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[資料番号] 00204
[題  名] セクシュアルハラスメントによる精神障害等の業務上外の認定について〜H17.12.1
[区  分] 労災補償

[内  容]
セクシュアルハラスメントによる精神障害等の業務上外の認定について

 

(平成17.12.1基労補発第 1201001 号)

 セクシュアルハラスメントが原因となって発病した精神障害等は、平成 11 年 9 月 14 日付け基発第 544 号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(以下「判断指針」という。)により、心理的負荷を評価した上で、業務上外の判断を行うこととしてきたところであるが、判断指針に当てはめるセクシュアルハラスメントの捉え方や、心理的負荷の強度の評価において一部に統一が図られていない事例がみられるところである。

 このような状況を踏まえ、判断指針に当てはめるセクシュアルハラスメントの概念、内容、判断指針による評価に際しての留意点について、下記のとおり取りまとめたので、今後の取扱いに適正を期されたい。

1 セクシュアルハラスメントを職場における業務に関連する出来事の一類型としていることについて

 判断指針別表 1 の「具体的出来事」は、職場において通常起こりうる多種多様な出来事を一般化したものとして明記しているところであるが、その一つとして「セクシュアルハラスメントを受けた」ことを明記しているのは、職場の上司、同僚、部下、取引先等との通常の人間関係から生じる通例程度のストレスは出来事として評価すべきではないが、セクシュアルハラスメントなど特に 社会的にみて非難されるような場合には、原則として業務に関連する出来事として評価すべきであるとの「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」報告に基づくものである。

2 判断指針別表 1 における「セクシュアルハラスメント」の概念、内容

 判断指針別表 1 における「セクシュアルハラスメント」については、改正男女雇用機会均等法に基づく「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針(平成 10 年労働省告示第 20 号)」(以下「セクシュアルハラスメント指針」という。)等により示されている概念・内容と、基本的には同義である。

 具体的には、告示では、「職場におけるセクシュアルハラスメント」とは「職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により就業環境が害される」こととされ、このうち、「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれ、また、平成 10 年6 月 11日 女発第 168 号通達により「性的な行動」として、強制わいせつ行為、強姦等が含まれるとされている。

3 「セクシュアルハラスメント」が原因となって発病した精神障害等の判断指針による評価について

 精神障害等の心理的負荷の強度の評価に当たっては、「心理的負荷が極度のもの」についてはその出来事自体を評価し、それ以外については、心理的負荷の原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について総合的に評価することとしている。
  したがって、「セクシュアルハラスメント」については、事案の性質によっては「心理的負荷が極度のもの」と判断される場合には、その出来事自体を評価し、業務上外を決定することになるが、それ以外については、出来事及び出来事に伴う変化等について総合的に評価する必要があり、その際、「出来事に伴う変化等を検討する視点」の項目中、特にセクシュアルハラスメント指針で示された事業主が雇用管理上の義務として配慮すべき事項について検討することになる。

 具体的には、「セクシュアルハラスメント」防止に関する対応方針の明確化及びその周知・啓発、相談・苦情への対応、「セクシュアルハラスメント」が生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応等に着眼し、会社の講じた対処・配慮の具体的内容、実施時期等、さらには職場の人的環境の変化、その他出来事に派生する変化について、十分に検討の上、心理的負荷の強度を評価する必要がある。