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[資料番号] 00159
[題  名] 労災保険の民営化問題資料(1) 官製市場改革WG議事「社会保険制度の見直しについて」
[区  分] 労災補償

[内  容]
労災保険の民営化問題関係資料〔1〕



第5回構造改革特区・官製市場改革WG議事概要


1. 日時:平成15年7月8日(火) 10:00〜12:00

 テーマ:厚生労働省ヒアリング−社会保険制度の見直しについて

2. 場所:永田町合同庁舎2F 総合規制改革会議大会議室

3. 出席者:
(労働基準局)
労働保険徴収課羽毛田課長
労災管理課高橋課長
労災保険財政数理室南室長
監督課労働条件確保改善対策室伊藤室長補佐
総務課藤永課長補佐(総務・広報担当)
(社会保険庁)
総務課薄井課長
企画課数理調査室清水室長補佐
医療保険課田中課長補佐
年金保険課柳沢課長補佐

(委員)
八代主査、奥谷委員、安念専門委員、福井専門委員

(事務局)
内閣府河野審議官、宮川室長他


4. 議事概要

(厚生労働省関係者入室)
○八代主査
では、始めます。本日はお出でいただきましてありがとうございました。
構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループの第5回で、前回に引き続き、「社会保険制度の見直しについて」ということで、厚生労働省からヒアリングをさせていただきます。
それで、本会議は後で議事録は公開という形になりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、こちらの事務局の方から質問を出しておりますので、それについてお答えいただければと思います。労災の方から先によろしくお願いいたします。


