって、例えば会社の社会的信用を失墜した場合と書かれてあったという場合、ここで何らかの行為を労働者がしたといった場合、会社がその何らかの行為、それを取り上げて、これこれこういう行為があった、いついつこういう行為があって、それを理由にして、就業規則の第何条第何項を適用して解雇したといった場合が例になると思いますけれども、そういった場合に、労働者から訴えがあるわけです。先ほど言いましたように、そんなことはやっていないといいますか、就業規則に該当するようなことはやっていないということ、やったとしてもそれは行き過ぎだといったような抗弁を通常はすると思います。
 そうすると、まず、裁判実務におきましては、実際にどういう行為があったのかという事実の認定をします。本当に何か行為があったのかということをまずやります。それから、その行為が本当に、書いてあります就業規則の条項に該当するのかどうなのかということを判断します。それで、もちろんその前提としまして、その条項というのが公序良俗に反しないとか、さらには法令、協約に違反していないということは当然前提としてチェックはするわけですけれども、そういったことを全部チェックをして、その段階で、就業規則上まずは形式的には解雇はあり得るといいますか、有効と推定し得る状態になるかもしれません。それがないということになれば、もちろん解雇権濫用とか行かずに、その段階でもう解雇は無効になるとなります。
 そこで一度有効だという推定をされましても、先ほどの予備的抗弁で、そういう事実があったとしても、これは解雇権濫用法理、解雇権を濫用したものだ、だから無効だということを予備的に言っていますから、その段階で、まあ一遍にやるんですけれども、順を分けて言えば、今度は解雇権濫用法理を当てはめて、それが、客観的合理的な理由がなく、社会的相当性、そういったものはあるかどうかといった点、特に、一番の例では、遅刻を何回かしたことによる解雇が、それが、確かに書いてあるけれども、二回ぐらいじゃ酷じゃないか、解雇まで行くことはないじゃないかといったようなことで、無効になった例もございます。
 そういったように、今言いましたように、通常、就業規則というのはきちんと書いておるものが多いわけですから、まずは、権利濫用に行く前に、就業規則に該当するかどうかというものを使用者の立証責任というもののもとできちんとやるということが前提でございまして、これが現行の取り扱いです。
 したがいまして、十八条の二につきましては、後の方の第二のハードル、そこのところをそのまま書いてあるわけでございますので、今と全く扱いは変わらないということになると考えています。
五島委員 時間がありませんが、非常に大事な点です。
 これは、従来どおりの議論、すなわち解雇に関する事業主の証明責任というものを一定きちっと位置づけた上であれば、たとえ就業規則に何が書かれておろうとも、それに基づいて証明をやればいい。
 それからもう一つは、仮にこの就業規則そのものだけによって処理しようとするならば、その就業規則そのものがどういう内容で書かれているのか、そこの中にあいまいさや、あるいは大変な反社会性を持っているとも解されかねない内容であってはならないけれども、それに対して行政が変更命令をかけてできるような性格のものではないという状況の中で、この就業規則の問題をどう扱うかというのは、今の話を聞いたらますます混乱します。
 なぜ、遅刻二回した人が解雇された場合に、事業主はその遅刻をしたということを証明すれば解雇に事足りるのか、遅刻を二回したということをもって解雇をするに足りるような状況というものがどういうふうな形で合理性があるというふうに説明しているのか、そういうふうなことの問題が出てまいります。あるいは、もっと言えば、上司の指示に従わなかった場合というようなあいまいな表現の中で、女子社員に対して、あなた方は男子社員に対して全部お茶くみしなさいと言われて、そして女子社員が、そんなばかなことできませんといった場合でも解雇の対象になるのかどうか。あるいは、勤務地の配置によって、とてもでないけれども、そう簡単には受け入れられないような遠隔地への転勤を突如言われて、それを拒否した場合に、上司の指示に反した解雇の理由になるのか。
 そうした問題について、何に基づいて、就業規則の何条に基づいて解雇したということを事業主に言わすだけでは証明にも何にもならない。そのことの合理性、そのことを含めて事業主に釈明といいますか、証明をさせていく必要性があるだろう。そこを二つにぶった切った形の解雇のルールというのはとんでもない話だというふうに思われます。
 改めて、また時間があれば、この点について議論をしたいと思います。
 次に、有期雇用の問題について政府とそして法案提出者の方にもお伺いしていきたいと思います。
 まず、有期雇用を今回五年と三年契約に変更するというふうになっています。これは上限期限をそういうふうに延期する。そして、その期間の中においては、これは使用者側はその有期契約の契約期間というものを自由に提示できるものであるというふうに考えます。したがって、従来非常に問題になってまいりました短期契約における雇いどめといったような状態というものはこの法律ができても依然として変わらないと考えますが、いかがでしょうか。
松崎政府参考人 基本的に、まず有期労働契約の契約期間でございますけれども、これはその仕事でございますとか業務量の変動の見通し、そういったものに応じまして、本当にアルバイトのような短いものは三日ぐらいから、一週間といったものから、さらには、現在一般の方でいえば一年、一年以上はだめですから、一年といったように、もういろいろあろうかと思います。したがいまして、どの程度の契約期間を定めるかということはまさにこういった事情、さらにはそういった場合にいろいろ応募するといいますか、労働者の側の事情もあろうかと思います。そういったことで、労使の合意によって決定されていくというのが実態でございます。
 したがいまして、御指摘のような、確かに雇いどめの問題、こういったものはあるわけでございますけれども、これは、雇いどめの問題で、短期を繰り返すといったような問題、そういった問題につきましては、この法律に基づきまして、厚生労働大臣がガイドラインといいますか、基準というものを定めまして、事業主、使用者に必要な助言指導を行うということによってトラブルの防止を図っていこうということで対応していきたいというふうに考えております。
五島委員 質問を続けていきたいんですけれども、委員長、ちょっと、やはり委員長の責任において、この議事を何とかしてください。何ぼ何でもひど過ぎますよ。(発言する者あり)
中山委員長 はい、善処します。(五島委員「とめてください、ちょっと」と呼ぶ)続けてください。
 五島君。
五島委員 少しは議場にもぽろぽろと人がふえましたので、質問を続けます。理事さんの方でとめろとおっしゃればとめますが、私としては質問を続けたいと思います。
 今のお話のように、有期雇用が五年と三年に延長されたことによって、労働者にとって非常に大きな心配である雇いどめの問題というのはこれで解決するわけではありません。結局、これができることによって、企業にとっては必要な労働者を束縛するということが法益として存在して、使用者の選択権を拡大するということが法益としてあるのだろうかなと思います。
 ところで、労働者にとって、この雇いどめという状況、短期雇用の継続という問題、これにも手がつかないとすれば、この改正によってどのような利益が得られるのか、お伺いしたいと思います。
松崎政府参考人 まず、今回の改正案の考え方でございますけれども、これは、今後、有期労働契約といったもの、こういったものが労使双方から良好な雇用形態の一つとして活用されるように、こういったことのために行うという点。それからもう一つが、有期契約の労働者の多くが、やはりアンケート調査等によりますと、契約の更新を実際繰り返しているし、また一定期間継続して雇用されているといった現状を踏まえまして、この上限の見直しを行おうということでございます。
 こういった見直しによりまして、有期労働契約で働く労働者の方につきましては三年なり、また、いわゆる専門職の方については五年までの契約というのが締結できるようになるということで、これもアンケート調査でありましたように、正社員はちょっと事情があってできないけれども、もうちょっと長い方がいいという方が四割近くおられるわけでございますけれども、そういったように、労働者の側からその安定を求めるといったものにこたえる可能性が出てくる。
 それからさらに、そういったことも含めまして、労働者の雇用の選択肢の拡大でございますとか、今言いましたように、一年から場合によっては三年雇用が安定するといったような、そういった雇用の安定が図られまして、御本人にとりましても、能力開発やらキャリア形成といった面からもメリットが出るんじゃないかというふうに考えております。
 また、雇いどめの問題は、先ほど申し上げましたように、現在でも指導等は行っておりますけれども、今度はより一層こういったこととなりますので、きちんとしたものをつくり直して、きちんとした指導というものをしていきたいというふうに考えております。
五島委員 もう少し長期の有期雇用契約を望む声が労働者の方にもあるというお話です、あるでしょう。しかし、これは先ほど来繰り返しておりますように、短期の継続雇用というものを全然変えていないわけですよね。三カ月契約、半年契約というふうな短期契約というものの存続を認め、それは企業の随意にし、そして、それによるところの雇いどめということも、何ら歯どめになっていない。にもかかわらず、この義務年限といいますか、契約年限だけ延長するということになっています。
 この点について、修正案提案者の方の御意見もお聞きしたいんですが、あわせてこれは政府の方にもお聞きしておきます。
 この契約に関連しまして、例えば大学教官の任用については、既に大学教員の任期に関する法律によって、五年の有期契約制度は成立しています。この場合、契約後一年を経過すると、この大学教官は、これは私学の場合は労働者と言ってもいいと思いますが、労基法の適用ですから。自由に職を辞することができます。そのことによって違約金を払えということはありません。この法律との整合性はどうなっているのか。このことも、あわせて対案提出者にもお伺いしたいと思います。
山井委員 お答えいたします。
 今お伺いの整合性ということについては、質問者と全く同感であります。
 有期雇用契約期間を延長するならば、少なくとも大学の教員の任期に関する法律との整合性をしっかりとって、一年経過後は労働者が契約の解除を申し出ることができるとする必要があります。もしくは、一年の短期契約の更新を繰り返したあげくの雇いどめといった事例をなくすため、委員御提案のとおり、有期雇用期間を五年と三年以外は認められないとするのも政策判断の一つと考えます。
 民主党としては、修正案において、現行の有期雇用の契約期間について、上限をそのままとして、一年、三年としましたが、こうした労働者からの一年経過後の労働契約解除権のような考え方が労働基準法に入るのであれば、そうした修正にも柔軟に応じたいと考えております。
