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(平成15年5月9日基発第0509001号)
職場における喫煙対策については、平成8年2月21日付け基発第75号「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(以下「75号通達」という。)により、その推進に努めてきたところであり、その結果、事業場における喫煙対策の取組が増加する等一定の成果が得られているところである。
記
1 設備対策としては、75号通達では、喫煙室又は喫煙コーナー(以下「喫煙室等」という。)の設置等を行うこととされていたが、新ガイドラインでは、受動喫煙を確実に防止する観点から、可能な限り、非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨することとしたこと。
2 喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」としては、75号通達では、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式又はたばこの煙を除去して屋内に排気する方式(空気清浄装置)のいずれかの方式によることとされていたが、新ガイドラインでは、空気清浄装置はガス状成分を除去できないという問題点があることから、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨することとしたこと。
やむを得ない措置として、空気清浄装置を設置する場合には、換気に特段の配慮をすることが必要である旨を明記したこと。
別添1
職場における喫煙対策のためのガイドライン
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別添2 職場における喫煙対策のためのガイドラインの解説 |
1 基本的考え方 喫煙による健康への影響に関する社会的関心が高まる中で、自らの意思とは関係なく、環境中のたばこの煙を吸入すること(以下「受動喫煙」という。)による非喫煙者の健康への影響が報告され、また、非喫煙者に対して不快感、ストレス等も与えていることが指摘されており、職場における労働者の健康の確保や快適な職場環境の形成の促進の観点から、受動喫煙を防止するための労働衛生上の対策が一層求められている。
職場における喫煙対策は組織の中で実施すべきものであることから、喫煙対策についての経営首脳である者(以下「経営首脳者」という。)、管理職にある者(以下「管理者」という。)及び労働者が協力して取り組むことが重要であり、それぞれ次の役割を果たすよう努めること。
喫煙対策を推進するに当たっては、職場における喫煙の実態、職場の空気環境の測定結果、喫煙に関する労働者の意見等の把握により、喫煙についての現状とその問題点を明確にするとともに、その問題点を解決する具体的な方法等について、当面の計画及び中長期的な計画を策定すること。
喫煙問題を喫煙者と非喫煙者の個人間の問題として、当事者にその解決を委ねることは、喫煙者と非喫煙者の人間関係の悪化を招くなど、問題の解決を困難にする可能性がある。
施設・設備面の対策として、喫煙室等の設置等を行うこと。
6 職場の空気環境 たばこの煙が職場の空気環境に及ぼしている影響を把握するため、事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)に準じて、職場の空気環境の測定を行い、浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下及び一酸化炭素の濃度を10ppm以下とするように必要な措置を講じること。また、喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの漏れを防止するため、非喫煙場所と喫煙室等との境界において喫煙室等へ向かう気流の風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講じること。
事業者は、管理者や労働者に対して、受動喫煙による健康への影響、喫煙対策の内容、喫煙行動基準等に関する教育や相談を行い、喫煙対策に対する意識の高揚を図ること。
喫煙対策の担当部課等が定期的に喫煙対策の推進状況及び効果を評価すること。
(1) 喫煙者と非喫煙者の相互理解 |
1について 職場における喫煙に関して問題となるのは、非喫煙者の受動喫煙であり、労働者の健康の確保及び快適な職場環境の形成の促進の二つの観点からの労働衛生上の対策が求められているものである。
2について 喫煙対策を実効のあるものにするには、経営首脳者や管理者が喫煙対策に関心を持って、それぞれの役割を果たすことに加え、労働者の積極的な参加が必要である。
3について 経営首脳者の指導の下に計画を実施することとしているのは、組織内で権限を持って行動できる者である経営首脳者の取組が不可欠であるからである。
4について 衛生委員会等とは、衛生委員会や安全衛生委員会をいうが、衛生委員会の設置が義務付けられていない事業場においては、労使懇談会等職場の衛生関係事項について話し合われる場をいう。また、喫煙対策の担当部課とは、総務課や健康管理を担当する部課が該当する。