○羽毛田課長(労働基準局労働保険徴収課)
それでは、お手元の「(広義の)社会保険制度の見直しについて」の2の「労災保険について」という資料の説明を、@〜Bの関係は私の方から、それ以降については労災管理課長の方からご説明差し上げたいと思います。
まず初めに、1ページ目からでございます。「@及びB関係」というふうにさせていただいておりますが、このご質問の@とBにつきましては、いずれも平成11年の行政監察結果を踏まえたご質問でありますので、一括してまずお答えをさせていただきたいと思います。
まず、労災保険の未手続事業の数字でございますけれども、未手続事業が存在することは事実でございますが、その数を定量的に正確に把握するということはなかなか困難でございまして、平成11年の行政監察の数字もざくっとした推計の1つであるということをまずご理解いただきたいと思います。
そこで、未手続事業数を把握するためには、当然のことながら、適用されるべき全数、事業の全数を把握することが必要となるわけですが、そのとっかかりとしては、やはり見渡したところ、総務省による事業所統計調査に頼らざるを得ないものと考えておりますが、事業所統計調査と労災保険では事業所のとらえ方等が異なっておりまして、単純な比較はできないというふうに考えております。したがいまして、その差を直ちに未手続事業というふうに見なすことは適当ではないと考えております。例えば、お手元の資料の2ページ目と3ページ目には今申しました平成11年の行政監察結果の一部分を抜粋してお付けしてございますが、その3ページ目に「業種別労災保険加入事業数」というのをお付けしてございます。これはある意味では単純な比較でございまして、単純にこれを比較してしまいますと、例えば業種別に見ますと、後ほどご説明しますが、建設業等については100%を上回るというような形になってしまいますので、適当ではないと考えております。
それでは、その具体的な相違点とはどういうものがあるかについて、2ページ目に戻っていただきたいと思うのですが。ここで見ていただきますと、その「注」の2、3、4のあたりになってまいります。
まず1つ目には、事業所統計調査では、2行目にありますように、一定の場所で行われておれば事業ととらえますので、したがいまして、例えば出張所ですとか従業員のいる倉庫ですとか、あるいは管理人のいる寮、そういったものまでも事業所ということになってまいりますが、他方、労働保険におきましては、その5行目に書いてございますように、場所的かつ組織的に独立した有機的な経営体というようなものを1つの指標としておりますので、この組織的に独立しているということが要件になってまいりますので、今申しました例の出張所等が1つの事業という程度の独立性がない場合には、そこに書いてございますように、直近上部の組織として包括して取り扱っております。したがいまして、労働保険の方が少なめに出てくるというふうな事情がございます。
2つ目でございますが、その3のC欄のうんぬんというところにかかわりますが、労働保険では、建設業等におきましては、工事現場等はいわゆる有期事業、期限の限られた事業ということで1つの事業1 としてカウントしておりますが、事業所統計調査ではこれが対象となっておりません。この点は労働保険の方が多めになっているというふうに考えられます。
3つ目といたしましては、4点目のD欄のうんぬんと書いてあるところの話でございますが、労働保険では、継続事業の一括制度という、下の「参考」の方にも書いてございますが、通常の継続して行われる事業につきましては一括するという制度がございまして、効率化の観点でございますけれども、本社に一括することができます。その場合、一括されている支社や営業所等があってもこの事業数には得てして表に出てこないという仕組みになっておりますが、事業所統計調査ではこれらもカウントされるということでございますので、最初に申しました2の1つ目の点に加えまして、労働保険の方がより少なめになってくる事情がございます。
こうしたことから単純な比較は難しいわけですが、この平成11年の推計につきましては、今申しました2つ目の有期事業の相違と3つ目の一括制度による相違という2つを修正してみて推計を行ったということでございます。具体的には、その上にもありますが、1ページ目に戻っていただきまして、同じことが書いてあるわけです。この同じ推計を今回も13年度については行ってみたわけですが、この推計方法は、今申し述べました観点を踏まえまして、bの「労災保険の適用事業数」、13年度で言えば269 万でございますが、ここからcの「有期事業」、すなわち工事現場等で行われているこの建設事業6万を引きまして、そして本社に一括されている支社等が100万ほどございますので、これを加えたものをaの「事業所統計」の方から引いてベースを少しずつ合わせるという考え方で推計をやってみたものでございます。これを見ますと、13年度と9年度を比べますと、26万3,000事業ほど減少しているというふうになってございます。ただ、この推計につきましては、特に、今申しましたように、1つ目の点が労働保険の方が少なめになってあらわれてくるという点が考慮されておりませんので、事業所統計調査の方が多めとなっておりますので、多く見積もって60万というようなことではないかと考えております。
このように、単位のとらえ方の相違を一部だけ修正してみたものでございますので、なかなか完全なものとは言えません。また、その料率にかかわってまいります業種別の状況とか、あるいは規模別、あるいは賃金総額の状況、これらについては不明でございますので、未手続事業を含めた場合の保険料として徴収すべき全額が定まってまいりませんので、なかなかこれらを含めた収納率がどの程度になるかを算出するということは困難であるという状況でございます。
なお、Bのご質問にありました「職権による保険関係の成立の状況等について」は次の質問とも関連するので、そちらでお話をさせていただきます。
いずれにしても、全体の未手続事業数を正確に定量的に把握することはなかなか難しいわけでございますが、個別の未手続事業をむしろ地道に把握していくということが適用の促進に当たっては極めて重要でございますので、監督署や安定所の窓口業務ですとか、あるいは商工会議所会員名簿等を活用しまして未手続事業の把握に努めているところでございます。
続きまして4ページ目でございますが、労働保険の適用促進のための制度・仕組みについてでございます。この適用促進のための取り組みといたしましては、先日もご説明をさせていただきましたように、まずは、今申しましたように、個別具体的な未手続事業を的確に把握するということが重要でありますので、それに努めますとともに、広報活動の充実、あるいは文書、電話、さらには訪問によりまして加入勧奨を行いまして加入促進に努めているところでございますけれども、これらの対策とあわせまして、届出の促進を図る仕組み・制度としてどのようなものがあるかということにつきまして列挙をさせていただいたものがお手元の4ページ目のAの内容でございます。
具体的には、ここにありますように、5点ほど掲げさせていただいております。
まず1点目は、アにありますように「職権による保険関係成立手続」という仕組みでございまして、再三の適用促進活動によっても成立手続をとらない悪質と思われる事業主につきましては、行政機関による職権により保険関係成立手続を行いまして、かつ、その事業所の保険料を行政の権限によって認定決定と、行政処分によって決定するということをしております。
それから、イの「追徴金」でございますが、これは未手続の事業所も含めまして、確定保険料を申告しなかったために行政側で認定決定した場合におきまして、事業主から労働保険料の10%を追徴金として徴収することとしております。
3点目、ウで「費用徴収」という制度がございます。これは、事業主が故意又は重過失により労災保険に加入していない期間に労災事故が生じて保険給付がなされた場合におきましては、事業主から、労働保険料のほか、保険給付に要した費用の一部分を徴収する仕組みとなっております。
第4点目のエでございますが、「雇用保険に係る被保険者資格取得届等未届者への罰則」ということでございます。労働保険は、この前もご説明させていただきましたように、労災保険と雇用保険の総称でございます。したがいまして、一元的に手続きをしますので、労働保険の成立手続をしていないということは雇用保険にも入っていないということになりますので、そうした場合に雇用保険被保険者資格取得届等の届出も当然なされていないことにもなりまして、そういった場合につきましては、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金ということになってございます。
第5点目のオでございますが、「立入検査を拒んだ場合の罰則」ということで、未手続の事業主につきましては、アで述べましたように、保険料の認定決定をすることとなります。その際に申告が正しくなされているかにつきまして調査するために立入検査を行うとするわけでございますが、これを拒んだ事業主に対しまして、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金というものが科せられているところでございます。
なお、お尋ねの「職権による保険関係成立手続の実績について」でございますが、保険関係成立手続がなされた事業のうち、職権による保険関係成立届のなされた事業のみの統計数字はちょっと把握していないところでございます。ただ、未手続事業の解消につきましては、今申しましたように、日ごろから粘り強く取り組んでおるところでございまして、その成果としての成立手続がなされたものも含めまして、全体では、平成12年度で約30万件、13年度で約28万件の新規の成立手続がなされたところでございます。