松崎政府参考人 私立大学の教員の方の法律でございますけれども、これは御案内のように、できましたのが平成九年ということでございます。したがいまして、この法律におきましては、基準法がもうすべて一年ということで、一年以上の契約はだめよというときのものでございまして、そういったことから、この法律におきましては、一年を超えている場合は労働者に解約を認めるというふうになっているわけでございまして、この趣旨は、もう繰り返しになりますけれども、先生御質問のように、労基法が適用されるという点、それから労基法が一年とされているということ、したがいまして、私学の先生につきまして、いわゆる三年とか五年とかいう任期制をつくるときに、労働基準法違反にならないようにということでできたというふうに聞いております。
 したがいまして、今回の改正を見ましたときに、趣旨が違うわけでございますので、これはこの法律を所管しております担当省において、労働基準法がこうなるに当たりましてどうするかということを考えた結果、こういう修正をしなかったということでございますので、逆にこの特別の法律に原則の法律を合わせるということは私ども考えなかったということでございます。
五島委員 そうすると、この教員の任期制に関する法律を変えろというふうに労働省はおっしゃるということになるんでしょうか。
 もう時間がございませんので、この点は他の議員にぜひ追及していただきたいと思います。
 最後に一点。過去、准看護婦の養成に関しまして、民間医療機関において、准看学校に学び、卒業後は一定の期間、学生時代に在職した医療機関にお礼奉公と言われる勤務が義務づけられているということが多々ございました。
 政府は、このお礼奉公システムというものについてどのように対応してこられたのか。こうしたことについては、私の知る限りにおいて、看護課を中心として、こういう実態を解消するために非常に努力をしてこられたというふうに受け取っています。
 今回の制度の改革、三年、五年というのは、まさにあの看護教育の中におけるお礼奉公と同じような束縛的効果をもたらす可能性が非常にあるというふうに思っています。
 せっかく篠崎局長にも来ていただいておりますので、厚生労働省として、あのお礼奉公という形、奴隷労働とは言わないけれども、極めて労働者に対して職の選択の制限を加えた実態に対してどういうふうな態度をとってこられたのかをお伺いし、またその後、労働基準局長はそれについてどうお考えかをお伺いします。
篠崎政府参考人 先生御指摘のいわゆるお礼奉公につきましてでございますが、私どもといたしましては、平成六年に検討会を設置して、鋭意この問題について議論をいただきました。
 その御指摘を踏まえまして、都道府県通知というものを養成所の設置者等に平成七年に発出いたしております。その中身は、職場をやめたことにより退学をさせるというようなことがないように、また、労働契約と奨学金契約が明確に区分できるように生徒を指導するようにというような通知を発出いたしております。
 また、平成七年には、どんなふうな実態になっているかという実態調査も行いました。それを受けて、平成八年には、特定の医療機関勤務を求めていることは労働基準法上の問題となるおそれがある、これを改善すべきであるというような趣旨から、平成九年に、学校養成所指定規則、そして指導要領というものを改正いたしまして、特定の医療機関に勤務することを理由に入学させないなど、生徒に不利益な取り扱いをしないようにすること、また、奨学金の受給に関しては、養成所が生徒に対して適正な情報提供あるいは助言指導を行うというようなことを明確化いたしまして、指導してきているところでございます。
松崎政府参考人 労働基準監督機関におきましても、監督指導、こういったものを具体的に行う際に、今おっしゃったような、准看護婦さんなどの奨学金の返還、こういった問題につきましても、実情をきちんと把握いたしまして、法違反が確認される場合にはその是正をさせているというところでございますし、また、そういった監督署等に対しまして、准看護婦さん等から奨学金等の返還の問題、こういった問題につきましていろいろな申告等なり相談、そういったものが行われた場合には、従来から、きちんとその内容につきまして事実関係を調査いたしまして、先ほどと同じように、基準法に違反する場合、例えば基準法の中には、第十六条で賠償予定の禁止とか、そういったものがありますので、そういった条項に違反するかどうかをチェックいたしまして、問題のある場合にはきちんと是正させているということで、過去にそういった是正させた例というものもございます。
五島委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、これは労働基準法の根本が変わるわけですね。三年なりの有期雇用ということの中で、その期限前に退職する場合には賠償金を払えという話になってくると、これまで厚生省がやってきた准看護婦さん制度について、労働基準法を軸にしてやってこられたんだけれども、その方は、そちらは認めてしまったということになったらとんでもない話になってくる、こんなばかなことはないだろうということを申し上げて、終わります。

 

中山委員長 次に、武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 前回に引き続いて、この法案の具体的な中身について次々に聞いていきたいと思います。いろいろと今まで議論をしてまいりましたけれども、きょうは対象の実態についていろいろと聞いていきたいと思います。
 まず、労働現場の実態です。解雇について、労働現場の実態について何点かお聞きしたいと思います。
 まず、鴨下副大臣にお聞きしたいと思います。
 解雇について、例えば会社の上司に手を握られた、これはセクハラじゃないですかと抗議したとします。その場合、この女性がいわゆる営業成績の不良だと言われて突然の解雇を通告された、本人としてはそのような理由は全く思い当たらない、不当解雇であるということで裁判に訴えたとしますね。こういう場合、最終的には和解で解決するということのようでしたけれども、解決するまでの時間、お金、それよりもまず解雇通告を受けたその精神的な苦痛、こういうものは非常に耐えがたいものであると思います。
 例えば、このようなセクハラに関する解雇だけでなく、今厳しい雇用の状況で、女性が、まず妊娠や出産など、女性特有なことを理由として解雇が行われるということも依然として後を絶たないというわけですね。これほど多くの女性が働くようになった今、女性が安定して働き続けるためにも、このような解雇は許されるべきじゃないと思うんですけれども、実態は、現実には行われている。
 厚生労働省では、こういう例えば妊娠、出産、セクハラという解雇に対して、現実にはこれは行ってはいけない、解雇できないわけですよね、この妊娠、出産には。セクハラはまた問題がいろいろと、双方の言い分もあるかと思いますけれども。このようなときはどう対応しているのか、まずお伺いしたいと思います。
鴨下副大臣 今先生がお話しになりましたようなことは、言ってみれば、あってはならないような、ある種のセクハラの典型的なことなんだろうというふうに思いますが、そのことも含めまして、さらに妊娠や出産を理由にした解雇や退職を強要するようなことも含めて、こういうような事案に対してどういうふうに対処しているのか、こういうようなことだろうというふうに思います。
 妊娠や出産を理由とした解雇や退職を強要するような事例につきましては、これは男女雇用機会均等法におきまして、妊娠、出産を理由とした解雇の禁止、さらにセクシュアルハラスメント防止のための事業主の配慮義務、こういうようなところが規定されているわけであります。
 厚生労働省では、これは全国の労働局の雇用均等室におきまして、これらの規定の周知徹底をするということはもちろんでありますけれども、相談や事業所訪問を通じまして違反する事業主を把握した場合は、これは解雇の撤回を指導する等、厳正に対応している、こういうようなところが現状でございます。
武山委員 それでは、もう少しその後を。
 それでは、例えば厳正に対応して、解雇の撤回なんというのは実際に事例としてあるんですか。いろいろな問題で今紛争に、いわゆる労働関係の紛争処理ということでは五十万件以上の件数でウナギ登りに、紛争を解決していただきたいと、数は上っていると聞いておりますけれども、実際にそういう、もう一度解雇を撤回していただきたいという例はどのくらいあるんでしょうか。
鴨下副大臣 これは、平成十四年度の男女雇用機会均等法の施行状況の中での是正指導、均等法の第二十五条に基づく助言等というようなことでありますけれども、その中で第二十一条関係のいわゆるセクシュアルハラスメントの防止対策というような事案につきましては、これは四千九百七十五件あるというようなことでございます。
武山委員 それが、解雇を通告されて、きちっと解雇がなくなったという数はどのくらいでしょうかと実は今聞いたんです。対応して事例があるというふうにお答えになったからなんです。
鴨下副大臣 これはセクシュアルハラスメントの防止対策についての数でありますけれども、法の第八条関係の中で、これは解雇の事案もあるわけでありますけれども、これについては十八件というようなことのデータがございます。
武山委員 その十八件というのは、解雇通告を受けて、解雇でなく、もとに戻ったという意味が十八件なんですか。私は、解雇通告を受けて解雇になってしまった、そのために紛争に持ち込んだ、その結果それが認められて解雇がなくなったという数を聞いているわけなんです。なぜかというと、その前に副大臣がお答えになったからなんです、その事案に対しては対応していますと。
鴨下副大臣 これは個別紛争解決の援助についての話になるわけでありますけれども、特に妊娠、出産も含めた理由で、ある意味では解決した事例というのが七十七例あるというようなことであります。
武山委員 幾つも数字が出てきて、どれが実際に真実なのかわからないんですけれども、質問の内容は、妊娠、出産、セクハラなどを理由とした解雇に関して聞いたわけなんです。数を聞いたわけじゃないんですね。そうしましたら、その中で副大臣は、対応しておると。その対応の中身について、どう対応しているのか、解雇された者に対して解雇が無効になったという対応なのか、その数を実は聞いたんです、私は。
鴨下副大臣 幾つか数字は出てきていますけれども、セクシュアルハラスメントの是正指導というのが四千九百七十五例ですけれども、その中で解雇を通告されたというようなことについてのデータはここには今ありません。そして、その解雇を通告された事例について、さらにそれについて、例えば個別紛争解決の援助を行って、そして解雇が撤回された、こういうようなケースは今ここには、手元には資料はないというのがお答えでございます。
武山委員 それでは、やはり厚生労働省は、そういう事例に対して情報が入ってくるわけですから、どれだけの解雇通告を受けたのか、また紛争の処理に持っていったのか、そういう数字というのはきちっと把握しておくべきだと思うんですよ、こういう法改正に当たっては。そういう根拠の数字がない限りは、やはり信頼性、その結果こうなるということも一つの根拠だと思うんですよね。
