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【資料のワンポイント解説】
1 厚生労働省は、H17.3.31付けで「平成17年度地方労働行政運営方針」を地方労働局に示した。これを受けて、各都道府県労働局は、それぞれの管内事情に即し、当該重点課題を明確にした行政運営方針を策定し、平成17年度の行政展開を図ることとなる。
なお、実務的には、2月初め頃より〔方針案〕が地方局に示され、地方計画の策定作業は別途進行していく。3月31日に示される本方針は、いわゆる最終確定方針の性格を有するものである。
2 厚生労働省が明らかにした「平成17年度地方労働行政運営方針」の概要は以下のとおり。
平成17年度地方労働行政運営方針の策定について
概要 1 平成17年度地方労働行政の課題 2 平成17年度地方労働行政の重点施策 (2)職業安定行政の重点対策 (3) 雇用均等行政の重点対策 (4)労働保険適用徴収業務の重点対策 (5)個別労働紛争解決制度の積極的な運用 (6)各行政間の連携の下に推進する重点対策
3 地方労働行政展開に当たっての基本的対応 |
平成17年度地方労働行政運営方針
第1 労働行政を取り巻く情勢
1 社会経済情勢
(1) 経済社会の構造的な変化
我が国の経済社会は、経済のグローバル化、情報化、サービス経済化、規制改革などにより産業構造の変化が進展している。また、平成15年の合計特殊出生率が過去最低の1.29となるとともに平均寿命が伸長するなど、急速な少子・高齢化が進行しており、人口減少社会に転換することが見込まれている。
このように我が国の経済社会が大きく変化する中で、労働市場においては、若年層を中心に雇用のミスマッチがみられるとともに、非正規労働者の比率がここ数年特に高まっている。また、若年層を中心に就業意識の多様化も進展している。
さらに、急速な少子・高齢化の進行により、経済成長の鈍化、税や社会保障における負担の増大など、その深刻な影響について多くの国民が危機感を抱いている。
(2) 最近の経済情勢
景気は、企業収益が改善し、設備投資が緩やかに増加しているものの、輸出の弱含み等、一部に弱い動きが続いており、回復が緩やかになっている。
政府としては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」の早期具体化により、構造改革の取組を加速・拡大する。また、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行うとともに、集中調整期間終了後におけるデフレからの脱却を確実なものとするため、政策努力をさらに強化する。
2 雇用を巡る動向
(1) 最近の雇用失業情勢
最近の雇用失業情勢は、厳しさが残るものの、改善している。
公共職業安定所で取り扱う新規求人数は、前年同月比で平成14年7月以降増加が続いている。一方、新規求職者数は前年同月比で平成14年11月以降減少傾向が続いている。これらの結果、有効求人倍率は上昇し、平成17年2月には0.91倍となり、4か月連続で平成5年1月以来11年10か月ぶりに0.9倍台の水準となっている。
また、就職率は平成5年度以来20%後半で推移し、平成15年度は28.8%となった。平成16年度に入っても、すべての月で前年度の実績を上回る水準で推移している。
完全失業者数は、平成17年2月には308万人と、平成15年6月以降21か月連続で減少している。完全失業率は、平成14年8月、15年1月にこれまでで最も高い水準の5.5%となった後、平成15年12月には4.9%と2年6か月ぶりに4%台に低下し、平成16年3月以降は4%台で推移しており、依然として高水準ながら低下傾向がみられる。
その一方で、生活保護の保護率が上昇しており、被保護世帯数は平成15年度には過去最高となっている。
雇用者数、就業者数とも前年と比較して増加傾向が続いている。企業の雇用過剰感は、産業別、規模別にみても低下傾向にあり、サービス業などでは不足感も現れてきている。また、雇用調整の実施事業所割合については、低下傾向にある。
地域別にみると、平成17年2月現在、有効求人倍率については5ブロック(東海、北関東・甲信、中国、南関東、北陸)で1倍台となっている一方、北海道ブロックにおいては0.5倍、九州、東北の各ブロックにおいては0.6倍台となっており、失業率についても3%台から5%台までブロックごとにばらつきがみられるなど、雇用情勢には地域差がみられるところである。
(2) 若年者の雇用状況
若年者の雇用情勢については、平成16年11月の15〜24歳層の完全失業率が8.2%と、年齢計の4.7%と比べ高水準で推移するとともに、高い離職率やフリーターの増加(平成15年で217万人と推計される。)など厳しい状況が続いている。加えて、最近では、ニートと呼ばれる働いておらず教育も訓練も受けていない若年者が増加(非労働力人口のうち15〜34歳で卒業者かつ未婚であり、通学や家事を行っていない者は平成15年で52万人と推計される。)し、このことが経済社会に与える影響の重大さが指摘されている。
また、平成17年3月高校新卒者の就職内定状況(平成17年1月末現在)をみると、全国の内定率は81.6%と、前年同期(平成16年1月末現在)に比べ4.9ポイント上昇しているが、地域別では93.8〜53.5%と格差がみられる。平成17年3月大学新卒者の就職内定状況(平成17年2月1日現在)をみると、全国の内定率は82.6%と、前年同期(平成16年2月1日現在)に比べ0.5ポイント上昇している。
(3) 高齢者の雇用状況
高齢者の雇用管理の現状(平成16年1月1日現在)をみると、少なくとも65歳まで働ける場を確保する企業は69.2%、そのうち、原則として希望者全員を対象とする企業は26.9%となっている。また、雇用情勢については、平成17年1月の60〜64歳層の有効求人倍率は0.40倍と依然として低水準にとどまっており、一旦離職すると再就職が厳しい状況にある。
(4) 女性の雇用状況
女性雇用者数は平成16年には2,203万人となり、15年に比べ26万人増加(前年比1.2%増)した。
また、年齢階級別労働力率をみると、M字型カーブの底である30〜34歳層の労働力率は前年と比べ最も上昇幅が大きく、61.4%(前年差1.1%ポイント上昇)であった。
(5) パートタイム労働者の雇用状況
短時間雇用者(週間就業時間が35時間未満の非農林業の短時間雇用者)数は、平成16年においては1,237万人と、雇用者総数の約4分の1を占めるに至るとともに、近年では、勤続年数の伸張、基幹的な役割を担う者の増加もみられる。
(6) 障害者の雇用状況
障害者の雇用状況については、新規求職申込件数が前年に比べて増加するなど障害者の就業に対するニーズが高まる中、法定雇用率1.8%が適用される一般民間企業に雇用されている障害者数が257,939人と前年に比べて4.4%増加したほか、就職件数が増加し解雇者数が減少するなど明るい動きがみられる一方、民間企業の実雇用率は1.46%(前年は1.48%)にとどまり、法定雇用率未達成企業の割合も半数を超えているなど依然として厳しさも残っている。
3 労働条件等を巡る動向
(1) 申告・相談等の状況
景気は緩やかに回復しているものの、企業を取り巻く環境が変化する中、次のような状況が認められ、企業における法令遵守(コンプライアンス)意識の低下も懸念される。
ア 労働基準監督署には、賃金不払や解雇など労働基準関係法令上の問題が認められる申告・相談事案が数多く寄せられている。
イ 都道府県労働局雇用均等室には、妊娠・出産等を理由とする解雇等差別的取扱い、セクシュアルハラスメント、育児・介護休業の取得等に関する相談も多数寄せられている。
ウ 都道府県労働局総務部企画室及び総合労働相談コーナーには、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働紛争」という。)に関する相談やあっせんの申請等が数多く寄せられており、引き続き増加傾向にある。また、その内容をみると、解雇や労働条件の引下げに関するものが中心であるが、いじめ・嫌がらせなどもあり、多様なものとなっている。
(2) 労働時間・賃金の状況
平成16年における年間総実労働時間は1,840時間(所定内労働時間は1,691時間、所定外労働時間は149時間)となっており、前年に比べて6時間減少しているが、一般労働者(常用労働者のうち、パートタイム労働者を除いた労働者)については、年間総実労働時間は2,021時間(所定内労働時間は1,842時間、所定外労働時間は179時間)と前年に比べて17時間増加している。「労働力調査」により週労働時間別の雇用者の分布をみると、経済のグローバル化の進展に伴う企業間競争の激化等を背景に、35時間以上60時間未満の雇用者が減少する一方、35時間未満の雇用者と60時間以上の雇用者がともに増加し、いわゆる「労働時間分布の長短二極化」が進展している。さらに、平成16年における年次有給休暇の取得率については、47.4%となっており、9年連続して低下している。
また、平成16年における平均月間現金給与総額は、33万2,784円で前年比0.7%減と4年連続で減少したが、現金給与総額のうち所定内給与及び特別に支払われた給与は減少したものの所定外給与が増加していることから、減少幅は縮小した。
さらに、一般労働者の所定内給与額の男女間賃金格差は男性を100としたときに女性は67.6となり、長期的には緩やかな縮小傾向が続いている。
この他、パートタイム労働者と通常の労働者との賃金格差について、平成16年の賃金構造基本統計調査をみると、一般労働者の所定内給与額を時給換算したものを100とした場合、男性パートタイム労働者は50.4、女性パートタイム労働者は65.7となっている。こうした格差については、合理的な説明が困難な事例がみられることなど、パートタイム労働者の雇用管理の改善等が十分に図られているとはいえない状況にある。
(3) 労働災害・労災補償の状況
労働災害による被災者数は長期的には減少傾向にあるものの、今なお約1,600人が死亡している状況にあり、特に重大災害(一度に3人以上の労働者が死傷する災害)については、一昨年に引き続き昨年においても多発している。特に、製造業における重大災害件数は前年を上回っており、また、建設業における死亡者数も、墜落・転落が多発するなど前年を上回っている。
また、労働者の健康面についても、一般健康診断の結果、脳・心臓疾患につながる血中脂質、血圧等に係る有所見率が増加し、平成14年の労働者健康状況調査によると職場生活等において強い不安、ストレスを感じる労働者の割合が6割にも達している。さらに、未規制物質を含む化学物質による疾病も増減を繰り返している。
労災補償については、新規受給者数は長期的には減少傾向にあるが、平成15年度においては依然として約59万人であり、また、脳・心臓疾患、精神障害等の労災請求・認定件数については、依然として高水準で推移していることから、社会的関心が高い。
第2 平成17年度地方労働行政の課題
1 厳しい雇用情勢下における雇用の安定、労働条件の確保に向けた総合的な対応
改善が進んでいるものの、厳しさが残る雇用情勢の中で、離職者の早期再就職の促進や新たな雇用機会の創出等とともに、適正な労働条件の確保を図ることが引き続き課題となっている。
(1) 雇用のミスマッチ縮小と雇用機会の創出等
完全失業率は4%台で推移する一方、有効求人倍率は着実に回復し、1倍を超える地域が増えるなど、厳しさが残るものの、改善が進んでいるところである。求人が急速に増加している雇用環境の下で、職種、年齢、能力、賃金等における雇用のミスマッチの縮小に努め、的確な求人と求職のマッチングの実現を図ることが重要である。このため、公共職業安定所の特性、ノウハウを最大限に活かし、求職者の個々の状況に的確に対応した就職支援の実施、未充足求人のフォローアップなどの求人者サービスの充実に全力で取り組むことが必要である。また、職業能力のミスマッチに対応し、離職者の早期再就職促進を実現するためには、職業紹介と公共職業訓練との一体的な運用が重要である。
また、公共職業安定所において有為な民間人材の積極的活用を図るとともに、公共職業安定所と民間や地方公共団体との共同・連携による就職支援や情報提供を効果的、効率的に実施することが必要である。その中で、キャリア交流プラザ事業の公設民営などの市場化テストのモデル事業を円滑に実施する。
経済や雇用には大きな地域差があるが、「地域再生推進のためのプログラム」(平成16年2月)に基づき、それぞれの地域が主体的に地域再生に向けた取組を進めている。こうした中で、地域の雇用情勢の改善を図るためには、地域が主体的に雇用創造に取り組み、地域再生の核となる産業の育成を図ることが必要である。このため、雇用創造に自発的に取り組む市町村等に対し、総合的な支援を実施することが重要である。
また、障害者が社会の支え手の一人として誇りを持って自立できるような環境を整備するため、福祉施設での就労から雇用への移行の促進、精神障害者に対する雇用対策の強化など、障害者の雇用・就業支援を充実させることが重要である。
このほか、生活保護受給者、児童扶養手当受給者、ホームレス等に関しても、福祉から就労へとの観点のもと、就労による自立を支援することが必要である。
(2) 労働条件の確保・改善
依然として、会社都合等による解雇、労働条件の引下げ等が行われ、こうした動きに関連した賃金の不払、賃金不払残業、解雇手続の不履行等の法定労働条件の履行を確保する上での問題も生じている。
しかしながら、いかなる経済・雇用情勢下においても、法定労働条件は確保されなければならないものであり、特に現下のような状況においては、労働条件の確保に関する国民の関心と期待は高く、その期待に的確に応えていくことが求められている。
このように、労働条件の確保を図るために労働基準行政が果たすべき役割が重要となっていることを踏まえ、一般労働条件の確保・改善対策について、これを積極的に推進するとともに、これにより企業の法令遵守意識を高めていくことが肝要である。
2 健康で安心して働ける環境の整備
労働環境が変化する中で、全ての労働者が健康で安全に働くことができ、また性別等にかかわりなく安心して働ける環境づくりを推進することが課題となっている。
(1) 労働者の安全と健康の確保
業務請負等のアウトソーシングの増大、成果主義の導入など人事労務管理の変化、就業形態の多様化等、企業を取り巻く社会経済情勢が変化する中、爆発災害等が頻発し、脳・心臓疾患、精神障害等の労災認定件数も依然高水準で推移していることから、引き続き、第10次の労働災害防止計画を踏まえ、労働安全衛生関係法令の遵守をはじめとした労働安全衛生面の対策を的確に推進するとともに、健康で安心して働ける職場を実現するための施策を積極的に推進する必要がある。特に、重大災害が頻発している製造業における安全管理の徹底を図るとともに、建設業をはじめとした業種別労働災害防止対策、交通労働災害等の特定災害防止対策、事業者及び労働者による自主的な安全衛生活動を推進するための労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等を引き続き推進する必要がある。
また、社会的問題となっている「過労死」等を防止するため、過重労働による健康障害防止対策を引き続き推進するとともに、地域産業保健センターの機能を充実させるなど小規模事業場対策の強化を図る必要がある。また、職場におけるメンタルヘルス対策については、地域・職域の連携を念頭に置いたさらなる対策の充実が求められている。併せて、石綿使用建築物の解体作業等における健康障害防止対策等の労働者の健康を確保するための施策を積極的に推進していく必要がある。
(2) 労災補償の迅速・適正な実施及び公平性の確保
労災保険制度について国民の強い関心が向けられる中、脳・心臓疾患、精神障害等事案といった調査・判断の難しい事案の労災請求件数が依然として高水準で推移していることを踏まえ、事務処理能力の向上や組織的対応の一層の推進・徹底を図ることにより、迅速・適正な労災補償の実施に引き続き努めていく必要がある。また、費用徴収の的確な実施、第三者行為災害に係る求償債権の確実な回収等に努めていく必要がある。
(3) 男女雇用機会均等の確保
働く女性が性別により差別されることなく、その能力を十分に発揮できる雇用環境をつくるため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「男女雇用機会均等法」という。)の履行確保を図るとともに、女性の能力発揮のための企業の積極的取組(ポジティブ・アクション)を促進すること等により、実質的な男女の均等確保の実現を目指すことが重要となっている。
(4) 労働保険制度の適正な運営
労働保険が、労災保険給付や失業等給付を通じた労働者の福祉の増進に寄与する制度として的確な役割を果たしていくため、これまで以上に、制度の健全な運営、費用負担の公平性等が求められているところであり、適用徴収業務については、(1)未手続事業の一掃、(2)労働保険料の適正徴収、(3)労働保険事務組合制度の充実・発展などの取組が必要である。
(5) 個別労働紛争の解決の促進
企業組織の再編や企業の人事労務管理の個別化、就業形態の多様化等を背景として増加する個別労働紛争について、その実情に即した迅速かつ適正な解決に向け、都道府県労働局において、的確な相談・情報提供、助言・指導及びあっせんの実施等の個別労働紛争解決制度の積極的な運用に努めるとともに、企業内における紛争の自主的な解決を促進する必要がある。
