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記
第1 事業者が留意する事項
1 全体的な留意事項
事業者は防毒マスクの選択、使用等に当たって、次に掲げる事項について特に留意すること。
(1) 事業者は、衛生管理者、作業主任者等の労働衛生に関する知識及び経験を有する者のうちから、各作業場ごとに防毒マスクを管理する保護具着用管理責任者を指名し、防毒マスクの適正な選択、着用及び取扱方法について必要な指導を行わせるとともに、防毒マスクの適正な保守管理に当たらせること。
(2) 事業者は、作業に適した防毒マスクを選択し、防毒マスクを着用する労働者に対し、当該防毒マスクの取扱説明書、ガイドブック、パンフレット等(以下「取扱説明書等」という。)に基づき、防毒マスクの適正な装着方法、使用方法及び顔面と面体の密着性の確認方法について十分な教育や訓練を行うこと。
2 防毒マスクの選択に当たっての留意事項
防毒マスクの選択に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 防毒マスクは、機械等検定規則(昭和47年労働省令第45号)第14条の規定に基づき吸収缶(ハロゲンガス用、有機ガス用、一酸化炭素用、アンモニア用及び亜硫酸ガス用のものに限る。)及び面体ごとに付されている型式検定合格標章により、型式検定合格品であることを確認すること。
(2) 次の事項について留意の上、防毒マスクの性能が記載されている取扱説明書等を参考に、それぞれの作業に適した防毒マスクを選ぶこと。
ア 作業内容、作業強度等を考慮し、防毒マスクの重量、吸気抵抗、排気抵抗等が当該作業に適したものを選ぶこと。具体的には、吸気抵抗及び排気抵抗が低いほど呼吸が楽にできることから、作業強度が強い場合にあっては、吸気抵抗及び排気抵抗ができるだけ低いものを選ぶこと。
イ 作業環境中の有害物質(防毒マスクの規格第1条の表下欄に掲げる有害物質をいう。以下同じ。)の種類、濃度及び粉じん等の有無に応じて、面体及び吸収缶の種類を選ぶこと。その際、次の事項について留意すること。
(ア) 作業環境中の有害物質の種類、発散状況、濃度、作業時のばく露の危険性の程度を着用者に理解させること。
(イ) 作業環境中の有害物質の濃度に対して除毒能力に十分な余裕のあるものであること。
なお、除毒能力の高低の判断方法としては、防毒マスク及び防毒マスク用吸収缶に添付されている破過曲線図から、一定のガス濃度に対する破過時間(吸収缶が除毒能力を喪失するまでの時間)の長短を比較する方法があること。
例えば、次の図に示す吸収缶A及び同Bの破過曲線図では、ガス濃度1%の場合を比べると、破過時間はAが30分、Bが55分となり、Aに比べてBの除毒能力が高いことがわかること。
(ウ) 有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、有機ガスの種類により防毒マスクの規格第7条に規定される除毒能力試験の試験用ガスと異なる破過時間を示す場合があること。
特に、メタノール、ジクロルメタン、二硫化炭素、アセトン等については、試験用ガスに比べて破過時間が著しく短くなるので注意すること。
(エ) 使用する環境の温度又は湿度によっては、吸収缶の破過時間が短くなる場合があること。
有機ガス用防毒マスクの吸収缶は、使用する環境の温度又は湿度が高いほど破過時間が短くなる傾向があり、沸点の低い物質ほど、その傾向が顕著であること。また、一酸化炭素用防毒マスクの吸収缶は、使用する環境の湿度が高いほど破過時間が短くなる傾向にあること。
(オ) 防毒マスクの吸収缶の破過時間を推定する必要があるときには、当該吸収缶の製造者等に照会すること。
(カ) ガス又は蒸気状の有害物質が粉じん等と混在している作業環境中では、粉じん等を捕集する防じん機能を有する防毒マスクを選択すること。その際、次の事項について留意すること。