 ですから、そういう事例をきちっと踏まえた上で、実際にどれだけ紛争に対してもとに戻ったのかという数値もきちっと把握しておくべきだと思うんですよね。そういう数字があってこそ、ああ、本当にそういう紛争に調停が乗り出してきちっと解決したのかという結果が国民にはわかるわけですよね。その数字があやふやだというのは、やはりそれは片手落ちだと思います。そういう紛争の件数だけがわかっても、その後どう解決されたのか。対応していますというだけではだめだと思うんですよね。対応した結果の責任というものは、やはり厚生労働省はきちっと持つべきだと思います。これはぜひ指摘しておきたいと思います。
 それで、不当な解雇の事案が起こった場合、迅速に解決することがやはり勤労者の負担を軽減するということにつながると思うんですね。それで、今、個別労働関係紛争処理制度というものがあるということで、きちっとそこでその紛争を処理しているということですけれども、その制度の概要、どんな制度なのかということ、それからどのくらいの数が来ておるのか、それで実際にその紛争の処理の結果どうなっているのかという概略をぜひ御説明していただきたいと思います。
鴨下副大臣 個別労働関係紛争処理制度の概要につきましては、これは例えば労働条件その他の労働関係に関する事項につきまして、個々の労働者と事業主との間の紛争について、あっせんをする制度を設ける、こういうようなことによりまして、言ってみればその実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的としたわけであります。
 具体的には、個別労働紛争が生じたときには、紛争の当事者は自主的な解決を図るように努める、これが第一でありますけれども、都道府県の各労働局長が、個別労働紛争の未然防止及び自主的な解決促進のため、労働者または事業主に対する情報提供、相談その他の援助を行う、こういうような順序で、さらに、労働者または事業主の一方または双方から個別労働紛争の解決につき援助を求められた場合には、当該当事者に対しまして必要な助言そして指導をすることができる、こういうようなことでありまして、特に、それぞれ都道府県の労働局長は、労働者または事業主の一方または双方から個別労働紛争の解決につきあっせん申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認められるときには、紛争調整委員会にあっせんを行わせる、こういうような順序で行うのが概要であります。
武山委員 そうしますと、先ほどの質問の、例えば妊娠、出産、セクハラというようなものがこの場合まず対象となるのかどうか。それから、どのような手順でこれは、都道府県ということは、そこまで行かないといけないですよね、届け出しなければならない。非常に敷居が高いですね、そこまで行かなきゃいけないということは。
鴨下副大臣 これは敷居が高いといいますか、紛争で大変お困りになったときには、監督署に相談をしていただければ一番早いんだろうと思いますけれども、ただ、例えば皆さんがなじんでいるようなハローワークでも、こういうようなお話をしていただければ最終的には相談に乗れる、こういうようなことであります。
 そして、主たる運用状況について、まさしくいわゆるセクシュアルハラスメント、それからそれ以外の女性の労働問題、こういうような問題も、ある意味で多く寄せられている事案であります。
武山委員 そうしますと、今回の解雇に係る規定の整備なんですけれども、このことによって、個別労働関係紛争処理制度というこのもの自体の運用は何か変わりますか、今回の解雇に係る規定の整備の中で。
鴨下副大臣 大変重要な御指摘だろうというふうに思います。
 個別労働紛争の解決制度につきましては、これは個別労働紛争解決促進法上適用除外とされているものを除きまして、個々の労働者と事業主の間の労働に関する紛争を言ってみれば広く対象としているわけでありますけれども、同じ紛争について、例えば労働基準法、そして労働者派遣法、育児・介護法等、別途特別な法律が適用される場合には、その法律を優先するというようなことになっているわけです。
 したがって、今回、労働基準法に解雇に関する規定が整備されることに伴いまして、当該解雇に関する紛争については、まず、関係行政機関において、判例の周知等により規定の趣旨について使用者及び労働者の理解を促進するというようなことで解決が図られることになるわけでありますけれども、さらにそれでもなかなかうまくいかないという場合に、求められた場合には、引き続き、個別労働紛争解決制度の適切な運用によりその簡易迅速な解決を図る、こういうような順番になるわけでありまして、そういう意味では、今回の改正によって、より解決しやすくなるというようなことだろうというふうに思います。
武山委員 いわゆる時間や費用の面で、本人は、裁判に訴えるということは大変な負担を受けるわけですけれども、裁判外の紛争処理システムをさらにやはり充実していかなきゃいけないと思うんですよね。一々裁判に訴えないと事が進まないということでは、やはり何なのかということになってしまうと思うんですよね。
 それで、今現在、個別労働関係紛争処理制度においては、先ほどお話のありましたように、男女雇用機会均等法に基づく紛争の解決については調停によって解決する、それ以外の紛争の解決はあっせんということになっているわけですね。男女雇用機会均等法に基づくものは調停だ、そしてそれ以外のものはあっせんだと。このいわゆる調整方法が異なってしまう。これはやはりわかりにくいと思うんですよ。なぜ異なるのかというところの説明をいただきたいと思います。
鴨下副大臣 大変重要な御指摘でありますけれども、男女雇用機会均等法の調停は、労働者が女性であることを理由とする例えば解雇だとか配置だとか、それから福利厚生等についての差別的な取り扱いを禁止する同法の担保措置として設けられているわけでありますけれども、他方、個別労働紛争解決制度は、紛争の当事者間の自主的な解決の援助を目的としているわけであります。ここが原則であります。
 それで、個別労働関係紛争解決制度において調停を行う、こういうようなことに仮になるとすれば、これは都道府県の労働局が労働基準法等に基づく監督指導権限を持っているという、ある意味で強い権限を持っているわけでありますから、当事者に対してそれぞれの労働局長が行う調停案の言ってみれば受諾勧告が、調停案の受諾を当事者に、ある意味で圧力というか、強制的に行うようなことになりかねない、こういうような懸念があるわけでございます。
 さらに、調停によって個別労働関係紛争の処理を図りたいという当事者の方に対しましては、これは既に民事調停制度が設けられているわけであります。
 そういうようなことから、先生今おっしゃった裁判外の紛争処理制度としての個別労働関係紛争解決制度においては、これはあくまでも調停ではなく、あっせんによって紛争解決をしよう、こういうようなことでございます。
武山委員 この制度については、あっせんではなく、男女雇用機会均等法に基づく紛争の解決のように、調停によって解決することが必要じゃないかと、これはちょっと言っておきたいと思います。
 なぜかといいますと、この場合、妊娠や出産やセクハラなど、女性が差別を受けている問題が多いわけですよね。ですから、まずこのように、この制度についてはあっせんではなく、より強い、いわゆる男女の差別に対してですので、調停によって解決することが必要じゃなかろうかというふうに私は考えております。
 女性の方が、その方が味方が強くていいということなんですけれども、この点についてやはり速やかにぜひ御検討いただきたいと、私はこれは申し添えておきたいと思います。この件についてお話を一言。
鴨下副大臣 女性労働者と事業主との間で、例えば妊娠、出産を理由とする解雇に関する紛争が生じている、こういうような場合には、これは、先ほどから申し上げていますように、男女雇用機会均等法に基づく各都道府県の労働局長による助言、指導、そして勧告、または機会均等調停会議による調停によって解決をする、こういうようなところでありまして、先生おっしゃるように、それぞれケースによっては違うんだろうと思いますけれども、少なくとも、言ってみれば男女雇用機会均等法に基づく問題解決、こういうようなことにおいては、調停というようなことでやっているわけであります。
武山委員 セクハラの場合は、恐らくこれではあっせんに入るんだと思うんですよね。ですから、これはやはり調停でお願いできたらということを検討していただきたいという意味なんです。それは、女性の側の、女性特有の問題が、共通点があるからという意味です。
 それでは、有期労働契約の方に移りたいと思います。
 最近、有期労働契約について、その終了後、雇いどめをめぐって多くの紛争が生じていると聞いております。それで、例えば半年契約のアルバイトとして入社して、契約更新を重ねて、その契約更新の後、今度は会社の部門廃止に伴って、いきなり更新しないと。ケース・バイ・ケース、いろいろなケースがあるかと思うんですよね。
 それで、こういう場合、今回の改正では、有期労働契約の更新、雇いどめに関する基準を設ける根拠規定を置くとされておるわけですね。この基準の内容について、どのようなものを盛り込むのか。それから、事前の雇いどめの予告、すなわちどのようなものを盛り込むのか、根拠規定ですね。それから、事前の雇いどめの予告に関しての規定も盛り込まれることとなるかという質問です。
鴨下副大臣 有期労働契約におきましては、これは、契約更新の繰り返しにより、一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、例えば契約更新をせず期間満了をもって退職させる、こういうようなことで、いわゆる雇いどめをめぐるトラブルというのが大きな問題になっているのは事実であります。
 有期労働契約が、労使双方にとって良好な雇用形態として活用されていかなければいけないわけでありますので、このような有期労働契約の雇いどめ等をめぐる紛争の防止や解決を図っていく、これはもう先生おっしゃるとおり、非常に大事なことだろうというふうに思っております。
 今回の改正に伴いまして、厚生労働大臣が、有期労働契約の締結及び更新、雇いどめに関する基準を定める、こういうようなこととしまして、この基準に基づきまして労働基準監督署が必要な助言指導を行う、こういうような経緯でありますけれども、この基準の内容につきましては、昨年末の労働政策審議会の建議におきまして「一定期間以上雇用された有期契約労働者について使用者が契約を更新しないこととするときは、当該労働者に対して更新しない旨を予告すること等を定めることとすることが必要である。」こういうこととされたわけでありまして、厚生労働省としましては、建議の内容を踏まえて、今後、労働政策審議会労働条件分科会でさらに御議論をいただいて、有期労働契約の締結及び更新、さらに雇いどめ等をめぐる紛争の防止や解決ができるだけうまくいくようにというようなことでこの基準を定めてまいりたい、このように考えております。
武山委員 そうしますと、事前の雇いどめの予告、この予告に関しての規定は盛り込まれるんでしょうか。
鴨下副大臣 実際には、特に労働者側から見ますと、当然更新するだろうというふうに思っていたところが突然にというようなこともあるわけでありますので、事前にそういうようなことをすべしというようなことにつきましては、これは盛り込むつもりで今検討に入っているところであります。
