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[資料番号] 00180
[題  名] 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き-H16.10.14公表
[区  分] 労働衛生

[内  容]


心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
 




【資料のワンポイント解説】

1.本資料は、平成12年8月に示された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」における対策の一環として、中央労働災害防止協会への検討委託されていた「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援のための事業場向けマニュアル」である。

2.企業の実務レベルでは、この種の手引き(マニュアル)が切望されていた経緯もあり、時宜を得たものとして歓迎されよう。

3.本手引きの対象者は、「医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者」を対象としたものとされている。ただ、対象者の判断について定型的な判断基準を示すことは困難というのが本手引きの基本スタンスだ。しかし、『職場復帰判定基準の例として、労働者が職場復帰に対して十分な意欲を示し、通勤時間帯に一人で安全に通勤が出来ること、会社が設定している勤務時間の就労が可能であること、業務に必要な作業(読書及びコンピュータ作業、軽度の運動等)をこなすことができること、作業等による疲労が翌日までに十分回復していること等の他、適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間の眠気がないこと、業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していること等があげられよう。』との見解を示していることから、実務レベルにおいて一応の対応は可能だろう。

4.問題があるとすれば、事業場と主治医との連携だろう。現状では、両者に望ましい信頼関係が形成されているとは言えない。職場復帰の支援ともなると、両者の信頼関係を形成がカギになる。
現状では、主治医の関心が、本人の訴えと病状(と医学的治療)中心に偏っており、千差万別ともいえる就労環境への関心は極めて低い。プライバシー保護の問題もあって、事業場との接触にも消極的な主治医が少なくない状況も認められる。本手引きが、産業医選任事業場において、産業医−主治医連携を打ち出しているのは当然としても、現実(圧倒的多数が50人未満事業場であること、50以上事業場においても、産業医が未選任であったり、選任された産業医が多事業場を兼務している場合が多い実態もある。)を考慮すると、事業場−主治医の直接連携に関して、さらに具体化がほしいところだ。
なお、本手引きおいて多少なりオーソライズされた様式「職場復帰支援関する情報提供依頼書」が示されるところとなったので、これらが足がかりとなって、事業場−主治医の直接連携がよりスムーズな関係として形成されることを期待したい。

2004.10.17記
労務安全情報センター









心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き 〔平成16年10月14日厚生労働省発表〕



1  趣旨

 経営環境の厳しさが増す中、企業における組織の見直し等が進行し、業務の質的、量的変化等による心身の負担の一層の増加が懸念されている。また、心の健康問題により休業している労働者が増加しているという調査結果もある。
 平成12年に旧労働省により策定された「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」においては、事業場において事業者が行うことが望ましいメンタルヘルスケアが総合的に示されている。その具体的進め方の中で、心の健康問題により休業中の労働者の職場復帰について、事業場内産業保健スタッフ等は管理監督者及び事業場外資源と協力しながら指導及び支援を行うこととされている。
 心の健康問題で休業していた労働者が円滑に職場に復帰し、業務が継続できるようにするためには、休業の開始から通常業務への復帰までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要であると考えられる。
 心の健康問題で休業していた労働者の職場復帰支援においては、心の健康問題の特性に応じた対応が必要であるが、この手引きは、心の健康問題による休業者で、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者を対象としたものである。実際の職場復帰に当たり、事業者が行う職場復帰支援の内容について総合的に示しており、事業者は本手引きを参考にしながら衛生委員会等において調査審議し、産業医等の助言を受けながら個々の事業場の実態に即した形で、事業場の職場復帰支援プログラム(以下「事業場職場復帰支援プログラム」という。)を策定し、それが組織的かつ計画的に行われるよう積極的に取り組むことが必要である。さらに、職場復帰支援に関する体制や規程の整備を行い、定められた体制や規程については、教育等の実施により労働者への周知を図る必要がある。
 また、事業場職場復帰支援プログラムの実施においては、労働者のプライバシーに十分配慮しながら、事業場内産業保健スタッフ等を中心に、労働者、管理監督者が互いに十分な連携を取るとともに、主治医との連携を図りつつ取り組むことが重要である。