(i) 防じん機能を有する防毒マスクの吸収缶は、作業環境中の粉じん等の種類、発散状況、作業時のばく露の危険性の程度等を考慮した上で、適切な区分のものを選ぶこと。なお、作業環境中に粉じん等に混じってオイルミスト等が存在する場合にあっては、液体の試験粒子を用いた粒子捕集効率試験に合格した吸収缶(L1,L2及びL3)を選ぶこと。また、粒子捕集効率が高いほど、粉じん等をよく捕集できること。
(ii) 吸収缶の破過時間に加え、捕集する作業環境中の粉じん等の種類、粒径、発散状況及び濃度が使用限度時間に影響するので、これらの要因を考慮して選択すること。なお、防じん機能を有する防毒マスクの吸収缶の取扱説明書等には、吸気抵抗上昇値が記載されているが、これが高いものほど目詰まりが早く、より短時間で息苦しくなることから、使用限度時間は短くなること。
(iii) 防じん機能を有する防毒マスクの吸収缶のろ過材は、一般に粉じん等を捕集するに従って吸気抵抗が高くなるが、S1、S2又はS3のろ過材では、オイルミスト等が堆積した場合に吸気抵抗が変化せずに急激に粒子捕集効率が低下するもの、また、L1、L2又はL3のろ過材でも多量のオイルミスト等の堆積により粒子捕集効率が低下するものがあるので、吸気抵抗の上昇のみを使用限度の判断基準にしないこと。
(キ) 2種類以上の有害物質が混在する作業環境中で防毒マスクを使用する場合には次によること。
(i) 作業環境中に混在する2種類以上の有害物質についてそれぞれ合格した吸収缶を選定すること。
(ii) この場合の吸収缶の破過時間については、当該吸収缶の製造者等に照会すること。
(3) 防毒マスクの顔面への密着性の確認
着用者の顔面と防毒マスクの面体との密着が十分でなく漏れがあると有害物質の吸入を防ぐ効果が低下するため、防毒マスクの面体は、着用者の顔面に合った形状及び寸法の接顔部を有するものを選択すること。そのため、以下の方法又はこれと同等以上の方法により、各着用者に顔面への密着性の良否を確認させること。
まず、作業時に着用する場合と同じように、防毒マスクを着用させる。なお、保護帽、保護眼鏡等の着用が必要な作業にあっては、保護帽、保護眼鏡等も同時に着用させる。その後、いずれかの方法により密着性を確認させること。
ア 陰圧法
防毒マスクの面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて吸気口をふさぐ。
息を吸って、防毒マスクの面体と顔面との隙間から空気が面体内に漏れ込まず、面体が顔面に吸いつけられるかどうかを確認する。
イ 陽圧法
防毒マスクの面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて排気口をふさぐ。息を吐いて、空気が面体内から流出せず、面体内に呼気が滞留することによって面体が膨張するかどうかを確認する。
3 防毒マスクの使用に当たっての留意事項
防毒マスクの使用に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 防毒マスクは、酸素濃度18%未満の場所では使用してはならないこと。このような場所では給気式呼吸用保護具を使用させること。
(2) 防毒マスクを着用しての作業は、通常より呼吸器系等に負荷がかかることから、呼吸器系等に疾患がある者については、防毒マスクを着用しての作業が適当であるか否かについて、産業医等に確認すること。
(3) 防毒マスクを適正に使用するため、防毒マスクを着用する前には、その都度、着用者に次の事項について点検を行わせること。
ア 吸気弁、面体、排気弁、しめひも等に破損、き裂又は著しい変形がないこと。
イ 吸気弁、排気弁及び弁座に粉じん等が付着していないこと。
なお、排気弁に粉じん等が付着している場合には、相当の漏れ込みが考えられるので、陰圧法により密着性、排気弁の気密性等を十分に確認すること。
ウ 吸気弁及び排気弁が弁座に適切に固定され、排気弁の気密性が保たれていること。
エ 吸収缶が適切に取り付けられていること。
