次の資料 前の資料

[資料番号] 00185
[題  名] 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案(概要)
[区  分] その他

[内  容]

 

裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案の概要
 

 

【資料のワンポイント解説】

1.本資料は、H16.10.12閣議決定を経て、今国会(第158回国会)にかかっている「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案」の概要である。〔なお、本法案は、H16.11.9衆議院本会議、またH16.11.19参議院本会議にて可決成立した。〕

2.法案のねらいは、「国民の多様な紛争解決ニーズに対応し、裁判以外での紛争の解決を促進すること」にあるとされる。(わが国では、従来から紛争の多くは、むしろ裁判外で世話役的解決が図られてきた等の伝統もあるのだが、近年はその機能の衰退は著しい。ならば、もっと、ビジネスライクに(今風に)、裁判外での紛争解決を図っていく基盤を整備しようということだろう。)

 (イ) 法律的には、弁護士以外の専門家の関与について弁護士法の制約をどうするかという問題があったが、一定の整理をした。
 (ロ) もう一つは、「時効の中断効果を付与する」という点だろうが、これが実益を伴うケースはそれほど多くないから、実務上の意義は小さいだろう。(民間認証機関には時効中断が認められ、行政機関での処理にはそれが認められないという不整合の問題が生じるが、実務的には、問題とするに足らないだろう。)

3.結局、本法案は、調停・あっせんを行う民間業者に対する『認証制度』の導入に特徴(その点に尽きるのだが)があるが、いずれにせよ、利用者が、弁護士以外の専門家に対して、有料で(報酬を払って)紛争解決を依頼したいと思うだけの実力を備える−紛争解決事業者の存在が一般化するか否か−という現実的な問題に帰結するのだろう。







裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律案(概要)

 紛争の解決を図るのにふさわしい手続を選択することを容易にし、国民の権利利益の適切な実現に資することを目的に、裁判外紛争解決手続についての基本理念等を定めるとともに、民間紛争解決手続(民間事業者が行ういわゆる調停・あっせん)の業務に関し、認証の制度を設け、併せて時効の中断等に係る特例を定めてその利便の向上を図る。

第1 基本理念等

 裁判外紛争解決手続に関し、その基本理念(公正かつ適正な実施等)及び国等の責務(国民の理解の増進等)について定める。

第2 民間紛争解決手続の業務の認証制度

1 認証

(1) 和解の仲介(いわゆる調停・あっせん)の業務を行う民間の紛争解決事業者は、申請により、その業務の適正性を確保する観点から必要とされる一定の要件に適合するものであることにつき、法務大臣の認証を受けることができるものとする。

(2) 法務大臣は、認証に当たり、認証審査参与員(民間紛争解決手続に関する専門的な知識経験を有する者のうちから法務大臣が任命)から意見聴取を行う等所要の手続を経るものとする。

2 利用者への選択の目安の提供

(1) 認証を受けた紛争解決事業者(認証紛争解決事業者)は認証を受けている旨及び業務に関する一定の情報の提供を行うものとするとともに、法務大臣はこれらの情報を公表できるものとすることにより、利用者の選択の利便に資するようにする。

(2) 認証紛争解決事業者でない者は認証を受けていると誤認されるおそれのある表示をしてはならないものとする。


3 法律上の効果の付与等

(1) 時効の中断

 認証を受けた紛争解決手続(認証紛争解決手続)の終了後1 か月以内に訴訟手続に移行する等一定の要件を満たす場合には、認証紛争解決手続における請求時に遡って時効中断の効力が発生するものとする。

(2) 訴訟手続の中止

 当事者間に認証紛争解決手続によってその紛争の解決を図る旨の合意があり、当事者の共同の申立てがある等の一定の要件を満たす場合には、受訴裁判所は、一定の期間を定めて訴訟手続を中止することができるものとする。

(3) 調停の前置に関する特則

 訴え提起前に裁判所の調停を経なければならない事件のうち一定のものについて、訴えの提起前に認証紛争解決手続を経ている等一定の要件を満たす場合には、原則として、調停の前置を要しないものとする。

(4) その他

 認証紛争解決事業者(手続実施者を含む。)は、認証紛争解決手続の業務を行うことに関し、報酬を受けることができるものとする。


4 認証の基準等

(1) 認証の基準

@ 業務対象となる紛争範囲に応じて適切な手続実施者(いわゆるあっせん人・調停人)を選任するための方法、手続実施者が紛争当事者と利害関係を有する場合等にその手続実施者を排除するための方法、弁護士でない者が手続実施者となる場合の弁護士の関与に関する措置等を定めていること等その業務が一定の基準に適合すること。

A @の業務を行うのに必要な知識・能力、経理的基礎を有すること。

(2) 欠格事由

 暴力団員等一定の事由に該当する者は認証を受けることができないものとする。

5 認証紛争解決事業者の義務

 認証紛争解決事業者は、暴力団員等を業務の補助者等として使用してはならないものとする。また、利用申込み者に手続実施者の選任に関する事項等を説明するとともに、実施した手続に関し所要の事項を記載した書類を作成・保存しなければならないものとする。

6 報告等

(1) 認証紛争解決事業者は、事業年度ごとに、事業報告書等一定の書類を作成し、法務大臣に提出しなければならないものとする。

(2) 認証紛争解決業務の適正な運営を確保するため、法務大臣は、一定の要件の下で、認証紛争解決事業者に対して、報告の徴求、検査、業務に関し必要な措置をとるべき旨の勧告・命令、認証の取消しを行うものとする。
 なお、法務大臣は、報告の徴求等に当たっては、利用者との信頼関係に基づいて成り立つものであること等民間紛争解決手続の業務の特性に配慮しなければならないものとする。

7 その他

 公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日から施行するものとする。