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[資料番号] 00022
[題  名] ILO第181号「民間職業紹介所に関する条約」全文(仮約)
[区  分] 国際条約

[内  容]
【資料のワンポイント解説】
1.現在派遣労働法の改正が審議されているが、それに大きな影響を与えそうなのが、ここに紹介するILO第181号民間職業紹介所に関する条約(平成9年6月19日採択)。採択に当たってわが国は政労使とも合意しているので、国内法を整備しいずれ批准の方向にあると思われる。
2.特徴点は『労働者に料金を課さないことを前提に、すべての種類の労働者及びすべての部門の経済活動に民間の職業紹介所を認めることにある』。
3.ここでいう民間職業紹介所には、具体的には、職業紹介、労働者派遣、求職関連サービスの提供が該当する。
4.国内法の整備に当たって取扱いが焦点となるのが、第2条の第2項と第4項の調整をどうするかだろう。第2項はネガティブリスト化の根拠となるものであるのに対し、第4項は対象の無制限な拡大を制限する根拠ともなる。
5.第14条との関係では、派遣先事業場の違反行為に対する罰則の適用が焦点となろう。


ILO第181号条約全文(仮約)
民間職業紹介所に関する条約

 国際労働機関の総会は、国際労働事務局理事会によりジュネーヴに招集されて、1997年6月3日にその第85回会期として会合し、1949年の有料職業紹介所に関する条約(第96号)(1949年の改正条約)の規定に留意し、労働市場の機能における柔軟性の重要性を認識し、1994年の国際労働総会の第81回会期において、国際労働機関は1949年の有料職業紹介所に関する条約(第96号)(1949年の改正条約)を改定することとすべきであるとの見解を有したことを想起し、上述の条約が採択された時点で支配的であった状況と比較して、民間職業紹介所が運営する環境が非常に異なっていることを考慮し、適切に機能する労働市場において民間職業紹介所が果たしうる役割を認識し、労働者を不当な取扱いから保護する必要性を想起し、適切に機能する労使関係制度の必要な構成要素として結社の自由の権利を保証し、並びに団体交渉及び社会的対話を促進する必要性を認識し、1948年の職業安定組織の構成に関する条約の規定に留意し、1930年の強制労働条約、1948年の結社の自由及び団結権保護条約、1949年の団結権及び団体交渉権条約、1958年の差別待遇(雇用及び職業)条約、1964年の雇用政策条約、1973年の最低年齢条約及び1988年の雇用の促進及び失業に対する保護条約の規定並びに1949年の移民労働者に関する条約(1949年改正)及び1975年の劣悪な条件の下にある移住並びに移民労働者の機会及び待遇の均等の促進に関する条約における募集及び職業紹介に関係する規定を想起し、前記の会期の議事日程の第4議題である1949年の有料職業紹介所に関する条約(第96号)(1949年の改正条約)の改正に関する提案の採択を決定し、その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、次の条約(引用に際しては、1997年の民間職業紹介所に関する条約と称することができる。)を1997年6月19日に採択する。


第1条

1 この条約の適用上、「民間職業紹介所」とは、公の機関から独立して労働市場における次のサービスの一又はそれ以上のものを提供する自然人又は法人をいう。
(a)求人と求職を結びつけるサービスであって、民間職業紹介所が当該サービスの提供により生ずる雇用関係の当事者とならないもの
(b)業務を与え、かつ当該業務の遂行を監督する自然人又は法人である第三者(以下「使用者企業という。)に使用させることを目的として労働者を雇用することによるサービス
(c)最も代表的な使用者及び労働者の団体との協議の上、権限のある機関によって決定される報提供等の求職に関連するその他のサービスであって、特定の求人と求職を結びつけることを目的としないもの

2 この条約の適用上、「労働者」とは、求職者を含む。
3 この条約の適用上、「労働者の個人データの処理」とは、特定された又は特定可能な労働者に関する情報の収集、保管、編集、伝達その他の取扱いをいう。

第2条

1 この条約は、すべての民間職業紹介所に適用する。
2 この条約は、すべての種類の労働者及びすべての部門の経済活動に適用する。ただし、船員の募集及び職業紹介には適用しない。
3 この条約の目的の1つは、その規定の枠組みの中で、民間職業紹介所のサービスを利用する労働者の保護を図りつつ民間職業紹介所の運営を認めることにある。
4 加盟国は、関係のある最も代表的な使用者及び労働者の団体と協議の上、
(a)特定の状況の下で、特定の種類の労働者又は経済活動分野について、条約第1条1のサービスの一又はそれ以上を提供する民間職業紹介所の運営を禁止することができる。
(b)特定の状況の下で、関係のある労働者に対してその他の方法により十分な保護が確保されている場合に限り、条約又はその特定の規定の適用範囲から、特定の経済活動分野又はその一部に従事する労働者を除外することができる。
5 この条約を批准する加盟国は、国際労働機関憲章第22条に基づく報告において、本条4に基づき禁止され又は適用除外されるものをすべて明記するとともに、その理由を示すものとする。

第3条

1 民間職業紹介所の法的地位は、国内法令及び慣行に従い、並びに最も代表的な使用者及び労働者の団体との協議の上決定される。
2 加盟国は、許可制又は認可制によって民間職業紹介所の運営を規律する条件を決定する。ただし、民間職業紹介所の運営を規律する条件が、適当な国内法令及び慣行に従ってその他の方法により規制又は決定されている場合を除く。

