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[資料番号] 00209
[題  名] 全国の労働基準監督署の業務に係る18年度重点施策について
[区  分] 行政運営

[内  容]

全国の労働基準監督署の業務に係る18年度重点施策について
 



 2006年3月31日、厚生労働省は「平成18年度地方労働行政運営方針」を公表した。
 地方労働行政とは、労働基準(監督署)、職業安定(ハローワーク)、雇用均等(均等室)を併せたもの。全体の構成は、下記〔総目次〕のとおり。
 ここでは、このうち、第3地方労働行政の重点施策の中から「2.労働基準行政の重点施策及び6.個別労働紛争解決制度の積極的な運用」、言いかえるなら、全国の第一線労働基準監督署の仕事に係る「重点施策」部分を抜粋してみた


【資料のワンポイント解説】

1.そもそも労働基準行政の重点事項という標題なのであるから、どれもこれもが等しく重点事項であろうと思うのは基本的に正しい。
 そうは申しても、役人が書く文章には、何がしかのレトリックがある。
 公式には、役所がそれを認めることはあり得ないが、当方(労務安全情報センター)の解するところ、重点事項の中でも、ざっと、4種類の強弱があると睨んでいる。
 例えば、冒頭の

 2.「労働基準行政の重点施策」
これは
(1)労働条件の確保、改善等
(2)多様な働き方が可能となる労働環境の整備
(3)労働者の安全と健康を確保するための施策の展開
(4)労災補償対策の推進
と、つづくのであるが、この中の(1)労働条件の確保、改善等の各項目を目を凝らして見てみると良い。重点事項の末尾が
A.厳正に対処する
B.司法処分を含め厳正に対処する
C.情報提供(通報)する

D.事業主による自発的な取組みを促進する
と、それぞれ使い分けられていることにお気づきだろうか。この中では、事業主にとって、どれが一番やばいか。???→
 B.司法処分を含め厳正に対処する、これがもっとも厳しく、否応なく是正を迫られ、無視したり放置したりすると、司法処分(刑事罰)権限を行使され、検察庁に書類送検されたりする。
 そのような観点からみると、(1)労働条件の確保、改善等 の中では、2箇所にこの表現が使われている。→その1が、「労働時間管理の適正化の徹底・賃金不払残業の解消」、その2が、「請負等を偽装した労働者派遣」。この2点で目をつけられたら、あまりジタバタしないほうが良いだろう。
次に、
 A.厳正に対処する、これは、指摘に対して素直に応じるか、居直るかで扱いが異なってくる。居直りが講じてその行為の放置が社会的に見て悪影響が大きいと判断されたりすると、先の司法処分コースをたどるケースが出てくるが、間に、弁護士や社労士を入れず、直接、監督官に対して、「どのようにしていけばいいものでしょうか」と前向き対処方針で臨むのが良い。〔18年度重点方針の中では、労働時間管理の適正化を除く一般労働条件の確保の箇所で使われている。〕
 C.情報提供(通報)する、は、監督機関としてはかなり悪質だと思っているのだが、その一部には権限が及ばないから、権限がある機関に通報するものである。その後は、通報を受けた側の判断によるのが基本である。〔18年度重点方針の中では、労外国人労働者、技能実習生の箇所で使われている。〕
 D.事業主による自発的な取組みを促進する 、これは、重点事項もたくさんあるので、それほどは「力」(リキ)を入れておれないという意味か。世間から見ると、本気でやっているのか、といった風に見えたりする。〔18年度重点方針の中では、パートタイム労働者対策の箇所で使われている。〕

2. 特になし。




〔総目次〕
平成18年度地方労働行政運営方針
第1  労働行政を取り巻く情勢
1  社会経済情勢
2  雇用を巡る動向
3  労働条件等を巡る動向
第2  平成18年度地方労働行政の課題
1  厳しさの残る雇用情勢下における雇用の安定、労働条件の確保に向けた総合的な対応
2  健康で安心して働ける環境の整備
3  少子・高齢化の進行と多様な働き方への対応
第3  平成18年度地方労働行政の重点施策
1  地方労働行政展開に当たっての基本的対応
2  労働基準行政の重点施策