武山委員 それではもう一つ、五年の特例について、まず、どのような範囲の者を対象とするのか、これはぜひお考えを聞きたいと思います。
鴨下副大臣 五年の特例というようなことでありますけれども、特に、これは近年の経済そのものが極めてグローバル化してきたというようなこととか、それからある意味でそれぞれの企業も厳しい競争にさらされている、こういうような状況の中で、企業が創造的な事業活動を行うために、特に高度な専門的知識、経験を有する方々を一定期間活用したい、こういうようなある意味で企業側のニーズ、それからもう一つは、価値観の多様化によりまして、特定企業に余り縛られたくない、むしろみずからが有するある種の専門的な知識、経験をさまざまなところで発揮していきたい、こういうような労働者のニーズに沿って今回の改正をさせていただくわけでありますけれども、特に高度に専門的な知識、技術、経験を有する労働者を当該専門的な知識等を必要とする業務に従事させる場合、さらに満六十歳以上の高齢者に係る場合については、特例として有期労働契約の契約期間の上限を五年にしよう、こういうようなことであります。
 この特例の対象とする方々の具体的な範囲につきましては、このような制度の趣旨に合致することになるように、これは労働政策審議会における議論をいただかなければいけないわけでありますけれども、特に関係方面の御意見を伺いながら、これは厚生労働大臣告示として定めることにしたい、かように考えております。
武山委員 その対象となる専門的能力を有する者の具体的な範囲は、法案成立後ということになっております。それで、どのような範囲の者を対象とするかという私の質問でしたけれども、明確なお答えがありませんでした。
 有期労働契約期間の上限の特例対象となる者ですけれども、これについては、当然ながらむやみに広げることは適当ではない、厳格に限定すべきであるということを言い添えて、私の質問を終わります。

 

中山委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 私は、前回の質疑の際に、今度の労働基準法改正の問題で、この十八条の二の問題、解雇の規制の問題では、今の政府案では、これは労働団体また日弁連を初めとした法曹団体から厳しい批判が出ておりますように、解雇を容易にするような方向のものであって、労基法の趣旨にそぐわないという指摘をいたしました。そして、解雇の規制の問題をきちんと労働者保護法である労基法に規制するとするならば、これは、労基法がその建前としております、使用者は何々してはならないという形での法律の整備が必要だ、具体的には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるときでなければ労働者を解雇してはならないという規定にすべきだという提起もいたしました。これに対して政府側からは、政策論としてはそういう考えもあるというお話がありました。
 その後、野党の協議も受けまして、民主党から労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されました。
 まず、民主党の修正案についてお尋ねしたいんですけれども、この解雇の規制の問題について、この修正案はどういう特徴があるのか、特に政府案とはどこが違うのか、この点を簡潔にお答え願いたいと思います。
鍵田委員 山口委員の御質問にお答えをいたします。
 本修正案の最大の特徴は、現在の裁判実務における解雇ルールの全体を明らかにしているところでございます。
 現在の解雇訴訟における裁判実務では、まず就業規則に定める解雇事由に該当する事実があるかどうかという判断をいたします。そのような事実がなければ、解雇権濫用法理を当てはめるまでもなく、解雇は無効となります。これを明らかにするために、本修正案では、就業規則において定める解雇事由に該当する事実がなければ解雇してはならないこととしております。
 次に、就業規則に定める解雇の事由に該当する事実がある場合であっても、その解雇権の行使が権利の濫用ではないかという判断をするわけであります。この点について、本修正案では、労働者を解雇することにつき客観的に合理的な理由があり、かつ、当該解雇が社会通念上相当と認められるものであるときでなければ、労働者を解雇することはできないことといたしております。
 最高裁判決で確立された解雇権濫用法理では、解雇に客観的に合理的な理由があることについて、実質的な証明責任を使用者に負担させています。本修正案は、このような解雇権濫用法理の現実の運用を忠実に条文化したものであります。
 一方、政府案は、解雇が客観的に合理的な理由がないものであることについて、労働者に証明責任を負担させています。これは、今まで積み重ねられてきた解雇権濫用法理の運用を根底から覆そうとするものであります。
 しかも、政府案では、「労働者を解雇することができる。」という文言を労基法に入れようとしております。
 そもそも労基法は労働者を保護するための法律でございます。この労基法に「解雇することができる。」などと規定することは、法の理念に真っ向から逆らうものです。しかも、この厳しい雇用情勢において、解雇は自由であるという誤解を与えかねません。
 このような、解雇権濫用法理を意図的にねじ曲げ、労基法を解雇促進法に塗りかえようとする政府案に対し、民主党の修正案は、現在の裁判実務を素直に酌み取り、すべての人にわかりやすい形で解雇ルール全体を明らかにすることで、解雇をめぐる紛争を防止し、解決していこうとするものでございます。
山口(富)委員 よくわかりました。修正案については、私は賛成なんです。
 坂口大臣に申し上げたいのですが、坂口大臣は、この修正案について、文章上の違いはあるけれども同じようなものだという発言を繰り返されました。しかし、今の説明ではこれだけ、文章上も違うだけじゃなくて、内容上、立法趣旨も違うのですから、私は改めて、十八条の二については、解雇の規制が明確になるような修正を求めたいと思います。
 さて、きょうは、前回お約束しましたように、裁量労働制の問題を中心にお話ししていきたいと思います。
 まず初めに、企画型の裁量労働を導入している事業所と労働者数についてお答え願います。
    〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
松崎政府参考人 企画業務型裁量労働制の導入状況でございますけれども、これは平成十四年、昨年十二月三十一日現在の数字でございますけれども、導入の事業場は百八十二、適用労働者数は六千七百四十四名という状況でございます。
山口(富)委員 昨年の秋に、情報通信の分野の大手企業であるNECが新Vワークという名前で、これは専門業務と企画型、両方含みますが、裁量労働制を導入いたしました。一体、この対象になった労働者数はどのぐらいになるんですか。
松崎政府参考人 これは個別の企業についての情報でございますので、詳細には差し控えさせていただきますけれども、御指摘のNECについては、そういったあれが新聞等でもありましたように、監督署において当該届け出があったということは知っております。
山口(富)委員 私は、これは個別の企業にとどまらない問題があるから、あえて聞いたんです。
 これは、共同通信によりますと、約二万四千人の社員のうちの三〇%に、三割に裁量労働制を広げるものだというふうに報道されて、これは共同通信ですから、地方新聞にも一斉にその内容が報じられました。
 特に私がきょうお尋ねしたいのは、NECの場合に、企画裁量型の労働者が約千人導入されたということなんですね。約千人ということは、先ほど局長がおっしゃったように、全国では六千七百四十四人というわけですから、一五%ですよ。各新聞が報じましたように、一つの企業がこれだけ大規模に一気に導入したことはかつて例がない。一体なぜこういうことになるのかということなんです。
 きょう、委員のお手元に参考資料をお届けいたしました。この一ページ目なんですが、昨年十月二十二日付の日本経済新聞です。ここにこういうふうに書かれているんですね。個人名はおいておきますけれども、担当常務の方が昨年の六月から粘り強く厚生労働省と交渉した、そして事務系ホワイトカラーの仕事は皆企画や調査を含むと説いて了解を得たというんです。
 その結果どういうことになったのかと私が調べてみましたら、NECでは、人事、財務、広報、法務、資材、こういう部門にまで裁量労働制が導入されている。
 松崎局長に聞きたいのですが、このNECと交渉したというのはあなたじゃないんですか。
松崎政府参考人 まず、私でないということは、これは記憶にございます。
 それから、こういった場合、一般的に私どもも、これは本省でもそうですし、また労働局、関係の監督署でもそうでございますけれども、労使にかかわらず、制度の仕組みでありますとか、また導入するに当たって、それからまた労働者の側からは、申告するに当たってどうすればいいかといったようないろいろな御相談がございます。
 こういった御相談につきましてはそれぞれ対応しておりまして、対応しておりますけれども、それを全部記録にとるということはございませんし、また、いろいろ個別の企業なり個人の情報でございますので、そういったものは外に出すということはしておりません。(発言する者あり)
山口(富)委員 今声がかかりましたが、身に覚えがないのかという話だったのですが、重ねてお尋ねしますが、じゃ、松崎局長じゃないということになったら、この協議に、厚生労働省はこの件については応じていないということなんですね。
松崎政府参考人 協議というか、それは労使でもありませんから、協議するような事項じゃございませんで、これは私、想像でございますけれども、あるとすれば、制度の概要というか、制度の仕組みを具体的に聞きに来た、勉強に来たということはあるかもしれませんけれども、お互いに交渉するような、協議するということは制度上あり得ないと思います。
山口(富)委員 私は、全国の一五%にも及ぶような企画型の裁量労働を導入しておいて、それを本省と相談しないで進めるなんということは考えられないと思うのです。
 これは今度の改正案にかかわる問題ですから、ちょうど委員長が代理で、委員長いらっしゃいませんけれども、改めて、これは本法案の改正案の審議にかかわりますから、この日本経済新聞が報じた経過にかかわる事実があるのかないのか、そのことを含めまして、厚生労働省から資料の提出を求めたいと思うのです。このことを理事会で取り計らっていただきたいと思います。
宮腰委員長代理 委員長に伝えます。
山口(富)委員 では、続きましてその内容の問題について入りたいのですが、この新聞報道では、事務系ホワイトカラーの仕事は皆企画や調査を含む、はっきり言いますと、企画型の対象になるんだということになるんですが、これは厚生労働省の考え方なんですか。