オ 吸収缶に水が侵入したり、破損又は変形していないこと。
カ 吸収缶から異臭が出ていないこと。
キ ろ過材が分離できる吸収缶にあっては、ろ過材が適切に取り付けられていること。
ク 未使用の吸収缶にあっては、製造者が指定する保存期限を超えていないこと。 また、包装が破損せず気密性が保たれていること。
ケ 予備の防毒マスク及び吸収缶を用意していること。
(4) 防毒マスクの使用時間について、当該防毒マスクの取扱説明書等及び破過曲線図、製造者等への照会結果等に基づいて、作業場所における空気中に存在する有害物質の濃度並びに作業場所における温度及び湿度に対して余裕のある使用限度時間をあらかじめ設定し、その設定時間を限度に防毒マスクを使用させること。
また、防毒マスク及び防毒マスク用吸収缶に添付されている使用時間記録力ードには、使用した時間を必ず記録させ、使用限度時間を超えて使用させないこと。
なお、従来から行われているところの、防毒マスクの使用中に臭気等を感知した場合を使用限度時間の到来として吸収缶の交換時期とする方法は、有害物質の臭気等を感知できる濃度がばく露限界濃度より著しく小さい物質に限り行っても差し支えないこと。以下に例を掲げる。
アセトン(果実臭)
クレゾール(クレゾール臭)
酢酸イソブチル(エステル臭)
酢酸イソプロピル(果実臭)
酢酸エチル(マニュキュア臭)
酢酸ブチル(バナナ臭)
酢酸プロピル(エステル臭)
スチレン(甘い刺激臭)
1-ブタノール(アルコール臭)
2-ブタノール(アルコール臭)
メチルイソブチルケトン(甘い刺激臭)
メチルエチルケトン(甘い刺激臭)
(5) 防毒マスクの使用中に有害物質の臭気等を感知した場合は、直ちに着用状態の確認を行わせ、必要に応じて吸収缶を交換させること。
(6) 一度使用した吸収缶は、破過曲線図、使用時間記録カード等により、十分な除毒能力が残存していることを確認できるものについてのみ、再使用させて差し支えないこと。
ただし、メタノール、二硫化炭素等破過時間が試験用ガスの破過時間よりも著しく短い有害物質に対して使用した吸収缶は、吸収缶の吸収剤に吸着された有害物質が時間と共に吸収剤から微量ずつ脱着して面体側に漏れ出してくることがあるため、再使用させないこと。
(7) 防毒マスクを適正に使用させるため、顔面と面体の接顔部の位置、しめひもの位置及び締め方等を適切にさせること。また、しめひもについては、耳にかけることなく、後頭部において固定させること。
(8) 着用後、防毒マスクの内部への空気の漏れ込みがないことをフィットチェッカー等を用いて確認させること。
なお、密着性の確認方法は、上記2の(3)に記載したいずれかの方法によること。
(9) 次のような防毒マスクの着用は、有害物質が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるため、行わせないこと。
ア タオル等を当てた上から防毒マスクを使用すること。
イ 面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用すること。
ウ 着用者のひげ、もみあげ、前髪等が面体の接顔部と顔面の間に入り込んだり、排気弁の作動を妨害するような状態で防毒マスクを使用すること。
(10) 防じんマスクの使用が義務付けられている業務であって防毒マスクの使用が必要な場合には、防じん機能を有する防毒マスクを使用させること。
また、吹付け塗装作業等のように、防じんマスクの使用の義務付けがない業務であっても、有機溶剤の蒸気と塗料の粒子等の粉じんとが混在している場合については、同様に、防じん機能を有する防毒マスクを使用させること。
4 防毒マスクの保守管理上の留意事項
防毒マスクの保守管理に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 予備の防毒マスク、吸収缶その他の部品を常時備え付け、適時交換して使用できるようにすること。