3 少子・高齢化の進行と多様な働き方への対応
急速な少子化の進行で、今後、労働力人口が減少することが予想される中で、経済社会の活力を維持し、労働力人口を確保するためには、若年者の職業意識啓発と就職支援、仕事と家庭の両立支援、高齢者の雇用環境の整備といった対策が重要である。また、平成16年12月に策定された「少子化社会対策大綱に基づく重点施策の具体的実施計画について」(「子ども・子育て応援プラン」)では、今後5年間に講ずる具体的な施策内容と目標が掲げられているが、この中においても、若者の就労支援の充実、仕事と家庭の両立支援と働き方の見直しなどの労働施策も含まれている。このため、都道府県労働局としても各行政が連携して強力に取組を進める必要がある。
(1) 若年者の職業意識啓発と就職支援
若年者の雇用環境は厳しい状況にあり、働く意欲が不十分な若年者が増加しているが、若年者が意欲を持って働き、経済的にも自立できるようにすることが喫緊の課題となっている。このため、関係者が一体となって若年者の雇用問題に取り組むことが必要であり、新たに「若者の人間力を高めるための国民運動」を展開することとしている。
こうした中、経済界、労働界、地域社会等との連携、協力の下で、働く意欲が不十分な若者、無業者(ニート)の増加などの課題に対応するため、若者の働く意欲や能力を高める総合的な対策として「若者人間力強化プロジェクト」を推進するとともに、引き続き「若者自立・挑戦プラン」の着実な実施によりすべてのやる気のある若年者の職業的自立を促進することが重要である。
(2) 仕事と子育ての両立支援
平成16年12月に改正された「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下「育児・介護休業法」という。)及び平成17年4月1日に全面施行となる「次世代育成支援対策推進法」(以下「次世代法」という。)について、その円滑な施行を図るとともに、その実効を確保していく必要がある。
(3) 高齢者の雇用の確保
少子高齢化の急速な進行により、今後、労働力人口の減少が見込まれる中で、我が国経済社会の活力を維持していくためには、高齢者の高い就業意欲が活かされ、その有する能力が十分に発揮されることが不可欠となる。このため、平成16年6月に改正高年齢者雇用安定法が成立し、平成18年4月から段階的に65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置が義務づけられたところであり、これを踏まえ、当面は65歳までの雇用の確保に取り組みつつ、将来的には年齢にかかわりなく意欲と能力のある限り働き続けることができる社会の実現に向けた環境整備を進めることが重要である。また、高齢期には、個々の労働者の意欲、体力等の個人差が拡大することから、労働者の多様なニーズに対応した雇用・就業機会を確保することも併せて重要である。
(4) 多様な働き方への対応
急速な少子・高齢化、労働者の意識やニーズの多様化が進む中で、多様な働き方の選択肢の整備を図るとともに、その担い手である労働者が職業生涯を通じて意欲と能力を十分発揮できるようにしていくことが必要である。
これを踏まえ、多様な働き方の選択肢の整備を図るため、ワークシェアリングの普及・啓発を進めるとともに、雇用・就業形態の多様化に伴う課題に対応するため、パートタイム労働者と通常の労働者との均衡等を考慮した適正な労働条件の確保及び雇用管理の改善、派遣労働者の就業条件の整備、在宅ワークの健全な発展のための施策の推進等が求められている。
また、「労働力調査」により労働時間の動向をみると、雇用者全体に占める週労働時間60時間以上の雇用者と35時間未満の雇用者の割合が同時に高まる「労働時間分布の長短二極化」が進展している。さらに、年次有給休暇の取得率の低下も続いている。こうした中で、労働時間、休日及び休暇が個々の労働者の健康や生活に配慮して定められるよう、これまでの取組も踏まえつつ、長時間労働者の所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進等に向けた事業場ごとの労使の自主的取組を一層促進していくことが必要である。
第3 平成17年度地方労働行政の重点施策
1 労働基準行政の重点施策
(1) 労働条件の確保・改善等
ア 労働時間に関する法定労働基準等の遵守徹底
(ア) 労働時間管理の適正化の徹底
賃金不払残業の解消を図るため、これに係る申告・相談件数の増加等企業が置かれている状況について使用者の理解を得させた上で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)の遵守を重点とした監督指導等を引き続き実施するとともに、「賃金不払残業総合対策要綱」に基づき「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の周知を図り、労使の自主的な改善を促すなど総合的な対策を推進する。
また、時間外労働等に係る割増賃金の適正な支払等法定労働条件の履行確保に努め、重大かつ悪質な事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する。
(イ) 時間外労働の限度基準の遵守の徹底
長時間にわたる時間外労働の実効ある抑制を図り、また過重労働による健康障害を防止するため、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準について、特別条項付き協定を締結する場合の「特別の事情」に係る改正も含め、引き続き使用者、労働組合等の労使当事者に対し周知・指導を行い、遵守の徹底を図る。
イ 一般労働条件の確保・改善対策の推進
(ア) 法令遵守の徹底
すべての労働者が適法な労働条件の下で安心して働くことができるようにするため、一般労働条件の確保・改善対策を一層積極的に推進する。
具体的には、ア(ア)に掲げる労働時間管理の適正化のほか、最も基本的な労働条件である賃金の支払、解雇を行う場合の法定手続の履行など、管内の動向を注視しつつ、引き続き労働基準関係法令の遵守を図る。
また、労働基準関係法令違反に対しては、厳正に対処する。
(イ) 労働契約に係るルールの明確化の推進
平成16年1月より施行された改正労働基準法に関して、解雇については、労働基準法第18条の2の規定の趣旨について、関係する判例・裁判例とともに引き続き周知を図る。また、有期労働契約については、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に関し、必要な助言及び指導を行うことにより、引き続きその遵守の徹底を図る。
(ウ) 経済、企業動向の変化に伴う労働条件の履行確保
管内の経済・雇用情勢や企業の動向を注視し、企業倒産、事業場閉鎖、人員削減、労働条件の引下げ等に伴い法定労働条件の履行確保の問題が懸念される事案に対しては、早期に情報を把握し、賃金をはじめとする労働債権の確保や社内預金の保全等について迅速かつ的確な対応を図る。
また、労働基準関係法令上の問題が認められる賃金不払、解雇等に係る申告・相談がなされた場合には、申告者・相談者が置かれている状況に十分に意を払い、その解決のための迅速かつ的確な対応を図る。
ウ 未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営
企業の倒産件数は減少しているものの、本制度の利用が高水準で推移していることを踏まえ、不正受給防止にも留意しつつ、企業倒産により賃金の支払を受けられない労働者の救済を図るため、引き続き迅速かつ適正な対応を図る。
エ 企業倒産等の場合における労働債権の取扱いについて
新「破産法」が平成17年1月から施行されたことにより、労働債権の一部が財団債権化され、優先順位が引き上げられたことを含め、企業倒産等の場合における労働債権の取扱いについて、別途送付するパンフレット等を利用し周知を図る。
オ 最低賃金制度の適正な運営
最低賃金制度については、我が国経済の動向、地域の実情を踏まえ適正な運営を図る。
特に、地域別最低賃金については、平成16年12月に取りまとめられた「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、引き続き円滑・適切な運営に努める。
また、最低賃金法の履行確保を図るため、最低賃金の一層の周知徹底を図るとともに、問題のある地域、業種、職種等を的確に把握し、監督指導等を行い、その遵守の徹底を図る。
カ 特定の労働分野における労働条件確保対策の推進
(ア) 自動車運転者
長時間労働を原因とする重大な交通労働災害が発生していることから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等の周知及び遵守を徹底するとともに、過労運転事案については、関係行政機関とも連携を図り、引き続き自動車運転者の労働条件の改善を図る。また、併せて(3)ア(ウ)に後掲する交通労働災害防止対策を推進する。
(イ) 医療機関の労働者
医療機関における休日及び夜間勤務の適正化を引き続き推進する。
(ウ) 派遣業及び業務請負業における労働者
平成16年3月から物の製造の業務等への労働者派遣が解禁されたところであるが、中には、請負等を偽装した労働者派遣も認められるところである。事業場の構内に他の事業場の労働者が混在している場合には、事業場間の契約関係や当該労働者に対する実際の指揮命令等の就労実態を確認した上で、その実態に応じて、労働基準法等関係法令に係る使用者の責任区分に従って必要な指導を行う。併せて(3)ア(キ)に後掲する労働災害防止対策についても推進する。
また、事業場間の契約関係、労働者の就労実態等から判断して請負等を偽装した労働者派遣事業と疑われる事案等を確認した場合には、相互に情報提供するなど労働基準行政と職業安定行政との連携を図る。
(エ) 外国人労働者、技能実習生
国際化の進展等により我が国で就労する外国人労働者が増加している状況を踏まえ、外国人労働者にも労働基準関係法令が当然に適用されることについて周知徹底を図るとともに、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく啓発・指導により、引き続き外国人労働者の適正な労働条件確保対策を推進する。重大悪質な労働基準関係法令違反において、資格外活動、不法残留等出入国管理及び難民認定法違反に当たると思われる事案が認められた場合には、職業安定行政との連携を図りつつ、出入国管理機関にその旨情報提供する。
技能実習生については、労働契約締結時の労働条件の書面による明示、賃金支払の適正化等労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。
(オ) 介護労働者
介護事業に使用される労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、介護事業へ新規に参入する事業者が増加している状況を踏まえ、引き続き労働基準関係法令の適用について周知するとともに、その遵守の徹底を図る。
(カ) 短時間労働者
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」という。)並びに「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(以下「パートタイム労働指針」という。)の趣旨及び内容についての周知、啓発を重点とした対策を推進し、事業主による自主的な取組を促進する。
(キ) 障害者である労働者
障害者である労働者の労働環境の整備が求められている中で、引き続き法定労働条件の履行確保を図るため、職業安定行政との連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努めるとともに、的確な情報の把握を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。
(ク) 出稼労働者
出稼労働者に対する適正な賃金の支払の確保、有給休暇制度の普及促進、労働災害の防止、健康管理の充実等、引き続き労働条件確保対策を推進する。
また、建設業附属寄宿舎を設置する使用者に対して寄宿舎における労働基準関係法令の遵守を図る。
(2) 多様な働き方が可能となる労働環境の整備
ア 仕事と生活の調和のとれた働き方を可能とする環境整備
(ア) 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法に基づく施策の推進
所定外労働の削減及び年次有給休暇の取得促進に重点を置き、引き続き労働時間の短縮に向けた事業主の自主的な努力を促進する。
(1) 自律的、効率的に働くための労働時間制度の改善支援
事業場の労働実態に応じ、フレックスタイム制や裁量労働制の導入等労働時間制度の改善に取り組む事業主を支援するため、労働時間短縮支援センターが実施する労働時間制度改善支援事業の活用促進を図る。
(2) 年次有給休暇の取得促進
計画的付与制度の積極的な活用について周知及び指導を行うこと等により、年次有給休暇の一層の取得促進を図る。
また、全国の主要都市において、長期休暇制度の普及と定着に関するシンポジウムを開催するとともに、労働時間短縮支援センターが支給業務を行う「長期休暇制度基盤整備助成金」等により、長期休暇(L休暇)制度導入のための労使の取組に対する援助等を行う。
(3) 所定外労働の削減のための啓発
「所定外労働削減要綱」の周知啓発により、休日労働を含めた所定外労働の削減に向けた労使の取組を促進する。
(イ) 改正時短促進法の円滑な施行
平成17年3月4日付け閣法第60号として、時短促進法の一部改正の内容を含む「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案」が第162回通常国会に提出されたところである。
改正法の主な内容は、近年の労働時間の動向等を踏まえ、現行の時短促進法について、計画的な労働時間の短縮を図る法律から、個々の労働者の健康や家庭生活、地域活動、自己啓発などの生活に配慮した労働時間、休日及び休暇(以下「労働時間等」という。)の設定に向けた労使の自主的取組を促進する労働時間等の設定の改善に関する特別措置法へと改めるものである。
改正法の成立後、施行する段階においては、(1)時短促進法が臨時的な措置を定める法律から恒久的な特別措置を定める法律へと改正されることを踏まえ、労働時間短縮推進計画に代えて厚生労働大臣が策定する労働時間等設定改善指針について、事業主を中心とした関係者に広く周知すること、(2)労働時間等設定改善指針に基づく事業主の取組が促進されるよう、事業場における労働時間等設定改善委員会の設置等の体制整備についての普及啓発が主要な業務となる。改正法の施行は平成18年4月となる見込みであることから、都道府県労働局においては、改正法の円滑な施行に向けて必要な措置を周到に行うものとする。
イ 裁量労働制の適正な実施の確保
労働者が創造的な能力を発揮できる環境づくりを促進するため、裁量労働制が制度の趣旨に適合した上で導入・運用されるよう、周知・指導を行う。特に企画業務型裁量労働制については、対象となる業務の範囲等を含め、制度が適正に実施されるよう「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」の趣旨及び内容について周知を行う。
また、裁量労働制対象労働者の過重労働による健康障害を防止する観点から、実効ある健康・福祉確保措置等が実施されるよう十分に制度の周知を図る。
ウ テレワーク対策の推進
在宅勤務に関する適正な就業環境を確保するため、在宅勤務の労働基準関係法令上の取扱い等を明確にした在宅勤務に係るガイドラインを事業主等に対して周知を図る。
また、本省において、在宅勤務の意義やメリットを広く浸透させるため、在宅勤務の健康面への影響等について実証実験を行うので、その結果を事業主等に対して周知を図る。
エ 賃金・退職金制度の改善の推進
賃金・退職金制度改善指導業務については、本省において中・長期的な視野に立ち、今後の改善指導の手法等についての検討を行う。
また、賃金・退職金制度整備・改定事例を活用し、相談・援助等の充実を図るとともに、賃金・退職金セミナー等を活用して適格退職年金制度から中小企業退職金共済制度等への円滑な移行等を推進し、併せて、中小企業賃金制度支援事業の効果的な実施に努める。
オ 勤労者生活の基盤の整備・充実
勤労者財産形成促進制度については、引き続き本省において勤労者を取り巻く状況に対応した制度改善の検討を行う。中小企業退職金共済制度については、退職金制度がいまだ整備されていない中小企業も多いことから、それらの企業の加入促進に努めるとともに、適格退職年金制度からの移行を進めるために、制度の周知を図る。
勤労者のボランティア活動については、勤労者マルチライフ支援事業の実施状況の把握等により、その参加の促進に努める。
(3) 労働者の安全と健康を確保するための施策の展開
ア 労働災害を大幅に減少させるための施策の展開
(ア) 製造業における重大災害の防止
平成16年度においては、一昨年夏以降の重大災害の頻発を踏まえ、大規模製造業に対する安全管理活動の強化に係る対策を実施したところであるが、未だ予断を許さない状況にあるため、引き続き対策を実施するとともに、中規模事業場に対する自主点検の実施等により製造業における重大災害防止の徹底を図る。