○八代主査
途中ですけれども、その30万件の中には、自発的に加入した事業所も入っているわけですね。

○羽毛田課長
そうですね、30万件の中には入ってございます。

○八代主査
そうではなく、肝心の悪質な事業主について是正した数字というのは全く把握しておられないのでしょうか。

○羽毛田課長
全体的に把握しているということです。

○八代主査
何件是正しましたという数字は全く報告しなくていいわけなのですか。

○羽毛田課長
現時点ではそのようになっております。

○八代主査
なぜそうなっているのですか。

○羽毛田課長
そういう手続き面での報告はありません。

○八代主査
報告義務がないのですか。

○羽毛田課長
義務といいますか、そこら辺をこちらの方から求めるということは今はしていないということでございます。

○八代主査
そうしたら、全くやっていない可能性もあるわけですね。

○羽毛田課長
正直言いまして、これは低調な部分があると思っております。

○八代主査
低調というのは、実際には非常に少ないという意味ですか。

○羽毛田課長
やはり、できるだけ加入勧奨をして、できそうなところをまずやっていくというふうにしておりますものですから、なかなかそこまで手が回っていない状況がございますので、今後はここに力を入れていきたいと考えております。ただ、ちなみに、この前お話ししました事務組合を活用しまして加入勧奨活動をさせていただいておりますけれども、これにつきましては、自主的に入ったというものではございませんで、加入勧奨活動の結果というものが報告されておりまして、例えば、12年度では約4万7,000件、13年度で約4万5,000件ということになっております。

○八代主査
しかし、それはいわばセールスみたいな形で行って、それに対して向こうが応えてくれた場合で、別に悪質なケースではないわけですね。

○羽毛田課長
その際には行政とも連携しておりますけれども、何とか入っていただいた方でございます。

○八代主査
ただ、法律で明記されている強制保険の加入に関して、当局がなぜそのように下手に出なければいけないのかよくわからないのですが。法律できちんと6カ月以下の懲役とか30万円以下の罰金とかきちんと罰則があるにもかかわらず。逆に言えば、これまでほとんど統計すらないぐらいこういう制度というのは活用されていなかったということでしょうか。

○羽毛田課長
全然活用されていないというわけではないのですけれども、少なくとも、今申しましたように、低調ではあったということは我々は感じております。

○八代主査
それと、やはり、統計の性格上、具体的な数字は難しいにしても、かなりの未加入者がいるということとは、当然、密接な関係があると考えられるわけですね。

○羽毛田課長
そこら辺は個別具体的な事業所の把握をまずはやって、積極的に勧奨していくということで努力しているところでございます。

○八代主査
それから技術的なことですけれども、追徴金と費用徴収との関係なのですが、確定保険料を申告しなかったときは、10%の割増金が、いわば所得税の加算税のようなものが課されるのですね。
それで、仮に労災に入っていない事業所で事故が起こって保険給付がなされたときは、その保険給付に要した費用の一部分を徴収という場合にも加算税が課されるのですね。

○羽毛田課長
はい、そうです。

○八代主査
その一部分というのはどれぐらいなのですか。何%とかという形では。

○羽毛田課長
最大で40%です。

○八代主査
その最大か最小かというのはどういう基準で決められるわけですか。何かそういうルールを決めたものがあれば、それは後でいただければありがたいのですけれども。

