資料No223 (2007年1月25日)
速報!
厚生労働省は、平成19年1月25日、「労働契約法案要綱」及び「労働基準法一部改正法案要綱」を労働政策審議会に諮問した。
労働契約法案要綱及び労働基準法の一部〔ホワイトカラー・エグゼンプション・割増賃金率のアップ/企画業務型裁量労働制のダブルスタンダード化・労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止を含む。〕改正法案要綱
を労働政策審議会へ諮問
【資料のワンポイント解説】
本資料は、2007.1.25厚生労働省が労働政策審議会へ諮問した「労働契約法案要綱」及び「労働基準法一部改正法案要綱」の全文。
厚生労働省としては、タンタンと法案の国会提出準備を進めざるを得ないという立場だろう。
・ホワイトカラーエグゼンプションは、法案要綱では、「自己管理型労働制」を名称を変えて登場している。
・この項に関しては、そのまま、国会に上程される環境にはない(見送り)ようだ。---最終政府案としては「削除」の流れにある。
法案要綱で一番の問題は、ほとんど議論されることなくここまで来た「企画業務型裁量労働制」の取扱いだろう。
この法案の企画業務型裁量労働制の制度変更には、三つの問題があるようだ。
(1) 企画業務型裁量労働制について、企業規模による「ダブルスタンダード」の導入が行われようとしている。(これを広く認めることは、最低基準を罰則付きで強制する労基法の性格を歪めることにつながるおそれがある。)
(2) あわせて、対象業務の定義があいまいと化して(法案要綱では「現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができるものとする」としている。)、従事業務が対象業務に該当するか否かの判定を事実上不可能にするおそれがある。
(3) 同時に、「労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告」を廃止するという暴挙も法案化されている。これは、企画業務型裁量労働制を、監督機関(労働基準監督署)の監視下から切り離すことを意味する。(運用実態を把握する手段を奪い、違反摘発や罰則の適用を「事実上不可」とするやり方が、現状において国民全体から支持されているとも思えないのだが。
さらに、一点。「代休・振休が溜まって使えない状況」の法律公認化にならないように!
改正法案は、「使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下「労使協定」という。)により、二の割増賃金の支払に代えて、有給の休日を与えることができるものとすること。」としている。
これは、有給休日の付与条件を履行を確実に担保するものとしなければ、現在、多くの企業で問題となっている「代休・振休が溜まって消化できず、時効になっている問題」を法律上、公認することになる可能性がある。
---この問題などは、よくよく国会で議論してもらいたい、と思う。
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厚生労働省発基第0125001号
労働政策審議会会長 菅野 和夫 殿
厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第9条第1項第1号の規定に基づき、別紙「労働契約法案要綱」について、貴会の意見を求める。
平成19年1月25日
厚生労働大臣 柳澤 伯東
労働契約法案要綱
第一 日的
この法律は、労働契約の成立及び変更等に関する基本的な事項を定めることにより、労働者及び使用者が円滑に労働契約の内容を自主的に決定することができるようにするとともに、労働者の保護を図り、もって個別の労働関係の安定に資することを目的とすること。
第二 労働者及び使用者の定義
一 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうものとすること。
二 こめ法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうものとすること。
第三 労働契約に関する原則等
一 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものであるものとすること。
二 使用者は、労働者に提示する労働条件及び締結された労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。
三 労働者及び使用者は、締結された労働契約の内容について、できる限り書面により確認するようにするものとするものとすること。
四 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならないものとし、その権利の行使にあたっては、それを濫用するようなことがあってはならないものとすること。
五 使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとするものとすること。
第四 労働契約の成立及び変更
一 労働契約の成立
(一) 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するものとすること。
(ニ) 使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとするものとするごと。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意した部分については、三(一)に該当する
場合を除き、この限りでないものとすること。
二 労働契約の内容の変更
(一) 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるものとすること。
(二) 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することはできないものとすること。ただし、(三)による場合は、この限りでないものとすること。
(三) 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとするものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、三(一)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること。
(四) 就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第八十九条及び第九十条の定めるところによるものとすること。
三 その他の労働契約及び就業規則に関する事項等
(一) 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするものとすること。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとすること。
(二) 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、一(二)、二(三)及び三(一)は適用しないものとすること。
(三) 使用者が労働基準法第十五条第一項の規定により明示した賃金、労働時間その他の労働条件が事実と相違する場合には、労働者は即時に労働契約を解除することができるものとすること。
第五 労働契約の継続及び終了
一 労働契約の継続
(一) 使用者が労働者に出向(在籍型出向)を命じることができる場合において、その出向が、その必要性、対象労働者の選定状況その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向の命令は無効とするものとすること。
(二) 使用者は、労働者と合意した場合に、転籍(移籍型出向)をさせることができるものとすること。
(三) 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、当該懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること。
