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○中山委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
去る五月二十八日、鍵田節哉君外二名から提出されました労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。
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○中山委員長 この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第四部長石木俊治君、厚生労働省労働基準局長松崎朗君及び雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍵田節哉君。
○鍵田委員 おはようございます。民主党・無所属クラブの鍵田でございます。
昨日の参考人質疑も含めまして、きょうで五回目の審議ということになるわけでございます。当初、私も、この政府案の内容を見まして、怒りの余りに労働基準局なんかは要らないというような発言をいたしまして、大変失礼な言葉もあったかもわかりませんが、その後の審議の中でいろいろな問題点が浮き彫りにされまして、それらを通じて、やはり、労働基準局のあり方、また厚生労働省のあり方、さらには労働基準法のあり方、こういうものについての審議が深まり、そしてこれからも、本当に弱い立場にある個人の労働者の保護をする、そういうことにふさわしい法律にしていく、こういう道筋が見えてきたのではないかというふうに思います。
まだまだ十分満足できる内容ではございませんけれども、そういう道筋をつくりながら、これからますます労働者の方から期待をされる、また頼りにされる厚生労働省であり労働基準局である、また頼りにされる労働基準法になるようにこれからも努力していく、そういう一つの礎が何とかできたのではないかというふうに思っております。
そういう意味から、それを確認するための質疑を幾つかさせていただき、また幾つかこれからの労働行政のあり方につきまして提言もさせていただきたい、こう思っておる次第でございます。
まず最初に、解雇規定が今回初めて労働基準法に明文化されることになったわけでございます。政府案では、判例で確立された解雇権濫用法理を足しも引きもしない内容であるということで説明をいただいてきたのでございますけれども、その内容の評価は別にいたしまして、安易な解雇あるいは不当な解雇を予防する効果があるのだということで説明をいただいてきたわけでございますけれども、今回のように解雇規定が労基法に明文化される、そのことによってこれを根拠規定として、行政が具体的に使用者に対してどのような指導を行おうとされているのかということについてまずお聞きをしたいと思います。
○鴨下副大臣 おはようございます。お答えを申し上げます。
先生がおっしゃるように、解雇権の濫用法理そのものが実際に労使当事者にほとんど知られていないというのが現状でありまして、特に、解雇制限をする法律があるので、それさえ守れば解雇できる、こういうようなことを言っている使用者が約七割、そして労働者が六六%というような調査もあるくらいでありまして、そういう意味で、今回御審議いただいている解雇ルールをいかに多くの方々に知っていただくかは極めて重要なことだろうと思います。
厚生労働省としましては、これはリーフレット等を作成するのはもちろんでありますけれども、さらに、都道府県の労働局を初めとする関係の機関に、解雇権濫用法理を確立した最高裁の判決を初めとする判例を周知していただく、こういうようなことだとか、また、例えば集団指導等のあらゆる機会をとらえまして、この規定の周知を図っていく、こういうようなことで、先生御指摘の規定の趣旨について多くの使用者の皆様に理解をしていただいて、安易な解雇や不当な解雇がなされないように、こういうようなことに努めてまいりたい、かように考えております。
○鍵田委員 きょう成立します内容について周知徹底がされますように、ぜひともお願いをしたいと思います。
それから、今回、二十二条の中で解雇理由の証明ということが出ておりますが、衆議院の調査室の資料で見ましても、本条の効果として、使用者が解雇理由の文書による明示を拒否した場合には、実体法上の解雇の客観的かつ合理的な理由を欠くものとみなされることになろう、また、一たん文書で明示した解雇理由を後から変えたりつけ加えたりすることが制限されることになろうというふうに説明されておるのですが、これにつきましては、厚生労働省としましてもそのような理解でよろしいんでしょうか。
○松崎政府参考人 今御質問の改正案の二十二条二項でございますけれども、ここは、文章にございますように、労働者が解雇の理由についての証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと規定してございます。したがいまして、ほかの労働基準法におきます多くの規定と同じように、刑罰をもって使用者に一定の行為をすることあるいはしないことを義務づけているという、行為を強制するといった条文になっております。したがいまして、この規定からは、直接的には、御指摘のような法律効果は発生しないんじゃないかというふうに考えております。
しかしながら、今御質問のように、使用者が解雇理由を明示しなかった場合でございますとか、また、一たん明示をいたしました解雇の理由、そういったものを後で変更したといったような場合、結局、解雇の効力というものは、もう御案内のように民事裁判において判断されるわけでございますけれども、そういった場合におきまして、やはりその解雇の合理性の判断をかなり否定する有力な要素にはなるんじゃないかというふうに考えております。
○鍵田委員 それじゃ次に、二十二条と八十九条の持っております効果につきましてお聞きをしたいというふうに思います。
今回の改正案で、退職に関する事項の中に解雇の事由を含むことが明記をされました。解雇された労働者が、第二十二条の規定に基づいて、使用者から解雇の理由についての証明書を交付された場合、当該証明書に記載されている解雇理由と当該企業の就業規則に記載されている解雇事由とが合致しているか否かについて労働基準監督署はチェックをすることができる、そのことが本改正案の持つ大きな効果と考えておりますけれども、これは間違いないでしょうか。
○松崎政府参考人 就業規則に解雇事由をはっきり明示して記載することを法律上義務づけるという点、さらに、今御質問ございましたように、二十二条二項で解雇の理由というものを証明書として交付するという点、こういった点があるわけでございますけれども、こういったことに絡みます解雇の効力といいますか、そういったものにつきましては、先ほど御説明させていただきましたように、最終的には民事裁判で判断されるわけでございますけれども、これまでの裁判を見てまいりますと、就業規則の問題がまずございますけれども、ほとんどすべての場合、就業規則に記載されました解雇事由、そういったものについて、これはやはり当該就業規則で解雇の事由を限定したというものと解される場合がほとんどでございます。したがいまして、そういった場合には、当然、その解雇事由に該当しない場合には当該解雇は無効ということで判断されている裁判がほとんどでございます。したがいまして、証明書に記載されております解雇の理由、これが就業規則の解雇事由に該当しないということが明らかな場合には、裁判でございますけれども、今申し上げましたような裁判例、そういったものの傾向を考えてみますれば、当然その解雇というものは無効と判断される可能性が非常に高いというふうに思われます。
それで、監督署の窓口でございますけれども、民事上の問題でございますので、監督署の窓口におきまして権限的にこうだああだと言うことは職務上できないわけでございますけれども、実際問題として、労働者の方からの相談でございますとか、使用者の方からの相談もございます。そういった場合がございますので、今申し上げました裁判例の周知徹底、こういうものに努めまして、使用者それから労働者の理解というものを深めていきたいと思っております。
なお、具体的に、個別の、実際に起きて今紛争になっている問題、そういったものについての御相談があった場合には、これは、御案内のように、個別労働紛争解決促進制度というものがございますので、そういった制度を活用しながら迅速な解決というものを図っていきたいというふうに考えています。
○鍵田委員 すべての事案が訴訟によって解決するということではないわけですから、今おっしゃられたように、個別紛争処理で処理する場合にもそのような姿勢で指導するということをぜひともお願いをしておきたいと思います。
それから、有期雇用の問題について質疑をいたしますが、若年定年制とか常用代替をもたらすことのないように、また、不安定雇用労働者を増大させるのではないかというような質問が数多く出ておりました。昨日の参考人質疑の中でも出ておりました。
こういう課題が、例えばパートの場合でも、三年で雇われるというふうなことはまず考えられないわけでございまして、一年という契約期間でありましても、三カ月単位とか六カ月単位で細切れで更新が行われているというふうな事例がたくさんあるわけでございまして、そういう意味では、例えばフランスでありますとか、その他、フィンランドやギリシャ、イタリア、スペイン、スウェーデンというふうなところでも、これらの有期雇用につきましては有期雇用とするべき理由の明示を行うことが大切だと。すなわち、入り口で一定の縛りをすることが必要なのではないかというふうに思いますけれども、それらのことにつきまして、今後の課題としてどのようにお考えになっているのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
○松崎政府参考人 有期労働契約を締結する場合に、有期契約とするべき理由を明示することを使用者に義務づけるということでございますけれども、これは、基本的な労働条件、賃金でございますとか労働時間、そういったものにつきましては、労働契約の締結に際しまして、労働者に明示しなければならないということを現行法でも確保しているところでございます。
そういった中で、この有期労働契約の場合に限りまして、雇い入れの際に、その理由の明示というものを労働基準法の中で義務づけるということについては、なかなか御議論がまとまっておらないわけでございまして、やはり慎重な検討が必要じゃないかというふうに考えております。
いずれにしましても、私どもとしましては、委員の御指摘を踏まえながら、有期労働契約の果たす役割、そういったものを含めまして、有期労働契約のあり方全般につきまして、今後引き続き検討をしていきたいというふうに考えています。
○鍵田委員 ぜひとも検討のほど、よろしくお願いをしたいと思います。
それから、有期雇用の件で、引き続いて。
一定の期間を超えた場合のみなし規定の問題についても、たくさんの方々から質疑がございました。既に一定の期間を経過した労働者については、期間を定めたということに合理的な根拠はなくなったということになるわけでありますから、そういう場合には、みなし規定によって、期間を定めた労働者ではなくなるということが必要なのではないかというふうに考えております。
それからもう一点。均等待遇の問題で、お答えを一緒にいただきたいんですけれども。
有期雇用の労働者というのは、やはりどうしても代替のような形で安い賃金で雇用しようというふうなことが起こってくるわけでございまして、一般の労働者とは現実に労働条件に大きな格差があるということでございまして、審議会の中でも均等待遇というふうなことが盛んに議論をされておりますけれども、今後、これらの問題につきましては、審議会などで具体的にどのような議論をされようとしているのか、そして、本当に均等待遇についての実現を図るための施策が講じられるのかどうか、それらにつきましてお答えをいただきたいと思います。
○松崎政府参考人 二点御質問がございまして、まず一点目の、有期労働契約の更新に際して、一定期間が過ぎた場合、期間の定めのない契約とみなすということでございますけれども、現在の取り扱いといいますか、裁判上の取り扱いをちょっと御説明させていただきますと、現在では、有期労働契約が反復更新されまして、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合などで、更新拒否という問題で扱われているわけでございますけれども、この契約更新の拒否というものには、解雇に関する法理が類推適用されるといった判例が定着しているというふうに考えています。
これは、御案内のように、昭和四十九年のいわゆる東芝柳町工場事件の最高裁判決でございますけれども、こういったものがございまして、これ以降、こういった考え方が定着しているというふうに私ども理解しております。
なお、こういった判例でも、今申し上げましたように、更新拒否には解雇に関する法理が類推適用という考え方でございますけれども、こういった考え方が確立する前は、いろいろございまして、御案内のように、有期労働契約が反復更新された場合には期間の定めのない契約に転化するという、いわゆる転化説という言葉を使ったりしますけれども、転化説をとった判決もあったわけでございますけれども、現在では、転化説ではなくて、今申し上げましたように、解雇に関する法理は類推適用という格好で定着しているというふうに考えておりまして、具体的にどういった場合に類推適用されるかということは、一律に、更新の回数だけとか、また期間の長さだけとかいうものではなくて、やはり個別的にかなり詳しく見て判断されているということになっております。
したがいまして、御指摘のように、一定期間以上契約が継続した場合、反復更新された場合といったものにつきまして期間の定めのない契約とみなすということにつきましては、やはり、基本的には契約の自由の民法原則の修正ということになることに加えまして、今申し上げましたいわゆる転化説を否定しております現在の判例法理とはちょっと方向が違うんじゃないかということで、これはなかなか直ちにということにはいかないかと思っております。
いずれにしましても、こういった問題につきましては、私ども問題点を整理いたしまして、先ほど申し上げましたこの有期労働契約のあり方全般、この中で、今後も引き続き検討していきたいというふうに考えております。
また、二点目の均等待遇でございますけれども、この均等待遇という問題は、確かに、御指摘のように、審議会でもいろいろな御意見等ございました。ただ、この均等待遇につきましては、有期契約の労働者というのは、企業の中でいろいろな仕事をしている。中枢を担うものから、補助的な業務とか、いろいろなものがありまして、それぞれが人事労務管理上いろいろな位置づけをされているといった現状がございます。
そういったことから、やはり、均等待遇というものを一律に図っていくというのは、こういった状況を考えるとなかなか困難ではないかなというふうに考えておりますが、これは繰り返しになりますけれども、審議会の中でも御議論がございましたように、今後の検討課題ではないかということでございますので、先ほど申し上げました有期労働契約のあり方全般について、今後も引き続き検討していくということをしていきたいというふうに考えております。
○鍵田委員 今後、いろいろテクニカルな課題もあろうかと思いますから、労働条件分科会などでも十分な議論をしていただきたいと思っておりますし、均等待遇がとられるような措置につきまして、十分な検討をお願いしたいと思います。
それから、トラブルがやはりたくさん起こってくるんではないかというふうに思いますが、このトラブルの解決ということにつきましても、実際に労働条件分科会に報告をするということになっておるように聞いておりますけれども、これは、どのぐらいの時期が経過したときに、これらをまとめて議論をされようとしておるのか。
このトラブルの把握を踏まえて、雇用形態のあり方が就業構造全体に及ぼす影響を考慮しつつ、今後引き続き検討していくということが適当ということで、建議の方でもされておるわけでございまして、それらにつきまして、今後引き続いて論議をしていただくということにつきましても、お答えをいただきたいと思います。
○松崎政府参考人 ただいま御質問のように、昨年末の労働政策審議会の建議におきまして、「有期労働契約の期間の上限を延長した場合において、トラブルの発生について状況を把握し、当分科会に報告することとされたい。」また、全般的なものとして、先ほど御質問の中にございましたように、こういった状況把握を踏まえて、雇用形態のあり方が就業構造全体に及ぼす影響を考慮しつつ、引き続き検討していくことが適当であるというふうに建議されております。
したがいまして、私ども、改正法の施行後トラブルが発生しないように、いろいろ基準等をつくりまして指導をしていくわけでございますけれども、こういったトラブルにつきましては、例えば、第一線でございます労働基準監督署に寄せられます相談でありますとかそこにおける指導、さらに個別労働問題の紛争処理、こういったものの状況、それから、各都道府県にございます労働局でありますとか労働基準監督署、そういったところにおきまして、今申し上げましたような業務において把握する方法など、ほかにどういう方法があるか、また検討させていただきたいと思っておりますけれども、いろいろな手段により把握した上で審議会の方に報告していきたいということを考えておりまして、施行後何カ月以内とかいったことはまだこの段階では言えませんで、ある程度その事例というものが集積された段階で御報告させていただきたいというふうに考えております。
○鍵田委員 一年なり二年なりの状況を見ながら検討するということのようにとらえていいでしょうか。ではそういうことで、できるだけ速やかにそれらの状況を把握しながら、今後の取り組みについて十分検討をお願いしたいと思います。
次に、裁量労働の問題とそれにかかわりますサービス残業といいますか、不払い残業というんですか、それらにつきましてお聞きをしていきたいというふうに思います。
まず、裁量労働の問題につきましては、平成十年の改正のときには事業場を限定して、本社機能ぐらいを対象としようということにしておったんですが、今回はその対象事業場というものを大幅に拡大しようということになっておるわけでございまして、そういうことになってまいりますと、それぞれのそういう企画業務型の裁量労働の場におきますサービス残業、いわゆる賃金不払い残業を避けるための裁量労働の採用ということにならないかどうかという懸念があるわけでございます。
今後どういう範囲まで裁量労働が広がっていくということを見込んでやられているのか、またそこまでやらなきゃならないという根拠はどこにあるのかというようなことにつきまして、お考えをお聞きしたいと思います。
○松崎政府参考人 特に裁量労働制の中の企画型のものだと思いますけれども、これにつきましては、平成十四年、昨年末現在でございますけれども、導入状況を申し上げますと、事業場の数で百八十二、適用労働者の数で六千七百四十四名という、まだまだ非常に小規模となっておるところでございます。
また、これから、この企画型の裁量労働制をどのくらいを目指すかとか、どのくらいになるかということにつきましては、確かに、今回お願いしている改正におきまして要件なり手続を若干緩和するということでございますので、ある程度もうちょっとふえるとは思いますけれども、やはり基本的には、企画業務型の裁量労働制の趣旨でございますとか基本的な枠組み、これを変えるものではございませんので、これが無限定にといいますか、格段に拡大するといったようなことはないんじゃないかと考えております。
また、今回の拡大といいますか要件緩和、そういったものの趣旨でございますけれども、これはもう御案内のように、平成十年にこの制度ができたわけでございますけれども、これは、基本的には仕事の進め方それから時間配分、そういったものに関して、やはり労働者一人一人が主体性を持って働きたいという意識が高まってきている、こういったものは、私どもの立場からしても、やはり主体的に働くということで、会社人間ではなくて、自分でもって家庭、地域それから職場、そういったものの生活を調和を持ったものとしていけるということの一つの入り口になるんじゃないかという期待といいますか、そういったものにも資するというふうにも考えられるわけでございます。
また、企業の側から、企業活動におきましても、やはり企業活動の企画の中枢、そういったところにある労働者の方にとっては、時間を管理されるというよりも、創造的な能力を十分に発揮するという上で、自分で管理してやっていただいた方が効果が上がるといいますか、中身がいいものになるといったようなことから、労使双方といいますか、また私どもを含めた各方面からのニーズがあってこういうものができたというふうに考えております。