○羽毛田課長
わかりました。

○八代主査
すみません、それでは続けてください。

○高橋課長(労災補償部労災管理課)
それでは、Cの「労災保険・労働福祉事業関係」でございます。資料は5ページ目に条文をつけてございますが、労災保険法の29条に、「政府は、この保険の適用事業に係る労働者及びその遺族の福祉の増進を図るため、労働福祉事業として、次の事業を行うことができる」と。この保険というのが労災保険のことでございまして、1号〜4号まで、1号が社会復帰を促進するために必要な事業、2号が被災労働者、その遺族の援護を図るために必要な事業、3号が労働者5 の安全及び衛生の確保のために必要な事業、4号が労働条件の確保を図るために必要な事業ということで、列挙されてございます。
その主な中身が6ページでございます。被災労働者の円滑な社会復帰を促進するために必要な事業としまして、労災病院の運営とか、義肢・義眼・車椅子、これは被災労働者の補装具の支給などを行っております。それから、被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業ということですが、これは、労災年金受給者に対しまして、子弟に対する就学等援護費の支給などを行っています、それから、要介護者のための労災特別介護施設の運営ということも行っております。3は、これはまとめて、安全及び衛生の確保のために必要な事業ということで、労働災害防止対策を講じているということでございます。4は、適正な労働条件の確保を図るために必要な事業としまして、未払賃金立替払事業の実施等を行っております。
こうした労働福祉事業を労災保険で行う必要というのは幾つか観点があるわけでございます。
1つは、労災保険というのは、本来の目的は、被災労働者の稼得能力の填補を目指していると、これが重要であるということでございますけれども、保険給付の方では、性格上、画一的、定型的に稼得能力を填補するというふうになっていますので、そういった保険給付だけでは被災労働者の個別具体的な事情に必ずしも応ずることが困難ではないかということでございまして、その個別具体的な必要性に応じて、例えばこの補装具を支給するとか、労災就学援護費を支給するとか、そういった個別具体的な必要性に応じて、保険給付と同様、事業主の責任で稼得能力の填補としての適切な措置を講ずる必要があるというのが1つでございます。
それから、被災労働者の特に早期社会復帰を図るということですが、これによって労災診療費、労災医療費の節減が図られるということがございますし、それだけではなくて、労働力の維持という点で、我が国の産業社会、保険料を拠出していただいている事業主の方たちにとっても望ましいものではないかというふうに考えています。
それから、労働者の安全及び衛生の確保を積極的に講ずるということで、労働災害の防止を図ることは本来は事業主の責任であろうということと、それから、そういった労働災害の防止によって保険給付が抑制されるということになりますれば、その結果、保険料率の引き下げも可能となるというふうに考えられると。
それから、賃金未払いの処理と適正な労働条件の確保、これも本来は使用者の責任・負担において処理すべきものであって、広く使用者の連帯責任で処理すべきものであると、こういった考え方によるものでございます。
こういった労働福祉事業につきましては、労働福祉事業に関する懇談会というのを設けておりまして、日本経済団体連合会などの労災保険料を負担している事業主の団体との間で意見交換をして、運営のあり方というものを意見交換してございます。それから、当然ですが、法令の改正にかかわる場合などは審議会に諮り審議されるということで、真に必要なものとなるように随時精査・見直しを行っているところでございます。
その収支関係なのですが、保険給付費と同じく労災保険料収入等を財源としておりまして、特に別立てで保険料を徴収しているわけではございませんので、労働福祉事業に係る収支という観点ではそういうものはないということでございます。


○八代主査
保険料は福祉事業についても一体で取っているのでしょうけれども、支払側は当然別立てになっているわけですね。

○高橋課長
そうです。

○八代主査
その資料はどこにあるのですか。

○高橋課長
ちょっとご用意していないのですが、また後ほど追加的にそれは。

○八代主査
ただ、こちらは収支を教えていただきたいということを言っていますでの、福祉事業に関して収入が分かれていないから支出面も出さないというのはかなり狭い解釈ですね。保険料は労災本体とを区別できないとしても、支出部分は出して然るべきではないでしょうか。

○高橋課長
わかりました。それは資料を用意いたしますので。

それから、労災病院のことでございますけれども、これは次の7ページをご覧になりながらご説明をしたいと思います。労災病院は、ご承知のとおり、じん肺とか産業中毒とか振動障害、最近ですとメンタルヘルスとか脳、心臓疾患などの労災疾病についての高度専門的な医療の実施を行うと。こういったことに加えまして、これらの研究機能を担う中核病院を中心に再編して、中核病院とその他の労災病院との間で、労災疾病についての症例の集積とか治療方法や予防策の研究開発、情報の共有等の面で全国的なネットワークを構築できるようにしていきたいと考えております。この際、再編の対象外となる労災病院につきましては、労災病院としては廃止することとなりますが、地域医療機関として必要なものについては民営化または地方・民間委譲を進めることとしております。こういったことが、このお手元の、一昨年の「特殊法人等整理合理化計画」、閣議決定されたものでございますが、その労災病院業務についての方向性が示されてございます。
労災病院の再編につきましては以上のような考え方に基づき今後具体的に検討しまして、今年度中に、できる限り早く具体的な再編計画を策定したいというふうに考えてございます。

