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ガラス繊維及びロックウールの労働衛生に関する指針と留意通達(平成5年1月)
石綿代替品として開発、使用されている各種繊維状物質のうち、使用量が多く使用範囲が比較的広いガラス繊維とロックウールについて、これらの製造又は取扱い工程における労働衛生管理の徹底を図る。
ガラス繊維及びロックウールの労働衛生に関する指針(平成5年1月) |
ガラス繊維及びロックウールの労働衛生に関する指針について ( 平成5年1月1日 基発第1号) |
石綿代替品として開発、使用されている各種繊維状物質の使用量は、近年大幅な増加傾向を示しており、最近は石綿の代替品としてだけでなく強化プラスチック素材等広い範囲で利用されている。しかしながら、これらの物質を製造し、又は取り扱う作業のうち、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)第2条第1項に該当する粉じん作業については、労働者のじん肺防止の観点から所要の措置を講じることとされているが、その他の作業については「石綿にかわる安全な繊維」と認識されていることもあり、必ずしも十分な労働衛生管理がなされていないのが現状である。 記 |
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第1 趣旨 この指針は、ガラス繊維、ロックウール及びそれらを含有する製品を製造し、又は取り扱う作業に関し、当該物質への暴露による労働者の健康障害を未然に防止するため、その製造又は取扱いに関する留意事項について定めたものであるが、事業者は、この指針に定める事項に限ることなく、作業管理、作業環境管理及び健康管理のための適切な措置を講じるよう努めるべきである。 なお、ガラス繊維、ロックウール及びそれらを含有する製品を製造し、又は取り扱う作業のうち粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号)第2条第1項に該当する作業については、当該規則に規定される所要の措置を講じることはもちろん、これに加えてガラス繊維、ロックウールの持つ有害性に着目して定めるこの指針を参考に労働者の健康障害防止のため必要な措置を講じることを求めるものである。 |
第1 趣旨 この指針は、ガラス繊維、ロックウール等を製造し、又は取り扱う作業のうち、粉じん則の該当作業については所定の管理を実施することはもちろん、これに加えて同規則該当作業以外の作業についても、当該物質の暴露による労働者の呼吸器、眼、皮膚等の健康障害を未然に防止するため、その製造及び取扱いに関する留意事項について定めたものであること。また、事業者に対しては、指針に定める事項に限ることなく、自主的に当該物質の有害性に着目した健康診断の実施等の措置を講じるよう努めることを求めたものであること。 |
第2 用語の意味等 本指針において、次の各号に掲げる用語の意味は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 (1) 「ガラス繊維」とは、珪(けい)砂、長石、石灰石、苦灰石、ソーダ灰、硼(ほう)砂等の混合物を主原料とし、これらの溶融、繊維化により製造される人造鉱物繊維をいい、製法及び特性の違いからガラス長繊維とグラスウールとに分類されること。 (2) 「ロックウール」(岩綿)とは、高炉スラグ、珪(けい)石、玄武岩等の岩石を主原料とし、これらの溶融・繊維化により製造され、保温・断熱等の用途に使用される人造鉱物繊維をいうこと。 (3) 「ガラス繊維・ロックウールを含有する製品」とは、ガラス繊維又はロックウールをその重量の (4) 「ガラス繊維、ロックウール等」とは、ガラス繊維、ロックウール及びガラス繊維又はロックウ (5) 「製造する作業」とは、ガラス繊維、ロックウール等を製造する工程において、別表第1に掲げる作業のいずれかに該当するものをいうこと。 (6) 「取り扱う作業」とは、ガラス繊維、ロックウール等を用いて行う作業であって、別表第2に掲げる作業のいずれかに該当するものをいうこと。 |
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第3 ガラス繊維、ロックウール等の製造等に係る設備等 ガラス繊維、ロックウール等を製造し、又は取り扱う作業を行うときには、労働者のガラス繊維、ロックウール等への暴露の低減を図るため、当該事業場におけるガラス繊維、ロックウール等の製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を踏まえ、必要に応じ、次に掲げる設備改善その他必要な措置を講ずること。 (1) 作業条件等の変更 |
第2 指針の内容 1 指針第3関係 労働者の暴露の低減を図るため、事業場におけるガラス繊維、ロックウール等の製造量及び取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を総合的に勘案し、指針の第3の(1)から(4)に掲げた措置の中から当該事業場において適切な措置を講じることとしたものであり、全ての項目について措置を講じることを求めたものではないこと。 指針第3の(1)の「作業条件等の変更」には、繊維の形状及び材質の変更、製品の表面にクラフト紙を張り付ける、表面処理を施す、コーティングする、包装する等の方法を選択することにより、粉じんの発散を防止する措置があること。 また、指針第3の(2)の「作業工程の改善」には、繊維化装置、切断装置等の粉じんの発散し難い構造への変更、切断の回数または箇所を減らすための措置、切断、穴あけ等の粉じんを発散させる工程を生じさせないための措置を選択すること等が含まれること。また、「その他必要な措置」には、隔離室での遠隔作業等が含まれること。 指針第3の(4)の「局所排気装置等」には、局所排気装置のほか、プッシュプル型換気装置及び全体換気装置が含まれること。 |
第4 管理 1 定期自主検査 局所排気装置、除じん装置等については、1年以内ごとに1回、定期に、自主検査を実施すること。 2 検査の記録の保存 1の定期自主検査を実施したときは、次の事項を記録して、3年間保存すること。 3 休憩設備 4 清掃の実施 5 立ち入り禁止の措置 6 洗浄設備 7 喫煙等の禁止 |