今回の見直しにつきましても、こういった趣旨というものは変わっておりませんで、こういった制度がより有効に機能するようにということで、特に事業場要件のところにつきましては、やはりいろいろな我が国の企業活動といいますか、そういったものの現状を見据えまして、ぎりぎりのところでこの要件なり手続を緩和していこうというものでございます。
その場合に、先ほども申し上げましたように、制度の基本的な考え方、枠組み、そういったものは変えておりませんので、基本的に労使委員会の中できちっとやっていただくということを通じまして、一人一人の労働者にとって不利益にならないようにということが守られていくのではないかというふうに考えております。
○鍵田委員 この裁量労働というものは、先ほども申し上げましたけれども、企画業務型のところで裁量労働がどんどん広がって、そして不払い残業隠しになったり、それから過労死のような問題が起こってきたりというようなことが懸念されておるわけでございまして、実際にそれぞれの企業でも多くの不払い残業なんかが現在指摘されておる、そういう実態からいたしましても、十分な監督ができるのかという懸念があるわけでございまして、現在の態勢で実際に監督官の臨検でありますとか、そういう監督行政が適切に行えるのかどうかということにつきまして、どのようにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
○松崎政府参考人 企画業務型の裁量労働制に限りませんで、やはり働く人の命と健康を守るということは、おっしゃった労働基準行政の最大の目的でございます。したがいまして、全般的に、過労死を中心としました働き過ぎといいますか、過重労働防止対策ということを進めておりまして、これは第一線におきましても重点的に行っているわけでございます。
そういった中で、企画業務型の裁量労働制につきましても、これがやはり自己管理ということになりますので、使用者が本人にすべて任せきりということになっては困りますので、やはりきちんと使用者としての責任を果たしてもらわなければいけないということで、この企画業務型につきましても、御案内のように、健康・福祉確保措置というものを労使委員会で決議し、実施していただくということにしております。
その前提として、労働時間の状況等の勤務状況についても使用者がきちんと把握するということにしていただいているわけでございまして、こういった制度でございますので、監督指導を行う場合におきましても、こういった内容を決めております指針、その中身につきましてきちんとチェックをし、それに違反しないように指導し、特に労働者一人一人が自己管理によって働き過ぎにならないようにということに努力していきたいというふうに考えております。
○鍵田委員 一人一人の労働者では十分自己管理ができないという職場の実態が数多くあるということを局長もよく知っておられるのではないかというふうに思います。そういうものを踏まえて、やはり監督行政というのは非常に大切なのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
それで、ちょっと二、三問まとめてお聞きをしたいと思うんですが、一つは、裁量労働は本人同意ということも一つの条件になっておるんですが、裁量労働に一たん入って、それからいろいろな事情で、途中で自分は裁量労働からおりたいといった場合に、それが不利益な取り扱いになったりすることがないのかどうかということについて、どのようにお考えでしょうか。
○松崎政府参考人 現在の企画業務型の裁量労働制に当たりましては、この対象の労働者一人一人の同意が必要だということになっております。また、同意をしなかった労働者に対していろいろな不利益取り扱いをしてはならないということ、そういうことが決められてございます。
ただ、一たん同意をした方が撤回するといいますか、そういった場合について、これはあり得ることでございますけれども、これは現在の制度におきましては、対象労働者から同意を撤回することを認める場合には、その要件なり手続、そういったものを労使委員会の決議で具体的に定めておくことが適当であるということで、指針で決めておりまして、そういった指導をしております。
また、同意をしなかった場合の不利益取り扱い、これは当然本来禁止されておりますので、そういった趣旨を考えれば、今申し上げました労使委員会において同意撤回の場合の手続とか要件、そういったものが決められて運用されている場合には、その撤回の申し出をしたことによって不利益な取り扱いをしてはならないということは当然かと思っております。
○鍵田委員 なお、専門業務型につきましても、この裁量労働というものの目的からしまして、やはり本人の同意を得た方がより効果は上がるのじゃないかというふうな東大の菅野教授の論文なども出ておるわけでありまして、これらにつきましても今後の課題として十分検討していただきたいというふうに思います。これはまた後ほどお答えいただきたいと思うんですが。
あと、サービス残業の問題につきまして、大臣の方は、賃金不払い残業、こう言うんだとおっしゃっているわけでございますが、社会経済生産性本部の調査におきましても、ある程度こういうものはやむを得ないという考えに近いという人が六・五%、ある程度やむを得ないことだという考えにやや近いというのが四〇・八%もあるということでありますから、半数程度が必要悪として認めているというふうな実態にあるわけでございます。ですから、このサービス残業、いわゆる不払い残業というものが本来なら基準法の違反ということになるはずなんですが、そういう意識が非常に希薄である。ここは非常に問題だと思います。
大臣の方は、何か先日の閣議後の記者会見の中で、このサービス残業につきまして徹底的に解消するための努力をしたい、この賃金不払い残業を解消するための指針というものをまとめたいというふうなこともおっしゃっておるわけでございまして、これはどういうものをつくられようとしているのかということ。
それから三十七条違反。資料をいただいたんですが、三十七条違反ということでいただいたんですけれども、割り増し賃金の部分でございまして、この調査の中には、三十七条ではなしに二十四条違反、いわゆる賃金を全く払っていない、残業の賃金も割り増し賃金も両方払っておらない、こういうものが含まれておるというふうに見えるんですが、それにつきましてはいかがでしょう。
なぜ、こういう形で分けておられるのか。これは罰則が全然違うんです。三十七条違反の場合は、六カ月以下の懲役または三十万円以下の罰金でありますし、二十四条違反ですと、懲役刑はなくて三十万円以下の罰金というところになっておるわけでございます。二十四条違反の方が実は賃金の本体も払っていない、割り増し賃金も払っていないというふうなことに対する違反ということになるわけですけれども、この整合性についてどのようにお考えになっておるのかということが一点。
それから、サービス残業についての罰則ですよね。余りにも軽過ぎる。三十万円ぐらいの罰金だったら払ったって痛くもかゆくもないということになってくるわけでありまして、実際に監督行政の中で何か罰則を科したり、それから逮捕されてそれが懲役になったとかというふうなこともほとんどないということでありますから、監督行政が非常に甘いんじゃないか。
要は、賃金さえ二年間さかのぼって払えばそれでいいんだとか、割り増し賃金をさかのぼって払えばそれで済むということではないんじゃないか。やはり、そういうことをやってきた、これは犯罪を犯しておるわけですから、それに対してはしっかり罰則も当てはめるということが必要なのではないか。そして、その甘い罰則を何とか、あの飲酒運転の事例を見ましても、大体今までの罰則の五倍とか六倍とかの罰則に変えたために、非常に事故も減っておる、それから違反の処罰も減っておるという実態があるわけです。
そういうことを考えますと、もちろん、経営者を犯罪人にするなというふうなお考えの人もあると思いますし、私も経営者を犯罪人にしたいとは思っておりませんが、やはり先日の参考人の質疑の中で、派遣法のときですか、経営者の方、企業倫理行動に基づいてしっかり頑張りますとおっしゃっておられたわけでありますから、違反さえなければ、幾ら罰則を強くしても関係ないわけ。しかし、一部の悪い経営者がおりまして、それが犯罪を犯すわけでありますから、それに対してはやはり効果を出すという意味での罰則を強化するというようなことについて検討ができないのかどうか。
本当は修正案を出したかったんですが、時間的な余裕もなかったものですから、ぜひともこれは検討していただきたいというふうに思うんですけれども、最後にお答えをいただきたいと思います。
○坂口国務大臣 賃金不払い残業と申しますか、サービス残業と言われておりますもの、言われて久しいわけでございますし、これは法律違反でもございますから、何とかしてここだけはなくしていかなきゃいけないというふうに私も思っている次第でございます。
今回、もう少し前にこれを進めようというので、賃金不払残業総合対策要綱というのをまとめまして、そしてその中でひとつ指針をつくってやっていこうというふうに思っております。これはかなり、少し厳しくやっていかないといけないというふうに思っているわけでございまして、経営者の皆さん方にもここだけは、これは法律に違反しているんだということをよく理解をしてもらわないといけない。そんな法律違反であるということさえ知らなかったという人もいるわけでございますから、それは話にならないというふうに思っております。ちょっとここは厳しくやりたい。
それにしても、罰則が軽過ぎるじゃないかということでございますが、先ほどお話がございましたように、三十七条の割り増し賃金不払いでございますと六カ月以下の懲役または三十万以下の罰金ということでございますし、それから、賃金の不払いの二十四条でございますと三十万以下の罰金、こういうことになる。私も、初めちょっと見ましたときに、これ、逆じゃないの、賃金払っていないのと割り増し払っていないのとでは、割り増し払っていないのが重いのか、賃金払っていないのが重いのじゃないのと言ったんですが、いや、賃金も払わず割り増しも払わずというのが六カ月以下、懲役ということだそうでございますので、それはそれでいいというふうに思っておりますが、この労働関係のところは労働関係のところで、強制労働からずっといろいろ段階をつけて罰則を決めているものですから、その中のバランスで来ているわけでございます。バランスで来ているわけでございますが、今おっしゃいますように、サービス残業でこれを払わないというのは、これは決して軽い方ではない、私は重いと思っております。
かなりいろいろの対策を講じますが、それでもなおかつ減らないということになれば、一遍考え直さなきゃいかぬと私個人は思っているところでございます。いろいろとまた御指導をいただきたいと思います。
〔委員長退席、宮腰委員長代理着席〕
○鍵田委員 それでは質問を終わります。ありがとうございました。
○宮腰委員長代理 次に、大島敦君。
○大島(敦)委員 おはようございます。民主党の大島敦でございます。
先般の質疑に引き続き、裁量労働について何点かお聞かせをください。
昨日の当委員会の参考人の審議の中で、参考人の方から非常にいい意見の陳述がございました。私、社団法人日本経済団体連合会の紀陸常任理事の方に、ホワイトカラーエグゼンプションの具体的なイメージはどういうものですかとお伺いしたところ、大体ホワイトカラーエグゼンプションの対象になる人は会社ですと係長クラスの方だという御発言がございました。
先日の当委員会での私と坂口大臣あるいは政府参考人であります松崎局長との議論の中で、日本におけるホワイトカラーエグゼンプションの対象になる人、あるいは、恐らくそれの意味するところは企画業務型の裁量労働の対象者かなと思っておりまして、私が審議の中で理解したところでは、厚生労働省の方でもおつくりになっております「企画業務型裁量労働制」というこの小冊子でも、労使委員会の「決議例」として、「企画業務型裁量労働制を適用する労働者は、」「入社して七年目以上でかつ職務の級が主事六級以上である者とする。」なんという、このような記述がございまして、意味するところは、労働組合員なんですけれども、先日もこの場で触れましたけれども、大体三十歳、三十二、三歳から四十歳ぐらいの方が対象なのかなと思った次第なんです。
そうしますと、企画業務型の裁量労働制とホワイトカラーエグゼンプション、前回の松崎局長のお話ですと、これは全社的に影響を及ぼす仕事でなくてもいいんですよ、そういった、何も企業全体ではなく、権限を与えられておって、そこで独自の経営戦略とかそういったものを作成することができる事業単位といいますか、これが複数か一つかは別なんですけれども、それは対象になってきますので、企業全体というところは修正していくことになると考えていますという御発言がございまして、イメージ的には、これまでの本社、役員がいるところからさまざまな事業場でも採用されて、拡大解釈すれば、日本経済団体連合会さんが考えていらっしゃるホワイトカラーエグゼンプションの対象になる方が企画業務型の裁量労働の対象になるのかなと考えるのですけれども、その点について、まず松崎局長のお考えを再度お聞かせください。
○松崎政府参考人 まず、現行の企画業務型の裁量労働制でございますけれども、これは御案内のように、本社、本店という場所において、具体的には、企業全体といいますか、企業全体に影響を与えるような事業運営上の重要な決定を行う権限を分掌する事業本部、そういったところで事業運営上の重要な決定に関する企画、立案、調査を行うということになっております。
今回の見直しにおいて検討されましたのは、従来、事業場で限定しておりまして、本社、本店等ということで、原則としては企業全体の経営戦略というところを考える部門ということで本社、本店というふうに限定しておったと思うんですけれども、実態を見てまいりますと、実質上の分社化といいますか、権限を分散いたしまして、大きな事業場につきましては、本店機能まではないけれども独自の経営戦略といいますか、そういったものを任せて独立採算のもとでやらせるといったようなことが出てきているということでございまして、趣旨からいえば、従来はそういった点は少なかったかもしれませんけれども、現在あるということから、今後、基本的な枠組みを変えないで、業務とかについては変えないで、その部分だけは拡大してもいいんじゃないかといった御議論だったというふうに考えております。
したがいまして、アメリカにおけるホワイトカラーエグゼンプション、これはもう御案内のように、あれを見てみますと非常に幅が広くて、いわゆるホワイトカラーと言われる中でも、外勤の営業マンでありますとかほかの会社のコンサルタントをやるような方とか、いろいろな方が入っています。そういったことと、基本的に企画業務型裁量労働制の対象となります労働者の方というのは、唯一のホワイトカラーというところでは近いのかもしれませんけれども、業務の内容というところで全く違っておるもので、これはいわゆるホワイトカラーエグゼンプションの代替になるといったようなものにはならないというふうに考えております。
○大島(敦)委員 昨日の参考人の意見陳述の中で、私、確認したことがありまして、川口先生の方に、諸外国における裁量労働、あるいは企業の中での幹部職員、どのような要件を備えている方が幹部職員になるのかなと。川口先生はフランスが御専門でしたから、私はドイツの例を引いて、向こうの、ドイツの企業ですとディプロマあるいはドクター、日本の学部卒ではなく事務系でも大学院あるいはドクターの資格を取られた方が二十七とか三十で会社に入っていらっしゃって、個室をもらって、その方たちは、指揮命令ですよね、指示すること、企画することが仕事ですから。その人たちが企業の部長になりボードに入っていく。これがヨーロッパの社会でして、非常に機能的なんです。私のイメージというのは、今回の企画業務型の裁量労働制の対象になる日本におけるホワイトカラーというのは、そのようなことが期待されている方かな。
まだ日本の会社ですと能力に応じた給与がなかなか払われていなくて、二十代、三十代、四十代前半ぐらいまでの働き方というのは、企業内での出世、昇進というのは余り差を開かないようにしているんですよ。それは企業としては非常にいい戦略でして、君はもう一選抜じゃないんですよと明確に言ってしまうと働く気がなくなってしまいますから。日本の会社の中は、役所でも同じだと思うのです、皆さん二十代でも三十代でも大体同じように出世して、周りから見れば役員になれるとは思えないのだけれども、自分としては役員になれると思って一生懸命働くんですよ。これが日本の社会なんです。
ですから、僕は、企画業務型の裁量労働制を考える場合に、どうも今回のこの拡大というのは、将来的にボードあるいは部長、役員に入っていらっしゃる方ももちろん対象になると思うのだけれども、そうじゃない方も対象にしてさらに一生懸命働かせてしまうのかなということを考えるわけなんです。
これは、日本ですと、私の最初に入った会社というのは、八年から九年でもう役職で、時間管理から外れますから、それは企画業務型の裁量労働に非常に近い形になる。しかしながら、商社さんとかあるいは幾つかのメーカーですと四十歳まで、役職、課長になるまで、時間管理から外れるまでかかるわけですから、そこに残業という扱いがあるわけですよ。日本の会社の場合ですと、二十代、三十代に、今は若干変わってきましたけれども、一生懸命働いたそれを、賃金カーブですと四十代、五十代で返してもらうということが今まではあったわけです。
残業というところでちゃんとしっかりと働いた分を評価してもらわないと、自分は一生懸命役員になれると思って働いたのだけれども、会社としてはそうじゃないんですよというところをしっかり人事考課の中でつけられていて、それが四十五歳ぐらいで、部長になれる人、なれない人でサラリーマンの人生が分岐点となって変わっていく。そうしますと、企画業務型の裁量労働の業務の対象というのはヨーロッパ並みに厳格に絞った方がいいと私は思っているのです。
私は、今回の改定について、前回も申し上げましたけれども、制度を始めてから三年目で、ここでこのような間口を広げる意味はあるのか、もう二年間待った方が、制度として成熟していろいろな論点が出てくるから無難なのかなという思いがあるんです。
ですから、坂口厚生労働大臣の方にお願いしたいのは、それは皆さんの書きぶりになるわけです。これは告示と聞いているんで、どのような業務対象にするかというのは、厚生労働省の職員の方の要は告示の書きぶりになるものですから、そこのところで、大臣としては、ぜひ、現行のところを十分配慮しながら、まずは限定的に始めていただくことをお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 裁量労働にいたしましても、先ほどの有期雇用にいたしましても、大体どういう人をどういうふうにするのかという基準が大事でございまして、そこが不明確でございますと、非常に多くの皆さん方に不安を与えるということに私はなるというふうに思っております。
裁量労働の方につきましては、労使委員会でそれぞれしっかり御議論をいただくという前提になっておりますけれども、それにいたしましても、どういう方をするのかということに対する基準の一つを示しながら、そこで、我が社においてはどうするかということを御議論いただくんだろうというふうに思います。私は余りそういう人事にタッチしたことはありませんので、大島先生ほど詳しくはありませんけれども。大島先生は多分采配を振る方に回っておみえになったんでしょうから、私よりもお詳しいんではないかというふうに思いますが。
やはりその辺のところの基準というのは、これは明らかにしておく。それぞれの企業によってそれぞれやってもらえばいいということではないんだろう。どの企業であれ、将来のコースを歩まれる方の中で、こういうコースのところまでは、これはまあ少し無理だよとか、これ以上のところならば許されるんではないかといったようなところは、やはり一つ基準をつくっておかないといけないというふうに思っています。
こうした問題、審議会でもよく議論をしていただきますし、この委員会で御議論をいただきましたことも十分取り入れていきたいというふうに思っておりますが、有期雇用にいたしましても裁量の問題にいたしましても、もしも必要ならば、少し専門的な先生方にお寄りをいただいて、いろいろと検討をしていただくといったようなことも、審議会にさらにつけ加えていく必要があるのではないかというふうに思っている次第でございます。よく検討させていただきたいと思います。
○大島(敦)委員 ありがとうございました。
局長の方に確認なんですけれども、前回の答弁の中で、企業全体ではなく、エリアの中での事業運営全体についてトータルとして相互に関連し合いながらやっていく業務も、企業全体に影響を与えるとみなされるように言っていたんですけれども、告示の百四十九号の第二というのは変える予定なんでしょうか、どうなんでしょうか。