3  職業安定行政の重点施策
4  雇用均等行政の重点施策
5  労働保険適用徴収業務等の重点施策
6  個別労働紛争解決制度の積極的な運用

7  各行政間の連携の下に推進する重点施策







2  労働基準行政の重点施策

 企業を取り巻く環境の変化や働き方の多様化が進む中、労働者を取り巻く環境は大きく変化してきているが、労働基準行政は、いかなる経済・雇用情勢の下にあっても、適正な労働条件の下で安全に安心して働くことができるようにしていくことを使命とするものである。
 他方、最近における行財政改革の中で国家公務員を5%以上純減させるとの政府方針の下にあって、労働基準行政が期待される役割を的確に果たしていくためには、今まで以上に監督・安全衛生・労災補償の三行政部門が一体となって取り組んでいくことが重要である。行政運営に当たっては、使用者の遵法意識をより高める観点も踏まえ、労働基準関係法令違反に対しては厳正に対処し、特に重大・悪質な事案に対しては司法処分を含め厳正に対処することとし、同時に、適正な労働条件の確保・改善を図るには、労使の自主的な取組みを促進することが極めて重要であることから、労使団体との連携を強化することなどの工夫を行う等、一層、効率的・効果的な行政展開を積極的に図っていく必要がある。
 また、昨年夏以来、アスベストによる健康障害が社会問題となり、これを契機として、労働基準行政としても、監督・安全衛生・労災補償の三行政部門が一体となって対策を講じてきたところであるが、今後とも、飛散・ばく露の防止、早期全面禁止、健康管理、労災補償等について迅速かつ的確な取組みを行うとともに、被害者を隙間無く救済するためのアスベスト救済法の円滑な施行を図るものとする。

(1)  労働条件の確保・改善等
ア  一般労働条件の確保・改善対策の推進


(ア)  法定労働条件の確保
 企業を取り巻く環境の変化や働き方の多様化が進む中、地域の産業動向等を敏感にとらえ、的確な行政展開を図ることが求められている。このため、管内の実情を踏まえつつ、基本的な労働条件の枠組みの確立、労働時間管理の適正化、健康管理の徹底に関する事項の履行確保を中心とした一般労働条件の確保・改善対策を一層積極的に推進する。
 また、労働基準関係法令違反に対しては、厳正に対処する。

(イ)  労働時間管理の適正化の徹底
 賃金不払残業の解消を図るため、これに係る申告・相談が依然として認められる状況について使用者の理解を得させた上で「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)の遵守を重点とした監督指導等を引き続き実施するとともに、「賃金不払残業総合対策要綱」に基づき「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の周知を図り、労使の自主的な改善を促すなど総合的な対策を推進する。
 また、重大・悪質な事案に対しては、司法処分を含め厳正に対処する。

(ウ)  時間外労働協定の適正化
 長時間にわたる時間外労働の実効ある抑制を図り、また過重労働による健康障害を防止するため、使用者、労働組合等の労使当事者が時間外労働協定を適正に締結し届け出るよう、引き続き周知・指導を行うとともに、特に、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準について、特別条項付き協定を締結する場合の「特別の事情」の趣旨を十分に踏まえつつ、遵守の徹底を図る。

(エ)  有期労働契約に係るルールの明確化の推進
 有期労働契約について、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」に関し、必要な助言及び指導を行うことにより、引き続きその遵守の徹底を図るとともに、有期契約労働者の就労環境の改善を図るため、「有期契約労働者就業環境改善プロジェクト」を実施する。

(オ)  企業倒産に伴う解雇等に伴う労働条件の履行確保
 企業倒産に伴う解雇、賃金不払等の法定労働条件の履行確保上問題が発生するおそれがある企業に関する情報の早期かつ的確な把握に努めるとともに、適切な監督指導を実施し、賃金不払事案等の発生の防止及びその早期解決に努める。

イ  未払賃金立替払制度の迅速かつ適正な運営
 企業の倒産件数は減少しているものの、本制度の利用がなお高水準であることを踏まえ、不正受給防止にも留意しつつ、企業倒産により賃金の支払を受けられない労働者の救済を図るため、引き続き迅速かつ適正な対応を図る。

ウ  最低賃金制度の適正な運営
 最低賃金制度については、我が国経済の動向、地域の実情を踏まえ適正な運営を図る。
 また、最低賃金法の履行確保を図るため、最低賃金の一層の周知徹底を図るとともに、問題のある地域、業種等を的確に把握し、監督指導等を行い、その遵守の徹底を図る。