○八代主査
労災病院の見直しについては、13年に閣議決定されて、その後、検討は進められてきたのではないのですか。

○高橋課長
まず、この黒丸に「独立行政法人とする」というのがございまして、昨年の秋の臨時国会に、この「労働福祉事業団」を「労働者健康福祉機構」として独立行政法人化する新法の設置法が成立いたしました。この独立行政法人化は16年4月1日でございます。それまでに、新たな独立行政法人の立ち上げに当たって、厚生労働大臣が独立行政法人の中期目標を示すということになってございます。
それを受けて独立行政法人の方は中期計画を策定するという段取りになっておりまして、その厚生労働大臣が示す中期目標の中にできる限り具体的な労災病院の再編計画を盛り込みたいということで、今、鋭意検討しているところでございます。

○八代主査
そうすると、具体的な目標ができるのは、対象が決まるのはいつになるのですか。

○高橋課長
今年度中に。

○八代主査
わかりました。

○伊藤室長補佐(監督課労働条件確保改善対策室)
Dにつきましては、Cの労災保険の労働福祉事業の中でご説明申し上げたとおりでございますが、若干補足させていただきます。
この制度の仕組みにつきましては資料の8ページに概要を出しております。ここにありますように、この制度は企業倒産によって賃金未払のまま退職した労働者に対して未払賃金の一部を立替払する制度でございます。これは、賃金支払責任につきましては労働基準法の24条によって支払わなければならないと定められておりますけれども、倒産等の場合には実質的に救済がなかなか図られない面もございましたので、昭和51年にこの制度ができました。その際に、この賃金支払は本来は事業主の責任に属するものですから、費用の負担を一般国民に求めることは適当でない、事業主の連帯による公的な保険方式によることがふさわしいという観点で、既存の保険制度を活用することが簡素・合理的でもあるということでございまして、先ほど申し上げたように、労災保険の労働福祉事業として実施されたわけでございます。

○八代主査
これがどれぐらい労災保険の財政を圧迫しているのかとか、そういう数量的な数字はないのですか。

○伊藤室長補佐
一応予算を立てておりますので、国の予算の中で。

○八代主査
予算だけなのですか、決算はないのですか。

○伊藤室長 補佐
決算もあります。

○八代主査
大体どれぐらいなのですか。

○伊藤室長補佐
規模は……。

○八代主査
それは後ほど数字で出していただけますか。当然ながら倒産がふえていますから、最近特に急速に数字がふえているだろうというふうに思えるですけれども。一番新しいのは何年の決算ですか。 決算、予算、両方について、最近年次までの数字をよろしくお願いいたします。

○藤永課長補佐(総務課総務・広報担当)
続きましてEですけれども、ご質問の趣旨は、11年度の特別会計予算によるとされる4,731人の定員と11年度の行政監察報告にあります労働保険の適用・徴収、労災保険の認定・給付従事者3,444人の差についてだろうと思います。結論から申し上げますと、今ほど来説明のありました労働福祉事業に関わる、特に3号、4号の労働災害防止なり、未払賃金の立替払、労働条件関係ですけれども、それに従事している大半は労働基準監督官になろうかと思いますけれども、その部分は行政監察報告では含まれていません。行政監察報告では、正確に適用・徴収・給付の関係を積み上げていったものです。したがいまして、その差は、今申し上げました労働福祉事業の従事者と、本省にも労災保険の企画、立案、指導をする定員が当然おりますので、その差でございます。そういう意味で労災保険制度の人件費は特別会計で全部賄っているということになります。