(2) 防毒マスクを常に有効かつ清潔に保持するため、使用後は有害物質及び湿気の少ない場所で、吸気弁、面体、排気弁、しめひも等の破損、き裂、変形等の状況及び吸収缶の固定不良、破損等の状況を点検するとともに、防毒マスクの各部について次の方法により手入れを行うこと。ただし、取扱説明書等に特別な手入れ方法が記載されている場合は、その方法に従うこと。
ア 吸気弁、面体、排気弁、しめひも等については、乾燥した布片又は軽く水で湿らせた布片で、付着した有害物質、汗等を取り除くこと。
また、汚れの著しいときは、吸収缶を取り外した上で面体を中性洗剤等により水洗すること。
イ 吸収缶については、吸収缶に充填されている活性炭等は吸湿又は乾燥により能力が低下するものが多いため、使用直前まで開封しないこと。
また、使用後は上栓及び下栓を閉めて保管すること。栓がないものにあっては、密封できる容器又は袋に入れて保管すること。
(3) 次のいずれかに該当する場合には、防毒マスクの部品を交換し、又は防毒マスクを廃棄すること。
ア 吸収缶について、破損若しくは著しい変形が認められた場合又はあらかじめ設定した使用限度時間に達した場合
イ 吸気弁、面体、排気弁等について、破損、き裂若しくは著しい変形を生じた場合又は粘着性が認められた場合
ウ しめひもについて、破損した場合又は弾性が失われ、伸縮不良の状態が認められた場合
(4) 点検後、直射日光の当たらない、湿気の少ない清潔な場所に専用の保管場所を設け、管理状況が容易に確認できるように保管すること。なお、保管に当たっては、積み重ね、折り曲げ等により面体、連結管、しめひも等について、き裂、変形等の異常を生じないようにすること。
なお、一度使用した吸収缶を保管すると、一度吸着された有害物質が脱着すること等により、破過時間が破過曲線図によって推定した時間より著しく短くなる場合があるので注意すること。
(5) 使用済みの吸収缶の廃棄にあっては、吸収剤に吸着された有害物質が遊離し、又は吸収剤が吸収缶外に飛散しないように容器又は袋に詰めた状態で廃棄すること。
第2 製造者等が留意する事項
防毒マスクの製造者等は、次の事項を実施するよう努めること。
1 防毒マスクの販売に際し、事業者等に対し、防毒マスクの選択、使用等に関する情報の提供及びその具体的な指導をすること。
2 防毒マスクの選択、使用等について、不適切な状態を把握した場合には、これを是正するように、事業者等に対し、指導すること。
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防毒マスクの規格
労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第四十二条の規定に基づき、防毒マスクの規格を次のように定める。
(適用範囲)
第一条 この告示に定める規格は、ガス若しくは蒸気又はこれらのものと混在する粉じんを吸入することにより人体に害を及ぼすおそれがある場所において使用する防毒マスクのうち、次の表の下欄に掲げる有害物質(これらのものと混在する粉じんを含む。)に対して使用する同表の上欄に掲げるものについて適用する。ただし、酸素濃度が一八パーセントに満たない場所又はガス若しくは蒸気の濃度が二パーセント(アンモニアにあっては、三パーセント)を超える場所において使用するものについては適用しない。
区分 |
有害物質 |
ハロゲンガス用防毒マスク |
ハロゲンのガス又は蒸気 |
有機ガス用防毒マスク |
有機化合物のガス又は蒸気 |
一酸化炭素用防毒マスク |
一酸化炭素 |
アンモニア用防毒マスク |
アンモニア |
亜硫酸ガス用防毒マスク |
亜硫酸ガス |
(防毒マスク等の種類)
第二条 防毒マスクは、次の表の下欄に掲げる形状及び使用の範囲により、それぞれ同表の上欄に掲げる種類に区分するものとする。
種 類 |
形状及び使用の範囲 |
隔離式防毒マスク |
