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1 非定常作業(日常的に反復・継続して行われることが少ない作業)における労働災害が問題になっている。
2 今回は「自動化生産システムの非定常作業」ということでガイドラインが示されたが、非定常作業は、修理・保守保全、異常時処理を中心に種類も雑多多岐にわたる。安全作業標準の確立が敬遠されがちだが、個別企業を単位にみれば、一定のパターン化が可能なものである。このガイドラインは他の非定常作業にも応用できるであろう。
3 併せて、(困難な場合が多いのであるが)作業の時間的余裕の確保にも気を配る必要がある。
自動化生産システムの非定常作業における安全対策のためのガイドライン(平成9年12月22日)
1 目 的
本ガイドラインは、労働安全衛生関係法令と相まって、自動化生産システム(機械、部品等の加工、組立等に係るものに限る。以下同じ。)の非定常作業(日常的に反復・継続して行われることが少ない作業をいう。以下同じ。)における安全対策として必要な措置を講ずることにより、自動化生産システムの非定常作業における労働災害の防止を図ることを目的とする。
2 対象とする非定常作業
本ガイドラインの対象とする非定常作業は、次の作業とする。
(1)保全等作業
不定期な又は定期的ではあるが頻度の低い保全の作業並びに生産切替時、設備立ち上げ時(休止していた設備の立ち上げ時を含む。)等における調整及び試運転の作業
(2)異常処理作業
通常の運転中に発生する異常、故障等の処理の作業(復帰の作業を含む。)
3 事業者等の責務
自動化生産システムの非定常作業を行う事業者は、本ガイドラインに基づき適切な措置を講ずることにより、自動化生産システムの非定常作業における労働災害の防止に努めるものとする。
また、自動化生産システムの設計者又は製造者は、本ガイドラインの4に基づき自動化生産システムの非定常作業における労働災害の防止に配慮した設計及び製造を行うものとする。
4 自動化生産システムの安全化
自動化生産システムの設計及び設置に際しては、労働安全衛生関係法令を遵守することはもとより、次の事項に特に留意して、非定常作業における労働災害の防止に配慮したものとすること。
(1)危険箇所への覆い、囲い等の設置
(2)動力しや断装置及び非常停止装置の設置
(3)フェールセーフ、フールプルーフ、インターロック等の機能を有する安全装置等の設置
(4)コンピュータ制御による方式にあっては、 故障時における自己診断機能等の付与
(5)作業スペース、足場等の確保
5 安全衛生管理体制の確立
(1)保全等作業の場合
労働安全衛生関係法令に規定する総括安全衛生管理者、安全管理者等の選任はもとより、保全等作業の実施に先立って、保全等作業の種類、規模、危険度等に応じ、あらかじめ総括責任者(保全等作業全体を統括する者)、部門責任者(保全部門、運転部門等の責任者として当該部門の保全等作業を統括する者)、作業指揮者(部門責任者の指示に従い、保全等作業を指揮する者)等を定め、その責任範囲及び業務分担を明確にするとともに、作業が複数の部門、外注メーカー等にわたる場合には、連絡会議を設置する等連絡調整の徹底を図ること。
(2)異常処理作業の場合
労働安全衛生関係法令に規定する総括安全衛生管理者、安全管理者等の選任はもとより、異常処理作業の実施に先立って、あらかじめ部門責任者(保全部門、運転部門等の責任者として当該部門の異常処理作業を統括する者)、異常処理作業監督者(職長等として異常処理作業を直接監督する者)等を定め、その責任範囲及び業務分担を明確にすること。
6 作業計画書又は作業手順書の作成
(1)保全等作業の作業計画書の作成
保全等作業の実施に先立って、あらかじめ、災害要因の分析及び対応措置の検討を行うとともに、その結果を踏まえ、次の事項を盛り込んだ作業計画書を作成し、当該保全等作業について総括責任者等の承認を得ること。