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2  職場復帰支援の流れ
 本手引きによる職場復帰支援の流れは、病気休業開始から職場復帰後のフォローアップまでの次の5つのステップからなっている。(図参照)
 <第1ステップ>    病気休業開始及び休業中のケアの段階であり、「労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出」、「管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等によるケア」で構成される。
 <第2ステップ>    主治医による職場復帰可能の判断の段階であり、「労働者からの職場復帰の意思表示及び職場復帰可能の診断書の提出」で構成される。
 <第3ステップ>    職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成の段階であり、「情報の収集と評価」、「職場復帰の可否についての判断」、「職場復帰支援プランの作成」で構成される。
 <第4ステップ>    最終的な職場復帰の決定の段階であり、「労働者の状態の最終確認」、「就業上の措置等に関する意見書の作成」、「事業者による最終的な職場復帰の決定」、「その他」で構成される。
 <第5ステップ>    職場復帰後のフォローアップの段階であり、「症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認」、「勤務状況及び業務遂行能力の評価」、「職場復帰支援プランの実施状況の確認」、「治療状況の確認」、「職場復帰支援プランの評価と見直し」で構成される。




図 職場復帰支援の流れ

<第1ステップ>病気休業開始及び休業中のケア
 労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出
 管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等によるケア
<第2ステップ>主治医による職場復帰可能の判断
労働者からの職場復帰の意志表示及び職場復帰可能の診断書の提出
<第3ステップ>職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
 情報の収集と評価
(イ) 労働者の職場復帰に対する意思の確認
(ロ) 産業医等による主治医からの意見収集
(ハ) 労働者の状態等の評価
(ニ) 職場環境の評価
(ホ) その他
 職場復帰の可否についての判断
 職場復帰支援プランの作成
(イ)職場復帰日  
(ロ)管理監督者による業務上の配慮  
(ハ)人事労務管理上の対応  
(ニ)産業医等による医学的見地からみた意見  
(ホ)フォローアップ  
(ヘ)その他
<第4ステップ>最終的な職場復帰の決定
 労働者の状態の最終確認
 就業上の措置等に関する意見書の作成
 事業者による最終的な職場復帰の決定
 その他
職場復帰
<第5ステップ>職場復帰後のフォローアップ
 症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
 勤務状況及び業務遂行能力の評価
 職場復帰支援プランの実施状況の確認
 治療状況の確認
 職場復帰支援プランの評価と見直し

 

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3 職場復帰支援の各ステップ

(1) 病気休業開始及び休業中のケア<第1ステップ>

イ  労働者からの診断書(病気休業診断書)の提出

  病気休業の開始においては、主治医によって作成された診断書を労働者より管理監督者に提出してもらう。診断書には病気休業を必要とする旨の他、職場復帰の準備を計画的に行えるよう、必要な療養期間の見込みについて明記してもらうことが望ましい。

ロ  管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等によるケア

  管理監督者は、病気休業診断書が提出されたことを、人事労務管理スタッフ及び事業場内産業保健スタッフに連絡する。休業を開始する労働者に対しては、療養に専念するよう安心させると同時に、休業中の事務手続きや職場復帰支援の手順についての説明を行う。
  管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等は、必要な連絡事項及び職場復帰支援のためにあらかじめ検討が必要な事項については労働者に連絡を取る。場合によっては労働者の同意を得た上で主治医と連絡を取ることも必要となる。


(2) 主治医による職場復帰可能の判断<第2ステップ>

 休業中の労働者から職場復帰の意思が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書(復職診断書)を提出するよう伝える。診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらうことが望ましい。
 なお、現状では、主治医による診断書の内容は、病状の回復程度を中心に記載されていることが多く、労働者や家族の希望が含まれている場合もある。