なお、災害調査の実施に当たっては、災害の直接的要因のみならず、人員の減少、経費の削減、設備の老朽化等の背景要因についても調査するとともに、調査結果の迅速な報告を行い、再発防止措置を徹底させる。
(イ) 爆発・火災災害防止対策の推進
近年、鉄鋼関連施設、石油関連施設等において、安全衛生対策が充分に講じられていなかったこと等による爆発・火災災害が頻発していることから、「製鉄事業場における化学設備等の定期自主検査等の徹底について」(平成16年7月16日付け基安発第0716002号)、「鉄鋼生産設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成9年3月24日付け基発第190号)、「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成8年6月10日付け基発第364号)等に基づく爆発・火災災害防止対策の徹底を図る。
(ウ) 交通労働災害防止対策の推進
「交通労働災害防止のためのガイドライン」(平成6年2月18日付け基発第83号)の周知徹底を図るとともに、事業場における交通労働災害防止対策の好事例の収集、モデル事業場の育成等を推進し、併せて(1)カ(ア)に前掲した自動車運転者に係る労働条件確保対策を推進する。
また、交通労働災害の災害調査にあたっては、事案に応じて関係局とも連携し、交通労働災害を発生させた第一当事者が所属する事業場に対する調査を実施し、その結果に基づく再発防止対策の徹底を図る。
(エ) 建設業における労働災害防止対策の推進
建設業における死亡災害が平成16年には増加に転じたことから、「建設業における総合的労働災害防止対策の推進について」(平成5年3月31日付け基発第214号)に基づき、より一層的確な対策を実施する。
特に、中小総合工事業者に対しては、「中小総合工事業者指導力向上事業」、また、専門工事業者に対しては、「専門工事業者安全管理活動等促進事業」の推進により、自律的な安全衛生管理能力の向上を図る。
また、建設業における死亡災害が増加した原因として挙げられる墜落災害の防止対策として、木造家屋等低層住宅建築工事については、引き続き足場先行工法の徹底を図るほか、中小ビル建築工事については、足場の組立・解体時の災害を防止するため、「手すり先行工法に関するガイドライン」(平成15年4月1日付け基発第0401012号)について同通知に示した留意事項等を踏まえ周知し、手すり先行工法の普及を図る。
さらに、最近の災害発生状況等を踏まえ、建築物等の解体工事における労働災害防止対策の徹底を図るほか、平成16年に発生した台風、地震等の自然災害に係る復旧工事が、平成17年度においても継続して行われることが見込まれることから、災害復旧工事における労働災害防止対策の徹底を図る。
その他、上下水道等工事における土砂崩壊災害を防止するため、「土止め先行工法に関するガイドライン」(平成15年12月17日付け基発第1217001号)の発注機関等に対する周知により土止め先行工法の普及を図る。
(オ) 機械設備の安全化の促進
「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成13年6月1日付け基発第501号)の周知徹底を図る
また、平成15年に実施した大規模製造業に対する自主点検の結果明らかとなったリスク評価の労働災害防止上の有効性も踏まえ、機械の使用者に対して事業場におけるリスク評価の実施を促進する。併せて、実施に際して機械を使用する上で留意すべき事項に関する情報を機械の製造者等から受け、これを活用することを促進する。
ボイラー等の連続運転認定制度については、その安全管理等が優良な事業場を認定する制度であることを踏まえ、ボイラー等の保全管理の適切な実施等本制度の適切な運営の徹底を図る。
(カ) 第三次産業における労働災害防止対策の推進等
第三次産業における業種別の労働災害防止のためのガイドラインの周知徹底を図るとともに、「成長産業における安全衛生活動基盤整備事業」において在宅介護サービス業を対象とした労働災害防止対策を推進する。
(キ) 派遣労働者に係る安全衛生確保対策
派遣元及び派遣先双方の事業者に対し労働安全衛生法上の義務の履行確保を図るとともに、製造業等における派遣労働者の労働災害発生状況を把握し、派遣元及び派遣先それぞれの責任に応じた適切な再発防止対策の徹底を図る。また、併せて(1)カ(ウ)に前掲した派遣労働者に係る労働条件確保対策を推進する。
イ 過重労働の防止等労働者の健康を確保するための施策の展開
(ア) 過重労働による健康障害防止のための対策の推進
「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成14年2月12日付け基発第0212001号)に基づき、時間外労働の削減、産業医等の面接による保健指導等の健康管理対策の着実な実施、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止の徹底等の対策を推進する。
なお、この総合対策については、改正労働安全衛生法の施行に合わせ、見直しを行う予定である。
(イ) 職場における着実な健康確保対策の推進
健康診断の実施及びその結果に基づく事後措置の徹底、産業医活動の的確な実施を図る等、事業場における産業保健活動の推進を図る。また、産業医の活動を支援するため、産業保健推進センター事業の推進を図る。
小規模事業場における健康確保対策については、地域産業保健センター事業、産業医共同選任事業、小規模企業の経営者のための産業保健マニュアル等の一層の利用促進を図ること等により、その充実を図る。特に、地域産業保健センターについては、過重労働による健康障害を防止するための機能の充実、強化を図るとともに、新規事業として働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業を実施する予定であり、地域産業保健センター事業の的確な実施を支援するとともに、その周知、利用促進を図る。
また、心身両面にわたる健康保持増進対策(以下「THP」という。)の一層の推進を図るため、「中小規模事業場健康づくり事業」を推進し、中小規模事業場に対するTHPの効果的な普及を図る。
(ウ) 職業性疾病予防対策等の推進
粉じん障害防止対策については、第6次粉じん障害防止総合対策(平成15年5月29日付け基発第0529004号)を推進することにより、粉じんのばく露防止の措置、健康管理対策等の徹底を図る。
また、ずい道建設工事における粉じん対策を推進するため、引き続き「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」(平成12年12月26日付け基発第768号の2)に基づく対策の徹底を図る。
三酸化砒素、石綿等22物質についての管理濃度の新規設定及び改定により、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号)、作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)及び作業環境評価基準(昭和63年労働省告示第79号)の改正を行ったので、その内容について周知徹底を図る。
VDT作業による心身の負担を軽減するため「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(平成14年4月5日付け基発第0405001号)の周知徹底を図る。
電離放射線障害防止対策については、原子力施設における下請事業場を含めた総合的な安全衛生管理対策の徹底を図るとともに、「原子力発電所における放射線業務に係る被ばくの低減化について」(平成11年11月5日付け基発第639号の3)に基づき、原子力施設等に対する被ばく低減化指導を適切に実施する。
(エ) 化学物質による健康障害防止対策の推進
石綿使用建築物の解体作業等における石綿ばく露防止対策等の充実を図るため石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)が新たに制定され、平成17年7月1日から施行されることから、関係事業者に対し重点的な周知広報、指導等を行うとともに、製造等の禁止の対象となっていない石綿含有製品について、代替化の促進対策(平成16年2月26日付け基安発第0226002号)の積極的な取り組みを指導する。
また、廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策(平成13年4月25日付け基発第401号の2)、化学物質等による眼・皮膚障害防止対策(平成15年8月11日付け基発第0811001号)、造船業における有機溶剤中毒予防対策(平成16年8月3日付け基安発第0803002号)、PCB廃棄物処理作業等における安全衛生対策(平成17年2月10日付け基発第0210005号)等の徹底を図る。
さらに、国による未規制化学物質に対するリスク評価・リスク管理の充実を図る。
ウ メンタルヘルス対策の推進
「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(平成12年8月9日付け基発第522号)の効果的な周知徹底とともに、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月14日付け基安労発第1014001号)の周知を図る。なお、平成17年度中に上記指針を見直し、新たに「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針(仮称)」を策定する予定であるので、策定後は同指針の周知を図る。
また、産業保健推進センター、地域産業保健センター及び労災病院におけるメンタルヘルスに関する相談の利用促進を図るとともに、平成17年度より地域産業保健センターにおいて実施される働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業について、都道府県等との連携を図りつつ周知を行う。
さらに、自殺予防マニュアル等を活用し、労働者の自殺予防に必要な知識の普及・啓発を図るとともに、相談体制の充実を図るため、地域において産業保健に意欲的な精神科医を対象として行う産業保健研修の周知を図る。
エ 事業場における安全衛生水準の一層の向上を図るための施策の展開
(ア) 労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等
労働安全衛生マネジメントシステム(以下「マネジメントシステム」という。)の普及を推進している労働災害防止団体等とも連携し、局署が一体となって管内事業場に対しマネジメントシステムの趣旨やその導入効果に関する理解を更に深めさせ、その取組状況の把握に努めるとともに、各地域において指導的立場にある大企業のみならず、中小企業に対しても、業種別団体を通しての支援等を通じ、幅広くマネジメントシステムの普及を図ることにより、事業場における自律的な安全衛生管理活動の促進を図る。
特に、建設業に対しては、店社と現場とが一体となった管理が必要であるという建設業の特性を踏まえ、マネジメントシステムの普及を図るとともに、建設工事に従事する労働者に対する教育の普及により、安全衛生水準の一層の向上を図る。
さらに、事業者が行う安全衛生教育の充実、安全衛生対策の実施等に資するため、災害事例、化学物質情報等を提供する中央労働災害防止協会安全衛生情報センターの利用促進を図る。
(イ) 中小企業における自主的安全衛生管理活動の推進
安全衛生管理活動を積極的に行おうとする中小企業を対象として安全衛生相談等を行う「中小企業自主的安全衛生活動支援事業」や、中小企業の小規模事業場等団体を対象として基本的な安全衛生対策の実施を支援する「小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業」などを推進し、中小企業の安全衛生水準の向上を図る。
(ウ) 事業場における自律的な化学物質管理の推進
未規制物質による疾病が化学物質による職業性疾病の半数を超えていること等を踏まえ、「化学物質等による労働者の健康障害を防止するため必要な措置に関する指針」(平成12年3月31日付け基発第212号)に基づき、事業者が、個々の事業場でのばく露の状況等に基づきリスクを評価し、その結果に基づきばく露防止対策等を講じるよう、事業者に対する指導を行う。
(エ) 労働者の意識啓発の推進
労働者も事業主とともに、労働災害防止を担う当事者であり、また職場の状況について最も熟知している立場にあることから、安全衛生委員会活動への参画、危険予知活動の普及促進等の労働者の安全意識や健康確保意識の高揚を図るための施策を展開し、労働者自身の意識啓発の推進を図る。
オ 職場における肝炎ウイルス感染に対する適切な対応の促進
「職場における肝炎ウイルス感染に関する留意事項」(平成16年12月8日付け基発第1208002号、職発第1208002号)に基づき、肝炎ウイルス検査の受診を希望する労働者が受診できるような配慮がなされるよう、また、肝炎ウイルスに感染していること自体は就業禁止や解雇の理由にならないことや、肝炎ウイルスによる症状が見られる労働者については、合理的な就業上の配慮が必要であることについて、事業者に対する周知を行う。
カ 職場環境の快適化の推進
快適職場推進計画の認定を促進するとともに、都道府県との連携を図りながら、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平成15年5月9日付け基発第0509001号)に基づく喫煙室の設置等による受動喫煙防止対策の推進等により、職場環境の快適化の推進を図る。
キ 登録教習機関等に対する監査指導の徹底
登録教習機関等については、平成16年3月31日の指定制度から登録制度への移行前に行われた重大悪質な不正事案の発見が相次いだことから、監査指導を適正かつ迅速に実施し、不正事案を把握した場合には、登録の取消処分、業務停止命令も含め厳正に対処する。
ク 改正労働安全衛生法の円滑な施行
近年、重大災害が頻発していること、脳・心臓疾患、精神障害等に係る労災認定件数が高水準で推移していること等を踏まえ、危険性・有害性の低減に向けて事業者の自主的な取組を促進すること、化学物質の表示・文書交付制度を改善すること、製造業等の元方事業者が作業間の連絡調整を実施すること、長時間の時間外労働等を行った労働者を対象として、医師による面接指導を実施することなどを内容とする労働安全衛生法の一部改正を含む「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案」が第162回国会に提出されたところである。
本改正法については、一部を除き平成18年4月1日に施行する予定であることからその施行に万全を期すため、改正法の内容について事業者を始め広く関係者に周知する。
(4) 労災補償対策の推進
ア 労災保険給付の迅速・適正な処理
労災保険給付の請求については、標準処理期間内の迅速な事務処理に努めるとともに、事業主を始めとする関係者から十分な協力が得られない場合等には、労災保険法に基づく権限を適切に行使する等迅速かつ適正な調査を実施する。
石綿による疾病の認定基準については、関係労使のみならず、医療関係者に対しても一層の周知を図るとともに、請求のあったものについて迅速かつ適正な処理に努める。
労災診療費については、会計検査院の指摘が多い手術料等の項目について審査委員による医学的審査も含め重点的に審査するとともに、誤請求の多い医療機関への指導、関係機関との連携等により、診療費の適正払いの一層の推進を図る。
なお、二次健康診断等給付制度については、一層の周知を図るとともに、適正な給付に努める。
イ 労災かくしの排除の徹底
労災かくしの排除を徹底するため、労災担当部署や安全衛生担当部署において、労災請求の相談等を通じて労災かくしの疑いのある事案を把握した場合や、虚偽の死傷病報告が発覚した場合などは、速やかに監督担当部署へ情報提供するなど、各部署の密接な連携を図る。
また、労災かくしの排除を期すため、引き続き、的確な監督指導等を実施するとともに、その存在が明らかとなった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。
ウ 費用徴収の的確な実施等
故意又は重大な過失により労災保険に加入していない事業主等に対して、より実効性ある費用徴収の実施を行う。
第三者行為災害事案に係る求償債権については、法律専門家との連携等による的確な処理により、その確実な回収に努める。
エ 労災認定等を踏まえた労働災害再発防止対策の推進
労災担当部署においては、労災請求・認定事案について、必要に応じ監督担当部署及び安全衛生担当部署に情報を提供し、各部署においては事案の内容に応じて当該事業場に対して再発防止のための指導等を実施するなど、労働災害防止対策の推進のため、監督担当部署、安全衛生担当部署及び労災担当部署の密接な連携を図る。
また、本省における労災補償部と安全衛生部の協力を強固にし、両部による労災認定事案の分析等により、労働災害の再発防止対策を迅速に確立する。
オ 行政争訟に対する迅速・的確な対応
審査請求の処理に当たっては、計画的な事務処理を行うとともに、局管理者の適切な進行管理を徹底することにより、3か月以内の迅速・的確な処理を図る。