また、必要に応じ作業計画書の見直し及び変更を行うとともに、変更の都度承認を得ること。
イ 作業日程
口 指揮・命令系統
ハ 作業内容及び作業手順
ニ 作業分担及び責任範囲
ホ 連絡及び合図の方法
へ 災害要因及び対応措置の内客
ト 資格等を必要とする作業
チ 許可を要する作業
リ 注意事項及び禁止事項
ヌ 緊急事態発生時の対応
(2)異常処理作業の作業手順書の作成
異常処理作業の実施に先立って、あらかじめ、次のように作業手順書を作成し、当該異常処理作業について部門責任者等の承認を得ること。
また、必要に応じ作業手順書の見直し及び変更を行うとともに、変更の都度承認を得ること。
イ あらかじめ想定される故障、作業の実態、災害事例等をもとに、対象となる異常処理作業の調査及び選定を行う。調査及び選定は、作業者も参加させ、定期的に実施する。
口 選定した異常処理作業について、災害要因の分析及び対応措置の検討を行うとともに、その結果を踏まえ、異常等の状況の確認、異常等の処理及び復帰の手順、注意事項及び禁止事項を含めた作業手順書を作成する。
ハ 作成した作業手順書について、妥当性の評価を行う。
7 安全衛生教育の実施
非定常作業に従事する作業者に対し、あらかじめ次の事項について必要な安全衛生教育を実施すること。実施に当たっては、実技教育を取り入れるとともに、各種教材を使用して効果が上がるようにするのが望ましい。
(1)自動化生産システムの概要
(2)安全装置及び防護装置の動作及び機能
(3)作業計画書又は作業手順書の内容
(4)資格等を必要とする作業の種類
(5)許可を要する作業の種類
(6)注意事項及び禁止事項
(7)保護具、安全用具等の種類及び使用方法
(8)緊急事態発生時の対応
(9)類似作業の災害事例
(10)事業場の安全衛生基準及び関連法規
8 作業の実施
(1)保全等作業の実施
保全等作業の実施に際しては次の事項に留意すること。
イ 保全等作業を同部署内又は他部署、外注メーカー等と共同で行う場合は、事前に打合せを実施し、作業方法、作業分担等の周知徹底を図ること。
口 作業の準備段階で次の措置を講ずること。
(イ)作業に使用する工具、用具、仮設機材等の点検整備
(口)必要な動力源の遮断及び施錠、掲示及び表示の設置等
(ハ)資格等を必要とする作業への有資格者等の配置の確認
(ニ)作業の種類に応じ、保護帽、安全帯、保護めがね等の保護具の準備
(ホ)許可を要する作業については許可の取得
ハ 作業開始前に、ツールボックス・ミーティング等において、作業計画書に基づき次の事項を周知徹底すること。
(イ)指揮・命令系統
(ロ)作業内容及び作業手順
(ハ)連絡及び合図の方法
(ニ)注意事項及び禁止事項
(ホ)危険の予知(KY)及び指差呼称の励行
ニ 作業指揮者による作業の指揮を徹底すること。
(2)異常処理作業の実施
異常処理作業の実施に際しては次の事項に留意すること。
イ 異常処理作業を複数の作業者で共同で行う場合は、事前に打合せを実施し、作業方法、作業分担、連絡及び合図の方法等の周知徹底を図ること。
ロ 毎朝のツールボックス・ミーティング等において、作業手順書に基づき次の事項を周知徹底すること。
(イ)作業手順
(ロ)注意事項及び禁止事項
(ハ)危険の予知(KY)及び指差呼称の励行
ハ 作業の着手前に次の措置を講ずること。
(イ)作業に使用する工具、用具、仮設機材等の点検
(ロ)必要な動力源の遮断及び施錠、掲示及び表示の設置等
(ハ)作業の種類に応じ、保護帽、安全帯、保護めがね等の保護具の準備
(ニ)許可を要する作業については許可の取得
ニ 作業手順書にない異常処理作業については、異常処理作業監督者の指示を得るものとすること。なお、異常処理作業の実施に必要な安全衛生教育が行われていない者等については、「止める、呼ぶ、待つ」の原則を徹底すること。
9 安全点検の実施
定期的に安全点検を実施し、作業者の不安全行動及び機械設備の不安全状態の有無を把握し、必要な改善を図ること。