(3) 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成<第3ステップ>

 安全でスムーズな職場復帰を支援するためには、最終的な職場復帰決定の手続きの前に、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰の可否を適切に判断し、さらに職場復帰を支援するための具体的プラン(以下「職場復帰支援プラン」という。)を準備しておくことが必要である。このプロセスは、本手引きにおける中心的な役割を果たすものであり、事業場内産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者、当該労働者の間で十分に話し合い、良く連携しながら進めていく必要がある。
 心の健康づくり専門スタッフが配置された事業場においては、これらの専門スタッフは、より専門的な立場から、他の事業場内産業保健スタッフ等をサポートすることが望まれる。
 産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場においては、人事労務管理スタッフ及び管理監督者等、又は衛生推進者もしくは安全衛生推進者が、主治医との連携を図りながら、また地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源を活用しながら検討を進めていくことが必要である。
 ケースによっては、最終的な職場復帰の決定までのプロセスを同時にまとめて検討することも可能であるが、通常、職場復帰の準備にはある程度の時間を要することが多いため、職場復帰前の面談等は、実際の職場復帰までに十分な準備期間を設定した上で計画・実施することが望ましい。
 職場復帰の可否及び職場復帰支援プランに関する話し合いの結果については、「職場復帰支援に関する面談記録票」(様式例2)等を利用して記録にまとめ、関係者がその内容を互いに確認しながらその後の職場復帰支援を進めていくことが望ましい。


イ  情報の収集と評価

 職場復帰の可否については、労働者及び関係者から必要な情報を適切に収集し、様々な視点から評価を行いながら総合的に判断することが大切である。情報の収集については、労働者のプライバシーに十分配慮することが重要なポイントとなる。情報の収集と評価の具体的内容を以下に示す。
   (イ) 労働者の職場復帰に対する意思の確認
     a  労働者の職場復帰の意思及び就業意欲の確認
     b  事業場職場復帰支援プログラムについての説明と同意
   (ロ) 産業医等による主治医からの意見収集
 診断書に記載されている内容だけでは十分な職場復帰支援を行うのが困難な場合、産業医等は労働者の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を積極的に収集する。この際には、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(様式例1)等を用いるなどして、労働者のプライバシーに十分配慮しながら情報交換を行うことが重要である。


   (ハ) 労働者の状態等の評価
    a  治療状況および病状の回復状況の確認
     (a) 今後の通院治療の必要性、治療状況についての概要の確認
     (b) 業務遂行に影響を及ぼす症状や薬の副作用の有無
     (c) 休業中の生活状況
     (d) その他職場復帰に関して考慮すべき問題点など
    b  業務遂行能力についての評価
     (a) 適切な睡眠覚醒リズムの有無
     (b) 昼間の眠気の有無
     (c) 注意力・集中力の程度
     (d) 安全な通勤の可否
     (e) 業務遂行に必要な作業(読書やコンピュータ作業、軽度の運動等)の実施状況と、作業による疲労の回復具合
     (f) その他ホームワーク等の遂行状況など
    c  今後の就業に関する労働者の考え
     (a) 希望する復帰先
     (b) 希望する業務上の配慮の内容や期間
     (c) その他管理監督者、人事労務管理スタッフ、事業場内産業保健スタッフに対する意見や希望(職場の問題点の改善や勤務体制の変更、健康管理上の支援方法など)
    d  家族からの情報
      必要に応じて家庭での状態(病状の改善の程度、食事・睡眠・飲酒等の生活習慣など)について情報を収集する。


   (ニ) 職場環境の評価
    a  業務及び職場との適合性
     (a) 業務と労働者の能力及び意欲・関心との適合性
     (b) 職場の人間関係など

    b  作業管理、作業環境管理に関する評価
     (a) 業務量(作業時間、作業密度など)や質(要求度、困難度など)等の作業管理の状況
     (b) 作業環境の維持・管理の状況
     (c) 時期的な変動や不測の事態に対する対応の状況

    c  職場側による支援準備状況
     (a) 復帰者を支える職場の雰囲気やメンタルヘルスに関する理解の程度
     (b) 実施可能な業務上の配慮(業務内容や業務量の変更、就業制限等)
     (c) 実施可能な人事労務管理上の配慮(配置転換・異動、勤務制度の変更等)

   (ホ) その他
      その他、職場復帰支援にあたって必要と思われる事項について検討する。また、治療に関する問題点や、本人の行動特性、家族の支援状況など職場復帰の阻害要因となりうる問題点についても整理し、その支援策について検討する。