吸収缶、連結管、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を連結管を通して吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が二パーセント(アンモニアにあっては、三パーセント)以下の大気中で使用するもの |
直結式防毒マスク |
吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が一パーセント(アンモニアにあっては、一・五パーセント)以下の大気中で使用するもの |
直結式小型防毒マスク |
吸収缶、吸気弁、面体、排気弁及びしめひもからなり、かつ、吸収缶によってガス又は蒸気をろ過した清浄空気を吸気弁から吸入し、呼気は排気弁から外気中に排出するものであって、ガス又は蒸気の濃度が〇・一パーセント以下の大気中で使用する非緊急用のもの |
種 類 |
形 状 |
全面形 |
顔面全体を覆うもの |
半面形 |
鼻及び口辺のみを覆うもの |
3 防毒マスクは、防じん機能を有するものと有しないものに区分するものとし、防じん機能を有する防毒マスクにあっては、その性能よりS一、S二、S三、L一、L二及びL三に区分するものとする。
(材料)
第三条 防毒マスクの各部に使用する材料は、次の各号に定めるところに適合するものでなければならない。
一 顔面に密着する部分については、皮膚に障害を与えないものであること。
二 吸収缶の内面については、吸収剤に腐食されないもの又は吸収剤に腐食されないよう十分な防腐処理が施されているものであること。
三 ろ過材については、人体に障害を与えないものであること。
四 通常の取扱いにおいて、き裂、変形その他の異常を生じないものであること。
(強度に係る試験)
第四条 防毒マスクの各部は、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、同表の中欄に掲げる試験方法による試験を行った場合に、それぞれ同表の下欄に掲げる条件に適合するものでなければならない。
区 分 |
試 験 方 法 |
条 件 |
しめひも取付部分及びしめひも |
(引張試験) |
いずれも破断又は離脱しないこと。 |
隔離式防毒マスクの連結管取付部分及び連結管 |
(引張試験) |
破断又は離脱しないこと。 |
(構造)
第五条 防毒マスクの構造は、次の各号に定めるところに適合するものでなければならない。
一 容易に破損しないものであること。
二 装着が簡単で、装着したときに異常な圧迫感又は苦痛を与えないものであること。
三 死積が著しく大きいものでないこと。
四 着用者の視野を著しく妨げるものでないこと。
五 全面形の面体を有するものにあっては、呼気によりアイピースが曇らないものであること。
六 吸収缶、吸気弁、排気弁又はしめひもが取り替えられる構造のものにあっては、当該吸収缶、吸気弁、排気弁又はしめひもが容易に取り替えることができるものであること。
七 着用者自身がその顔面と面体との密着性の良否を随時容易に検査できるものであること。
(構造)
第六条 防毒マスクの各部の構造は、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる条件に適合するものでなければならない。
区 分 |
条件 |
吸収缶 |
一 吸収剤がち密に、かつ、露出しないように詰められていること。 |
二 防じん機能を有する防毒マスクにあっては、粉じんを捕集するためのろ過材を具備していること。 |
|
吸気弁 |
微弱な呼吸に対して確実に、かつ、鋭敏に作動すること。 |
排気弁 |
一 微弱な呼吸に対して、弁及び弁座の乾湿の状態にかかわらず、確実に、かつ、鋭敏に作動すること。 |
二 内部と外部の圧力が平衡している場合に、面体の向きにかかわらず、閉鎖状態を保つこと。 |
|
三 外力による損傷が生じないように覆い等により保護されていること。 |
|
しめひも |
適当な長さ及び弾力性を有し、かつ、長さを容易に調節することができること。 |