エ  特定の労働分野における労働条件確保対策の推進

(ア)  自動車運転者
 長時間労働を原因とする重大な交通労働災害が増加していることから、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」等の周知及び遵守を徹底するとともに、過労運転事案については、関係行政機関とも連携を図り、引き続き自動車運転者の労働条件の改善を図る。
 また、タクシー業に対しては、地方運輸機関と合同により監督・監査を実施するなど連携の強化を図る。

(イ)  派遣業及び業務請負業における労働者
 請負等を偽装した労働者派遣が依然として認められることから、事業場の構内に他の事業場の労働者が混在している場合には、事業場間の契約関係や当該労働者に対する実際の指揮命令等の就労実態を確認した上で、その実態に応じて、労働基準法等関係法令に係る使用者の責任区分に従って必要な指導を行い、法令違反に対しては司法処分も含め厳正に対処する。
 また、事業場間の契約関係、労働者の就労実態等から判断して請負等を偽装した労働者派遣事業と疑われる事案等を確認した場合には、相互に情報提供することにより情報の共有化を図るなど、職業安定行政と連携しつつ、的確に対処する。
 さらに、依然として派遣労働者に係る労働災害も発生していることから、引き続き派遣労働者に係る労働災害防止対策を推進する。

(ウ)  外国人労働者、技能実習生
 国際化の進展等により我が国で就労する外国人労働者が増加している状況を踏まえ、外国人労働者にも労働基準関係法令が当然に適用されることについて周知徹底を図るとともに、「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」に基づく啓発・指導により、引き続き外国人労働者の適正な労働条件確保対策を推進する。重大悪質な労働基準関係法令違反において、資格外活動、不法残留等出入国管理及び難民認定法違反に当たると思われる事案が認められた場合には、職業安定行政との連携を図りつつ、出入国管理機関にその旨情報提供する。
 技能実習生については、依然として、法定労働条件確保上の問題が認められることから、労働契約締結時の労働条件の書面による明示、賃金支払の適正化等労働基準関係法令の遵守の徹底を図る。

(エ)  介護労働者
 介護事業に使用される労働者の法定労働条件の履行確保を図るため、介護事業へ新規に参入する事業者が増加している状況を踏まえ、事業の許可権限を有する都道府県等と連携し、引き続き労働基準関係法令の適用について周知するとともに、その遵守の徹底を図る。

(オ)  短時間労働者
 「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「パートタイム労働法」という。)並びに「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針」(以下「パートタイム労働指針」という。)の趣旨及び内容についての周知、啓発を重点とした対策を推進し、事業主による自主的な取組を促進する。

(カ)  障害者である労働者
 障害者である労働者の労働環境の整備が求められている中で、引き続き法定労働条件の履行確保を図るため、職業安定行政との連携の下、これら労働者を使用する事業主に対する啓発・指導に努めるとともに、的確な情報の把握を行い、問題事案の発生の防止及び早期是正に努める。

(キ)  出稼労働者
 出稼労働者に対する適正な賃金の支払の確保、有給休暇制度の普及促進、労働災害の防止、健康管理の充実等、引き続き労働条件確保対策を推進する。
 また、建設業附属寄宿舎を設置する使用者に対して寄宿舎における労働基準関係法令の遵守を図る。


(2)  多様な働き方が可能となる労働環境の整備
ア  仕事と生活の調和のとれた働き方を可能とする環境整備


(ア)  労働時間等設定改善法の円滑な施行
 近年の労働時間の動向等を踏まえ、「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を個々の労働者の健康や生活に配慮した労働時間、休日及び休暇の設定に向けた労使の自主的な取組を促進することを目的とする「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(以下「労働時間等設定改善法」という。)に改正する内容を含む「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」が第163回特別国会において成立し、一部の規定を除き、平成18年4月1日から施行されるところである。
 労働時間等設定改善法の施行に当たっては、事業主及びその団体が労働時間等の設定の改善に適切に対処することが必要であることから、労働時間等の設定の改善を行う事業主及びその団体が留意すべき事項について定めた労働時間等設定改善指針の周知啓発を図る。また、事業場における労働時間等設定改善委員会の設置等の体制整備及び労働時間等設定改善実施計画の作成についての普及啓発を図る。
 また、国において平成18年度から新たに労働時間の設定の改善の促進(計画年休制度の導入又は連続休暇の取得促進等)に向けて(1)仕事の内容や進め方にまで踏み込んだ助言・相談を行う労働時間設定改善アドバイザーを地域の主要な事業主団体に配置し、個々の会員事業場の実情を踏まえた指導、援助、(2)労働時間等の設定の改善に取り組む中小企業団体に対しての助成、(3)特に時間外労働が長い事業場の事業主に対して時間外労働の削減に向けて自主的点検等の実施の要請、(4)都道府県労働局に労働時間設定改善コンサルタントを配置し、相談対応や助言・指導を行うこととしており、事業主等に対してこれらの積極的な活用を勧奨する。
 さらに、仕事と生活の調和に関する周知啓発活動を「仕事と生活の調和キャンペーン」と位置付けて展開することとし、社会的気運の醸成を図ることとする。具体的には、(1)全国を7つのブロックに分けて、ブロック局において「仕事と生活の調和推進会議」を開催し、企業及び労働者が参考にしうるプログラムを作成し、その周知広報を通じた各企業の自主的な取組の促進、(2)仕事と生活の調和に係る社会的気運の醸成を図るためのシンポジウムの開催等を行うところであり、各事業の円滑な実施に努めるものとする。