○松崎政府参考人 冒頭申し上げましたように、今回の見直しにおきましても、基本的なこの企画業務型の裁量労働制の趣旨でございますとか目的、また仕組み、そういったものは維持していくということが前提でございます。
ただ、唯一、申し上げましたように、従来、対象の事業場というものを本社、本店等に限定していたということでございましたので、本社、本店等と同じようなといいますか、事実上分社化等で、実際に独自の経営戦略、そういったものが立てられる権限、事業を進められる権限というものを持っている事業場については、従来の本社、本店等よりも拡大するという部分だけでございますので、基本的な枠組みの部分ではなくて、業務の中身、そういったものについては基本的には変わらないと思っております。
ただ、対象事業場が拡大することによりまして、文言の書き方といいますか、従来でありますと企業全体のというふうな感じで言ったと思うんですけれども、それが、企業全体だけではなくて、権限がある場合にはその事業場というふうにもなり得るのかなということで、ただいま大臣からも御答弁ございましたように、労働政策審議会においてそういう方向での御議論をお願いしたいというふうに考えています。
○大島(敦)委員 別の質問なんですけれども、今まで触れておりませんでした、これは労使委員会について伺いたいんです。
労使委員会のメンバーというのは、労働側委員でも使用者側委員でもいいんですけれども、当該事業場に属していなければいけないのか、ほかの事業場から来てもいいのか、あるいは、弁護士さんとか労働組合の本部の方とか、使用者側ですとコンサルタントの方とか、そういう方が労使委員会のメンバーとして所属してもいいんでしょうか。
○松崎政府参考人 労使委員会のメンバー、これは、例えばこの企画業務型に限定しましても、そういったものを当該事業場で導入しきちんと運営していくということのための決議機関でございますから、労働者の側からいえば、当該事業場の労働者を代表する方ということでございますから、その事業場の労働者の方がどういう方を代表として認めるかということですから、その事業場に属しておっても、ほかの外部の方であっても、それは制限はしておりません。
○大島(敦)委員 そうしますと、もう一つ確認なんですけれども、この労使委員会の人数構成なんです。労使委員会の人数構成で、事業場によっては、小さな事業場、二十人、三十人の事業場もありますし、千人、二千人で、千人単位の事業場もございます。その事業場の数と労使委員会の構成、委員の数というのは、これは無関係なんでしょうか。
○松崎政府参考人 この労使委員会の労使の人数でございますけれども、これは労使委員会を設置する前の話でございますので、労使委員会を設置するに先立って労使で当然話し合いが行われるということが前提でございますので、具体的には指針におきまして、その事業場の実態、実情というものを考えて、労使でよく相談をして決めてほしいということにしております。
したがいまして、一律に、規模に応じて、これだけの規模以上だったら何人以上要るとかいうものではなくて、基本的には労使をそれぞれ代表する方という意味でございますから、それは労使の方で決めていただく。ただ、一名では、これは協議機関にもなりませんので、一名ずつじゃなくて二名以上でございますけれども、その具体的な数については、その事業場の労使で相談していただくということにしております。
○大島(敦)委員 労使委員会では、働き方、時間管理について、フレックス制の導入等決められる点が多々あると思うんです。その代表的なところをお述べいただいて、ちょっと時間がないものですから、今のお話ですと、労使委員会のメンバーというのは、別に事業場の従業員である必要もないし、その経営者である必要もないという御発言がございました。もう一つは、その人数についても縛りがないという話がございました。そこのところは、私はもうちょっと慎重にあってよろしいのかなと思うんです。
それは、労働側であっても、あるいは使用者側であっても、企業全体のメンバーであればいいと思うんです。本社からその事業場にいらっしゃって労使委員会のメンバーになる方とかだったらいいと思うんですけれども、外部の方を労使委員会のメンバーとして指名するというのはちょっと適格ではないのかなと思うところが一点。
もう一点が、委員の数なんですけれども、例えば千人の事業場で四人とか六人とか、少ない数というのは余り公平ではないのかな。事業場の数によって、労使委員会の労使のメンバーの数というのも、何人以上でなければいけないとか、ある程度制限を設けてもいいと思うのですけれども、その点についてお考えをお聞かせください。
○松崎政府参考人 まず、労使委員会の役割でございますけれども、基本的には、企画業務型の裁量労働制を導入して適正に運営されることをチェックするということでございますけれども、いわゆる協定代替機能といいますか、そういったことで、労使委員会におきましては、そこでの決議というものにつきましては、当該事業場における労使協定にかえることができるというふうにされております。例えば、一カ月単位の変形労働時間制でございますとか、御質問がございましたフレックスタイム制、それから年次有給休暇の計画的付与、ざっと数えますと十ぐらいございますけれども、当該事業場の労使協定にかえることができるというふうにされております。
したがいまして、先ほどの労使委員会、特に労働側の委員の数でございますけれども、実際に労使委員会にどういう機能を持たせるか。これは先ほど申し上げた事前の話し合いによると思うんですけれども、協定代替機能というものを持たせるというのであれば、そういった方面に詳しい方ということで、それはおのずと人数がふえていくだろうし、また、極めて限定的に企画業務型の裁量制だけやるというのであれば、それはおのずと少なくてもいいんじゃないかというふうに思っております。
事業場の規模によってというよりも、労使委員会がどういう機能を持って動くかということによってそれぞれ関係労使で相談がされるんじゃないかというふうに考えておりまして、そこのところの規模要件とか、そういうものによっての人数の規制といいますか何人以上とかということは直ちには必要ないんではないかというふうに考えています。
○大島(敦)委員 ただいま局長がおっしゃられたとおり、労使委員会で決議できる事項というのは労使協定に代替するものが非常に多うございます。そこのメンバーの中にその会社に属している人以外の方が入るということ、あるいは人数について制限がないというのは一定の歯どめがあっていいかなと私は思っているんです。そこのところを今後とも厚生労働省の中で御議論していただければなと思います。
最後に、坂口厚生労働大臣の方から、そこのところだけ一点、簡単に触れていただいて、私の質問を終わりにいたします。
○坂口国務大臣 今局長から御答弁申し上げましたが、今のところの考え方というのはそういうことなんでございましょう。しかし、先生から御指摘をいただきましたこともなかなか大事な点でございますから、よく検討をさせていただきたいと存じます。
○大島(敦)委員 どうもありがとうございました。
○宮腰委員長代理 次に、城島正光君。
○城島委員 民主党の城島でございます。
きょうは、何点かにわたりまして、確認をしておきたい点について質問をさせていただきたいと思います。
まず、解雇に関する点についてお尋ねをしたいと思います。これは内閣法制局に御質問をさせていただきます。
今回の政府案の文言の趣旨について、次のように理解してよろしいかどうかということについてお尋ねをしたいと思います。
すなわち、第一に、この条文の文言は、日本食塩製造事件最高裁判決で確立した解雇権濫用法理と、これに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであること、第二に、この条文は、民法一条三項の権利濫用の規定を基礎にして、解雇の場面における特則を定めるものであり、条文にある「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」という要件に該当しさえすれば直ちに民法一条三項の権利濫用の規定に該当することを明確にしたものであること、第三に、民法一条三項の権利濫用の規定に該当することに伴い、解雇無効という法律効果が生じることを明らかにしたものであること、以上のように解してよろしいかどうかをお尋ねしたいと思います。
○石木政府参考人 御指摘のように、政府案の労働基準法第十八条の二の規定は、判例のいわゆる解雇権濫用法理をそのまま条文上明確にしようとしたものであり、これまでの判例法理として裁判実務に定着していたものを法律に明記することとしたものであります。
また、この規定は、民法第一条第三項との関係でいえば、政府案の労働基準法第十八条の二に規定する「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」という要件に当たる場合は民法第一条第三項の規定に該当することとなり、その法律効果として解雇が無効となることを明文化したものであります。
以上のとおりでありますので、先生の御指摘のとおりでございます。
○城島委員 ありがとうございました。それでは、法制局、結構でございます。
それでは次に、建議に「これまでの代表的な判例及び裁判例の内容を周知すること等により、この規定の趣旨について十分な周知を図る」とありますけれども、どのような周知の仕方を考えられているのか、お尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 建議を踏まえまして、都道府県労働局及び労働基準監督署において、判例及び整理解雇四要件に関するものを含めた裁判例の内容の周知を図ってまいりたいと思います。
○城島委員 次に、就業規則に解雇の事由を記載させるようにすることで、どのような周知活動を行うのか、お尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 モデル就業規則を新たに作成し、その普及を図るとともに、労働基準監督署における就業規則の届け出の受理に当たっては、解雇の事由ができる限り明確に記載されるよう、モデル就業規則を活用すること等により、使用者に対して必要な相談、援助を行ってまいります。
○城島委員 建議に「労働条件の変更、出向、転籍、配置転換等の労働契約の展開を含め、労働契約に係る制度全般の在り方について」検討するとありますけれども、これについては、いつから、どこで検討を行うのか、お尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 労働条件分科会の御意見を踏まえまして、速やかに検討を開始したいと考えております。
○城島委員 続きまして、有期労働契約について質問をさせていただきます。
第十四条二項の厚生労働大臣が定める「使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準」というのは、どこで、どのように定めるのか、また、建議の「一定期間」とはどれぐらいの期間を考えているのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 当該基準につきましては、大臣告示で定めることを予定いたしております。告示の内容につきましては、現行の指針の内容を基礎として、労働条件分科会の御意見を踏まえて定めていきたいと考えております。
○城島委員 次に、第十四条三項を設けることで、労働基準監督署の指導において、どのようなところが変わるのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 契約期間満了の通知を初め、基準の内容が遵守されるよう、集団指導等の場を通じて必要な助言指導を行うことといたします。
○城島委員 第十四条一項一号の「専門的な知識、技術又は経験であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等」というのは、いつ、どこで定めるのか、またどのようなものを考えているのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 御指摘の基準につきましては、大臣告示で定めることとしております。
具体的には、弁護士、公認会計士など専門的な知識、技術または経験であって高度なものを有しており、みずからの労働条件を決めるに当たり、交渉上、劣位に立つことのない労働者を当該専門的な知識、技術または経験を必要とする業務に従事させる場合に限定する方向で、労働条件分科会の御意見を踏まえて定めていきたいと考えております。
○城島委員 建議では、有期労働契約の果たす役割など有期労働契約のあり方について、「今後引き続き検討していく」とありますけれども、これについてはいつからどこで検討を行うのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 有期五年の退職の自由、有期雇用の反復更新問題、期間の定めのない契約とするみなし規定の制定、有期雇用とすべき理由の明示の義務化、正社員との均等待遇など、有期労働契約のあり方について、労働条件分科会の御意見を踏まえて速やかに検討を始めたいと考えております。
○城島委員 それでは、裁量労働制に関する質問をしたいと思います。
第三十八条の四の「事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、」との文言を削除することで、対象となる事業場の範囲はどこでどのように定めるのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 「事業運営上の重要な決定が行われる事業場において、」との文言を削除することにより安易な拡大にならないような規定を大臣告示で定めることとしており、具体的には、労働条件分科会の御意見を踏まえて定めていきたいと考えております。
○城島委員 労働基準法三十八条の四第一項第一号に言う、「事業の運営に関する事項」の意味が変わることはないのかをお尋ねしたいと思いますし、企業全体にかかわる事業の運営にかかわる企画等を行う業務という対象業務の本質が変わることはないのか、この点についてお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 現行の企業全体の運営に影響を及ぼすものについては変更する必要があると考えていますが、企画立案、調査、分析を相互に組み合わせて行うもの、業務の性質上、客観的に労働者の裁量にゆだねる必要性があるもの、作業をいつどのように行うかについて広範な裁量が労働者に認められているものであるとの要件について変更する必要はないと考えております。
○城島委員 次に、裁量権がない労働者に対して適用されていることに何らかの指導を行うべきではないかというふうに考えておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
○坂口国務大臣 適用対象となる労働者の範囲が裁量労働制の趣旨を逸脱することがないように指導を行ってまいります。
○城島委員 裁量労働制の緩和がサービス残業隠しに悪用されないために指導を徹底させるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○坂口国務大臣 裁量労働制を採用している事業場に対する指導監督を徹底してまいります。
○城島委員 建議で、「企画業務型裁量労働制の在り方に関連し、労使委員会の在り方について、今後検討していく」というふうにありますが、どこで検討されるのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 これは労働条件分科会で検討を行ってまいりたいと思います。
○城島委員 報告の時期について、最初は六カ月以内に、その後は一年以内ごとに一回行うということにしている施行規則二十四条の二の五第一項について、変えることはないのか、お尋ねをしたいと思います。
〔宮腰委員長代理退席、委員長着席〕
○坂口国務大臣 報告の時期につきましては、健康・福祉確保措置に係る報告は重要なものと考えておりますので、施行規則について変更することは考えておりませんが、いずれにしても、報告の時期については労働条件分科会の御意見を踏まえまして定めていきたいと考えております。
○城島委員 決議の有効期間について、建議では、一年となっている暫定措置を緩和することとしているわけでありますが、施行規則六十六条の二をどう変えようと考えているのか、また、これについてはどこでどのように決めていくのかをお尋ねしたいと思います。
○坂口国務大臣 決議の有効期間としては、無制限ではなくて、三年以下が適当であると考えておりますが、いずれにしても、労働条件分科会の御意見を踏まえて定めていきたいと考えております。
○城島委員 労働時間の管理について、裁量労働制でも使用者が時間管理を行わなければならないことについて周知すべきではないかと思います。過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置について法制化するべきではないかと考えますが、これについてはいかがでしょうか。
○坂口国務大臣 使用者に健康管理義務があることにつきまして周知徹底させますとともに、特に裁量労働制を採用している事業場において、御指摘の措置に基づく指導を徹底してまいりたいと考えております。
○城島委員 以上について、私の方からの確認をさせていただきたい質問については終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
○中山委員長 次に、武山百合子君。
○武山委員 自由党の武山百合子でございます。
きょう、この労基法の改正に対しては最後の質問でございますけれども、まず、女性の立場から、今まで余り質問になかった、いわゆる育児・介護休業法とこの法案の中身との整合性、それについて、まず冒頭質問したいと思います。
まず、現在行われております育児・介護休業法では、有期雇用の労働者に育児・介護休業制度が適用されないんじゃないか、これはもう大変重要な問題点があるという、私の事務所にそういう問題提起がされたんですけれども、これは事実なんでしょうか。これをぜひお聞きしたいと思います。
○鴨下副大臣 育児休業につきましては、これは、育児を理由としました雇用の中断を防いで、その継続を図る、こういうようなことが目的であることは言うまでもないわけですけれども、したがって、育児・介護休業法におきましては、その期間の長さにかかわらず、雇用期間が一定の期間に限られている期間雇用者をその対象から除外している、こういうようなことになっているわけであります。
ただ、本年の四月に、育児休業制度等の見直しにつきまして、これは労働政策審議会において検討を始めたところでありますけれども、同審議会におきましては、先生方からの御指摘もありますし、本委員会でのさまざまな御議論を踏まえまして幅広い検討を行ってまいりたい、こういうようなところでございます。
○武山委員 それでは、検討を行うということですけれども、問題点としましては、いわゆる有期雇用の労働者については育児・介護休業は労使にゆだねられるとされておりまして、義務化されておらないんですね。それからまた、過半数の労働組合、または、それがないときは、労働者の過半数の代表者と書面により、協定により引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者ですね、これは適用しないというふうになっておるわけなんです。
それで、厚生労働省は、やはりこれらの契約の性質上、雇用の継続を確保するという制度の目的、これに照らしての説明ということですけれども、しかし現実には、有期雇用の期間をきちっと決めた女性の、いわゆる働く人がどんどんふえておるわけですけれども、このことに対して、期間を定めて雇用される者は該当しない可能性が高いというふうにされておりますけれども、これは、育児・介護休業の対象とすることが望ましいということを事業主に対して助言するようにと、これは指示しておるということなんですけれども、この件に対してはいかがでしょうか。
○鴨下副大臣 今御指摘の件でありますけれども、育児・介護休業法の運用についてでありますけれども、これは労働契約の形式上の、言ってみれば期間を定めて雇用されている者でありましても、当該契約が、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になっている、こういうような場合には育児休業の対象となるものとして、実際には取り扱っているわけであります。
具体的には、これは指針におきまして、有期労働契約の雇いどめの可否が争われた裁判例を踏まえまして、それが期間の定めのない契約と実質的に異なるか否かの判断に当たって、留意すべき事項を示しているわけでありますけれども、一回の契約期間の長さのみをもって判断するというようなことは適当ではない、こういうふうに考えているところであります。
