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[資料番号] 00184
[題  名] 請負求人の取扱等について (H16.10.1付ハローワーク窓口取扱改善に係る通達)
[区  分] その他

[内  容]

請負求人の取扱等について
〔平成16年10月1日付職発第1001002号厚生労働省職業安定局長から各都道府県労働局長あて、通達〕


 


【資料のワンポイント解説】

1.職安求人のうちで、請負求人(=他の企業,工場等の業務下請を行う事業主の求人であって,その業務の実施場所(就業場所)が発注元の事業所内にあるもの。)の占める割合が高くなっている。しかし、この請負求人には問題も多い。肝心の就労場所が明示されていなかったり、求人数が実際の採用予定人員に照らして明らかに過大で,就業予定者の登録目的にハローワークを利用しているなどの悪質なケースも目立っていた。

2.このたびの通達は、これら請負求人の問題点を踏まえ、窓口の指導基準の統一と一定の基準に抵触する求人については、当該求人を不受理とするなどの強い姿勢を打ち出しているのが特徴である。

3.今回のハローワークにおける請負求人の取扱改善は、派遣法との関係で問題となる「偽装請負」の問題と併せて、今後、適正化に向けた取組みが強化されることになりそうだ。





             

請負求人の取扱等について

〔平成16年10月1日付職発第1001002号厚生労働省職業安定局長から各都道府県労働局長あて、通達〕
          

 最近の雇用情勢は,有効求人倍率の上昇が続くとともに,新規求人数についても増加が続くなど改善の動きが続いている。
 このように増加しつつある求人を,確実に就職,充足に結びつけることは,極めて重要な課題となっている。このためには,従来にも増して求人の内容を詳細かつ的確に把握するとともに,これに基づくきめ細かな相談,紹介に努める必要がある。
 こうした中で,求人増加の内容を見ると請負求人も相当部分を占めており,それらの就職,充足は全体と比較すれば低い状況にあることから,その適切な受理に努め,適切に受理されたものについては適格な紹介を行うため,その取り扱い方法を下記のとおりとしたので,その実施に遺漏のないようお願いする。


1求人受理時の対応等

 請負求人(請負契約を締結し他の企業,工場等の事業所の業務の下請けとして業務を行う事業主の求人であって,その業務の実施場所(就業場所)が当該請負契約の発注元の事業所内にあるものをいう。以下同じ。)については,
@ 就業場所,雇用期間,業務内容を始めとする就業条件が不明確
A 求人数が現実の採用可能数より過大
B 採用に責任を有する担当が不明確
C 一の求人について複数の公共職業安定所への重複した求人申込み
等特有の留意すべき点が見られる。請負求人の適正な内容の確保を図るためには,これら留意すべき点を踏まえ適切に対応していくことが必要であり,具体的には,以下のように取り扱うものとすること。


(1)求人条件の明確化

イ 職業安定法に基づく労働条件の明示


 就業場所,雇用期間,業務内容等の職業安定法(昭和22年法律第141号)(以下単に「法」 という。)第5条の3の規定に基づき労働条件の明示が義務付けられている事項については,その内容の確認と法に基づく求人事業主による明示を徹底すること。
  中でも,就業場所については,的確な明示に消極的な求人事業主も見られるが,求職者にとっては求人選択上重要な事項であることから,求人申込書の「就業場所」欄に,就業場所を明確に特定できる住所及び就業先のある発注元の事業所名を記載して求人公開カードにより明示するよう指導すること。
  また,就業場所の明示に係るこれらの指導を求人事業主が営業上の理由等により拒否する場合,求人公開カードに明示する内容は求人事業主が最大限可能とする範囲にとどめるものとするが,法第5条の3第2項及び第3項により義務付けられている求人事業主による公共職業安定所に対する就業場所の明示は厳正に適用することとし,少なくとも求人事業主は就業場所を明確に特定できる住所を明らかにしなければならないこと。
 この場合,就業場所を明確に特定できる住所等の情報は,求人管理情報の「求人条件に関する特記事項」に記録するとともに,求人公開カードの「備考」欄に「就業場所の詳細については窓口に問い合わせること」等の記載を行うとともに,求職者には相談等の際に当該情報を提供すること。
 なお,求人事業主に対しては,就業場所を明確に特定できる住所は,求人公開カード上に明示しない場合であっても,法第5条の3第1項及び第3項の規定に基づき求職者への提供がなされるものであることを説明すること。

ロ 適正な求人数の明示

 求人数は,実際に必要な募集人員と客観的にみて齟齬のないことが最低限必要である。
 特に大量の求人数であるものについては,求人事業主から雇用期間,業務内容等の求人条件を聞き取ること等により,求職者の登録目的のものでないことを確認すること。
 また,求人数が過大であると見られる場合は十分な説明を求め,必要ならば適正な求人数とするよう訂正・明示を指導すること。

ハ 採用担当者及び請負求人である旨の明示

 採用担当者の所属部署,役職,氏名,連絡先等を明らかにすること等により,採用が請負事業主自らにおいて適正に行われることを確認すること。
 また,求職者にとってその求人が請負求人であることについて認識することは,求人選択を行う上で重要な情報であることから,「仕事の内容」欄には当該業務が請負業務である旨明記させるとともに,「職種」欄の末尾に「(請)」と記入すること。