(イ)  年次有給休暇の取得促進
 計画的付与制度の積極的な活用について周知及び指導を行うこと等により、年次有給休暇の一層の取得促進を図る。

(ウ)  所定外労働の削減のための啓発
 「所定外労働削減要綱」の周知啓発により、休日労働を含めた所定外労働の削減に向けた労使の取組を促進する。

イ  裁量労働制の適正な実施の確保
 裁量労働制については、業務遂行に当たっての裁量性を確保するとともに業務量が過大になることを防ぐ観点から、同制度の趣旨に適合した上で導入・運用されるよう、周知・指導を行う。特に企画業務型裁量労働制については、対象となる業務の範囲等を含め、制度が適正に実施されるよう「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」の趣旨及び内容について周知を行う。
 また、健康・福祉確保措置や苦情処理措置の実施が十分でないなどの実態もあることから、実効ある健康・福祉確保措置等が実施されるよう周知の徹底を図る。

ウ  在宅勤務の普及促進
 在宅勤務に関する適正な就業環境を確保するため、在宅勤務の労働基準関係法令上の取扱い等を明確にした在宅勤務に係るガイドラインについて、事業主等への周知を図る。
 また、在宅勤務の意義やメリットを広く浸透させるため、本省で実施した、在宅勤務の健康面への影響等を調査する実証実験の結果について、事業主等への周知を図る。

エ  賃金・退職金制度の改善の推進
 賃金・退職金制度整備・改定事例及び賃金・退職金セミナー等を活用して賃金・退職金制度に関する相談・援助等の充実を図るとともに、併せて、中小企業賃金制度支援事業の効果的な実施に努める。

オ  勤労者生活の基盤の整備・充実
 勤労者財産形成促進制度については、引き続き本省において勤労者を取り巻く状況に対応した制度改善の検討を行う。中小企業退職金共済制度については、退職金制度がいまだ整備されていない中小企業も多いことから、それらの企業の加入促進に努めるとともに、適格退職年金制度からの移行を進めるために、制度の周知を図る。
 勤労者のボランティア活動については、勤労者マルチライフ支援事業の実施状況の把握等により、その参加の促進に努める。


(3)  労働者の安全と健康を確保するための施策の展開
ア  アスベストによる健康障害防止対策


(ア)  建築物等の解体時等のアスベストばく露防止対策
 アスベスト使用建築物の解体作業等におけるアスベストばく露防止対策について、計画届、作業届のほか、関係行政機関等からの情報を収集し、監督指導等や、必要に応じて労働災害防止団体と連携して現場パトロールを実施する等により、石綿障害予防規則の遵守を図る。その際に、併せて、ばく露防止対策等の実施内容の掲示についても、必要な指導を行う。

(イ)  アスベストの早期全面禁止
 「石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討会」の報告(平成18年1月)を踏まえ、アスベスト製品の製造等を禁止することとし、新設の設備についてアスベスト製品の使用を認めないこと、ただし国民の安全の確保上実証試験等が必要なものについては例外的に禁止を除外することについて、関係政令の整備を18年度中に実施することとしており、その内容の周知を図る。また、アスベスト製品の製造・使用等を行っている事業者に対し、全面禁止の法令整備を待つまでもなくアスベスト製品の製造等を中止するよう指導を行う。