いろいろと検討すべきことはあるわけでありますけれども、育児休業制度等の見直しにつきましては、先ほども申し上げましたように、本年四月に労働政策審議会において検討をさせていただいているわけでありますから、今後は、その結果を見て、先生の御指摘等も踏まえまして、言ってみれば、より利用しやすいような仕組みになるように努めていきたい、そういうふうに考えております。
○武山委員 それでは、検討が始まったということですけれども、今後、何回ぐらい検討しまして結論を得るんでしょうか。厚生労働省は、その審議会に丸投げして、それを待っておるというような説明ですけれども、自分たちの主義主張はないんでしょうか。
○鴨下副大臣 労働政策審議会の中で御議論をいただいて、それぞれさまざまな分野の方々からの御意見を賜るわけでありますけれども、大体その御意見がまとまるのが本年じゅうぐらいというようなことを予定していますけれども、これはあくまでも審議会の方々の御意見でありますから、これを受けて、厚生労働省としてどういうふうに判断するか、こういうような意味では、最終的には厚生労働省が主体的に判断をさせていただく、こういうようなことでございます。
○武山委員 何か、規定どおりの、丸投げして、それで最終的には厚生労働省が判断するということですけれども、ちょうど労基法の改正に当たるわけですから、伴うわけですから、有期雇用の期間を定めたものに対しても、やはりこういうところできちっと青写真を提案するというのが、厚生労働省の、国民が期待している、国民の代表の、官僚主導ではない、国会議員同士で決める、そういう内容を決定するというところじゃないでしょうか。そう思いませんでしょうか、副大臣。
○鴨下副大臣 御指摘はごもっともでありますし、本来的に大臣を中心に、審議会の御意見を賜った後は、政治家である大臣そして副大臣を含めて、厚生省としての意見を取りまとめたい、こういうふうに考えております。
○武山委員 審議会の話になりますとまた長くなりますけれども、審議会はもともと、できた経緯からしましたら、もう時代の役割を終えているんですよね。別に、人に意見を聞かなくたって、厚生労働省も、そしてまた厚生労働大臣も副大臣も、何が問題点かというのは重々わかっておると思うのですよね。ですから、そういう体質から早く抜け出して、やはりみんなが期待している青写真をわかりやすい言葉で示すべきだと思います。
例えば、三年以内の特定の労働者について、育児・介護休業の適用がどうなっているかという実態なんか、つかんでおるのでしょうか。
○鴨下副大臣 突然の御質問でありますけれども、具体的なデータは多分、今の段階では把握できていないというふうに思いますけれども、また詳細、調べてみたいというふうに思います。
○武山委員 実態調査もされていないという状況だということも、こちらも実は知った上での質問なんですけれども、そういうこともやはり厚生労働省の仕事なわけですよね。ですから、審議会の話のまとまりを待つのではなくて、もうやらなければいけないことというのは目に見えてわかっているわけですから、そういうわかっていることをやるというのが厚生労働省の役割ですから、早急にやっていただきたいと思います。
この話はこれで終わりにします。
きのう、この労基法の改正に対して参考人の方々に来ていただいて、いろいろ意見を開陳していただきました。その中で何点か、私、それをもとに質問したいと思います。
まず、有期労働契約なんですけれども。更新や雇いどめですね、これは行政機関が指導助言を行うということですけれども、これはこの前私も質問いたしましたけれども、指針という形で、行政が介入するという形なんです。結局、根本の雇いどめということに対しては規制するという法律が全然ないわけですよね。この雇いどめということに対して、今度新たな根拠規定を置くという程度ですよね。ですから、この辺は、雇いどめは自由なんだという、前提が自由なんだという前提になっておる。これでは、行政が介入する限界が当然存在してくる。自由だといいながら行政が介入するということなんですけれども、この雇いどめというものを規制する根拠規定、これはやはりきちっと置くべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○鴨下副大臣 いろいろな意味で雇いどめの問題が労使の間で大きなトラブルになっている、これは実際、現状だろうというふうに思うわけでありますけれども、ただ、雇いどめそのものは、ある意味で契約の期間の満了というようなことであります。ただ、そのときに、さらに更新するというようなニュアンスをある意味で労働者が持っていたにもかかわらず、契約がそこで終わる、こういうようなことでのさまざまな問題があるんだろうというふうに思いますので、この問題につきましては、これからさらに、トラブルがないように、さまざまな方法で、できるだけ、雇いどめにおけるさまざまな問題について解決できるように工夫をしてまいりたいというふうに思っております。
○武山委員 ヨーロッパではとっくに、多くの国々において雇いどめの規制というものを行っておるというふうに、きのうは意見を開陳されたんですけれども、この規制をするということに対してはどうですか。
○鴨下副大臣 実際には、雇いどめというよりは、むしろ、有期労働契約を、どういうふうなときに、どういうふうに使用者、労働者の間で結ぶか、こういうようなことが重要なんだろうというふうに思っておりまして、雇いどめというのは、その後の結果というようなことでありますので、最終的には、労使がそれこそ相互によく理解をし合って、雇いどめのトラブルがないようにというようなことが重要なことなんだろうというふうに考えております。
○武山委員 例えば、今度の三年あるいは五年というものが、これで、きょうの採決で通るわけですけれども、既に五年を超えた場合、三年を超えた場合、もうこれは期間を定めない契約とみなすんだというぐらいの規定はしてもいいんじゃないか、こういう意見も実は出たんです。もう五年を超え三年を超えという場合に、当然そうだと思うんですけれども、これに対してはいかがでしょうか。もうこれで期間を定めない契約だというふうな規定を設けるということに対しての意見はどうでしょうか。
○鴨下副大臣 契約更新と雇いどめの関係を明確にする、こういうようなことで、ある意味で契約期間の長さや更新回数について、言ってみれば、実質的に期間の定めのない労働契約とみなすべきだ、こういうようなことを先生は御主張なさっているわけでありますけれども、有期労働契約につきましては、これは、継続雇用期間の長さや更新回数の基準を設けまして、その基準を超えた場合には、期間の定めのない労働契約とみなすこと、こういうようなことにつきましては、一つは、そのような判断を継続雇用期間の長さや更新回数のみによって、言ってみれば、一律に行っていくのが果たしていいんだろうかというようなことが一つございます。
そのことにつきましては、個々の事案に応じまして、これは、労使、当事者間の意思や、また同種のほかの労働者の方々の契約更新の状況等、さまざまな要因を勘案しないといけないところがあるわけでありまして、それぞれの事案について妥当な解決を図る、こういうようなことがなかなか困難になるのではないか。こういうようなことから、単純にみなし雇用というようなことを導入するのが果たしていいんだろうかというようなことにつきましては、さまざまな議論があるところだろうというふうに思います。
○武山委員 やはり、ほとんどの人が雇用の安定を願っているわけですね。ところが、今、もう就職口がないわけですよ。仕事を選択できないわけですよ。選択の幅がこういうふうになっておるわけですね。この有期雇用の、例えば五年とか三年とかというのは、いわゆる裁量労働制を行う人とか特定の人なわけですけれども、今は選択肢が何しろもうなくなって、結局は一年、三年と更新していく、そういう選択肢しかないわけですよね。
それに対して、ケース・バイ・ケースで、一人一人、本当にその土台が、きちっと雇用の安定が基本的にあった上での実態がそうなっていればいいですけれども、もうケース・バイ・ケース。今、本当に、一時的、臨時的雇用が、例えば、この前も私説明しましたように、十人ぱっと寄ると、三人ぐらいはパートで、三人ぐらいが派遣で、あと正社員は三人ぐらいだと。そのくらい、もう本当に多種多様な仕事をする形態になっているわけですよね。
そういうのを、今度、一人一人のケース・バイ・ケースのためにやるんだというんですと、非常にわかりにくくて、もうファジーなわけですよ。それで、今まさに、解雇の規制も非常にファジー。それで、司法制度改革も今ここで問題になっているわけですけれども、透明性という意味では、法制というものをきちっとこの辺でやはり導入すべきじゃないかと、きのう意見開陳の中でも出たんですよ。
これは、日本独特だというところから、これからはやはり脱皮していくべきだと思うんですね。国際基準に照らしていこう、よい意味のグローバルスタンダードになっていくんだと。そして、もうボーダーレスの時代に入って、社会も国もそういう方向になっていく。外国からの人もどんどん入ってくる、日本からも外国にどんどん行く、そういう時代になっておるわけですね。
そういう中で、明確な規定というものを、そろそろ制度をつくっていくべきじゃないかと思いますけれども、それに対しても、相変わらず今までの考えの中でやっていこうということしか返ってこないんですよね。
ですから、そういう厚生労働省に対して、前向きで、ああ、厚生労働省もみずみずしく変わっていったんだということがないと、やはりみんな、もうあきらめて、仕方なく生きていくような人がどんどんふえていくと思うんですよ。そうすると、生産性も高まらないし、それによって税収もふえないし、新しいニュービジネスも生まれていかないと思うんですよ。
ですから、相変わらず古い体質の厚生労働行政じゃ、やはりだめだと思うんですね。審議会に丸投げして、結果的にはそれを待って、最終的には自分たちで決めるんですよと言っても、時間がかかり過ぎますよ。それで、いつも審議会だ審議会だと理由にして、厚生労働省は、前向きな答えというのは非常に少ないと思います。それに対して、ぜひ意見を聞きたいと思います。
○鴨下副大臣 先生がおっしゃっていることは、一つは、今のような経済状況そしてグローバル化の中で、ある意味で、経済的にも活力のある産業構造をつくっていくためには、さまざまな、それこそ使用者と労働者の間でお互いに協力しないといけない部分がたくさんあるわけでありますから、そういうところでできるだけルールを明確にしろ、こういうようなお話でありました。
それは、多分、解雇についてもそうでありましょうし、先ほどお話しになりました雇いどめの問題もそうでありましょうし、それからもう一つは、例えば、労働者の皆さんにとっても、多様な働き方を選択し、自分のライフスタイルに合わせて、その時々、最も自分にとってふさわしい働き方を選択できる、こういうような、言ってみれば、透明なといいますか、開かれたルールのもとでそういうことがやれるようにしろ、こういうようなお話なんだろうと思いますし、まことにそれはごもっともであります。
今回の基準法の改正におきましても、そういう意味で、今までなかなかできなかった解雇につきましてのさまざまなルールについて、これは、昭和五十年の最高裁判決以来、解雇権の濫用法理等も受けて、基準法の中に明記させていただいた。こういうようなことで、なかなか進まないというふうなお話がありますけれども、少しずつ前に進めていって、できるだけ、労使ともにわかりやすいようなルールのもとで、働きやすい環境をつくっていく、こういうようなことだろうというふうに思っております。
○武山委員 本当に、そういう意味では、日本の労働行政というのはおくれていると言わざるを得ないと思います。解雇の問題に対してもやっと言葉だけが入った、中身はほとんど変わらない。労働行政が本当に世界に大変おくれているということを私指摘しておきたいと思います。
それで、きょうは裁量労働制、今まで余り質問の量がなかったんですけれども、きょうはちょっと詳しく裁量労働制について聞きたいと思います。
今回の裁量労働制に係る改正、その導入の際の要件や手続を緩和するということですけれども、これは例えば行政機関への報告、届け出を緩和するという措置なんですけれども、小さな効率的な政府を実現するという観点から一定の評価はできるというふうに考えておりまして、裁量労働制は、一々国が関与するのではなく、労使の自主的な話し合いにより制度の導入や労働時間の設定等がなされるという制度の趣旨そのものは否定されるものじゃないと思っております。
それで、あくまでも適切に労使の自主的な話し合いが可能な場合に限られるのであって、今回の改正のように、裁量労働制が導入可能な事業場を事業運営上の重要な決定が行われる事業場に限るというこの要件を削除してしまうというわけですね。
これは労使の自主的な話し合いが困難な事業場であっても制度の導入が可能となってしまうというおそれがあるんですけれども、この裁量労働制の対象事業場が無限定に拡大されるというおそれがあるわけですけれども、これはなくなってしまうわけですから、要件の緩和で削除してしまうということです。そうしますと、拡大されるというおそれが問題意識として大変あるわけですけれども、この件に対しての見解をお聞きしたいと思います。
○鴨下副大臣 先生のお話しになっているのは企画業務型裁量労働制についてというようなことだろうというふうに思いますが、労働者が主体的に、言ってみれば、多様な働き方が選択できる可能性を拡大する、こういうような一つの選択肢としてこの制度が機能するように、こういうようなことで今回、導入、運用についての要件、手続を緩和していこう、こういうようなことであります。
ただ、これは見直し後においても、例えば導入に当たりましては労使の十分な話し合いを必要とすることなど制度の基本的な枠組みは維持されている、こういうようなことでありますし、また、労使で十分な話し合いが行われているかどうかは、これは労使委員会による制度導入の決議の届け出を受理する際に監督署において必要な点についてはいわば詳細にチェックをしていこう、こういうようなことであります。
ですから、対象事業場を本社等に限定している要件を廃止するとしても、対象事業場の無限定な拡大になるというようなことは考えられないといいますか、そういうようなことではないだろう、こういうようなことで、制度の適正な運営が図れていくというようなことを考えている次第でございます。
○武山委員 私は、そういう答えが出てくると甘いとしか言いようがないと思います、見方は。悪用が本当にはびこっているわけですよ。悪用に対してみんな心配しているから、質問の内容は、悪用が本当に多いわけですよね。
それで、まず、あらかじめ労使で自主的に定めた時間を労働したものとするみなし制度ですね。それから、制度を悪用して、実際は長時間労働を行わせるけれども、賃金についてはみなし労働時間しか支払わない、それからこのような裁量労働制の導入によってサービス残業隠し、こういうのもやはりこれは制度の悪用ですよね。
ですから、こういうものに対して、やはり今のお話ですと、そんなことはないだろうというのは甘い考えだと思いますよ。それでは、そのようなことはどのように防止しようとするつもりなんでしょうか。
○鴨下副大臣 先ほども申し上げましたように、今回の企画業務型裁量労働制を導入するに当たりましては、これは労使委員会の決議によりまして導入する云々というようなことが決まるわけでありますけれども、この導入する具体的な業務の範囲も労使委員会等で確定をして、そして、かつ本人の同意を得た上で対象労働者にする、こういうようなことでありますので、ある意味で二重、三重にチェックができる、こういうようなことでございます。
○武山委員 厚生労働省は、悪用がなぜ行われるのか、悪用がどんな悪用なのかということをやはり調べるべきだと思いますよ。二重、三重と表では言っても、現実には悪用されているわけですから、それで苦情が多いわけですよ。長時間労働だ、みなし労働だ、それからサービス残業だということですね。
それで、やはり厚生労働行政は雇用を守る立場に立って進めるべきものでありますので、それはもう絶対にそこに視点を置くべきだと思います。
それから、もっと詳しくお聞きしたいと思いますけれども、今回の専門業務型裁量労働制の改正ですね、まず、どのような実態に基づいて行われるのか。この専門業務型裁量労働制の改正、どのような実態なのか。これ、ぜひ御説明していただきたいと思います。
○鴨下副大臣 専門業務型裁量労働制の導入状況につきましては、これは平成十四年の就労条件の総合調査によりますと、適用企業数が一・二%、そして適用労働者数の割合が〇・六%となっておりまして、企業規模三十人以上の民営企業から対象を抽出した結果がそういうようなことであります。
そして、この裁量労働制の中で、特に専門業務型裁量労働制は、例えば研究開発の業務など特別な、いわば専門的な業務として確立しているものとして、これは厚生省令等で定める業務を対象としているわけでありまして、この専門業務型裁量労働制の中で、先生がおっしゃっているようないわゆるみなし労働時間等について定めた労使協定の締結により導入することとされている、こういうようなことでございます。
○武山委員 私は、どのような実態に基づいて行われるのかということを聞いたんです。この専門業務型裁量労働制の改正のポイントはどのような実態で、こういう実態だからこう改正されるというわかりやすい説明をしていただきたいと思う。今の話聞いても、ちっともわかりません。
○鴨下副大臣 これは裁量労働制に関する調査結果を見ますと、直近の健康診断で異常がありというふうにされた方の割合が二一%強と、専門業務型のケースの場合には、ある意味で異常ありのケースが比較的多い。こういうようなことで、健康状態が悪くなったというような方々、それから、企画業務型の裁量労働制の方々と比べても、そういうような人たちが多い、こういうようなことと、それからもう一つは、これは直接、御本人たちの苦情の有無についても、どちらかというと企画業務型裁量労働制に比べて専門業務型の方が苦情も多い、こういうようなことで、専門業務型の裁量労働制の適用労働者にはその健康状態に問題がある、こういうようなことが実態だろうというふうに思いまして、裁量労働制が多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能するということはメリットでありますけれども、働き過ぎにつながるのではないか、こういうようなことから、特に労使協定で定める健康・福祉確保措置それから苦情処理措置を使用者が講ずる、こういうようなことが、言ってみれば一番の要点でございます。
○武山委員 そうしますと、企画業務型と専門業務型、二つあるわけですけれども、企画業務型裁量労働制はもう既に健康・福祉確保措置というのは導入されているわけですよね。
今回この専門業務型に導入される理由、この中身は何らか異なる点があるんでしょうか。差はありますか。これは同じですか、中身は。
○鴨下副大臣 今回の改正案は、裁量労働制が働き過ぎにつながらないようというようなことで、先生おっしゃるように健康・福祉確保措置を定める、こういうようなことでありますけれども、具体的な措置内容については、これは現行の、先生のおっしゃっている、企画業務型裁量労働制と同様の取り扱いをすることが適当である、こういうふうに考えているところであります。
○武山委員 そうしますと、今回、専門業務型の方は新たに企画業務型と同じように健康・福祉確保という措置が行われるようですけれども、今回設けられた専門業務型の方は、労働基準監督署への報告は必要がないようなんですよね。これは必要ないということですけれども、なぜ企画業務型裁量労働制と同じなのに報告はないんでしょうか。同じように義務づけるべきじゃないかと思いますけれども、なぜないのか。
○鴨下副大臣 今回の改正におきましては、これは専門業務型の裁量労働制について、先ほどから申し上げていますように働き過ぎにつながらないように、こういうようなことで労使協定によりまして健康・福祉確保措置の導入を要することとしているわけでありますけれども、この健康・福祉確保措置については、使用者が講じた措置に関する書類の保存を義務づける、こういうようなことであります。
このように、書類の保存の義務づけによりまして、これが例えば労働基準監督署においても、その保存された記録を調査すること等により使用者が講じた措置の状況を把握することが可能である、こういうようなことから労働基準監督署への報告まで義務づける必要は今のところないのではないか、こういうような判断でございます。
○武山委員 何となく、お話を聞いていますと、苦情の数が少ないからみたいな申しようですけれども、やはりこれはこれからどんどんふえていくと思います。皆さんが御指摘しておりましたように、サービス残業とかいろいろな問題がこれからこの導入によってふえていく可能性があるわけですよね。
ですから、いわゆる専門業務型裁量労働制についても、労使協定ではなく労使委員会によって制度の導入を行うことや、本人同意により制度を適用するということがやはり必要じゃないかと思いますけれども、まだそこまで行っていないというのが今の厚生労働省の労働行政ですね。それを指摘しておきたいと思います。