訴訟追行については、法務当局との密接な連携の下、事案に応じた的確な事実の収集を積極的に行うとともに、医学的経験則、認定した事実に基づいた論理的かつ分かりやすい主張・立証を行う等的確な対応に努める。
なお、改正行政事件訴訟法の施行による出訴期間等の情報提供(教示)制度の新設等、改正内容に十分留意する。
カ 労災年金相談所の活用
重度被災労働者に対する介護施策を推進するため、労災特別介護施設(ケアプラザ)入居に係る広報活動を強化するとともに、労災年金相談所の活用を図り、積極的な入居促進を行う。
また、労災保険制度の周知並びに年金受給者等からの相談及び援護についても引き続き、労災年金相談所の活用を図る。
キ 改正労働者災害補償保険法等の円滑な施行
働き方の多様化等の社会経済情勢の変化に対応した通勤災害保護制度の改善及び有期事業におけるメリット増減幅の拡大について、「労働安全衛生法等の一部を改正する法律案」の成立を待って、関係省令等の施行準備に万全を期すこととし、改正労働者災害補償保険法及び改正労働保険の保険料の徴収等に関する法律の内容について広く関係者に周知する。
2 職業安定行政の重点施策
(1) 職業安定行政における数値目標の設定
公共職業安定所においては、以下の事項を職業安定行政における重点的に取り組むべき事項として定め、それぞれ設定した目標の達成に向け効果的・効率的な行政運営を行う(個別の項目において再掲)。
ア 早期再就職支援のための雇用対策等
(ア) 就職率を32%程度に引き上げることを目指す。
(イ) 基本手当の支給残日数を所定給付日数の3分の2以上残して早期に再就職する者の割合を15%程度に引き上げることを目指す。
(ウ) 再就職支援プログラム開始件数7万件、就職率7割程度の確保を目指す。
(エ) 就職実現プラン作成件数12万件、就職率5割程度の確保を目指す。
(オ) 求人受理後3週間を経過しても応募者がいない求人すべてについてフォローアップ実施を目指す。
(カ) 年齢不問求人の割合を全求人の30%以上の水準で平成16年度を上回ることを目指す。
イ 若年者雇用対策
(ア) キャリア探索プログラムの参加生徒数28万人程度を目指す。
(イ) 11月末〜3月末における、ジョブサポーターによる支援等を通じた高卒就職内定者数を3万人程度の確保を目指す。
(ウ) 新規高卒者の内定率について平成16年度以上の確保を目指す。
(エ) 若年者試行雇用の開始者数6万人、常用雇用移行率80%程度の確保を目指す。
ウ 中高年齢者雇用対策
(ア) 中高年試行雇用の開始者数2万人、常用雇用移行率75%程度の確保を目指す。
(イ) 平成18年度からの改正高年齢者雇用安定法の施行に向け、すべての企業において定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置が講じられるよう、少なくとも50人以上規模のすべての企業に対しては、リーフレットの配布や集団指導・個別指導等を通じて、周知啓発の徹底を図る。
エ 障害者雇用対策
(ア) 障害者の年間就職件数について平成16年度を上回る数の確保を目指す。
(イ) 障害者試行雇用の開始者数6千人、常用雇用移行率80%程度の確保を目指す。
(2) 雇用のミスマッチ縮小等のための雇用対策の推進
ア 公共職業安定所における的確な求人・求職のマッチング
公共職業安定所において、地域の労働市場の状況、求人者や求職者のニーズなどを踏まえつつ、的確に求人・求職のマッチングを図ることにより、公共職業安定所の求職者の就職率(公共職業安定所の紹介により就職した者の新規求職者に対する比率)を32%程度に引き上げることを目指す。
とりわけ、雇用保険受給者の早期再就職の促進に努め、受給資格者のうち早期に就職した者の比率(基本手当の支給残日数を所定給付日数の3分の2以上残して再就職手当を受給した者の受給資格決定件数に対する比率)を15%程度に引き上げることを目指す。
(ア) 公共職業安定所の特性、ノウハウを活かした職業相談・紹介の実施
求職者に対しては、職業相談を通じて求職者のニーズや状況の変化を十分に把握し、適時適切な職業紹介等の就職支援を実施する。また、求人者に対しては、求人内容を詳細かつ的確に把握し、適切な求職者の紹介に努めるとともに、未充足求人について条件緩和等により充足を図る。これらのきめ細かな職業紹介等を通じ、積極的に、的確な求人・求職のマッチングを図る。
(イ) 労働市場の的確な分析及び情報の提供
それぞれの労働市場における職種、能力、経験等のミスマッチの状況を的確に分析し、円滑なマッチングにつなげるよう、求人者及び求職者に対して、地域の実情にあった効果的な情報提供を徹底する。
(ウ) 効果的な求人開拓の実施
求職者のニーズに比べて相対的に不足している職種に重点を置いた求人開拓や個別の求職者の希望に応じた個別求人開拓を効果的・効率的に実施するとともに、開拓した求人のフォローアップを徹底する。
(エ) 雇用保険受給者に対する就職支援セミナーの実施
公共職業安定所等において、雇用保険受給者に必要な知識を付与し、早期再就職を図るための就職支援セミナーを効果的に開催する。
(オ) 労働市場圏を踏まえた関係局・所の連携の強化
労働市場圏の拡大、変化に対応し、労働局、公共職業安定所の管轄を越えた求人・求職の適切なマッチングを図るため、関係局・所間の連携を強化する。
イ 求職者の個々の状況に的確に対応した公共職業安定所の就職支援
(ア) 早期再就職の緊要度が高い求職者に対する個別支援
早期再就職の緊要度が高い求職者に対して、企業の人事労務管理に関する知識・経験を有する者等からなる就職支援ナビゲーターによる体系的かつ計画的できめ細かな就職支援を行う再就職支援プログラムを実施する。このプログラムに関し、開始件数7万件、就職率7割程度を確保することを目指す。
(イ) 就職実現プランの作成による個別総合的な支援の充実
就職意欲が高い求職者に対して、再就職に向けた求職活動計画(就職実現プラン)を作成して個別総合的な相談援助を実施する。また、再就職プランナーを増置し、若年者を対象に加え、就職実現プラン作成件数12万件、就職率5割程度を確保することを目指す。
(ウ) 生活保護受給者及び児童扶養手当受給者に対する就労支援
生活保護受給者及び児童扶養手当受給者の自立支援プログラムの一環として、福祉事務所等と連携して、公共職業安定所において、就労支援コーディネーターによる支援メニューの選定、就職支援ナビゲーターによる就職支援等きめ細かな就労支援を行う。
その際、職業訓練が必要とされた者については、新たに都道府県に委託して実施される就職のための準備段階としてのプレ訓練、実際の就職に必要な技能・知識を習得させるための職業訓練をセットにした「プレ訓練付き職業訓練」を活用する。
ウ 的確な公共職業訓練の活用
(ア) 公共職業訓練に関する情報提供
能力のミスマッチを解消するためには、能力開発が必要な求職者に対し、人材ニーズに基づいて職業訓練を活用するよう、公共職業訓練情報を積極的に提供する。
(イ) 的確・早期の受講あっせん
職業訓練の受講が有効な求職者に対して、求職活動期間のなるべく早期に受講のあっせんを行うよう努める。受講あっせんに当たっては、求職者の意思を尊重しつつ、求職者の適性・能力・職業経験、各訓練コースの内容・水準、地域の労働力需給動向等を総合的に勘案し、当該求職者にとって再就職に結びつく可能性が最も高いコースを選定する。
その際、公共職業安定所に配置されている能力開発支援アドバイザーを活用してキャリア・コンサルティングを実施する。
(ウ) 求人セット型訓練の活用
求人企業に委託する求人セット型訓練は、再就職促進効果が高いことを踏まえ、求人開拓や求人受理に当たって、積極的な活用を勧奨する。求人セット型訓練の設定については、(独)雇用・能力開発機構と連携し、能力要件明確化アドバイザーを活用して、求人企業の求める能力要件の明確化及びそれに基づく効果的な訓練コースの設定に努める。
(エ) 複数回受講指示の活用
訓練受講修了者については、キャリア・コンサルティング等を踏まえ、更なる能力開発が必要な場合は複数受講指示等を行う。
(オ) 求職から就職に至るまでの一貫した支援
求職者の早期再就職を促進するため、求職から、相談、訓練受講、職業紹介、就職に至るまでの一貫した支援を実施する。
このため、巡回就職支援指導員を活用し、委託訓練を受講中の者に対する就職支援を実施するとともに、個別求人開拓の実施、合同就職面接会等を行い訓練受講者や修了者の早期就職を図る。
エ 未充足求人のフォローアップの徹底等求人者サービスの充実
求人受理後3週間を経過しても応募者がいない求人を出しているすべての事業主に対し、何らかの接触を行うとともに、必要に応じ、求職者情報の提供、求人条件の緩和指導、事業所見学会等の積極的関与を行う。
オ 業種・職種間ミスマッチ対策の充実
希望する求人の範囲が極端に狭い、又は範囲が特定できない等の理由により有効適切な求職活動ができずにいる求職者に対し、効果的な求職活動のノウハウや留意事項の提供、求人が多く就職可能性の高い業種や職種への求職活動の方針転換の促進等のため、業界別アドバイザーを活用してセミナーの開催等の集団指導や適職選択支援員による個別具体的な助言・相談を行うことにより求人と求職のミスマッチの解消を図る。
カ 求人年齢制限緩和の推進
年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けて、労働者の募集及び採用の際、事業主が年齢制限をする場合には、その理由を提示するよう徹底を図る。
公共職業安定所の求人については、年齢不問求人の割合を全求人の30%以上の水準で平成16年度を上回ることを目指して、求人開拓や求人受理の際に、個別企業に対して制度の説明、指導等を行う。
キ 失業者向けのサービスの提供
(ア) 生活関連情報の一元的な提供
失業に直面した際に生ずる社会保険、税制、住宅、教育、育児、心の悩み等の生活関連情報について、相談及び助言を行う生活関連情報相談コーナーを大都市圏の公共職業安定所に引き続き設置するとともに、ハローワークインターネットサービスを活用し、生活関連情報の提供を行う。
(イ) 就職支援アドバイザーによるコンサルティング
失業による心理的不安を解消するため、公共職業安定所のコンサルティングコーナーにおいて、就職支援アドバイザーによるコンサルティングを実施する。
ク 雇用調整に対する的確な対応
(ア) 円滑な労働移動の効果的な支援
雇用失業情勢に厳しさが残る中で、雇用調整を予定している企業の動向の把握に努め、大量雇用変動届、再就職援助計画等の作成が適切に行われるよう指導する。その際、当該計画等に基づき、離職を余儀なくされる労働者の再就職を促進するために必要な措置が効果的に講じられるよう事業主に促すとともに、労働移動支援助成金の周知・活用の促進に努め、円滑な労働移動が行われるよう積極的に支援する。
(イ) 雇用再生集中支援事業の実施
主要行における不良債権処理は目途がつきつつあるが、雇用面への具体的な影響は今後も生じるものがあると見込まれるほか、地域金融機関における不良債権処理は引き続き進められると見込まれる。このため、平成17年度においても雇用面への影響について管内状況の的確な把握に努め、不良債権処理の影響により雇用調整を行う事業主に対して、雇用調整方針の作成・届出を積極的に働きかけるとともに、雇用調整方針対象者に対しては求職活動に対する個別のニーズを把握し、(財)産業雇用安定センター等関係機関との連携の下、体系的な再就職支援策の円滑かつ適切な実施を図る。
(ウ) 雇用の維持確保に対する支援
雇用調整助成金の活用を通じ、景気の変動等、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされ一時的に休業等又は出向を行うことにより雇用の維持確保を図る事業主を支援する。
(3) 民間や地方公共団体との共同・連携による就職支援
ア 成果に対する評価に基づく民間委託による長期失業者の就職支援
長期失業者について、大都市圏(北海道、東京、愛知、大阪、福岡)において、緊急雇用創出特別基金を活用して就職支援から就職後の定着指導までを民間事業者に包括的に委託しているが、30歳未満の者で常用就職を希望する者等も対象者に加えるとともに、東京及び大阪については隣接府県(埼玉、千葉、神奈川、京都、兵庫及び奈良)を含め東京圏及び大阪圏として対象地区を拡大することとする。
イ 地域職業相談室等の設置による市町村と連携した職業紹介・相談
(ア) 地域職業相談室
市区町村の要望や公共職業安定所の設置状況を勘案し、公共職業安定所と市区町村が共同で運営する地域職業相談室を設置し、市区町村の相談・情報提供業務と連携した職業相談、紹介を実施する。
(イ) 高年齢者職業相談室
市区町村と共同で運営している高齢者職業相談室について、その運営状況を踏まえて、配置の見直しを進める。
ウ 地方公共団体が行う職業紹介との連携・協力
地方公共団体の行う無料職業紹介事業について、地方公共団体の要請がある場合には、求人者が公開に同意している求人情報の提供等の連携、協力を行う。
また、地方公共団体が、官民共同窓口の設置を希望する場合には、公共職業安定所の体制等を勘案した上で、可能な範囲で対応を検討する。
エ 都道府県の企画・立案による求職活動の支援
求職活動援助地域において、都道府県の企画・立案による実施方式によって、求職活動を支援するための事業を事業主団体等に委託して実施する。
オ 地域の労使による就職支援事業の推進
民間の労使が相協力して地域の雇用の改善のための事業を行う「地域労使就職支援機構」に、地域における失業者等の再就職の促進に資すると認められる事業などを委託する。
カ 雇用関連事業ワンストップサービスの実施
地方公共団体、独立行政法人、公益法人等が実施している雇用関連事業について、利用者の立場に立ったワンストップサービスを推進するため、助成金申請の取次ぎ等を行う総合的な相談・情報提供窓口である雇用関連情報コーナーを公共職業安定所に設置する。
また、ハローワークインターネットサービスに助成金及び各サービスの実施機関所在地情報等の検索機能を付加する。
キ 雇用関係情報の積極的提供
官民連携した雇用情報システムである「しごと情報ネット」については、携帯電話を活用した求人情報提供機能の拡充により、利用者サービスの向上を図るとともに、民間の労働力需給調整機関や地方公共団体等に対し積極的に参加及び求人情報の提供の働きかけを行う。
また、引き続き、ハローワークインターネットサービスによる求人情報の提供を的確に実施していくこととする。
ク 国・地方公共団体・民間職業紹介機関による官民交流会の実施
国・地方公共団体・民間職業紹介機関が一堂に会して、職業相談・職業紹介の技法等の向上、地域の労働力需給に関する情報交換等を行う官民交流会を実施する。
ケ 市場化テストのモデル事業の実施
市場化テストのモデル事業として、キャリア交流プラザ(5カ所)及び若年者版キャリア交流プラザ(1カ所)の公設民営、各公共職業安定所の求職動向を踏まえた求人開拓の民間委託(3地域)を実施する。
(4) 良好な雇用機会の創出・確保
ア 地域における雇用創造の支援
(ア) 地域再生雇用支援ネットワーク事業の実施
自ら主体的に地域再生に取り組む市町村等を雇用面から総合的に支援する「地域再生雇用支援ネットワーク事業」を、関係機関と連携して推進する。特に、地域再生に取り組む市町村等に対するワンストップ窓口での対応、市町村等と公共職業安定所による情報・意見交換等を踏まえたニーズに対応した就職支援の実施などに積極的に取り組む。
(イ) 雇用創造のための構想を策定しようとする市町村等に対する専門家による助言等
雇用創造のための構想を策定しようとする市町村等に対して、その企画段階において、専門家による助言や参考となる成功事例の紹介等の支援を行う。
(ウ) 地域提案型雇用創造支援事業の実施
雇用機会が少ない地域において、地域の雇用創造に自発的に取り組む市町村等の取組を促進するため、新たに、コンテスト方式により選抜された雇用創造効果の高い事業に取り組む市町村等に対しその事業の実施を委託する。
(エ) 地域における創業に対する助成
地域雇用受皿事業特別奨励金を拡充して地域創業助成金とし、従来からのサービス分野とともに、市町村等が自ら選択した重点産業において創業する者に対して、創業及び雇入れに係る助成を行う。
イ 地域に密着した産業雇用の再生・強化
(ア) 総合的な建設労働対策の推進
建設投資額の減少等により厳しい状況が続いている建設業について、建設事業主の新分野進出や建設業内外への労働移動を推進するとともに、労働力需給調整機能の強化等による労働者の就業・就労機会の確保を図り、併せて建設技能労働者の育成・確保を促進するため、総合的な建設労働対策を推進する。その際、(独)雇用・能力開発機構、建設業界団体等と連携を図る。
総合的な建設労働対策の一環として、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」の改正を予定しているが、その施行に当たっては、十分周知・啓発を行うとともに、新たに導入される予定の建設業務労働者就業機会確保事業等について適正な手続き、指導監督等を実施する。
また、建設労働者の雇用の改善等に関する法律及び第6次建設雇用改善計画に基づき、雇用の近代化のさらなる促進等建設労働者の雇用の改善等のための施策を推進するとともに、現行の建設雇用改善計画は平成17年度末で計画期間が満了するので、建設労働をめぐる現状等についての調査研究を行い、新たな建設雇用改善計画を策定する。
(イ) 林業労働力の確保対策の強化