松崎政府参考人 企画業務型裁量労働制につきましての現行の制度でございますけれども、これは要件がございまして、きちんと書いてございまして、現行制度でございますけれども、事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務を行う、そういう労働者であって、あとは具体的に仕事のやり方でございますけれども、当該業務の遂行手段及び時間配分をみずからの裁量で決定し、使用者から具体的な指示を受けない者を対象とする制度というふうに要件が決められております。
 したがいまして、具体的な届け出があった場合には、こういった要件に合っているかどうかということをきちんとチェックいたしまして、これに該当すれば受理する、そういうことでございます。
山口(富)委員 私が聞いているのは、ホワイトカラー、事務系労働者の問題なんです。
 それで、これは労働基準局長の局長名で出されている通達で、九九年一月二十九日の通達の中では、「いわゆるホワイトカラーの業務すべてがこれに」、これにというのは企画型のことですけれども、「これに該当することとなるものではない」とはっきり言っているのですから、そのことをきちんと答弁していただきたいと思うのです。
 しかも、この日本経済新聞の報道によりますと、NECは裁量労働を全ホワイトカラーに広げることを視野に入れているというふうに言われているのですけれども、こういうことは労働基準局長の通達からいっても認められないことですが、これを確認しておきたいと思います。
松崎政府参考人 この企画業務型裁量労働といいますのは、先ほども要件を申し上げましたように、この要件にきちんとその趣旨が書いてあるわけでございまして、この趣旨に反するものは認められないということでございますから、いわゆるホワイトカラーであれば何でもかんでも入るといったことには当然ならないと思っております。
山口(富)委員 じゃ、続きまして坂口厚生大臣にお尋ねしたいのですが、配付いたしました資料の二枚目をごらんいただきたいんですけれども、これはことしの三月に閣議決定で確認されました規制改革推進三カ年計画の再改定版です。
 この下のところに下線を引いたんですけれども、「米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度を参考にしつつ、裁量性の高い業務については適用除外方式を採用することを検討する。」こういうふうになっております。これは閣議決定ですから、当然、坂口大臣も賛成されたものだというふうに思うんですけれども、この米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度というのは、ホワイトカラーの多数を労働時間の規制の適用の外に置くという考え方なんです。もしこれが日本に導入されましたら、日本の労働基準法の意味をなさないような大変なことなんですね。
 それで、確認しておきたいんですけれども、坂口大臣は、ホワイトカラー全体に裁量労働を広げ、しかも労働時間管理の適用除外にする、そういう考えをお持ちなんですか。
坂口国務大臣 いずれにしましても、大枠な話でございますから、検討するということでございますので、私もそう詳しく見ていなかったですけれども、いろいろ検討し、不適切なものは排除する、そういうことにしたいと思っております。
山口(富)委員 私は、この問題で大変危惧しておりますのは、多くの労働者を労働時間の規制の適用外に置くという考え方について、日本経団連が公式にその要求を掲げていることなんですね。昨年の二〇〇二年度の規制改革要望、これは昨年の十月十五日に発表されたものですけれども、この中でホワイトカラーエグゼンプション制度の創設を公式に求めております。
 しかも、坂口大臣に厚生労働省の検討の状況についてきちんと把握願いたいんですが、この三月に出しました閣議決定で行いました規制改革の計画について、フォローアップが内閣府から発表されております。この中では、これは労働基準法の改定、労働基準法を変えるものになる、速やかに検討するというふうになっておりますが、少なくとも日本の働いている方々、広い方々を労働時間の管理の外に置くというようなことは検討しないという点だけは、ここでお約束願いたいと思います。
坂口国務大臣 いろいろ検討しなきゃならないことは、それは検討はいたしますけれども、しかし、我々のこれまでから積み上げてまいりました法律のその範囲の中でいろいろ我々は考える、それに当てはまらないものは、我々は検討してもそれは取り上げない、こういうことでございますから、検討は、それは言われたとおりすることはしなきゃならぬというふうに思いますが、検討して皆それを採用しておるわけじゃないんですから、それこそ我々はよく考えていきたいと思っております。
山口(富)委員 私は、坂口大臣が、多くの労働者を労働時間の管理の適用外に置くということについては、その方向をとらないというふうに承っておきます。
 さて、具体的にこの法案に入りたいんですが、今度の法案では、三十八条の四の問題なんですけれども、これまで企画業務型を導入できる事業場は、事業運営上の重要な決定が行われる事業場というふうに限定されてきました。この限定を今回外すわけなんですけれども、これは前回の改正の際に、本社等の企画、調査等の非定型的な業務を担当する方々に限ることをこの裁量労働制を導入する第一の要件にするというのが政府の考え方でした。
 この点からいきますと、労基法の定めます裁量労働制の考え方の基本そのものを変えるということになるんじゃないですか。
松崎政府参考人 この企画業務型裁量労働制が採用されました際の考え方、平成十年の考え方でございますけれども、これは事業場要件、確かにおっしゃるようについてございます。事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務、こういったものが事業運営上の重要な決定が行われる事業場において行われるというふうに、はしょって言えば、本社か本社と同じような機能があるところというふうに限定して、それ以外の事業場におきましては、実態的にそういった業務が行われるとは考えにくいというふうに当時考えていたというふうに承知しています。
 しかしながら、その後の状況、確かに企業経営におきましても、いわゆる商法上の分社化ではございませんけれども、事実上の分社化といいますか、各支店なりブロックのそういった大きな支店、そういったところに権限を委譲して、その支店同士を、ブロック同士を同じようなことで競争させるといったような点、それからさらには、工場等におきましても、いろいろな生産品目についても自由に判断する機能を与えまして、そこで独立採算制のような格好でするといったようなものがふえてまいりまして、実態はかなり変わってきている。
 さらに、そういった実態に基づきまして、たしか昨年でございますけれども行いましたヒアリング調査でも、そういったものを裏づける意見があったということから、今回の見直しにおきましては、中身につきましては、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析というものは変えておりませんけれども、どこで行われるかということにつきましては、今まで限定しておりました本社それから取締役が常駐しておる大きな支社といいますか、そういった本社機能があるところに限定しなくて、本社機能はなくても実質的にそういったものをきちんとやる権限を与えられている事業場に拡大して、実際の働き方というものがうまくいくようにしようということで御提案しているところでございます。
山口(富)委員 局長は熱心にたくさんお話しになりますけれども、私の時間は限られているんですから、的確にお願いします。
 それで、今、企画業務型については、企画、立案、調査及び分析、これをすべて必要なんだという話をされました。しかし、そのことは外形上はわからないんですね、実際にやっているかどうか。ですから、この企画業務型については、それがわかるように外形上の要件としても「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」という規定が入ったんです。そういう点では、これを削除するというのは認められないというふうに私は思うんです。
 続いてもう一つ、労使委員会についてお尋ねしたいんですが、前回の改正の際の政府の答弁でも、労使委員会のチェックと監督行政のチェックする二重の仕組みがあるんだ、そういうことが盛んに強調されました。ところが、今度は労使委員会については届けをしなくていいわけですね。それから、信任の問題も、必ずしも信任を得るという要件も廃止されました。しかも、労使委員会の行う決議の要件も五分の四以上になる。いろいろな意味で労使委員会の重要性について、前回確認したものがずっと緩和されてくる。こういうやり方は、労使委員会を設けたもともとの制度に反するんじゃないですか。
松崎政府参考人 確かに、平成十年における制度創設時におきましては、全く新しい制度といったことで、特にいろいろ問題をチェックする意味で、労使委員会というものを設けて、労使委員会に非常に細かいところまでチェックをさせるということ、それからさらには、監督署に設置の段階から届け出させて、監督機関においてもチェックをするということでスタートしたと思います。
 しかしながら、実際にこれが活用されております現行まで来た段階におきましては、やはり現場をよく知っております労使委員会というものを基本に置きまして、さらに、どういう問題といいますか、不必要なものはないかということを、これは特に現場を知っております労使の代表の入っております審議会においても検討いただきまして、さらにはヒアリング等の結果、そういったものから、労働者の保護をするというところでぎりぎりのところで、ここまでは省略しても、ほかのいろいろな措置によりまして担保できるというところで、ここまで事務手続を簡素化したというものでございます。
山口(富)委員 私は、今の、不必要なという答弁については撤回していただきたいと思いますね。これは、全員の合意が多数決に変わるという点でいったら、性格が根本的に変わるんです。そういう重大な意味を今度の労使委員会の改定は持っているということを指摘して、私は次に、きょう特にお尋ねしたいのは定期報告の問題なんです。
 三十八条の四で定期報告を求めておりますが、二つ聞きたいんですが、簡潔にお願いします。
 なぜ定期報告を求めるのか。それから二つ目に、今回の改正で報告すべき事項が削除されるんですけれども、これはなぜ削除されるのか。この二つを簡潔に答えてください。
松崎政府参考人 定期報告につきましては、いわゆるこういった制度、労働時間管理の特例でございますので、そういったもののまず事業場それから対象労働者、そういったものを把握する必要から、こういった監督機関に届けるということを設けたと思います。
 それで今回は、いろいろな届け出がございますけれども、その中で、苦情の処理、それから労使委員会の開催状況、そういったものについての定期報告については省略してもいいんじゃないかと。要するに、そういったものについてはきちんと資料を残しておく義務がありますから、何らかの事態があった場合にきちんとそれは把握できる、チェックできるというところで、こういったところについては、会社側の事務の簡素化、それから我々の方の事務の簡素化、そういったものから、今度の二つについては簡素化しようというものでございます。
山口(富)委員 配付した資料をごらんいただきたいんですが、資料三なんです。