○鴨下副大臣 労働基準法におきましては、これは労働条件の基準の適用に当たりまして一部の適用を除外して、または弾力化する場合には、個々の労働者の交渉力には限界がある、こういうようなことから、事業場の労働者の集団の代表と使用者が合意して協定を締結する、これが大原則であります。
一方、企画業務型裁量労働制につきましては、その対象業務が企業の事務部門の業務として広がりを持つ、それから、専門業務型に比べまして対象業務の範囲が明確でない、こういうようなことから、職場の実態を熟知している労使委員会の決議により、導入する具体的な業務の範囲を確定して、これに従事する労働者が業務遂行に当たり大幅に時間配分の裁量があることを前提として、裁量労働制が適用される、こういうようなことを本人の同意を得た上で適用するのが適切である、こういうようなことであります。
一方、専門業務型の裁量労働制の対象業務は、言ってみれば特別の専門的な業務として確立しているというようなことを前提としているものでありますので、その業務に従事する労働者の範囲はある意味で明確であるというようなことから、労使協定の締結があれば導入することができる、こういうようなことにしたわけでありまして、さきに述べた労働基準法の体系の基本的な原則に照らしますと、本人同意までというようなことは現在のところは必要でないのではなかろうか、こういうふうに考えているところであります。
○武山委員 やはり机上の空論を議論してつくったというのが実態のように思えますよね。現場を知らない人たちがつくったというふうに私には聞こえます。
それで、原則そのようにつくったということですけれども、では、そうさせないための方策はどのようにしていきますか。それでは、そういうふうなサービス残業とか長時間労働とか、そういうものをさせないために、その担保は、そうさせないための方策は何がありますか。
○鴨下副大臣 多分先生が御懸念になっているのは、働き過ぎて健康を害するようなことになりかねない、こういうようなことについてどういうふうな歯どめがあるのかというようなことだろうというふうに思いますが、見直し後におきましても、導入に当たっては労使の十分な話し合いを必要とすることというのが最も基本的な枠組みとして維持されているわけでありますし、長時間労働やサービス残業を、仮にそれが増幅するような場合には、これは労使の話し合いの中で、最も現場に近い方々が十分にそのあたりのことについてさまざまな意味で御検討いただけるんだろうというふうに思います。
いずれにしましても、企画業務型の裁量労働制の導入事業場につきましては、重点対象として計画的にある意味で監督指導を行っていく、こういうようなことが一つでありますし、みなし労働時間の適切な設定も含めて、この制度が入っていった後に適正な運営が確保できるように、厚生労働省としてもしっかりと指導してまいりたいというふうに思っております。
○武山委員 最後になりますけれども、これは労働時間の管理を労働者の裁量にゆだねるという制度でありますから、労働者の健康を確保するという点ではやはり使用者が労働時間を把握すべきであると思います。これを最後に申し述べまして、私の質問を終わります。
○中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
○中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。小沢和秋君。
○小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。・・・・・(中略)
さて、本題である労働基準法改正案について質問をいたします。
先日、我が党の山口議員が取り上げました、NECでは、裁量労働、とりわけ企画業務型の導入では全国の大企業の中でも突出しておりますが、ここでは、本社勤務の入社四、五年以上の主任級、約千名が企画型裁量労働者になっております。昨年の日経新聞によれば、NECは、コスト上昇を抑えるため、裁量労働をホワイトカラー全体に広げることを視野に入れているとのことであります。
厚生労働省は、こういう企業の動きや日本経団連の要求にこたえて、今回、裁量労働の対象を広げ、手続を簡素化する改正案を提出したのかどうか、お尋ねをいたします。
○鴨下副大臣 お答えいたします。
企画業務型裁量労働制につきましては、これは労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大していく、こういうような選択肢の一つとして導入されたものでありますが、今回の改正に当たりましては、この制度がより有効に機能するよう、同制度の導入、運用についての要件、手続を緩和しよう、こういうようなことでございます。この制度の見直しに当たりましては、企画業務型裁量労働制の導入に当たって労使の十分な話し合いを必要とすることなど、制度の基本的な枠組みは維持する、こういうようなことでございます。
ということで、今回の見直しは、昨年末の労働政策審議会の建議におきまして、この制度が多様な働き方の選択肢の一つとして有効に機能するよう、その導入、運用等に係る手続について、制度の趣旨を損なわない程度に簡素化することが求められる、こういうようなことで、公労使三者一致の認識のもとで、具体的に提言された要件、手続の緩和を行おう、こういうようなことでありまして、御指摘のような、民間の企業の特定の要望にこたえる、こういうようなことではないというようなことを御理解いただきたいと思います。
○小沢(和)委員 このNECのような考え方が他の大企業にも広がれば、全国で何十万という企画型労働者があっという間に生まれてくるのではないでしょうか。
NECで裁量労働問題を担当している丸山誠常務は、賃金は労働時間の対価という概念を一掃すると言っております。もう今後は、何時間残業しようと会社は知らぬ、やった仕事だけを評価して、その分の賃金を支払うということでしょうが、これは、今の、労働時間に対して賃金を支払うという労働基準法の大原則を真っ向から否定する考え方ではないでしょうか。私は、企画型の裁量労働者になっても、賃金はみなし労働時間という時間に対して支払われるという点では労働基準法の考え方は維持されているというふうに理解しておりますが、いかがでしょうか。
○松崎政府参考人 確かに、企業において賃金制度をどうするかといった問題につきましては、いろいろ、企業の人事戦略、そういったものを初めとしていろいろ考えられていることだと思っております。ただ、労働基準法上の労働時間と賃金という問題、これは、必ずすべての場合についてそれがリンクしなきゃならないというわけではございませんで、やはり賃金の考え方にはいろいろあろうかと思っております。
ただ、企画業務型の裁量労働制につきましては、賃金とリンクというんじゃなくて、働き方という点、労働時間の配分でございますとか、出勤時間、そういったものを自分で主体的にいろいろ考えて柔軟に働く、そういった働き方で、労働時間規制の部分を弾力化しようというものでございますから、先生おっしゃいますような、賃金と労働時間のイコールといった問題ではないというふうに考えています。
○小沢(和)委員 しかし、みなし労働時間を決め、それに対して一定の手当を支払うというやり方には矛盾があると思うんです。それは、実際の運用の中で早速あらわれます。それは、裁量労働者が決議された時間を超えて働いた場合に、その時間に対し賃金が支払われないという形であらわれてまいります。
私が調べたところでは、多くのところでは、裁量労働者のみなし手当は残業二十時間分程度であります。しかし、実際は、四、五十時間残業している労働者が多い。だから、二、三十時間の残業分は恒常的にただ働きになっている。これはやむを得ない、支払わなくてよいということなんでしょうか。
○松崎政府参考人 企画業務型の裁量労働制でございますけれども、これは、御案内のように、企業の実態、それから企画業務型裁量労働制の対象となる業務でありますとか、対象となる労働者の方、そういった範囲について一番実情を知っておられる労使委員会において、きちんとその範囲を確定し、また、実態に応じて、そういった実態をベースにしまして、みなし労働時間をどう決めていくかといった点、さらには、企業の中におきます賃金制度のどういった部分を適用していくかといった点を考えていただくものでございまして、みなし労働時間を超えても、あるいはまた下回っても、これについて賃金がリンクするというものではないというふうな制度でございます。
○小沢(和)委員 しかし現実には、今私が言いましたように、大抵のところでは、このみなしの時間を大幅に超えているわけですね。
裁量労働者にこれだけ公然とただ働きを認めれば、通常の労働者のサービス残業はいかぬということももう言えなくなるんじゃないですか。きのうは生熊参考人が、これでは残業という概念そのものをなくして、不払い労働をなくそうとしているとも言えるというふうに述べましたが、まさにそのとおり、残業という概念そのものをなくすことになるんじゃないでしょうか。
○松崎政府参考人 まず、基本的な考えでございますけれども、これは労働基準法の考えでございますけれども、労働時間の管理というものはまず使用者の責務であるということ。したがいまして、一般的な事案に対しましては、使用者はきちんと労働者の時間管理をしなければならない。具体的には、自分がみずから現認するとか、それからタイムレコーダーやタイムカードでありますとかIDカードでありますとか、そういった客観的にわかるものによってきちんとしようというのが原則でございます。
ただ、裁量労働制といいますのは、そうではなくて、具体的な時間管理というものを労働者の主体性に任せるというものでございますから、この制度が活用されるとか、この制度があることによって、一般的な原則であります使用者の労働時間管理なり法定労働時間を超えた場合の時間外労働手当を支払う責任、そういったものに影響があるというものではございません。
○小沢(和)委員 しかし、このみなし労働時間と現実の労働時間のギャップを、それじゃほっておいていいのかという問題であります。
もともと、労使でみなし時間を設定するときには、大体平均すればこれくらいの労働時間になるというふうに見込んで決めているはずだと思うんです。だから、やってみて、見込みと大幅に違っていたら、実績に基づいて、みなし時間そのものを実態に合うように修正して、それに見合う手当というんでしょうか、支払うようにしていくというのが当然じゃないんですか。局長は、そういう指導をすべきだと思いませんか。
○松崎政府参考人 これは、先ほど制度の仕組みのところで御説明いたしましたように、こういう制度を事業場の中で設けた場合に、どういうふうに実態に即して制度をつくり運営していくかという問題でございまして、これはやはり、企業の中の実態を一番よく知っております労使委員会、ここでもってきちんと議論されて決まったものでありましょうし、また、決めたものが確かに実態に合わないということであれば、例えば労働者の側からも、苦情処理、苦情申し出といったものもございます。
そういった制度を使いながら、まさにこの労使委員会、みなし労働時間を定めました労使委員会の中で、きちんとその実態を把握して、どういうふうに反映させていくかということを考えていただくべき問題だと思っております。
○小沢(和)委員 だから、端的に言えば、そういうギャップがあるという状態は望ましくない。だから、それを埋めていくようにしてもらいたいということで、指導するということですね。
○松崎政府参考人 これは、何回も申し上げておりますように、企画業務型の裁量労働制でございますので、実労働時間というのは、まさに御本人で管理するわけでございます。
使用者につきましては、健康・福祉確保措置を行うという観点から、例えば、いわゆる拘束時間といいますか、出勤時刻と退社時刻の把握といったような、そういった枠の把握を前提として行っていただくようにしておりますけれども、実際に実労働時間がどうかということについては御本人に任せているわけでございますので、そういった実労働時間がどうなのかということについてはまさに企業内で考えていただくべきことで、それについてどうこうせいということを指導する考えは、今のところございません。
○小沢(和)委員 指導する考えはないというふうに言われたけれども、それでは今言ったようなギャップはほっておくというんだったら、もう、およそ、サービス残業だとかいって盛んに問題になっているけれども、そういうことを指導することもできなくなるんじゃないですか。こういう大穴があいていても、それは手当てする気はありませんと言うんでしょう。
○松崎政府参考人 個別の事業場につきましてどうこうということはできないわけでございますけれども、趣旨としましては、冒頭申し上げましたように、労使委員会の中できちんと実態を踏まえて決めていただくのが趣旨でございますから、ちゃんと実態を踏まえて決めていただきたいということは従来からお願いし……(小沢(和)委員「決めたやつがずれたらどうするんだということ」と呼ぶ)また、指導もしておりますし、ずれたかどうかという判断は、それは企業の中で、労使委員会なり御本人からの苦情の申し出、そういったものにどう対応をしていくかという問題がございますから、それは誠実に対応していただきたいということで、方向性についてどうこうという問題ではないと考えています。
また、こういったことによりましても、繰り返しになりますけれども、一般の労働時間管理の適正化、使用者の責任について影響を与えるものでもございませんし、また、それによりまして、法定労働時間を超えた場合の超勤手当の支払い責任について影響を及ぼすというものではないというふうに考えています。
○小沢(和)委員 ギャップを埋めていけという指導上の方向性も示せないというようなお話では、それは私は納得できないということをもう一度申し上げて、次に行きたいと思うのです。
私は、今でも裁量労働者について、出退勤時刻などをあいまいにしてはならないという仕組みになっていると思うのです。現に、ここに私、厚生労働省が発行した「企画業務型裁量労働制」というパンフレットを持ってまいりましたが、この十二ページを見ますと、裁量労働者でも「法定休日や深夜に労働させた場合には、みなし労働時間に関わらず、実際に働いた時間分の割増賃金を支給する必要があります。」と書いてあります。時間を把握しなければ、休日、深夜の割り増しを払えるはずがないわけですね。このことを考えただけでも、使用者には裁量労働者の労働時間の把握責任が明確にあるというふうに私は理解しておりますが、それでいいですか。
○松崎政府参考人 法定休日なり深夜労働といいますものは客観的に何時からとか決まっておりますので、これは把握しやすいと思いますけれども、具体的な通常の勤務日の実労働時間については、まさにこの裁量労働制の趣旨からいいまして、御本人に、どうやって配分するか、どれだけその日働くかということが任されておりますので、その部分の把握というのを使用者に求めることはできないと思っております。
○小沢(和)委員 休日の話だけされたけれども、深夜も割り増し手当を払わなきゃいけないということになっているんですよ。じゃ、深夜はどうするんですか。
○松崎政府参考人 労働基準法上の深夜は午後十時から午前五時ということでございますので、客観的にわかっておりますので、出退勤時刻、そういった枠の管理、それから、必要によれば御本人からの申告、そういったものにより、手当の部分は把握できるというふうに考えています。
○小沢(和)委員 私は、使用者の労働時間把握の責任はよりはっきりあるというふうに考えておりますけれども、厚生労働省の調査によっても、企画型の労働時間をICカードなどによってきちんと把握しているのはわずか一一・一%だけで、六九・八%、約七割は自己申告であります。そうなっている原因は、大臣の定めた裁量労働制に関する指針そのものに原因があると思うのです。
指針では、勤務状況を把握する方法として、第三の4の(1)イで「当該対象事業場の実態に応じて適当なもの」と指示しております。そして、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったかを明らかにし得る出退勤時刻、入退室時刻の記録によるものであることとしております。しかし、指針が「実態に応じて適当なもの」というあいまいな表現になっているために、七割も自己申告で済ませる結果になっているんじゃないでしょうか。
○松崎政府参考人 今御質問ございましたのは、裁量労働制の指針でございまして、平成十一年のときのものでございますけれども、これはまさに、何回も繰り返しておりますように、裁量労働制という制度を運用するに当たって、御本人に実際の労働時間の配分でありますとか時間の長さ、そういったものを任せながら、それを枠として、労働者の方の健康・福祉措置、特に健康に問題が及ばないようにといった観点から把握すべきものをぎりぎりのところで決めておるものでございますから、出退勤時刻という、その枠を把握するということ。そうしないで、実際の労働時間を把握して管理するということになりますと、これは実質的に裁量制ではなくなるということになりますので、そこのところはこの制度の趣旨からいって、枠を、労働し得る時間帯、そういったものを把握しろということをお願いしたわけでございます。
○小沢(和)委員 こういうずさんな労働時間の把握が、裁量型だけでなく、全国の多くの職場に広がり、サービス残業の温床になっていると思うんです。
先日厚生労働省から打ち出された「賃金不払残業総合対策要綱」の中でも「未だ労働時間の把握に係る自己申告制の不適正な運用など使用者が適正に労働時間を管理していないことを原因とする割増賃金の不払いなどの状況もみられるところである。」と述べられているとおりであります。
私がこの要綱を読んで気になったのは、「適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備」の項目で、せっかく「始業及び終業時刻の確認及び記録は使用者自らの現認又はタイムカード、ICカード等の客観的な記録によることが原則」と書きながら、「自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られる」と、相変わらず例外として自己申告制を認めていることであります。全く同じ表現が一昨年の四・六通達にもありました。こういう形で自己申告を認めているから、何回通達を出し、要綱を決定してもサービス残業がなくならず、裁量労働者の不払い労働が続くのではないでしょうか。
四・六通達以後、労働時間把握の問題で指導したことが全国で何件ありましたか。そのうち自己申告で済ませていたものをICカードなどに改めさせたケースが何件あったか。引き続き自己申告でやむを得ないと認めたものが何件あったか、それはどういうケースか。お尋ねをします。
○松崎政府参考人 一般労働者についての労働時間管理の適正化につきましては、御指摘のように、従来から通達を出し、また先般も大臣の御指示により通達を出しまして、厳格に行うということをやっておりまして、それはもう、今おっしゃったように、原則として使用者みずからが現認するなり客観的な記録をベースとする。しかしながら、どうしてもそのとおりできなくて、自己申告をとらざるを得ない場合にはそれを認めることとして、きちんとやれということで、条件をつけて今進めております。
それで、具体的に従来から、いわゆるサービス残業といいますか、賃金不払い残業の是正のための監督でございますとか、そういうことをやってきているわけでございますけれども、その中で、今おっしゃったように、自己申告制かどうかという点まで調べた資料は、私どもはとっておらない。要するに、件数とかそういったものは、今手元にございませんけれども、全体としてはございますけれども、具体的に自己申告制の場合がどうだったか、それを直したかどうかといった点は、もうそれは現場の監督署が行っているわけでございますので、本省においては全国的には集めておらないということだと思っております。
○小沢(和)委員 いや、数字としてはつかんでいないかもしれないけれども、あなた方は、具体的に出先からこういう場合はどうしたらいいでしょうとかいっていろいろな照会を受けているから、ケースをつかんでいるわけでしょう。だから、実際にそういう自己申告をちゃんと客観的な把握の仕方に改めることができるという場合には、そういう指導をしているわけでしょう。だから、そういう場合はどれぐらいあって、こういうふうにさせたとかいうようなことについては、もう少し立ち入った説明、できるはずじゃないですか。
○松崎政府参考人 確かに、指導して、実際にいろいろ監督規制を行った場合に、自己申告制をとっているところで、例えばタイムレコーダーを設置してこれはできないかということで、実際に会社の方でそういうふうに直したという例はございますけれども、具体的に自己申告制がどういうふうな問題点があって、どうだったかというところまで詳しい把握はしておりません。
