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[資料番号] 00177
[題  名] 未払賃金立替払制度の現状
[区  分] 労働基準

[内  容]


未払賃金立替払制度の現状


【資料のワンポイント解説】


1 制度発足時から、何ゆえ、「労災保険財政から企業倒産に伴う未払い賃金の立替なのか」。多くの疑問のなかスタートした「未払賃金立替払い制度」。
それでも、発足当時は、労災保険財政からの拠出額も年間、せいぜい年間2億円余りで、このような筋違論はそれほど大きな声とはならなかった。しかし、最近では、その額476億円(平成14年)と労災保険財政に占める割合も、制度発足時の   から   に上昇するなど保険財政の圧迫要因にもなりつつある。

2 立替払の制度運用も、発足時に想定していなかった〔中小企業定義の拡大、倒産法制の変更 、立替上限額の引き上げ〕によって、制度の変容が生じている。とくに、民事再生法等の倒産法制の改正があって以降、再建型倒産である民事再生法の適用企業に立替払制度を適用しているが、これなど賃金不払を起こした経営者が、自らの手で、国費(労災保険料)による立替払いを行うといった現実が容認され、滑稽な姿すら呈している。
限度額の引上げに関しては、平成13年の小泉内閣による緊急対策の実施が運用面での矛盾を拡大している。
より問題と思われるのは、労災保険料の支払義務者である事業主〔注:労働者負担はない〕において、拠出した労災保険料が、労災補償と関係のない倒産企業の未払い賃金の支払に充当されていることへの認識がほとんどないことである。(一方で、対象倒産企業の多くは、労災保険の成立手続を行っていないか、倒産前の長期にわたり保険料を滞納するなど本来の義務を怠っているという現実もある。)

3 制度の廃止の是非には議論があろうが、縮小再整理が必要と思われ、少なくとも、労災保険の福祉事業として、このままの姿で継続することは当を得ないのではなかろうか。
(*破産法の改正-H17.1.1施行予定−によって労働債権保護の強化が図られていることとの関係も踏まえ、制度の再設計に着手すべきだろう。)

H16.8記







未払賃金立替払制度の実施状況

参考「制度上の立替払限度額の推移」

〔立替払い額の推移=億円〕

年度
企業数
支給者数
立替払額(億円)
昭和51年度
565
11,076
14.3
昭和52年度
1,139
20,957
30.8
昭和53年度
1,020
21,345
33.9
昭和54年度
692
11,333
18.5
昭和55年度
834
15,560
27.0
昭和56年度
837
12,947
25.9
昭和57年度
901
15,285
36.1
昭和58年度
932
14,736
30.4
昭和59年度
1,048
14,410
27.9
昭和60年度
1,040
17,301
38.6
昭和61年度
975
16,332
36.5
昭和62年度
796
14,055
32.9
昭和63年度
559
7,496
17.3
平成元年度
377
4,776
11.9
平成2年度
250
3,215
6.9
平成3年度
353
5,650
19.8
平成4年度
517
7,468
22.7
平成5年度
772
14,437
48.1
平成6年度
1,084
18,747
69.6
平成7年度
1,274
21,574
83.5
平成8年度
1,376
22,699
86.6
平成9年度
1,636
27,489
108.7
平成10年虔
2,406
42,304
173.4
平成11年度
2,773
46,402
201.5
平成12年度
3,538
51,437
207.9
平成13年度
3,900
56,895
255.7
平成14年度
4,734
72,823
476.4
平成15年度
4,313
61,309
341.9
合計
40,641
650,058
2,484.6



未払い賃金の立替払いにおける限度額の推移(政令の改正経緯)

年度 未払賃金の限度額 立替払の上限額 政令公布日 施行日 適用労働者
昭和52年 45万円〔15万円×3〕 36万円 52.3.31 52.4.1 52.4.1以後の退職者
昭和53年 51万円〔17万円×3〕 40万8000円 53.4.6 53.4.6 53.4.1以後の退職者
昭和54年 51万円 40万8000円 54.4.4 54.4.4 54.4.1以後の退職者
昭和55年 54万円 43万2000円 55.4.5 55.4.5 55.4.1以後の退職者
昭和56年 58万円 46万4000円 56.4.3 56.4.3 56.4.1以後の退職者
昭和57年 61万円 48万8000円 57.4.6 57.4.6 57.4.1以後の退職者
昭和58年 62万円 49万6000円 58.4.5 58.4.5 58.4.1以後の退職者
昭和59年 64万円 51万2000円 59.4.11 59.4.11 59.4.1以後の退職者
昭和60年 67万円 53万6000円 60.4.6 60.4.6 60.4.1以後の退職者
昭和62年 70万円 56万 62.5.21 62.5.21 62.4.1以後の退職者
昭和63年 30歳未満 70万円
30歳以上45歳未満 110万円
45歳以上 130万円
56万
88万
104万
63.4.8 63.4.8 63.4.1以後の退職者
平成5年 30歳未満 70万円
30歳以上45歳未満 120万円
45歳以上 150万円
56万
96万
120万
5.4.1 5.4.1 5.4.1以後の退職者
平成10年 30歳未満 70万円
30歳以上45歳未満 130万円
45歳以上 170万円
56万
104万
136万
10.4.9 10.4.9 10.4.1以後の退職者
平成13年 30歳未満 110万円
30歳以上45歳未満 220万円
45歳以上 370万円
88万
176万
296万
13.12.19 14.1.1 14.1.1以後の退職者