連結管 |
一 適度な伸縮性を有し、種々の状態に曲げても通気に支障が生じないこと。 |
二 あご、腕等による圧迫があった場合でも通気に支障が生じないこと。 |
|
三 首の運動に支障が生じないような長さであること。 |
(性能に係る試験)
第七条 防毒マスク(吸収缶を除く。)の性能は、次の表の上欄に掲げる試験方法による試験を行った場合に、それぞれ同表の下欄に掲げる条件に適合するものでなければならない。
試験方法 | 条件 |
(気密試験) 隔離式防毒マスクにあっては面体と連結管とを連結した後排気弁及び連結管の他端を、直結式防毒マスク及び直結式小型防毒マスクにあっては排気弁及び面体の吸収缶連結部を、それぞれ密塞(そく)具でふさぎ、気密試験器に当該面体を装着し、その内部に九八〇パスカルに達するまでアンモニア含有空気を送気し、全体にフェノールフタレイン・アルコール水溶液でぬらした布をかけ、紅変の有無により漏気の有無を調べる。 |
漏気しないこと。 |
(吸気抵抗試験) 通気抵抗試験器に防毒マスク(吸収缶(吸気弁を備えた吸収缶については、吸気弁を含む。)を取り除いたもの)を装着し、通気抵抗試験器の吸気口から空気を毎分四〇リットルの流量で吸気した場合における防毒マスクの内外の圧力差を測定する。この場合において、連結管のある防毒マスクについては、当該連結管を一八〇度に曲げた場合について測定する。 |
圧力差が、隔離式防毒マスクにあっては七〇パスカル以下、直結式防毒マスク及び直結式小型防毒マスクにあっては五〇パスカル以下であること。 |
(排気抵抗試験) 通気抵抗試験器に防毒マスク(吸気口を密塞(そく)具でふさいだもの)を装着し、通気抵抗試験器の排気口から空気を毎分四〇リットルの流量で排気した場合における防毒マスクの内外の圧力差を測定する。 |
圧力差が八〇パスカル以下であること。 |
(排気弁の作動気密試験) 気密試験器に排気弁を装着し、空気を毎分一リットルの流量で吸引して排気弁の閉鎖による内部の減圧状態を調べ、次に内部の圧力を外部の圧力より一四七〇パスカル低下させて放置し、内部の圧力が常圧に戻るまでの時間を測定する。この場合において、気密試験器の内容積は、五〇立方センチメートルとする。 |
一 空気を吸引した場合に直ちに内部が減圧すること。 二 内部の圧力が常圧に戻るまでの時間が一五秒以上であること。 |
(二酸化炭素濃度上昇値試験) 摂氏二五度プラスマイナス五度の室内において、次の図に示す寸法の試験用人頭の顔面部に防毒マスクを装着した状態及び装着しない状態で、人工肺により一回当たり二・〇リットルプラスマイナス〇・一リットルの正弦波形の空気(呼気における空気にあっては、二酸化炭素の濃度が五・〇パーセントのものとする。)を毎分一五回、試験用人頭を通じて吸排気させながら、二酸化炭素濃度測定器により吸気における二酸化炭素の濃度(以下この表において「二酸化炭素濃度」という。)が一定となるまで測定する。 試験用人頭図(単位 ミリメートル) (省略) |
防毒マスクを装着した状態における二酸化炭素濃度と防毒マスクを装着しない状態における二酸化炭素濃度の差が、一・〇パーセント以下の値であること。 |
2 吸収缶の性能は、次の表の上欄に掲げる試験方法による試験を行った場合に、それぞれ同表の下欄に掲げる条件に適合するものでなければならない。
試験方法 |
条件 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(気密試験) |
漏気しないこと。 |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(通気抵抗試験) |
圧力差が、当該吸収缶を使用する防毒マスクの種類及び防じん機能の有無に応じて、次の表に掲げる値以下であること。
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|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(除毒能力試験)