○八代主査
ただ、本省にいる人も労災だけやっている人と両方やっている方は当然おられるわけで、そういうのはちゃんと郵政三事業のように按分しているということですね。

○藤永課長補佐
そうですね、一般会計と振り分けてあります。

○八代主査
本省の分が幾らになっているかという数字があれば教えていただきたいと思います。

○藤永課長補佐
わかりました、お届けします。

○南室長(労災補償部労災保険財政数理室)
次に10ページでございますが、労災保険率の算定根拠ということで、「労災保険率設定の基本的考え方」について取りまとめたところでございます。労災保険の労災保険率は、将来にわたる労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるものでなければならないとされておりまして、事業の種類は今は51ございますけれども、その事業の種類ごとに、過去3年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率、労働福祉事業及び保険事業の事務費の予想額を考慮して今は定めておるところでございます。
具体的には下の表のような形で考えておりまして、一応、保険給付を短期給付と長期給付に分けておりまして、事業の種類ごとに、短期給付については、一定期間の収入と支出を均衡させる考え方で決めておりまして、長期給付については、災害発生時点の事業主集団から年金給付、年金は20年なり30年というふうな長期にわたってお支払いをしているものでございますので、その年金給付を要する費用を将来給付分も含めて全額徴収する考え方を基本としております。それは私どもでは「充足賦課方式」という言い方をしているわけでございますが、その方式は平成元年度から採用しておりまして、それ以前は実は6年分しか徴収していないというような状況もございましたので、その不足分がありまして、それはいわゆる「過去債務」という言い方で全業種から均等に賦課させていただいているところでございます。それ以外に非業務災害分、これはもっぱら通勤災害に係る費用でございますけれども、それの料率。
それと、労働福祉事業なり、事務の執行に要する費用を加えたものを全体の労災保険率としているところでございます。
労災保険率については、労災保険料を負担する事業主の代表にも参加していただいている労働政策審議会の方でのご審議、答申を経て、設定しているところでございます。
それから、8の「インセンティブが働く仕組み」ということで、資料の11ページに、労災保険の仕組みとして「メリット制度」というものがございます。
まずメリット制の概要についてご説明申し上げますと、下の方に要件を書き述べておりますけれども、一定の要件を満たす事業について、個々の事業の労災保険の収支率、これは個々の事業ごとに計算しているわけでございますけれども、それに応じて労災保険率や労災保険料の額を増減させている制度でございます。これは、最大、継続事業でプラスマイナス40%、有期事業ではプラスマイナス35%ということでございますけれども、それで事業主の負担の公平性なり災害防止努力の促進を目的としてこういった制度を設けているところでございます。
それで、インセンティブが働いているかの検証ということなのでございますけれども、なかなか数字的に検証するのはかなり難しいということでございまして、過去にこの制度についての事業主の意識調査をしたことがございまして……。


○八代主査
すみません、意識調査はこちらの関心と関係ないもので省いていただけますか。こういう保険料を適正に定めるためには当然事故率というのは計っておられるわけですね、業種別に。そのデータは公開されているのですか。

○南室長
『事業年報』等に載っておりますので。

○八代主査
ただ、非常にあれは確か粗いデータだと思うのですが。とにかく、規模別とか、例えばサービス等、職種別には書いてあるのでしたよね。

○南室長
職種別とか規模別には分かれておりませんで、産業の種類だけに分かれております。

○八代主査
そうすると、ただ産業と言っても、例えばサービス業1本という形ですか。

○南室長
サービス業であれば「その他各種」というところで。ですから、ちょっと幅が広いような区分になっておりますけれども。

○八代主査
そうであれば、例えばオフィスワーカーのようなほとんど事故があり得ないような人が過大に取られているという可能性は十分あるわけですね。

○南室長
それだけとらえればということですが、保険集団として、例えばその他の各種であれば医療とか旅館とか何かを含めて全部やっておりますので、それで危険分散を図っているという考え方でございます。

○八代主査
ただ、このメリット制の本来の意味というのは、事業主のインセンティブに働きかけて、事故を起こしやすいところの保険料を上げてできるだけ事故を減らさせようとする。そうすると、余り大きく業種を区分し、所得再分配を重視すると、事故防止へのインセンティブはそれだけなくなりますよね。これは、できるだけ保険集団を幅広く取って労働者を守ろうという意図なのか、できるだけ事故をなくすために事業主のインセンティブを働かせようというのか、どっちが大きいわけですか。

○南室長
制度の趣旨としては、いわゆる災害防止努力を促進させたいという。

○八代主査
後者ですよね。であればもっと細かくしないと意味がないという議論はなかったのですか、今までに。もっと業種というか保険料を細かく分けて見ないと、そういう本来のインセンティブが働かないのではないかと。

○南室長
そういった議論はしたことがないといいますか。

○八代主査
それから、通勤災害は全然別になっているのですね。こういうメリット制の対象外になっているのですね。それはなぜですか。

○南室長
メリット制の対象は業務災害ということで、事業主の災害防止努力が望む範囲を対象としておりますので、通勤は事業主の管理下から離れているからということで、それについてはメリットの対象からは外していくということでございます。どういう経路で通われるかはわからないので、それは事業主が管理できないということで、それについてはメリット制の対象からは外すということでございます。

○八代主査
現に、事業主がわの要望では通勤災害も入れてほしい。例えば、地方でごく短い距離から通勤する人ばかりの事業主と大都会のように長距離通勤をするところでは当然通勤災害の事故率も違うわけで、そこはやはりそういう要望もあると思うのですが。
それから、肝心のメリット制を算定するときに、リスクとの見合いというのはだれが決めておられるのですか。内部で決めておられるわけですか、それとも何か審議会に諮ってやられているのですか。

○南室長
それは、個々の事業所の保険の収入とその事業所で起きた事故によって支払われた保険給付額、過去3年間でございますけれども、それを計算しまして、一定の区分に従って増減率を決めていると。それは機械的にやっているというところでございます。