我が国林業を取り巻く環境の変化に対応するとともに、林業労働力の確保を図るため、林野庁等との連携の下、林業事業体の雇用管理の改善のための林業事業体に対する研修等を実施する。
また、林業を希望する求職者が林業作業の体験等により林業への就業意識の明確化を図り、積極的に林業就業を選択し、定着することを支援する「林業就業支援事業」を実施する。
さらに、林業振動障害軽快者の再就職促進対策を実施する。
(ウ) 「農林業をやってみよう」プログラムの推進
農林業等就職相談コーナー等により、農林業等への多様な就業希望に応えるべく、農林水産省及び関係団体との連携のもとに求人情報の提供、職業相談・紹介、農林業等関連各種情報の提供等を行う。
ウ 良好な雇用機会の創出
良好な雇用機会の創出を図るため、関係省庁、関係団体、都道府県、市町村、経済団体等と共同あるいは連携して、創業支援についての広報、相談、援助を行う。また、都道府県労働局が中心となって、関係団体との連携協力を図り、雇用関係助成金の一体的な周知、積極的な活用を図る。
(ア) 中小企業における雇用機会の積極的な創出
創業・異業種進出を行う中小企業が経営基盤の強化に資する人材を雇い入れる場合の助成等を行う独立行政法人雇用・能力開発機構と連携するなど、雇用機会の創出の担い手である中小企業の人材確保・育成、魅力ある職場づくりを推進する。
(イ) 雇用保険受給資格者の創業に対する支援
雇用保険の受給資格者の創業に係る助成を行うことを通じ、その自立を促進する。
(ウ) 高年齢者等の共同による創業に対する支援
高年齢者等共同就業機会創出助成金を活用し、45歳以上の高年齢者等が共同して事業を開始し、継続的な雇用就業機会を創出した場合、当該事業主を支援する。
(エ) 地域創業助成金(再掲)
サービス分野及び市町村が選択した重点産業において創業する者に対して地域創業助成金を支給して支援する。
(オ) 地域雇用開発促進助成金
同意雇用機会増大促進地域等において事業所を設置・整備し、求職者を雇い入れた事業主又は同意高度技能活用雇用安定地域において高度技能労働者を受け入れた事業主に対し、地域雇用開発促進助成金を支給することにより、これら地域の雇用構造の改善を図る
(5) 雇用保険制度の安定的運営
ア 適正な業務の運営
雇用のセーフティネットとしての雇用保険制度の安定的運営を確保しつつ、その十分な機能発揮を図るため、平成14年9月から実施している「失業認定の在り方の見直し」等を踏まえ、求職活動実績に基づく失業の認定、給付制限、職業紹介部門との連携等の一層的確な運用を行う。
イ 私立学校教員に対する確実な適用
雇用保険の被保険者となるべき私立学校の教員について、確実に資格取得届又は雇用保険加入計画を提出させる。
ウ 不正受給の防止
不正受給防止を徹底するため、必要に応じ基本手当初回受給者のうち一定割合を抽出する等の方法により不正受給防止のための調査を行う。
(6) 民間等の労働力需給調整事業の適正な運営の促進
民間や地方公共団体による職業紹介事業や労働者派遣事業が、法令を遵守し、その機能と役割を十分に発揮させるよう、労働局における許可・届出及び指導監督等の需給調整事業関係業務の効果的かつ効率的な実施に努め、職業安定法及び労働者派遣法の円滑な施行を図る。
その際、物の製造業務への労働者派遣と製造請負の区分の明確化、労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間に係る派遣先の労働者の過半数代表からの意見聴取の適切かつ確実な実施、派遣労働者の雇用の安定等について周知を図るとともに、労働基準行政との連携を図りつつ的確かつ厳正な指導監督を実施する。
また、公共職業安定所においては、引き続き派遣労働者や求職者等からの苦情、相談への適切な対応等に努める。
(7) 若年者雇用対策の推進
平成18年度までに若年失業者等の増加傾向を転換することを目標に、「若者自立・挑戦プラン」に基づく施策を着実に実施するとともに、働く意欲が不十分な若年者、無業者の増加などの課題に対応すべく、若者の働く意欲や能力を高める総合的な対策を新たに推進する。
ア 在学中からの職業体験機会の充実
(ア) 中高校生等に対する職業意識形成支援事業の充実
学校等と連携して「総合的な学習の時間」などを活用し、企業人、公共職業安定所職員等を講師として学校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活等に関して生徒に理解させ自ら考えさせるキャリア探索プログラムを積極的に実施し、参加生徒数を28万人程度とすることを目指す。
また、職場体験活動(ジュニアインターンシップ)について、地域の企業とのコーディネート機能の拡充を図るなど、効果的に実施する。
これら事業について、文部科学省が推進する職場体験事業等と一体的かつ効率的な実施を図る観点から、各地域で教育委員会、経済産業局、経済団体等の関係機関による協議の場を設けるなど、密接な連携を図る。
(イ) 大学生に対する職業意識啓発事業の実施
適職選択のための自己理解等を促進するため、大学等と連携し、学生に対する各種セミナーや適職相談を実施するとともに、経済団体に委託して実施するインターンシップ受入企業開拓事業等も活用し、インターンシップの普及推進に努める。
(ウ) 無償の労働体験等を通じての就職力強化事業(ジョブパスポート事業)の創設
学生や無業の若年者がボランティア活動など無償の労働体験を重ねることを通じて就職力を強化するため、無償の労働体験の機会に関する情報の収集・提供を行うとともに、これらの活動の実績等を記録する「ジョブパスポート」及び「ジョブパスポート支援システム(仮称)」の活用・普及を図る。
また、無償の労働体験等の活動実績が企業の採用選考に反映されるよう企業に働きかけるとともに、公共職業安定所、ジョブカフェ等の就職支援窓口においてもジョブパスポートを活用する若年者と求人企業の積極的マッチングに努める。
イ 新規学卒者に対する就職支援策の推進
(ア) 新規高卒者に対する就職支援策の実施
就職機会の拡大を図るため、求人開拓、就職面接会及び応募前の職場見学を推進するとともに、若年者ジョブサポーターにより、在学中の早い段階から就職後の職場定着までの各段階を通じてマンツーマンによる一貫した就職支援を実施する。若年者ジョブサポーターによる支援等を通じた11月末〜3月末における高卒就職内定者数を3万人程度確保することを目指す。
また、民間教育訓練機関に委託して実施する就職活動に必要な知識や基本的な実務能力を付与するための就職ガイダンス等も活用し、就職希望者に対する幅広い就職支援に努める。
さらに、高校の進路指導担当者を対象に公共職業安定所での実地研修を行うほか、地域の状況を踏まえた円滑な職業紹介を推進するため、就職慣行の見直し等について、都道府県高等学校就職問題検討会議において引き続き検討する。
これら取組により、新規高卒者の就職内定率について平成16年度以上の水準を確保することを目指す。
(イ) 新規大卒者に対する就職支援策の実施
大学等就職担当職員を対象とした講習の実施等により、大学等の就職支援機能の強化を図る。
また、大学等新卒者に対して、学生職業センター等において、大学就職担当部署とも連携しながら、職業指導及び職業相談等の個別支援、就職面接会等の実施とともに、情報発信、マッチング機能の拡充を図ることとしている学生職業総合支援センターシステムの積極的活用により、就職の促進を図る。
ウ 若年失業者等の就職支援、職場定着の推進
(ア) 就職実現プランの作成による個別総合的な支援の充実(再掲)
就職意欲が高い求職者に対して、再就職に向けた求職活動計画(就職実現プラン)を作成して個別総合的な相談援助を実施する。また、再就職プランナーを増置し、若年者を対象に加え、就職実現プラン作成件数12万件、就職率5割程度を確保することを目指す。
(イ) 若年者試行雇用事業の推進
学卒未就職卒業者等の若年失業者に実践的な能力を取得させて常用雇用を推進するため、短期間の試行雇用事業を拡充実施する。試行雇用の開始者数を6万人、常用雇用移行率8割程度を確保することを目指す。
(ウ) ヤングワークプラザにおける就職支援の実施
若年失業者の就職を支援するため、東京、神奈川、愛知、大阪及び兵庫に設置しているヤングワークプラザにおいて、専門的な相談、職業紹介等の就職支援を推進する。
(エ) 職場定着を推進する施策の充実
新規学卒就職者の就職3年以内の離職率を前年度比で減少させることを目指して、公共職業安定所における職場適応指導、雇用管理指導等とともに、新たに、地域の業界団体等による若年労働者の相互交流や企業人事管理者の講習等の取組の促進、民間委託によるインターネット等を通じ働くことに関わる幅広い相談に身近に応ずる体制の整備に取り組む。
エ 若者の人間力を高めるための国民運動の推進
若年者雇用問題についての国民各層の関心を喚起し、若者に働くことの意義を実感させ、働く意欲・能力を高めるため、経済界、労働界、地域社会、政府等の関係者が一体となり、国民会議の開催や啓発活動等に取り組む国民運動を展開する。
オ 地域との連携及び協力による若年者就職支援対策の展開
若年者のためのワンストップサービスセンター(ジョブカフェ)等に対し、企業説明会や各種セミナーの開催等に、新たに、若年者の主体的な企画による就職支援活動や利用困難な者に対するネットカウンセリングを加えた若年者地域連携事業を委託するとともに、併設する公共職業安定所における職業紹介の実施など、地域との連携及び協力による効果的な若年者の就職支援対策を推進する。
カ 職業能力開発施策との連携
若者の職業能力を開発し就職を促進する施策として、10日間程度で就職に必要とされる基礎的な能力の習得を行う「就職基礎能力速成講座」や、企業実習と一体となった教育訓練を行う「日本版デュアルシステム」による離職者訓練を実施することとしている。
また、就労意欲が低く公共職業安定所へ行くことを躊躇する若者については、合宿形式による生活訓練、労働体験等を通じて若者に働く意欲と自信を付与する「若者自立塾」や若者に集いの場を提供し若者同士の交流等により若者の職業意識の向上を図る「ヤングジョブスポット」により職業意識形成・就労意欲向上を図ることとしている。
さらに、就職に当たって必要とされる基礎的な能力を身につけていることを証明するYES−プログラムの実施や、若年者を中心としたキャリア形成を総合的に支援する「私のしごと館」の設置運営を行っているところである。
こうした施策が実施されていることを踏まえ、公共職業安定所を利用する若者に対し、職業意識・職業能力の段階に応じた施策の紹介や、これらの事業の実施主体と連携した円滑な就職支援の実施など、若者の就職に向けた総合的な支援を実施する。
(8) 高齢者雇用対策の推進
ア 知識・経験を活用した65歳までの雇用の確保
(ア) 改正高年齢者雇用安定法の円滑な施行に向けた取組の推進
平成18年度からの改正高年齢者雇用安定法の施行に向け、すべての企業において定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の措置(高年齢者雇用確保措置)が講じられるよう、少なくとも50人以上規模のすべての企業に対しては、リーフレットの配布や集団指導・個別指導等を通じて、周知啓発の徹底を図る。
(イ) 高年齢者雇用確保措置に関する事業主に対する指導・援助の推進
平成18年度の改正高年齢者雇用安定法の円滑な施行に資するため、高年齢者雇用状況報告に基づき、高年齢者雇用確保措置を講じていない事業主に対する積極的な指導・援助等を行う。
また、高年齢者雇用アドバイザーが専門的・技術的支援を有効に行えるよう、適切な役割分担の下で、都道府県高年齢者雇用開発協会と密接な連携を図り、その際は、高年齢者雇用アドバイザーのフォローアップを重点とした相談・助言及び継続雇用定着促進助成金等の活用を通じて、高年齢者雇用確保措置を講ずる事業主を支援する。
(ウ) 65歳雇用導入プロジェクトの推進
労働局の高年齢者雇用推進委員会に公労使を交えた65歳雇用導入ワーキンググループを設置し、地域の実情に応じた賃金・人事処遇制度の見直しや継続雇用制度の導入等に係る方針を策定するとともに、地域の事業主団体を選定し、すべての傘下企業を対象として集団的に指導、助言を行う事業を委託する。事業終了時において、事業実施企業のうち65歳まで働ける場を確保する企業の割合が80%程度(平成15年において少なくとも65歳まで働ける場を確保する企業の割合を10%程度上回る水準)となることを目指す。
また、傘下企業の制度導入の支援を図るため、高年齢者雇用アドバイザーを活用して助言、指導を行う。
イ 中高年齢者の再就職の援助・促進
(ア) 中高年齢者試行雇用事業の推進
世帯主など特に再就職の緊急性が高い中高年齢求職者について、試行雇用を通じて常用雇用へ移行を図ることにより再就職を促進する。試行雇用の開始者数を2万人、常用雇用移行率を75%程度を確保することを目指す。
(イ) 求職活動支援書制度の普及、活用の促進及び再就職支援コンサルタントとの連携
事業主に対し、定年、解雇等により離職する高年齢者等に再就職援助措置を講じるよう努力する義務があること、解雇等により離職する高年齢者等(以下「高年齢離職予定者」という。)が希望した場合には求職活動支援書を作成・交付する義務があることについて周知・啓発を行うとともに、高年齢離職予定者が希望したにもかかわらず求職活動支援書を作成しない事業主に対して指導等を行う。
また、必要に応じて、都道府県高年齢者雇用開発協会に設置されている再就職支援コンサルタントを活用し、求職活動支援書の作成支援や再就職援助措置の内容等について相談・援助を実施する。
さらに、中高年齢労働者の職業生活設計及びキャリアの棚卸しに関する支援を行うため、高齢期雇用就業支援コーナーとの連携を図る。
ウ 年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた取組
年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けた基盤づくり事業の実施に当たる高年齢者雇用アドバイザーの活用を図りつつ、募集・採用時の年齢制限是正等に係る相談・援助等の支援を行う。
エ 高齢者の多様な就業・社会参加の促進
(ア) シルバー人材センター事業の推進
市区町村等との連携の下に高年齢退職者等のニーズに対応した就業機会を確保・提供し、地域に密着した事業運営体制を確立することにより、子育て支援事業を拡充するなどシルバー人材センター事業を引き続き推進するとともに、改正高年齢者雇用安定法に基づきシルバー人材センター連合が実施する一般労働者派遣事業について円滑な業務運営が図られるよう適切な指導を行う。
また、シルバー人材センター連合が実施する技能講習と合同面接会等を一体的に行うシニアワークプログラム事業に連携・協力する。
(イ) 高年齢者等の共同による創業に対する支援(再掲)
高年齢者等共同就業機会創出助成金を活用し、45歳以上の高年齢者等が共同して事業を開始し、継続的な雇用就業機会を創出した場合、当該事業主を支援する。
(9) 障害者雇用対策の推進
ア 障害者雇用促進法の改正
障害者の社会参加が進み、障害者の就業に対するニーズが高まる中で、精神障害者の雇用対策の強化や在宅就業に対する支援などが求められている。そのため、精神障害者に対する雇用対策の強化、多様な形態による障害者の就業機会の拡大、雇用と福祉の連携による福祉的就労から一般就労への移行の促進等、障害者雇用促進法の改正を含め、障害者雇用施策の充実強化を図ることとしている。
なお、障害者雇用促進法の改正法案が成立した場合、その施行に向け十分な周知・啓発を行う。
イ 法定雇用率達成指導の徹底
(ア) 指導基準に基づいた厳正な指導
身体障害者及び知的障害者の実雇用率が低いことや法定雇用率未達成企業の割合が高いことを踏まえ、民間企業に対する法定雇用率達成指導において、障害者雇入れ計画作成命令、企業名の公表を前提とした特別指導を、指導基準に基づき厳正に実施する。なお、本省においては、各労働局の指導結果に基づき、6月に企業名の公表を実施する。
(イ) 企業の雇用状況に応じた指導
除外率の引き下げや除外職員制度の縮小により、新たに法定雇用率未達成となった、又は不足障害者数が増加した企業及び機関に対して、早期に法定雇用率を達成させるため、必要に応じて業種ごとのセミナー等を実施するなど、法定雇用率達成のための集団指導を強力に行う。法定雇用率未達成企業の約6割を占める1人不足企業に対しては、個別求人開拓又は一般求人に係る条件緩和指導と併せた法定雇用率達成指導を実施する。また、本省においては、不足障害者数が一定数以上の大企業等に対して直接指導を行う。
ウ 障害者の雇用機会の拡大
「重点施策実施5か年計画」において明記されている、平成19年度までに公共職業安定所の年間障害者就職件数を3万人、平成20年度の障害者雇用実態調査において雇用障害者数60万人とする目標を踏まえ、平成17年度においては、平成16年度を上回る就職件数を確保することを目指す。
(ア) 障害者個々人に応じた就職支援の推進
前年を上回る就職件数の確保に向けて、障害の種類及び程度等障害者個々人の状況に応じたきめ細かな職業相談・職業紹介の実施、求人開拓の強力な推進を図るとともに、地域の実情に応じて集団面接会の活用を図る。
(イ) 障害者試行雇用事業(トライアル雇用事業)の拡充
障害者を短期の試行雇用の形で受け入れ、常用雇用への移行を促進する障害者試行雇用事業を拡充して実施する。試行雇用の開始者数を6千人、常用雇用移行率を少なくとも8割程度確保することを目指す。