(ウ)  健康管理対策の推進
 アスベストに係る労働者の健康管理の充実を図るため、アスベストばく露リスクが高いと考えられる業種を重点として、石綿障害予防規則に基づく健康診断の実施等の徹底を図るとともに、その際に、併せて、すでに退職した者についてもアスベスト健康診断を実施するよう事業者に対して要請を行う。また、リーフレット等を活用し、アスベストに係る健康管理手帳制度の周知を図る。
 さらに、アスベスト取扱い作業等に従事していた退職者であって、事業場の廃業等で健康診断を受けることができない者を対象として行われる特別健康診断の推進を図る。

イ  労働災害を減少させるための施策の展開
 重大災害を防止し、労働災害の大幅な減少を図るため、労働安全衛生法の改正を踏まえて、安全衛生管理体制の強化、リスクアセスメント及び労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進を図るとともに、業種等の特性に応じた労働災害防止対策を推進する。

(ア)  安全衛生管理体制の強化等
 労働災害防止を進めるためには、まず、経営トップ等が率先して対策に取り組むことが重要であることから、局署の幹部が、様々な機会を活用し、経営トップ等に対して直接指導を行う。
 また、企業の自主的な安全衛生管理活動を促進するため、総括安全衛生管理者の職務の追加、安全衛生委員会の調査審議事項の拡充、安全管理者の選任時の資格要件の追加、職長等の教育カリキュラムの拡充を内容とする規則改正の周知徹底を図る。

(イ)  リスクアセスメント、労働安全衛生マネジメントシステムの普及促進等
 事業場における危険性・有害性が多様化している中、事業場の安全衛生水準の向上を図り労働災害を減少させるためには、リスクアセスメントを行うことが必要であることから、今般の労働安全衛生法の改正によりリスクアセスメントの実施が努力義務とされたところであり、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)に基づき、その実施が図られるよう、計画的に周知、集団指導及び個別指導を行う。
 さらに、労働安全衛生マネジメントシステムについても、業種別団体等を通じた支援、本システムの普及のための協議会を発足させる等により、事業者、事業者団体等による自主的な取組の促進を図る。また、新設された計画届の免除制度について、上記協議会等を活用した周知を行うとともに、別途示すところにより制度の適切な運用を図る。
 なお、リスクアセスメントは事業場規模に関わらず労働災害防止上有効であることを踏まえ、中小規模事業場に対しても、計画的に周知、集団指導及び個別指導を行う。また、安全管理特別指導事業場等の安全衛生改善計画についても、別途示すところにより、リスクアセスメントを含めるなど、効果的な改善措置の実施を図る。さらに、重篤な労働災害を発生させた中小規模事業場等に対しては、リスクアセスメント等を主な内容とする安全衛生診断等の対象とするなどにより自主的な安全衛生管理活動の推進を図る。

(ウ)  製造業等における労働災害防止対策の推進
 改正労働安全衛生法において義務付けられた製造業の元方事業者による連絡調整等の措置について、監督指導等による徹底を図るとともに、製造業の元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針について、周知を行う。
 また、増加する派遣労働者の労働災害を防止するため、派遣元・派遣先双方に対して、職業安定行政と連携しつつ集団指導等により労働安全衛生法上の義務の周知徹底を行うとともに、災害発生状況の的確な把握及び派遣元・派遣先の責任区分に応じた再発防止対策の徹底について指導を行う。
 特に、中規模製造業に対しては、平成17年度に実施した自主点検に基づく取り組み状況等を踏まえ、個別指導等を実施する。
 また、あらゆる機会を捉え、小規模事業場等団体安全衛生活動援助事業の周知を図る。

(エ)  爆発・火災災害防止対策の推進
 爆発、火災災害が頻発している鉄鋼関連施設、石油関連施設等に対しては、設備の定期自主検査やリスクアセスメントを的確に実施するよう、労働安全衛生法第78条に基づく安全衛生改善計画の作成を指示するなど、監督指導等を行う。また、改正労働安全衛生法において新たに設けた、注文者による請負人への危険有害情報の提供義務についても、併せて、周知、集団指導及び個別指導を行う。