○八代主査
収支でやっているわけですね。

○南室長
考え方として、この11ページの真ん中に、メリット収支率は個々の事業所ごとに計算しているわけでございますけれども、その収支率の高低によって増減幅を変えていくと。

○八代主査
事務局は、どうですか。

○杉本室長補佐(総合規制改革会議事務室)
資料の10ページなのですけれども、長期給付分につきまして、今は恐らく割引現在価値か何かに戻されて計算されていると思うのですけれども、例えばその割引現在価値の計算はどのように行われているのですか。

○南室長
率はいろいろ年が経ることによって変わってきますので、一応今のところは2%で計算しております。

○杉本室長補佐
期間については、例えば平均余命や平均寿命、平均給付期間などで算出しているのですか。

○南室長
現価率が2%です。平均受給期間みたいなものは、私どもは長年年金給付をしておりますので、何年から始まって何年ぐらい支給されて、失権というのが死亡されて給付される権利がなくなるわけですけれども、それで一応平均的な受給期間を計算しております。 

○杉本室長補佐
この辺の具体的な算出方法、数値的なものでこういったものというのは出せますでしょうか。

○八代主査
何か過去の経験でというのは随分大ざっぱな話のようですが、やはり年金計算をするのと同じようなやり方でないと危ないのではないですか、寿命はどんどん延びていくわけですから。

○南室長
それは、当然、完全生命表が書き換えられるたびごとにどのぐらい残られるかというのは計算していますが。

○八代主査
この過去債務が本当にきちんと計算されているかどうかで、今は労災は黒字だそうですけれども、実は年金と同じように本当は潜在的な債務がかなりあって、それを合わせればどうかわからないという問題はあるわけですね。

○南室長
労災の場合はそれはございません。

○八代主査
それ自体が余りきちんと専門家のようなアクチュアリーに基づく保険料計算ができていないのではないかという批判があるのですが。とにかく情報を公開してもらわないと本当に今の財政が大丈夫かどうかというのはわからないので、これは年金局にも言えることですけれども、保険料算定の基礎となる情報が年金ほどもないというのが現状ではないか。
今日は社会保険の方もあるので、とりあえずはこれでいいのですが、ほかの方で今のところについて何かございますでしょうか。

○安念専門委員
福祉事業について伺いますが、なぜ直営しなければならないのですか。私は、常識的に考えれば、これらについては給付というかケアをすること自体が大切だというのはわかるのですけれども、キャッシュで渡して後はマーケットでサービスなり何なりを調達させればいいだけの話であって、別に自分で直営してやる必要は全くないというか、それは常識的に考えれば非効率的であるのはほとんど自明のことではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○高橋課長
正確に申し上げると、直営でやっている部分と労働福祉事業団に行わせている……。

○安念専門委員
同じことです、私が申し上げているのは。

○高橋課長
公的部門でなぜやるのかという。

○安念専門委員
もちろんそうです。

○高橋課長
それは、国のそういった職員を活用してできる限り効率的にむしろ行おうというそういう趣旨だと思うのですけれども、それ以外にも、全部直営というわけではなくて、民間への委託事業というのも当然この労働福祉事業の中で行っておりますので、適宜必要に応じてそういった民間を活用しているという状況でございます。

○安念専門委員
それに根拠があるかということを伺っているわけです。つまり、キャッシュだけを渡して、後はマーケットでサービスなりグッズを調達させた場合にかかるコストと、今の方式によるコストとは、当然コスト計算はなさっているはずなのですよね。当然でしょう、それは。強制的に徴収しているお金を使っているのですから、コスト計算がなされていないはずがないと私は思うので、それをきちんと国民に示す義務があるだろうと私は思うのです。

○高橋課長
残念ながら、その辺のところの計算というのは実は厳密にしているわけではなくて……。

○安念専門委員
厳密にしていないのなら効率的だということは言えないわけでしょう、今の方がいいという、少なくとも証拠はないわけですよね。

○高橋課長
証拠がないというか、国の人員組織を活用して実際にやっている部分の方が効率的であろうということなのですよね。

○福井専門委員
だから、公務員を使う方がより国民経済的に望ましいのだ、それは国民負担を増大させるだけではないかということなのですけれども、それはどうしてそう言えるのですか、というのが安念委員の質問の趣旨です。

○高橋課長
現状ではすぐにはお答えできないのですけれども。

○福井専門委員
理論的でも実証的でもいいのですが、後ほど回答をいただけませんか。

○高橋課長
持ち帰らせていただきたいと思いますけれども。

○福井専門委員
持ち帰るのではなくて、回答をいただけませんか。それは回答できないという意味ですか。

○高橋課長
私もその事務を勉強しているわけではないので、持ち帰らせていただきます。

○福井専門委員
だから、政府としてお金をかけてやっている以上、このような質問に答えられないということは前提としてあり得ないと思いますから。要するに、今おっしゃったような、公務員を活用して行う今のやり方の方が、安念委員が指摘したような、民間なり、あるいはバウチャー的な考え方よりもより効率的であるという命題を論証する資料を後ほどいただきたいと思います。