(ウ) 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業の推進
地域障害者職業センターにおいて、職場への適応が困難な障害者の働く職場にジョブコーチを派遣することにより職場定着等を支援するジョブコーチ事業を推進する。その際、公共職業安定所は、支援ニーズの把握や個別の事業所開拓等を実施する。
エ 雇用と福祉の連携による障害者の自立支援
(ア) 地域における福祉的就労から一般就労への移行の促進
授産施設等の福祉施設で就労している障害者の一般就労への移行を促進するため、公共職業安定所が中心となって、障害者の在籍する福祉施設、地域障害者職業センター等の関係機関からなる「地域障害者就労支援チーム(仮称)」を設置し、障害者一人一人の意欲、能力等に応じた支援計画を作成し、支援を進める(平成17年度においては10所において実施)。支援に当たっては、様々な支援制度を活用するとともに、福祉施設での作業と企業実習を組み合わせた就労支援の実施、福祉施設の支援スタッフや入所者に対する意識啓発など、一般就労に向けた総合的な支援を行う。
(イ) 障害者就業・生活支援センター事業の拡充
障害者の身近な地域において雇用、保健福祉、教育等の関係機関が連携し、就業及びそれに伴う日常生活の相談・支援を一体的に行う障害者就業・生活支援センター事業の拡充を図る。都道府県労働局及び公共職業安定所においては、同センターの業務の円滑かつ効果的な運営のための協力を行う。
(ウ) 発達障害者に対する適切な対応
発達障害者支援法の施行を踏まえ、発達障害者支援センターや地域障害者職業センター等との連携を図りながら、発達障害に対する理解を深め、適切な対応を図る。
オ 精神障害者に対する雇用対策の強化
(ア) 医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業の実施
医療機関等の利用者の中で、就職意欲は高いものの就職するための準備が十分に整っていない精神障害者を就職に結びつけるため、公共職業安定所から医療機関等に出向き、就職活動に関する知識や方法を実践的なガイダンスにより示す。併せて、公共職業安定所は医療機関等との連携を深め、医療・生活支援から就職支援まで含めた円滑な支援活動を展開できる環境整備に努める。
(イ) 精神障害者に対する総合的雇用支援の実施
精神障害者職場復帰支援事業(リワーク事業)を発展させ、全国の地域障害者職業センターにおいて、精神障害者及び事業主に対して、休職中の在職精神障害者の円滑な職場復帰に加え、新規雇用の促進、雇用継続を含めた総合的・体系的な支援を実施する。公共職業安定所においては、事業の周知や支援ニーズの把握等について地域障害者職業センターとの連携を図る。
(ウ) 基本的な労働習慣の体得を支援する職業準備支援事業の拡充
地域障害者職業センターにおいて、就職に必要な基本的な労働習慣等の体得を支援するため、個々の障害者に応じたカリキュラムにより体系的な訓練を実施する職業準備支援事業を拡充し、精神障害者を対象とした対人関係改善のための自立支援コースを拡充する。その際、公共職業安定所においては、支援対象者の把握や訓練修了者のうち一般雇用が可能な者について職業相談、職業紹介等を実施する。
カ 障害者の職業能力開発の推進
障害者職業能力開発校における訓練、一般校を活用した訓練及び障害者委託訓練などについて、障害者の雇用促進の支援策として積極的かつ効果的な受講あっせん等に努めるとともに、求職障害者や事業主に対するこれらの周知を図る。
(10) 外国人雇用対策の推進
ア 外国人労働者の就労環境の整備の推進
(ア) 外国人求職者への職業紹介機能の推進
現下の厳しい雇用失業情勢の下、外国人来所者に適切に対応するため、「外国人雇用サービスコーナー」における外国人求職者等に対する職業相談・紹介の一層の推進を図るほか、本省においても、求職者向けパンフレットを英語・中国語・ポルトガル語等で作成・配布する。
(イ) 日系人の適正な就労の推進のための情報提供の推進
「外国人雇用サービスコーナー」や「日系人雇用サービスセンター」を拠点として、職業相談・紹介を行う。また、日系人が集住している地域に設置している「日系人職業生活相談室」において、職業選択、求職活動、労働条件等に関する日系人等に対する相談・情報提供を行うとともに、職業紹介あるいは事業主担当窓口等との連携により、日系人の雇用の安定と適正な雇用管理の確保を図る。さらに、「日伯雇用サービスセンター(ブラジル国サンパウロ市)」を拠点として現地日系人団体とも連携して、来日を希望する日系人に対して適切な情報を提供し、日系人の適正な就労を図る。
さらに、日系人が多く集住している地域においては、不就学・不就労の日系人青少年及び日系人失業者に対し、キャリア形成など職業生活に関する意識を啓発するとともに日本の労働慣行や日本で生活していく上で必要となる知識を身につけ、就職に資するため、就業支援ガイダンス、個別の指導・相談による支援を実施する。
イ 専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れ・定着の促進
専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れを積極的に推進するため、「外国人雇用サービスセンター」が主体となって、各都道府県労働局・公共職業安定所と連携を図りつつ、専門的、技術的分野の外国人に対する職業相談・紹介を行う。また、卒業後の就職を希望する留学生に対しては、大学等教育機関や経済団体等の関係機関とも十分に連携して、大学での就職ガイダンスの実施、求人情報の提供等の就職支援を積極的に行う。
ウ 事業主等に対する指導・援助等の推進
外国人雇用状況報告制度による雇用状況の把握、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく事業主への指導・援助、外国人雇用管理アドバイザーによる援助及び外国人雇用管理セミナーの開催により、外国人労働者の失業の予防や再就職の促進、雇用管理の改善を図る。また、6月の「外国人労働者問題啓発月間」を中心として、外国人労働者の適正な雇用及び労働条件の確保等に関する周知啓発に努める。
エ 適正就労の推進等
警察庁、法務省等関係行政機関との連携を図りつつ、事業主等への啓発・指導による不法就労の防止並びに事業主への是正指導及び必要に応じた関係行政機関への情報提供による不法就労の解消に努める。
(11) 安心して働ける雇用環境の整備
ア ホームレスの雇用対策の推進
(ア) 自立支援事業職業相談員の配置
地方公共団体が行うホームレス自立支援事業との連携の下で、公共職業安定所の職業相談員によるきめ細かな職業相談等を行うことにより、就業機会の確保を図る。
(イ) ホームレス就業開拓推進員の配置
ホームレス就業開拓推進員を配置し、ホームレスの就業ニーズに応じた求人開拓や地方公共団体等と連携を図りながら求人情報等の収集・提供を行うほか、事業主に対する啓発活動を行うことにより、就業機会の確保を図るとともに、職場定着に向けての指導を行う。
(ウ) 技能講習事業の促進
自立支援センターに入所しているホームレス等に対して、職場で必要とされる資格・免許の取得等を目的とした技能講習を実施することにより、就業機会の確保を図る。公共職業安定所においては、事業の委託団体に対する事業の実施に必要な助言、協力その他の業務を行う。
(エ) 試行雇用事業の促進
自立支援センターに入所しているホームレス等に対して、一定期間の試行雇用により、円滑に新たな職場への適応を進め、常用雇用への移行を図る。
(オ) ホームレス就業支援事業の実施
野宿生活を余儀なくされているホームレスのうち就業意欲がある者の就業機会の確保を図るために、地方公共団体等から構成される協議会への委託により、就業支援相談、ホームレスの就業ニーズに合った仕事の開拓・提供や職場体験講習を実施する。労働局においては、本事業が円滑かつ効果的に運営されるよう、協議会に対する助言その他事業に関し必要な協力を行う。
イ 母子家庭の母等の雇用対策の推進
児童等を扶養する母子家庭の母等について、家庭環境等に配慮した職業相談・紹介の実施、特定求職者雇用開発助成金や訓練手当、試行雇用事業の活用等により、早期就職の促進を図る。
また、職業訓練が必要とされた者に対しては、積極的かつ効果的な受講あっせん等に努める。
ウ 駐留軍関係離職者対策の推進
駐留軍関係離職者について、駐留軍関係離職者等臨時措置法等に基づき、公共職業安定所において職業相談・紹介、職業訓練の推進と職業転換給付金の活用等により、生活の安定と早期再就職の促進を図る。
エ 漁業離職者対策の推進
国際協定の締結に伴う漁業離職者について、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づき、公共職業安定所において職業相談・紹介、職業訓練の推進と職業転換給付金の活用等により、生活の安定と早期再就職の促進を図る。
オ 多様な状況に応じた各種雇用対策の推進
(ア) 沖縄県における雇用対策の推進
沖縄県の雇用失業情勢は依然として厳しい状況にあり、沖縄県の雇用失業情勢の改善を図る観点から、「沖縄振興特別措置法」に基づく政府全体の沖縄振興等と連携しつつ、沖縄県内の特別の対策を実施する。
(イ) 日雇労働者対策の推進
求人の開拓を積極的に行うことにより、日雇労働者の就業機会の確保を図る。
さらに、東京、神奈川、愛知、大阪などの日雇労働者が集中する特別地区の日雇労働者に対して、技能講習を実施し日雇労働者の就業機会の確保を図るとともに、試行雇用事業の実施を通じ、常用雇用への移行を図る。公共職業安定所においては、事業の委託団体に対する事業の実施に必要な助言、協力その他の業務を行う。
(ウ) アイヌ地区住民の雇用対策の推進
アイヌ地区住民については、各種就職援護措置の活用を図るとともに、職業相談員経験交流会議を開催し、この成果を職業相談に役立て、きめ細やかな職業指導、職業相談を実施するとともに、事業主説明会を開催し、地域住民の雇用の安定を図る。
(エ) 中国残留邦人等永住帰国者の雇用対策の推進
中国残留邦人等永住帰国者について、公共職業安定所において、職業相談・紹介の実施及び職業転換給付金制度の活用等により、雇用の促進を図る。
また、職業相談等の一部の業務については、財団法人中国残留孤児援護基金に委託し、中国帰国者定着促進センター等において実施する。
(オ) インドシナ難民等の雇用対策の推進
国際救援センター入所のインドシナ難民及び条約難民について、職業相談・紹介、職場適応訓練その他就職を促進するための各種援護措置の実施に係る業務を財団法人アジア福祉教育財団に委託して実施し、その雇用の促進を図る。
また、公共職業安定所においては、難民に係る求人の取次ぎ、求人開拓、職場定着指導等の業務について、同財団と綿密な連携をとりながら協力する。
(カ) 在日韓国・朝鮮人の就職の機会均等の確保対策の推進
在日韓国・朝鮮人について、就職の機会均等が確保されるよう、事業主等啓発説明会、ポスター等の広報活動、不適正事象への指導等により、事業主等に対し積極的な指導・啓発を行う。
(キ) 北朝鮮帰国被害者等に対する雇用対策の推進
帰国した被害者及び帰国し、又は入国した被害者の配偶者等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等により、早期就職の促進を図る。
(ク) 犯罪被害者等の雇用の安定の推進
犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族の雇用の安定を図るため、犯罪被害者等が置かれている状況について事業主の理解を深める等必要な施策を講ずる。
(ケ) 公正な採用選考の推進
公正な採用選考システムの確立を図るための雇用主に対する指導、啓発については、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月閣議決定)の中で厚生労働省が行うこととして策定されているところである。これに基づき、就職の機会均等を保障することが同和問題などの人権問題の中心的課題であるとの認識に立って、公正採用選考人権啓発推進員未設置事業所に対する設置勧奨及び同推進員制度が効果的に機能するような制度・運営面での充実や、企業トップクラスに対する研修会の充実に努めるとともに、小規模事業所に対する啓発・指導を実施する。
また、全国高等学校統一応募用紙等の適正な応募書類の周知徹底と公正な採用選考についての各種啓発資料の作成・配付等により、雇用主に対する啓発・指導を実施する。
カ 就職困難者に対する雇用対策の推進
就職が特に困難な者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して支給される特定求職者雇用開発助成金等を活用し、これら就職困難者の雇用の促進を図る。
キ 職場における肝炎ウイルス感染に対する適切な対応の促進
「職場における肝炎ウイルス感染に関する留意事項」(平成16年12月8日付け基発第1208002号、職発第1208002号)に基づき、事業主が応募者の適性・能力を判断する上で真に合理的かつ客観的必要性がある場合を除き肝炎ウイルス検査を行わないよう、各種啓発資料を活用するなどにより、あらゆる機会を捉え事業主等への周知徹底を図る。
ク 多様な雇用管理改善対策の推進
(ア) 介護分野における雇用管理改善の推進
(財)介護労働安定センターにおいて、介護労働者の雇用管理改善のための施策を推進するとともに、各労働局・公共職業安定所においては、事業主に対する助成金の周知や財団法人介護労働安定センター都道府県支部への相談の奨励、介護基盤人材確保助成金の支給等、必要な連携を図り、介護分野における雇用管理の改善、良好な雇用機会の創出を図る。
(イ) 港湾労働対策の推進
港湾労働法及び港湾雇用安定等計画に基づき、港湾労働者派遣制度の有効活用の促進等による雇用秩序維持対策の一層の推進等港湾労働者の雇用の安定及び福祉の増進のための施策を推進する。
(ウ) 季節労働者対策の推進
季節労働者の雇用の安定を図るために、通年雇用安定給付金制度の活用により通年雇用の促進に努める
(エ) 出稼労働者対策の推進
出稼労働者に対して、出稼労働者手帳の交付や、送出地及び受入地における就職相談及び指導等を実施するとともに主な送出地を管轄する都道府県労働局が、出稼労働者相談員の配置や安全就労推進集会等の実施などの出稼労働者援護事業を行う道県と連携し、安定就労対策を実施する。
3 雇用均等行政の重点施策
(1) 職業生活と家庭生活の両立支援対策の推進
ア 改正育児・介護休業法の施行
育児休業及び介護休業の対象労働者の拡大、育児休業期間の延長、介護休業の取得回数制限の緩和、子の看護休暇制度の創設といった改正事項を含め育児・介護休業法の円滑な施行を図るため、改正法やそれに伴い新たに制定された指針等の内容の周知徹底を図るとともに、個別指導及び集団指導を効果的に組み合わせた計画的な行政指導を実施し、改正を踏まえた規定等の整備が適切に行われるよう指導を行う。
特に有期雇用者の休業等に関し、改正法や指針等の内容について、労使に対し広く周知を図る。
また、育児休業及び介護休業の申出又は取得を理由とした不利益取扱いなど、育児・介護休業法に基づく労働者の権利が侵害されている事案について、労働者からの相談があった場合は、的確に対応し、法違反がある場合その他必要な場合には事業主に対する適切な指導を行う。
イ 次世代法の施行
次世代法に基づく次世代育成支援対策の推進に当たっては、事業主による一般事業主行動計画の策定・実施を通じた、仕事と子育ての両立支援の推進が重要な柱である。このことを踏まえ、常時雇用する労働者が300人を超える事業主に対しては、一般事業主行動計画を策定した旨の届出の完全履行を期すとともに、300人以下の事業主に対しても、次世代育成支援対策推進センターとの連携にも留意しつつ、できるだけ多くの一般事業主行動計画の策定・届出が行われるよう、啓発、指導を行う。
また、できるだけ多くの事業主が認定を目指して取組を行うよう周知、啓発を行う。
ウ 職業生活と家庭生活との両立の推進に関する周知啓発活動の実施
「子ども・子育て応援プラン」の趣旨、内容も踏まえつつ、「仕事と家庭を考える月間」(10月)を含めたあらゆる機会をとらえ、育児休業の取得促進、子育て期間中の勤務時間短縮等の措置の普及促進等の職業生活と家庭生活の両立を図りやすくするための雇用環境の整備に関する周知啓発活動を効果的に実施する。
なお、事業主等に対する職業生活と家庭生活との両立の推進に関する効果的な啓発を図るため、子育てしやすい職場づくり推進協力員の活用を積極的に図る。
エ ファミリー・フレンドリー企業の普及促進
企業における仕事と家庭の両立のしやすさを示す「両立指標」について、インターネット上でその進展度を診断できるファミリー・フレンドリー・サイトの利用等による活用を進め、ファミリー・フレンドリー企業に向けた事業主の自主的な取組を促進するとともに、ファミリー・フレンドリー企業表彰の実施により、その一層の普及促進を図る。
(2) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保対策の推進
ア 適切な行政指導の実施及び個別紛争解決の援助
(ア) 均等取扱いのための行政指導等
女性労働者が性別により差別されることなく安心して働くことができるよう積極的な行政指導により均等取扱いの徹底を図る。