2 指針第4関係 ガラス繊維、ロックウール等の製造又は取扱いについて、指針第3の設備等の設置の他に講じるべき措置を示すものである。 指針第4の5の「周知」の手段には、作業場への掲示又は関係者への指示等によるものが含まれるものであること。また、指針第4の7の喫煙の禁止は、経口による暴露防止の観点から定めたものであること。なお、その周知については、作業場への掲示又は関係者への指示等によるものが含まれるものであること。 |
第5 測定 別表第1に掲げる作業又は別表第2の第1号の作業のうち、ガラス繊維、ロックウール等を動力(手持ち式又は可搬式動力工具によるものを除く。)により切断し、研磨し、又は仕上げをする場所における作業を行う屋内作業場については次の措置を講ずること。 (1) 測定場所の設定、測定点等については作業環境測定基準(昭和51年労働省告示第46号)を参考に、 ガラス繊維又はロックウールの空気中の濃度を6月以内ごとに1回、定期に、作業環境測定士に測定させること。 (2) (1)による測定を実施したときは、その都度、次の事項を記録して、これを保存すること。 イ 測定年月日 |
3 指針第5関係 測定は、当面、作業環境の状態とその推移を把握するために実施すれば足りるものであること。また、測定にあたっては計数法又は重量法の何れの方法によるものでも差し支えないものであること。 |
第6 保護具 発生源の密閉設備若しくは、局所排気装置等の措置を講じることが困難な場合又は臨時の作業の場所に対処するため、次のような保護具を備え、必要に応じて使用させるとともに適切な保守管理等を行うこと。 1 種類 (1) 保護眼鏡等 (2) 保護衣等 (3) 呼吸用保護具 2 保守・管理 前項に掲げる保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持すること。 |
4 指針第6関係 指針第6の1の(1)の「労働者の危険防止の趣旨に反する場合」には保護具の使用が視界の不良を招き、その結果として足場からの転落等の危険が増大する場合等が含まれること。 |
第7 特殊な作業等の管理 1 吹き付け作業 2 製品の加工等の作業 別表第2の第1号に掲げる作業(動力による裁断等を行う場合に限る。)に労働者を従事させるときは、当該作業に係る粉じんを減少させるため、できるだけ粉じんの発散しにくい方法により行うこと。 3 破砕、除去、解体等の作業 |
5 指針の第7関係 指針第7の2の「できるだけ粉じんの発散しにくい方法」には、除じん装置付き電動丸のこを使用することが含まれること。なお、この場合、防じんマットを併用すると効果的であること。 |
第8 作業標準の作成 ガラス繊維、ロックウール等を製造し、又は取り扱う作業に労働者を従事させるときは、当該作業に係る労働者のガラス繊維、ロックウール等への暴露による健康障害を防止するため、次の事項について作業標準を定め、これにより作業を行わせること。 (1) 発じん及び暴露が出来るだけ少なくなるような作業方法 |
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第9 労働衛生教育 平成3年1月21日付け基発第39号「安全衛生教育の推進について」の3の(1)に基づき、「特別教育に準じた教育」としてガラス繊維、ロックウール等を製造し、又は取り扱う業務に従事している労働者及び当該業務に従事させることとなった労働者に対して行う教育は、次の事項について行うこと。 (1) ガラス繊維、ロックウール等の粉じんの発散防止及び作業場の換気の方法 |
6 指針の第9関係 指針第9の(1)の「粉じんの発散防止の方法」には、可能な限り湿潤化すること、発じんの少ない工具の選択等が含まれること。 |
第10 作業等の記録 ガラス繊維、ロックウール等を製造し、又は取り扱う作業に常時従事する労働者について、1年を越えない期間ごとに次の事項を記録し、これを保存すること。 (1) 労働者の氏名 |
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第11 表示 ガラス繊維、ロックウール等を容器に入れ、若しくは包装して、譲渡し、又は提供する場合には、当該容器若しくは包装に次の事項を表示するか、又は当該事項を記載した文書を相手方に交付すること。 (1) 名称 |
7 指針の第11関係 表示事項のうち、指針第11の(1)の「名称」は、商品名で差し支えないこと。 また、指針の「含有量」は、重量パーセントで表示すること。この場合、10パーセント程度の範囲で表示して差し支えないこと。なお、「含有量」の表示は、当該製品が特許法に基づく特許出願中である等の合理的な理由がある場合は、その含有量を記載しなくても差し支えないこと。 指針の第11の(4)の「作成者」は、法人にあっては当該法人をいうものであること。 |
別表第1 1 ガラス繊維又はロックウールを製造する工程において、原料を繊維化し、集綿し、粒状化し、切断し、又は梱包する場所における作業。 2 ガラス繊維又はロックウールを原料又は材料として使用するものを製造する工程において、ガラス繊維又はロックウール又はこれらを含むものを混合し、混入し、切断し、研磨し、又は仕上げする場所における作業。
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別表第2 1 ガラス繊維、ロックウール等の加工作業において、ガラス繊維、ロックウール等を切断し、研磨し、又は仕上げする場所における作業。ただし、ガラス繊維を含有する製品のうちガラス長繊維のみを含有する製品であって、樹脂等により固化されているものの加工にあっては、動力を用いて切断し、研磨し、又は仕上げする場所における作業に限る。 2 ロックウールを建築物の柱等として使用されている鉄骨等へ吹き付ける場所における作業。 3 前記2の吹き付け作業に用いるロックウールを容器から取り出し、解きほぐし、又は混合する場所における作業。 4 ガラス繊維、ロックウール等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の除去、破砕、解体等を行う場所における作業。 5 グラスウール又はロックウールを建築物の屋根裏等に断熱材として吹き込む場所における作業。 6 前記5の吹き込み作業に用いるグラスウール又はロックウールを容器から取り出し、又は解きほぐす場所における作業。 |