 実は、今局長がおっしゃった定期報告なんですけれども、では、その定期報告の実態は何か。この紙一枚なんです。しかもこの紙の、今度は「労働者の労働時間の状況」、それからその隣の「労働者の健康及び福祉を確保する措置の実施状況」、この二つだけになる。これだけの報告で、しかも苦情の処理まで、そして労使委員会の開催状況まで削ってしまう。これで一体、裁量労働の現場に何が起きているのか、労基署がきちんとつかむことができるんですか。
松崎政府参考人 まさに企画型の裁量労働制で懸念が一番されますところの労働時間の状況、実際の具体的な実労働時間じゃなくて、どれだけ在社時間といいますか拘束されているというか、そういった時間、そういった状況、さらには、御本人の健康問題ということから、当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況、この基本的な部分については、従来どおり監督署への定期報告に残そうということでございますので、これによりましてまずは基本的な部分は担保できるというふうに考えています。
山口(富)委員 次のページをごらんいただきたいんです。
 では、この定期報告の紙で一体あなた方は何を記入することを求めているのか。例えば労働時間、平均九時間、最長十二時間、そしてIDカードでつかんでおります、では健康確保の措置はどうか、健康診断を実施しました、それだけじゃないですか。
 しかも、私は、先日、三田の労基署を直接訪ねてまいりました。私が三田の労働基準監督署を訪ねましたのは、実は全国の企画型の裁量労働者の二割がこの労基署に集中しているからなんです。その労基署の署長さんに直接、あそこは二十事業場あるんですけれども、定期報告はどうなっているんだと確認いたしましたら、この紙一枚ですと言うんです。
 私は、あわせてNECの実際に働いている労働者に確認いたしましたが、ここに書かれておりますように、確かにIDカードが使われているそうです。これは私のカードなんですけれども、大体こういうカードですよ。ところが、厚労省は違うと思いますが、読み取りのところにこれを流すわけですね。そうしますと、一人それをやれば当然毎日四、五人はその中に入っていくというんです。それが、ここで皆さんがこれで定期報告だとおっしゃるような中身なんです。
 私は、今の裁量労働について言いますと、労働時間の状況についての把握もこれできちんとできないし、もちろん健康、福祉の問題もできない。さらに、何で苦情の処理まで除いてしまうのか。これは、いわば働いている方にとっては最後の頼みでしょう、頼みの綱ですよ。私に言わせれば、これはもっと充実すべきだ。苦情の問題でも、一体どういう苦情が上がっているのか、そういうことも含めて、充実することこそが今必要じゃありませんか。
松崎政府参考人 確かに、定期報告につきましては監督署へ行うということでございますので、監督署に行われました定期報告、こういったことに基づきまして我々の方ができる限りチェックをいたしまして、基準法違反とかそういったものがありそうな場合には、また具体的に監督指導といった手法を使いながら是正させていくということをやっております。
 さらに、具体的な中身につきましては、これは基本的に、冒頭申し上げましたように、企画型裁量労働制につきましては、一番事業場の中の実態を知っております労使委員会というものがこういったものを運営するということ、そういったことによりまして、まずはこの労使委員会というもののチェックによりましてきちんと運営されていくということを指導しているところでございます。
山口(富)委員 そうはいいましても、労使委員会の開催状況もつかまない、届け出もつかまない、そういうことを平気でやろうとしているわけでしょう。
 坂口大臣にお答え願いたいんですが、今回のこの一連の緩和措置というのは、私は、労働基準行政上、裁量労働者の問題を監督行政の視野の外に置きかねない、そういう重大な問題だというふうに思うんですが、この点はいかがですか。そうお思いになりませんか。
坂口国務大臣 それは、そんなことはありません。
 それで、先ほどあなたがおっしゃったことで、僕がちょっとわからなかったのは、そのカードを一人通したら四、五人……(山口(富)委員「通れるんです、ドアがあきますから」と呼ぶ)四、五人通れる。(山口(富)委員「では、後で説明いたします」と呼ぶ)
山口(富)委員 一人の方がカードを通せば、ドアはあいちゃうんです。そうしますと、何人もの方がそのカードを使って、自分の労働時間を記録しなくても実際には入退室ができるという状況になっているんです。
 それは余分な説明ですが、今度の問題が、裁量労働者を視野の外に置くことになりかねない問題だ。そのことは、私が資料の二枚目のところに紹介しましたことしの三月の閣議決定の中でこう言っているんですね。「将来的には、裁量労働制の対象業務の範囲についても、事業場における労使の自治にゆだねる等の方向で制度の見直しを図ることが適当であるとの考え方にも留意する。」というふうになっております。私は、これを先取りしたのが今度の労基法の改正の特に裁量労働にかかわる問題だと。こういう点では、労働基準監督行政上、裁量労働の問題についてもきちんと監督指導をやっていただきたい。このことを最後に、時間になりましたが、坂口大臣に答弁を求めます。
坂口国務大臣 いろいろの御懸念を表明されましたけれども、我々は労働者の働く条件というものを守っていく立場でありますから、その点を十分に踏まえて今後もやっていきたいと思っております。
山口(富)委員 終わります。

 

宮腰委員長代理 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 解雇ルールの問題、十八条の二の問題については、私はもう先般に質問しましたし、それから、私が主張していた内容を盛り込んで民主党の修正案が出ておりますので、私は、ぜひ、労働基準法の根本的な性格を変えるような中身を持つ今回の改正の提出ではなく、民主党が示しているような修正の中身に変えるべきだ、そして、変えないようであればあの十八条の二を削除すべきだということを改めて申し上げておいて、きょうは有期雇用の問題について質問させていただきたいと思います。
 今回の法案の論議になっております有期雇用、対象になる有期雇用の労働者というのは、一体、今全国で大体どれぐらいの数なんでしょうか。
松崎政府参考人 まず、有期雇用といいました場合、これは労働力調査で調べておりますのが、臨時雇い、日雇いということになるわけでございますけれども、この労働力調査によりますと、契約期間一年以内の労働者、これは平成十四年でございますけれども、七百二十四万人ということで、全雇用者五千三百万人ぐらいおりますので、その比率は一三・六%ということになります。
金子(哲)委員 今、日雇いも含めておっしゃったので、実態はあれですけれども、しかし、これほどの改正案を出すときに、この法律、今回改正をされて適用になるであろう労働者の数、つまり、実際に一年以内という限度をもって有期雇用の契約を結んで、それから専門型、六十歳以上であれば今まで三年という法律が適用される、少なくともこの対象になるだろうと思われる労働者というのは何人でしょうか、改めてお伺いしたい。
松崎政府参考人 済みません、まずちょっと訂正させていただきたいのは、労働力調査によりますと、平成十四年のいわゆる臨時、日雇いでございますけれども、七百二十四と言ったかもしれませんけれども、七百二十七万人でございます。
 それから、今の、これからどれだけになるかということについては、これはちょっと資料もございませんし、こういった調査はしておりませんので、何人ぐらいということはちょっと申し上げられない状況でございます。
金子(哲)委員 ない数字をこれ以上聞いても仕方のないことですけれども、しかし、今労働市場の中でこういう対象者がどれぐらいいるのか、さらにはこれがどう拡大をしていくのかとかいうことがもともとなければ、その上に立ってどう改正をし、その問題にどう対処するかということが本来なければ、数も定かでないと。そういうことは、つまり、だれを対象にしていいかわからないような状況の中に労働市場があるということも一方で言えるわけですよ。
 そうでなければ、これだけの法案を提出するならもっときっちりと現状を、少なくとも、今回の法改正の対象になるような有期雇用労働者と言われる人たちはどれぐらいいるかというのは、調べておくというか、ある程度の把握をした上で提起をしていくというのは、僕は最低のことだと思うんですよ。つまり、そのことがなければ、そういう人たちが、後ほど質問したいと思いますけれども、どういう労働状態に置かれているのか、どういうことが問題になっているのかという当たり前の、一番出発点だと思うんです。
 私は、そういう意味で、これから、派遣労働にしてもそうですけれども、有期雇用労働市場もどんどん拡大をしていくということであれば、今までの統計のやり方だけでいいとは限らないと思うんですよ。いい悪いは別にして、こういうふうに新しい雇用形態ができてきたなら、やはり政府としてそれに見合うようなしっかりとした統計をとり、実態を調査、把握して、その上に立ってその対策を提起していくということがなければならないと思います。
 その点について、今後、派遣労働者の状態も含めての、私は、将来はやはり今までの統計資料というのが、これまでこういう状態を余り考えないで、旧態依然たる調査方法、同じものを、同じ統計資料をやってきて、時々抽出的な調査をするというようなことでなくて、これは厚生労働省だけではないと思いますけれども、例えば完全失業者の問題でも、話が横へそれるようですけれども、これは、厚生労働省に本当は一番かかわりがあるのに、総務省が調べているというような矛盾があるわけですよ。僕は、厚生労働省というのは、そういうところに対しての実態というものをきっちりと今後把握する新たな統計を含めた調査を行うということを、まずその考え方をお伺いしたいと思います。
坂口国務大臣 それは、御指摘のとおりと私も思います。そのときそのとき、状況は変化していくわけでありますから、新しい状況に対応したデータというものを把握していかなきゃいけない、ここはもう御指摘のとおりと思います。
金子(哲)委員 ぜひそれは具体的に今後、なかなか難しい作業かもわからないですけれども、私たちもこの国会で、もう派遣法、労働基準法とこれだけさまざまな論議をしているわけですから、それに対応するような数字が具体的に出せるように、厚生労働省の中で、その調査方法を含めた検討をしていただきたい、そのことを今の大臣の答弁とあわせて強く要望しておきたいと思います。
松崎政府参考人 御指摘の点につきましては、やはりこれは諮問案を審議いただきました労働政策審議会におきましても、この法律の施行後の状況、そういったものをきちんと把握して、問題、トラブルとかそういったものを含めまして、実態、そういったものを把握して、必要があれば再検討しろということを言われておりますので、そういうふうにやっていきたいと思っております。