二 労働契約の終了 ′
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を檻用したものとして、無効とするものとすること。
第六 期間の定めのある労働契約
一 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないせきは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないものとすること。
二 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その締結の目的に照らして、必要以上に細分化された契約期間で反復して更新することのないよう配慮しなければならないものとすること。
第七 その他
一 船員に関する特例並びに国家公務員及び地方公務員等の適用除外について所要の規定を設けるものとすること。
二 施行期日
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、三のうち労働基準法第八十九条に定める就業規則の記載事項に出向に関する事項を追加することについては、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
三 関係法律等の一部改正
労働基準法第八十九条に定める就業規則の記載事項に出向に関する事項を追加すること等の労働基準法の関係規定についての改正を行うほか、関係法律の規定について所要の整備を行うものとすること。
厚生労働省発基第0125002号
労働政策審議会 会長 菅野 和夫 殿
厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第9条第1項1号の規定に基づき、別紙「労働基準法の一部を改正する法律案要綱について、貴会の意見を求める。
厚生労働大臣 柳澤 伯夫
平成19年1月25日
労働基準法の一部を改正する法律案要綱
第一 時間外労働
一 時間外労働の限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加するものとすること。
注 限度基準において、特別条項付き協定を締結する場合には延長時限をできる限り短くするように努めること、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように辞めることを定めることとする。
二 使用者は、政令で定める時間を超えて時間外労働をさせたときは、その超えた時間について、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないものとすること。
注 政令で定める時間及び率については、労働者の健康確保の観点、中小企業等の企業の経営環境の実態、割増賃金率の現状、長時間の時間外労働に対する抑制効果等を踏まえて定めることとする。
三 使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下「労使協定」という。)により、二の割増賃金の支払に代えて、有給の休日を与えることができるものとすること。
第二 年次有給休暇
使用者は、年次有給休暇の日数のうち五日を超えない部分については、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時間を単位として年次有給休暇を与えることができるものとすること。
第三 自己管理型労働制
一 労使委員会が設置された事業場において、労使委員会が委員の五分の四以上の多数により四に掲げる事項にづいて決議をし、かつ、使用者が当該決議を行政官庁に届け出た場合において、三のいずれにも該当する労働者を労働させたときは、当該労働者については、休日に関する規定は二のとおり適用し、労働時間、休憩、時間外及び休日の労働並びに時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用しないものとすること。
二 使用者は、一により労働する労働者(以下「対象労働者」という。)に対して、四週間を通じて四日以上かつ一年間を通じて週休二日分の日数(百四日)以上の休日を確実に確保もなければならないものとし、確保しなかった場合には罰則を付すものとすること。
三 対象労働者は、次のいずれにも該当する労働者とするものとすること。
(一) 労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者
(二) 業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者
(三) 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者
(四) 年収が相当程度高い者
注 対象労働者としては管理監督者の一歩手前に位置する者が想定されることから、年収要件もそれにふさわしいものとすることとし、管理監督者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、かつ、社会的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を検討した上で厚生労働省令で定めることとする。 一
四 労使委員会は、次に掲げる事項について決議しなければならないものとすること。
(一) 対象労働者の範囲
(二) 賃金の決定日計算及び支払方法
(三) 週休二日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
(四) 労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施
注 「週当たり四十時間を超える在社時間等がおおむね月八十時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することを指針において定めることとする。
(五) 苦情処理措置の実施
(六) 対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと
(七) 一から六までに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
五 対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めるものとすること。
注 指針においては、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うことを示すこととする。
六 行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付すものとすること。
第四 企画業務型裁量労働制
一 中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができるものとすること。
注 中小企業については、厚生労働省令で定めることとする。
二 企画業務型裁量労働制の対象労働者の労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止するものとすること。
注 企画業務型裁量労働制の苦情処理措置について、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとするよう指針を見直すこととする。
第五 その他
その他所要の整備を行うものとすること。
第六 附則
一 施行期日
第二について平成二十年二月一日から施行するものとし、第一及び第三から第五までについては公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
二 経過措置及び関係法律の整備 .
この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の整備を行うものとすること。