ロ  職場復帰の可否についての判断

 イの「情報の収集と評価」の結果をもとに、当該労働者の職場復帰が可能と考えられるか否かについて判断を行う。この判断は、主に事業場内産業保健スタッフ等を中心に行われるが、職場環境等に関する事項については、管理監督者等の意見を十分に考慮しながら総合的に行われなければならない。産業医が選任されていない50人未満の小規模事業場においては、人事労務管理スタッフ及び管理監督者等、又は衛生推進者もしくは安全衛生推進者が、主治医及び地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源による助言をもとにしながら判断を行う必要がある。


ハ  職場復帰支援プランの作成

 職場復帰が可能と判断された場合には、職場復帰を支援するための具体的なプランを職場復帰支援プランとして作成する。通常、元の就業状態に戻すまでにはいくつかの段階を設定しながら経過をみる。プラン作成にあたってはそれぞれの段階に応じた内容及び期間の設定を行う必要がある。労働者には、きちんとした計画に基づき着実に職場復帰を進めることが長期的、安定的な職場復帰等につながることを十分に理解させ、本人の希望のみによって職場復帰支援プランが決定されることがないよう気をつける必要がある。
 職場復帰支援プラン作成の際に検討すべき内容について下記に示す。


   (イ) 職場復帰日
      復帰のタイミングについては、労働者の状態や職場の準備状況の両方を考慮した上で総合的に判断する必要がある。
   (ロ) 管理監督者による業務上の配慮
     a  業務サポートの内容や方法
     b  業務内容や業務量の変更
     c  就業制限(残業・交代勤務・深夜業務等の制限または禁止、就業時間短縮など)
     d  治療上必要なその他の配慮(診療のための外出許可)など
   (ハ) 人事労務管理上の対応
     a  配置転換や異動の必要性
     b  フレックスタイム制度や裁量労働制度等の勤務制度変更の必要性
   (ニ) 産業医等による医学的見地からみた意見
     a  安全(健康)配慮義務に関する助言
     b  その他、職場復帰支援に関する医学的見地からみた意見(産業医が選任されていない場合は主治医による意見)
   (ホ) フォローアップ
     a  管理監督者によるフォローアップの方法
     b  事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法(職場復帰後のフォローアップ面談の実施方法等)
     c  就業制限等の見直しを行うタイミング
     d  全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し
   (ヘ) その他
     a  職場復帰に際して労働者が自ら責任を持って行うべき事項
     b  試し出勤制度(リハビリ出勤制度)等がある場合はその利用についての検討
     c  事業場外資源が提供する職場復帰支援プログラム等の利用についての検討


(4) 最終的な職場復帰の決定<第4ステップ>

 職場復帰の可否についての判断及び職場復帰支援プランの作成を経て、事業者による最終的な職場復帰の決定を行う。この際、産業医等が選任されている事業場においては、産業医等が職場復帰に関する意見及び就業上の措置等についてとりまとめた「職場復帰に関する意見書」(様式例3)等をもとに関係者間で内容を確認しながら手続きを進めていくことが望ましい。

イ  労働者の状態の最終確認
   症状の再燃・再発の有無、回復過程における症状の動揺の様子等について最終的な確認を行う。
ロ  就業上の措置等に関する意見書の作成
   産業医等は、就業に関する措置等の最終的なとりまとめを行い、「職場復帰に関する意見書」(様式例3)等を作成する。
ハ  事業者による最終的な職場復帰の決定
   上記ロの「職場復帰に関する意見書」等で示された内容について管理監督者、人事労務管理スタッフの確認を経た上で、事業者は最終的な職場復帰の決定を行い、労働者に対して通知するとともに、就業上の措置の内容についても併せて通知する。管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等は、「職場復帰に関する意見書」等の写しを保管し、その内容を確認しながらそれぞれが責任を持って遂行するよう努めなければならない。
     なお、職場復帰支援として実施する就業上の措置は、当該労働者の健康を保持し、円滑な職場復帰を目的とするものであるので、この目的に必要な内容を超えた措置を講ずるべきではない。
ニ  その他
   職場復帰についての事業場の対応や就業上の措置の内容等については、労働者を通じて主治医に的確に伝わることが望ましい。書面による場合は「職場復帰及び就業措置に関する情報提供書」(様式例4)等の書面を利用するとよい。こういった情報交換は、産業医等が主治医と連携を図りながら職場復帰後のフォローアップをスムーズに行うために大切なポイントである。