金子(哲)委員 厚生労働省が二〇〇一年に調査した数字を、いただいた調査室の資料を見ましても出ておりますけれども、今後、今度の有期雇用の期間延長などが始まれば、正社員が減少して有期労働者がふえるということが企業のアンケートの中にも言われておりますし、さらには、有期雇用を雇う企業側の理由として、特に、専門職はとりあえずおいて、今回一年から三年に拡大しようとしている有期雇用の労働者の問題ですけれども、第一番目に大きい理由は人件費の節約、五三・七%。次に、人員整理をしやすい、自分のところの都合で人員整理がやりやすいようにしたい、三二・七%。つまり、人件費の削減と、そしていつでも自分のところの都合で首切りがしやすいようにということを望んでこの制度の延長をやっているのが、企業側のいわば有期雇用を雇う理由なわけですね。
 そうしてまいりますと、逆返しをすれば、それだけ有期雇用に働く人たちは人件費の節約になるということであれば、当然、人件費部門で正規職員よりも差が出てくる。そしてまた、今後、後で問題になります雇いどめの問題にかかわるトラブルも含めて、この法案の提案のときに、いや、労働者の側にも有期雇用を求めるという希望もあるんだ、そういうことに対して今回はこたえているんだということをお話しになりましたけれども、事実は、少なくとも今度提案されている一年から三年の一般の場合の有期雇用の場合は、こういう大きな目的で実際に雇用された労働者というのは、正規雇用よりもはるかに不安定な雇用の場所に行くというふうに私は考えておりますけれども、その点についてはどうお考えですか。
松崎政府参考人 確かに、今おっしゃった二〇〇一年の調査の結果がございましたけれども、そういった事情というものももちろんあるかもしれません。
 しかしながら、これは、もちろん業務の繁閑とかそういったものを考えれば、現在の一年以内という中で実態を見てみますと、こういう更新を行っているというのはあるわけでございますけれども、短期の更新を繰り返しているということはあるわけですから、これは三年に変わっても、そういう状況では、そういう事業主側のニーズが同じであるならば、その点は変わらないんじゃないかと思っております。
 ただ、三年に延ばすことによりまして、約三分の一の方が一年よりももっと長期の雇用を望むということでありますので、そういったものにもこたえ得る。逆に言えば、そういった能力のある方、そういった希望、適性のある方、うまくいっている方については、逆に三年までの雇用が保障されるといった意味で、プラスという面が出てくるんじゃないかというふうに思っております。
金子(哲)委員 では、聞いてみますけれども、今度これをやったら、有期雇用の労働者はふえるんですか、減るんですか。
松崎政府参考人 正社員といいますか、期間の定めのない労働者と有期労働者、これをどうやって組み合わせるかというものは、やはり企業の戦略があるわけでございますから、その戦略というものががらっと変わらない限り、基本的にはそう大きな変動はないというふうに思っております。やはり今の期間労働者の中で、もっと長期の方が出てくるんじゃないかというふうに考えております。
金子(哲)委員 そのレベルで厚生労働省が考えているから、有期雇用の労働者の問題、実際上の現場で起きているさまざまな労働条件上の問題について、全く考えることができないんですよ。だったら、何のために一年を三年にやるんですか。労働者の不安を解消するためだけですか。
 これらは、例えば今回の建議に当たっても、若年定年制の不安とか、そういったことが指摘されているわけでしょう、労働側の委員からも。それが拡大しないような状況だったら、何もこんなに長時間かけてやらなくてもいいわけで、明らかに企業の側が、さっき言いましたように、この大変厳しい経営環境の中で、そういう目的を持ってこういうことを要望しているから、日経連を含めた経営側の明らかな規制緩和のためにこれをやることは明らかじゃないですか。そのことをおいて、一般的にそういう話じゃないじゃないですか。
 だから大臣、こういう今のような局長の答弁だから、今回の問題について、一年を三年、三年を五年にも延ばすのにもかかわらず、労働者の側に立った改正なんということは一つもないじゃないですか。検討された形跡がないじゃないですか。どこを検討されたか、ではそれを教えてください。
松崎政府参考人 特に、有期雇用といいますか、今回の大きな三点がございますけれども、私どもとしては、例えば解雇ルールの明確化といったもの、そういったものにつきましても、全体としては労働者の側に立ったものというふうに考えておりますし、全体としてはそう思っておりますが、また有期雇用につきましても、今現在ございますような指針、そういったものをより充実したものとして、実質的に、雇いどめ等におきますトラブルの防止というものに、より一層、現場におきまして我々が力を入れられるような仕組みにしているというふうに考えております。
金子(哲)委員 きょうは雇用均等局長お見えですからお伺いします。
 三年に、それから五年に延長されますけれども、この有期雇用の問題で、育児休業の問題というのはこれまでも国会でも論議になり、いろいろ検討されてきたと思いますけれども、今回の有期雇用の期間延長の際に、この問題に関して、雇用均等・児童家庭局として、育児休業という問題にかかわってどのような検討をされましたか。
岩田政府参考人 委員御案内のとおりだと思いますが、育児休業は、育児を理由として……(金子(哲)委員「検討されたかどうかだけでいいです」と呼ぶ)まず、育児休業の適用関係の御説明をしたいと思ったんですけれども……(金子(哲)委員「いいです、検討されたかどうかだけでいいです」と呼ぶ)はい。
 雇用期間の定めのある雇用者については……
金子(哲)委員 検討されたかどうかだけ返事してください。中身は全然聞いていない。中身は私の方にメモがありますから結構です。検討されたかどうか。今回の有期雇用の期間延長に伴って、あなたの局では育児休業の問題にかかわるかもわからないということで検討されたかどうかということを聞いているだけで、検討されているかどうか、イエスかノーかだけお答えください。
岩田政府参考人 本年四月から、労働政策審議会の雇用均等分科会で育児休業法の見直しの審議が始まっております。まだ始まったばかりで、二回ほどの議論でございますので、論点は絞られておりませんけれども、今回、労働基準法制がこういう形で改正、成立するということになれば、そのことも検討の対象から排除されるものではない、そのことも含めた全般的な育児・介護休業法の見直しの議論になるというふうに思っております。
金子(哲)委員 今局長がおっしゃったのは四月からですね。だから、この有期雇用の問題を検討している段階で、期間が延長されるからあなたの局で検討を始めたということはないわけですね。
 一般的な育児休業の問題としてこの四月から検討が始まっている中の一つには、それはもちろん、今度有期雇用の期間が延長になったということはあると思いますけれども、では、労働基準局からは、あなたの局に対して、今度こういう期間延長になるから、女性労働にとっては大変な問題だから検討してほしい、そのような連絡はありましたか。
岩田政府参考人 法律の改正案を事務的に最終的に詰めていく過程で、関係局には協議がございますので、どういう問題についてどういう目的のために改正をされているかという情報は常にもちろん持っておりました。私ども、育児・介護休業法施行の責任のある局でございますので、その観点から、関係ある制度の改正なりあるいは育児・介護休業法の施行状況を把握しつつ、何が問題かというのはもちろん日常的に勉強しておりますので、そういう意味では、常に問題意識としては持っているつもりです。
金子(哲)委員 ではお伺いしますけれども、今の時点で局長自身は、三年間、五年間に延長することに対して、現行の育児休業法だけで十分だとお考えですか、それとも一定の改正が必要だとお考えですか。
    〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
岩田政府参考人 私、局長として答弁をさせていただいておりますので、個人の考えということを申し上げるわけには残念ながらまいらないと思います。
 先ほど申し上げましたように、この問題については、審議会での審議も、実質的な審議はまだ始まっておりませんで、さまざまなお立場の方からさまざまな御意見を聞きながら、最終的には大臣と御相談して方針を確定するということだと思っております。
金子(哲)委員 明らかに女性の労働者にとって、この有期雇用での労働が、今期限が定められたら、基本的には対象になっていない。しかし、それは一年と三年だ。明らかに三年とか五年とかかなり長期にわたってこの有期雇用の期間が延長されるという事実を見ながら、それについて、育児休業上の問題を全く何にも感じない、だから皆さんの御意見を聞かなきゃならない、これが雇用均等の待遇を考えていらっしゃる局の考え方なんですよ。本来ならばこれだけ女性の育児休業にも問題があるであろうと考えられることに対して、今回の法改正の論議過程の中で何の意見も言えない、言っていない。実際、それが今の実態なんですよ。結局、そのこと自身は全く検討していないじゃないですか。
 個人の意見じゃないですよ。局長としての考え方を聞いているわけで、長く携わって、それがやはり考えなきゃいけないことだと思って提起をされるのか、いや、とにかく皆さんの御意見を聞いて、必要だと言われればそれでやりますということなのか、そこのことを一番現場に近いところにいらっしゃる局長だからお聞きをしているわけですよ。
 私が指摘しているのは、今回これほどに有期雇用の一年、三年という延長の問題が出てきたときに、厚生労働省全体として労働者の側に立って本当に検討されただろうか。この側面が全く見えないじゃないですか。本当にその気持ちがあれば、厚生労働省の一番そういう立場から、企業の側の立場ではなくて、女性が働きやすい職場を考えるという立場から考えれば、ここに問題意識が起こって普通でしょう。つまり、そのことが厚生労働省の中でも何にも問題にならずに、今回こういうものが提出をされている。だから私は言うんですよ、不安定雇用を増大しながら、それに対して厚生労働省の側に問題があると。
 では、育児休業の問題はいつ結論が出るんですか。この法案が通ったら、実際にはもうスタートしてしまうじゃないですか。そして、実際にはそれの対象になる人たちが出てきている。では、いつまでに結論を出して、いつ法案を提出しようと思っておられるんですか。
岩田政府参考人 実は、育児・介護休業法は十三年の秋の臨時国会で改正をしていただきました。そして、施行になりましたのは平成十四年の四月からですから、そういう意味では、法律改正、国会で御審議の上、成立させていただいてまだ一年しかたたないという状況ではございます。
 しかしながら、子育てと仕事の両立を図る対策というのは、今、次世代支援といいましょうか、少子化対策という観点からも非常に重要な課題というふうになっておりますので、審議会で審議をいただいて結論を得ることができれば、年末までには結論をいただきたいというふうには念頭に置いて、審議会を運営したいと思っております。
金子(哲)委員 中途解約の問題でお伺いをしたいんですけれども、今度期間が延びますから、中途解約の問題については、一定に労働者側からも解約できるような状況をルール化していくということを通じて、トラブルをなくすべきだと私は考えておりますけれども、その点についてお考えをお聞きします。