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次の表の上欄に掲げる吸収缶の種類に応じて、同表の中欄に掲げる濃度に達するまでの時間が、それぞれ同表の下欄に掲げる時間以上であること。ただし、一酸化炭素用の隔離式防毒マスク用の吸収缶にあっては、試験開始後五分間以内で、未反応又は未吸着による試験ガスの未吸収がある場合には、吸収缶を通過した試験ガスの濃度が一〇〇p・p・mを超えないこと。
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|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(粒子捕集効率試験) 防じん機能を有する防毒マスクにあっては、次の各号に掲げる試験粒子の種類に応じて、試験粒子の濃度を測定し、次の式により粒子捕集効率を算定する。なお、粒径分布の中央値については、粒子数を基準にした中央値とする。
一 試験粒子が塩化ナトリウムの場合 粒子捕集効率測定器に装着した吸収缶の内側へ、塩化ナトリウム含有空気(塩化ナトリウムの粒径分布の中央値が〇・〇六マイクロメートル以上〇・一マイクロメートル以下で、その幾何標準偏差が一・八以下であって、かつ、塩化ナトリウムの濃度が一立方メートル当たり五〇ミリグラム以下で、その変動がプラスマイナス一五パーセント以下のものをいう。以下同じ。)を毎分八五リットルの流量で通じ、吸収缶に供給される塩化ナトリウムが一〇〇ミリグラムに達するまでの経過において、吸収缶通過前及び通過後の塩化ナトリウムの濃度を散乱光方式による塩化ナトリウム濃度測定器により連続的に測定する。 二 試験粒子がフタル酸ジオクチルの場合 粒子捕集効率測定器に装着した吸収缶の内側へ、フタル酸ジオクチル含有空気(フタル酸ジオクチルのミストの粒径分布のヰ央値が〇・一五マイクロメートル以上〇・二五マイクロメートル以下で、その幾何標準偏差が一・六以下であって、かつ、フタル酸ジオクチルの濃度が一立方メートル当たり一〇〇ミリグラム以下で、その変動がプラスマイナス一五パーセント以下のものをいう。)を毎分八五リットルの流量で通じ、吸収缶に供給されるフタル酸ジオクチルが二〇〇ミリグラムに達するまでの経過において、吸収缶通過前及び通過後のフタル酸ジオクチルの濃度を散乱光方式によるフタル酸ジオクチル濃度測定器により連続的に測定する。 |
一 試験粒子が塩化ナトリウムの場合
二 試験粒子がフタル酸ジオクチルの場合 粒子捕集効率が、常に次の表の上欄に掲げる吸収缶の種類に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる値以上であること。
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(表示等)
第八条 防毒マスク(吸収缶を除く。)は、次に掲げる事項を記載した印刷物が添付されたものでなければならない。
一 製造者名
二 型式の名称
三 使用上の注意事項
四 吸収缶が取り替えられる構造のものにあっては、取り付けることができる吸収缶の種類、型式の名称及び型式検定合格番号
2 吸収缶(防じん機能を有する防毒マスクに具備されるものであって、ろ過材が分離できるものにあっては、ろ過材を分離した吸収缶及びろ過材)は、見やすい箇所に製造者名及び製造年月が表示されているものでなければならない。
3 吸収缶は、次に掲げる事項を記載した印刷物が添付されたものでなければならない。
一 型式の名称
二 使用の範囲
三 使用上の注意事項
四 破過曲線図
五 使用時間記録カード
六 吸収抵抗上昇値(防じん機能を有する防毒マスクに限る。)
七 着用者自身がその面体との密着性の良否を容易に検査する方法
4 前項第六号の吸気抵抗上昇値は、粒子捕集効率測定器に装着した吸収缶へ塩化ナトリウム含有空気を通じ、吸収缶に塩化ナトリウムが一〇〇ミリグラム捕集されたときの内外の圧力差を毎分四〇リットルの流量で測定するものとする。