(5) 職場復帰後のフォローアップ<第5ステップ>

 心の健康問題には様々な要因が複雑に重なり合っていることが多いため、職場復帰の可否の判断や職場復帰支援プランの作成には多くの不確定要素が含まれることが少なくない。また、たとえ周到に職場復帰の準備を行ったとしても、実際には様々な事情から当初の計画通りに職場復帰が進まないこともある。そのため職場復帰支援においては、職場復帰後の経過観察と臨機応変にプランの見直しを行うことがより重要となってくる。
 職場復帰後は、管理監督者による観察と支援の他、事業場内産業保健スタッフ等による定期的または就業上の措置の更新時期等に合わせたフォローアップを実施する必要がある。フォローアップのための面談においては、下記の事項を中心に労働者及び職場の状況を労働者本人及び管理監督者から話を聞き、適宜職場復帰支援プランの評価や見直しを行っていかなければならない。


イ  症状の再燃・再発、新しい問題の発生等の有無の確認
   フォローアップにおいては、症状の再燃・再発についての早期の気づきと迅速な対応が不可欠である。事業場内産業保健スタッフ等は管理監督者と連携しながら労働者の状態の変化について適切なタイミングで対応出来るよう日頃から連携を図っておく必要がある。
ロ  勤務状況及び業務遂行能力の評価
   職場復帰の様子を評価するのに重要な視点であり、労働者の意見だけでなく管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行う必要がある。
ハ  職場復帰支援プランの実施状況の確認
   職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかについての確認を行う。予定通り実施されていない場合には、関係者間で再調整を図る必要がある
ニ  治療状況の確認
   通院状況や治療の自己中断等のチェック、現在の病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞き、必要に応じて労働者の同意を得た上で主治医との情報交換を行う。
ホ  職場復帰支援プランの評価と見直し
   様々な視点から現行の職場復帰支援プランについての評価を行う。何らかの問題が生じた場合には、関係者間で連携しながら臨機応変にプランの変更を行う必要がある。


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4 管理監督者及び事業場内産業保健スタッフ等の役割

(1) 管理監督者

 管理監督者は、事業場内産業保健スタッフ等と協力しながら職場における作業環境及び作業環境管理上の問題点を把握し、それらの改善を図ることで職場復帰支援における業務上の配慮を履行する。また、復帰後の労働者の状態についても事業場内産業保健スタッフ等と協力しながら注意深い観察を行っていく。人事労務管理上の問題については人事労務管理スタッフと連携して適切な対応を図っていく。


(2) 事業場内産業保健スタッフ等

イ  人事労務管理スタッフ
 人事労務管理スタッフは、人事労務管理上の問題点を把握し、職場復帰支援に必要な労働条件の改善や、配置転換、異動等についての配慮を行う。職場復帰支援においては、産業医等他の事業場内産業保健スタッフ等と連携しながらその手続きが円滑に進むよう調整を行う。
ロ  産業医等
 産業医等は、職場復帰支援における全ての過程で、管理監督者及び人事労務担当者の機能を専門的な立場から支援し、必要な助言及び指導を行う。特に、労働者の診療を担当している主治医との情報交換や医療的な判断においては、専門的立場から中心的な役割を担う。労働者や主治医から知り得た情報についてはプライバシーに配慮しながら、関係者間で取り扱うべき情報について調整を行い、就業上の措置が必要な場合には事業者に必要な意見を述べる。
ハ  衛生管理者等
 衛生管理者等は、産業医等の助言、指導等を踏まえて、職場復帰支援が円滑に行われるよう労働者に対するケア及び管理監督者のサポートを行う。また、必要に応じて人事労務管理スタッフや事業場外資源との連絡調整にあたる。また、50人未満の小規模事業場においては、衛生推進者又は安全衛生推進者は、労働者及び管理監督者と連携し、主治医及び地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源による助言を求めながら、職場復帰支援に関する業務を担当する。
ニ  保健師等
 保健師等は、産業医等及び衛生管理者等と協力しながら労働者に対するケア及び管理監督者に対する支援を行う。
ホ  心の健康づくり専門スタッフ
 事業場内に精神科医、心療内科医、臨床心理士、産業カウンセラー、心理相談担当者等の心の健康づくり専門スタッフがいる場合には、これらの専門スタッフは他の事業場内産業保健スタッフ等をより専門的な立場から支援する。