第4条

第1条のサービスを提供する民間職業紹介所によって募集された労働者が結社の自由及び団体交渉権を否定されないことを確保するための措置をとるものとする。

第5条

1 雇用及び特定の職業についての機会及び待遇の均等を促進するため、加盟国は、民間職業紹介所が、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、国民的系統、社会的出身又は国内法令及び慣行の適用を受けるその他のいかなる形態の差別、例えば、年齢、障害に基づいて差別することなく労働者を扱うことを確保する。
2 本条1は、求職活動において最も不利な立場にある労働省を支援するための特別のサービス又は特定の計画が民間職業紹介所により提供されることを妨げるような方法で実施されてはならない。

第6条

民間職業紹介所による労働者の個人データの処理は、
(a)国内法令及び慣行に従って、このデータを保護し、労働者のプライバシーの尊重を確保する方法で実施される。

(b)関係のある労働者の資格及び職業経験に関連する事項並びにその他の直接に関係のある情報に限定される。

第7条

1 民間職業紹介所は、直接的又は間接的に、全体的又は部分的に、労働者に対しいかなる料金又は経費も課してはならない。
2 権限のある機関は、関係ある労働者の利益となるように、最も代表的な使用者及び労働者の団体と協議の上、特定の種類の労働者及び民間職業紹介所が提供する特定の種類のサービスについて、本条1の規定の例外を認めることができる。
3 本条2に基づいて例外を認めた加盟国は、国際労働機関憲章第22条に基づいて提出する報告において、当該例外に関する情報及びその理由を示すものとする。

第8条

1 加盟国は、最も代表的な使用者及び労働者の団体と協議の上、その管轄範囲内において、及び適当な場合にはその他の加盟国との協力の下に、民間職業紹介所により自国内において募集又は職業紹介される移民労働者に対し適切な保護を行い、及び当該移民労働者の不当な取扱いを防止するために必要かつ適切なすべての措置をとるものとする。
 なお、当該措置には、詐欺的な行為又び不当な取扱いを行う民間職業紹介所の禁止を含む罰則を規定する法令が含まれる。
2 労働者が他の国で労働するためにある国において募集される場合には、関係のある加盟国は、募集、職業紹介及び雇用に際し、不当な取扱い及び詐欺的な行為を防止するために二国間の協定を締結することについて考慮する。

第9条

加盟国は、民間職業紹介所により児童労働が利用され、又は提供されないことを確保するための措置をとるものとする。

第10条

権限のある機関は、民間職業紹介所の活動に関する苦情、申し立てられた不当な取扱い及び詐欺的な行為の調査のために、適当な場合には最も代表的な使用者及び労働者の団体が関わる適切な機構及び手続きが存在することを確保する。

第11条

加盟国は、国内法令及び慣行に従って、次の事項について、第1条1(b)の民間職業紹介所に雇用される労働者に対する十分な保護が確保されるために必要な措置をとるものとする。
(a)結社の自由
(b)団体交渉
(c)最低賃金
(d)労働時間その他の労働条件
(e)法定社会保障給付
(f)訓練の機会
(g)職業上の安全衛生
(h)職業上の災害又は疾病の場合における補償
(i)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護
(j)母性の保護及び母性に関する給付並びに親であることの保護及び、親であることに関する給付

第12条

加盟国は、国内法令及び慣行に従って、次の事項について、第1条1(b)のサービスを提供する民間職業紹介所及び使用者企業の各々の責任を決定し、及び割当てるものとする。
(a)団体交渉
(b)最低賃金
(c)労働時間その他の労働条件
(d)法定社会保障給付
(e)訓練の機会
(f)職業上の安全衛生の分野における保護
(g)職業上の災害又は疾病の場合における補償
(h)支払不能の場合における補償及び労働者債権の保護
(i)母性の保護及び母性に関する給付並びに親であることの保護及び、親であることに関する給付

第13条

1 加盟国は、国内法令及び慣行に従って、並びに最も代表的な使用者及び労働者の団体と協議の上、公共職業安定機関と民間職業紹介所との協力を促進するための条件を策定し、設定し及び定期的に再検討するものとする。
2 本条1の条件は、公の機関が次のものに対して最終的な権限を有するという原則に基づくものである。
(a)労働市場政策の策定
(b)当該政策の実施に充当する公的資金の使用又は管理
3 民間職業紹介所は、権限のある機関が定めた間隔で、権限のある機関により求められた次の情報を、当該情報の機密性に十分に配慮しつつ、提供するものとする。
(a)権限のある機関が国内事情及び国内慣行に従って民間職業紹介所の組織構成及び活動について認識することを可能とするための清報
(b)統計的な目的のための清報
4 権限のある機関は、当該情報を編集し、及び定期的に公に利用可能なものとする。

第14条

1 この条約の規定は、法令又は判例、仲裁裁定若しくは労働協約その他国内慣行に適合するその他の手段により、適用されるものとする。
2 この条約を実施する規定の実施の監督は労働監督機関又はその他の権限ある公の機関によって確保されるものとする。
3 この条約の違反の場合には、適当な場合には罰則を含む適切な救済策が規定され、及び効果的に適用されるものとする。

第15条

この条約は、他の国際労働条約の下で民間職業紹介所により募集され、職業紹介され又は雇用された労働者に適用される、より有利な規定に影響を及ぼさない。

第16条

この条約は、1949年の有料職業紹介所に関する条約(1949年の改正条約)及び1933年の有料職業紹介所に関する条約を改正するものである。

第17条

この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。

第18条

1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。       ・
2 この条約は、2の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後12箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後12箇月で効力を生ずる。

第19条

1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を牛じた日から10年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によってこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後1年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の10年の期間が満了した後1年以内にこの条約に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に10年間拘束を受けるものとし、10年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従ってこの条約を廃棄することができる。

第20条

1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた2番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。

第21条

国際労働事務局長は、国際連合憲章第102条の規定による登録のため、前諸条の規定に従って登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。

第22条

国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。

第23条

1 総会がこの条約の全部又は一部を改止する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a)加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第14条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b)加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。

第24条

この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。