このため、男女雇用機会均等法第25条に基づく報告徴収では、実際の取扱いを具体的に聴取することにより企業における雇用管理の実態を的確に把握する。なお、必要に応じ女性労働者や事業場の労働組合の代表者等からも事情を聴取することも考えられる。
男女差別的な取扱いの事実が認められる企業に対しては、都道府県労働局長の助言、指導、勧告により、また状況に応じ企業名公表制度についても説明しつつ、速やかな法違反の是正を図る。また、男女労働者の間で採用、配置、昇進等において、事実上の格差が大きい企業に対しては、ポジティブ・アクションの取組の好事例を提供しつつ、当該企業が自社の問題点を踏まえ、女性の採用拡大、職域拡大及び管理職への登用等に向け、積極的かつ具体的な取組を行うよう助言する。
コース等で区分した雇用管理制度を導入している企業に対しては、「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」の周知徹底を図るとともに、法違反企業に対しては、裁判例等を示しつつ是正指導等を行う。
また、本省において、男女双方に対する差別の禁止、妊娠・出産を理由とする不利益取扱い、間接差別の禁止等、男女雇用機会均等の更なる推進のための方策についての検討を行う。
(イ) 均等取扱いに関する個別紛争解決の援助
均等取扱いに関し相談がなされた場合には、相談者の抱えている問題の把握を十分に行い、その解決に向け的確に対応する。特に妊娠・出産を理由とする解雇等均等取扱いに関する個別紛争が引き続き増加傾向にあるが、これらの円滑かつ迅速な解決を図るため、都道府県労働局長による助言、指導、勧告及び機会均等調停会議による調停を積極的に運用する。
また、個別紛争解決援助の事例等を紹介し、個別紛争解決援助に係る都道府県労働局や機会均等調停会議の役割や機能について、女性労働者等に積極的に周知する。
(ウ) 男女雇用機会均等法の周知啓発
男女雇用機会均等法の履行確保及びポジティブ・アクションの推進について、労使を始め関係者に対し、第20回目を迎える「男女雇用機会均等月間」(6月)を中心に効果的な広報啓発活動を実施する。
(エ) 女子学生等の就職に関する均等な機会の確保
採用選考過程における男女差別的取扱いが依然としてみられることから、企業の採用担当者等を対象に、男女雇用機会均等法に沿った男女均等な選考ルールを徹底させるとともに、採用実績について男女差の大きい企業に対し、同法第25条に基づく報告徴収を行い、法違反企業に対しては助言、指導等を実施する。
女子学生、女子生徒等が的確な職業選択を行えるよう、ガイドブック等の情報提供により意識啓発を図る。また、女子生徒等の意識啓発に当たっては、職業安定行政が実施する高校における職業意識形成支援事業との連携を積極的に図る。
(オ) 男女間賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むためのガイドラインの普及
男女間の賃金格差解消のために労使が自主的に取り組むための賃金管理及び雇用管理の改善方策に係るガイドラインを、使用者団体を通じる等により企業に対し周知徹底を図るとともに、労働団体に対しても周知する。
イ 女性の能力発揮のためのポジティブ・アクションの推進
(ア) 企業に対する啓発指導
本省において、経営者団体と連携し協議会を開催するとともに、都道府県労働局においても、管内の経営者団体等との連携の下に女性の活躍推進協議会を開催し、ポジティブ・アクションのより一層の推進を図る。
また、ワークシートを活用し、各企業における女性労働者の活躍状況、ポジティブ・アクションの取組状況を企業自らが自主点検を行うよう促す。その際、必要に応じ性別役割分担意識の解消に向けた具体的な取組に資するための企業内研修資料等の情報提供を行う。
さらに(財)21世紀職業財団(以下「財団」という。)が実施するベンチマーク(自社の状況を測ることのできるものさしとなる値)を活用した中小企業女性の能力発揮診断事業に係る情報提供を行う。
(イ) 「均等推進企業」表彰の実施
ポジティブ・アクションを推進している企業に対し、その取組を讃えるとともに、これを広く国民に周知し、女性労働者の能力発揮促進を図るため、「均等推進企業」を公募し、表彰を行う。
ウ 職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策の推進
(ア) 実効ある防止対策が行われるための行政指導等の徹底
企業において実効ある防止対策が講じられるよう、企業における相談対応のためのテキストを活用する等によりその徹底を図るとともに、セクシュアルハラスメントが生じている企業に対し、適切な事後の対応及び再発防止のための取組について指導を行う。
また、女性労働者等からのセクシュアルハラスメントの相談の多い業種、防止対策に遅れがみられる中小企業に対して、業種別使用者団体や中小企業団体等との連携を図り、防止対策について自主点検を促す等効果的な取組の促進を図る。
(イ) セクシュアルハラスメントカウンセラーの活用
職場におけるセクシュアルハラスメントによって精神的苦痛を受けた女性労働者からの相談に対しては、セクシュアルハラスメントカウンセラーを活用し、適切に対応する。
エ 母性健康管理対策の推進
女性労働者が妊娠中及び出産後も安心して健康に働くことができるよう、事業主等に対し母性保護及び母性健康管理の必要性について、周知徹底を図るとともに、「母性健康管理指導事項連絡カード」の活用を促進する。
(3) パートタイム労働対策の推進
ア パートタイム労働法及びパートタイム労働指針等の定着のための取組
パートタイム労働法及びパートタイム労働指針について、育児・介護休業法の改正に伴い追加された事項を含め、集団説明会・相談会の開催や使用者団体・労働組合を含めた各種団体が主催する会合の活用等により、企業トップ層を含めた事業主及び労働組合に対して、周知徹底を図る。
特に、パートタイム労働者を多く活用する業種を中心に、短時間労働援助センター等が収集した均衡処遇に関する好事例を紹介すること等により、均衡処遇の考え方の重点的な周知を行う。また、効果的な周知を図るため、本省においては、都道府県労働局に対して均衡処遇の考え方の浸透・定着に役立つような関連情報を提供するとともに、都道府県労働局においても好事例等の収集と適宜その本省への提供を行うことにより、情報の共有・活用を図る。
さらに、パートタイム労働者が関係法令等関係諸制度に関して必要な知識を得られるよう、短時間労働援助センターを活用するとともに、パートタイム労働者に対する情報提供を行う。
イ 個々の事業主の自主的取組の推進
短時間雇用管理者の選任等について、パートタイム労働法第10条に基づく事業主に対する助言等を行うとともに、使用者団体の会合の機会を活用すること等により選任の促進を図り、選任された短時間雇用管理者に対しては必要な講習会を実施する。
さらに、短時間雇用管理者が選任された事業所のうちパートタイム労働者を多く活用する事業所を中心に個別訪問を行いパートタイム労働法第10条に基づく報告徴収を行うことにより、均衡処遇等への取組の実態把握に努めるとともに、必要に応じて助言等を行い、事業主の自主的取組を促す。
また、均衡処遇に取り組む事業所を支援するため、短時間労働援助センターが実施する均衡処遇推進事業について、事業主に対して積極的に情報提供すること等によりその実施に協力するとともに、短時間労働者雇用管理改善等助成金に係る指定等の業務を的確に実施する。
(4) 家内労働及び在宅ワーク対策の推進
ア 家内労働対策の推進
(ア) 最低工賃の新設・改正の計画的推進及び周知の徹底
「第8次最低工賃新設・改正計画」に基づき計画的に最低工賃の改正等を行うとともに、決定した最低工賃については、委託者、家内労働者、関係団体等に対して周知徹底に努める。
(イ) 家内労働法の適正な施行
委託条件の明確化、工賃支払いの適正化を図るため、家内労働手帳の交付の徹底等必要な指導を行うとともに、家内労働安全衛生指導員を活用しつつ、特殊健康診断の受診の勧奨及び家内労働者の労災保険特別加入制度の周知徹底等により家内労働者の安全及び衛生の確保を図る。
また、いわゆる「インチキ内職」の被害防止に向けた意識啓発に努める。
イ 在宅ワーク対策の推進
在宅ワークの健全な発展に向けて、契約条件の文書明示やその適正化等を図るため、発注者、仲介業者及び在宅ワーカー等に対し「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」等の周知徹底を図る。
4 労働保険適用徴収業務等の重点施策
(1) 労働保険の未手続事業一掃対策の推進
労働保険の未手続事業の一掃については、手続指導にとどまらず、職権を行使する措置を講じる。そのため、これまでの取組以上に都道府県労働局及び労働基準監督署と公共職業安定所が緊密に連携するなど、適用徴収担当部署以外の部署との連携による未手続事業の積極的かつ的確な把握・加入勧奨を行うとともに、把握した未手続事業に対しては適用徴収担当部署において強力な手続指導を行う。また、労働保険の適用促進に係る委託業務についての全国労働保険事務組合連合会都道府県支部との連携については、一層緊密・確実に実施する。さらに、10月に実施する労働保険適用促進月間の広報活動については、未手続事業一掃対策の一環と位置付け、労働保険制度の一層の理解・周知を図る。
局、署、所及び労働保険事務組合(以下「事務組合」という。)の適用促進活動(加入勧奨、手続指導)によっても、自主的に保険関係の成立手続を取らない事業主については、職権により成立手続を行い、保険料を認定決定する。
(2) 労働保険料の適正徴収
労働保険料の適正徴収のためには、事業主が労働保険制度を理解した上で、正しく申告し、適正に納付することが重要であり、そのため以下について適正に業務を実施する。
ア 年度更新の的確かつ円滑な実施
年度更新の実施に当たっては、「平成17年度の年度更新等業務について」を踏まえるほか、労働保険徴収主務課室、労働基準部、職業安定部及び需給調整事業部の連携を密にし、都道府県労働局全体として、体制の整備を図る。
イ 効率的な算定基礎調査の実施
労働保険料算定基礎調査(以下「算調」という。)については、適正な業務量の投入に配慮しつつ、効率的な算調実施計画を策定し、適正かつ実効ある実施を図る。
ウ 実効ある滞納整理の実施
労働保険料の滞納整理については、効果的な滞納整理実施計画を策定して取り組むこととし、とりわけ多額の滞納事業主及び多年度にわたり滞納を繰り返している事業主に対し、重点的に滞納整理を実施する。
エ 社会保険及び労働保険に係る徴収事務の一元化への適切な取組
事業所説明会、算調及び滞納整理については、徴収事務の一元化に当たって社会保険・労働保険徴収事務センターとして実施する事務でもあることから、連絡協議会等の場で調整するなど適切に実施する。
(3) 事務組合の活用、育成、指導等
労働保険事務組合制度は、中小零細事業における労働保険事務について大きな役割を果たしていることにかんがみ、その一層の活用を図る。また、事務組合の育成を行うに当たっては、その母体団体の性格、事務処理能力等を考慮し、委託事業数の増大を通じ事務組合の自立が図られるよう努める。
また、事務組合が適正に業務運営を行えるよう、事務組合への定期的な監督・指導等に努める。
5 個別労働紛争解決制度の積極的な運用
(1) 個別労働紛争解決制度の周知・自主的な紛争解決の促進
管内の運用状況を踏まえ、市町村広報紙(誌)の活用等あらゆる機会を捉えた個別労働紛争解決制度の積極的な周知・広報に取り組む。また、企業内での紛争の自主的解決の促進に向け、紛争自主解決支援セミナーの効果的な実施に努める。
なお、本省においては、企業内での紛争の自主的解決の促進に向けた人材育成(企業内の労使)に係る研修について、公益法人への委託により実施することとしている。
(2) 総合労働相談コーナーにおけるワンストップサービスの提供
総合労働相談コーナーにおいては、労働問題に関するあらゆる分野の相談に適切に対応することとし、内容に応じて、関連する法令・裁判例等の情報提供、適切なアドバイスによる当事者間の自主的な解決の促進、他の処理機関等についての情報提供等のワンストップサービスを提供する。
相談の過程において個別労働紛争を把握した場合には、個別労働紛争解決制度を教示し、必要な場合には、助言・指導の申出やあっせんの申請を受け付ける等相談者のニーズを踏まえた対応をする。
総合労働相談員(以下「相談員」という。)の資質向上に向けて、個別労働紛争解決制度のみならず、労働行政全般について幅広い知識を付与する等積極的かつ効果的な研修の実施に努め、相談員の的確な活用を図る。
また、総合労働相談コーナーの設置されていない労働基準監督署、公共職業安定所等においても、当該制度の積極的な説明を行うことによりその活用促進を図る。
(3) 助言・指導及びあっせん制度の的確な運用
助言・指導及びあっせんについては、それぞれ紛争の実情に即した迅速・適正な解決に向けた適切な事務処理を行う。その際、相談員等の積極的な活用に留意する。
(4) 関係機関との連携
管内における個別労働紛争解決のための取組を効果的に機能させるため、個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会の開催等を通じ、都道府県労働主管部局、都道府県労働委員会をはじめ紛争解決に係る取組を行う関係機関・団体との緊密な連携を図る。
6 各行政間の連携の下に推進する重点施策
(1) 労働条件の確保、雇用の安定等を図るための総合的施策の実施
都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の連携の下、企業倒産、雇用調整等に係る情報収集を積極的に行うとともに、地域に影響を及ぼす企業倒産、雇用調整が発生した場合、離職を余儀なくされた労働者を対象に、賃金不払、解雇手続、解雇についての男女差別、失業等給付、再就職支援などの一連の手続き等について総合的かつ機動的な対応を図る。
また、情報の共有化の観点から、総合労働相談コーナーに対しても情報の提供を行う。
(2) 各分野ごとの連携した対策の推進
ア 「子ども・子育て応援プラン」の実施
「子ども・子育て応援プラン」に掲げられた若年者の就労支援、仕事と家庭の両立支援、働き方の見直しなど、今後5年間に講ずる具体的な施策内容について、各都道府県労働局子ども・子育て応援プラン推進本部を設置し、各行政が連携して取組を進める。
イ 次世代育成支援対策の推進
次世代法の周知啓発、一般事業主行動計画の策定・届出の義務の履行確保について、都道府県労働局雇用均等室が中心となり、都道府県労働局内各部が連携しつつ、地方公共団体との連携にも留意しながら取り組む。
ウ パートタイム労働対策の推進
パートタイム労働者を雇用する事業主に対する説明会・相談会の開催等により、雇用均等行政のみならず労働基準行政及び職業安定行政が十分連携し、パートタイム労働法及びパートタイム労働指針の周知等の業務を推進することにより、均衡処遇の考え方の浸透・定着を図る。
エ ワークシェアリングの推進
各都道府県労働局ワークシェアリング推進本部を中心とし、都道府県労働局が一体となって、地方公共団体、労使団体などとも連携を図りつつ、ワークシェアリングの導入促進のための支援等に取り組む。その際、ワークシェアリングについての知識・ノウハウを有する者をアドバイザーとして登録し、ワークシェアリング導入に関心を持つ事業所に対する相談等を行う「ワークシェアリングアドバイザー」が配置される都道府県労働局においては、これを積極的に活用する。
オ 育児・介護休業法に基づく事業主指導に関する連携の推進
平成17年4月より施行となる改正事項を中心に育児・介護休業法及び同法に基づく指針の内容の周知並びに個別相談への対応について、都道府県労働局雇用均等室は労働基準監督署及び公共職業安定所との連携を密にして取り組む。
また、育児・介護休業法に関して、労働基準監督署又は公共職業安定所が把握した法違反の疑いがある事業所等に係る情報の都道府県労働局雇用均等室への提供等の連携に努める。
カ 男女雇用機会均等確保対策の推進
男女雇用機会均等法及び同法に基づく指針の内容について、労働基準監督署における就業規則の受理時及び公共職業安定所における求人の受理時等に、その周知を図る。
また、妊娠・出産を理由とした解雇等、均等取扱いの個別紛争等に関する相談や、法違反事業所に係る情報を労働基準監督署又は公共職業安定所で把握した場合には、都道府県労働局雇用均等室へ提供等を行うことにより連携を図る。
併せて、女子生徒等の意識啓発について、都道府県労働局雇用均等室が実施する取組と職業安定部が実施する高校における職業意識形成支援との連携を図る。
キ 派遣労働者の保護及び就業条件の確保対策等の推進
派遣対象業務の物の製造の業務への拡大に伴い、特に請負と労働者派遣の混在が予想される製造現場について、指導監督に万全を期す必要がある。このため、違反事案があった場合は相互に情報提供するなど職業安定行政と労働基準行政との連携を一層強化する。また、派遣元事業主、請負事業者、派遣先等の事業主に対して法令の遵守の徹底を図るため、必要に応じ、労働者派遣法に係る説明会等において、都道府県労働局の労働基準部、雇用均等室等の職員による説明の機会を確保するなど、引き続き各行政間で適切な連携を図る。
ク 外国人労働者対策の推進