○高橋課長
実は、私は労災管理課長ということで来ているのですが、労働福祉事業はいろいろと担当課が分かれていまして、私の責任で統一的に全部こうこうこういう理由でこっちの方が効率的なんだとかこういう理由なんだというのはちょっとお答えできないものですから。

○福井専門委員
では、上司に相談されて省としてお願いします。

○労働基準局
ですから、そういう意味で持ち帰らせていただきたいというふうに申し上げたのですけれども。

○八代主査
今の、既存の公務員を活用するという意味では、この労災関係の福祉事業では少なくとも新規採用はされていないわけですね。

○高橋課長
そういうことではなくて、例えば保険給付にかかわる例えば労働基準監督署の職員を活用していると。要するに、本来の保険給付の事務を行っている職員が労働福祉事業の事務にも携わっていると、そういう意味でございます。ですから、専門にこの事務を行うためだけに採用しているということではございません。ただ、先生のお尋ねの、例えば特殊法人になぜやらせるのだというお尋ねがございますけれども、それについてはそれぞれ各担当課がございますので、それは分析していただいたのですけれども。

○八代主査
あと、ちょっと細かい話ですけれども、この労災関係で見るとかなりの資産がありますね。
13年度に労働保険全体で資産が7億ぐらいあるのでしたね。

○南室長
労災保険だけの積立金は約7兆4,000億円でございます。

○八代主査
これはどういうポートフォリオで運用されているわけですか。

○南室長
これは資金運用部に全額預託することになっておりまして、そちらの方で運用していただいているところでございます。

○八代主査
これは、預託するときに現金という形で資産に計上されているということですね。とにかく、全額資金運用部で運用して、利子をちゃんともらっているということですね。
では、社会保険の方もありますので、労災は。今日のところはとりあえずこれで。先ほど幾つか質問をさせていただいた点について、速やかに資料等をよろしくお願いいたします。
では、労災関係の方は結構ですので、どうもありがとうございました。

○福井専門委員
ちょっといいですか。今日配られているこの「あきれた労災保険でたらめ経営」という『選択』の記事なのですが……。

○八代主査
それはこちらの参考資料として配布しただけですので。

○八代主査
労災で一番最後の点が抜けていました。この給付データというのはいただけるのですか。

○南室長
給付データについては災害の発生年度別の給付データみたいなものは集計しておりませんので、ご提供できないのですね。

○八代主査
では、どういうデータがあるのですか、逆に支出面については。

○南室長
その年度にどれぐらい支払われたかということで、いわゆる『事業年報』に載っているデータはございますけれども、発生年度別みたいな時系列的なものは集計はしておりません。

○安念専門委員
それで過去債務・将来債務がない、そこで言い切る根拠というのがよくわからないのですけれども。

○八代主査
これがないと過去債務・将来債務は推計できないはずなのですよね、災害年度別のがなければ、ある年に一時的な原因によって労災がふえたのか、例えば台風とか何かがあって、そうでないかがわからないから。とにかく、公開してもらえないのか、もともとデータがないのかよくわからないのですが、どちらにしてももう少し保険である以上はきちんとその支出を押さえなければ管理はできないのではないかと思うのですが。これは公開されていないというだけなのですか、それとも、もともとデータがないのですか。

○南室長
もともとデータが発生年度別にはないということです。過去債務の問題については、13年度末では7兆3,900億円という言い方をしておりますけれども、年度末現在の年金受給者は約22万人おられるわけでございますけれども、それにかかる将来にわたる給付のために積立金というのを持っているわけでございますけれども、必要額は今は推計で7兆9,000億程度というふうに見ておりまして、その差がいわゆる過去債務というようなとらえ方をしているわけでございます。

○八代主査
その7兆9,000億と過去債務の推計の仕方をぜひ教えていただきたいと思いますが、推計根拠を。数字がある以上は当然その根拠があるわけで、それはよろしいわけですか。

○南室長
わかりました。

○福井専門委員
この『選択』の7月号の記事なのですが、中身は興味深いのですが、事実かどうかというのはよくわかりませんので、ここに提示された事実なり認識が正しいのか間違っているのかという点について、後ほどで結構なのですが、資料をいただけませんでしょうか。

○八代主査
では、社会保険の方、どうもお待たせいたしました。

〔以下、社会保険関係=省略〕