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未払賃金立替払制度の現状
【資料のワンポイント解説】
1 制度発足時から、何ゆえ、「労災保険財政から企業倒産に伴う未払い賃金の立替なのか」。多くの疑問のなかスタートした「未払賃金立替払い制度」。
それでも、発足当時は、労災保険財政からの拠出額も年間、せいぜい年間2億円余りで、このような筋違論はそれほど大きな声とはならなかった。しかし、最近では、その額476億円(平成14年)と労災保険財政に占める割合も、制度発足時の から に上昇するなど保険財政の圧迫要因にもなりつつある。
2 立替払の制度運用も、発足時に想定していなかった〔中小企業定義の拡大、倒産法制の変更 、立替上限額の引き上げ〕によって、制度の変容が生じている。とくに、民事再生法等の倒産法制の改正があって以降、再建型倒産である民事再生法の適用企業に立替払制度を適用しているが、これなど賃金不払を起こした経営者が、自らの手で、国費(労災保険料)による立替払いを行うといった現実が容認され、滑稽な姿すら呈している。
限度額の引上げに関しては、平成13年の小泉内閣による緊急対策の実施が運用面での矛盾を拡大している。
より問題と思われるのは、労災保険料の支払義務者である事業主〔注:労働者負担はない〕において、拠出した労災保険料が、労災補償と関係のない倒産企業の未払い賃金の支払に充当されていることへの認識がほとんどないことである。(一方で、対象倒産企業の多くは、労災保険の成立手続を行っていないか、倒産前の長期にわたり保険料を滞納するなど本来の義務を怠っているという現実もある。)
3 制度の廃止の是非には議論があろうが、縮小再整理が必要と思われ、少なくとも、労災保険の福祉事業として、このままの姿で継続することは当を得ないのではなかろうか。
(*破産法の改正-H17.1.1施行予定−によって労働債権保護の強化が図られていることとの関係も踏まえ、制度の再設計に着手すべきだろう。)
未払賃金立替払制度の実施状況
参考「制度上の立替払限度額の推移」
〔立替払い額の推移=億円〕
年度
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企業数
|
支給者数
|
立替払額(億円)
|
昭和51年度
|
565
|
11,076
|
14.3
|
昭和52年度
|
1,139
|
20,957
|
30.8
|
昭和53年度
|
1,020
|
21,345
|
33.9
|
昭和54年度
|
692
|
11,333
|
18.5
|
昭和55年度
|
834
|
15,560
|
27.0
|
昭和56年度
|
837
|
12,947
|
25.9
|
昭和57年度
|
901
|
15,285
|
36.1
|
昭和58年度
|
932
|
14,736
|
30.4
|
昭和59年度
|
1,048
|
14,410
|
27.9
|
昭和60年度
|
1,040
|
17,301
|
38.6
|
昭和61年度
|
975
|
16,332
|
36.5
|
昭和62年度
|
796
|
14,055
|
32.9
|
昭和63年度
|
559
|
7,496
|
17.3
|
平成元年度
|
377
|
4,776
|
11.9
|
平成2年度
|
250
|
3,215
|
6.9
|
平成3年度
|
353
|
5,650
|
19.8
|
平成4年度
|
517
|
7,468
|
22.7
|
平成5年度
|
772
|
14,437
|
48.1
|
平成6年度
|
1,084
|
18,747
|
69.6
|
平成7年度
|
1,274
|
21,574
|
83.5
|
平成8年度
|
1,376
|
22,699
|
86.6
|
平成9年度
|
1,636
|
27,489
|
108.7
|
平成10年虔
|
2,406
|
42,304
|
173.4
|
平成11年度
|
2,773
|
46,402
|
201.5
|
平成12年度
|
3,538
|
51,437
|
207.9
|
平成13年度
|
3,900
|
56,895
|
255.7
|
平成14年度
|
4,734
|
72,823
|
476.4
|
平成15年度
|
4,313
|
61,309
|
341.9
|
合計
|
40,641
|
650,058
|
2,484.6
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年度 | 未払賃金の限度額 | 立替払の上限額 | 政令公布日 | 施行日 | 適用労働者 |
昭和52年 | 45万円〔15万円×3〕 | 36万円 | 52.3.31 | 52.4.1 | 52.4.1以後の退職者 |
昭和53年 | 51万円〔17万円×3〕 | 40万8000円 | 53.4.6 | 53.4.6 | 53.4.1以後の退職者 |
昭和54年 | 51万円 | 40万8000円 | 54.4.4 | 54.4.4 | 54.4.1以後の退職者 |
昭和55年 | 54万円 | 43万2000円 | 55.4.5 | 55.4.5 | 55.4.1以後の退職者 |
昭和56年 | 58万円 | 46万4000円 | 56.4.3 | 56.4.3 | 56.4.1以後の退職者 |
昭和57年 | 61万円 | 48万8000円 | 57.4.6 | 57.4.6 | 57.4.1以後の退職者 |
昭和58年 | 62万円 | 49万6000円 | 58.4.5 | 58.4.5 | 58.4.1以後の退職者 |
昭和59年 | 64万円 | 51万2000円 | 59.4.11 | 59.4.11 | 59.4.1以後の退職者 |
昭和60年 | 67万円 | 53万6000円 | 60.4.6 | 60.4.6 | 60.4.1以後の退職者 |
昭和62年 | 70万円 | 56万 | 62.5.21 | 62.5.21 | 62.4.1以後の退職者 |
昭和63年 | 30歳未満 70万円 30歳以上45歳未満 110万円 45歳以上 130万円 |
56万 88万 104万 |
63.4.8 | 63.4.8 | 63.4.1以後の退職者 |
平成5年 | 30歳未満 70万円 30歳以上45歳未満 120万円 45歳以上 150万円 |
56万 96万 120万 |
5.4.1 | 5.4.1 | 5.4.1以後の退職者 |
平成10年 | 30歳未満 70万円 30歳以上45歳未満 130万円 45歳以上 170万円 |
56万 104万 136万 |
10.4.9 | 10.4.9 | 10.4.1以後の退職者 |
平成13年 | 30歳未満 110万円 30歳以上45歳未満 220万円 45歳以上 370万円 |
88万 176万 296万 |
13.12.19 | 14.1.1 | 14.1.1以後の退職者 |