5について 有効な空間分煙の推進のためには施設・設備面の対策が必要であり、このための基本的な対策を示したものである。「喫煙室」とは、出入口以外には非喫煙場所に対する開口面がほとんどない独立した喫煙のための部屋のことであり、また、「喫煙コーナー」とは、天井から吊り下げた板等による壁、ついたて等によって区画された喫煙可能な区域である。これらは、基本的に喫煙室等から非喫煙場所へたばこの煙が及ばない措置が講じられているものであるが、より確実にたばこの煙やにおいの漏れを防止する観点から、喫煙室を選択する方が望ましい。
たばこの煙には様々な物質が含まれているが、空気環境への影響を判定するものとしては浮遊粉じん、一酸化炭素が代表的なものであるので、これらについて測定するものとし、基準となる空気環境中の濃度を示した。また、たばこの煙の漏れを判定するものとしては、非喫煙場所から喫煙室等への気流の風速があり、これについて測定するものとし、基準となる風速を示した。
8について 喫煙室等の設置時及び使用開始後定期に、喫煙対策の担当部課等において、喫煙室の設置状況、喫煙行動基準の順守状況及び機器の保守管理の実施状況を評価するとともに、本ガイドラインに基づき非喫煙場所及び喫煙室等の内部並びに非喫煙場所と喫煙室等との境界において浮遊粉じんの濃度、一酸化炭素の濃度及び気流の風速が基準値を満たしていること等を確認することにより喫煙対策の効果を評価する必要がある。
別紙について 一酸化炭素の濃度の測定に関して、「検知管と同等以上の性能を有する機器」としては、エレクトロケミカルセンサーを用いたもの及び定電位電解法によるものがある。
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別紙 職場の空気環境の測定方法等
1 測定の目的
喫煙対策を実施する前の職場の空気環境の把握並びに喫煙対策の効果の把握及び維持管理を目的として、職場の空気環境中の浮遊粉じんの濃度、一酸化炭素の濃度及び非喫煙場所から喫煙室等への気流の風速の測定を行う。
2 測定の種類等
測定には、喫煙対策の実施前に行うもの、喫煙対策の実施後に行うもの及び喫煙対策の効果を維持管理するために行うものがある。
(1) 喫煙対策の実施前に行う測定
喫煙対策の実施前に行う測定は、喫煙が行われている室等を対象として通常の勤務状態の日について1日以上実施すること。
なお、当該室において喫煙者数の増減がある場合には、喫煙者数が多い日と少ない日について、それぞれ1日以上実施すること。
(2) 喫煙対策の実施後に行う測定
喫煙対策の実施後に、その効果を確認するために行う測定は、喫煙対策実施後において、非喫煙場所及び喫煙室等の内部並びに非喫煙場所と喫煙室等との境界を対象として、また、気流の風速の測定は、非喫煙場所と喫煙室等との境界を対象として、通常の勤務状態の日について1日以上実施すること。
また、喫煙対策実施後に喫煙対策機器等を変更した場合についても同様に実施すること。
(3) 喫煙対策の効果を維持管理するために行う測定
喫煙対策の効果を維持管理するための測定は、非喫煙場所及び喫煙室等の内部並びに非喫煙場所と喫煙室等との境界を対象として、また、気流の風速の測定は、非喫煙場所と喫煙室等との境界を対象として、四季による室内の温度の変化の影響等を考慮して3月以内ごとに1日以上、定期的に測定日を設けて実施すること。また、労働者等から特に測定の希望のあった場合には、上記(2)に準じて実施すること。
なお、測定の結果が良好な状態で1年以上継続した場合は、衛生委員会等により検討を行い、適宜、測定実施頻度を減らし、又は非喫煙場所の測定を省略することができること。
3 測定回数
事務室については、その通常の勤務時間中において、一定の時間の間隔ごとに、1日3回以上測定を行うこと。この場合、始業後おおむね1時間、終業前おおむね1時間及びその中間の時点(勤務時間中)に実施することが望ましいこと。
また、経時的な変化等を把握するためには、測定回数を多くすることが望ましいこと。
なお、喫煙室等及び事務室以外の非喫煙場所については、その室等の使用中に1回以上測定を行うこと。
4 測定点
測定点は、原則として室内の床上約1.2mから約1.5mまでの間の一定した高さにおいて、室等における事務機器等の設置状況、空気調和設備の方式、床面積等の状況に応じて設定すること。また、測定点は、1室について5点以上設定することとするが、喫煙室については、この限りでないこと。
非喫煙場所から喫煙室等への気流の風速の測定点は、非喫煙場所と喫煙室等の主たる開口面について、上部、中央部、下部の3点を設定すること。
なお、たばこの煙が滞留している箇所又は労働者等から特に測定の希望があった箇所については、上記とは別に測定点を設定すること。
5 評価等
各測定点における各測定回ごとの測定値によって、経時的な変化等を把握し、浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m以下、一酸化炭素濃度を10 ppm以下及び非喫煙場所から喫煙室等に向かう気流の風速を0.2m/s以上とするように職場の管理を行うこと。
なお、測定結果は別添の記録用紙を参考として記録し、3年間保存すること。
6 測定機器
浮遊粉じんの濃度の測定については較正された相対濃度計又は分光ろ紙じん埃計を、一酸化炭素の濃度については検知管又はこれと同等以上の性能を有する機器を、また、風速については一般用風速計を用いて測定すること。なお、浮遊粉じんの濃度の測定に相対濃度計を用いる場合は、1回の測定につき、1分間隔で連続10分間以上測定することとし、質量濃度変換係数を用いて濃度に換算すること。
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