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5 プライバシーの保護

  職場復帰支援において扱われる労働者の健康情報等のほとんどが、労働者のプライバシーに関わるものである。労働者の健康情報等は個人情報の中でも特に機微な情報であり、厳格に保護されるべきものである。とりわけメンタルヘルスに関する健康情報等は慎重な取り扱いが必要である。また、周囲の「気づき情報」は、当該提供者にとっても個人情報であり慎重な取り扱いが必要となる。事業者は労働者の健康情報等を適正に取り扱い、労働者のプライバシーの保護を図らなければならない。


(1) 情報の収集と労働者の同意等
 職場復帰支援において取り扱う労働者の健康情報等の内容は必要最小限とし、職場復帰支援と事業者の安全配慮義務の履行を目的とした内容に限定するべきである。労働者の健康情報等を収集する際には、原則として、全て本人の同意を得なければならない。必要に応じて主治医や家族から情報を得る場合にも、利用目的を明らかにし、原則として本人の同意を得た上で情報の収集を行わなければならない。また、労働者の健康情報等を第三者へ提供する場合も本人の同意が必要である。
 このような場合に備えて、あらかじめ衛生委員会等の審議を踏まえて、必要な情報の収集等を行うための労働者の同意の取り方やその基本的な項目や手続き等を定めておくことが望ましい。


(2) 産業医等による情報の集約・整理
 労働者の健康情報等はそれを取り扱う者及び権限を明確にし、職場復帰支援に関わる者がそれぞれの責務を遂行する上で必要な範囲の情報に限定して取り扱うことを原則とすべきである。特に、メンタルヘルスに関する健康情報等のうち、精神疾患を示す病名は誤解や偏見を招きやすいことから、特に慎重な取扱いが必要である。このことからも、情報が産業医等の手許に集中され、産業医等が就業上必要と判断する限りで集約・整理した情報が、事業場の中でその情報を必要とする者に伝えられる体制が望ましい。この場合、産業医等は専門的な立場から情報を集約・整理し、労働者のプライバシーが守られた状態で関係者間の情報交換が可能になるよう、調整役として上手く機能する必要がある。
 しかしながら、現状では、産業医が非常勤である事業場や産業医の選任義務のない事業場も多い。このような事業場では、今後、健康情報等の取扱いに際し、産業医等が中心となるよう、その体制を備えていくことが望ましい。


(3) 情報の漏洩等の防止
 事業者は、労働者の健康情報等の漏洩等の防止措置を厳重に講ずる必要がある。また、健康情報等を取り扱う者に対して、その責務を認識させ、具体的な健康情報等の保護措置に習熟させるため、必要な教育及び研修を行う必要がある。さらに、事業場外資源である外部機関を活用する場合には、当該機関に対して、労働者のプライバシーの保護が図られるよう、必要かつ適切な方策を講じる必要がある。


(4) 情報の取り扱いルールの策定
 事業者は、事業場職場復帰支援プログラムに関する規程及び体制の整備を図るにあたって、健康情報等の取扱いに関して、衛生委員会等の審議を踏まえて一定のルールを策定するとともに、関連する文書の書式、取り扱い並びに保管方法等について定めておく必要がある。


(5) 法令・指針等の遵守
 プライバシーの保護に関しては、平成15年5月に個人情報の保護に関する法律が成立し、平成17年4月から全面施行され、さらに、関連する法令・指針等の制定が進むなど、個人情報保護の取り組みへの要請は高まっている。事業者は労働者の健康情報等プライバシーの保護に関する法令・指針等の趣旨及び内容を十分に理解し、これらを遵守し、労働者の健康情報等の適正な取り扱いを図らなければならない。