○小沢(和)委員 そういう答弁を聞くと、余りそういうことが取り組まれて進んでいるというふうには思えないですね。労働時間の把握というのがそんなに難しいのかということです。
昨年十二月に、広告会社の電通が汐留へ本社ビルを移転しましたが、それを機にJRなどの改札口にあるのと同じゲート型の出退勤管理システムを導入し、会社の入り口に設置いたしました。このことが新聞やテレビで何回も報じられましたので、私は一昨日、電通本社に出向いて、このシステムを実際に見せていただいてまいりました。
電通本社では、労働者は出退勤時にこのゲートで定められた場所にICカードを当てる。そうすれば、何時何分にだれが出退勤したかすべて自動的に記録されます。会社の話では、このシステムは直接には不審者の侵入を防ぐためにつくられたとのことでありまして、今は、労働者への時間管理としては、退出が午前零時を過ぎているとき、翌朝上司のところに連絡するという範囲で利用しているだけで、勤務時間の把握そのものは、各人がパソコンに直接入力しているとのことでありました。
入り口の出入りでも、あるいはパソコンへの入力でも、実に簡単な話じゃないでしょうか。時間の把握は、技術的には何の問題もない。この際、一般の労働者も裁量労働者も、自己申告などやめさせて、今例に挙げたような客観的な把握の方法に変えるようにもっと強力に指導すべきではありませんか。
○松崎政府参考人 まず、一般労働者の場合でございますけれども、これは従来より、労働時間管理の適正化通達によりまして、繰り返しになりますけれども、使用者みずからが現認するとか、また客観的な資料によってやるということを原則に置きつつ、自己申告によらざるを得ない場合はこうだということで、原則としてはこれが望ましいということで指導をし、中には、先ほど具体的な例までは申し上げられませんでしたけれども、そうやって直ったところもあるということは御報告いたしました。
また、企画型、これは専門型も一緒かもしれませんが、裁量労働制につきましては、まさに健康・福祉措置といったものをきちんとやっていくという前提での、いわば余りにも長い在社時間というものをチェックするという意味があるわけでございますけれども、具体的な労働時間につきましてはまさに自分で管理をして自分で配分するというこの趣旨からいいまして、その実労働時間の管理というものを使用者に行わせることは、逆に制度の趣旨をないがしろにするものではないかというふうに考えています。
○小沢(和)委員 いや、私がお尋ねをした趣旨は、今技術的には、客観的に、労働者が何時に入って何時に出たとかいうような、あるいは何時から就業して何時にやめたとかいうようなことはもう簡単に把握できるじゃないか、そういう把握の仕方をもっと真剣に実現するようにしてもらいたいということを言っているわけですが、その点、どうなんですか。
○松崎政府参考人 これは、実労働時間の把握につきましては、今申し上げたような原則ということで進めておりますけれども、どういうタイムレコーダーを置くのかとか、具体的にどういう制度をとるのかというのは、やはり事業場の中でのいろいろな状況がありましょうから、それはいろいろな方法がありまして、これがいい、これをやるべきだというふうには一概には言えないのではないかというふうに思っています。
○小沢(和)委員 しかし、客観的な把握の方法はとるべきだということを私は言っているんですよ。それは認めるんでしょう。
○松崎政府参考人 これは、繰り返しになりますけれども、その適正化通達にありますように、現認するか客観的なもので確認するというのがまず原則であるということですから、それを指導しているわけでございますけれども、それによらないで自己申告制によらざるを得ない場合、こういったこともあることを前提にし、そういった場合には、いろいろ要件を決めまして、これをきちっと守ってくださいよということでやっているということでございます。
○小沢(和)委員 こればかり時間をとっておれませんけれども、自己申告というようなやり方じゃなくて、客観的な把握の方法をもっと推進していただきたい。重ねて申し上げておきます。
さて、大臣にお尋ねしたいんですが、二年前の二〇〇一年八月末に、国連の第五十六回社会権規約委員会が、日本国政府が提出した報告書を審査した上で最終報告書を出しました。
その第十九項では、委員会は、締約国が公的部門及び私的部門の両方での過大な労働時間を容認していることに重大な疑念を表明するとしております。さらに、第二十項では、委員会は、労働者が四十五歳以降、十分な補償なしに、給与を削減され、あるいは解雇されるおそれがあることに懸念を表明するとも言っております。そして、この勧告に対する第三回報告を二〇〇六年六月末までに提出せよ、その報告の中にこの最終見解に含まれている勧告を実施するためにとった手段についての詳細な情報を含めることを要請すると言っております。
これについて、三年後には詳細に報告しなければなりませんが、大臣にお尋ねしたいのは、この勧告に対する検討はどのように進められているのか、今回のこの長時間労働をさらに広げようとするような法改正がこの勧告に対する我が国政府の回答なのか、お尋ねします。
○坂口国務大臣 労働時間につきましては、千八百時間という一つの目標設定をして、それにどう近づいていくか、その目標をどう達成するかということに向かっているわけでございます。
少し景気が低迷しているということも私は少し念頭に置かなきゃならないというふうに思いますけれども、千八百四十一時間というところに来ているわけでございまして、やはりここは乗り越えていかなければなりません。
これを乗り越えていきますためには、やはり有給休暇がもう少しとれるかとれないかが非常に大きな課題でございますので、なかなか全部の企業というわけにはいかないのだろうと思いますけれども、この有給休暇をどういうふうにして皆さんにとっていただけるようにするかということに対する考え方というものを私たちももう少し積極的に企業に対して指導もし、そして言っていかなきゃいけないというふうに思っているところでございます。
さまざまな働き方に対して、労働時間というものがなかなか守られないではないかというお話、先ほどからもあるわけでございますが、裁量労働制にいたしましても、やはり健康を守るということは大事でございますから、健康を守るための物差しというのは幾つかあって、やはり労働時間というものも大きな物差しの一つだと私は思います。
そして、それだけではなくて、やはり労働の強度でありますとかさまざまな問題があるだろうというふうに思いますが、それらのことも含めて、この労使の委員会の中で労働時間というものをどうするかということを決めていただくんだろうというふうに私は思います。したがって、裁量労働制の場合にも、時間的な要素が全くないかといえばそれはそんなことはなくて、そうしたことを念頭に入れながらやはりお話をしていただくんだろうというふうに思っている次第でございます。
二〇〇六年までどうするのかという話でございますが、それまでにさまざまな解決策を模索いたしまして、そして二〇〇六年には立派に、こういうふうにいたしましたと言えるようにしていきたいというふうに思っている次第でございます。
○小沢(和)委員 有期雇用の問題についてもお尋ねをしておきたいと思います。
ここで言う有期労働者の大部分は、パートであり契約社員であります。こういう労働者が、低賃金で簡単に首を切れるというので、使い勝手のよい労働力として今どんどんふやされております。
つい数日前、総務省が発表した労働力調査の詳細結果を見ると、常用三千四百四十四万人に対し、非常用千四百九十六万人。ついに非常用が三〇・三%、三〇%の大台を突破いたしました。女性だけを見ると、この一年で三・一%もふえ、五一・二%と五〇%の大台を超えております。女性労働者の過半数がパートなど非常用になってしまいました。今や女性はパートなどが当たり前という大変な時代になってきました。今回の法改正で、この傾向はますます拍車がかかるのではないでしょうか。
先日、大臣は、企業は基幹部分は今後も正社員でやっていくことに変わりはない、だから今後もそれほど大きな変化はないという趣旨の楽観的な見通しを述べられました。しかし、どこまでを基幹部分と考えるのか。企業の目で見れば、非常用に変えられる部分はまだたくさん残っているんじゃないか。今後もそれほど大きな変化はないという大臣の楽観的な見通しには根拠があるんでしょうか。
○坂口国務大臣 先日私が申し上げましたのは、今後の経済情勢を見た上でのお話を申し上げたというふうに思っておりますが、現在、確かに、女性の働く人数と申しますか、雇用希望というものが非常にふえてまいっております。そのふえてまいりましたところがパートという形になっておりますことは御指摘のとおりというふうに私も思っておるわけでございますが、さりとて、それじゃ、現在の常用雇用のところでどうかということを最近の統計等で見ましても、割に、案外、中高年のところの皆さん方の常用雇用というのはそんなに変わっていないわけでございます。
若干変わってきておりますのは、若年のところ、若い皆さん方のところで雇用が十分に行き渡っていないということがございますのと、若い女性の労働者がパートのところになってきているということは事実としてあるというふうに私も思っております。
今後これが継続していくのかどうかということにつきましては一概に言えない、それは経済状況の動向によってかなり影響されるということを先日も私は申し上げたわけでありまして、経済動向がかなり回復をしていくということになれば、私は、常用雇用というものにまた企業の目は向いていくだろうというふうに思っている次第でございます。その辺のところを多分この前申し上げたのではないかというふうに思います。
○小沢(和)委員 有期労働者にも同一労働同一賃金を保障し、常用労働者と均等に待遇すべきことはだれが考えても当たり前のことだと思いますが、どうしてパートなど非常用労働者は常用の半分程度という賃金水準に甘んじなければならないのか。パートなどの賃金の抜本改善のために、当局として具体的にどう努力をされているのか、お尋ねをします。
○岩田政府参考人 パートタイム労働者の適正な労働条件の確保や正社員との処遇の均衡の問題は大変重要な課題であるというふうに認識をいたしております。
パートタイム労働対策は、パートタイム労働法に基づいてこれまで推進してまいりましたけれども、今後のあり方について、昨年来、労働政策審議会で議論していただき、ことしの三月に報告をまとめていただきました。その報告では、正社員とパートタイム労働者との間の均衡を考慮した処遇の考え方、すなわち、どのようなパートタイム労働者にどのような処遇をすれば均衡を考慮した処遇になるのかといったようなことについて、パートタイム労働法に基づく指針に具体的に示し、それを社会的に浸透、定着させることが必要である、そういう報告でございました。
厚生労働省としては、この報告を踏まえまして、指針の改正など必要な措置をなるべく早く講じてまいりたいと思います。
○小沢(和)委員 労働者が契約更新を望むときには、更新を拒否する社会的に合理的な特別な理由がない限り、自動的に更新させるように指導していくべきではないかというふうに思いますが、その点、いかがですか。
○松崎政府参考人 これは有期労働契約でございますから、期間でありますとか、更新するかしないかといった点、そういった点は、それぞれの契約当事者の合意によるものでございますから、一概にそういうことは言えないと思っております。
また、裁判例におきましても、確かに、個々の事情によりまして、個別の判断によりまして、今手元にございませんけれども、かつてその事業場におられた臨時の方については一人の例外もなく更新されておったけれども、ある人についてだけ更新されなかったということが、解雇権濫用法理からの類推した格好で判断された例があったと思います。
こういったように、裁判例においても個々いろいろ、具体的な事例によってまちまちでございますので、そういったものを一律にやるということは、まさに民法原則の大修正ということになるものでございますから、慎重な検討が要るというふうに考えています。
○小沢(和)委員 時間も迫ってまいりましたので、最後に、出向、転籍についても一言お尋ねをしたいと思います。
出向、転籍については、審議会でこれまでも検討され、引き続き検討されると聞いております。ぜひしっかり審議して、企業の一方的横暴がまかり通ることのないようにしていただきたいと思います。
最近、私が自分の出身職場である新日鉄の後輩たちから話を聞いた中で、特に訴えられたのが、出向、転籍が最近ますます会社のやりたい放題になっているということであります。以前は、出向、転籍の場合、賃金だけでなく、退職金の差額まで全額補償した上で本人の同意を求めてまいりました。ところが、だんだんその補償水準が切り下げられ、最近提案された、新日鉄化学の職場から同じ新日鉄の子会社である新日鉄高炉セメントへの転籍の場合は、賃金の補償は一割だけ。それも、五年たったら順次減らして、十年で打ち切りという内容です。残りの九割は移籍先の会社の業績次第というんですから、移籍後の賃金保障はほとんどないに等しい。形式的には同意を求めるというんですが、本心では、だれも同意する者はいません。
しかし、新日鉄化学の職場では、出向に同意しなかった有本健次さんという労働者が、四年以上も一切仕事を与えられず隔離され、今も一人部屋に押し込まれている。そういうひどい扱いを見せつけられては、普通の労働者はノーと言えるはずがありません。
私は、こういう人権問題というべき深刻な状況が今日日本じゅうの多くの職場に広がっていることを指摘したい。昨年も私は、住友金属和歌山で出向、転籍の強制が行われていることを本委員会で指摘し、指導を求めたところ、すぐ強制の動きがとまり、上司に陳謝させるということもできて、大変喜ばれました。四年以上も職場から隔離されたまま、近く定年を迎えようとしている有本さんを直ちに一人部屋から出し、会社が人権侵害について謝罪すること、また、今回の出向、転籍についても、住友金属のときと同様に強要せず、本人の自由な意思表示を保障し、労働者が今後も安心して働ける職場にしてほしい、こういうことですが、そのために至急ぜひ指導していただきたいということをこの機会に要請します。
局長の考え方をお尋ねします。
○松崎政府参考人 まず、一般論で申し上げますと、出向、転籍に係るトラブルという問題につきましては、これは御案内のように、例えば労働組合法上の不当労働行為に当たる場合でございますとか、また労働基準法上の国籍、信条等による差別に当たる場合、こういった場合におきましては私ども行政の中でも対応できるわけでございますけれども、一般の事案につきましては、これは民事上の話になるんじゃないかと思っております。
また、個々具体的な問題につきましてお答えする立場じゃございませんけれども、こういった事例につきましては、やはり具体的な事情に応じまして労使の当事者間で十分話し合っていただくことがまず第一かと思っておりますし、また、具体的なトラブルに当たりまして、援助するということもございますので、これは例の、御案内のように、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律というのがございまして、いわゆる個別労働関係の解決促進制度というのがございますから、そういった制度へお申し出がある場合には、その制度の中でまた紛争の解決に努めていくことができるんじゃないかというふうに思っております。
○小沢(和)委員 もう時間も来ましたから、これ以上議論ができませんけれども、これは労使の同意ということで、成り行き任せにしておくことはできない問題なんだと、ぜひ国としても関心を持って取り組んでいただきたいということを重ねて申し上げて、質問を終わります。
○中山委員長 次に、阿部知子君。
○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日までの審議を踏まえて、そしてこの間、修正案の作成に向けた、与党並びに野党民主党の皆さんを中心とした協議に敬意を払いながら、しかしながら、やはり私自身がこの法案について抱いている大きな危惧をどうしてもきょうは大臣並びに関係の実務担当者に御質疑いたしたいと思い、十分のお時間をいただきます。
私がこの十分で伺いたいことは、主に女性たちの出産や育児にかかわる点でございます。冒頭、質問予告をしてございませんが、坂口大臣にお伺いいたします。
私はこの法案を見ましたときに、一年の有期雇用が三年に延長される、また、三年は五年にということを見たときに、一番最初に、もう直観的に危惧を抱きましたのは、ちょうど女性たちが子供を持とうかな、持つことを選択しようかな、一番そうした思いを抱く年齢に、その方たちの働き方が、有期で、今まで一年が上限であったものが三年に延長されるという事態が果たしてどのように影響するだろうかということでありました。
大臣は、直観としてというと失礼ですが、この法案の提出に当たって、まず、そうした女性たちの出産あるいは育児にかかわる問題と今回のこの労働基準法の改正のクロスするところについては、御認識はいかがであったでしょうか、お願いします。
○坂口国務大臣 有期になる皆さん方が、どういう方がなるのかということは、確かに今阿部議員がおっしゃったような年齢の人たちも、それはいるかもしれませんし、子育てが終わった後、有期やろうかという人もいるかもしれませんし、そこはいろいろあるんだろうというふうに私は思っております。ですから、女性の方も多いでしょうし、その中の年齢もさまざまだというふうに私は思います。したがって、その中に出産適齢期の皆さん方がお見えにならないと私も申し上げているわけではなくて、確かにそういう皆さん方もお見えになるだろうというというふうに思っています。
きょう午前中にも少し議論がございましたが、その皆さん方の問題、例えば、一年というのであれば一年ということで決着がつくかもしれませんけれども、三年ということになってくると少し長くなってまいりますから、その中で、妊娠ということだってあり得るというふうに思うわけです。そうしたときに一体どうするかということにつきましては、これはやはりあらあらのルールを少し決めておかないといけないだろうというふうに思いますし、よく議論をしたいというふうに思っております。
また、それぞれの企業におかれましても、労使の間でのお話し合いというものもあるわけでございますけれども、その前にやはりもう少し大きな立場からそれを、そうしたときにはどうするかというようなことも少し尺度を決めておかないといけないのではないかというふうに思っている次第でございます。
○阿部委員 いつも前向きな御答弁で大変ありがたいと思いますが、私は、本来はこうした法案の提出に先立って、この問題がきちんと把握されるべきだと思うのです。
例えば、有期雇用の労働者七百二十万人のうち、女性たちの何歳くらいの年代がそうした形態で働いているのか。せんだって、派遣労働法のときも同じことを申しましたが、やはり派遣労働ですと、二十歳代、三十歳代が大変に多い。そして、今の育児休業法ですと、期限の定めなき労働者に対しての適用でございます。
今の坂口大臣の御答弁を聞かれて、岩田局長に伺いますが、今の大臣の御答弁は、こうした有期という働き方の拡大と合わせて、育児休業法の、ある意味での、大きな意味での見直しも必要ではないかという御意見と承りましたが、原局として、お考えを伺いたいと思います。
○岩田政府参考人 仕事と子育ての両立を保障するための就業条件の整備をするというのは、また大変大事な課題であるというふうに思っております。
現行の育児休業法は、育児を理由として雇用の中断が起こることがないように、その継続を図ることを目的といたしておりますので、したがいまして、雇用期間が一定の期間にあらかじめ限られている期間労働者は、その対象から除外をしているものでございます。しかしながら、労働基準法が改正され、期間雇用者の法制が変わるということでございましたら、そのことがこの育児休業法の体系の中にどういう影響を及ぼすことになるのか、そういったような観点も含めて、検討する課題の一つであるというふうに考えております。
労働政策審議会で、四月から、育児休業法全般の見直しに入っておりますので、その中で、この委員会の御審議も踏まえて検討がなされるということを期待いたしているところでございます。
○阿部委員 もう一点、岩田局長にお願いいたしますが、例えば、育児休業法の指針、通達の中に、そうした期限の定めなき労働者でなくても、実態において業務内容がそれ相当であることということとあわせて、契約が更新されていることという一項がございます。そういたしますと、有期が三年になると、契約更新とは、三年、三年、六年、あるいは五年、五年、十年たっていないと、この指針、通達にはひっかかってこないということも、現実に、このとおりに解釈すれば起こってまいります。