(オ)  交通労働災害防止対策等の推進
 関係災害防止団体と連携し、交通労働災害防止ガイドラインの周知徹底を図るとともに、好事例の収集、モデル事業場の育成等の支援を行う。
 また、陸上貨物運送事業では、荷役作業中の墜落・転落災害が多発していること等から、リスクアセスメントの実施等について、計画的に周知、集団指導及び個別指導を行う。
 さらに、多発している高速道路の料金収受員のETCレーン横断中の災害を防止するため、関係通達に基づき、高速道路会社等に対し、計画的な安全対策の実施等について個別指導を行う。
 また、全国の鉄道事業者に対して、昨年4月のJR西日本福知山線脱線事故を受けて実施した自主点検の結果を踏まえ、安全衛生管理体制の適切な構築等について個別指導等を行う。

(カ)  建設業における労働災害防止対策の推進
 建設業総合対策に基づく指導等を実施するとともに、リスクアセスメント等の普及促進を図るため、計画的に、周知、集団指導及び個別指導を行う。また、建設業においては店社と現場とが一体となった管理が必要であることを踏まえ、店社に対する重点的な働きかけとそれを踏まえた現場に対する指導を行う。
 また、関係業界団体と連携の上、中小総合工事業者、専門工事業者等に対する支援を行う。
 さらに、建設業における死亡災害において、依然として木造家屋等低層住宅建築工事やビル建築工事における墜落災害の占める割合が高いこと等から、足場先行工法について、様々な機会を活用し徹底を図るとともに、手すり先行工法について、労働災害防止団体と連携するなどにより、周知を行う。
 その他、上下水道等工事における土砂崩壊災害を防止するため、土止め先行工法に関するガイドラインについて、発注機関等との連絡協議会等を活用し周知を行う。

(キ)  機械設備の安全化の促進
 機械設備の使用事業者等に対して、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」及び「機械の包括的な安全基準に関する指針」に基づく取組を促進するため、計画的に周知及び集団指導を行う。
 また、プレス機械災害については、近年増加傾向にあることから、管内における災害発生状況、機械設置状況等を踏まえ、プレス災害防止総合対策に基づき、的確な指導等を実施するとともに、別途送付するプレス機械災害防止対策をまとめたマニュアルを活用しリスクアセスメントについて指導するなど、プレス機械災害防止対策の徹底を図る。

(ク)  第三次産業における労働災害防止対策の推進等
 第三次産業における業種別の労働災害防止のためのガイドラインについて、様々な機会を活用し周知徹底を図る。
 特に、第三次産業での死傷災害の約3割を占める卸売・小売業等について、当該業界団体等に対して、努力義務対象業種へのリスクアセスメントに係る指導を含む労働災害防止対策の推進のための指導を実施する。

ウ  労働者の健康を確保するための施策の展開

(ア)  過重労働による健康障害防止のための対策の推進
 過重労働による健康障害を防止するため、改正労働安全衛生法において新たに設けた面接指導制度の周知徹底を図るとともに、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(平成18年3月17日付け基発第0317008号)に基づき、労働時間管理、健康管理等に関する法令の遵守徹底のための監督指導等を実施し、過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対しては再発防止の徹底等の指導を行う。

(イ)  メンタルヘルス対策の推進
 改正労働安全衛生法において新たに設けた面接指導制度において、医師による面接を行う際にはメンタルヘルス面にも留意することとしており、面接指導制度の周知や指導を行う際には併せてその周知徹底を図る。また、改定し新たに示した「事業場における労働者の心の健康の保持増進のための指針」について、あらゆる機会を捉えて効果的な周知を図るとともに、事業場に対するメンタルヘルス対策支援事業や「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」についても、併せて、周知を図る。
 また、産業保健推進センター、地域産業保健センター及び労災病院におけるメンタルヘルスに関する相談の利用促進を図るとともに、地域産業保健センターにおいて実施されている働き盛り層のメンタルヘルスケア支援事業について、都道府県等との連携を図りつつ適切な実施を促進する。
 さらに、自殺予防マニュアル等を活用し、労働者の自殺予防に必要な知識の普及・啓発を図るとともに、産業医等と精神科医等のネットワークの形成を図るため、地域における精神科医等を対象として行う産業保健研修の周知を図る。