(2)求人申込安定所の明確化

 請負求人については,その提出先を求人事業所又は就業場所を管轄する公共職業安定所(管轄外であっても交通条件等も考慮して求人事業所若しくは就業場所から近いもの等を含む。以下本(2)の項において同じ。)とするよう指導すること。
 また,受理に当たり,同一求人が複数所に重複して申し込まれないかを事業主に確認し,重複する場合は広域求人連絡を行うこととし,いずれかの1所に求人申込をするよう指導すること。
 その際,広域連絡の対象公共職業安定所は,求職者の応募が見込まれる地域を管轄するものとするよう指導するが,応募が見込まれるか否かは,賃金条件,従業員宿舎の有無等を総合的に勘案して判断すべきものである。
 なお,複数所での申込みを1所に集約して広域連絡求人とすることに応じない求人事業主に対しては,申込所ごとの求人数の合計が採用必要数からみて適正なものとなるよう指導すること。


(3)求人の特徴のきめ細かな把握

 きめ細かな相談を通じた適格紹介による就職・充足を図ることと併せて,求人事業所の状況把握を通じた適正な請負が行われていることの確認にも資するため,求職者が請負求人を選択する際に重要となる請負求人に特有の以下のような情報を,詳細かつ的確に把握し,求人票,事業所情報等に記録すること。
@ 請負事業所が自らのノウハウをもって処理する業務の内容
A 求人に係る職務の詳しい内容
B 必要とされる経験,能力
C 請負事業所において実施する能力開発
D 採用後の処遇
E 雇用契約期間中の就業場所の変更の状況
F 労働者の定着状況,雇用期間満了後の雇用契約更新の状況

(4)求人申込の内容が不適切な場合の取扱

 法に基づき明示が義務付けられている事項が明示されない場合や,求人内容に問題があり適正な採用・雇用が行われない可能性がある場合は,受理を保留した上で求人内容について適切な明示,説明を行うよう指導すること。
 指導にも関わらず,求人内容についての適切な明示,説明が得られず,法令違反がある又は適正な採用・雇用が行われないと判断される場合は,事業主に以下のような理由を示して不受理とすること。

イ 法に基づく労働条件の明示について,指導を尽くしてもなお必要な労働条件の明示がなされない場合
  (理由)職業安定法の求人条件明示義務に抵触しており,職業安定法第5条の5ただし書の規定により不受理とする。
ロ 採用担当者の明確化,適正な請負としての内容等について,指導を尽くしてもなお適正な対応がとられず,かつ,その内容が違法な労働者供給又は労働者派遣に係るものであることが明らかとなった場合(ただし,不受理の判断を行う場合は,必要に応じ労働局の需給調整事業関係部門と協議を行うものとする。)
  (理由)求人内容が,労働者供給(又は労働者派遣)に係るものであり,職業安定法(又は労働者派遣法)に抵触しており,職業安定法第5条の5ただし書の規定により不受理とする。
ハ 求人数が明らかに過大,登録目的であることが明らか,求人票の内容に明白な誤り・矛盾がある等採用決定後も速やかな雇用の開始や労働条件の確定に結びつかないと判断される求人,内容の修正又は変更をしなければ明らかに求職者に誤認を与えるような誤り・矛盾がある求人等について,指導を尽くしてもなお是正されない場合
  (理由)求人内容に不備があり,これを前提に雇用関係の成立をあっ旋することができないため受理できない。

2 紹介時の対応等

 請負求人については,必ずしも求職者にその特徴が理解されていないこと,就業条件が不明確になりがちなこと等により,就職に結びつきにくい面もあるが,上記1により適正に受理された請負求人に対しては,その内容に応じた適格な紹介を通じた充足に努めるものとし,具体的には以下のように取り扱うものとすること。

(1)求職者の理解の促進

 請負求人の特性を説明するリーフレットの作成・配付等により,求職者の理解の促進を図るものとすること。

(2)個別求人の特徴の把握と職業相談での活用

 上記1の対応等を通じて得られた情報に基づく求人の特徴を踏まえ,個々の求職者ニーズに応じた詳細な情報提供,きめ細かな相談・紹介を行うものとすること.具体的な取組みの例としては,次のようなものが考えられる。
イ 求職者が必要とする情報等を,求人情報誌等として整理して提供
ロ 職長や業界団体担当者による説明会の開催
ハ 管理選考の実施

3 職業紹介において発生したトラブルへの対処

 求職者からの苦情の申し出等トラブルが発生した場合には次のように取り扱うものとすること。

@ 事実関係を求職者,求人事業主から電話等により速やかに聴取すること。
A @により,法令に照らして不適正な求人,不適正な請負等の問題の存在を疑うに足る事実等が確認された場合は,さらに必要な調査を行い,詳細な事実関係の確認を行うこと。
 その際,事案の内容に応じて労働局の需給調整事業関係部門等にも協力を要請する。
  併せて,緊急の対応として,当該求人についてさらなるトラブルの発生が予想されるときは当該求人を紹介保留とし,当該求人事業主に係る他の受理済み求人の紹介又は新規求人の受理に当たっては類似の同額がないか等の観点に立ち,慎重かつ適切な取扱いを図ること。
B Aの結果,法令に照らして当該求人に問題が存在することが明らかになった場合,これを取り消すとともに,事案の内容に応じて労働局の需給調整事業関係部門等と連携しつつ,事業主に対する必要な指導を行い,問題解消の確認までは当該求人以外の有効求人の紹介は保留とし,新規求人は受理保留又は不受理とすること。
  また,法令に照らして当該求人に問題が存在しない場合は,紹介保留を速やかに解除し,併せて新たな無用のトラブルの発生を回避するための措置を講ずるよう指導すること。
C 苦情の申し出を行った求職者に対しては,調査,指導等の結果又は経過について,適切な時期に説明すること。その際,法第51条の2の守秘義務に留意すること。
D なお,トラブルが発生し,上記のような対応を行った場合は,就業地,求人事業所所在地,広域連絡先等関係の労働局又は公共職業安定所に必要な連絡を行い,連携して適切な取扱の確保を図るものとすること。