私は、三年、三年、六年、その間に、女性たちが産むことを選べない、すごく重要な、本当に、生存権あるいは自分の生き方の制約になってくると思いますが、この一点をもっても、私は、原局がみずから問題点を指摘して、労政審なら労政審に投げるくらいの覚悟がないと、女性たちの均等待遇というのは保障されていかないと思いますが、今の私の一点、この契約が更新されていること、この通達そのままにお考えであるのかどうか、お願いします。
○岩田政府参考人 今、委員が触れられました指針は、有期労働契約が実質的には期間の定めのない契約となっている状態かどうかということを判断するときのための指針でございまして、有期労働契約の雇いどめの可否が争われた過去の裁判例を踏まえまして、期間の定めのない契約と実質的に異なるか否かの判断をするに当たって、幾つかの留意点を記しているわけでございます。
契約の更新だけではございませんで、業務の内容がそもそも恒常的であるかどうかですとか、継続雇用を期待させるような事業主の言動があったかどうかとか、更新がされたか、あるいは更新の手続が形式的であるかどうか、そういったようなことを総合的に判断をするということになっております。
したがいまして、今先生が言われました点につきましても、契約法制が変わるということでしたら、そのことも含めて、これからの審議会の中での議論も踏まえて、指針のあり方もまた再度検討してみたいというふうに考えます。
○阿部委員 最後に一問だけ、松崎局長にお願いいたします。
先ほど大臣答弁で、労働時間の短縮、わけても有給休暇の取得は非常に重要である、そして、この法案提出に至る実態調査の中で、実は、先回の私の質問に、松崎局長は、有給休暇と育休については調査をしていないが、する必要もないと、あえて短絡的に、失礼な言い方ですが、おっしゃっていました。しかしながら、きょう、ここで大臣の御答弁を聞かれて心に変化が起きたのではないかと推察いたしますので、育休の状況、そして有給休暇の取得状況、この有期労働者たちの現状についてきちんと実態調査をすること、そして、七百二十万人の年齢分布、特に女性たちのありようについてきちんともとデータをお出しになることを要求したいと思いますが、簡潔に御答弁をお願いします。
○松崎政府参考人 有期労働者の問題につきましては、昨年暮れの労働政策審議会の建議におきましても、この場でもいろいろ御紹介があったと思いますけれども、トラブルの発生の状況を把握して審議会に報告しろ、さらに、もうちょっと全体的な有期労働契約のあり方について検討を行うということが述べられております。
したがいまして、そういった検討をこれから行っていくに当たりまして、どういったデータをもとに検討していくのがいいのかということになろうかと思いますけれども、そういった場合に、今御指摘の有給休暇なり育児休暇なり、そういったものがどの程度必要なのか、また、必要であるのかないのか、そういった点を含めましても、今後の検討の中で考えていきたいというふうに思います。
○阿部委員 有休も育休も必要なものですから必要かどうかを検討されては困りますから、それを申し添えて、終わります。
○中山委員長 次に、金子哲夫君。
○金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
この労基法の質問の最後になると思いますけれども、これまでの論議を聞きながら、やはり解けない幾つかの疑問について御質問したいと思います。
三十日の日に閣議で、国民生活白書というのが決定をされた。ことしの国民生活白書は、「デフレと生活―若年フリーターの現在」というのを提出されたと聞いております。その中で、非常に若年のフリーターがふえたということが記載をされておりますが、同時に、この委員会でも、派遣労働、そして今回の有期雇用の期間延長の問題などを通じて指摘をされてきた、つまり、日本の基幹産業における労働構成のありようというものが問題になってきたわけですけれども、その点についても、白書はこのように指摘をして記載されています。
身分が安定しない就業者の増加は、生産性を押し下げ、社会を不安定にする可能性があると結論を出した。国民生活白書は、明確に、私たちが問題だと指摘をしてきたことを、今日のデフレ状況下における労働市場の問題として指摘をしておりますけれども、このことについて、厚生労働省としてはどのような見解をお持ちでしょうか。
○坂口国務大臣 突然のお話でございますが、国民生活白書でございましたか、あそこで上がっております数字は、フリーターの数が四百十七万でございましたか、大変大きな数字でございました。我々が出しておりますのは、約二百万、百九十三万という数字を出しておるので、非常に大きな違いがあるわけでございますが、これは、フリーターの定義の仕方が違う。
我々が言っておりますフリーターというのは、パート、それからアルバイトで働いている人、そしてさらに、今までの人は、パート、アルバイトを求めている人、探している人を含めてフリーターというふうに言っているわけです。年齢も、十五歳から三十四歳までという限定づきでございます。
今回出ました国民生活白書の方は、その他の働き方をしている人も、今、失業しておる人も、全部入れているわけでございまして、定義の仕方が非常に違いますので、ああいう結果になったというふうに思っているわけでございます。
現在のさまざまな働き方が将来を不安定にするというのは、私は、少し短絡過ぎた言い方ではないかというふうに思っております。
多様な働き方ということは、そのこと自身が現在の経済の打開に結びついていくというふうに私は思っております。現在の経済が打開をすれば正規の常用雇用がふえていくことは間違いないというふうに私は思っております。なぜなら、現在のこの状況の中で新しい産業を生み出す動きが非常に活発に進められておりますが、そこで必要なのは何かと言えば、専門的な知識を持った人が欲しいという、そういう人材の養成でありまして、その人材をどう構築していくかということとこれはかかわってまいりますけれども、私は現状が続いていくとは思っておりません。現在の状況を打開する一つの段階として多様な働き方というのは必要なことだというふうに私は理解をしている次第でございます。
○金子(哲)委員 大臣が言われるように、楽観的にそういうふうに見る見方も一つあると思います。しかし現実、この間、派遣労働も今回の労働基準法で提案されていることも、これは一時的なものでないわけですね。労働市場を、派遣労働も生産現場まで拡大をする、今回の有期雇用も一年を三年に拡大をするということで、これは、少なくとも不安定な雇用の市場を拡大する方向を実質上やっているということじゃないですか。
そこで、国民生活白書は、今大臣は若年のフリーターの数字のことをおっしゃいましたけれども、私はそのことを申し上げているわけではなくて、身分が安定しない就業者の増加は生産性を押し下げ、社会を不安定にする可能性があるという結論を出している、こう指摘をしているわけですよ。そうしますと、この国民生活白書が言うような方向と厚生労働省が今回この国会に提出をした法案とは、実は、実体上は離れている、むしろこういうことを加速させる中身を持っているということです。
それは、大臣のように楽観的に、景気がよくなったら正社員を雇用してくれるだろうなんということ、それは希望的観測であって、制度として拡大したら、それを安上がりで、そして使い放題、いわば首切りも自由だ、期限さえ来ればどっちにでも行くような、そういう雇用を拡大しておけば、そこに手を染めれば企業がそういう方向を目指していくというのは紛れもない論理じゃないですか。そして企業の、いわば経営者側の規制緩和の論理によってこれをやったわけですね。
一方で、私は、政府の中にも、これは問題だという指摘をする、やはり正しい指摘をする人たちがいると思ってここの国民生活白書を読んだわけですけれども、結局のところ、国民生活白書が危惧しているような問題に対して厚生労働省は逆行する方向を実は示している、こう指摘をせざるを得ないわけです。
しかも、この中にフリーターのお話がありますけれども、最近は、若年層は多様な働き方を希望しているということが言われておりますが、私が調査した数字ではない、閣議で決定した国民生活白書に示された数字で、フリーターの七割以上は正社員希望だが、新卒時にフリーターだった人の半数以上がその後もフリーターを続ける、企業は正社員として採用する年齢上限を二十代としており、フリーターの期間が長くなるほど正社員への道は狭くなるということを指摘して、みんな何も喜んでフリーターとか有期雇用とかをやっていないというのは、閣議で決定した国民生活白書に示されているじゃないですか。(発言する者あり)閣議が間違っているなら、大臣も出席ですから、大臣も閣議で決定されたわけですから、坂口厚生労働大臣もこの国民生活白書を認められたということではないですか。
七割以上の正社員希望がある、つまり多様な働き方があるなどということを口実にされているけれども、その多様な働き方は希望していても、本来一番重要なことは、正社員としてしっかりと、いつまでも働きたい、働き続ける条件を確保してほしい、そのことが一番強いと思いますけれども、その点についてもう一度確認したいと思います。
○坂口国務大臣 私も、フリーターをそのままにしておいていいと考えているわけではなくて、これはできるだけ早く、多くの皆さん方が正社員になりたいというふうに思っておみえになるわけでありますから、その皆さん方をどういうふうに正社員に結びつけていくかということはやらなきゃいけない、そう思っているわけでございます。その中に含まれている失業者の皆さん方も、ちゃんと就職できるようにしていかなければならないといふうに思っております。
ただ、私は、正社員を希望する人に対してはそういうふうにしていかなければならないけれども、そういうふうな働き方ではない働き方を望んでいる人たちもいるということも事実でありますから、そこまで否定をする必要はない。私は、その人たちにはそういう働き方をしていただいていいのではないかというふうに思っています。
そのことと、先ほど申しましたように、現在のこの経済状況を打開していく雇用対策というのは一体何か。それは、現在常用雇用がたくさんあって、そうしたらそれはもう何も問題ないわけですよ。だけれどもそれがない。そのない状況のところをどう乗り越えていくかといえば、さまざまな、契約雇用でありましたりあるいはまた有期雇用であったりというようなことも織りまぜて現状を乗り越えていく以外に方法はない。それで乗り越えることができれば常用雇用がふえてくる。全部常用雇用なんて私は申し上げているわけではない。全体としてそういう傾向になってくるのではないかということを私は申し上げているわけで、委員とそんなに違ったことを私は言っているつもりはございません。
○金子(哲)委員 今、多様な働き方ということをよくおっしゃいますけれども、それは、本当に労働者に選択の権利がある場合のことをいうと私は思うんですよ。これだけ失業者がたくさんいて、とにかくどこでもいいから働かなければならないというような状況をつくった上で多様な働き方を提供するというのはあっていい一つの方法だと私は思います。要望にこたえる道だと思います。しかし現実は、三百五十万を超える完全失業者、五・四%という完全失業率がいる。しかし、潜在的にはもっと多い失業者がいると言われている中にあってこういうことを言っても、それは多様な働き方にこたえているとは到底言いがたいと私は思います。
さらに、本当の意味で多様な働き方、いわば労働者が本当に労働者としてのその生きざまといいますか働きを、能力を発揮する条件をつくるとすれば、少なくとも今ある有期や派遣労働者と正規職員とのいわば労働諸条件における待遇の差というものを解消していくということがなければならないと思うんですよ。そういう方向というのはどのようにこれから模索をされていくんでしょうか。
○坂口国務大臣 働き方によりましてそれは違うというふうに思います。例えば、派遣業なら派遣業のときに、今働いているところの賃金と同じかどうか、それはなかなか言いがたいところはあると思うんです。中には、優秀な人は、派遣業で来た人の方が高いことだってあり得ると思うんですね。しかし低いこともあり得る。その派遣業の皆さんが幾つかの職場をかわられますときに、それでは、その行き先の賃金体系に合わせていつもかえるのかといえば、そんなわけにもいかない。それは派遣元との契約で決まることでありますから、そこはそう一概には言えないだろうというふうに思っております。
しかし、すべてがそうだということを言っているわけではございませんで、パートタイム労働等におきましては、御指摘のように、審議会におきましても、常用雇用の人たちと同じ仕事の内容で、同じ時間をやっているというのであれば対等にいけるように努力をしなければならないということを指摘もされておりますし、私たちも実はそう思っているわけでございます。パートの皆さん方もいろいろでございまして、そして、パートといえども非常に責任を持ってお仕事をなすっている皆さん方があります。こういう皆さん方にはやはりそれなりの評価をして、常用の皆さん方と大きな差があってはならない、私たちも努力をしていかなきゃならない、そういうふうに経営者の皆さん方にも訴えていかなきゃいけないというふうに思っているわけでございます。
いろいろ多様化してまいりましたから、一概に一本にまとめてなかなか申し上げることはできませんけれども、そうしたことも念頭に置いてやっているということは御理解をいただきたいと思います。
○金子(哲)委員 今大臣は、パートは同じような仕事をしておれば正規の職員と同じような待遇をやはりやらなきゃいけないと極めて重要なことをおっしゃいまして、私もそのとおりだと思います。そのように、少なくとも同じような仕事をしておれば同じような待遇に近づけていく、ほぼ同じような状況になっていくという大臣の今おっしゃった答弁を、均等局長いらっしゃいますけれども、パート法の検討の際にはそのことを念頭に置いてぜひ検討していただきたいと思うんですよ。その点について、今大臣がそのようにおっしゃっていますから、そういう方向で検討されるんでしょうか。そのこととあわせて、三月にパート研の報告が出ておりますけれども、今後のこの検討の方向性が決まっておれば教えていただきたいと思います。
○岩田政府参考人 基本的な均衡処遇の考え方については、大臣がおっしゃったとおりだと思います。
審議会で三月に報告がまとまりましたけれども、その報告書の中では、さらにパートタイム労働者を幾つかグルーピングをいたしております。仕事が同じかどうかというのがグルーピングをするときの最初の基準でございます。その次には、いわば活用方針といいましょうか、雇用管理区分、配置転換のさせ方などの活用方針が区分として、実態として同じかどうかというのも基準として考えようということも報告書に入れております。これらのことをわかりやすい形で、パートタイム労働法に基づきます指針で、これは大臣告示ですが、指針で示し、それを世の中に周知定着させるということがまず今求められていることではないか、そういう報告でもございましたので、なるべく早急に指針の改正その他必要な対応をしていきたいというふうに考えております。
○金子(哲)委員 重ねてですけれども、大体目標はいつごろでしょうか。
○岩田政府参考人 指針の改正案を具体的に取りまとめまして、審議会に諮問、答申するという手続がありますが、私としては、夏までにはそのことをやりたいというふうに考えております。
○金子(哲)委員 パートの問題については前々からいろいろ問題が指摘をされ、重要な検討事項だということになっていますから、できるだけ早く方向性を出して、そして、今大臣が言われたように、同一労働、少なくとも同一の作業で同じような仕事をされている場合には、できるだけ均等に近づくようにぜひやっていただきたいと思います。
私は今パートの話だけ出したんですけれども、有期も含めてすべてのところで、やはり大臣がおっしゃったように、確かに専門職、ごく限られた専門職では高い給料をもらっている。それは専門職という特殊な場合でありまして、ほとんどの場合、ほとんどの働いていていらっしゃる皆さんの作業実態からいいますと、そういう状況ではないわけですね。そちらの方が数が多いわけです、一般の場合の方が、パートの場合も。ですから、そこをやはり見ていかないと、そこはやはり明らかに劣っているわけですから、そこに対してやはり全体として均等待遇の方向を示していくということが私は重要だというふうに思っております。
実は、先般も一回質問しましたけれども、これは、本会議での小泉総理の答弁も、同一の業務内容によって賃金は定められるのであって、いわば正規職員だとか有期雇用だとかいうことで、雇用形態で決めるものではないということを指摘されているわけですね。逆に言いますと、そうであれば、同一の業務内容ということに、ほとんどの場合、例えば有期雇用でも一年のものが何回も繰り返し雇用されて、ほとんど社員と変わらない仕事をしているというケースがいろいろと指摘をされております。そうしてまいりますと、局長にお伺いしたいんですけれども、そういうケースというのは同一業務内容に従事しているというふうに判断していいんではないでしょうか。
○松崎政府参考人 一般的に言われる同一労働同一賃金ということと同じかもしれませんけれども、結局、同一労働とは何か、職務内容が同じか、そういうことだと思いますけれども、職務内容なり仕事の中身が一緒かといった場合に、たまたま目の前で現象としてあらわれている、やっていることが同じかどうかというんじゃなくて、もちろんそれは前提ではあるでしょうけれども、それ以上に大きなものは、やはり御本人のその職場における責任でありますとか、異常が起こった場合に対応できるかどうか、対応の責務、それからまた、キャリア形成の中でどういうふうにその仕事が位置づけられているかといったようなこと、考えつくだけでもそれだけのことがあろうかと思います。
したがいまして、たまたま見たところ同じ仕事をしているからといって、直ちに、職務内容が同じ、同一労働ということにはならないということで、やはり、パート法、パートの関係でも議論になっておりますように、いろいろメルクマールといいますか、そういったものをきちんと整備していかなければならないんじゃないかというふうに思っています。
○金子(哲)委員 その整備していかなければならないというのを何度も聞くわけですけれども、本来、もう今までに整備してもらわなきゃいけないわけですよね、これだけ均等待遇の問題が大きな課題になっているわけですから。
例えば、責任問題のことをおっしゃいましたけれども、では、一、二具体的な例でお伺いしますけれども、これから、派遣労働も含めてですけれども、派遣労働をとりあえずおいて、製造業の、例えば自動車の製造業、同一のラインに入ったというような場合は責任も業務内容も同じだと思うんですけれども、こういうものは同一業務内容と規定していいんですか。
○松崎政府参考人 同一のラインに入っておって同じような業務をたまたましておっても、やはり責任というのは職位とかそういうものによって違うと思いますし、また熟練の度合いにより、また異常時への対応というものの責務の重さといったもので違ってくると思います。したがいまして、同じベルトコンベヤーの中のラインに同じように入っておるということによって、直ちに、同一の職務内容、同一労働ということは言えないと思います。
○金子(哲)委員 それじゃもう一個お伺いしますけれども、今電話による販売が盛んになっておりますけれども、電話通信による。こういうところの受けている人たちは、正社員と派遣とか有期の人たちが併存して仕事をしているんですよ。そして、選択の自由もなく、コンピューターで管理をされて、あきの受信者に対してどんどん入ってくるんです、順番に。そして、作業をして、それを受けて受注をして、発送伝票を切るわけです。こういうのは、発送伝票を切る、受信をする、発送伝票を切る、もうすべて責任はその人に負わされているんですね。こういうのはどうですか。
○松崎政府参考人 それは、個人個人の請負ならそういうこともあり得ましょうけれども、組織としてやっている以上、やはりその組織体としての責任者というものもあるでしょうから、そういった責任の度合いというのもおのずと違いますし、また、異常な事態への対応ということで、苦情があった場合、それも非常に問題のある苦情、法律問題の場合はだれが対応するか、そういったことによっても変わってきますので、やはり一見やっていることが同じだからといって同一労働というわけにはいかないと思います。
○金子(哲)委員 結局のところ、局長の答弁を聞いていたら、幾ら同じ作業を何年間も続けても同一労働としてはみなされないということなんですよ。結局、あなたがおっしゃったのは、正社員と有期雇用という身分関係によって決まるということをおっしゃっているんですよ。小泉さんはそうではないんですよ、小泉総理は。そういう雇用関係によって決まるんではなくて、同一の業務内容かどうかによって賃金は決定されるということを本会議で答弁されているんですよ。だけれども、今局長の答弁をずっと聞いていたら、結局、責任がどの範囲にあるのかないのかということだけが理由になる。それで、そこの責任というのは何かというと、雇用形態が正職員か有期かということに結局のところなっていくということになって、同じことを繰り返しているだけじゃないですか。結局、均等処遇というのは、いつまでたってもそれを進めることはできないということをあなた自身が認められていることじゃないですか。