5 吸収缶は、次の表の上欄に掲げる種類に応じてそれぞれ同表の下欄に掲げる色により外部の側面が色分けされるとともに、色分け以外の方法によってその種類が表示されたものでなければならない。
種 類 |
色 |
ハロゲンガス用防毒マスク用の吸収缶 |
灰色及び黒色(二層に分けること) |
有機ガス用防毒マスク用の吸収缶 |
黒色 |
一酸化炭素用防毒マスク用の吸収缶 |
赤色 |
アンモニア用防毒マスク用の吸収缶 |
緑色 |
亜硫酸ガス用防毒マスク用の吸収缶 |
黄赤色 |
備考 防じん機能を有する防毒マスクにあっては、吸収缶のろ過材がある部分に白線を入れる。 |
(適用除外)
第九条 特殊な材料、構造若しくは性能の防毒マスク又は特殊な場所で用いられる防毒マスクであって、前各条の規定を適用することが適当でないものについて、厚生労働省労働基準局長がこの規格に適合する防毒マスクと同等以上の効力があると認めた場合は、この告示の関係規定は、適用しない。
附 則(平二・九・二六 労働省告示第六八号)
1 この告示は、平成二年十月一日から適用する。
2 防毒マスクの規格(昭和四十七年労働省告示第八十三号)は、廃止する。
3 平成二年十月一日前の申請に係る防毒マスクの型式についての労働安全衛生法第四十四条の二第一項又は第二項の検定の基準となる機械等検定規則(昭和四十七年労働省令第四十五号)第八条第一項第一号の規格については、なお従前の例による。
附 則(平八・一・八 労働省告示第一号)
1 この告示は、平成八年四月一日から適用する。
2 平成八年四月一日前の申請に係る防毒マスクの型式についての労働安全衛生法第四十四条の二の検定の基準となる規格については、なお従前の例による。
附 則(平一二・九・一一 労働省告示第八八号)
1 この告示は、平成十二年十一月十五日から適用する。
2 平成十二年十一月十五日前の申請に係る防じんマスク又は防毒マスクの型式についての労働安全衛生法第四十四条の二の検定の基準となる規格については、なお従前の例による。
附 則 (平成一二・一二・二五 労働省告示第百二十号)
(適用期日)
第一 この告示は、内閣法の一部を改正する法律(平成十二年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から適用する。
(経過措置)
第二 検査員等の資格等に関する規程第六条第一項及び第六条の二、平成四年労働省告示第十二号第三号 並びに平成四年労働省告示第十三号第三号の規定の適用については、この告示の適用前に労働省においてこれらの規定に規定する業務又は職務に従事した経験又は期間は、それぞれ厚生労働省においてこれらの規定に規定する業務又は職務に従事した経験又は期間ととみなす。
第三 この告示による改正前の昭和三十五年労働省告示第十号様式第三十六号の適用事業場臨検証及び様式第三十七号の診療録検査証並びに昭和五十一年労働省告示第百十二号様式第十一号の立入検査証明書は、当分の間、それぞれ改正後の昭和三十五年労働省告示第十号様式第三十六号の適用事業場臨検証及び第三十七号の診療録検査証並びに昭和五十一年労働省告示第百十二号様式第十一号の立入検査証明書とみなす。
第四 この告示の適用の際限に提出されているこの告示による改正前のそれぞれの告示に定める様式による申請書等は、この告示による改正前後のそれぞれの告示に定める相当様式による申請書等とみなす。
第五 この告示の適用の際、現に存するこの告示による改正前のそれぞれの告示に定める様式による申請書等の用紙は、当分の間、必要な改定をした上、使用することができる。
附 則(平一三・九・一八 厚生労働省告示第二九九号)
1 この告示は、平成十三年十月一日から適用する。
2 平成十三年十月一日前の申請に係る防毒マスクの型式についての労働安全衛生法第四十四条の二の検定の基準となる規格については、なお従前の例による。