(ウ)  職場における着実な健康確保対策の推進
 労働安全衛生法が改正され、過重労働・メンタルヘルス対策の充実強化が図られたことを踏まえ、面接指導制度の趣旨の徹底、新たに示した指針に基づくメンタルヘルス対策の推進体制の整備、衛生委員会等を活用した事業場の自主的な過重労働・メンタルヘルス対策への取組みの推進等を図るため、集団指導等を実施する。その際、産業医や衛生管理者の適正な選任や活動の活性化についても指導を行う。
 小規模事業場に対しては、地域産業保健センター事業、産業医共同選任事業、小規模企業の経営者のための産業保健マニュアル等の一層の利用促進について、指導を行う。特に、地域産業保健センターについては、平成20年4月の面接指導制度の小規模事業場への適用に向けて、あらゆる機会を捉えて、その周知に努めるとともに、郡市区医師会に対して適切な支援を行い、小規模事業場における面接指導の実施体制の整備を図る。
 新たに義務付けられた特殊健康診断結果の労働者への通知とともに、健康診断の実施及びその結果に基づく事後措置の徹底を図る。また、事業場において労働者の健康情報の取扱いが適切に行われるよう、「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」の周知を図る。

(エ)  職業性疾病予防対策等の推進
 粉じん障害防止対策については、第6次粉じん障害防止総合対策及び「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」に基づく対策の徹底を図るための監督指導等を実施するとともに、その際に、併せて、新規格に基づく防じん、防毒マスクの適正な選択、使用等について周知を図る。
 屋外作業のある事業場において監督指導等を実施する際には、新たに策定した「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」の周知を図る。
 介護福祉事業等において腰痛が増加していることから、「職場における腰痛予防対策指針」について、集団指導により周知を図るとともに、介護事業場に対する監督指導等の機会を捉えて効果的な周知を図る。
 電離放射線障害防止対策については、特に原子力施設に対し、下請事業場を含めた総合的な安全衛生管理体制の確立、被ばく低減化の徹底等を図るための監督指導等を実施する。

(オ)  化学物質による健康障害防止対策の推進
 改正労働安全衛生法において新たに設けた化学物質の表示・文書交付制度、「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月30日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第2号)及び有害物ばく露作業報告制度について、管内の実態に応じ、局において、化学物質を製造し又は取り扱っている事業者を対象とした説明会を開催することなどにより周知及び指導を図る。
 また、必要に応じ、併せて、ダイオキシン類対策、眼・皮膚障害防止対策、塩素中毒災害防止対策、造船業における有機溶剤中毒予防対策、一酸化炭素中毒災害防止対策等についても周知を図る。

(カ)  職場環境の快適化の推進
 喫煙対策ガイドライン等に基づき、受動喫煙防止対策について指導等を行い、特に、喫煙室の設置等喫煙場所の確保が困難な場合などは、事業場を全面禁煙とするよう事業者に対して勧奨する。
 また、快適職場推進計画の認定制度の周知を図る。

エ  登録教習機関等に対する監査指導の徹底
 登録教習機関等については、依然として重大悪質な不正事案が相次いで発覚していることから、監査指導を適正かつ迅速に実施し、不正事案を把握した場合には、司法処分も含め厳正に対処する。


(4)  労災補償対策の推進

ア  労災保険給付の迅速・適正な処理

 労災保険給付の請求については、引き続き、標準処理期間内の迅速な事務処理に努める。このため、署管理者の進行管理の徹底を行うとともに、長期未決事案の多い署の管理者に対する局の個別指導により迅速かつ適正な処理の推進を図る。
 また、事業主を始めとする関係者から十分な協力が得られない場合等には、労災保険法に基づく権限を適切に行使する等迅速かつ適正な調査を実施する。
 労災診療費については、会計検査院による指摘が多い項目について重点的に審査を行うなど、引き続き適正な審査を実施することはもとより、平成18年度の労災診療費算定基準の改正についての医療機関への周知の徹底、誤請求の多い医療機関への指導等により、診療費の適正払いの一層の推進を図る。

イ  制度改正事項の的確な実施
 平成18年4月1日から施行される新たな通勤災害保護制度について、また、同じく平成18年4月1日に改正される障害(補償)給付に係る障害等級表及び障害等級認定基準に基づき適正な事務処理に努めるとともに、労働者、事業主、医療関係者等に対して十分な周知を行い、新制度の円滑な実施を図る。

ウ  労災かくしの排除の徹底
 労災かくしについては、第163回特別会の衆議院厚生労働委員会及び参議院厚生労働委員会において附帯決議がなされているところであり、対策について6月を目途に周知・広報等の方策を含めた通達を別途発出する予定であるが、それまでの間、引き続き、労災かくしの排除を徹底するため、労災担当部署や安全衛生担当部署において、労災請求の相談等を通じて労災かくしの疑いのある事案を把握した場合や、虚偽の死傷病報告が発覚した場合などは、速やかに監督担当部署へ情報提供するなど、各部署の密接な連携を図る。
 また、労災かくしの排除を期すため、引き続き、的確な監督指導等を実施するとともに、その存在が明らかとなった場合には、司法処分を含め厳正に対処する。