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6 その他職場復帰支援に関して検討・留意すべき事項

(1) 主治医との連携の仕方

 主治医との連携に当たっては、事前に当該労働者への説明と同意を得ておく必要がある。また、主治医に対して事業場内産業保健スタッフ等や管理監督者それぞれの立場や役割、病気休業や職場復帰に関する会社の規則、プライバシーに関する事項等について十分な説明を行うことも必要である。その際、労働者本人の職場復帰を支援する立場を中心としながら必要な情報交換が行われるよう努めなければならない。必要な情報とは職場復帰支援に関して職場で配慮すべき内容が中心であり、またそのための理解を得るための必要最小限の病態や機能に関する情報である。必ずしも具体的な疾患名が必要とされるわけではない。特に産業医等は専門的な立場からより詳細な情報を収集出来る立場にあるが、主治医とスムーズなコミュニケーションが図れるよう精神医学、心身医学に関する基礎的な知識を習得していることが必要となる。
 また、「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(様式例1)等を用いて主治医に情報提供を依頼する場合や、直接主治医との連絡や面会を行う場合、それに費用が要する場合の負担については、事前に各事業場で取り決めておく必要がある。


(2) 職場復帰可否の判断基準

 職場復帰可否について定型的な判断基準を示すことは困難であり、個々のケースに応じて総合的な判断を行わなければならない。労働者の業務遂行能力が職場復帰時には未だ病前のレベルまでは完全に改善していないことも考慮した上で、職場の受け入れ態勢と組み合わせながら判断しなければならない。職場復帰判定基準の例として、労働者が職場復帰に対して十分な意欲を示し、通勤時間帯に一人で安全に通勤が出来ること、会社が設定している勤務時間の就労が可能であること、業務に必要な作業(読書及びコンピュータ作業、軽度の運動等)をこなすことができること、作業等による疲労が翌日までに十分回復していること等の他、適切な睡眠覚醒リズムが整っていること、昼間の眠気がないこと、業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していること等があげられよう。
 次項に掲げる試し出勤制度(リハビリ出勤制度)が整備されている事業場や、事業場外の職場復帰支援サービス等が利用可能な場合には、これらを利用することにより、より実際的な判断が可能となる。


(3) 試し出勤制度(リハビリ出勤制度)

 社内制度として試し出勤制度(いわゆるリハビリ出勤制度)を設けている場合、より早い段階で職場復帰の試みを開始することが出来、結果として早期の復帰に結びつけることが可能となる。また、労働者自身が実際の職場において自分自身及び職場の状況を確認しながら復帰の準備を行うことが出来るため、より高い職場復帰率をもたらすことが期待される。しかし、この制度の運用においては、試し出勤の人事労務管理上の位置づけについて十分に検討しておく必要がある他、この制度が職場の都合でなく労働者自身の主体的な考えや判断にもとづいて運用されるよう留意すべきである。


(4) 「まずは現職へ復帰」の原則

 職場復帰に関しては現職へ復帰させることが多い。これは、もしより好ましい職場への配置転換や異動であったとしても、新しい環境への適応にはやはりある程度の時間と心理的負担を要するためであり、そこで生じた負担が疾病の再発・再燃に結びつく可能性が指摘されているからである。これらのことから、職場復帰に関しては「まずは現職に復帰」を原則とし、今後配置転換や異動が必要と思われる事例においても、まずは元の慣れた職場で、ある程度のペースがつかめるまで業務負担を軽減しながら経過を観察し、その上で配置転換や異動を考慮した方が良い場合が多いと考えられる。ただし、これはあくまでも原則であり、異動等を誘因として発症したケースにおいては、現在の新しい職場に上手く適応出来なかった結果である可能性が高いため、適応出来ていた以前の職場に戻すか、または他の適応可能と思われる職場への異動を積極的に考慮した方が良い場合がある。その他、職場要因と個人要因の不適合が生じている可能性がある場合等においても、本人や職場、主治医等からも十分に情報を集め、総合的に判断しながら配置転換や異動の必要性を検討する必要がある。