平成16年12月に人身取引対策行動計画が策定されたことに伴い、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所においては、労働基準法・職業安定法等関係法令違反が認められる事案において、人身取引事犯が認められた場合は、関係機関と連携の上、適切に対処する。
また、労働基準行政及び職業安定行政において、外国人労働者等からの相談等への対応及びこれらの者に対する支援や、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」等に基づく事業主等に対する啓発指導、個別指導等に当たっては、必要に応じて相互に連携して行うとともに、職業安定行政において「外国人労働者問題啓発月間」(6月)を中心に各地で開催する講演会等についても、必要に応じて労働基準行政との連携を図る。
ケ 障害者の労働条件確保・雇用対策の推進
障害者である労働者の法定労働条件の履行確保、雇用管理の改善等を図るため、職業安定行政は、障害者雇用連絡会議などの開催を通じ、労働基準行政及び福祉行政を始め関係行政との連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導を推進するとともに、的確な情報の把握及び提供等を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。
また、障害者雇用に関し、都道府県労働局が都道府県の関係部局との連携を図るとともに、必要に応じ関係団体等と連絡・調整を行うための障害者雇用連絡協議会を開催する。
コ 労働保険の未手続事業の積極的かつ的確な把握等
労働保険の未手続事業の一掃については、これまでの取組以上に都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所が緊密に連携するなど、行政間で連携した未手続事業の積極的かつ的確な把握・加入勧奨を行う。
(3) 職業能力開発行政との連携
ア 適切な訓練コース開発への協力
能力のミスマッチを解消するために人材ニーズに基づいた職業訓練の活用が必要であることから、職業能力開発機関に対し、未充足求人の分析や求職相談等を通じて把握した訓練ニーズ等具体的な訓練コース設定・見直しに資する情報の提供・提案・協力等を実施する。
イ 創業に向けた職業能力開発支援の推進
再就職支援に加え、離職者の創業を支援することは、雇用創出の実現や、雇用の安定を図るために重要である。
(独)雇用・能力開発機構においては、平成13年度から東京都に「創業サポートセンター」を、平成15年度からは大阪市に「関西創業サポートセンター」を開設し、創業や新分野展開に関する相談、訓練の実施及び開業に向けた教育訓練機関での座学の訓練や開業希望分野の事業所に委託した実習形式の職業訓練を実施しているところである。
また、平成17年度からは、これらに加えて、地域における創業を支援するため、創業に必要な基本的な知識等の講習と、事業計画策定、事業計画に係る分野での企業内実習訓練を内容とした事業を都道府県に委託して実施することとしているところである。
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、これら施策の周知に努めるとともに、職業安定機関で実施している助成金、産業政策として実施されている開業支援施策等と相まって効果的かつ総合的な支援が図られるよう配慮する。
ウ 「私のしごと館」の活用
(独)雇用・能力開発機構が設置する「私のしごと館」(関西文化学術研究都市(京都府精華・西木津地区))は、(1)展示・体験設備等による職業体験機会の提供、(2)総合的な職業情報の提供(インターネットによる館外への提供を含む)、(3)キャリア形成に関する相談・援助、(4)キャリア形成に関する研修・セミナー、(5)若年者のキャリア形成支援に関するプログラム・ツールの開発といった事業を実施しており、若年者を中心としたキャリア形成を総合的に支援する中核的な拠点である。
都道府県労働局及び公共職業安定所においては、同館を若年者に対する職業相談や求人説明会、集団面接会等各種イベントの場として活用するほか、若年者を支援する立場にある教師、家庭、企業の雇用管理担当者及び関係行政機関の担当者等に対してその利用について積極的に勧奨を行う。
エ キャリア・コンサルタントの活用
労働者の主体的なキャリア形成の促進や求人・求職の的確な結合を図るため、キャリア・コンサルタントを平成14年度以降、民間機関と公的機関をあわせ、5年間で5万人を目標として養成を推進しているところである。また、平成16年度以降は、若年者向けのキャリア・コンサルタントの養成を行っているところである。
キャリア・コンサルタントについては、平成17年度も公共職業安定所等に能力開発支援アドバイザーの配置を行うこととしているところであり、公共職業安定所においては、職業相談において、その積極的活用を図る。また、キャリア・コンサルティングの技法については、就職支援等に有効な知識・技能であることから、公共職業安定所の職員や相談員が積極的にキャリア・コンサルティング養成講座を受講及び指定試験を受験することを奨励するとともに、相談員等の採用に際しては、指定試験の合格者について配慮する。
オ 人材育成地域協議会との連携
労働者が多様な教育訓練を受けることができるシステム等を構築していくために中央に「人材育成会議」を設置し、総合的な教育システムの整備等に向けた取組を推進しているところである。また、都道府県ごとに「人材育成地域協議会」を設置(事務局は(独)雇用・能力開発機構の各都道府県センター)し、若年者雇用問題検討会議との合同開催の下、地域の教育・訓練の資源を社会人の能力開発に総合的に活用するための具体的な協議を行っているところである。
都道府県労働局においては、これらの会議等を活用し、都道府県労働局において把握している企業の人材ニーズ等の情報提供、訓練コース設定に関する提案等を積極的に行い、今後とも人材育成と雇用の促進に努める。
カ 勤労青少年福祉対策の推進
従来は、国、都道府県及び市町村の連携の下で在職青少年を対象に有意義な職業生活の実現のための余暇活動の充実に重点を置いた施策を推進してきたが、地域の実情に応じた若年者対策を実施することが重要となってきていることを踏まえ、平成16年度より職業意識啓発、職業的自立支援を推進しているところである。
都道府県労働局においては、勤労青少年ホーム設置市町村をはじめとする地域のニーズを把握しつつ、必要な場合には当該市町村事業への協力を行うなど適切な行政の推進に努める。
第4 地方労働行政展開に当たっての基本的対応
1 総合的労働行政機関としての機能(総合性)の発揮
都道府県労働局における労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政がそれぞれの専門性を一層発揮しつつ、厳しさの残る雇用情勢下での労働条件の確保、雇用の安定等三行政が連携して取り組む必要のある課題や、少子・高齢化の下での働き方の見直しや仕事と子育ての両立支援等それぞれの行政分野の枠組みを超えて一体となった対応が必要となる課題も増加していることから、こうした課題について、三行政の連携をより一層密にし、労働保険適用徴収業務や総合労働相談業務も含め、総合労働行政機関としての機能を発揮していく必要がある。
複数の行政分野による対応が求められている課題について、都道府県労働局内関係部室の連携、労働基準監督署内又は公共職業安定所内の関係部門間の連携を図り、局署所が一体となって機動的かつ的確な対応を図る。
また、それぞれの重点課題への対応に当たっては、他の行政分野において実施される集団指導、説明会など事業主や労働者が一堂に会する場を積極的に活用し、合同開催とするなど効果的・効率的な方策を講ずるものとする。
こうした取組を推進するため、都道府県労働局内の各部室並びに管内の労働基準監督署及び公共職業安定所で実施を予定している行事等についての情報を相互に共有し活用するとともに、部局内の会議について、創意工夫をこらした業務展開の在り方、行政間連携方策等を検討する場として機能するよう活用する。
2 計画的・効率的な行政運営
(1) 計画的な行政運営
都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所における行政運営に当たって、各行政分野ごとの課題及び分野横断的な課題について的確に対応していくため、各地域の実情を踏まえた重点施策を盛り込んだ行政運営方針を策定し、これに基づいて計画的な行政運営に努める。
また、行政運営方針等に基づき、業務運営の進捗状況を定期的に分析し、当初の目標に沿った実施状況となっているかフォローアップを行うよう努める。
(2) 事務の簡素合理化と業務運営の重点化
国の行政組織等の簡素・効率化については、中央省庁等改革以来の行政の構造改革を着実に推進することが求められており、地方労働行政もこうした趣旨を踏まえて、行政事務の簡素合理化や行政需要の変化に対応した業務運営の見直しを図る必要がある。このため、
第一に、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所において、これまでにも増して独自の工夫を凝らして事務の簡素合理化を進める。
第二に、経済社会の構造的な変化に伴い、労働行政における課題が増大するとともに複雑困難化する中で、都道府県労働局を中心として時々の地方労働行政における重要かつ困難な課題へ対応するため、限りある行政資源を集中的に投入するなどそれぞれの行政分野に応じて業務運営の重点化を強力に推進する。
第三に、庶務関係業務等の都道府県労働局への集中化について着実に推進することにより、事務の効率化を図る。
(3) 既存の業務執行体制の在り方の見直し
都道府県労働局において、地域経済の動向も分析した上で、行政需要の変化を具体的な指標に基づいて把握し、その結果を踏まえて署所も含めた業務の運営方法や職員の配置等の業務執行体制について積極的に見直しを進めることはもとより、行政需要に的確に対応するための行政体制のあるべき姿についても検討し、可能なものから逐次実施する。
(4) 行政情報化への対応
都道府県労働局の情報化については、労働局総務情報システム、労働基準行政情報システム、職業安定行政システム及び雇用均等行政情報システム(平成17年度からは労働局総務情報システムのサブシステムとして稼働)等を積極的に活用して行政事務の情報化を推進する。
また、官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)及び電子入札システムを活用して、会計事務及び入・開札事務の適正化、効率化を図るとともに、労働局総務情報システムのサブシステムであるりん議・決裁システム及び電子公文書発行システムの活用により、都道府県労働局の行政事務の一層の効率化を図る。
国民等と行政との間の申請・届出等手続の電子化への対応に関しては、平成15年10月より労働保険適用徴収システムによる電子申請が稼働したほか、平成16年3月以降、都道府県労働局が所掌する申請・届出等手続について、インターネットを利用してオンラインで行えることとされたことを踏まえ、その的確な受付審査の実施により、国民の利便性・サービスの向上を図る。
情報セキュリティに関しては、厚生労働省情報セキュリティポリシーに基づき、本省システム及び各都道府県労働局独自システムの各情報セキュリティ実施手順等に従って、情報セキュリティの確保の徹底を図る。
3 地域に密着した行政の展開
(1) 地域の経済社会の実情の的確な把握
地方労働行政を取り巻く情勢及び課題を適切に踏まえた施策を企画、実施し、地域における行政ニーズに的確に応えていくため、都道府県労働局においては、総合労働相談コーナーに寄せられた相談をはじめ各部で得られた情報の活用に努める。また、関係行政機関及び関係団体等との連携を密にしつつ、地域経済情勢、地域における主要産業・企業の動向等を逐次、綿密に把握し、その的確な分析の上に立って適切な行政課題を設定し、それに対し、的確な行政運営に努める。
(2) 地方公共団体等との連携
雇用施策を始めとする労働施策について、国と地方公共団体はそれぞれが行う施策が密接な連携の下に円滑かつ効果的に実施されるよう相互に連絡・協力することが重要である。このため、業務執行面で恒常的に窓口同士の接触が不可欠となる業務の円滑化を一層進めるとともに、労働関係連絡会議の開催等都道府県労働局長と知事等都道府県幹部が労働施策全般にわたり、実のある意見交換を行う場を通じて、相互の連携基盤を強化する。
また、地域の実情に即した雇用施策の推進に係る具体的な連絡調整、情報交換等を行う場として、引き続き、雇用対策連絡調整会議を開催する。
さらに、市町村、他の地方支分部局等との連携にも十分配意する。
(3) 労使団体等関係団体との連携
地域における行政ニーズに即応した地方労働行政を展開するためには、労使団体の要望を適切に把握し、これを業務運営に適切に反映するとともに、都道府県労働局から労使団体に対して必要な働きかけを適時適切に行っていくことが必要である。このため、都道府県労働局長以下局の幹部が地域を代表する労使団体の幹部から労働行政全般にわたって率直な意見や要望を聞くとともに、幅広い闊達な意見交換を行う場である地域産業労働懇談会の開催や日常的な意見交換を通じて、労使団体との連携を図る。
また、地域の実情に応じた施策の効果的な推進を図るため、地方労働審議会において、公労使の意見をきめ細かく把握し、行政運営に的確に反映するよう努めるとともに、関係団体、有識者及び調査研究機関等とも緊密な連携を図る。
(4) 積極的な広報の実施
広報活動は、労使はもとより国民全体の労働行政に対する理解と信頼を高めるために重要であることから、適切な時期・手段により、必要に応じ関係団体等との連携を図りつつ、創意工夫を凝らした広報活動を積極的に推進する。
特に、都道府県労働局において、局幹部とマスコミ関係者との定期的な懇談の場を設けるとともに、各行政における重要施策、法制度の改正等の動向及び主要な統計資料等を分かりやすく適時適切に提供すること等を通じて、マスコミとの日常的な接触に努める。
また、重要施策等の周知に当たっては、都道府県・市町村や労使団体の広報誌等を活用し、幅広くかつ効果的な広報活動を推進する。
(5) 情報公開制度の適切かつ円滑な実施
都道府県労働局における情報公開制度の実施に当たっては、総務部企画室を中心として国民からの開示請求に対して適切に対応するとともに、「情報公開事務処理の手引」に基づく的確な処理に努めることにより、情報公開法の適正かつ円滑な運用を図る。
また、情報公開制度を適正かつ円滑に運用するために、各都道府県労働局の文書管理規程に基づく適正な文書管理に努めることにより、行政文書の保存期間内の保存を徹底するとともに、定期的に行政文書ファイル管理簿の適正な見直し及び整備を図ることにより、行政文書ファイル管理簿に記載する行政文書の一層の適正化を図る。
(6) 行政機関個人情報保護法の円滑な施行等
ア 行政機関個人情報保護法の円滑な施行
平成17年4月から「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」が施行されることに伴い、国の行政機関においては、開示請求、訂正請求及び利用停止請求に対し、同法に定めるものを除いて保有する個人情報の開示、訂正又は利用停止等を行うこととなることから、行政事務の適正かつ能率的な遂行はもとより、同法の適正かつ円滑な運用に資するためにも、個人情報の適正な管理を図る。
イ 雇用管理に関する個人情報の適切な取扱い
個人情報保護法及び同法に基づく「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」が、平成17年4月から施行されることから、総務部企画室及び関係部室において、同法及び同指針の内容等の周知徹底に努めるとともに、雇用管理に関する個人情報に係る苦情処理・相談受付や、個人情報取扱事業者に対する助言、勧告・命令等の手続を的確に実施する。
また、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」(平成16年10月29日付け基発第1029006号)の周知徹底を図る。
4 綱紀の保持と行政サービスの向上
(1) 綱紀の保持
労働行政は、労使を始め国民全体の信頼を得て初めて業務が円滑に施行されるものであり、その有する権限も大きいことから、国民の信頼と期待を裏切ることがないよう、管理者はもとよりすべての職員が綱紀の厳正な保持と徹底を図るよう、特に以下の点に万全を期する。
ア 国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程等を踏まえ、一層の綱紀の保持に努める。
イ 会計経理事務、徴収事務等金銭に関わる業務については、定められた事務処理手順の徹底、責任体制の明確化、職員相互の内部牽制体制の確立等による適正な事務処理の徹底を図る。さらに、契約事務の適正化、支払事務の一層の厳格化、公印等の適正な管理について、徹底する。
(2) 行政サービスの向上
国民から信頼される行政を実現するためには、利用者の立場に立った親切でわかりやすい窓口対応、事務処理の迅速化等行政サービスの向上に努める必要がある。平成14年度から平成16年度まで、「さわやか行政サービス推進委員会点検計画」を実施してきたところであるが、同計画の期間終了後も、引き続き、都道府県労働局、労働基準監督署及び公共職業安定所の窓口を中心に、職員の応接態度や事務処理の迅速化等行政サービスの改善に努める。