松崎政府参考人 まずは中途解約でございますけれども、これは、原則としましては民法の方に書いてございまして、期間の定めのある場合であっても、やむを得ない事由がある場合には解除をなすことができるというふうになっております。
 また、労働基準法レベルにおきましても、当初示しました労働条件が違うといったような場合、それから賃金不払いといったような法律違反の問題、そういったものがあれば、労働者の側から期間途中であっても解約できるというふうなことになっておりますが、全体としていつでも解除できるといったルール化につきましては、これは民法におきます双務契約といいますか、双方を拘束するといった原則の修正ということにもなりかねないわけでございまして、やはりちょっと慎重な検討が要るんではないかというふうに考えています。
金子(哲)委員 この問題は労働基準法の第五条で言う強制労働の禁止ともかかわると思うんですけれども、三年という期間を眺める、五年という期間を眺めるということになれば、やはり中途で解約をしたいということはこれから当然発生すると思うんです。
 特に、今の雇用状況の中ですと、もし仮に三年ですと、失業者の皆さん、雇用保険も切れる、正規の雇用が今は見つからない、では三年でもとりあえずいこう、こういうことは往々にしてあるわけです。途中で新しいちゃんとした職場、正規雇用のところが見つかったというようなことはこれから発生してくると思うんですよ。
 今の正当な事由といったら、例えば新しい職場を見つけたというようなことはその中に入るんですか。
松崎政府参考人 正当なといいますか、やむを得ない事由があるときはというふうに書いてございまして、いろいろな本を調べますと、やむを得ない事情というのが、自分の病気とか親の介護をせねばいかぬとかそういった理由で、何かもっといい職場があったから、もっと条件のいいところがあったからというのは、どうもそれには、そういった例は余り見ておりません。したがって、それは難しいのかな、そんな気がいたします。
金子(哲)委員 それじゃ、今局長が言われたことの、やむを得ない事情といったら、病気になったとか家族がどうにもならなかったといったら、それはもうごく限られて、実質上、労働者の側からの中途解約はできないということを認めているようなものじゃないですか。
 だから、余りにも今の解釈ではそういう限定されたことだけだから、三年も延びるんであれば、そういう事態、私が言ったような事態というのは当然想定されるわけですから、今の雇用状況を考えたら、私が例示したようなことは通常で考えられることだと思うんですよ。それなのに、今の局長の答弁だったら、新しい職場を見つけたというのはこの契約解除の理由にならないということになると、これはそれこそ三年間拘束されてしまうわけですよ。そうじゃないですか。
松崎政府参考人 確かに、民法で言っておりますやむを得ない事情というのは、そう、こうやって何でもかんでも言えばいいというものじゃないと思います。したがって、もっといい条件のところがあったというような場合には難しいのかなという気はいたしますけれども、ただ、拘束になるかといった場合、一つは、嫌がる者、そういった者を拘束して働かせるといった場合、心理的圧迫を加えて働かせるというのもこれは強制労働になるわけでございます。したがって、具体的に、実際に嫌がる者を働かせるということになると、これは基準法で罰せられます。
 ただ、問題は損害賠償だと思います。これは契約違反というか債務不履行による損害賠償となりますけれども、例えば、五年契約、専門職の方で非常に高い契約金を払い、高い金をかけて、例えば海外留学を一年間させてやったといった場合の契約違反による損害賠償と、今御議論されております三年に延びるという一般の方の損害賠償、債務不履行によってどれだけ損害が出たかという立証、これは現実問題としましては非常に難しいと思います。
 そういったことで、現在のところ、一年ではございますけれども、実際の裁判例もありませんし、また、私どもの個別労使紛争の相談の事例の中にも、そういった損害賠償、訴えられて困っているといったような、いわゆる債務賠償のようなことは私ども余り把握しておりませんけれども、一般の労働者の方について相談事例といったものもないということで、そこのところは、現実問題としてはなかなか起こり得ないのかなという気がしております。
金子(哲)委員 では、二つ、もう一遍確認しますけれども、もし本人が新しい職場を見つけたということでは中途解約できるのかできないのか。いいですか。それと、もう一つ問題は、現実に今トラブルになっているのは、賠償を直接本当に請求するかどうかは別にして、途中でやめたいと言ったときには、事実上、おまえ、そういうことを言うんなら二カ月分ぐらいの給料は払わないぞ、それぐらい賠償しろというようなおどしが現実的に職場の中である。それはもう現実的にトラブル相談として出てきているわけです。こういうようなことは許されるんですか。その二つをとにかく明確に答えてください。
松崎政府参考人 まず、前段でございますけれども、これは、基本的には民事裁判の話になりますので、裁判所が判断する話、具体的にどうかという状況、そういったもので判断すると思います。ただ、私は、今までの本の解説書等の例からいって当たらないんじゃないのかなと、これはちょっと個人的な感想と言っては申しわけありませんけれども、申し上げたところでございます。
 それから次、後段でございますけれども、実際に強制労働させれば違反になりますし、また賠償させるぞといっておどかして労働させれば、これも強制労働になります。また逆に、さらに、賠償を取るといって賠償を決めておいて賠償を強制的に取る、賃金をピンはねするといったことになれば、これは賠償予定の禁止というのがありますから、こういったものも基準法の違反になるといったことがあります。
 ですから、残るのは、首に縄をつけて働かせられませんから、あとは、本人がもうやめたといって出てこないといったときに、債務不履行でどれだけ損害があったかということを証拠を持って裁判所に訴えてやるかということになろうかと思うわけでございますので、そこのところはなかなか実例として、それだけ手間暇をかけて会社の方がやるかな、実際にもそういった、そんなあほらしいことはしないという例はいっぱい聞きますので、そう思っている、そうじゃないかというふうに申し上げたところでございます。
金子(哲)委員 今局長の答弁を聞いていると、物すごく無責任だと私は思いますよ。例えば新しい職場を見つけた場合のケース、私は具体的に聞いているわけで、そして起こり得るケースとして聞いているわけで、そうしたら、私の個人的な見解だとか、いやこう思うけれどもこうかもわからない。だから、そういうあいまいな行政でやられたら、労働者はどこに相談に行くんですか、このとき。
 事実、こういうことが起こり得ることを何ら検討していないじゃないですか。そういう検討もないままに、先ほどの局長と同じじゃないですか。だから、厚生労働省全体で何を検討したんですか。――いやいや、あなたの答弁にもう具体的にあらわれているじゃないですか、私はこう思うかもわからぬ、いや私の責任ではここまでは言えないとか。では、だれが責任を持って、そういう相談を受けたときに労働基準監督署の人が言えるんですか。こんなあいまいなことを答弁して、この法律を通してくれと。そして、トラブルが起これば、そのときはそのとき、裁判をやれ。そんな有期雇用の労働者が裁判を起こせますか、本当に安い賃金で。現実の実態をもっと見てほしいと思いますよ。
 そんないいかげんな、いや手を挙げなくて結構です、こんないいかげんなことで法案を出して、労働大臣、もう時間が来ているようなので、あとの問題も指摘をしたいと思いますけれども、私はこの冒頭にも申し上げましたけれども、今度の労働基準法の改正の問題で、解雇ルールのところはいろいろあったかもわかりませんよ。しかし、有期雇用の問題などについて一体どのレベルでどの程度、労働者の問題として監督官庁としての労働基準局がやられたか。トラブルが起こるかもわからない問題について、今のようなあいまいな答弁しかできないような状況だったら、真剣に考えたとは思えないじゃないですか。そして、不安定雇用が、派遣労働、今回の有期雇用、派遣労働市場が、つまり不安定雇用の労働市場が拡大する可能性が明らかになっている法案を提出しながら、そのことに対応した労働者保護の観点が全くないわけですよ。
 大きな問題は、大体、この法律、問題なのは、我々は派遣法のときは職業安定局に質問しなきゃいけないんですよ。今度の有期雇用は労働基準局、そして育児休業、パートの問題を聞こうと思ったらまた別の局なんですよ。結局のところ、どこも責任を持って自分たちのところから、そうだ、不安定雇用労働者がふえるから、ここはこういうふうにうちの局から進んでやろうというようなことがないですよ。うちからやるのはやめておこうと。ということになると、大臣、やはり厚生労働省総体として、派遣労働は派遣労働、有期雇用は有期雇用、パートはパートと別々に検討するんではなくて、この不安定な雇用の問題に対して、均等処遇問題を含めた、抜本的にどうあるべきかということを真剣に検討していくということをやらなきゃ、結局、我々がこうやって質問しても、あいまいな答えだけだ。
 大臣、これだけの労働者の働きざまに対して変える中身を盛ってきた法案を次々と出しておきながら、それを全体として統括する部局が今ないんですよ。大臣が責任を持ってそういうものを省内につくっていただかなければ、外部ということでなくて、まず内部で問題の洗い出しをしていただいて、そしてそれを真剣に検討を始めていく、そのことを私はぜひやっていただきたいと思いますけれども、大臣、その点についてぜひ明快な御答弁をお願いします。
坂口国務大臣 どの法律を出すにいたしましても、同じ厚生労働省の中で関係するところは多いわけでありますから、それはやっているんですよ。やっている。いろいろそれは関係局によりましてやっているんです。
 やっているけれども、ここで質問されて、それをすべて声に出して言えないことだってあるじゃないですか。それはやっているんです。それはまたやらなきゃいけないし、そうでないと厚生省と労働省と一緒になった値打ちもないんだし、また、同じ労働省なら労働省の中でも局によって違うということを言いましたが、それはそれぞれの持ち分、持ち分ありますけれども、それはやっているんです。やっていますから、今おっしゃったことに対しましても、私も半分理解しております。半分理解している。
 だから、そこをどうするかということはまた考えますから、そういう問題も省庁の中ではやっているということだけは理解してほしい。
金子(哲)委員 時間になりましたので終わりますけれども、今、半分理解されたのなら……
中山委員長 もう時間ですから、終わってください。
金子(哲)委員 もう終わります、質問はありません。
 ぜひその方向をきっちりと、厚生労働省の内部としてしっかりと検討していただきたいということを最後に申し上げて、終わります。
中山委員長 次回は、来る六月三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時五十一分散会