(5) 職場復帰に関する判定委員会(いわゆる復職判定委員会等)の設置

 職場復帰に関する判定委員会(いわゆる復職判定委員会等)が設置されている場合、職場復帰支援の手続きを組織的に行える等の利点があるが、委員会決議についての責任の所在の明確化、迅速な委員会開催のための工夫、身体疾患における判定手続きと異なることについての問題点等について十分に検討しておく必要がある。


(6) 職場復帰する労働者への心理的支援

 疾病による休業は、多くの労働者にとって働くことについての自信を失わせる出来事である。必要以上に自信を失った状態での職場復帰は、健康及び就業能力の回復に好ましくない影響を与える可能性が高いため、周囲からの適切な心理的支援が大切となる。特に管理監督者は、労働者の焦りや不安に対して耳を傾け、健康の回復を優先するよう努め、何らかの問題が生じた場合には早めに相談するよう労働者に伝え、事業場内産業保健スタッフ等と相談しながら適切な支援を行っていく必要がある。


(7) 事業場外資源の活用

 職場復帰支援における専門的な助言や指導を必要とする場合には、それぞれの役割に応じた事業場外資源を活用することが望ましい。中小規模事業場等で、専門的な人材の確保が困難な場合は、地域産業保健センター、都道府県産業保健推進センター、中央労働災害防止協会、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター、精神保健福祉センター等の事業場外資源の支援を受ける等、その活用を図ることが有効である。特に50人未満の小規模事業場では、事業場内に十分な人材が確保できない場合が多いことから、必要に応じ、地域産業保健センター、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター等の事業場外資源を活用することが有効であり、衛生推進者又は安全衛生推進者は、事業場内の窓口としての役割を果たすよう努めることが必要となる。


(8) 職場復帰支援に関する体制の整備と教育による事業場職場復帰支援プログラムの周知

 事業者は策定された事業場職場復帰支援プログラムが、事業場の実態に即した形で実施されるよう社内の規程及び体制の整備を図らなければならない。また、事業場職場復帰支援プログラムが労働者及び管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等に十分周知されるよう必要な教育を実施する必要がある。


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付記

1  用語の定義
  本手引きにおいて、以下に掲げる用語の定義は、それぞれ以下に定めるところによる。
 (1) 産業医等
    産業医その他労働者の健康管理等を行う医師をいう。
 (2) 衛生管理者等
    衛生管理者、衛生推進者又は安全衛生推進者をいう。
 (3) 事業場内産業保健スタッフ
    産業医等、衛生管理者等及び事業場内の保健師等をいう。
 (4) 心の健康づくり専門スタッフ
    心理相談担当者、産業カウンセラー、臨床心理士、精神科医、心療内科医等をいう。
 (5) 事業場内産業保健スタッフ等
    事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいう。
 (6) 事業場職場復帰支援プログラム
    個々の事業場における職場復帰支援の手順、内容及び関係者の役割等について、事業場の実態に即した形であらかじめ当該事業場において定めたもの。
 (7) 職場復帰支援プラン
    職場復帰をする労働者について、労働者ごとに具体的な職場復帰日、管理監督者の業務上の配慮及び人事労務管理上の対応等の支援の内容を、当該労働者の状況を踏まえて定めたもの。


2  様式例について
 後掲の様式例は、本手引きに基づいて職場復帰支援を行うために、各ステップで必要となる文書のうち要となる文書について、その基本的な項目や内容を例として示したものである。この様式例の活用に当たっては、各事業場が衛生委員会等の審議を踏まえて事業場職場復帰支援プログラムを策定し、必要な諸規程を整備し、事業場職場復帰支援プログラムを運用する過程において、これらの様式例を参考に、より事業場の実態に即したものを整備することが望ましい。


3  本手引きの適用に当たっての留意点
 本手引きは、心の健康問題による休業者で、医学的に業務に復帰するのに問題がない程度に回復した労働者を対象としたものである。本手引きの適用が困難な場合には、主治医との連携の上で、地域障害者職業センター等の外部の専門機関が行う職業リハビリテーションサービス等の支援制度の活用について検討することが考えられる。