エ  アスベストによる健康被害者の救済等

(ア)  アスベスト救済法の円滑な施行
 中皮腫、肺がん等により死亡した労働者の遺族であって時効により労災保険法に基づく遺族補償給付を受ける権利が消滅した者に対し、新たに特別遺族給付金を支給すること等を内容とするアスベスト救済法について、広く周知を図るとともに、効率的な事務処理体制等の整備を図る。

(イ)  改正認定基準の運用等
 今後も増加が見込まれるアスベスト疾患に係る労災請求については、改正認定基準に基づき迅速・適正な事務処理に努める。
 また、労働者、事業主、医療関係者等に対して、改正認定基準及び労災補償制度に関するリーフレットを配布すること等により、アスベスト疾患に係る労災補償制度の周知を図る。

オ  労災認定等を踏まえた労働災害再発防止対策の推進
 労災担当部署においては、労災請求・認定事案について、必要に応じ監督担当部署及び安全衛生担当部署に情報を提供し、各部署においては事案の内容に応じて当該事業場に対して再発防止のための指導等を実施するなど、労働災害防止対策の推進のため、監督担当部署、安全衛生担当部署及び労災担当部署の密接な連携を図る。

カ  行政争訟に対する迅速・的確な対応
 審査請求の処理に当たっては、的確かつ計画的な審理を行うとともに局管理者の適切な進行管理を徹底することにより、3か月以内の処理を図る。
 訴訟追行については、事案に応じて的確に事実関係を立証するための証拠収集等を迅速に行うとともに、法務当局との密接な連携の下、医学的経験則、認定した事実に基づいた論理的かつ分かりやすい主張・立証を行う等的確な対応に努める。

キ  労災年金相談所の活用等
 重度被災労働者に対する介護施策を推進するため、労災特別介護施設(ケアプラザ)入居に係る広報活動を強化するとともに、労災年金相談所とのより一層の連携を図り、積極的な利用を促す。
 また、労災年金受給者等からの相談及び援護についても引き続き、労災年金相談所の活用を図る。






6  個別労働紛争解決制度の積極的な運用

(1)  個別労働紛争解決制度の周知・自主的な紛争解決の促進
 管内の運用状況等を踏まえ、ホームページ、市町村広報紙(誌)の活用等あらゆる機会を捉えた個別労働紛争解決制度の効果的な周知・広報に取り組む。 また、企業内での紛争の自主的解決の促進に向け、事業主等に対する紛争自主解決支援セミナーの効果的な実施に努める。

(2)  総合労働相談コーナーにおけるワンストップサービスの提供
 総合労働相談コーナーにおいては、労働問題に関するあらゆる分野の相談に適切に対応することとし、内容に応じて、関連する法令・裁判例等の情報提供、適切なアドバイスによる当事者間の自主的な解決の促進、他の処理機関等についての情報提供等のワンストップサービスを提供する。
 相談の過程において個別労働紛争を把握した場合には、個別労働紛争解決制度を教示し、必要な場合には、助言・指導の申出やあっせんの申請を受け付ける等相談者のニーズを踏まえた対応をする。
 総合労働相談員(以下「相談員」という。)の資質向上に向けて、個別労働紛争解決制度のみならず、労働行政全般について幅広い知識を付与する等積極的かつ効果的な研修の実施に努め、相談員の的確な活用を図る。
 また、総合労働相談コーナーの設置されていない労働基準監督署、公共職業安定所等においても、当該制度の積極的な説明を行うことによりその活用促進を図る。


(3)  助言・指導及びあっせん制度の的確な運用
 助言・指導及びあっせんについては、それぞれ紛争の実情に即した迅速・適正な解決に向けた適切な事務処理を行う。その際、相談員等の積極的な活用に留意する。


(4)  関係機関との連携
 管内における個別労働紛争解決のための取組を効果的に機能させるため、個別労働紛争解決制度関係機関連絡協議会の開催等を通じ、都道府県労働主管部局、都道府県労働委員会をはじめ紛争解決に係る取組を行う関係機関・団体との緊密な連携を図る。なお、労働審判制度の施行を踏まえた地方裁判所との連携にも留意する。