では、もっと、具体的にどのようなことがあったら同一労働同一賃金ということが言えるわけですか。この総理がおっしゃったことはどういう意味ですか。
○松崎政府参考人 五月六日の本会議で総理大臣の答弁があったわけでございますけれども、これは、具体的にはこういうふうに答弁されております。「労働者の待遇は職務内容などに応じて決定されるものであり、有期契約労働者と常用労働者との間で待遇の均等化を一律に図ることは困難」であります。こういうことを言っておりまして、職務内容ということですから、その職務内容と申しますのは、先ほど申し上げましたように、いろいろ具体的にやっている職務だけではなくて、その背景にある責任でありますとか責務、キャリア形成などの位置づけ、そういったものすべてが絡んでくるということを私は申し上げたわけでございます。
したがいまして、じゃ、例えばどういう場合が職務内容が一緒かということでございますけれども、ほかの、例えば責任の点でいいますと、最近マスコミなんかで取り上げられておりますように、コンビニとかスーパーの店長さんで、パートだけれどもきちんと店長としての責任を果たしている、その方についてはやはり待遇というのは一般のパートの方とは違うというふうな報道がございました。
したがいまして、短時間労働でありましても、責任の度合いが、一般のほかの店長さんと同じような責任を持ち、権限を与えられるというのであれば、それは一つの例になるんじゃないかなというふうに思っております。
○金子(哲)委員 だから、私が言った例なんかをつぶさに調査してほしいと思うんですよ、それであれば。もっと、職場実態と作業実態をしっかりと見てほしいと思うんですよ。訴えられて、裁判所が言うたから、初めてそれを均等だ、支店長と同等の待遇だというようなことでなくて、先ほど言いましたように、例えば、電話の、通信販売で受け付けしている人たちなんか、本当に同じですよ。電話機何台か並んだところに席を同じくして、次々と呼が順番に入ってくるんですよ、これは、あいたところに。そこに判断のしようなんかないんですよ。そういうところで、実際は、事実上、同一業務で同一内容で働かされているのが今の有期の雇用、派遣労働者の職場実態だということなんですよ。
そこを全く無視をして、働いたこともない、そこの現場を全く知らない人たちが机上でそういう精神的なものだとかいうことでなくて、だれでもこれが同一労働だということがわかるような基準をやはり明確に作業としてしていかなければ、これはいつまでたっても、結局のところ、派遣労働も有期労働の人たちも待遇は落ちたままの状況で、均等処遇というのは進んでいかないと思うんですよね。それを放置したままになる、そのことを私は強く申し上げておきたいというふうに思います。
次に、有期雇用の雇いどめなどに対して、期限が来たときのトラブルを防止することが非常に重要な課題だというふうに言われておりますけれども、これに対してはどのように強化をされようとしているんでしょうか。改めてお伺いしたいと思います。
○鴨下副大臣 有期労働契約におきましては、契約更新の繰り返しによりまして一定期間雇用を継続したにもかかわらず、突然、契約更新をせずに期間満了をもって退職させる、いわゆる雇いどめのトラブルというのが一番多いというのは、先生おっしゃるとおりであります。
有期労働契約が、労使双方にとってより良好な雇用形態として活用されるようにするためには、このような有期労働契約等の雇いどめをめぐる紛争の防止、これはきちんとしていかなければいけないというのはもっともなことだろうというふうに思います。
今回の改正におきましては、厚生労働大臣が、期間満了に係る通知に関する事項その他の必要な事項につきまして、有期労働契約の締結及び更新、雇いどめに関する基準を定める、こういうようなことにしているわけでありまして、これは、当該基準に基づきまして、労働基準監督署が必要な助言そして指導を行う、こういうようなことでありまして、実際には大変な、雇いどめにかかわるいろいろなトラブルがあるわけでありますから、できるだけそれが未然に、さらに少なくなるようにしてまいりたいというふうに思っております。
○金子(哲)委員 今おっしゃったことは、指針として、既に平成十二年の十二月二十八日に出されておりますね。その内容とどれぐらい変わるんでしょうか。短くお答えいただきたいと思いますけれども。
○鴨下副大臣 短くお答えしますと、おっしゃるように、これは平成十二年の十二月二十八日に指針が定められているわけでありますけれども、これをある意味で土台にといいますか、それに加えて、今先生から御指摘いただいているようなことを参考にして最終的に基準を定めてまいりたい、こういうようなことであります。
○金子(哲)委員 結局、私がなぜそのことを言ったかといいますと、既に私は、内容としては、この指針が、読んでみれば、かなり指導するための指針の中身になっていると思うのですよ。ただ、しかし、これは使用者に対しては、努めるということになっていますから、実際上、基準監督署の現場は、指導助言をするといっても、拘束力もほとんどないわけですね。今度大臣が出される基準のような形になると、基準監督署、監督官としては、この指針よりも強力な指導ができるんですか、できるようなものになるんですか。
○松崎政府参考人 法的な効果としては一緒ではございますけれども、少なくとも基準法の中に指針の根拠規定があるということで、現場の監督官としてはもう一つ自信を持った指導ができるというふうに考えています。
○金子(哲)委員 ぜひ自信を持って現場はやっていただきたいというふうに思うのですけれども、ただ、やはり今回、罰則規定が何にもなくて、指導助言にとどまるわけですね、基準であっても。そうなりますと、強制力も何もないということで、本質的な問題は、私は、この平成十二年に出された指針の域をどれだけ超えるだろうかということを極めて疑問に思っています。ですから、改めてこの問題に対しては、今度基準法の中にもそういう根拠規定が設けられたんだから、基準に基づいてしっかりとした監督署の対応を行うということを改めて確認したいと思います。
○松崎政府参考人 現在の指針もそうでございますけれども、これをベースにして新しく定めようとしている指針につきましても、やはりこれはトラブルの防止、そういったものから非常に重要なことと考えております。
したがいまして、従来にも増して、緻密な、ある一定の指導というものに努めたいと思っています。
○金子(哲)委員 時間になりましたので、終わります。
○中山委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。
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○中山委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党の五派共同提案による修正案が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。城島正光君。
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労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案
〔本号末尾に掲載〕
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○城島委員 ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び保守新党を代表いたしまして、その提案理由を御説明申し上げます。
本修正案は、これまでの当委員会における審議を踏まえ、自由民主党、公明党及び保守新党の三党並びに民主党・無所属クラブ及び自由党の協議の結果、合意が得られたものであります。
修正案は、お手元に配付したとおりでございます。
以下、その内容を御説明申し上げます。
第一に、解雇に係る規定については、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とすること。
第二に、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、有期労働契約に係る規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の規定を追加すること。
第三に、有期労働契約を締結した労働者は、一定の場合を除き、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、いつでも退職することができる旨の規定を追加すること。なお、この規定については有期労働契約に係る規定について必要な措置が講じられるまでの間の措置とされており、具体的には第二として追加することとしている規定による検討とその結果に基づく措置として、この第三の規定の検討及び改正を行うまでの間の措置とするものであります。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
○中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
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○中山委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。
討論の申し出がありますので、順次これを許します。山口富男君。
○山口(富)委員 日本共産党を代表して、労働基準法の一部を改正する法律案並びに自民党、民主党、公明党、自由党、保守新党共同提出による修正案について討論を行います。
まず、政府案への反対理由です。
反対する第一の理由は、有期雇用契約の期間を現行の一年から三年に、専門的知識を有する労働者と六十歳以上の労働者には三年を五年に延長することで、その範囲内の雇用期間であれば、契約期間満了を理由として、いわば合法的な解雇をできるようにするからです。これによって、労働者の雇用は一層不安定化され、事実上の若年定年制の復活につながるものです。
第二に、使用者は労働者を解雇することができるという解雇規定の新設です。これは、憲法二十七条に基づいて、契約自由の原則を修正し、労働者の最低の労働条件を法律で定めることによって、国が労働者の保護を図るという労働基準法の性格を解雇自由化法に変え、裁判での立証責任を労働者側に重くするものです。この規定が合理的理由のない解雇は濫用であり無効とする方向で修正されるのは、野党が求めてきたことであり、当然のことです。
第三に、裁量労働制の適用事業場の拡大、導入要件の大幅な緩和です。裁量労働制の拡大は、ホワイトカラー労働者全体への労働時間規制を適用除外にしていく一里塚であり、サービス残業を合法化するだけでなく、労働者に長時間労働を押しつけ、過労死をふやすことになります。
労働基準法改悪法案には、全労連、連合、全労協などの労働団体のみならず、日弁連、労働弁護団、自由法曹団などの法曹団体からも厳しい批判が寄せられ、改悪反対の運動は全国に広がりました。
日本共産党は、このような各界の意見と運動を踏まえ、民主党、自由党、社民党とともに野党四党で、三回にわたる法案修正の協議を重ね、解雇規定と有期雇用の部分を修正することで一致いたしました。
よって、五会派共同提出の修正案に賛成であることを表明し、修正部分を除く政府案には反対するものです。
とりわけ、裁量労働制の拡大と導入要件の緩和、有期雇用期間の延長については認めることはできません。この部分の撤回を強く要求し、討論といたします。(拍手)
○中山委員長 次に、金子哲夫君。
○金子(哲)委員 私は、社会民主党・市民連合を代表して、労働基準法の一部を改正する法律案の修正案に賛成し、政府案に反対の討論を行います。
本改正案は、本来、労働者の権利を守るための最低条件を定めた労働基準法の基本理念を覆す内容を持っていたものであると言えます。
修正案に賛成する理由は、原案で示された解雇ルールでは、使用者は解雇できるとし、いわば解雇の自由を認めかねないものでありました。これに対して修正案は、これまでの最高裁判例で示された解雇権濫用法理に基づいており、使用者側に主張立証責任を負わせる現在の裁判実務を変更するものでないものとなったからであり、これによって、当初危惧された解雇自由のルールを基準法に盛ろうとした誤りを正したからであります。
次に、政府案に反対する理由を述べたいと思います。
その第一の理由は、有期雇用の期間を一年から三年に延長していることであります。
今日、労働者をめぐる労働情勢は極めて厳しいものがあります。完全失業者数は過去最高水準が続き、有効求人倍率も依然として好転していません。不況を理由にリストラが相次ぎ、正規雇用の労働者の代替としての有期雇用労働者や派遣労働者が増大し、正規雇用から不安定雇用へと大きく変化しています。このような厳しい労働環境の中にあって、有期雇用の延長によって、より首切りがしやすくなり、さらに低賃金の不安定労働者を増大させることは間違いありません。また、実質上の若年定年制復活にも道を開くことになってしまいます。しかも、本改正案では、本来、厚生労働省がやるべき労働者保護の方向性は全く出されておらず、今起きているさまざまなトラブルを解消するための何らの施策も講じられていないということは、本改正案は、さきの労働者派遣法改正に続き、経営者側の利益優先の規制緩和要求のみを法案化したと言わざるを得ません。劣悪な労働環境を放置し、均等待遇を棚上げした有期雇用の期間延長には反対です。
第二の、裁量労働制の問題です。
今日、労働現場におけるサービス残業、過労死問題は喫緊の課題となっています。これらのしっかりとした対策強化が求められています。
ところが、本改正案は、それらの問題に歯どめをかけるどころか、条件の緩和など、裁量労働の拡大を許すものとなっています。
我が国の労働現場の実情、労働者の企業を優先する意識を考えますと、裁量労働の範囲を拡大することは、これらの問題をより拡大することにつながると言わざるを得ません。
以上の理由により政府案に反対であることを表明して、私の討論を終わります。(拍手)
○中山委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○中山委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、労働基準法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。
まず、長勢甚遠君外五名提出の修正案について採決いたします。
本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○中山委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。
次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。
これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○中山委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。
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○中山委員長 この際、本案に対し、長勢甚遠君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者より趣旨の説明を聴取いたします。福島豊君。
○福島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
労働基準法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
一 労働契約の終了が雇用労働者の生活に著しい影響を与えること等を踏まえ、政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置及び特段の配慮を行うべきである。
1 本法における解雇ルールの策定については、最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理とこれに基づく民事裁判実務の通例に則して作成されたものであることを踏まえ、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を変更するものではないとの立法者の意思及び本法の精神の周知徹底に努めること。
2 労働契約期間の上限の延長に当たっては、常用雇用の代替を加速化させないように配慮するとともに、有期雇用の無限定な拡大につながらないよう十分な配慮を行うこと。
3 有期五年の対象労働者の範囲については、弁護士、公認会計士など専門的な知識、技術及び経験を有しており、自らの労働条件を決めるにあたり、交渉上、劣位に立つことのない労働者を当該専門的な知識、技術及び経験を必要とする業務に従事させる場合に限定すること。
4 有期五年の退職の自由、有期雇用の反復更新問題、「期間の定めのない」契約とするみなし規定の制定、有期雇用とするべき理由の明示の義務化、正社員との均等待遇など、有期労働契約の在り方について、期間の上限を延長した場合におけるトラブルの発生についての状況を調査するとともに、雇用形態の在り方が就業構造全体に及ぼす影響を考慮しつつ、早急に検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
5 労働条件の変更、出向、転籍など、労働契約について包括的な法律を策定するため、専門的な調査研究を行う場を設けて積極的に検討を進め、その結果に基づき、法令上の措置を含め必要な措置を講ずること。
6 今回の裁量労働制の適用事業場の拡大、手続緩和が、サービス残業隠しに悪用されることのないよう、適用対象事業場についての基準を設けるとともに、対象業務については当該事業場全体の運営に影響を及ぼすものとすること。
7 労働基準監督署への届出が簡素化されること等の今回の裁量労働制見直しを踏まえ、裁量労働制を導入した事業場に対して、指導・監督を徹底するとともに、過労死を防止するための必要な措置を講ずること。
8 企画業務型裁量労働制の導入に当たっては、労使委員会が重要な役割を担っていることにかんがみ、特に未組織労働者が多い中小企業においても、労使委員会が適正に設置、運営されるよう十分な配慮を行うこと。専門業務型裁量労働制の本人同意については、引き続き検討すること。
9 改正の趣旨、内容等について、関係団体のほか、広く国民に十分周知するよう努めること。
二 本法における解雇ルールは、解雇権濫用の評価の前提となる事実のうち圧倒的に多くのものについて使用者側に主張立証責任を負わせている現在の裁判上の実務を何ら変更することなく最高裁判所判決で確立した解雇権濫用法理を法律上明定したものであることから、本法による改正後の第十八条の二の施行に当たっては、裁判所は、その趣旨を踏まえて適正かつ迅速な裁判の実現に努められるよう期待する。
以上であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
○中山委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。
本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○中山委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、坂口厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。坂口厚生労働大臣。
○坂口国務大臣 ただいま御決議のありました本法案に対する附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、努力してまいる所存でございます。
ありがとうございました。(拍手)
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○中山委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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〔報告書は附録に掲載〕
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